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OQ通信第14号(平成23年度発行)全国情報(PDF:1477KB)
被災建築物 第 14号 平成23 年12 月14 日 応急危険度判定 OQ通信 ○東日本大震災における判定活動について 国土交通省住宅局建築指導課建築物防災対策室 平成 23 年 3 月 11 日 14 時 46 分、三陸沖で発生した地 危険度判定が実施されたことは、これまでの幾多の地震での 震は、マグニチュード9.0、最大震度7を記録し、震度5強 活動経験と、日頃から模擬訓練等を通じて研鑽を積まれ、準 以上の地域も広範囲に及ぶなど、未曾有の大災害となりまし 備されてきた関係各位のご努力の成果であると思います。改 た。地震とそれに伴う巨大な津波により、死者、行方不明者 めて判定活動に従事された皆様に感謝し、敬意を表する次第 数約2万人、住家被害も全半壊戸数が約 30 万戸と甚大な被 です。 害が発生しました。被災されました皆様に心からお見舞い申 しかしながら、発災当初は通信・連絡、移動などに支障が し上げます。 生じたとともに、判定活動実施地域が 10 都県に及び、大き 被災建築物応急危険度判定について、国土交通省において な余震の発生により再度判定が必要となるなど、判定活動も は、発災直後に震度5強以上を記録した都県に対し、判定活 長期間にわたることとなり、過去にない大災害であっただけ 動の実施について連絡するとともに、ブロック協議会の会長 に課題も浮かび上がってきました。また、ガソリンの供給が 県等に対し、広域応援要請に備えた準備を依頼しました。被 不足するという、今まで想定していなかった状況が現出し、 災都県においては、発災当日から実施準備に着手し、早いと 応急危険度判定士の広域応援に影響を与えました。この度の ころでは当日から判定活動が実施されるなど、実施体制が速 判定活動における経験を踏まえ、得られた課題について、今 やかに構築されていたと思います。また、北海道・東北被災 後の対応に生かしていきたいと考えています。 建築物応急危険度判定協議会ブロック内での応援をはじめと 国民の地震に対する関心は、この大震災によりかつてない して、各ブロック協議会からの応急危険度判定士の応援も実 ほど高まっています。このような中で本協議会の活動への期 施されました。その結果、10 都県・149 市町村において、 待はますます高まり、同時に重要性も増しています。 延べ 8,541 人の応急危険度判定士により、95,381 件の判 定が実施されました。 応急危険度判定士の皆様に心からの感謝を申し上げますと ともに、今後とも一層のご協力をよろしくお願い申し上げま 史上稀にみる大規模災害に対して、このように迅速に応急 す。 表:東日本大震災等の被災建築物応急危険度判定結果 都県数 東日本大震災 (3/11) 市町村数 危険 (赤) 要注意 (黄) 調査済 (緑) 計 延べ班 延べ 人員 10 都県 149 市町村 11,699 件 23,191 件 60,491 件 95,381 件 4,047 班 8,541 人 長野県北部を震源とする地震(3/12) 2県 5 市町村 375 件 694 件 1,249 件 2,318 件 109 班 229 人 静岡県東部を震源とする地震(3/15) 2県 2 市町村 13 件 155 件 345 件 513 件 33 班 64 人 13 都県 155 市町村 12,087 件 24,040 件 62,085 件 98,212 件 4,189 班 8,834 人 全体 問い合せ先 : TEL FAX. 発行/全国被災建築物応急危険度判定協議会 ホームページアドレス http://www.kenchiku-bosai.or.jp/oq/ ※OQ 通信のバックナンバーは協議会 HP から 閲覧できます。 地震コーナー ○東日本大震災における判定活動 -東日本大震災における岩手県の応急危険度判定活動について- 岩手県県土整備部建築住宅課 廣中 勝之 【被害の概要】 【はじめに】 平成 23 年3月 11 日に発生した 「東北地方太平洋沖地震」 地震動そのものによる被害は県南地区(花巻市、北上市、 におきましては、国土交通省、各都道府県並びに関係団体等 奥州市、一関市)に多くみられ、その被害状況は、瓦屋根や 多くの皆様にはご支援、ご協力をいただき誠に有難うござい 外壁等の被害がもっとも多くなっています。さらに、構造的 ます。 この紙面をお借りいたしまして厚くお礼申し上げます。 な破損に伴い残留変形がみられる建築物も一部確認されまし た。ただし、被害の多くは老朽化した木造建築物が大半で、 被災場所もところどころに点在しているものでした。 【地震の概要】 発生日時 平成 23 年3月 11 日(金) 一方、沿岸地区の市町村は、地震動の大小にかかわらず、 14 時 46 分頃 地震で発生した津波により多くの建築物が倒壊するなど大き 震央地名 三陸沖(北緯 38.1 度、東経 142.9 度) な被害となりました。今回発生した津波は、想像以上に巨大 震源の深さ 24km かつ威力のあるもので、建築物の構造に関係なく破壊するも 規 マグニチュード 9.0(暫定値) のでした。 模 本県の最大震度 津波の最大波 震度6弱:大船渡市、釜石市、滝沢村、 矢巾町、花巻市、一関市、奥州市 宮古 8.5m以上 ※参考 (社)土木学会調査報告(波高) : 釜石市両石町水海水門 17.7m 津波による被害を免れた地域の建築物は、県南地区と同じ ように一部地震動による被害を確認できる程度であり、甚大 な被害に至った建築物は地震の強さに比べ非常に少ないとい う印象を受けました。 県内の被害状況は主に津波被害によるものですが、人的被 岩手県では、最大震度 6 弱(大船渡市、釜石市、滝沢村、 害で死亡者 4,600 人を超える(その他、行方不明者 1,600 矢巾町、花巻市、一関市、奥州市)を記録、その他の地域は 人を越えている)という状況であり多くの尊い人命が奪われ 震度 5 強(宮古市、山田町、盛岡市、八幡平市、北上市、遠 てしまいました。さらに、建築物被害では、24,000 棟を超 野市、平泉町)及び震度 5 弱(久慈市、普代村、野田村、二 える住家が倒壊(全壊+半壊)する被害があり、県では応急仮 戸市、雫石町、葛巻町、岩手町、軽米町、紫波町)と広範囲 設住宅等(仮設住宅約 13,900 戸、借上民間賃貸住宅約 にわたり強い地震が発生、大きな被害となりました。 3,800 戸など)の建設対応に至っています。 今回の地震は、地震動そのものによる被害と地震により発 生した津波被害が加わり(岩手県沖から茨城県沖の長さ約 500km、幅約 200kmの範囲に及ぶ)沿岸市町村のほぼ 全域に甚大な被害をもたらしました。 