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永久磁石の反発力を利用した無捲線モータの研究

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永久磁石の反発力を利用した無捲線モータの研究
福井大学
工学部研究報告
第3
4巻 第 2号
昭和 6
1年 9月
2
3
9
永久磁石の反発力を利用した無捲線モータの研究
池尻忠夫*
北川敏男柿
鈴木福太郎*
A Study on the Winding1ess Motor using the
Repu1sive Force of Permanent Magnets
Tadao IKEJIRI,Toshio KITAGAWA and
Fukutaro SUZUKI
(Received Aug.5,1986)
A winding1ess motor using the repu1sive force of permanent magnets is presented.
By driving on1y one side permanent magnet using the
micromotor,the motor was rotated stab1y resu1ting from
the repu1sive force of permanent magnets at that time.
The comparab1e 1arge torque of motor was derived.
In spite of the scantines of necessary e1ectric power
of micromotor,the torque of motor reached to many times
over of that of micromotor.
However,it is a weak point of this motor to be ob1iged to use the micromotor.
At the present time,this motor is considered as the
substitution of stir1ing engine in the water power generation by the solar energy.
In that study,it is considered that the power generation is capab1e in every times and the increase of
generated energy is obtained,as the power generation
comes to be not depended upon the solar energy.
*電気工学科
紳オリオン電気
2
4
0
1 緒 言
永久磁石の吸引力または反発力を利用するのみで回転し電気捲線を用いないモータの開発は,無
捲線のためモータの構成が簡単となり,また電力を必要としないため,特に野外での諸種の機器の
駆動源として極めて有用であると考えられる。
本研究はとのような観点に立って永久磁石相互間の反発力を利用してモータ本体を回転駆動する
方法を検討したものである。1)
実験においては一方の永久磁石のみをマイクロモータで駆動させ,そのときの永久磁石の反発力
によってモータの安定駆動を生じ,比較的大きいモータの回転力を得る乙とができた。マイクロモ
とかかわらずモータの回転力はマイクロモータのそれの約十数倍に達
ータの所要電力は僅かである l
した。しかしながら,以上から知られるようにマイクロモータの使用を余儀なくされており,乙れ
が本方法の欠点と考えられる。
なお,近年外部のエネルギーを用いず磁石の同じ極同士が反発し合う力を利用して回転運動を生
じ発電する新らしい装置の開発に関する情報が得られた。 2)とれはマイクロモータの使用を必要と
2つ の 回 転 ド ラ ム の 外 周 に 配 置 さ れ た 磁 石 の 角 度 が 回 転 を 持 続 す る 秘 密 で あ る と 考 え ら れ て
せず
いる。しかしながら,乙の場合ドラムの回転速度は本研究の場合よりも遅いようでモータとしての
適用においては充分ではないように思われる。
ここで本研究においては無捲線モータそのものの中にマイクロモータを含むので厳密にはモータ
と称するととは不適当と思われトルク増幅機とも考えられるが,磁気原動機または磁気エンジンの
意味に解釈している。
現在応用面としては,太陽熱を利用した揚水発電におけるスターリングエンジンめの代りに本モ
ータの使用を考慮している。とれによれば発電は太陽熱に依存しないようになるため一日中可能と
なり発電量の増大をはかる
ζ
とができるものと考えられる。
2
. 実験機の構造および特性
2
.1 実 験 機 の 構 造
ig.lのようで
試作した実験機の構造を示すと F
ある
o
4つ の 円 板 が F
i
g
.
lの よ う に 配 置 さ れ て お
1
5
1
り,中央の大きな円板がモータ本体である。本体円
板 の 直 径 は 200mm,厚さ 4r
n
mで材質はアルミニウ
(
j
)
IztOIz ω
│
¥JNL./
0
ムである。他の 3つ の 小 型 円 板 は い ず れ も 直 径 7
m.m,厚き l
Omrnのアクリル樹脂板である。
ζ
れら
の円板にアルニコ円柱棒磁石を磁極として F
i
g
.
l
のように配晋し,モータ本体児おいてはさらに手
前から同寸法のアルミニウム円板で磁石をはさみ
両 側 か ら ネ ジ で 締 め つ け 固 定 し て い る 。 他 の 3つ
の小型円板においては側面から穴をあけ直接磁石
をうめ込み聞定している。磁石はすべて
s極を円
F
i
g
.
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ダクションモータのそれと同じであると推察される。なお,小型円板の回転にはできるだけ所要電
力 を 少 く す る た め マ イ ク ロモー タを使用する 。 モ ー タ 本 体 は 乙 の 小 型 円 板 lイ聞によっても回転する
が , 一 般 に は Fig.6の よ う に モ ー タ 本 体 の 外 部 K数 個 配 置 し て 回 転 力 の 増 大 を は か る 必 要 が あ る 。
本 研 究 に お い て は 3個配置した。
2.
