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出る順 中小企業診断士 テキスト 企業経営理論 第 2版 はしがき <応用力が問われる1次試験> 近年の1次試験の傾向として、ただ知識を問うではなく、知識の本質 を問う問題が多く出題されており、出題形式が 「知識確認型」 から 「実務思 考型」 へ変化しています。 その背景として、現在、中小企業庁は中小企業診断士を積極的に活用 し、中小企業を支援する動きが出てきているということがあげられます。 厳しい日本経済の中、中小企業は非常に厳しい環境にあります。そのた め、中小企業診断士は、いかに知恵を出して問題を解決していくかが求 められており、1次試験も単なる暗記、知識詰め込みでは対応が難しい 応用問題が出題されるようになってきています。 このような状況の下、従来の知識網羅型のテキストではなく、各科目 の重要項目を整理した『出る順中小企業診断士 FOCUSテキスト』を開 発しました。従来のインプット重視のカリキュラムからアウトプットへ比 重を置いたことが、幸いにも多くの受験生の方々から好評をいただきま した。 また、引き続き独学の受験生や他校の受講生の方々からは 「 『出る順中 小企業診断士FOCUSテキスト』が欲しい」という要望をいただいており ましたので、今回、第2版を発刊することとなりました。 <本書の使用方法> 『出る順中小企業診断士 FOCUSテキスト 第2版』を有効に活用す るために、Web 上に本テキスト使用ガイダンスを公開いたします。以下 のURL からアクセスいただきますよう願いいたします。また、QRコー ドからもアクセスいただけます。 http://www.lec-jp.com/shindanshi/mb/focus2016/guide/ 2015年8月吉日 株式会社 東京リーガルマインド LEC総合研究所 中小企業診断士試験部 本 書 の 効 果 的 活 用 法 『FOCUSテキスト』を効果的に使って学習を進めるために、各テーマ毎の基本的な学習の流 れを解説いたします。 使い方 STEP 1 要点を捉える 『FOCUSテキスト』は、 まず「テー マの要点」を把握することから始 まります。体系図とあわせてテー マの要約を簡潔に説明しています ので、セットで理解するようにし てください。 また、学習後の復習や、本試験直 前のスピードチェックも、このパー トを読み返すだけでよいように設計 されています。 第3分野 2 事業戦略 競争優位構築のための基本戦略 ポーターの3つの基本戦略 過去問トライアル解説 学 習 事 項 コスト・リーダーシップ戦略,差別化戦略,集中戦略 このテーマの要点 競合他社に打ち勝つための3つの基本戦略をつかむ 全社戦略 全社戦略の実現に向けて、個別の事業展開を考えるの が事業戦略です。競合他社に対して競争優位性を構築す 事業戦略 るための競争戦略は、事業戦略の中心的なテーマです。 ここでは、競争優位を築くポーターの3つの基本戦略 競争戦略 (コスト・リーダーシップ戦略、差別化戦略、集中戦略) ポーターの 基本戦略 を確認していきます。 過去問 トライアル 平成22年度 第2問 類題の状況 H24‒Q5 H23‒Q5 H23‒Q6 H19‒Q6 H16‒Q3 優れた業績をあげている企業の特徴(ポーターの3つの競争戦略の視点) どの業種にもいわゆる勝ち組と負け組が見られる。激しい競争にもかかわらず他 社よりも優れた業績をあげている企業の特徴に関する記述として、最も不適切なも のはどれか。 使い方 STEP 2 過去問に 挑戦する 要点をつかんだら、すぐに「過去 問トライアル」で基本的な過去問に 取り組んでください。問題は初めて 取り組んだ方でも取り組みやすい ように、最も基本的な過去問題を チョイスしています。 なお、解答は各テーマの最後に記 載しています。 