【応急危険度判定活動について】 県では、地震発生後すみやかに「岩手県災害対策本部(本 部長・達増拓也知事) 」を設置、情報収集をはじめ震災対応の 震度 5 弱以上の余震が続く中、4月7日(木)23 時 32 体制を整える中、県土整備部建築住宅課では被災建築物応急 分頃、宮城県沖を震源とするマグニチュード 7.4、県内最大 危険度判定支援本部を設置、判定士派遣の準備、支援体制の 震度 6 弱(大船渡市、釜石市、矢巾町、一関市、奥州市)と 確立を実施いたしました。 なる余震が発生、被害が拡大することとなりました。 応急危険度判定活動としては、本震時に北上市及び一関市 (その他の地域は、震度 5 強(盛岡市、八幡平市、花巻市、 が被災建築物応急危険度判定実施本部を設置、また、余震時 北上市、遠野市)及び震度 5 弱(宮古市、久慈市、紫波町) ) に一関市及び奥州市が被災建築物応急危険度判定実施本部を 設置、 合計1,072棟の応急危険度判定活動を実施しました。 <被災建築物応急危険度判定の結果(3/11 本震と 4/7 余震の合計)> 市町村名 奥州市 一関市 北上市 合計 期間 危険 【赤】 【黄】 【緑】 4/8-4/11 3/13-3/27 4/11-4/28 要注意 調査済 件数計 延べ班 延べ 民間判 【チーム】 人数 定士数 44 93 146 283 20 41 0 113 336 307 756 81 166 14 11 16 6 33 168 445 3/14-3/28 (支援体制及び判定活動) 459 1072 14 16 0 115 223 14 ③全県的に、被害場所が点在していたため個別に対応できる 県では、判定支援調整本部(国土交通省)及び広域支援本 ように「被災住宅点検相談」という事業導入を検討していた 部(応援主幹都道府県:青森県)と広域支援について連絡をと こと、などの理由により判定士の広域支援要請及び県内支援 り支援体制がとれていることを確認、さらに、被害状況の把 要請は不要と判断しました。 握に努め、被災市町村の応急危険度判定実施や判定士支援要 請に備えていました。 その後、余震発生時には、一関市及び奥州市で一部区域の 被害拡大を確認したことにより判定活動実施を決断し地元判 本震時、本県及び被災市町村では、①沿岸地区は、地震で 定士(市職員)の判定活動に加え県の支援本部へ判定士の派 発生した津波被害が甚大であり、建築物の多くは応急危険度 遣要請を行いました。県の支援本部では、県職員(民間判定 判定対象外であったこと、②県南地区では、被害場所が点在 士を含む)判定士を派遣、判定活動の支援を実施しました。 しており、 面的に判定する区域エリアが小規模であったこと、 【写真 1】判定活動状況 【写真 2】被災状況(地割れ) 【写真 3】被災状況(建築物その 1) 【写真 4】被災状況(瓦の落下) 【写真 5】被災状況(建築物その 2) 【写真 6】被災状況(金物の破損) 【写真 7】被災状況(外壁のずれ) 【写真 8】被災状況(鴨居のずれ) 奥州市及び一関市で行った判定活動は、各市とも応急危険 一方で、被災市町村から住民に対して十分な周知活動がで 度判定活動に係る判定コーディネーター的役割を担う職員に きず、被災建築物応急危険度判定と罹災証明、被災度区分判 より、判定実施概要及び被災状況に応じて決定した判定実施 定及び住宅相談の区別を明確に認識されていないことが多い 区域等の説明及び判定士の班分けを行い、現地にて判定を実 と感じました。余震等の二次的被害防止という目的が理解さ 施しました。 れにくく、 判定活動時の十分な広報・周知が必要であること、 今回の地震は、建築物への被害だけでなく宅地への被害も発 事前の PR 活動により被災建築物応急危険度判定制度の認識 生し建築物が傾く等の被害も確認されています。一部の地域 を広めることが必要であることなど、今後の課題と感じまし では、盛土造成地における法面崩壊などが発生、被災宅地危 た。また、判定後の対応で判定ステッカーの取り外し時期や 険度判定も併せて実施されました。 危険及び要注意の判定を行った建築物の次のステップに移行 する時期の誘導や相談対応の体制整備についても課題と感じ 【成果と課題】 被災建築物応急危険度判定士の県職員をはじめ民間判定 ています。 今回の地震では、地震による直接的な被害は少なかったが、 士(建築関係団体)や市町村職員の協力を得、応急危険度判 今後も起こりうる大規模地震に対して、これまで進めてきた 定を実施することができました。引き続き発生していた余震 旧耐震基準による建築物の耐震診断・耐震改修等をさらに推 等に対し二次的災害の防止を行うことができたと考えていま 進することなど、未然に建築物の被害を防止することなど必 す。 要であることを強く感じました。 地震後の大規模な停電により電話等連絡手段が断たれ、被 災市町村職員との連絡に苦慮したため、県では職員を先遣隊 として派遣、被害状況確認の巡回や混乱している被災市町村 へ情報を提供することなどに取り組み、的確な状況判断を行 うことができたと考えています。 -東北地方太平洋沖地震における被災建築物応急危険度判定について- 宮城県土木部建築宅地課 平成23年3月11日に発生した「東北地方太平洋沖地震」 (平成 23 年 10 月 20 日現在) 各都道府県、市町村並びに関係団体の皆様に多大な御協力を 全壊 76,078 棟 いただき誠にありがとうございます。この紙面をお借りしま 半壊 92,234 棟 して厚くお礼申し上げます。 一部破損 175,294 棟 床上浸水 7,061 棟 床下浸水 11,194 棟 非住家被害 27,627 棟 平成 23 年 3 月 11 日 14 時 46 分に三陸沖を震源とする 非常に強い地震(マグニチュード9.0)が発生し、宮城県 においては、栗原市築館で震度 7 が観測されたほか、広い範 ■判定活動の概要 囲で震度 5 弱~6 強の揺れが観測され、その他全国的にも震 (1)実施期間 度 6 弱~1が観測されました。また、発災後間もなく大津波 が発生し、沿岸部に甚大な被害をもたらしたことは御存知の とおりです。 平成 23 年 3 月 11 日~5 月 10 日 (2)実施人員 2,955 人(1,472 班) 余震が発災直後から相次いで発生し、 約 1 ヵ月後の 4 月 7 日 23 時 32 分には震度 6 強の最大余震が観測されました。 智史 ■建築物の被害状況 におきましては、 全国の判定士の皆様をはじめ、 国土交通省、 ■地震の概要 富樫 (3)実施件数 50,721 件 被災状況(木造建築物の倒壊) 被災状況(RC 建築物の落階) 被災状況(ブロック塀の倒壊) ■判定活動の実施 支援要請を行い、国土交通省東北地方整備局、北海道・東北 県内の広い範囲にわたって極めて大きな揺れが発生した ブロック及び 10 都県ブロックの協力を得て実施しました。 