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ズファジラン 欧州における産科適応に対する使用制限の情報について
欧州における短時間作用型β刺激剤の産科適応に対する 使用制限の情報について 2014 年 2 月 第一三共株式会社 この度、欧州医薬品庁において、「短時間作用型β刺激剤(イソクスプリン塩酸塩を 含む 6 成分)」の産科適応に関して、過去の文献等で報告された情報を基に、薬剤のベ ネフィットと心血管系のリスクを評価した結果、薬剤の使用を制限することが決定され、 2013 年 10 月 25 日に発表されました。使用制限の内容については、「産科適応での 経口剤及び坐剤の承認を取り消すこと」、「注射剤は産科適応に静脈内投与が今後も使用 できるが、その使用は妊娠 22 週から 37 週の間の最大 48 時間までの投与に限定され、 投与中は専門家による母体と児の継続的な管理が要求される」というものです。 今回、欧州での使用制限の内容を含め、関連する情報を集約しました。 つきましては、本情報をご確認いただき、産科適応でイソクスプリン製剤をご使用 の際には、心血管系の事象の発現にご留意の上、ご使用いただきますようお願い申し上 げます。 なお、国内の対応については医薬品医療機器総合機構と協議を進めており、対応が 決まり次第、あらためて情報提供いたします。 −1− ≪欧州における短時間作用型β刺激剤の使用制限について≫ この度、欧州医薬品庁(以下、EMA)において、 「短時間作用型β刺激剤(イソクスプリン 」の産科適応に対する使用制限が決定され、2013 年 10 月 25 日に 塩酸塩を含む 6 成分※) 発表されました。 欧州では、イソクスプリン製剤(ズファジラン)を含む短時間作用型β刺激剤(以下、 SABA)の産科適応に関してベネフィット・リスク評価が行われました。経口剤については、 有効性を支持するデータに乏しく、従来から注目されている心血管系リスクが有効性を上回る と判断され、経口剤の産科適応の承認は取り消しとなり、産科適応のみを有する製品は回収と なりました。 また、注射剤については、その有効性が 48 時間までに限定して認められていること、従来 から注目されている心血管系リスクの懸念から、産科適応に対する使用について、 「妊娠 22 週 から 37 週の間の最大 48 時間までの投与に限定され、投与中は専門家による母体と児の継続 的な管理が要求される」という制限が決定されました。 ※サルブタモール、テルブタリン、フェノテロール、リトドリン、ヘキソプレナリン、イソクスプリン ≪ EMA における使用制限の根拠について≫ EMA のホームページには、使用制限決定に至った根拠を述べた資料 1)が公表されていますが、 EMA が評価した具体的な文献やデータに関する詳細な情報は明らかにされていません。公表 された使用制限決定の根拠に関して、概略を以下に記載します。 リスクについては、SABA の各成分について検討されました。イソクスプリン製剤に関して は、2000 年から 2013 年までの市販後のデータに基づき評価されました。注射剤について は重篤な有害事象は報告されておらず、非重篤な事象が 3 件報告されていること、経口剤につ いては、3 件の重篤な事象(意識消失、開口障害、重篤な皮膚反応の損失)と 6 件の非重篤な 事象が報告されていますが、心血管系リスクの報告は認められていませんでした。 一方、ベネフィットについては、SABA 全体について検討され、経口剤については、有効性 に関するデータが非常に限られていること、産科適応での使用が心血管系リスクと関連がある ことより、産科適応で使うべきでないと判断されました。また、注射剤については、48 時間 までの使用にて分娩遅延に対する有効性が確認され、この範囲ではベネフィットがリスクを上 回ることから、投与期間は 48 時間を超えてはならないと判断されました。 −2− ≪日本と欧州における子宮収縮抑制薬について≫ 日本では、リトドリンとイソクスプリンの SABA 及び硫酸マグネシウム製剤が子宮収縮抑制 の適応を持ち、使用されています。日本と欧州における承認状況を表 1 に示します。 