ア ある通信機器メーカーでは、生産を国内工場に集約して生産現場で厳格な品質 管理体制をとり、堅牢な機器と先進的なデータ処理を売りに、顧客の信頼を得な がら業界水準よりも高い価格で売り上げを伸ばしている。 イ ある町工場では単品物の受注に特化しているが、熟練を活かした加工技術を武 器に、あらゆる注文に応えられる受注生産体制を敷いて、特定業種にこだわらな い受注先を確保している。 ウ 健康食品を製造販売しているある企業では、顧客からのダイレクトな注文や問 い合わせに応えるべく、コールセンターの充実を図るとともに、それを基にした 顧客データベースを活かして、逆に顧客への情報発信を行い、顧客との強い信頼 関係の構築を目指している。 エ 創業間もない中小化粧品メーカーでは、肌に潤いを与える希少な天然素材を活 用した高価な基礎化粧品に絞り込んで、全国的な広告宣伝と大手百貨店や量販店 への出店を目指している。 52 出る順中小企業診断士 FOCUSテキスト 企業経営理論〈第2版〉 +1STEP 類題に挑戦する 「過去問トライアル」には、テーマに関連する他の「類題」が示されています。テーマを一通 り学習したら、類題にチャレンジしましょう! いつでもどこでもチャレンジできるように、 問題と解説はWEB で公開されています。QRコー ドをスマホで読み取れば、すぐにアクセスできます! 使い方 3 STEP 基本知識を学習する 過去問に続いて、テーマに関連する 理論や知識が、コンパクトに詰め込ま れています。限られたスペースで多く の情報を伝えるために図や表を多く用 いて構成されていますので、効率よく インプットすることができます。 2 ポーターの3つの基本戦略 オ 激しい価格競争と急激な利益率低下のため大手の電子機器メーカーが撤退した 市場で、ある中堅メーカーでは海外企業からの低価格な中間財の調達と自社が得 意とする実装技術を活かして、実用本位の機能に絞り込んだ低価格製品で安定し た売り上げを確保している。 1 ポーターの3つの基本戦略 ランド、立地条件、販売チャネルなど多様です。この戦略を実現することができる ランド、立地条 ポーターは、競争優位を築く3つの基本戦略(Three Generic Strategies)を唱 企業は、価格競争を回避し、高いプレミアム価格(割増価格)を顧客に提示するこ 企業は、価格競 えています。下記の図表はこの基本戦略のフレームワークであり、横軸で競争優位 とができます。 の源泉を低コストと差別化に区分し、縦軸で競争の範囲を区分しています。 競合他社に模倣されないことが成功の要件となるため、他社にはない付加価値を 競合他社に模 通常は、下の2つの象限(コスト集中、差別化集中)を合わせて集中戦略とし、 提供できるかどうかが課題となります。 提供できるか かど 差別化戦略とコスト・リーダーシップ戦略を含めた3つを基本戦略としています。 集中戦略 [3] 集中戦 戦略 企業は、この3つの基本戦略のうち少なくとも1つの分野において卓越した戦略を 集中戦略は、 集中戦略は、ニッチ戦略、焦点化戦略、特化型戦略とも呼ばれます。コスト集中 構築することが、競争優位に立つために必要であるとされています。 か差別化集中に分類され、特定の市場セグメントや流通チャネルなどに集中してコ か差別化集中 中に 3 スト低減を図るか、差別化を図っていくか、もしくはその両方を目指すものです。 スト低減を図 図る 事業戦略 【3 - 2 - 1 3つの基本戦略】 競争優位のタイプ 標的市場の幅 低コスト 広い (全市場) 集中戦略を目 集中戦略を目指す企業は、業界全体における競争優位は構築できなくても、特定 差別化 コスト・リーダーシップ戦略 市場において競争優位を獲得することができます。 市場において競 差別化戦略 特定の分野に集中させるため、一定規模以上の市場規模を持つもので、自社の強 特定の分野に みを発揮できる分野を選択することが課題となります。 みを発揮でき きる 狭い (特定市場) 集 中 戦 略 Keyword Keywo or (コスト集中) (差別化集中) ▶ 先発優位 ▶ 先発優 優位 [1] コスト・リーダーシップ戦略 他社に先駆けて市場に参入することで享受できるメリットのこと。 