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大規模園芸用プラスチックフィルムハウス設置事例集
大規模園芸用 プラスチックフィルムハウス 設置事例集 一般社団法人 日本施設園芸協会 はじめに 近年、ハウス内の環境制御による園芸作物の生産の効率化を図ることを目的 として、農林水産省が推進している次世代施設園芸拠点をはじめ、全国各地 で大規模な園芸用のプラスチックフィルムハウスの設置事例が増加しています。 農林水産省では、このような高度な施設園芸を地域に展開していくこととしてお り、今後このような大規模なハウスの設置が一層進むことが予想されます。 しかしながら、国内における大規模なハウスの仕様は、気候や発生し易い災 害等の違いにより、地域による差などが大きいことから、本事例集では、全国 の大規模園芸用プラスチックフィルムハウスを対象に調査して、その仕様をまと めました。大規模施設園芸の取組意向のある事業者が仕様を検討する際に、 本事例集を参照いただくことにより、今後の国内の大規模園芸用施設の標準化 に資すると期待するものです。 また、本事例集では、被覆資材、基礎の形状、耐候性等を掲載しました。 大規模園芸用プラスチックフィルムハウスの実態に係る理解を深めていただくた めの参考としてご活用いただければ幸いに存じます。 一般社団法人 日本施設園芸協会 2 本資料の対象となる施設 (大規模園芸用プラスチックフィルムハウスとは) プラスチックフィルムハウスとは、農業用の塩化ビニルフィルムやポリオレフィン系フィルム、フッ素フィ ルム等により被覆し、園芸作物の栽培を目的とした施設を指す。本資料では、大規模園芸用プラスチッ クフィルムハウスとして概ね 5000m2(0.5ha)以上のプラスチックフィルムハウスを対象とし、ガラスハウ ス及び不特定多数が利用する施設については対象外としている。 なお、本資料に掲載した施設は、農林水産省の補助事業で整備したものであり、(一社)日本施設 園芸協会が作成した園芸用施設安全構造基準に準拠している。 ○ 記載項目 地目 ・・・・・・・・・不動産登記規則及び不動産登記手順規則事務取扱における分類 区域区分 ・・・・・・・都市計画法における区域区分 農振法における取扱・・農業振興地域の整備に関する法律における設置地域の取扱 被覆資材 ・・・・・・・施設内の保温等を目的として、屋根及び壁を被覆する資材 基礎形状 ・・・・・・・外周部の柱を支える基礎の形状 床の状態 ・・・・・・・施設内の床面の状態 耐候性 ・・・・・・・・ハウスが耐えうる風速又は積雪荷重 軒高 棟高 奥行 間口 3 用語集 PO 系フィルム : 農業用ポリオレフィン系特殊フィルムの略。軽く取扱いやすいことが特長。 耐久性は2年∼10 年程度と商品により差がある。 フッ素フィルム : 経年劣化が極めて少なく、10 ∼ 20 年以上の長期展張が可能。 マルチフィルム : 主に土壌を被覆するフィルムを指し、地温の上昇や防草などの効果がある。 防草シート : 土壌を被覆して、雑草などを防ぐ不織布等のシート。 長期多段栽培 : 高軒高ハウスにおいて、年 1 作で長期間にわたり栽培する方法で、年間 30 段程度の果房が収穫され、多収化が可能。主にトマトやパプリカで普及して いる。 土耕栽培 : 従来農業のように、土壌を培地として使う栽培方法。 養液栽培 : 培地として土を用いずに、作物の生育の必要な養水分を、水に肥料を溶かし た培養液として与えて栽培する方法。 高設栽培 : 土壌に作付するのではなく、架台に栽培ベッドを設置して作付する。栽培位 置が高く、作業性が良いことが特長で、 イチゴなどで普及している。 フィルム農法 フィルムの上で作物を栽培する方法。 