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Nash 均衡の計算複雑度について

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Nash 均衡の計算複雑度について
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Nash均衡の計算複雑度について
田中, 嘉浩
經濟學研究 = Economic Studies, 59(4): 9-15
2010-03-11
DOI
Doc URL
http://hdl.handle.net/2115/42773
Right
Type
bulletin (article)
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ES59-4_002.pdf
Instructions for use
Hokkaido University Collection of Scholarly and Academic Papers : HUSCAP
経済学研究
北海道大学
59−4
2010.3
Nash 均衡の計算複雑度について
田
1
中
はじめに
von Neumann and Morgenstern[27]によっ
嘉
浩
2
計算量の理論の発展
2.1
定
義
て 1944 年に 著 さ れ た名 著 Theory of Games
Turing[25]が Turing マ シ ン を 提 案 し ,
and Economic Behavior を嚆 矢とする ゲーム
Church に より 計算 可能 とい う概 念が 1936 年
理論 に於いて , 1950 年に Nash[18]が導 入し
に定義されて以来,先ず「何が計算可能か?」と
た重 要概念であ る Nash 均衡の 計算が「 効率的
いうこ とが問題 にされ, Cantor によっ て実数
解 法 」を持 た ず , 従来 の NP 完 全 と 違っ た ,
が有理数と違って不可算であることを示すこと
PPAD 完全というクラスの問題に属するという
に用いられた対角線論 法による Turing マシン
結果を,Daskalakis, Goldberg and Papadimi-
の停止判定問題が計算不可能であることの証明
triou 等は国際計算機学会(ACM)のCommuni-
[25]等 の理論 的結果 が初期 の段階 で得ら れて
cations of the ACM 誌 2009 年 2 月号に掲載さ
いる。
れた論文[8]“The complexity of computing
それ以降は「効率的解法」に関する研究から計
a Nash equilibrium” で彼等 自身 の研究 を中
算 複 雑 度 に 関 す る 理 論 が , 特 に 1971 年 の
心に紹介した。
Cook の 充 足 可 能 性 判 定 問 題(Satisfiability;
更に ,21 世紀に 解決さ れるべき 数学の 7大
SAT)が NP 完全問題に属することの証明[7],
未解決問題(ミレニアム懸賞問題)の一角である
Karp[14]によ る 多 項式 時 間 帰着 可 能 によ る
Poincaré 予 想が 2002∼2003 年に Perelman に
NP 完全の証明法を嚆矢にして 大きく発展して
よって解決されたからかどうか分らないが,未
きた。
解決問題を含む計算量に関する話題が最近脚光
簡単 に説明 すると , クラス P と は多項 式時
を 浴 び つ つ あ る 。 Communications of the
間アルゴリズムで判定できる問題の集合であり,
ACM 誌 2009 年 9 月号に Fortnow 氏によるサー
クラス NP とはインスタンスが与えられた時に
ベイ 論文[11]“ The status of the P versus
YES で あるこ とを多 項式時 間で判 定でき る判
NP problem”が出て以来大変な反響を受けて
定問 題の 集合で ある 。 判定問 題 B 頴 NP は,
おり, それを受け て更に一般紙 でも The New
NP に属する他の全ての問題が B に多項式変換
York Times 紙(10 月 7 日)に一般向けに的を得
可 能な時 に NP 完 全(NP Complete)とい う。
た解説が為されている。
NP 完全問題は その定義から クラス NP の中で
本稿では計算量に関する概念や最近の研究を
概観し,多くの重要な応用を持つ Nash 均衡の
最も難しい部類の問題である。
クラス P に属する代表的な問題を示す。
計算量に関する論文[8]の結果を示す。
・素数判定問題
10(564)
経 済
学 研 究
59−4
この問題は多項式時間で効率的に判定できるこ
変数の数が増大するにつれて計算量の爆発が起
とが保証されている。判定問題ではないが,
き,どんなにコンピュータのハード面が進歩し
・ソーティング
ようが大きなサイズの問題は急に解けなくなる。
・最小木問題
P= NP ? 問題が 21 世紀に解決されるべき数学
