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平成16年度 活動記録

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平成16年度 活動記録
平成 16 年度
富士山麓医療関連機器製造業者等交流会活動記録
第 1 回
■講演
「試薬メーカー ビーエルの経営戦略」
講師
株式会社ビーエル 代表取締役 野中 浦雄 氏
■日時
平成 16 年 7 月 22 日(木曜日) 午後 5 時から 8 時まで
■会場
フジロイアルプラザホテル(富士市水戸島 290 番地の 1)
■要旨
1
分析化学との出会い
従来は主に三菱化学ヤトロンが、臨床検査に用いる生化学用自動分析装置の開発や専用試薬の
開発などを積極的に行い、自動分析装置等も普及していた。これは有機的な化学反応を利用した
化学法である。しかし、野中氏は、酵素利用による研究に取り組み、酵素法を開発、その方法論
を確立した。この方法を確立するにあたっては、酵素関係を得意分野としている酒造メーカーと
連携し、共同開発を行った。この酵素バルクメーカーとの連携が開発、商品化への大きな成功ポ
イントとなった。
2
抗原抗体反応との出会い
大学において薬品分析化学を選択したことが、社会に出て分析分野を研究する第一歩のきっか
けとなった。その後、体外診断用薬品業界に転向し、研究開発をはじめ商品開発にも参画する。
ここで培ったノウハウを生かし、新たな体外診断用薬品会社の設立に携わるとともに同社の商品
研究開発、学術、企業間取引、生産及び輸出入取引に従事する。しかし、企業が安定してくると
得意分野だけの身近な研究開発が主体となり、創業当初の旺盛な研究開発意欲が保たれなくなっ
た。
3
創業のきっかけ
これを機に独立して、体外診断用試薬(妊娠診断薬)の研究開発とその製造を行う、株式会社
タウンズを設立。以降、商品企画と研究開発に特化した株式会社ビーエルを設立。企画、研究、
開発と製造、販売を分離し、体外診断用試薬のみに止まらず、研究用試薬、環境検査用試薬、実
験動物試薬を開発する等、創業の初期の目的である旺盛な研究開発意欲を保っている。この他に
も、関連企業として環境しずおかも設立している。
4
商品開発・製造・販売
・株式会社ビーエル
企画、開発-共同研究(県沼津工業技術センター、沼津工業高等専門学
校、東京工業大学)
・株式会社タウンズ
製造-治験(病院)
・販売会社
①企画、開発は、国際的にも新しく、必要とされている製品の開発を行う。
②共同研究は、企業、研究所、大学等を含む異業種産業からアイディア、技術の導入、基礎材
料の入手に役立っている。
③治験(病院)は、研究開発した製品の性能チェックをはじめ現場ニーズの吸収に役立ってい
る。また、需要家である病院をネットワーク化してある。
④販売については、常に販売力のある会社をチェックしている。
5
事業化について
体外診断用試薬(ヒトをサンプルとして開発をする。)、研究用試薬(免疫反応を利用して開発
をする。)、微生物培養検査等、これまでに蓄積されたノウハウを生かして、環境検査用試薬関連
(環境をサンプルとする。)、実験動物用試薬(動物をサンプルとする。)、新しい業種での試薬の
開発(食品をサンプルにする。)を開発、事業化してきた。
6
培養と簡易検査
レジオネラ菌属を例にとると、培地の開発に関しては固形培地を大阪市立大学医学部、液体培
地については沼津工業技術センターと基礎研究を行うとともに、迅速確定診断と簡易検査法とを
組み合わせて、レジオネラ菌属の簡易検査を可能にした。
7
イムノクロマトグラフィー法(新簡易検査法)
検体中の抗原と色素標識抗体及び捕捉抗体の 3 者を利用し抗原抗体反応を形成させ、その反応
によって現れた標識色素を確認する測定方法。
(コロイド標識抗体、抗体の固相化、モノクローナ
ル抗体を利用した検査法)
この新簡易式検査法を開発したことにより、カンジダ、レジオネラ菌属、結核菌群、インフル
エンザウイルス、大腸菌群、O-157 などが短時間で検査できるようになった。
8
イムノクロマト法の原理
サンプリングパットの試料滴下部に抗原に入った試料を滴下し、一定時間放置してから判定部
のテストライン及びチェックラインの発色の有無を確認する。テストライン及びチェックライン
の両方が発色していれば陽性、チェックラインの発色は陰性として判定する。