ことから、発災当初から情報が遮断され、県内市町村の被災 実施した2箇月の間は常時人員が不足している状況でし 状況の把握が非常に困難であったと同時に、市町村において たので、市町村の状況に応じて、 「調査済」と判断できる建物 も県に対する支援要請ができない状態に陥りました。このよ については調査票とステッカーの作成を省略し、作業の迅速 うな孤立した状況の中で、発災直後は各市町村の職員や地元 化を図りました。 判定士が中心となって判定するなど、市町村独自に判定活動 を実施した場合も多くありました。 ■津波浸水域での判定 沿岸部の市町村では、大津波によって広範囲で建築物が流 失し、行政庁舎自体も浸水するなど被害が重なり、実施体制 を確保することが困難でした。さらに、被災地の路上には瓦 礫が散乱し、立入ることができない状況が続いたため、発災 から数週間後に判定活動を開始し、実施期間も 1 ヶ月を超え るケースが多く見られました。 また、 地盤沈下の影響もあり、 1 週間から 2 週間程度水が引かず、その後も満潮の度に冠水 することも判定活動を妨げる要因のひとつであったと考えら れます。 判定活動前の説明会 津波によって建築物に浸水はしたものの、流失や全壊を免 れた地区も多く見られました。その地区では、建築物は残っ その後、市町村から支援要請を受け、判定士の派遣要請を ていても流木や自動車が突っ込んでいたりするところもあれ 各団体へ行いましたが、交通網の寸断や燃料不足により遠地 ば、物がぶつからずに水位だけが 1.5mほど上がったところ からの応援は難しい状況であり、地元の判定士を中心に体制 など、場所によって様々な被災状況でした。 を整えることとし、団体未加入の判定士には市町村からも協 力の呼びかけを行いました。 本震から約1 ヶ月後の4 月7 日に発生した最大余震では、 県内で最大震度 6 強の揺れを観測し、復旧が始まりつつあっ た交通インフラ、水道や電気等のライフラインに再び被害を 及ぼしました。津波は発生しませんでしたが、建築物の倒壊 などの被害が拡大したため、多くの市町村で判定を追加実施 しました。 4 月中旬には燃料も入手し易くなっていたところですが、 市町村職員や判定士の多くは他の業務に忙殺され、県内での 瓦礫の散乱状況 判定士の確保は困難と判断したことから、4 月 13 日、広域 流された自動車 判定活動の状況 応急危険度判定は浸水による被害は想定されておらず、判 ■成果 定基準は定められていませんが、地震による被害か浸水によ 被災建築物応急危険度判定士である民間の建築士の方を る被害かに関わらず、判定現場での建築物のダメージの状況 はじめ、建築関係団体、東北地方整備局、北海道・東北ブロ を総合的に判断し、また、流木や瓦礫等の危険性を考慮して ック及び 10 都県ブロックの自治体の協力を得て、50,000 判定活動を行いました。 棟を超える応急危険度判定を実施することができ、余震が続 くなかで、二次災害の防止を図ることができました。これに より、所有者や居住者の方々の安全・安心を確保することが できたと考えています。 また、安全と判断される建築物の調査票作成を省略するな どの方法で、市町村の実施体制に合わせて作業を簡略化した ことにより、限られた人員の中で最大限の作業を行うことが できました。 漂流物(タンク)の状況 ■応急危険度判定結果 単位:棟 木造 危険 鉄筋コンクリート造 要注意 調査済 危険 S造 要注意 調査済 危険 合計 要注意 調査済 危険 要注意 調査済 計 仙台市 1,287 2,265 3,786 88 189 322 168 257 545 1,543 2,711 4,653 8,907 石巻市 221 104 9,074 0 0 0 0 0 0 221 104 9,074 9,399 塩竈市 129 193 4,405 3 3 6 0 0 0 132 196 4,411 4,739 白石市 243 453 1,793 1 1 45 3 6 24 247 460 1,862 2,569 名取市 67 192 3,070 0 0 0 0 0 0 67 192 3,070 3,329 角田市 13 19 15 0 0 0 0 0 1 13 19 16 48 多賀城市 71 200 1,151 1 0 3 9 18 83 81 218 1,237 1,536 岩沼市 194 260 1,308 5 0 38 5 1 37 204 261 1,383 1,848 登米市 334 150 434 0 0 0 0 0 0 334 150 434 918 栗原市 207 292 563 10 9 20 4 7 4 221 308 587 1,116 83 92 3,889 0 0 9 1 0 17 84 92 3,915 4,091 大崎市 326 385 1,803 12 11 73 0 0 0 338 396 1,876 2,610 蔵王町 49 57 45 0 0 1 0 1 0 49 58 46 153 6 7 3 0 2 0 0 0 4 6 9 7 22 村田町 15 26 3 2 0 0 1 0 0 18 26 3 47 柴田町 149 62 4 0 0 0 0 0 0 149 62 4 215 丸森町 8 20 11 0 0 0 0 0 0 8 20 11 39 亘理町 565 370 1,383 7 5 59 0 2 8 572 377 1,450 2,399 山元町 246 552 1,527 2 1 9 2 10 26 250 563 1,562 2,375 松島町 45 56 9 0 0 0 0 0 0 45 56 9 110 七ヶ浜町 東松島市 大河原町 59 275 585 3 1 12 2 2 17 64 278 614 956 利府町 5 47 50 0 0 0 0 0 0 5 47 50 102 大和町 25 95 25 0 0 0 0 0 0 25 95 25 145 大郷町 35 104 56 0 0 0 0 0 0 35 104 56 195 富谷町 10 52 36 0 3 1 1 1 3 11 56 40 107 加美町 15 40 39 0 0 0 0 0 0 15 40 39 94 涌谷町 96 192 736 0 0 0 0 0 0 96 192 736 1,024 美里町 12 9 9 0 0 0 0 0 0 12 9 9 30 女川町 232 382 725 1 14 16 10 16 48 243 412 789 1,444 42 0 0 0 0 0 0 0 112 42 0 154 6,993 36,537 135 239 614 206 321 817 5,200 7,553 37,968 50,721 南三陸町 計 割合 112 4,859 10.04% 14.45% 75.51% 13.66% 24.19% 62.15% 15.33% 23.88% 60.79% 10.25% 14.89% 74.86% 100.00% -福島県における東北地方太平洋沖地震の被害状況等について- 福島県土木部建築指導課 ■被災建築物応急危険度判定の実施 ■はじめに 平成 23 年3月 11 日午後2時 46 分。