土 : 水と養分を通すフィルムを敷設して、 壌病害のリスクが少なく、 根に水分ストレスがかかるため、 糖度が高くなる。 ロックウール : 玄武岩と鉄鉱石の鉱砕などにケイ石を混合して高温で熔融し繊維状にした 人造鉱物繊維。高い保水力を有し、土壌性病原菌がいない優れた培地とし て、普及している。 選果・出荷 : 作物を収穫した後、収穫物を等級に選別し、梱包すること。 建築主事 : 都道府県又は市町村において、建築確認に関する審査事務等を司る者。 特定行政庁 : 建築主事を置く市町村の長、並びに、それ以外の市町村においては都道府県 の長(一般的には、その行政庁を指す。) 。 独立基礎 : 建築物又は工作物の柱を支える基礎で、各々独立しているもの。 布基礎 : 建築物又は工作物の外周の基礎で、連続しているもの(一般的には、逆 T 字 型) 。 本誌に記載する各事例については、その被覆資材が簡易に取り外せることから各特定 行政庁において「建築物でない」と判断されています。 注意: 建築物への該当・非該当の判断は、特定行政庁の建築主事が行うこととなっており、本 資料に記載した内容は当該施設を設置した特定行政庁の建築主事が判断したものです。 また、本事例集をもって、全国一律で建築基準法の解釈を示すものではありません。 4 こ う だ か トマトの高軒高ハウス ① 事例 1 設置状況 の き 設置地域 九州地方 設置年 2007 年 地目 雑種地 区域区分 非線引き都市計画区域 農振法における取扱 農用地区域 設置面積 1.4ha 8m×100m×15 連棟 間口、奥行、連棟数 8m×92m×1連棟 8m×40m×4連棟 調査対象 軒高、棟高 5.0m、7.0m ハウスの 被覆資材 フッ素フィルム 施設概要 基礎形状 独立基礎 マルチフィルム又は防草シート 床の状態 展張 通路はコンクリート打設 栽培概要 耐候性 耐風速 50m/s 以上 栽培作物 トマト 栽培期間 11 月∼6月 栽培方法 長期多段栽培、養液栽培 5 備 考 トマトの高軒高ハウス ② 事例 2 設置地域 中国・四国地方 設置年 2007 年 地目 田 区域区分 都市計画区域外 農振法における取扱 農業振興地域 設置面積 0.8ha 間口、奥行、連棟数(棟数) 4.5m×54m×11 連棟(3棟) 調査対象 軒高、棟高 3.5m、4.7m ハウスの 被覆資材 PO 系フィルム 施設概要 基礎形状 独立基礎 床の状態 防草シート展張 耐候性 耐風速 50m/s 栽培作物 トマト 栽培期間 7月∼6月 栽培方法 長期多段栽培 設置状況 栽培概要 6 備 考 トマトの高軒高ハウス ③ 事例 3 設置状況 調査対象 ハウスの 施設概要 設置地域 関東地方 設置年 2015 年 地目 田 区域区分 市街化調整区域 農振法における取扱 農用地区域 設置面積 1.6ha 間口、奥行、連棟数(棟数) 6m×81m×8連棟(4棟) 軒高、棟高 4.0m、6.2m 被覆資材 PO 系フィルム 基礎形状 独立基礎 マルチフィルム展張 床の状態 栽培概要 通路は鉄板を敷設 耐候性 耐風速 50m/s 栽培作物 トマト 栽培期間 8月∼6月 栽培方法 長期多段栽培、土耕栽培 7 備 考 パプリカの高軒高ハウス 事例 4 設置地域 関東地方 設置年 2007 年 地目 田 区域区分 市街化調整区域 農振法における取扱 農用地区域 設置面積 1.5ha 間口、奥行、連棟数 9.6m×107.5m×15 連棟 軒高、棟高 5.0m、7.5m 調査対象 被覆資材 フッ素フィルム ハウスの 基礎形状 独立基礎 設置状況 施設概要 床の状態 耐候性 栽培概要 防草シート展張 通路はコンクリート打設 耐風速 50m/s 耐積雪荷重 42kg/m2 栽培作物 ピーマン(パプリカ) 