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基調講演・要約(PDF:469KB)
松江市男女共同参画センター情報誌 プリエール 2013.3 編集・発行 松江市男女共同参画センター 「企業経営とポジティブ・アクションを考えるシンポジウム ~明日の経済を担う女性たち・女性の活躍で活力ある職場を創る~ 急速な尐子・高齢化の進行により、人口減尐社会に突入した現在、多様な人材が活躍し、その能力をいかんなく発揮できる 環境の整備は、これまで以上に重要な課題となっています。特に意欲と能力のある女性が活躍できる職場づくりのためには、 ポジティブ・アクション及びワークライフバランスの取り組みが不可欠です。 平成 25 年 1 月 22 日(火)に、島根労働局、 (財)21 世紀職業財団、松江市の主催により、企業における取組促進を図ること を目的としてシンポジウムを開催しました。 ◇基調講演 「経営戦略としてのダイバーシティマネジメント-女性の活躍により企業を活性化する-」 講師(財)21 世紀職業財団会長 岩田 喜美枝 1 なぜ、ダイバーシティ経営が必要か 一つは、 「人材の完全活用」です。人というのは、特別 な経営資源であり、つきつめていけば、 『会社=人』です。 ダイバーシティマネジメントとは、すべての人たちが能力を 十分発揮することができるということです。 もう一つは、 「人材の多様性を企業の力にする」です。 その意味を3つに分けて整理します。 ①「市場の理解」市場を構成しているのは、多様な人 たちですから、意図的にそれを映したように社員の構成 も多様であった方が、より市場のニーズを理解できる ということです。女性の活躍によって、女性のニーズに気付き、新たな企業のチャンスになります。 ②「変化への対応」モノカルチャーな組織の場合、環境の変化への対応が難しい状況があります。 ③「新たな価値創造の決め手」多様な人材で成り立つ組織は、様々な価値観・能力がありますので、新た な価値が生まれます。 以上から、社員の多様性は、企業の力になる、活力になる、エネルギーになると考えます。 そして最近は、女性が活躍することが新しい価値を生み出し企業を活性化させる、あるいは、企業の集合 体である産業界全体を再生させるという決め手にしたいという議論がされています。 2 ダイバーシティ経営推進のために取り組むべき課題 多くの企業が抱えている課題は、「女性社員のエンパワーメント」と社員一人ひとりの個性化「ワークラ イフバランス」の 2 つです。 (1)女性社員のエンパワーメント エンパワーメントとは、女性社員に実力をつける、女性社員を育成・登用するということです。 ㈱資生堂では、1990 年ごろから女性社員の活躍を願い、まず「両立支援策」に取り組みました。 先進的な事例として、2003 年に「カンガルーム汐留」 (事業所内保育施設)を開設しました。2005 年に 「2 週間 100%の育児休業(有給) 」を導入。育児休業を 2 週間だけ有給にし、男性社員の取得促進を図りま した。2007 年「カンガルースタッフ体制」を導入。店頭業務は、夕方からお客様が多くなり、育児時間の 取得が難しかったことから、美容職社員(店頭)を対象とした育児時間取得支援のための代替要員体制がス タートしています。 1 そして、これらの制度は、多くの社員に利用されています。制度はあるだけでなく、利用されることが大 事です。利用されるために大事なことは2つあります。「会社が本気で女性社員に対して出産後復帰をして 活躍してほしいと考え、女性社員に伝わっていること」と「女性社員が仕事で頑張りたいと思っている」と いうことです。出産までに仕事の醍醐味・達成感を経験することが必要です。 ○ これからめざすこと これまでの両立支援策を利用する大半は女性社員で、そのほとんどが「育児期に『普通に仕事をすること』 を免除すること」でした。20 代後半から 30 代の中堅社員として活躍する時期に仕事を免除することで、仕 事体験に男女に差がつき、男女間の能力差を生じるということに気付きました。 そこで、これからは、 「仕事を免除する両立支援策」から「育児をしながら『普通に仕事をする』ことを 支援すること(両立支援策)」にシフトすべきだと考えます。例えば、事業所内託児施設やベビーシッター の費用助成やフレックスタイムや在宅勤務など、女性が子育てしながら働くことを支援することにシフトす べきだを考えています。 ○ 女性の活躍の3段階 女性の活躍を 3 段階で表すと、第 1 段階「女性は子どもができたら退職が当たり前」、第 2 段階「女性は かろうじて仕事と子育てを両立」 、第 3 段階「男女ともに子どもを育てながらしっかりキャリアアップ」と なります。 現在、第 1 段階から第 2 段階へ努力をしている企業が全国的に多いです。第 1 段階から第 2 段階へは、仕 事を免除する両立支援策で進みます。そして、第 3 段階へは、「ワークライフバランス実現のための全社員 の働き方の見直し」と「ポジティブ・アクション」に取り組むことが必要です。 ○ ポジティブ・アクション ポジティブ・アクションの本質は、 「実際の男女間格差を早く縮小させるための具体的な取り組みを考え、 実行すること」であると考えます。例えば、管理職が部下を評価する「評価基準」を具体化することや、女 性が夜勤をするようになったとき、治安の問題から社員用の駐車場に照明を設置することなどもポジティ ブ・アクションです。