東北地方から関東 地方にかけての太平洋沖を震源として、マグニチュード 9.0 ①実施本部及び支援本部の設置 本県では、地震発生直後から、被災市町村からの支援要請 を受けて被災建築物応急危険度判定支援本部を土木部建築指 という、国内では類を見ない巨大地震が発生した。 福島県でも、最大震度で6強、県内の約8割の市町村で震 導課内に設置し、福島県建築士会等と連携しながら、判定士 度5強以上を観測し、 死傷者と行方不明者は合わせて 2,000 との連絡を確保し、順次、支援要請のあった市町村への派遣 人を超え、確認されているだけでも 22 万棟を超える建築物 を依頼した。 県内の市町村では、庁舎が壊滅的な被害を受けたところも が被災している。 また、その直後に発生した高さが 10mを超える大津波は、 沿岸部の集落や農地に壊滅的な打撃を与えただけでなく、非 常用電源を失った原子力発電所の爆発事故を誘発し、その後 現在、立入が制限されている警戒区域と計画的避難区域は 10市町村の区域で約 1,100km2 に及び、自主的に避難し ている方も含めると約14万人の県民が県内外に避難してい る。 また、県庁でも、建築指導課のある西庁舎が震災直後から する福島県自治会館の一室を間借りしながらの支援活動を余 儀なくされた。 ②応急危険度判定の実施 震災翌日の 12 日から、まず福島市をはじめとする4市町 (データはいずれも平成23年11月10日現在) で判定活動が開始された。その後、被災状況が明らかになる につれ支援を求める市町村の数が増え、最終的には、県内 ■地震の諸元 59 市町村の過半数を超える 31 市町村から支援の要請があ ○県内市町村の震度 度 6強 6弱 5強 5弱 4以下 市町村数 判定拠点の設置にも困難をきたした。 13 日までの3日間使用禁止となったことから、その間隣接 の本県の復旧復興の大きな妨げとなっている。 震 多く、判定業務に関わる職員の確保だけでなく、実施本部や 11 22 14 6 6 ○人的被害 計 59 (人) 死者 1,885 行方不明者 73 重傷者 87 軽傷者 154 ○建物被害 住家被害 (棟) 全壊 18,392 半壊 56,033 一部損壊 非住家被害 131,477 公共建築物 その他 1,052 18,413 (km2) ○津波被害 県内の浸水面積 112 (津波被災 10 市町の合計面積 2,456 km2 の約5%) り、5月31日までの81日間に 15,807 棟を判定し、延 べ 2,053 名の判定士が判定活動に従事することとなった。 被害の大きかった郡山市では 3,357 棟、いわき市では 2,897 棟など、6つの市町で 1,000 棟以上の判定を行って 部の市町村への派遣が困難となったこと等の理由から、最終 的に約3ヶ月間にわたる長期間の実施となった。 いる。 ③広域支援の要請と中断 県内市町村の震度分布からもわかるように、県(支援本部) では震災発生直後から広域支援要請の必要性を判断し、翌日 の 12 日に、ブロック幹事県である青森県に支援の要請を行 ○判定の実施状況 判定実施期間 3月12日~5月31日 (81日間) 支援要請市町村数 31市町村 (全59市町村の約53%) った。マニュアル等に従い宿泊施設等の手配が進み、受け入 れ体制が万端整ったと思われたところに、県内でガソリンの 調達が困難になっているという思いもよらぬ事態に直面する 調査棟数 15,807棟 調査員数及び班数 延べ2,053名 994班 こととなった。 (内訳) 支援本部では、判定士の利用する車両を緊急車両として認 行 政 職 員:49.0% 民間建築士:51.0% め、ガソリンスタンドで優先的に給油を受けることができな いか手を尽くしたところであったが、13 日時点で解決には 至らず、県外からの判定士の到着を翌日に控えていたことも ○判定の結果 あり、やむを得ず広域要請を中断せざるを得なかった。 結果として、支援要請を受け入れていただき出発するばか りとなっていた県外の判定士の皆様に不要の御迷惑をかける 危 険 (赤) 3,314棟(21.0%) 注 意 (黄) 6,718棟(42.5%) 調査済 (緑) 5,775棟(36.5%) 合 ことになってしまい、この紙面をお借りして深くお詫びを申 計 15,807棟 し上げます。 ○市町村の判定実績 ④原発事故による影響 福島第一原子力発電所の爆発事故は、沿岸部の判定活動に も多大な影響を及ぼしている。 12日の1号機の爆発事故に続き14日11時に発生し た3号機の爆発事故は、発電所から北に 40km 以上離れて いる相馬市での判定活動を中止に追い込むこととなった。遠 隔地から支援に来ていた判定士の安全安心に配慮しての決定 であった。 その後、相馬市での判定活動は、ガソリン調達や原発事故 の混乱等がひとまず解消された3月31日に再開され、最終 的には5月24日までの21日間に 145 棟の判定が行われ ている。 ○判定の実施経過 一方で、警戒区域に含まれている双葉郡の町村のほとんど 応急危険度判定件数(累積件数) では、原則立入が禁止されていることから、応急危険度判定 18000 はもちろんのこと、被災した家屋やインフラの状況さえ未だ に確認されていない。 16000 14000 12000 ⑤長期にわたる判定活動の実施 当初は、余震が収まるまでの短期間での実施を想定してい 10000 8000 6000 たが、余震の発生が長期にわたり市町村からの要請が絶えな 4000 かったこと、また、震災直後のガソリン不足により広域要請 2000 を断念せざるを得なくなる等短期間での集中的な実施ができ なかったこと、さらには、原発事故の発生により一時期沿岸 0 3/12 3/19 3/26 4/2 4/9 4/16 4/23 4/30 累積件数 5/7 5/14 5/21 5/28 一部の市町村においては、引き続き判定活動の延長を求め る声もあったが、新たに創設した被災住宅相談支援事業にお いて被災住宅の現地調査を行うこととし、応急危険度判定活 動をいったん取り止めることとした。 (その後の余震の発生を 想定し、終了ではなく休止とした。 ) ■おわりに 震災により被災されました皆様に心から御見舞い申し上 げますとともに、今も県内外の仮設住宅等に避難している被 災者の皆様が、一日も早く故郷に帰ることのできる日が来る ことをお祈り申し上げます。 