他社に先駆 (同義語: コスト・リーダーシップ戦略は、競合他社よりも原材料・生産・流通・販売・管 先行者利益) 理などのコストを低く抑えることを追求します。業界全体を対象に、規模の経済や ▶ 後発優位 ▶ 後発優 優位 経験曲線効果もしくは学習効果などにより、コスト優位のポジションを獲得するも 先発企業に比べて投資リスクの抑制などを享受できるメリットのこと。 先発企業に のです。 同じ業界内で複数の企業がこの戦略を追求すると業界全体が過度の価格競争に陥 過去問 トライアル解答 る危険性があります。 エ シェアの獲得を最優先に置くため、標準化による効率化や大量生産によるコスト チェック問題 チェック問 低減などが課題となります。 どのような差別化による優位をつくるかを考える際には、通常、環境の変化だ どのような [2] 差別化戦略 けではなく自社の強みと顧客の範囲をどのようにとらえて定義するかが重要で けではなく自 差別化戦略は、顧客に対して競合他社とは異なる価値を提供する戦略です。製品 ⇒○ ある。 やサービスなどで競合他社と差別化を図り、特異なポジションを獲得するものです。 差別化戦略の方向性は、製品やサービスの他、デザインやアフターサービス、ブ 出る順中小企業診断士 FOCUSテキスト 企業経営理論〈第2版〉 問題を解いた後だからこそ、知識 の吸収も促進されることを実感する でしょう。過去問で実際に問われた 知識と、その周辺の知識をあわせて 理解するため、一般的なテキストと 比べて知識の定着度が断然違います。 53 54 NEXT STEP 出る順中小企業診断士 FOCUSテキスト 企業経営理論〈第2版〉 次のテーマに進む 以上で、このテーマの学習が一通り終了いたしました。 次のテーマの学習に進んでください! 『FOCUSテキスト』 は、 WEBと連動した新しいテキストです。各テーマごとに専用WEBペー ジを用意しており、 「過去問トライアル解説」や「類題」を閲覧・演習することができます。パ ソコンはもちろん、スマートフォンを使ってアクセスすることもできるので、通勤中や外出先で の学習にお役立てください。 ここでは、スマートフォンやPCを使ったアクセス方法を解説します。 スマホ ① QRコードを読み取る の場合 まず、スマートフォンの「QRコード読取アプリ」を起動します。 アプリが入ってない場合は、ご自身でインストールをしてくださ い。起動したら、カメラを各テーマの見出し部分にあるQRコー ドにかざして読み取ります。 第3分野 2 事業戦略 競争優位構築のための基本戦略 ポーターの3つの基本戦略 過去問トライアル解説 学 習 事 項 コスト・リーダーシップ戦略,差別化戦略,集中戦略 過去問トライアル解説 このテーマの要点 競合他社に打ち勝つための3つの基本戦略をつかむ 全社戦略の実現に向けて、個別の事業展開を考えるの が事業戦略です。競合他社に対して競争優位性を構築す 全社戦略 事業戦略 るための競争戦略は、事業戦略の中心的なテーマです。 ② テーマ専用ページへアクセス QRコードの読み取りが成功すると、埋め込まれたURLが表示されます。読み取りアプ リの指示に従って、URLにアクセスしてください。 アクセスすると、過去問トライアルの解説(PDF)や類題の問題・解説(PDF)への リンクが表示されています。リンクをタッチすることで、各ファイルを閲覧することがで きます。 PC ① URLを入力する お使いのインターネットブラウザを起動します。アドレスバーに下記のURLを の場合 打ち込みます。 なお、 「kakomon●●.html」の●部分は、各テーマごとに異なる数字が入ります。 http://www.lec-jp.com/shindanshi/mb/focus2016/kigyou/kakomon●●.html ●部分は、目次に記載されています。各テーマ番号の下にある2桁の数字がそれにあたり ます。 