表 1 子宮収縮抑制薬の日本と欧州における承認状況 分類・薬剤名 日本 欧州 注) 短時間作用型β刺激剤 リトドリン 〇(注射、経口) 〇(注射、経口) イソクスプリン 〇(注射、経口) 〇(注射、経口) テルブタリン ×(注射、経口) 〇(注射、経口、その他) サルブタモール ×(経口、その他) 〇(注射、経口、その他) フェノテロール ×(経口、その他) 〇(注射、経口) ヘキソプレナリン - 〇(注射、経口) 〇(注射) △(注射、経口) 硫酸マグネシウム 注)今回の EMA の SABA に対する使用制限以前の状況を示しています。 ※投与経路を「注射」「経口」「その他」に分類して表示しました。 〇:切迫早産(子宮収縮抑制)の適応あり △:切迫早産(子宮収縮抑制)の適応はないが、投与の対象は妊婦 ×:切迫早産(子宮収縮抑制)の適応なし -:薬剤自体の販売なし 【概要】 欧州では、 子宮収縮抑制の適応がない薬剤でも、 ガイドラインにおいて選択肢として提示され、 使用可能となっています。 −3− ≪日本と欧州におけるイソクスプリン製剤の使用方法について≫ 日本と欧州におけるイソクスプリン製剤の使用方法の比較を、注射剤は表 2 に、経口剤は表 3 に示します。 日本については添付文書から、欧州については英国のイソクスプリン製剤の医薬品情報 (Martindale)からまとめました。 表 2 日本と欧州のイソクスプリン注射剤の使用方法の比較(産科適応のみ抜粋) 項目 日本 欧州 効能・効果 子宮収縮の抑制(切迫流・早産、過強陣痛)早産防止 用法・用量 通 常 1 回 5 ~ 10mg(1 ~ 2 ア ン プ ル ) 200 ~ 500µg/ 分を静脈内注射する。 を 1 ~ 2 時間ごとに筋肉内注射する。 10mg を 3 ~ 8 時間毎に筋肉内注射する。 なお、年齢、症状により適宜増減する。 また、症状がおさまったら経口投与に切り 替えること。 表 3 日本と欧州のイソクスプリン経口剤の使用方法の比較(産科適応のみ抜粋) 項目 日本 欧州 効能・効果 子宮収縮の抑制(切迫流・早産) 早産防止 用法・用量 通常1日量 30 ~ 60mg(3 ~ 6 錠)を 1 日 30 ~ 90mg を経口投与する。 3 ~ 4 回に分けて経口投与する。 なお、年齢、症状により適宜増減する。 なお、日本の 2012 年 6 月から 2013 年 5 月までの健康保険組合レセプトデータから イソクスプリン製剤の投与状況の内訳を表 4 に示します。 表 4 日本におけるイソクスプリン製剤の投与状況の内訳 投与状況(剤形内訳) 症例数(率) イソクスプリン経口剤単独治療例 44,804 例 (82.6%) イソクスプリン注射剤単独治療例 6,400 例 (11.8%) イソクスプリン経口、注射両剤治療例 3,046 例 (5.6%) ■ 出典:株式会社日本医療データセンター ■ 集計対象:54,250 例 【概略】 日本では経口剤の多くは単独治療として使用されていました。 −4− ≪ズファジランの再評価について≫ 1990 年のズファジラン再評価時、切迫流産に対する有用性について、プラセボを対照とし て比較検討した結果 2)は、以下のとおりです。 全般改善度において、注射剤は 71.4%に対しプラセボは 21.4%、経口剤は 81.3%に対し プラセボは 47.1%であり、注射剤、経口剤ともにプラセボに対し有意な改善率を示しました。 副作用において、注射剤投与時の内訳を表 5 に、経口剤投与時の内訳を表 6 に示します。 注射剤は主症状として軽度から中等度の心悸亢進が 4 例(25%)に認められ、プラセボ群は 1 例(6.7%)に認められました。同様に経口剤は 2 例(11.1%) 、 プラセボ群で 3 例(15%) に認められました。 表 5 副作用の内訳(注射剤) I 群(n=16) P 群(n=15) 重症 中等度 軽度 計 重症 中等度 軽度 計 心悸亢進(動悸) 0 1 3 4 0 1 0 1 顔面紅潮 0 0 1 1 0 0 1 1 嘔気 0 1 0 1 0 0 0 0 血圧低下 0 0 0 0 0 0 1 1 頭痛 0 2 0 2 0 0 0 0 発現件数 0 4 4 8 0 1 2 3 発現例数 0 3 3 6 0 1 0 1 発現率(%) 0 18.8 18.8 37.5 0 6.7 0 6.7 x2 検定 (I・計 / P・計) N.S. p < 0.05 表 6 副作用の内訳(経口剤) I 群(n=18) P 群(n=20) 重症 中等度 軽度 計 重症 中等度 軽度 計 心悸亢進(動悸) 0 0 2 2 0 2 1 3 顔面紅潮 0 0 0 0 0 0 2 2 嘔気 0 1 0 1 0 0 3 3 血圧低下 0 0 0 0 0 0 0 0 頭痛 0 0 0 0 0 0 0 0 発現件数 0 1 2 3 0 2 6 8 発現例数 0 1 2 3 0 2 3 5 発現率(%) 0 5.6 11.1 16.7 0 10.0 15.0 25.0 x2 検定 (I・計 / P・計) N.S. N.S. 