栽培期間 9月∼7月 栽培方法 養液栽培 8 備 考 選果作業棟 0.1ha 併設 1棟が2ha以上の大規模ハウス ① 事例 5 設置地域 東北地方 設置年 2015 年 地目 田(一部、畑、雑種地あり) 区域区分 都市計画区域外 農振法における取扱 農用地区域 設置面積 2.0ha 間口、奥行、連棟数 8m×100m×25 連棟 軒高、棟高 5.0m、5.8m 調査対象 被覆資材 フッ素フィルム ハウスの 基礎形状 鉄筋コンクリート独立基礎 設置状況 施設概要 栽培ベッド部分はシート展張 床の状態 通路はコンクリート打設 耐風速 41.2m/s 耐候性 栽培概要 耐積雪荷重 35kg/m2 栽培作物 トマト 栽培期間 8月∼6月 栽培方法 養液栽培 9 備 考 1棟が2ha以上の大規模ハウス ② 事例 6 設置地域 東海地方 設置年 2005 年 地目 畑 区域区分 市街化調整区域 農振法における取扱 農業振興地域 設置面積 2.0ha 間口、奥行、連棟数 8m×204m×12 連棟 調査対象 軒高、棟高 4.0m、4.3m ハウスの 被覆資材 PO 系フィルム 施設概要 基礎形状 布基礎 床の状態 通路にコンクリート打設 耐候性 耐風速 50m/s 以上 栽培作物 トマト 栽培期間 8月∼6月 栽培方法 長期多段栽培 設置状況 栽培概要 当該特定行政庁 の判断 備 考 ・選果・出荷スペースも含め、被覆資材が簡易に取り外し可能であるため、建築物ではない。 10 イチゴの大規模ハウス ① 事例 7 設置状況 設置地域 東北地方 設置年 2014 年 地目 田 区域区分 非線引き都市計画区域 農振法における取扱 農用地区域 設置面積 0.7ha A:8m×39m× 単棟 間口、奥行、連棟数(棟数) 調査対象 ハウスの 施設概要 B:8m×75m×3連棟 C:8m×69m×4連棟 (2棟 ) 軒高、棟高 3.0m、5.1m 被覆資材 PO 系フィルム 基礎形状 独立基礎 床の状態 防草シート展張 耐風速 :34m/s 耐候性 栽培概要 耐積雪荷重 :29kg/m2 栽培作物 イチゴ 栽培期間 9月∼6月 栽培方法 養液栽培、高設栽培 11 備 考 イチゴの大規模ハウス ② 事例 8 設置状況 調査対象 ハウスの 施設概要 設置地域 東北地方 設置年 2014 年 地目 田 区域区分 市街化調整区域 農振法における取扱 農用地区域 設置面積 1.0ha 間口、奥行、連棟数(棟数) 8m×99m×6連棟(2棟) 軒高、棟高 3.0m、5.1m 被覆資材 フッ素フィルム 基礎形状 独立基礎 床の状態 防草シート展張 耐風速 50m/s 耐候性 栽培概要 耐積雪荷重 50kg/m2 栽培作物 イチゴ 栽培期間 9月∼6月 栽培方法 高設栽培、養液栽培 12 備 考 工場跡地における大規模ハウス 事例 9 分析室 設置状況 設置地域 関東地方 設置年 2010 年 地目 宅地 区域区分 市街化区域 農振法における取扱 農業振興区域外 設置面積 0.9ha A:8m×32m×4連棟(3棟) 間口、奥行、連棟数(棟数) 調査対象 ハウスの 施設概要 B:8m×72m×9連棟 軒高、棟高 5.2m、6.1m 被覆資材 フッ素フィルム 基礎形状 布基礎 床の状態 防草シート展張 耐風速 50m/s 耐候性 栽培概要 耐積雪荷重 50kg/m2 栽培作物 トマト、パプリカ 栽培期間 8月∼7月 長期多段栽培 栽培方法 当該特定行政庁 の判断 養液栽培(ロックウール) ・分析室や打合室、事務所を含む棟は建築物として整理。 