9
イムノクロマト・キットの構成
プラスチック(ハウジング)、紙(包装資材)、ガラス繊維(コンジュゲートパッド)、ニトロセ
ルロース膜(メンブレン)からなっている。
それぞれの部材は同社のキットを完成させるために共同研究を行った県内企業が供給している
(一部県外)。
10
結核、日本最大の感染症
1980 年代以降、患者数の減少傾向が足踏み状態となっている。年間 4 万人以上が発病し、3 千
人近くが死亡している。この結核の感染を早期発見する目的で簡易検査法キットを開発。これま
で検体を培養して陽性、陰性の判定をするまで 2~3 か月かかっていた期間を 2~3 週間で判定で
きるまでに短縮した。この技術を特許化し世界中で当社だけのオンリー・ワン商品にした。今後
は、世界のナンバーワン商品を目指したい。
同様の商品として、インフルエンザや鳥型インフルエンザ、下痢原性大腸菌などの感染症を早
期に発見するための試薬を中心に商品化してきた。
11
研究・開発に関する戦略
当社の技術の根幹をなすイムノクロマトグラフィー法を活用しての研究開発依頼が、新たな研
究開発のタネになっている。他社からのアプローチで多いのは、以前に共同研究を行った実績の
ある大学、公的研究機関や企業の紹介が主となっている。これが新たな大学、公的研究機関や企
業の連携につながっている。
自社が研究、開発にアプローチする場合や他社と組んで研究開発を進める場合は、特許性、販
売実力の見極めを行ってから行動を起している。このため常に異業種の動向、考え方等を把握す
る必要があり、工業技術センターや県など行政、本医療交流会、ファルマバレーセンターとその
交流会、商工会議所との接触及び参加を欠かさない。この中から、パートナーとなる企業の発掘、
情報をとおして新たな研究テーマのシーズを発掘している。
成果として、人と環境の共生を目的としたレジオネラ属菌の簡易検査キットを製品化している。
12
日本から世界へ向けて
展示会、関連学会へ積極的に参加することで、商品のもつ機能、優位性、有効性などをアピー
ルしている。近時では米国サンフランシスコで開催された BIO2004 にも出展し、一定の反響を得
ることができた。また、中国浙江省にも合弁会社を設立し、浙江大学と共同研究も行っている。
13
新たな開発体制を目指して
ファルマバレー構想の一環として、文部科学省の支援を受けた都市エリア事業の構成員となり、
遺伝学研究所をはじめ県立がんセンター、大学・高専、公的研究機関等と、遺伝子を活用しての
最先端の研究開発にも新たに着手する。
14
これからもビジネスチャンスはある
何時の時代にもビジネスチャンスはある。チャンスをつかむには感性と独創的な戦略、それに
忍耐が必要=新事業成功の要件
・自分の持つ力と信用をもとに、短期的な事業目標を先ず達成し、次に将来の目標を目指す。
・自分の積み上げてきた分野から大きく外れない世界で、一段上の事業目標を持つ。
・自分を取り巻く環境を大切にする。
・最低限の資金と人を有効に生かす。
・夢をもって、夢を追って、実現する。
15
ビーエルの夢
・分析試薬という物指を治療、予防、健康、環境のために役立てる。
・事業の発展的継続
・分析は、傾向をつかむ物指でしかない。対策とその評価の産業化を特定な分野から始める。
・静岡県東部から世界へ
第 2 回
■講演
「老人福祉施設における福祉用具の現状と問題点」
講師
特別養護老人ホームひだまりの郷 ケアワーカー 森田 敦 氏
■プレゼンテーション
説明者
「転倒防止装置の研究開発」
東海大開発工学部医用生体工学科 助教授 影山 芳之 氏
■日時
平成 16 年 8 月 24 日(木曜日) 午後 5 時から 8 時まで
■会場
フジロイアルプラザホテル(富士市水戸島 290 番地の 1)
■要旨
1
講演
⑴
「老人福祉施設における福祉用具の現状と問題点」の要旨
ひだまりの郷の概要
ひだまりの郷は、ベッド数 80 床で、うち 10 床がショートステイ用。職員は管理責任者が 1
人、生活相談員が 2 人、ヘルパー26 人、看護師が 1 人。 利用者は 60 歳代から 90 歳代で、最
高齢者は 96 歳。最も若い方が 67 歳である。利用者の男女比は 3 対 7、要介護度は 1 から 5 の
間の方である。
⑵
介護老人福祉施設利用者の 1 日の生活と、生活場面における福祉用具の利用状況