・辺数最大マッチング問題
の未解決問題の1つとして解決を嘱望されてい
・最大フロー問題
る所以である。
・行列の積や連立一次方程式
最適 化問 題若 しく は判 定問題 B 頴 NP は,
NP に属する他の全ての問題が B に多項式変換
・割当問題
・線形計画問題
可能な時 に NP 困 難という。 NP 困難 問題はそ
等の探索問題は多項式時間のアルゴリズムが知
の定義からクラス NP の中で最も難しい問題と
られている。辺数最大マッチング問題はこの中
少なくとも同程度に難しい同等である。整数計
では特殊な問題だが,親しい者同士が分ってい
画問題や巡回セールスマン問題(TSP)は NP 困
る 集団で ペア の組 み方を 考え る問 題で あり,
難であるが,相転移のイジングモデルの基底状
Edmonds[10]が 1965 年に 効率 的な 多項 式時
態を見つける問題等も NP 困難として知られて
間アルゴリズムを考えている。なお,最小木問
いる。
題の様に マトロイド(matroid)とい う特定の構
造をもつ問題は貪欲算法によって効率的に解け
ることが分っている。
ところで,線形計画問題(の許容解の判定)や
2.2
P 莞 NP への試み
Razborov[21]は 1985 年に 回路 計算 量 に関
して, 大きなクリーク問題 を解く,NOT ゲー
素数 判定問題 は, YES に対す る問題 も NO に
トを 含まない AND と OR からな る小さな(単
対する問題もどちらも多項式時間で判定でき,
調)回 路が存在しないこ とを示し, 回路を一般
良い特徴付けを もつ(NP 瓦 coNP に属する)ク
化 して P 莞 NP の証明 とな るこ とが 期待 され
ラスの問題であることが分っている。このクラ
たが,後に NOT ゲートを含めば旨く行かない
スの問 題で線形計画問 題が 1979 年に, 素数判
こと等が彼等自身の研究で示されている。
定 問 題 が 2004 年 に 多 項 式 時 間 アル ゴ リ ズ ム
トートロジーかどうかを判定する問題が NO
[1]が 発見さ れたこ とは興 味深い が, P=(NP
となる為には,そういうインスタンスを代入す
瓦 coNP)? 問題は未解決問題である。
れば 分るが ,YES となる 為には すべての イン
NP 完全に属する代表的な問題を示す。
スタンスを考えることになる。導出(resolution)
・充足可能性判定問題(SAT)
はトートロジーを証明する標準的な方法だが,
・点カバー問題(Vertex Cover)
1985 年に Haken は鳩巣原理を表すトートロジー
・Hamilton 閉路問題(Hamilton Circuit)
を短い導出法で示せないことを示した。しかし
・クリーク問題(Clique)
なが ら, こ の結 果は P 莞 NP を示す のに 必要
・ 3 次元マッチング問題( 3 DM)
であるが,十分ではない。
・分割問題(Partition)
定義から NP 完全に属する問題のどれか1つに
2.3
困難の扱い
でも多項式時間 アルゴリズムがあれば,NP の
NP 完全 の問題を実際に解かなければならな
すべての問題が多項式時間で判定できることに
い場 合, 仮 に P 莞 NP な らば そうい う方 法論
なるが,現在のところそういうアルゴリズムは
が本流になるが,幾つかのアプローチが知られ
発見されておらず,寧ろ存在しないと信じられ
ている。
ている。多項式アルゴリズムが存在しなければ
先ず最適に近い近似解を求める近似アルゴリ
2010.3
Nash 均衡の計算複雑度について 田中
ズムを考える試みが為されており,例えば,最
11(565 )
いる。
大 重 み カ ット 問 題( NP 困 難 )で は Goemans
and Williamson[13]は半正定値計画を用いて
定 理2 cf.[2] 最大 クリ ーク 問題 は P 莞 NP
1.139-近似アル ゴリズム(但し, k -近似 アルゴ
ならば APX を持たない。
リズムとは,最小化問題(最大化問題)では最適
1
解の k 倍以 下( k 倍 以上 )の解 を多 項式時 間で
一方,分割問題から生じる最小 2 分割問題には
求めるアルゴリズム)を得ている。
PTAS が存在することが知られている。
■
2.4 節に関連 するが,近 似率 k 噂 1 が定数で
ある時 にその様な 近似アルゴ リズムは APX,
更に, 任意の å 瓜 0 に 対して k 厩 1茨å とでき
2.5
P 莞 NP ? の応用
P = NP ならば計算量の爆発の為に解けない
でいた多くの重要な問題が一気に高速に解ける
る時に PTAS と定義されている。
巡回セールスマ ン問題(NP 困難 )で辺長を地
様になり,人類は大きな恩恵を受けることは間
図 上の 距離 で与 え る時(Euclidean TSP), 三
違いない。しかしながら,P 莞 NP がもっとも
角不等式が成立するので近似可能と知られてい
らしいと思われているが,だからこそ,計算の
るが,Arora[3]は平 面の再帰的分割に基いた