注)I 群:イソクスプリン群、P 群:プラセボ群 −5− ≪国内における心血管系副作用の集積状況について≫ 2000 年から 2013 年までに産科適応で使用した際、ズファジラン筋注では心臓障害の副 作用を収集しておりません。また、ズファジラン錠では非重篤の動悸を 2 件収集しています。 ≪欧州医薬品庁における使用制限の根拠について≫ 2000 年から 2013 年までのイソクスプリン製剤に対する市販後のデータに基づき評価さ れました。注射剤については重篤な有害事象は報告されておらず、非重篤な事象が 3 件報告さ れていること、経口剤については、3 件の重篤な事象(意識消失、開口障害、重篤な皮膚反応 の損失)と 6 件の非重篤な事象が報告されていますが、心血管系リスクの報告は認められてい ませんでした。 ≪まとめ≫ 以上、欧州での使用制限の内容、使用制限に至った根拠、日本と欧州におけるイソクスプリ ン製剤の使用方法、再評価に関する情報等について、集約しました。 今回は欧州での状況をご確認いただき、産科適応でイソクスプリン製剤をご使用の際には、 心血管系の事象の発現にご留意の上、ご使用いただきますようお願い申し上げます。 なお、国内の対応については医薬品医療機器総合機構と協議を進めており、 対応が決まり次第、 あらためて情報提供いたします。 【引用文献】 1)http://www.ema.europa.eu/docs/en_GB/document_library/Referrals_document/ Short-acting_beta-agonists/Position_provided_by_CMDh/WC500153980.pdf 2)千村哲朗ほか:産婦人科の世界 1993;45(3):237-255 −6− 【効能・効果】 【用法・用量】 【使用上の注意】 【効 能 ・ 効 果】 ○下記に伴う随伴症状 頭部外傷後遺症 ○下記に伴う末梢循環障害 ビュルガー病、閉塞性動脈硬化症、血栓性静脈炎、静脈血栓症、レイノー 病及びレイノー症候群、凍瘡・凍傷、特発性脱疽、糖尿病による末梢血 管障害 ○子宮収縮の抑制(切迫流・早産) ○月経困難症 【用 法 ・ 用 量】 ○循 環器領域の適応には、イソクスプリン塩酸塩として通常成人 1 回 10 ~ 20mg( 1 ~ 2錠)を 1日3 ~ 4回経口投与する。 ○子宮収縮の抑制には、イソクスプリン塩酸塩として通常1日量30 ~ 60mg( 3 ~ 6 錠)を3 ~ 4回に分けて経口投与する。 ○月経困難症には、イソクスプリン塩酸塩として通常1回10 ~ 20mg( 1 ~ 2 錠) を1日3 ~ 4回経口投与する。 なお、年齢、症状により適宜増減する。 【使 用 上 の 注 意】 1 .慎重投与(次の患者には慎重に投与すること) (1 )心 悸亢進のある患者[心拍数、心拍出量が増大するため症状が悪化する おそれがある。] (2)分娩直後の患者[分娩直後の出血を助長するおそれがある。] (3)脳出血のある患者[症状が悪化するおそれがある。] (4)低血圧の患者[一過性の血圧低下があらわれることがある。] 2 .重要な基本的注意 頭蓋内出血の疑いのある患者には、止血が完成したと推定される発作後 10日ないし2週間頃から投与すること。 3 .相互作用 併用注意(併用に注意すること) 薬剤名等 臨床症状・措置方法 4 .副作用[文献集計による(再審査対象外) ] 下 記の副作用があらわれることがあるので、異常が認められた場合に は必要に応じ投与を中止するなど適切な処置を行うこと。 0.1 ~ 1%未満 0.1% 未満 消化器 悪心、食欲不振、 下痢 循環器 心悸亢進、顔面潮紅 血圧低下 胃痛、嘔吐 精神神経系 頭痛(頭重感) 、 めまい、眠気 倦怠感 皮膚 発疹等 その他 発汗 頻度不明注) 口内炎、舌炎 月経過多 注)自発報告又は海外において認められている副作用のため頻度不明。 5 .高齢者への投与 一般に高齢者では生理機能が低下しているので減量するなど注意すること。 