午前 6 時に起床。利用者をベッドから食堂に、車椅子を利用して誘導する。利用している車
椅子は自走式が 8 割、介助用が 2 割。介助用の半数がリクライニング式。フレームはほとんど
折りたたみ式である。レバーやフットレストが外れるものの方が介護しやすいのだが、使われ
ていない。車椅子の問題点として、座り心地が悪い、高価なため新製品が購入できないことが
挙げられる。
午前 7 時 30 分に朝食。食堂で利用者の洗顔を行う。その後、食堂で朝食を摂る。この時、福
祉用具は使用していない。それは、介護用として様々なスプーンがあるが、自己負担となるか
らである。ちなみに介護用のスプーンは、グリップの形状や材質を変えて、麻痺や握力が低下
しても持てるように工夫されている。価格は 2,000~5,000 円程度。
午前 8 時 30 分に排泄介助。毎食後に排泄介助は行っている。介助方法は、利用者の日常可能
な動作レベル(以下 ADL)に応じて、次の 3 段階に分かれている。
①寝たきりの方
オムツを使用
②座位保持が可能な方
ポータブルトイレを使用
③立位保持が可能な方
トイレを使用
ポータブルトイレは、ポリプロピレン製のものを使用。ほとんどが施設で所有している。木
目調のものもあるが、ほとんど使われていない。問題点としては、木目調は重いため移動し難
い、ポリプロピレン製は軽いため寝ている状態から座る際に転倒の危険性がある、高価なため
購入しづらいことが挙げられる。
トイレでは、L 字型手すり、可動式手すりを使っている。L 字型は主に便器に座る時に使う
が、便器へのガイドの役割も持っている。また、可動式は、立つ時や踏ん張る時に使う。なお、
タンクに物を入れてしまう方がいるため、蓋のないキャビネット式の便器が有効である。この
他、夜間トイレに行こうとして、転倒するケースがある。自動照明が必要と思われるが、コス
トの点で導入に踏み切れない。
この後、午前 10 時におやつ、午前 11 時 30 分に排泄介助、午後零時に昼食、午後 1 時に排泄
介助がある。
午後 6 時に夕食を摂り、その後に口腔ケアを行う。口腔ケアには歯ブラシ、吸引ブラシを使
っている。歯ブラシは一般用を使用。歯のない方も、歯茎のマッサージによる歯茎縮小の防止
や嚥下能力向上といった目的から、ブラッシングを行っている。毛先のとがったタイプは痛が
る方が多いため、使っていない。また、吸引ブラシは吸引機に接続して使い、ブラシで残渣物
を取った後にノズルで吸引している。吸引ブラシは嚥下能力の弱った方に使い、食物残渣や痰
がよく取れると好評である。しかし、ブラシや痛み易く寿命が短い、高価かつ個人負担のため
家族の負担が増えるという問題点もある。
午後 9 時に就寝。利用者を食堂からベッドに誘導し、就寝となる。ひだまりの郷では、電動
2 モータ式ベッドを使っている。布団の利用者は全体の約 1 割。布団からの立ち上がりが困難
な方が多いため、止むを得ずベッドを使う方が多い。この点については、布団から車椅子への
乗換えを容易にする補助具がないか、また布団に高さ調節機能が付加できないかと考えてはい
る。
入浴は利用者の ADL に合わせて一般浴と機械浴を行っている。一般浴は、歩行可能な方は浴
槽に自力で入浴し、歩行困難な方はリフトを使って入浴する。機械浴は、歩行不可能な利用者
の入浴に使っている。ひだまりの郷では使っていないが、機械浴で吊上式リフトを使っている
と施設は多い。リフトは操作が簡単である反面、乗った人が恐怖感を覚える、吊り具の装着が
複雑で扱いづらいという問題点がある。
ひだまりの郷では、事故防止策として東海大学の影山先生が製作された転倒防止装置を試験
的に導入した。導入後は、転倒事故が激減。また、エレベータでの事故を防ぐため、暗証番号
のテンキー入力することで利用できるようにした。
⑶
現場で求められる福祉用具とは
ア
福祉用具に対する現場の声
福祉用具に対する現場の意見で最も多いのが「高くて手が出せない」というもの。福祉用
具の費用負担者はほとんどが家族である。しかし、高齢化の影響により老老介護の割合が増
加。収入源が年金であるため、介護者である家族の経済的負担は大きい。
次に多い意見は、
「利用者が、使うことに対して抵抗がある」というもの。利用者は 80 代
の方が多く、機械に抵抗感のある世代である。介護職員には使い勝手が良いが、利用者にと
っては不快な場合が多い。
イ
今後、福祉施設で必要な福祉用具とは?