ポジティブ・アクションは非常に広いコンセプトです。その中で、「女性優遇」とし て、しばしば問題になるのが「クォータ制」です。これは、性別を基準に一定の人数や比率を割り当てる手 法です。 ノルウェーでは、 上場企業の取締役の 4 割以上を女性にするということが法律で定められています。 これを達成しないと、「上場廃止」というペナルティを課されます。このクォータ制は、女性優遇を伴う場 合があります。 そこで私は、「ゴール・アンド・タイムテーブル方式(女性の参画拡大に関する一定目標と達成までの期 間の目安を示してその実現に努力する手法)」を推奨しています。この方式の下で、企業が幹部候補生を選 抜して研修するとき、女性枠や女性割合を定める女性優遇は良いと思います。しかし、評価や管理職への登 用の局面では、女性優遇をすべきではないと思っています。 各社がその身の丈にあった目標を設定し、それに向かって女性の育成を急ぐということが必要であると考 えます。 ㈱資生堂では、 「資生堂第3次男女共同参画アクションプラン」で、国内グループのリーダーに占める女 性比率の目標値を 2013 年度末までに 30%以上に設定しています。 具体的には、30%目標値を達成するために必要な女性の管理職の人数を計算し、その 3 倍の育成計画を人 事部とその上司が作成します。それは、今のポストでどんな仕事をやらせるか、そして、達成のためにどん な支援をするかということ(OJT)です。そして、違う仕事(業務)に異動することで成長につながること 2 松江市男女共同参画センター情報誌 プリエール 2013.3 編集・発行 松江市男女共同参画センター から、次はいつどこへ異動させるかついて方針を決めます。なお、異動の中でも転勤については、一人ひと り慎重に、その人をいかに本気で育成したいか、その人が置かれている家庭責任の重さと両方をみて、異動 先の場所やポスト、タイミングなど、丁寧に考えていくべきだと考えています。 (2)全社員の個性化-ワークライフバランス 私の定義は、 「仕事」と「それ以外の生活」 、ワークとライフの両方について、個人が希望し会社が許容で きる範囲内でバランスをとり充実させるために「働き方を改革する」ということです。人によって、あるい は同じ人でもライフステージによって、バランスは異なります。ワークライフバランスとは、今よりももっ と生産性の高い働き方をするということ、社員にも今以上に厳しいことを求めるということです。そして、 短時間勤務や育児休業はノーワーク・ノーペイの原則で制度化されているのでコストがかかるものではあり ません。 ○ ダイバーシティ経営の実現方法 ダイバーシティ経営の実現方法は、 「社員の構成を多様化(性別、年齢、国籍等、多様な属性を持つ社員 を採用・登用)する」ことと、全社員の働き方を見直すことで「社員一人ひとりを個性化する」ことがあり ます。ワークライフバランスで個人生活の時間を創出し、家庭・地域・社会などの多様な価値観に触れるこ とで、社員の個性化が生まれます。そして、そこで様々な人的ネットワークや価値観を身に付け、会社で仕 事に生かす。これが、仕事の価値創造力をつける・競争力を高めるということに繋がります。 ○ ワークライフバランスの実現方法 一つは、労働時間を短縮すること、二つ目は、フレックス、在宅労働など、労働の柔軟化をすることです。 労働時間の短縮のためには、①業務の廃止②業務プロセスの簡素化③仕事の配分や社員の配置の見直し④社 員の時間意識・タイムマネジメント力の強化⑤社員一人ひとりの能力アップ(人材育成)を併せて行う必要 があります。 また、ワークライフバランスを推進するためには、人の評価に対して基本的に考え方を変える必要があり ます。今の評価システム(目標管理制度)は、長時間労働者に有利な制度となっています。ですから、私が 推奨するのは、1 時間当たりの成果で評価すべきであると思います。そうでないと、介護や育児で時間的な 制約のある人は、能力があっても評価されにくいという現状は変わらないということです。 ○ これからめざすこと 「長く働く」のではなく、時間当たりの生産性を上げることです。 3 ◇パネルディスカッション 「女性の活躍のために企業ができること」 コーディネーター 岩田 喜美枝 パネリスト 株式会社出雲村田製作所人事課長 足立 仁志 氏 株式会社一畑百貨店総務人事課長 石原 誠 氏 株式会社山陰合同銀行地域振興部(元くにびき出張所長) 角田 順子 内 氏 容 Ⅰ各企業のポジティブ・アクションの取り組みについて Ⅱポジティブ・アクションの取り組み過程で直面した問題点や具体的な克服方法等について Ⅲ働く女性への期待とこれから取り組む企業へのアドバイス 〔参考となる資料〕 ○ポジティブ・アクション情報ポータルサイト(厚生労働省) http://www.positiveaction.jp/pa/index.php ○(財)21 世紀職業財団ホームページ http://www.jiwe.or.jp/ ○松江市ホームページ(男女共同参画課 事業者の方へ各種制度のお知らせ) http://www1.city.matsue.shimane.jp/kurashi/danjo/danjo/danjo-jigyousha-seido.html 松江市市民部男女共同参画課 〒690-0061 島根県松江市白潟本町 43 番地 TEL0852-32-1196 FAX0852-32-1191 Mail [email protected] 4