困難性は積極的に応用されている。
PTAS を与えている。
暗号,特に日常的に認証や電子署名で良く使
計算量の理論では通常は最悪時間を問題にす
われる公開鍵暗号では,P 莞 NP を仮定して成
るが,平均時間を扱えればより実態に合ってい
立しているのだが,それだけではなく,素因数
ることも多いが,Levin[15]は特定の確率分布
分解の平均複雑度に関する仮定も必要である。
を考えて P = NP ? 問題の確率版を定義してい
そこで公開鍵でなく ,例えば認証では,NP 完
るが, NP 完全が最悪時間 で成立する時に平均
全問題を用いて,証明者がその解を知っている
時間でも成立するかどうかは未解決問題である。
ことを検証者にゼロ知識証明で分らせる,とい
う様な応用を考えることができる。
2.4
対話的証明と近似不可能性
問題 A に対して, 任意の 解 x をその 全ての
ビッ トで はなく , 入力の ビッ ト数を n と して
長さ r廓n 較の 乱数を 用いて , q廓n 較個のラ ンダ
2.6
量子コンピュータと NP完全問題
素数判定 問題は 2004 年に 多項式時間 アルゴ
リズム[1]が発見されたが,合成数の素因数分
ムビットを用いて検証することを考える。x が
解の効率的なアルゴリズムはまだ知られておら
真 に YES の時 に x を YES と判 断す る確 率が
1 であり , x が 真に NO の時 に x を NO と判
ず,現代暗号は素因数分解等の問題の困難さに
断す る確率が
1
2
以上 であるとき に,問 題 A は
PCP 廓r廓n 較, q 廓n 較較に属するという。
基いて成立しているものである。
Shor[24]は 1997 年に 素 因数 問 題や 離散 対
数問題を効率的に解く仮想的な量子コンピュー
タを提案したが,ハードでの実現を目指した研
究方向も進んでいる。
次の定理が成立する。
しかしながら,素因数問題も離散対数問題も
定理1(PCP 定理)
[2] NP = PCP(log n,1)
■
NP 完全 問題 より は易 しい クラ スであ り, NP
完全問題を量子コンピュータだけで効率的に解
けるとは思われていない。
PCP 定理を 用いて クリー ク問題 から生 じる
最大クリーク問題に対して次の結果が得られて
12(566)
2.7
経 済
更なる方向性
学 研 究
59−4
となる」
問題を 1 ステップで解く概念上の装置をオラ
ク ル(oracle)とい うが ,Baker, Gill and Solovay[5]はオラ クル付きのチューリ ングマシン
時に 混 合戦略 の組 廓s1 , s 2, 且, si , 且, s n 較を 均衡
(Nash 均衡)と定義し,
「混合戦 略の範囲で少 なくとも1つ は均衡点
を考えることにより,P と NP が等しくなる様
が存在する」
に も P と NP が等 しく なら ない 様に も相 対化
ことを,角谷の不動点定理を用いて証明した。
(relativize)で きる こと を示し た。 停 止問 題が
しかしながら非ゼロ和対称2人ゲームでさえ,
計算不可能である証明に用いられた対角線論法,
Nash 均衡が2つ以上 あるかどうか判定するの
ひいては集合論的方法は相対化を利用しそうな
は NP 完全問題 であることが分っている[12]。
ので P = NP ? 解決に無力と思われている。
Razborov and Rudich[22]は “ natural ”
という概念を提案し,
NASH: 混合 戦略の範 囲で Nash 均 衡を1
つ求めよ。
「一般の(単調でない )回路に対する 超多項式
下界は,暗号の様に逆関数の計算が困難な一方
と 定 義 す る 。 NASH は , ゼ ロ 和 ゲ ー ム で は
向性関数の存在の仮定の下で,“natural proof”
1920 年 代に von Neumann によっ て線形 計画
は存在しない」という結果を得ている。
に定式化できることが示されているので高速に
Mulmuley and Sohoni[17]は 幾 何 学 的 計
解ける。しかしながら,非ゼロ和(双行列)ゲー
算 量 の 理 論(Geometric Complexity Theory;
ムでは Lemke-Howson のアルゴリ ズムがある
GCT)を 用いて P = NP ?を扱 う方法 を提 案し
ものの, 多項式時間アルゴリ ズムではない
ている。彼等は或る代数的変数上での群表現に
[23]こと が知ら れてお り, 効率的 な解法 が知
基い た高次元 多面体 Pn を考 え, もし全て の n
られていない。そこで効率的な解法の探求と共
に対して Pn が整数点を含 むならば,入 力 n の
に,その計算量に関する研究が進展してきた。
Hamilton 路が 多 項 式で な い O廓n
log n
較下界 を
持つことが示され,P 莞 NP となることを示し
3.2
全探索問題
ている。彼等自身は理論の完成には 100 年掛か
第2節では判定問題に対するクラスを紹介し
ると言っているが,代数幾何を用いる方法は有
たが,探索問題,しかも必ず解を持つ探索問題