6 .妊婦、産婦、授乳婦等への投与 妊娠 12週未満の妊婦には投与しないこと。 ( 12週未満の投与に関する安 全性は確立していない。 ) 7 .適用上の注意 薬剤交付時:PTP 包装の薬剤は PTP シートから取り出して服用するよう 指導すること。 ( PTP シートの誤飲により、硬い鋭角部が食道粘膜へ刺入 し、更には穿孔をおこして縦隔洞炎等の重篤な合併症を併発することが 報告されている。 ) 機序・危険因子 β刺激薬 本剤の作用が増強されるお β受容体刺激の増強によ それがある。 ると考えられている。 β遮断薬 本剤の作用が減弱されるお β受容体での阻害による それがある。 と考えられている。 〔 2008 年 6 月改訂〕 −7− 【禁忌】 【効能・効果】 【用法・用量】 【使用上の注意】 【禁忌】 (次の患者には投与しないこと) 1 .脳出血のある患者[症状が悪化するおそれがある。] 2 .分娩直後の患者[分娩直後の出血を助長するおそれがある。] 3 .胎盤の早期剥離患者[疼痛、出血、止血障害、急性貧血及びショッ ク症状等が悪化するおそれがある。] 4 .副作用[文献集計による(再審査対象外) ] 下 記の副作用があらわれることがあるので、異常が認められた場合に は必要に応じ投与を中止するなど適切な処置を行うこと。 5%以上 消化器 循環器 【効 能 ・ 効 果】 ○下記に伴う随伴症状 頭部外傷後遺症 ○下記に伴う末梢循環障害 ビュルガー病、閉塞性動脈硬化症、血栓性静脈炎、静脈血栓症、レイノー 病及びレイノー症候群、凍瘡・凍傷、特発性脱疽、糖尿病による末梢血 管障害 ○子宮収縮の抑制(切迫流・早産、過強陣痛) ○月経困難症 【用 法 ・ 用 量】 ○循環器領域の適応の重症・急性の場合には、イソクスプリン塩酸塩として 通常成人1回5 ~ 10mg( 1 ~ 2アンプル)を1日2 ~ 3回筋肉内注射する。 ○子 宮収縮の抑制には、イソクスプリン塩酸塩として通常 1回 5 ~ 10mg( 1 ~ 2アンプル)を1 ~ 2時間ごとに筋肉内注射する。 ○月経困難症の重症の場合には、イソクスプリン塩酸塩として通常 1回 5 ~ 10mg( 1 ~ 2アンプル)を筋肉内注射する。 なお、年齢、症状により適宜増減する。 また、いずれの場合も症状がおさまったら経口投与に切り替えること。 【使 用 上 の 注 意】 1 .慎重投与(次の患者には慎重に投与すること) (1)心悸亢進のある患者[心拍数、心拍出量が増大するため、症状が悪化す るおそれがある。] (2)低血圧の患者[一過性の血圧低下があらわれることがある。] 2 .重要な基本的注意 頭蓋内出血の疑いのある患者には、止血が完成したと推定される発作後 10日ないし2週間頃から投与すること。 3 .相互作用 併用注意(併用に注意すること) 薬剤名等 臨床症状・措置方法 精神神経系 0.1 〜 5%未満 心悸亢進 血圧低下、顔面潮紅 めまい、眠気 皮膚 その他 0.1% 未満 悪心、嘔吐 発疹等 月経過多 5 .高齢者への投与 一般に高齢者では生理機能が低下しているので減量するなど注意すること。 6 .妊婦、産婦、授乳婦等への投与 妊娠 12週未満の妊婦には投与しないこと。 [ 12週未満の投与に関する安 全性は確立していない。 ] 7 .適用上の注意 ( 1)筋 肉内注射時:筋肉内注射にあたっては、組織、神経等への影響を避 けるため下記の点に注意すること。 1 )注射部位については、神経走行部位を避けて慎重に投与すること。 2)くりかえし注射する場合には、左右交互に注射するなど、同一部位 を避けること。なお、低出生体重児、新生児、乳児、幼児、小児に は特に注意すること。 3)注射針を刺入したとき、激痛を訴えたり、血液の逆流をみた場合は、 直ちに針を抜き、部位をかえて注射すること。 ( 2)開 封時:アンプルカット時の異物混入を避けるため、エタノール消毒 綿等で清拭しカットすること。 8 .その他の注意 海外で本剤の点滴静注により、新生児に低血糖症、腸閉塞があらわれた との報告がある。 機序・危険因子 β刺激薬 本剤の作用が増強されるお β受容体刺激の増強によ それがある。 ると考えられている。 β遮断薬 本剤の作用が減弱されるお β受容体での阻害による それがある。 と考えられている。 〔 2009 年 9 月改訂〕 −8− DUV7AT0101 2014 年 2 月作成