13 備 考 展示・見学スペースを併設したハウス 事例 10 展示・見学 スペース 設置地域 中国・四国地方 設置年 2010 年 地目 雑種地 区域区分 非線引き都市計画区域 農振法における取扱 農業振興区域外 設置面積 0.7ha 被覆資材 フッ素フィルム 調査対象 基礎形状 独立基礎 ハウスの 床の状態 防草シート展張 設置状況 施設概要 栽培概要 当該特定行政庁 の判断 耐風速 34m/s 耐候性 耐積雪荷重 61kg/m2 栽培作物 トマト など 栽培期間 周年 栽培方法 長期多段栽培(トマト) ・栽培スペースについては、 「建築物」として扱わない。 ・来場者向けの展示及び見学スペースは「建築物」として扱い、建築確認済である。 ※栽培スペースと見学スペースは隣接しているが、明確にスペースを区分できる。 14 備 考 ハウスが大規模に集積している事例 事例 11 設置状況 設置地域 九州地方 設置年 2015 年 地目 田 区域区分 都市計画区域外 農振法における取扱 農用地区域 設置面積 4.1ha A:5.4m×91.5m×11 連棟 (2棟 ) 間口、奥行、連棟数(棟数) B:5.4m×91.5m×10 連棟 (5棟 ) 調査対象 C:5.4m×91.5m×6連棟 (2棟 ) ハウスの 軒高、棟高 2.5m、3.5m 施設概要 被覆資材 PO 系フィルム 基礎形状 独立基礎 床の状態 土壌 耐候性 耐風速 50m/s 栽培作物 きゅうり、ピーマン 栽培期間 9月∼6月 栽培方法 土耕栽培 栽培概要 15 備 考 ハウスが大規模に集積している事例 事例 12 (積雪地) 設置状況 設置地域 北陸地方 設置年 2015 年 地目 山林(一部、農地、雑種地あり) 区域区分 都市計画区域外 農振法における取扱 農業振興区域外 設置面積 4.1ha A:24m×81m、単棟(7棟) B:24m×102m、単棟(2棟) 間口、奥行、連棟数(棟数) C:20m×51m、単棟(4棟) D:20m×60m、単棟(15 棟) 調査対象 ハウスの 施設概要 軒高:全棟 3.0m 軒高、棟高 棟高:A,B 棟 9.0m、C,D 棟 8.0m 被覆資材 フッ素フィルム 基礎形状 独立基礎 床の状態 防草シート展張 耐風速 35m/s 耐候性 栽培概要 耐積雪荷重 50kg/m2 栽培作物 トマト、花き 栽培期間 周年 栽培方法 長期多段栽培、養液栽培 16 備 考 積雪地における大屋根連棟ハウス 事例 13 設置状況 設置地域 北陸地方 設置年 2015 年 地目 雑種地 区域区分 非線引き都市計画区域 農振法における取扱 農用地区域 設置面積 3.7ha A:12m×105m×10 連棟 12m×54m×6連棟 間口、奥行、連棟数(棟数) 調査対象 ハウスの 施設概要 B:12m×105m×13 連棟 12m×54m×6連棟 軒高、棟高 4.0m、7.0m 被覆資材 フッ素フィルム 基礎形状 独立基礎 防草シート展張 床の状態 通路はコンクリート打設 耐風速 37m/s 耐候性 栽培概要 耐積雪荷重 26kg/m2 栽培作物 トマト 栽培期間 8月∼6月 栽培方法 長期多段栽培、フィルム農法 17 備 考 本事例集は、平成 27 年度次世代施設園芸導入加速化支援事業(全 国推進事業)標準化検討専門委員会において研究者、施設園芸生 産者、施設園芸メーカー、特定行政庁建築主事のご意見をいただ き、それを踏まえて、農林水産省生産局園芸作物課、国土交通省 住宅局建築指導課をオブザーバーとして、一般社団法人 日本施設 園芸協会が作成したものです。 平成 27 年度次世代施設園芸導入加速化支援事業 ( 全国推進事業)事業報告書 ( 別冊 1) 大規模園芸用プラスチックフィルムハウス設置事例集 一般社団法人 日本施設園芸協会 〒103-0004 東京都中央区東日本橋 3 丁目 6 番 17 号 山一ビル 4 階 電話 03- 3667- 1631 FAX 03- 3667- 1632 18