先ず、安価であること-現状は、経済的に購入が難しいことが多い。
次いで、利用者主体であること
利用者の心理は無視できない。使う側には良くても、利
用者に苦痛を与える場合がある。
そして、抵抗なく使えること-利用者が、抵抗なく使える福祉用具が必要。福祉用具に人
のぬくもりが加えられればベストである。
2
プレゼンテーション
「転倒防止装置の研究開発」
この内容についての詳細は開発テーマとなるため、公表できません。
第 3 回
■講演
「医療用具に使用される樹脂の基礎知識」
講師
東海大学開発工学部医用生体工学科 教授 望月 明 氏
■プレゼンテーション 「平成 16 年度多角的連携指導強化事業 ものづくり支援ネットワーク事業」
説明者
静岡県中小企業団体中央会 東部事務所 副所長 植田 勝智 氏
■日時
平成 16 年 9 月 24 日(金曜日) 午後 5 時から 8 時まで
■会場
フジロイアルプラザホテル(富士市水戸島 290 番地の 1)
■要旨
1
「医療用具に使用される樹脂の基礎知識」の要旨
⑴
医療用具とは
ア
治療補助・・・注射器、各種汎用カテーテル、血液フィルタ
イ
治療用・・・PTCAカテーテル、ステント、腹腔鏡
ウ
機能代替・・・一時的
人工心肺、人工皮膚。継続的
人工腎臓、人工関節、人工血管/
弁
エ
⑵
その他・・・真空採血管、輸液/血液バッグ、輸液/血液セット
医療経済の動向
ア
治療の包括化(定額性)が始まる。
病院
治療にかかる医療器、医薬品の削減、価格の引き下げ要求
メーカー
イ
生産コストの削減、特徹ある商品の提供2
公定価の切り下げ
公定価の切り下げ
病院
差益幅の減少
メーカー
売上額/利益の減少
『安く特徴のある商品をいかに作るか』
⑶
環境問題の影響
ア
廃棄性
医療廃棄物は焼却処分が前提
焼却時の安全性
イ
有寺ガスの発生有無、廃棄物量の削減
環境ホルモン
可塑剤、残留モノマー、分解性生物
ウ
大気問題
オゾン層破壊
⑷
脱フロン、脱塩化メチレン、排出CO2 ガス削減
滅菌方法の変遷
ア
EOG ガス滅菌
残留 EOG による副作用、滅菌従事者の暴露の危険性から蒸気滅菌、放射線滅菌へ shift の
流れ
イ
放射線滅菌
y線
ウ
線源確保の困難化、設備コスト大-電子線滅菌へ shift が始まる?
蒸気滅菌
121 度、20 分の条件が基本、滅菌コストが比較的大、条件が過酷
⑸
材料に対する安全性基準 1
溶出物試験
所定倍量、温度、時間で水抽出したときの、溶出物量より安全性を評価
過マンガン酸消費量、水素イオン濃度指数(水素イオン濃度指数変化量)、UV(吸光度変化
量)、泡立ち
試験 3 分以上、重金属試験
⑹
金属種により異なる。
材料に対する安全性基準 2
生物学的安全性試験
復帰突然変異試験、抗原性試験、感作試験、発熱性物質試験、溶血試験、移植試験、急性毒
性試験、皮膚及び皮内反応試験、細胞毒試験
⑺
医療材料に求められる一般性能
使用環境
37 度、湿潤状態、数分~1 か月以内、保管環境
室温、1~3 年の製品保証
基本要求性能
①安全性
②耐滅菌性/安定性
③耐薬剤性(特に応力負荷時)
④加工性(接着、融着)
⑤透明性
⑥生産性
⑻
組立性と要求物性
ア
よく使われる部材間の接合法
接液部
非接液部
嵌合、溶剤接着、各種融着法
嵌合、溶剤接着、各種融着法、各種接着剤(安全性保証の点から接液部での接
着剤使用は難しい。)
イ
接合法と材料性能
嵌合
耐クリープ性
溶剤接着
接着剤
⑼
揮発性溶剤溶解性
接着性-PE、PP は難しい。
安定性評価
化学的(機能的)安定性、機械的安定性-要因
湿度、湿度、時間、応力、滅菌性(放射線、
AC、EOG)-加速試験(in vitro,in vivo)の実施?