3 モータの始動特性
.
2で 述べた乙と を考 慮 す る と 小 型 円 板 の 回 転 速 度 は 遅 い 方 が 反 発
モー タ 本 体 を 始 動 す る に 当 り 2
'ha
フ
ヤ
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・
側 m よ 阪きの転
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無 板のけ
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3・ と 円 ) う
外 9 の円大開回お
5・ よ 矢 け る タ
L して乙)り持け
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板保
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(
F
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tv
i
制)
2
4
2
ノ
Jが大きく
,モータ本体が始動
し や す い と 巧 え ら れ る 。 しかし,
l使 川 し た マ イ ク ロ モ ー
実 験 機ζ
タはその時点で回転力は弱く ,
その磁附が反発力によって小明
円板の 1
1
:
11転方的!と逆方向 I
L/
Jを
うけ,マイクロモータ自身が同
J
、可リ円
事天しない 。 したがっ て ,I
板の間転速度はある程度法くす
る必要がある。
l他方
と乙 ろで, 一 方 の 磁 柑 ζ
の 磁 械 が 高 速 度 で接近すると,
F
i
g
.
4 Ac
1ose-rangeview
反発力が弱いためモータ本体が
回転を開始しない。
(a)
込 くう~
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〆
1
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A newmotor havi
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r sma
l
L discs
そのためモータ本体もある程度回転させて小型円板の磁極の接近する相対速度を遅くしてやる必要
がある 。
乙の よ う に し て 始 動 す る と モー タ 本 体 は 回 転 原 理 に 基 づ き 回 転 を 持 続 す る 。
2.
3 永久磁石とマイクロモータ
実 験 機 K使 用 し た 永 久 磁 石 は ア ル ニ コ 棒 磁 石
また,マイクロモータは
AR-l,A M-5
0Nの 2種 である 。
D.C. MAGNET MOTER RS540Sを用い た。
2
4
3
3
. 実験機の性能
3
.1 回 転 数
T
a
凶eI
回転数測定にはストロボスコープを使用した。
測 定 は 小 型 円 板 l個 の と き に つ い て 行 っ た
o
(
マイクロモータ l個 , 電 圧 0
.8γ)回転数として
R
e
l
a
t
i
o
nb
etweenthe number
and thea
p
p
l
i
e
d voltage o
fmにromotorand the number o
fr
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o
l
u
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i
o
n o
f motor
は 700rpm以 上 の 値 が 得 ら れ た o またマイクロ
モータの数を増加し,電圧も増して回転数を増
0.55
加させればモータ本体の回転数はさらに増大す
ま氾
7
0
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ε
:
e600
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号
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a印 刷 叫 age0
1motor
同 83tz:drT
時
u
r
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吋
るととが Table1か ら 推 察 さ れ る 。 な お 参 考 の た め F
i
g
.
7陀 マ イ ク ロ モ ー タ の 電 源 電 圧 に 対 す る モ
ータ本体の回転数を示す。
3.2
卜
}
I
,
.
ク
トルク測定法として F
i
g
.
8Il.示すようにモータ本体の軸に糸を回転方向と逆方向に捲きつけて,
一端をばねばかりに他端比重りをつるす方法を用いた。重りを変化させるととによって速度が変化
し , そ の と き の ト ル ク は 軸 の 左 端 K着目して,
Tニ r (W -WO )…一一…・………………………………………………………...・ ・
.
.(
I
)
H
と乙で
T 角 速 度 が ωの と き の ブ レ ー キ ト ル ク
r 軸の半径, W
重 り の 重 さ ( ま た は 力 ),
Wo: ば ね ば か り の 読 み の 重 き ( ま た は 力 )
(1)式のトルク TIl.軸受摩擦トルクだとか風損トルクなどを加えたものがモータの発生トルクと
な る が , 乙 乙 で は マ イ ク ロ モ ー タ の ト ル ク と モ ー タ 本 体 の ト ル ク と の 比 較 を 目 的 と す る た め Tを発
生トルクと考える。
F
i
g
.
8
1
L基 づ き マ イ ク ロ モ ー タ お よ び モ
ー タ 本 体 の ト ル ク を 測 定 し た 結 果 Tab
ユell
のようになった。同表よりモータ本体のト
5倍 以 上
ルクはマイクロモータのトルクの 1
という結果を得たが,回転数はマイクロモ
T
a
b
l
e
l
l Torguesi
nm
i
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r
o
m
o
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円1
o
t
o
r
2
4
4
ータに比べて少なく,
トルク測定時において 3
0
0rpmで あ っ た 。 測 定 時 マ イ ク ロ モ ー タ 電 源 電 圧 は
0
.