3−2 ポーターの3つの基本戦略[10]…………………………… 52 1.ポーターの3つの基本戦略 3−3 競争回避の戦略[11]…………………………………………… 56 例えば、上記「3−2 ポーターの3つの基本戦略」のテーマ専用WEBページのURL は次のようになります。 http://www.lec-jp.com/shindanshi/mb/focus2016/kigyou/kakomon10.html テーマ専用WEBページの 閲覧期限は 2018 年 11 月 23 日迄です Management Strategy 経営戦略論 1 第 分野 経営と企業活動 テーマ別ガイダンス 消費者行動理論 経営と企業活動 1 各テーマ間の関連 経営と企業活動 経営計画 1-1 マネジメントサイクル 1-2 経営計画 経営と企業活動の分野では、経営目的に基づき経営目標を達成するための「1− 2 経営計画」の立案、そして、立案された経営計画を適切に実行するための「1 −1 マネジメントサイクル」について学習します。経営計画の計画期間の長さは どの程度に設定すればよいのか、計画立案手法にはどのようなものがあるのか、計 画実行後にどのようにチェックしていけばよいのかなど、マネジメントサイクルに 沿って理解する必要があります。 2 出題傾向の分析と対策 ❶ 出題傾向 ● # テーマ 1-1 マネジメントサイクル 1-2 経営計画 H17 H18 H19 H20 H21 H22 H23 H24 H25 H26 1 2 1 1 ❷ 対策方法 ● 経営と企業活動の分野では、 「経営計画の策定と実行」 、 「経営計画技法や管理技 法」 、 「経営計画の策定と実行」に関する内容が出題されています。一般的知識で対 応できる問題も多いため、本テキストレベルの知識は習得して対応できるようにし てください。 4 出る順中小企業診断士 FOCUSテキスト 企業経営理論〈第2版〉 第1分野 1 経営と企業活動 経営計画 マネジメントサイクル 過去問トライアル解説 学 習 事 項 戦略策定の基本プロセス,PDSサイクル このテーマの要点 マネジメントサイクルについて理解する 計画 (Plan) 企業は、経営理念に基づき各々のミッ ションを実行するにあたって、適切な経 営計画を立案する必要があります。立案 された経営計画は、PDSサイクルのよ うに、循環過程の枠組みに基づいて行わ 統制 (See) マネジメント サイクル 実行 (Do) れることが必要になります。 過去問 トライアル 平成18年度 第7問 類題の状況 − PDCサイクル 経営計画を策定し、それを遂行し、成果を検証し、次期の経営計画に生かすとい うPDC(Plan→Do→Check)サイクルは、実際にはこの順番通りにうまく回らな いことが多い。最近では、PDCサイクルがうまく回らない理由を明らかにし、そ のことを前提にした経営計画のあり方が検討されるようになったが、このような状 況に関する記述として、最も不適切なものはどれか。 ア 計画通りに物事が運ばない事態に直面すると、計画に見落としや情報不足が あったと考え、前よりも精緻な分析に基づく計画を策定するという悪循環に陥る ことが問題になってきた。 イ 計画にない想定外の試みや新機軸が現場から創発する可能性を織り込んだ経営 計画が策定されるようになった。 ウ 計画にも増して実施段階から得られる知識を重視して、学習プロセスを介在さ せて、PDCサイクルを回すことが行われるようになった。 エ 先端技術の展開や経済のグローバル化など、これまでとは異質な大きな環境変 化が起こっており、そのため、予測や分析が困難な要因が計画に強く影響するよ うになった。 6 出る順中小企業診断士 FOCUSテキスト 企業経営理論〈第2版〉 1 マネジメントサイクル オ ビジョンや経営目標の共有が重要であるという理解が進展しており、それに基 おり、経営計画は効果を発揮できず、無視されるようになってきた。 