ベストな要因、評価系を設定する必要あり。
⑽
新素材が採用されるまで
⑾
医療用具の材料
・汎用カテーテル
・排液バッグ
汎
用
PVC、EVA
・各種チューブ
・シリンジ
PET、IR
PVC
・血液透析器
高 機 能
・人工心肺
PS、PC、PU、ポリオレフィン
PP、PC、PET
・カテーテル
医 薬 品
⑿
PVC、ポリオレフィン
PP、SEBS、IR
・真空採血管
・血液回路
PVC、NR、SiR、PETFE
PU、PA、PET、フッ素樹脂
・輸液/輸血バッグ
・腹膜透析バッグ
EVA、PE、PVC、(IR)
PVC-ポリオレフイン系
ディスポ汎用カテーテル
ア
吸引カテ、気管カテ、胃管カテ、導尿カテ等
(ア) 要求性能
コスト、機械物性、成形加工性
(イ) 使用実績素材
PVC、ラテックス
イ
各種チューブ類(カテーテル除く。)
セット類、延長チューブ等
(ア) 要求性能
コスト、透明性、機械特性(強度、耐キンク性)、耐滅菌性
(イ) 使用実績素材
ポリ塩化ビニル
⒀
輸液バック素材 1
必要性能
透明であること(内容物の状況確認)、安全性(医療用具の中では最も厳しい試験)
耐蒸気滅菌性、ガスバリア性、成形加工性(多層成形)、コス
⒁
輸液バック素材 2
ア
今後さらに求められる性能
ガスバリア性、紫外線吸収性、対薬剤特性
イ
使用実績素材
エチレン/酢ビ共重合体、LDPE 系素材、PP 系素材、ポリ塩化ビニル(海外)
⒂
血液バック(赤血球保存バッグ、血小板保存バッグ)
ア
要求性能
機械物性(接着強度
遠心分離操作に耐えること)、触感、耐蒸気滅菌性、透明性、酸素
透過性(血小板保存バッグ)、低温特性(赤血球保存バッグ)
イ
使用実績素材
赤血球保存バッグ(PVC)、血小板保存バッグ(PVC)、一部オレフイン系材料(PP+の St
系エラストマ(SEBS 等)のブレンド)
⒃
血液回路(透析用、人工肺用)
ア
要求性能
コスト、機械特性、成形加工性、滅菌性
イ
使用実績素材
PVC
⒄
注射器
ガラス製(2parts)-プラスチック製(3parts)
外筒
透明性、機械強度
押し子
機械強度-PP、PE
ガスケット
⒅
気密性-圧縮永久歪(加硫ゴム、エラストマー(SEBS 系))
真空採血管
血液の生化学検査、血球検査を行う際、血液をサンプリンデ/一時保存する容器
容器本体
ガスバリア性、水蒸気透過性(ガラス-PET)、ゴム栓
(ゴム栓
⇒
⒆
ガスバリア性、再シール性
Alラミフィルム+再シールゴム)
三方活栓、瓶針、コネクター、ハウジング
ポリカーボネートが多用
機械強度(剛性)
薬剤性に優れる
⒇
耐衝撃性
靭性(割れない、折れない)
耐クリープ性に優れる
蒸気滅菌、放射線滅菌可能
医療用具にあまり使われない材料
ア
ナイロン、ポリアミド
吸湿による寸法変化
イ
耐滅菌性に劣る
(変性)PET
PC に比し耐熱性、機械物性に劣る。
ウ
真空採血管はガスパリア性の点で採用
PE
機械強度不足
耐熱性不足(包材としては使用)
(21) 熱可塑性エラストマーの医療用具への応用
ア
加硫ゴム代替(注射器、真空採血管、輸液バッグ)
イ
カテーテルへの応用
ウ
その他(脱 PVC 材料)
(22) 加硫ゴム代替としての熱可塑性エラストマー
長所
生産性が高い、後加工性が高い-低コスト、安全性が高い、透明性
短所
永久歪が大きい、耐熱性が低い、耐油性が低い
耐
(23) 加硫ゴムの長所、短所
長所
少ない永久歪(再シール性良好、良好な密着性)、良好な耐熱性(高圧蒸気滅菌可)
短所
成形性が悪い、加硫剤の安全性、低い透明性、後加工性が低い
(24) 使用箇所
真空採血管、輸液セット、輸液バッグ等
加硫ゴム代替材料としての熱可塑性エラストマー
成功例
注射器のガスケット、一部の導尿カテーテル(天然ゴム-SEBS)
未使用例
・輸液バッグのゴム栓二瓶針を刺した後の再シール