望視されている。
には,単に NP 完全を探索問題に拡張した FNP
や 必ず 解を 持つ 探索 問題 に拡 張し た TFNP だ
3
Nash 均衡の計算複雑度
けではない,より細かいクラスを考えれる。
「有向グ ラフで入次数 と出次数の違 う点があ
3.1 背
景
れば,必ずもう1つそういう点がある」
von Neumann 等 によ って 1940 年 代に 創始
という事実を用いて解の存在を示し,正確には
されたゲーム理論は経済学だけでなく政治学,
も う 1つ の 点 を求 め る 線終 端 問 題(END OF
行動科学等重要な応用を持っている。
THE LINE)に 帰着 さ れ る 全て の 探 索問 題 は
Nash[18]は非ゼロ和非協力ゲームに於いて,
プ レ イヤ ー i, i 頴 格1, 且, n隔の 混 合 戦略 を si ,
利得関数を fi とする時に,
「各プ レイヤー i に対 して, 他のどの プレイ
ヤーも混合戦略を変える動機がない,即ち,
袷
E拡fi廓s1, s2, 且, si, 且, sn 較
郭噂 E拡fi廓s1, s2, 且, si , 且, sn 較
郭
PPAD
(Polynomial Parity Argument in a Directed graph)と定義 される。 PPAD は 完全問
題を 持つ ことが 分って おり, そ れを PPAD 完
全という。
PPADは FP と FNP の間にある複雑度の問題
であるが,実験結果からは効率的なアルゴリズ
2010.3
Nash 均衡の計算複雑度について 田中
13(567 )
ムはないと信じられている。
の確率(混合戦略)を表す変数と媒介プレイヤー
3.3
への利得を考えることによって実現される。各
3
点 x 頴 拡0,1 郭 を 3 人 プレイ ヤー X1, X2, X3 の
Nash 均衡と PPAD
Daskalakis, Goldberg and Papadimitriou
“go”の確率を並べた点と考える。Nash 均衡
[8]は次の結果を示している。この節の定理自
点 廓y 1 , y2 , y 3 較で 終 わ る 様に X1 , X2 , X3 に 利
体 は前 に Papadimitriou[19]によ って 単 独に
得を与えることにより,BROUWER を 3 人ゲー
得られているが,別証明の[8]のアイディアを
ムの NASH で計算できる様に構成できる。よっ
示す。
て定理 3 は証明された。
定理 3[8] NASHは PPAD 完全である。
■
3.4
近似計算について
Nash 均衡を効率的に解 くアルゴリズムは知
これを証明する為に彼等は間に次の不動点を
られておらず,幾つかの近似アルゴリズムが考
えられて いる。近似 アルゴリズムに於 いて,±
近似 Nash 均衡とは各々の戦略が ± 近似最適反
求める問題を考えている。
m
BROUWER:リ プシ ッツ連 続関 数 F: 拡0,1郭
応戦略であることを言う。
m
臆 拡0,1 郭 に対 して, 精度 å 瓜 0 が 与えら れた
m
時 に d廓F廓x 較, x較閏 å を 満た す x 頴 拡0,1 郭 を
NASH の 近 似 ア ル ゴ リ ズ ム は 例 え ば
Daskalakis, Mehta and Papadimitriou[9]
求めよ。
によ る多項 式時間 0.38 近似 アルゴ リズム が得
られており,APX が存在するとは言える。
BROUWER が PPAD であることが,三角分割,
色 付け , 等の 手法 により Sperner の 補題 を用
いて, BROUWER が線終端問題(PPAD 完全)
に帰着されることから示されている。
NASH が BROUWER に帰着されることは,
均衡点でなければ,現戦略を他戦略に変えよう
NASH の 近 似 ア ル ゴ リ ズ ム で , 任 意 の
å 瓜 0 に 対 し て は , Lipton, Markakis and
Mehta[16]は n 人ゲー ムに対して準 指数時間
2
O廓nl og n 慰å 較の近 似ア ルゴ リズ ムを 提案 し てい
る。しかしながら,PTAS が存在するかどうか
はまだ未解決問題である。
とする不満足なプレーヤーが存在するので戦略
から戦略への選好関数を構成することで示せる。
4
終わりに
これで NASH が PPADであることは示された。
次に, NASH を クラス PPADで完全 である
Nash 均衡解の計算はゼ ロ和2人ゲームの場
ことを示す為に,線終端問題のグラフを対応す
合でさえ,戦略数が非常に多く,混合戦略の空
るゲームに変換する。まず,線終端問題のグラ
3
フ を 拡0,1郭 に 埋め 込 む こと で BROUWER に
変換できることから次の定理が成立する。
間次元が高くなって扱いにくい問題があるが,
∼
Pena[20]はその混合戦略の単体に対して知ら
れ てい る近接 関数(prox-function)を 用い て滑
らかな問題にしてから非線形計画の手法である
定理 4[8] BROUWERは PPAD 完全である。
■
勾配法を適用する提案やポーカーへの応用を示