また、自らが被災者であることをかえりみず、ガソリン不 足や原発事故等の困難な状況にありながら、それでも遠く離 れた被災地まで足を運び、被災者への説明を尽くしながら判 定に全力を傾けていただいた判定士の皆様に深く感謝申し上 げます。 本県においても、引き続き今回の応急危険度判定の実施状 況を検証し、抽出した課題の解消に努め、今後の円滑かつ迅 速な判定活動の実施につなげて行きたいと考えております。 ○応急危険度判定市町村別結果一覧 方部 中 通 り 地 方 会 津 地 方 浜 通 り 地 方 No. 市町村名 1 福島市 2 伊達市 3 本宮市 4 国見町 5 桑折町 6 川俣町 7 郡山市 8 須賀川市 9 田村市 10 小野町 11 鏡石町 12 天栄村 13 石川町 14 古殿町 15 白河市 16 西郷村 17 泉崎村 18 中島村 19 矢吹町 20 棚倉町 21 鮫川村 小計 22 会津坂下町 23 湯川村 24 会津美里町 25 磐梯町 26 猪苗代町 小計 27 相馬市 28 南相馬市 29 新地町 30 広野町 31 いわき市 小計 県合計 調査日 3/12~4/14 3/13~3/25 4/5~4/7 3/17~4/8 3/22~3/23 3/25~3/28 3/13~5/24 3/16~3/24 3/29 3/13 3/24~3/27 3/23~3/29 3/25~3/28 4/13 3/14~4/8 3/13~4/19 3/17~3/25 3/13~3/29 3/12~4/21 3/15~4/20 3/14~4/14 3/15~5/13 3/15 3/28 3/28~5/20 3/12~3/13 3/14~5/24 4/25~4/26 3/12~4/11 5/16 3/16~5/31 福島県 調査棟数 延べ班 危険(赤) 508 153 342 483 83 32 3,357 1,284 10 22 1,353 322 146 13 1,020 224 453 758 597 31 7 11,198 203 11 1 3 108 326 145 88 1,143 10 2,897 4,283 15,807 114 22.4% 74 48.4% 34 9.9% 159 32.9% 35 42.2% 5 15.6% 722 21.5% 321 25.0% 6 60.0% 9 40.9% 207 15.3% 102 31.7% 3 2.1% 4 30.8% 259 25.4% 74 33.0% 114 25.2% 87 11.5% 248 41.5% 5 16.1% 4 57.1% 2,586 23.1% 67 33.0% 11 100.0% 0 0.0% 0 0.0% 63 58.3% 141 43.3% 43 29.7% 46 52.3% 147 12.9% 0 0.0% 351 12.1% 587 13.7% 3,314 21.0% 要注意(黄) 調査済(緑) 238 46.9% 49 32.0% 194 56.7% 194 40.2% 36 43.4% 18 56.3% 913 27.2% 375 29.2% 4 40.0% 2 9.1% 416 30.7% 141 43.8% 43 29.5% 6 46.2% 486 47.6% 90 40.2% 182 40.2% 205 27.0% 261 43.7% 4 12.9% 3 42.9% 3,860 34.5% 99 48.8% 0 0.0% 1 100.0% 0 0.0% 45 41.7% 145 44.5% 61 42.1% 42 47.7% 360 31.5% 3 30.0% 2,247 77.6% 2,713 63.3% 6,718 42.5% 156 30.7% 30 19.6% 114 33.3% 130 26.9% 12 14.5% 9 28.1% 1,722 51.3% 588 45.8% 0 0.0% 11 50.0% 730 54.0% 79 24.5% 100 68.5% 3 23.1% 275 27.0% 60 26.8% 157 34.7% 466 61.5% 88 14.7% 22 71.0% 0 0.0% 4,752 42.4% 37 18.2% 0 0.0% 0 0.0% 3 100.0% 0 0.0% 40 12.3% 41 28.3% 0 0.0% 636 55.6% 7 70.0% 299 10.3% 983 23.0% 5,775 36.5% 42 19 17 15 4 2 275 48 2 3 36 10 11 1 89 14 17 44 36 9 2 696 9 1 1 3 14 28 23 5 48 1 193 270 994 延べ人員 84 50 34 45 8 4 553 102 4 6 72 23 25 2 144 28 36 95 75 18 4 1,412 34 4 3 6 28 75 41 10 97 4 414 566 2,053 -東日本大震災における応急危険度判定活動について- 茨城県土木部都市局建築指導課 助川 智洋 ○最大余震 はじめに この度の東日本大震災における本県の応急危険度判定活 発生日時 平成 23 年 3 月 11 日 午後 3 時 15 分 動に御支援,御協力いただいた多くの皆様に,この紙面をお 借りし,厚く御礼申し上げます。今後とも本県の建築行政に 地震の規模 マグニチュード 7.4 御協力いただけますようお願いいたします。 震源地 茨城県沖 震源の深さ 約 80km 1 初期対応について 県内の震度 茨城県の応急危険度判定のこれまでの実績は,他県への判 震度6弱 鉾田市 定活動の支援だけであり,今回の震災において県内で初めて 震度5強 土浦市,鹿嶋市,筑西市 応急危険度判定活動を行いました。地震発生後,長時間の停 震度5弱 石岡市,利根町 電,電話の発信規制が続き,また,道路・橋梁の被災等によ 震度4 水戸市,常陸太田市,常陸大宮市,坂東市 り,市町村のなかには,被害状況の把握が遅れ,判定活動支 援の全体像がつかめない状況が続きました。そのため,県内 の判定士だけで対応が可能か,広域支援の要請が必要かどう ○被害状況(平成 23 年 10 月 18 日現在) 人的被害(人) 建物被害(戸) かの判断ができず,行政職員判定士及び連絡のとれた建築士 死者 会所属の民間判定士を派遣する,いわば見切り発車的な活動 行方不明 として開始しました。 重傷 33 軽傷 673 24 全壊 2,873 1 半壊 20,413 -東北地方太平洋沖地震について○本震 発生日時 地震の規模 マグニチュード 9.0 三陸沖 震源の深さ 約 24km 県内の震度 日立市,高萩市,笠間市,常陸大宮市,那珂市, (8 市) 筑西市,鉾田市,小美玉市 震度6弱 水戸市,土浦市,石岡市,常総市,常陸太田市, (21 市町 北茨城市,取手市,つくば市,ひたちなか市,鹿 村) 嶋市,潮来市,坂東市,稲敷市,かすみがうら市, 桜川市,行方市,つくばみらい市,茨城町,城里 町,東海村,美浦村 古河市,結城市,龍ヶ崎市,下妻市,牛久市,守 (14市町) 谷市,神栖市,大洗町,大子町,阿見町,河内町, 震度5弱 床上浸水 1,590 床下浸水 724 一部破損 160,820 2 応急危険度判定の経緯 3 月 11 日(金) 午後2 時46 分, 東北地方太平洋沖地震発生。 