1 戦略策定の基本プロセス 経営者の意思・社長の夢によって描かれる戦略と、現実とのギャップは少なから ず存在します。 下の図は、実際に策定された戦略と、現実とのギャップが確認された場合に、そ のギャップを埋めていく一連の活動を示した流れ図です。 経営理念やビジョンを前提として、外部の環境分析と自社の強み・弱み等の内部 分析を行い戦略の策定を図ります。策定された戦略をもとに経営計画が策定され、 マネジメントサイクルに基づいて経営計画が実施されることになります。 【1 - 1 - 1 戦略策定の基本プロセス】 経営理念 経営者の意思・ 社長の夢 ビジョン 外部環境分析 内部環境分析 環境の与える機会(O) と脅威 (T) 自社の強み (S) と弱み(W) 現状認識 戦略代替案の創出 SWOT 分析 戦略の選択 戦略の実行 ●現 状 の 把 握 と 組 織内での共有 ●戦略理論の応用 ●意思決定プロセス を運用する 戦略のレビュー Keyword ▶ 分析麻痺症候群 分析を重視するあまり現場の実情を軽視してしまうことや、現場の状況を感じ 取る能力が劣ってしまうことをいいます。 出る順中小企業診断士 FOCUSテキスト 企業経営理論〈第2版〉 7 1 経営と企業活動 づいて戦略課題を現場に下ろし、成果主義で業績管理を行うことが広く行われて 2 PDSサイクル ①計画(Plan) 将来における企業の目標を達成するための活動計画を立案する。 ②実行(Do) Planに基づき組織を構成し、指揮・命令のもとに計画を遂行する。 ③統制(See) 実行過程が計画に適合しているかどうかチェックし実現に導く。 経営計画は、上記のような循環過程の枠組みに基づいて行われることが必要です。 「統制」により計画と実績の比較、および未達成の場合に原因の追究を行い、次 期計画へのフィードバックを行うというプロセスにより、PDSサイクルを循環さ せていきます。 【1 - 1 - 2 マネジメントサイクル】 計画 (Plan) 統制 (See) マネジメント サイクル 実行 (Do) Keyword ▶ PDCAサイクル Plan(計画)→Do(実行)→Check(評価)→Action(改善)のプロセスで 計画を進める手法であり、マネジメントサイクルの1つです。 過去問 トライアル解答 オ チェック問題 経営計画を策定し、それを遂行し、成果を検証し、次期の経営計画に生かす というPDCA(Plan→Do→Check→Action)サイクルは、実際にはこの順番 通りにうまく回らないことが多い。このため、計画にも増して実施段階から得ら れる知識を重視して、学習プロセスを介在させて、PDCAサイクルを回すこと が行われるようになった。 8 ⇒○ 出る順中小企業診断士 FOCUSテキスト 企業経営理論〈第2版〉 第1分野 2 経営と企業活動 経営計画 経営計画 学 習 事 項 経営計画,変化に対応する経営計画立案手法,バランス・スコアカード 過去問トライアル解説 このテーマの要点 経営計画についての理解を図る 企業は、経営目的に基づき策定された経営目標を達成するため、組織や経営資 源をどのように活用していくかを、経営計画に示すことが必要となります。 ここでは、長期的、短期的な期間に応じた経営計画の意義とその評価方法につ いての理解を図ります。また、現在のように環境変化の激しい状況で有効となる、 環境変化に対応した計画立案について学びます。 過去問 トライアル 平成14年度 第1問 類題の状況 H25‒Q1 H20‒Q1 H19‒Q1 H19‒Q2 H16‒Q7 H15‒Q14 経営計画 経営計画が有効であるための前提条件として、最も適切なものはどれか。 ア 経営計画策定は本社の企画スタッフが担当するので、それ以外の部署は関与す べきではない。 イ 経営計画の責任はトップが負うが、策定プロセスでは企画スタッフを中心にし て関連部署が参加する。 ウ 経営計画は全社的な戦略デザインであり、具体的な実行プログラムを含む必要 はない。 エ 経営目標は全て数値化されなければならない。 