している,
Papadimitriou[19]は[8]の論文 より前 に,
BROUWERの F を計算するのに, 加算,乗
必ず 解を 持つ探 索問 題に対 して PPAD だ けで
算,比較等の演算子を組合わせて構成するのだ
なく幾つかの重要なクラスを提案している。
が, そ れらの 各演 算子は プレイ ヤー の“go”
その中では,
14(568)
経 済
「有向グ ラフで閉路を 持たないもの は必ず終
59−4
学 研 究
other geometri c prob lems, ” J ourn al of the
ACM 45 , 753-782 (199 8).
点を持つ」
と い う 事 実 に 基 い て 解 の 存 在 を 示 す PLS
[ 4 ] Arrow, K .J., an d Debreu, G.,“ Existence of
(Polynomial Local Search)というクラスと,
an equi librium for a competitive econ omy, ”
「グラフ で奇数次数の 点があれば必 ずもう1
つ奇数次数の点がある」
Econometrica 27, 265 -290( 1954).
[ 5 ]Bak er, T.P., Gill, J, and Solovay, R.,“ Rela-
と い う 事 実 に 基 い て 解 の 存 在 を 示 す PPA
tivizati ons of the P= ? NP Question,” SIAM
(Polynomial Parity Argument)という クラス
Journal on Co mpu ting 4, 431-442 (197 5).
も定 義さ れてお り, PLS が完 全問 題を持 つこ
[ 6 ]Con itzer, V ., and S an dholm, T.,“N ew com-
とや ,PPAD 盈 PPA が成立 すること等 が示さ
plexity results about Nash equlibria,” Games
れている。
and Econ omic Behavio r 63 , 621-641 (200 8).
次の定理が成立することも興味深い。
[ 7 ] Cook, S .A., “ The compl exity of theorem
proving procedures,” Proc. 3rd Ann ual ACM
定 理 5 交換均衡 問題(Exchange Equilibrium)
Symposium on the Theory of Computing, New
や 競 争 均衡 問 題(Competitive Equilibrium)は
York, 151 -1 58(1 971).
PPAであり,更に PPAD 完全である。
[ 8 ] Daskalakis,
C.,
Goldberg,
P.W.,
an d
Pap adimitriou, C.H.,“The complexity of com-
[証 明] 交換均衡については[19]Lemma 4
の Corollary 。 競 争 均 衡 に つ い て は , 同
puting a Nash equilibri um,” Communications
of the ACM 5 2, 89-97( 2009 ).
Corollary か ら 角 谷 の 不 動 点 を 求 め る 問 題 が
[ 9 ]Daskalakis, C., Mehta, A., and Papadimitriou,
PPAD 完全であることと,角谷の不動点を応用
C.H.,“A note on approximate Nash equilibria,”
し て競争 均衡 が求 まる こと[4]と , 単位 球面
・
S n芋1 上に p
の 方向に矢 印で方 向付けれ ること
[1 0] Edomonds, J.,“ Path s, trees and owners, ”
から PPAD 完全であると言える。
■
Proc. 2nd WINE, 297-306(2006).
Canadian J. Math . 17, 449-4 67(1 965).
[1 1] Fortnow, L.,“ The status of the P versus
いずれにしても Nash 均衡解の計算という重
要な 問題のク ラスが Brouwer や角谷の 不動点
NP problem, ” Communications of the ACM
52, 78 -8 6(20 09).
の計算 と同じ特定の 計算の困難な クラスの
[1 2] Gilboa, I, an d Z emel, E.,“ Nash and corre-
PPAD 完全であるという結果が確立されたこと
lated equilib ria: Some complexity considera-
は意義深い。
tions, ”Games and Economic Behavior 1, 8093( 1989).
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