待避解除後, 全市町村に電話し,被害の情報収集を開始したが,過半の市 町村に電話が繋がらない状態が続き,連絡のとれた市町村で 震度6強 震度5強 31 平成 23 年 3 月 11 日(金) 午後 2 時 46 分 震源地 全焼・半焼 も被害状況の把握ができていない状態だった。 3 月 12 日(土) 前日と同様市町村に対し電話等により被害の情報の収集 に努めた。海岸沿いの市町村は相変わらず連絡がとれない状 態だった。連絡のついた市町村の情報や,出先機関である県 民センターの現地調査等の情報により,応急危険度判定支援 を開始すること決定した。 13 日から水戸市他 5 市 1 町で 判定を開始することとし,各県民センターへ判定資機材の配 布を行った。 八千代町,五霞町,境町 3 月 13 日(日) 利根町 他の市町村も続々と判定活動の実施を決定し,支援本部で ある県へ判定士の派遣の要請があった(13 日以降 13 市町 村) 。県は, 「災害時における対策業務の応援協力に関する協 定」に基づき,茨城県建築士会及び茨城県建築士事務所協会 に判定士の派遣を要請した。 ・茨城県震災建築物応急危険度判定活動 実施期間 平成 23 年 3 月 12 日(土) 3 月 25 日(金) ~3 月 25 日(金) 県内全市町村において判定活動終了。当初 18 日で判定を 実施市町村 28 市町村 終了する予定だったが,市町村災害対策本部や住民からの要 判定棟数 15,863 棟 望があり,25 日まで延長して行った。判定活動は県内 28 延べ班 450 班 市町村(単独実施をした 7 市 1 町含む)で実施され,延べ 延べ人員 929 人 929 人(民間判定士 382 人,行政職員判定士 547 人)の 判定士により,15,863 棟の判定が行われた。 ・被害状況写真 ○市町村別応急危険度判定実施結果(件) 危険 要注意 調査済 計 水戸市 95 387 853 1,335 日立市 53 233 62 348 土浦市 125 467 1,565 2,157 石岡市 69 301 486 856 結城市 8 3 8 19 常総市 5 8 5 18 常陸太田市 215 570 648 1,433 高萩市 208 337 654 1,199 北茨城市 11 30 35 76 笠間市 12 31 67 110 つくば市 11 219 2,043 2,273 118 216 583 917 潮来市 23 113 491 627 常陸大宮市 18 72 60 150 那珂市 89 164 119 372 坂東市 10 23 180 213 稲敷市 42 105 90 237 桜川市 178 736 977 1,891 神栖市 25 234 148 407 行方市 28 53 26 107 鉾田市 91 237 411 739 小美玉市 19 24 21 64 茨城町 83 40 0 123 大洗町 12 28 28 68 美浦村 1 2 2 5 阿見町 0 5 13 18 河内町 11 31 28 70 利根町 1 15 15 31 1,561 4,684 9,618 15,863 ひたちなか市 合計 桜川市 潮来市 稲敷市 より多くの市町村の職員がコーディネーター訓練を受け ることにより,被害想定に基づく判定区域の設定や判定に必 要な資機材・資料等の準備を行い,判定活動実施に備えた体 制を整備する必要があると考えます。 ○関係者への連絡方法について 今回の震災では,停電・電話の不通による FAX,電子メ ールの使用不能,電話の発信規制により関係者への連絡に支 障をきたしたため,携帯電話の SMS 等のメールを利用しま 神栖市 した。関係者への連絡体制の整備について検討が必要である と考えます。 ○移動手段の確保 精油所の被災,交通網の寸断等により,自動車燃料の供給 不足が二週間以上続き,判定士の移動手段の確保に苦慮しま した。判定士の住所的偏りが無いよう判定士の認定に配慮す る必要があると考えます。 鉾田市 ○応急危険度判定活動の周知について 応急危険度判定について,住民はその存在自体知らないこ とが多く,現場で判定士が判定活動を行っているとき,住民 に何をしているかを説明しなければならなかったため判定に 時間を要した。また,判定活動は,応急的な意味のものでは なく,り災証明のための建物調査や復旧のための被災度区分 判定と誤解をされることが多く,さらに,判定の対象外の区 域からの問い合わせが災害対策本部に殺到したことなど,市 町村での広報の仕方について,今後検討する必要があると考 えます。 常陸太田市 4 おわりに 3 今後の課題について ○市町村の体制整備 茨城県では,県内の全市町村が建築防災推進協議会(平成 15 年 9 月 26 日設立)に加入し,平成 16 年度から応急危 険度判定に係るコーディネーター訓練を行ってきました。し かしながら,訓練を受けたコーディネーターが他の部署に異 動している場合など,制度に不慣れな職員が対応した市町村 もあり,県からの応急危険度判定実施の働きかけに対し,反 応が鈍い市町村も見受けられた。判定活動実施の要否の判断 や判定に必要となる資機材の準備については,あくまで被災 した市町村が行うものであり,県は要請を受けて支援を行う 立場ですが, そのことを十分に理解していない市町村も多く, 判定活動実施の決定に手間取りました。 応急危険度判定活動は,経験しないですめば,それに越し たことはありませんが,不幸にも,今回経験することになり ました。今回の大震災で学んだ教訓は,今後の防災対策にい かしていくつもりです。 最後に,東日本大震災で被害に遭われた皆様に,一日も早 い復旧・復興をお祈り申し上げます。 解説コーナー ○液状化被害を受けた建築物の判定等 千葉県県土整備部建築指導課 千葉県では、東北地方太平洋沖地震により、主に利根川流 また、判定実施本部の判断により、通常の判定基準以外に 域の液状化被害、東京湾岸区域の液状化被害、海岸線沿いの 基礎の浮き上がりについても、考慮することとしました。 津波被害がありました。 さらに、建築物の敷地内で液状化が発生している場合は、 県内6市2町(旭市・成田市・佐倉市・習志野市・印西市・ 建築物自体の被害がほとんどなくても、余震等により、再び 香取市・東庄町・栄町)で地震当日から4月1日までの 22 液状化することなども予想されることから、要注意(黄)の 日間で、計 5,515 件応急危険度判定を行い、危険とされた 判定とし、 「建築物が液状化により傾くおそれがあります。 