・真空採血管のゴム(栓)=針刺し後の再シール
・輸液セットゴム管 針刺し後の再シール
・一部の注射器ガスケット 耐高圧蒸気滅菌性
(25) 膀胱留置用バルーンカテーテル
従来天然ラテックスゴムが主流
長所 機械強度/物性、価格、耐滅菌性-シリコーン製カテーテル
欠点
アレルギー性、高価- 熱可塑性エラストマー
SEBSにて対応
(26) PVCの特徹
各種滅菌(AC、EOG、放射線)に対応、高い透明性、物性制御が容易、柔軟性(しなやかさ)
に優れる、耐キンク性が良好、高い機械強度、高い加工性(高周波融着、熱融着、溶剤接着)、
安価(180,220 円/リットル)
(27) PVCの問題点
廃棄性(焼却時にダイオキシン発生?
焼却時に腐蝕性ガス(塩化水素ガス)発生)
安全性(可塑剤の溶出、可塑剤が環境ホルモンとの指摘)
薬剤吸着性(ニトログリセリン等)
熟安定性(連続成形性)
(28) 性能面からの脱塩ビ
薬剤吸着
輸液セット(輸中時、微量薬剤
インシュリン、ニトログリセリン等)が所定量投
与できない。)-ポリオレフィン系に
酸素透過性不足
血小板保存バッグ(保存血小板が低酸素状態になり機能低下)-ポリオレフ
ィン系に
2
プレゼンテーション
「平成 16 年度多角的連携指導強化事業 ものづくり支援ネットワーク事
業」
この事業を立ち上げたきっかけは、人工呼吸器マスクシステムの開発に携わったこと。開発を
スムースにさせるためには産学官のネットワーク化を図ることが必要と痛感した。さらに今、医
療関連産業の市場規模が拡大していることも影響している。
⑴
静岡県東部地区の医療関連産業を取り巻く環境
健康サービス産業創造研究報告書(平成 15 年度経済産業省刊)によれば、技術革新による
新しい医療、介護機器の市場規模は、平成 12 年と 10 年後の平成 22 年で比較して約 2.3 倍、
健康サービス産業では 1.8 倍、医療費では 1.2 倍の伸びがあると試算された。
静岡県の医療産業に目を向けてみると、平成 13 年度、医薬品の生産高は 6,233 億円で全国
第 2 位、医療用具の生産高は 1,161 億円で全国第 3 位までになっている。
こうした中で、静岡県では東部地区を対象とした「富士山麓ファルマバレー構想」を示して
いる。この構想に基づいて、平成 16 年度は
・がんセンターとの医工連携による共同研究
・創薬探索センターの稼動
・大規模臨床ネットワークの本格稼動
などを進め、
また、平成 17 年度以降は
・がんセンター研究所の開設
・レンタルラボの整備
・地域クラスターの形成、などを予定している。
静岡県東部地区の特徴的な動向として、次の各点が挙げられる。
・富士山麓ファルマバレー構想に即応し、健康関連産業等の新分野進出を目指す中小企業
の増加
・医療関連分野での研究施設等の設置が今後も予定されている。
・東部地区に医薬品製造業者が 4 割集中している。
一方、地域の中小企業者が抱える課題として、
・発案件に関わる専門的な知識、技術力の不足
・試作段階における多大なコスト
・事業実施上、有益な情報等の不足、がある。
こうした状況下で、「ものづくり支援ネットワーク」は
・医工連携等の研究開発を地元でサポートする受け皿の構築
・医療関連等の分野に進出予定の中小企業者に不足している経営資源の補完
を目的に行うものである。
⑵
ものづくり支援ネットワーク事業の概要
この事業では、学識経験者や行政機関等各機関からの委員の方々で構成される委員会を設
け、その実施に当たっている。
《委員》
・情報、システム研究機構国立遺伝学研究所
・国立沼津工業高等専門学校
・東海大学開発工学部物質工学科、医用生体工学科
・静岡県沼津工業技術センター
・静岡県富士工業技術センター
・沼津市産業振興部産業戦略課
・富士市商工農林部工業振興課
・財団法人しずおか産業創造機構ファルマバレーセンター
・沼津商工会議所