4
γ ,電流はl.1Aである。
次ζ
t
P=2πT・旦(kg・
m/s)
6
0
1HP=7
6kg.m/s=746W
によってモータ本体の出力を求めると1.伺 Wであり,馬力 l
e換算すると1.45X1
0
-3HPであった。
4
. 性能増強のための改善の要点
本 実 験 機 に お い て は モ ー タ 本 体 の 磁 極 数 は 8個 と し た が , そ の 理 由 は 磁 極 数 が 多 い 場 合 に は , 磁
極閣の間隔が狭くなり,マイクロモータ側の磁極が接近したときに回転持続肢態を空じやすくなる
が,すぐ次の磁極(モータ本体側)が接近していて,それが回転方向と逆方向の反発力を受けて回
転力が増加しない。このような事情より 8個を最良と判断した。
したがって, ζ れ以外に何等かの方法によって反発力の増大をはかる必要がある。
4
.
1
U字 型 永 久 磁 石 の 利 用
実 験 機 に お い て 構 造 上 棒 磁 石 の S極のみを磁極として使用したが, N
N
S
N
5
極 を も 有 効 に 利 用 す る た め U 字型磁石の利用が考えられる。 F
ig.9のよ
うに U字型磁石を 2枚 の 円 板 で は さ み 画 定 し た も の を モ ー タ 本 体 お よ び
マ イ ク ロ モ ー タ 側 磁 極 回 転 体 と し て 用 い る と と に よ り , モ ー タ 本 体 は S,
N両 極 の 反 発 を 同 時 に う け る
ζ
とが可能となり,棒磁石の場合の 2倍の
反発力をうけて回転することになる。したがって回転数およびトルクの
増大が可能となるであろう。
4
.
2 磁極の多重層化
前 節 で は N極 を 使 用 す る た め の U字型永久磁石の利用について述べた。
しかしながら, U字 型 永 久 磁 石 で は 同 磁 極 の 反 発 力 増 大 は 2倍 で し か な
い。そこで Fig.
1
0の よ う な 棒 磁 石 の 多 重 層 化 が 考 え ら れ る 。 こ の 方 式
日♀ 9 M
o
t
e
rh
a
v
i
n9
Ul
e
t
t
e
rt
y
p
e
permanent
magnet
であれば磁極における反発力はマイクロモータの回転力がゆるす限り増
加できる。
E モータの変形および応用
5
.1 永 久 磁 石 の 吸 引 力 に よ る 無 捲 線 モ ー タ
永久磁石の反発力はきる
ζ
とながら吸引力もまた強大であ
ig.ll のような構
る。したがって吸引力による回転駆動も F
5
11
5
11
5
1
1
5
11
5
11
5
5115115
5115115
成 に お い て 可 能 で あ る と 衰 え ら れ る 。 し か し 吸 引 力 K よって
回転方向と逆方向へうける力の強さは反発力によるそれより
も強いとみられ,回転数の多きでは反発力の利用の方が有利
であると思える。しかしながら,乙の方法は構想の段階であ
り明瞭なととは言えない。
F
i
g
.
l
0 Multilayer permanent
magnet
2
4
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gforceofperman
e
n
tmagnets
F
i
g
.
1
2 Pumping-up powe了 generation
systemused fresnel ユense.
5.2 本モータの応用
本実験機の応用として揚水発電方式におけるポンプ駆動の動力源としての利用が考えられる。
Fig.12 は乙れまで本学電力工学実験室で研究されていたスターリングエンジン使用による揚水
発 電 方 式 2)の原理図である。スターリングエンジンは大陽熱の供給が不十分な秋,冬または夜間な
1
2 のス
どにその効用が認められないため,その代用としての本実験機の利用が考えられる。 Fig.
ターリングエンジンの部分に本モータを置換えるわけである。ポンプ 1基について本モータを使っ
て揚水した結果では約 2mの揚程がえられた。
6
. 結 言
本研究において実験機を試作し,モータ本体が永久磁石の反発力だけで回転駆動するととができ
た。さらに,乙の実験機を使ってトルクの増大巻計り,今後野外での諸曹の機器の原動機としての
可能性を確みるととができた。しかし今後さらに反発力を増大させるなどの改善を行い性能の向上
を目指す必要がある。
参考文献
1)池尻忠夫,特許出願
6
1-0
1
6
4
9
5
2
) たとえば福井新聞
昭和 6
1年 1月 1
7日
記事、大出力も可能磁石発電装置 9
3
) 池 尻 忠 夫 他 3名,福井大工報, 34, 1
0
7(
19
8
6
)
2
4
6
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