10 出る順中小企業診断士 FOCUSテキスト 企業経営理論〈第2版〉 2 経営計画 経営計画 1 ❶ 長期経営計画 ● 経営ビジョン実現のために、5年∼ 10年の長期的視野にたって設定される計画で す。企業の経営戦略を具体化するものであり、ドメインの方向付けとなるなど、企 業経営に影響を与える重要な計画となります。 ❷ 中期経営計画 ● 長期経営計画に基づき作成され、さらに具体化した3年∼ 5年程度の期間で実行 する計画です。ここでは、売上高などの具体的な目標値を設定します。後述する短 期経営計画で、その目標値に向かってさらに具体化されていきます。 ❸ 短期経営計画 ● 計画期間が1年以内、もしくは半年などの短期間に実行されるための計画で、上 記で設定した中期経営計画の実現に向けて、具体的かつ詳細に設定されるものです。 Keyword ▶ 経営計画の問題点 ・過去の実績を重視しすぎると、計画が現状維持的なものとなるため、環境の 変化に対応しにくくなる。 ・管理サイクルが短くなると、柔軟な対応が図りにくくなり、従来のやり方を選 択する傾向が強まってしまう。 2 変化に対応する経営計画立案手法 ❶ コンティンジェンシー・プラン ● 企業にとって起こり得る悪影響等の不測の事態をあらかじめ想定し、万一不測の 事態が発生した場合にとるべき行動方針・計画等をあらかじめ策定することにより 対応を図るものです。コンティンジェンシー・プランを策定するためには、日頃か ら情報収集や分析能力の強化を図る等、企業内の危機管理システムを構築しておく 必要があります。 ❷ ローリング・プラン ● ローリング・プランとは、予め対応策を策定しておくコンティンジェンシー・プ ランとは異なり、企業が策定した短期経営計画や中長期経営計画などを定期的に見 直し、環境に適合させていくものです。 出る順中小企業診断士 FOCUSテキスト 企業経営理論〈第2版〉 11 経営と企業活動 1 Keyword ▶ 経営計画立案に関する留意点 ・計画の策定は実行段階を考慮し、全社的に取り組む必要がある。 ・経営目標には定量的要素に加え、定性的要素も含まれる。 3 バランス・スコアカード バランス・スコアカードとは、1992年にハーバードビジネススクールのロバート・ S・キャプラン教授と、コンサルタント会社社長のD・P・ノートン氏によって提唱 されたものです。 企業が経営計画を実行した際の評価指標で あり、4つの視点(財務の視点、業務プロセ 財務の視点 スの視点、企業成長と学習の視点、顧客の視点) から企業の業績を評価するものです。従来の 過去の業績を表す財務的視点だけではなく、 将来を見通した企業成長と学習の視点や、顧 客の視点などの非財務的視点を含み、それら のバランスを総合的に評価して、将来のある べき姿や経営ビジョンを実現するための指針 顧客の視点 戦略 と ビジョン 業務プロセス の視点 企業成長 と 学習の視点 とします。 財務の視点 財務的に成功するために、ステークホルダーに対して、どの ように行動すべきか。 業務プロセスの視点 株主と顧客を満足させるために、どのような業務プロセスに 秀でるべきか。 企業成長と学習の視点 ビジョンと戦略を達成するために、どのように人材教育と変 革能力を強化すべきか。 顧客の視点 ビジョンと戦略を達成するために、顧客に対してどのように 行動すべきか。 過去問 トライアル解答 12 イ 出る順中小企業診断士 FOCUSテキスト 企業経営理論〈第2版〉 2 経営計画 チェック問題 企業は規模を拡大するにつれ、生産の効率化や事業領域の調整、資金繰りや 設備投資などあらゆる事業活動を計画的に進めることが重要になる。長期経営 計画はそのための代表的なものである。ただし、本社の企画部門が中心になっ て策定した計画は、生産や営業の現場の声が反映されにくいことから、現場の挑 戦意欲をそぎ、現場では受容されにくい傾向がある。 出る順中小企業診断士 FOCUSテキスト 企業経営理論〈第2版〉 ⇒○ 13 経営と企業活動 1