」 ものは 677 件(12.3%) 、要注意とされたものは 1,625 とステッカーのコメント欄に記載することとしました。 件(29.5%)でした。 (液状化被害の大きかった浦安市、我孫子市は応急危険度 今回の震災で、本県は、地震の揺れによる被害だけでなく、 判定に準じた独自の調査を行ったとの報告を受けています。 ) 液状化被害、津波被害を経験いたしました。今後は、液状化 被害はもとより、津波被害についても、被害想定を考慮した 県内6市2町のうち、1市2町(旭市、東庄町、栄町)に 被災建築物応急危険度判定体制の充実、 「被災建築物応急危険 おいては、各市町からの判定支援要請に基づき、県に判定支 度判定マニュアル」の改正等について検討を行う必要性があ 援本部を立ち上げ、判定の支援を行いました。 るのではないかと実感いたしました。 旭市の建築物の被害状況は、地震の揺れによる被害、液状 化被害、津波被害でした。 旭市における液状化被害を受けた建築物の判定について は、通常の判定基準のうち、周辺地盤の破壊による危険、構 造躯体の不同沈下(床、屋根の落ち込み) 、基礎の被害、傾 斜等を特に考慮し、判定を行いました。 『 通常の判定基準のうち特に考慮した判定基準 』 『独自の判定基準』 「余震等による建築物の崩壊等による危険度」 調査項目 周辺地盤の 破壊による危険 構造躯体の 不同沈下 基礎の被害 建築物の傾斜 壁の被害 調査済(緑) 要注意(黄) 危険(赤) 危険なし 不明確 危険あり 著しい床、 小屋組みの破壊 屋根の落ち込み、 床全体の沈下 無し又は軽微 浮き上がり 基礎の浮き上がりについて 無被害 部分的 著しい 1/60 以下 1/60~1/20 1/20 超 軽微なひび割れ 大きな亀裂、剥落 落下の危険あり 建築物の被害が無いが、敷地内で液状化が発生した場合 考慮 要注意(黄)判定 「建築物が液状化により傾くお それがあります。」 ○地震被災後の建築物判定 神奈川県 県土整備局 建築住宅部 建築安全課 建築安全グループ 榊原 亜紀子 判定士の皆さんが行う応急危険度判定は、地震被災後初めに行う建築物判定です。その判定結果がその後に行われる 判定にどのように関係してくるのかご存知でしょうか。そこで、応急危険度判定後に行われる2種類の被災建築物判定 「住家の被害認定」と「被災度区分判定」について説明します。 建築物被害調査の流れ 大地震による建築物被害の発生 被災後 約1週間 被災後 約 1 ヶ月 被災建築物応急危険度判定 調査方針の決定 【応急危険度判定協議会】 調査済 (緑) 要注意 (黄) 住家の被害認定 危険 (赤) (1次判定) 【市町村】 り災証明の発行 (全壊・大規模半壊・半壊等) 各種被災者支援策の適用 (建物所有者が民間建築士等に依頼) 再調査の申請 被災後 数ヶ月 住家の被害認定 被災度区分判定 (2次判定) 【市町村】 【民間建築士等】 復旧不要 復旧 不可能 要復旧 り災証明の発行 各種被災者支援策の適用 補修等の適否の判定 継続使用 ※期間は大体の目安を示したものであり、実際は 災害の規模等によって変動。 解体・撤去 建築物被害調査の比較 名 称 被災建築物応急危険度判定 被災度区分判定 住家の被害認定 実施時期 地震直後~2週間程度 地震後3ヶ月~半年 地震後1ヶ月~数ヶ月 実施主体 市町村が実施(都道府県・応急危険度判 定協議会が支援) 建物所有者 市町村 判定調査員 応急危険度判定士(行政又は民間建築士 等) 民間建築士等 主に行政職員( 「り災証明書」発行は行 政職員のみ) 目的 余震等による被災建築物の倒壊、部材の 落下等から生ずる二次災害を防止 被災建築物の適切かつ速やか な復旧 住家に係る「り災証明書」の発行、資 産的な被害程度を調査 運用基準等 ○○県被災建築物応急危険度判定要綱 被災度区分判定基準 災害の被害認定基準 災害に係る住家被害認定基準運用指針 判定内容 当面の使用の可否 継続使用のための復旧の要否 住家の損害割合(経済的被害の割合) の算出 判定区分 赤「危険」 、黄「要注意」 、青「調査済」 「要復旧」 、 「復旧不可能」等 「全壊」 、 「大規模半壊」 、 「半壊」 、 「半 壊に至らない」 判定結果の表示 建物に判定結果を示したステッカーを貼 付 判定結果を依頼主に通知 判定結果を記載した「り災証明書」を 被災者に発行 被災度区分判定 兵庫県南部地震では、建築物が公的資産により撤去されましたが、復旧可能な建築物も含まれていたため、地域の 復興を阻害したとの指摘がありました。その反省を踏まえ応急危険度判定の次段階として、被災建築物の主に構造躯 体に関する被災度の把握と、継続使用のための復旧の要否判定を目的とした「被災度区分判定」があります。 (1)主な判定対象建築物 (3)復旧手順 応急危険度判定は外観調査を主体とし地震直 大地震による建築物被害の発生 後に短時間で行われるため、 後に時間をかけて被 応急危険度判定 害調査を実施した場合、 判定結果が異なることが 調査済(緑) 考えられます。そのため、応急危険度判定により 要注意(黄) 「危険」あるいは「要注意」と判定された建築物 危険(赤) 応急措置 に限らず、 「調査済み」と判定された建築物につ 被災度区分判定基準の適用 いても原則実施します。 明らかに 復旧不可能 被災度の区分 (2)判定実施者 復旧の要否の判定 被災度区分判定は、 構造躯体に見られる損傷状 況から被災建築物に残存する耐震性能を推定し、 復旧不要 要復旧 復旧不可能 継続使用のための復旧の要否とその程度を判定 するため、 建築構造に関する専門知識が要求され 復旧技術指針の適用 ます。そのため、原則として、所定の講習を受け 復旧計画 た建築士事務所等の建築構造技術者 (1級建築士、 補修・補強の適否の判 定 2級建築士及び木造建築士等) が判定を行います。 否 適 なお、 応急危険度判定はボランティアで行うの に対し、被災度区分判定及び復旧計画の作成は、 補修 補強 建築士事務所が被災者の依頼を受け、 一定の費用 継続使用 を要します。 解体・撤去 「被災建築物の被災度区分判定基準および復旧技術指針」 (財)日本建築防災協会より抜粋 住家の被害認定 余震等による被災建築物の倒壊等の二次災害防止を目的とする「応急危険度判定」に対して、 「住家の被害認定」 は、災害時の被害状況の把握と、市町村が「り災証明」を発行する判断材料になります。 「り災証明」は被害程度の 証明であり、どのような被災者支援を受けられるかが決まります。 (1)り災証明書に基づく被災者支援策 通常、り災証明書を添付等要する支援策は次のとおりです。 なお、申請手続き、申請期限及び必要項目等がそれぞれ違います。 ■生活を再建するための支援金給付(被災者生活再建支援法) ■生活立て直しに資するため災害援護資金の貸付(災害弔慰金の支給等に関する法律) ■住宅の応急修理・応急仮設住宅の設置等(災害救助法) (2)住家の被害の程度と被害認定基準 住家の被害の程度は、 「全壊」 、 「大規模半壊」 、 「半壊」又は「半壊に至らない」の4区分あります。被害認定は、 「災害の被害認定基準」等に基づき、市町村が①又は②のいずれかよって行います。 半壊 全壊 大規模半壊 その他 ①損壊基準判定 住家の損壊、焼失、流失した部分の床面 積の延床面積に占める損壊割合 70%以上 50%以上 70%未満 20%以上 50%未満 ②損害基準判定 住家の主要な構成要素の経済的被害の住 家全体に占める損害割合 50%以上 40%以上 50%未満 20%以上 40%未満 (3)災害に係る住家の被害認定基準運用指針 「災害に係る住家の被害認定基準運用指針」は、上記「②損害基準判定(経済的被害) 」で判定する場合の具体的 な調査方法や判定方法を示しています。 ①適用範囲 【想定している住家被害】 地震力が作用することによる住家の損傷 地震に伴う液状化等の地盤被害による住家の損傷 被害認定の流れ(地震による被害 木造・プレハブ) ②調査方法 【第1次調査】判定対象部位:屋根、壁(外壁)、基礎 第1次調査は、外観目視調査 により行います。 第2次調査は、 第1次調査を実施した住家の被 (1)外観による判定 ①一見して住家全部が倒壊 ②一見して住家の一部の階が全部倒壊 ③地盤の液状化等により基礎のいずれかの辺が全部破壊 災者から申請があった場合に実 施し、原則、申請者の立会いを (2)傾斜による判定 いずれにも 該当しない 該当 外壁又は柱の傾斜が 1/20 以上 必要とし、内部立入調査を行い (3)部位による判定 ます。 いずれか に該当 全壊 (損害割合 50%以上) 該当しない 該当 基礎の損傷率が 75%以上 該当しない ③応急危険度判定との関係 外観による判定をする際、応 急危険度判定結果を参考と して行う場合もあります。 応急危険度判定において次 のア又はイに該当すること により、 「一見して危険」と 判定 ⇒被害認定「全壊」 ア.建築物全体又は一部の 崩壊・落階 イ.建築物全体又は一部の 著しい傾斜 市町村が被害認定調査の方 針を決める際に、応急危険度 の判定結果を参考にします。 50%以上 各部位の損傷程度等(及び傾 斜)から住家の損傷割合を算 定する。 住家の損害割合 全壊 40%以上 50%未満 大規模半壊 20%以上 40%未満 半壊 半壊に 至らない 20%未満 被災者から申請があった場合 【第 2 次調査】判定対象部位:屋根、柱、床、外壁、内壁、天井、建具、基礎、設備 (1)外観による判定 ①一見して住家全部が倒壊 ②一見して住家の一部の階が全部倒壊 ③地盤の液状化等により基礎のいずれかの辺が全部破壊 (2)傾斜による判定 いずれにも 該当しない いずれか に該当 該当 外壁又は柱の傾斜が 1/20 以上 (3)部位による判定 該当しない 全壊 (損害割合 50%以上) いずれか に該当 基礎又は柱(又は耐力壁)の損傷率が 75%以上 該当しない ※ 地盤に係る住家の被害認定に ついては、東日本大震災におけ る地盤の液状化による被害の現 状を踏まえた調査・判定方法が、 平成23年5月に内閣府(防災担 当)から示されています。 50%以上 各部位の損傷程度等(及び傾 斜)から住家の損傷割合を算 定する。 住家の損害割合 全壊 40%以上 50%未満 大規模半壊 20%以上 40%未満 半壊 20%未満 半壊に 至らない 【被災者から不服の申立てがあった場合の対応】 被災者の不服の内容を精査した上で、必要に応じて再調査を実 施 「災害に係る住家被害認定基準運用指針(平成 21 年 6 月改定) 」内閣府防災担当より抜粋 【出典・参考文献】 「震災建築物の被災度区分判定基準および復旧技術指針」 (財)日本建築防災協会 「災害に係る住家被害認定基準運用指針(平成21年6月改定) 」内閣府防災担当 災害に係る住家の被害認定関係資料:内閣府防災情報ページ USL http://www.bousai.go.jp/hou/unyou.html 情報コーナー ○被災建築物応急危険度判定士登録者数の状況及び登録について 判定士の皆様には、東日本大震災の被災建築物応急危険度 現在、登録されている応急危険度判定士の方には制度をご 判定活動に、ご支援をいただき、ありがとうございました。 理解いただき、確実に更新していただくとともに、職場等に 現在、被災建築物応急危険度判定士の登録者数は全国で おいて、判定士未登録の方に対して積極的な登録の呼びかけ 100,912 名(平成 22年度末現在)となっています。これ は、協議会が当初目標とした 10 万名には達しましたが、こ こ 10 年は、横這いの状況です。 等をお願いいたします。 応急危険度判定活動は社会資産である建築物の建設に携 わってきた建築技術者にとって、ボランティアとして社会貢 今後も、東海・東南海・南海地震や首都直下型地震等の大 献することができるきわめて有意義な活動であることをご理 規模地震発生の切迫性が指摘され、発生の際に迅速な判定活 解のうえ、 皆様方のご協力のほど、 宜しくお願いいたします。 動を実施するには、建築士の方のご協力が必要となります。 ○ホームページのご紹介 全国被災建築物応急危 険度判定協議会では住民 応急危険度判定マニュアルの解説と判定活動の流れが解るビ の方、判定士の方、行政 デオも掲載しております。是非ご覧ください。 http://www.kenchiku-bosai.or.jp/oq/oqindex40.html 庁関係者に向けて情報発 OQ通信第 14 号作成委員 信のためのホームページ 主 査 委 員 を開設しています。応急 危険度判定制度の概要か ら協議会の構成、過去の 判定活動報告、OQ 通信 バックナンバーなど応急 危険度判定を知る上で有 益なコンテンツを揃えて おります。 http://www.kenchiku-bosai.or.jp/oq/ また、応急危険度判定内容と判定技術の平準化を図るため、 香川 政治 香川県土木部建築課建築指導室主任 高橋 政幸 神奈川県県土整備局建築安全課副主幹 横田 麻琴 新潟県土木部都市局建築住宅課技師 大迫慎太郎 三重県県土整備部建築開発室技師 森田 茂雄 山口県土木建築部建築指導課技師 市丸 雄基 佐賀県県土づくり本部建築住宅課副主査 森口 泰仁 国土交通省住宅局建築物防災対策室係長 木村 行道 (社)日本建築士会連合会事務局長 オブザーバー 佐藤 隆雄 青森県県土整備部建築住宅課主幹 廣中 勝之 岩手県県土整備部建築住宅課主任 富樫 智史 宮城県土木部建築宅地課技師 鈴木 秀俊 福島県土木部建築指導課専門建築技師 助川 智洋 茨城県土木部都市局建築指導課技師 事務局 (財)日本建築防災協会