・ぬまづ産業振興プラザ
・企業組合テクノシステムズ(機械関係)代表
・企業組合静岡システムコンサルタント(化学関係)代表
このうち、学識経験者(大学、研究機関等)の方には技術、設備、人材等に資するシーズ、
ニーズの情報提供を、また、行政機関、商工団体、専門家等の方々は、出されたシーズ、ニー
ズに対応可能な技術、設備、人材等を保有する企業の情報提供等をお願いしている。
さらに、この事業では、企業組合テクノシステムズ並びに企業組合静岡システムコンサルタ
ントの方々によるワーキング委員会を組織している。
ワーキング委員会の役割としては、現地ヒアリング調査の実施と集計、分析、そしてネット
ワークビジョン案を検討し、意見を集約させて本委員会にフィードバックさせる、というもの
である。
ワーキング委員による現地ヒアリング調査は、東部地区の中小企業等を対象に、製品開発
の取り組み状況、試作時の対応などを調査し、「ものづくり支援」の中核を成すオンリーワ
ン、オリジナリティーのある技術又は設備等を有する 40~50 社を発掘。ネットワークへの参
画の可能性や協力可能な分野について伺い、「ものづくりネットワーク」のベースを築くこと
を目的に行うものである。
⑶
ものづくり支援ネットワークの目指すもの
ものづくり支援ネットワークのビジョン構築のためには、
・ものづくりの支援を目的としたネットワークビジョンの検討、まとめ
・ネットワーク構築案の策定
・ビジョン報告書の作成
・データベースの作成
という手順を踏んでいく。
そして、ものづくり支援ビジョンの成果、効果として、
・ビジネスマッチングのための交流会の開催
・有益な情報交換が可能となること。
・「ものづくり」へのスムースな取り組みが可能となること。
・医工連携等の研究開発が地元でサポートできる。
・地域産業活性化の一翼を担うこと
を狙っている。
8 月の終わりに第 1 回目の本委員会を開催したが、その席上で次のような意見が出された。
・日頃行っている生命科学の基礎研究を具現化させていくため、関係機関、企業との連携
が不可欠である。
・企業連携を図るため、地元企業のレベルを知りたい。
・シーズ、ニーズを的確に捉えるための調査に期待したい。
・東部地区は、自動車関連の精密加工業者が多い。金属から樹脂に転換している加工技術
の取り入れは、新たな分野進出を考える上で必要な要素である。
また、ヒアリング調査に対する意見は下記のとおりである。
ア
調査対象業種について
・各種樹脂製品の成型技術等
・医療機器関連
・精密プラスチック成型技術等
・半導体関連
・素材関連(人工血管用の材料等)
・ミクロン加工、チタン加工関連
イ
調査対象企業について
・IT関連、バイオインフォマティクスに関心のある企業
・DNA チップの製造に関心のある企業
・病気診断薬の製造に関心のある企業
・遺伝子操作植物の栽培に関心のある企業
中央会として、一日も早いネットワークの構築を目指して、事業を進めていく所存である。
第 4 回
■講演
「新規がん診断薬の開発を目指して」
講師
■特別講演
静岡県立静岡がんセンター 総長 山口 建 氏
「遺伝子関連臨床研究と医療機器、診断薬等の開発」
講師
国際医療福祉大学大学院 教授 野口 隆志 氏
■日時
平成 16 年 10 月 26 日(火曜日) 午後 4 時から 7 時 30 分まで
■会場
フジロイアルプラザホテル(富士市水戸島 290 番地の 1)
■要旨
1
講演「新規がん診断薬の開発を目指して」の要旨
現在、男性の 2 人に 1 人、女性の 3 人に 1 人ががんに罹ると言われている。がん患者のピーク
は 2030 年、患者数では 75 万人になるであろう。
では、がんをどのようにして防ぐか。それには「予防、検診、受診を守ること」「がんが万一
見つかったら、最善の医療を受けること」がカギとなる。
検診によるがん発見の頻度は、検診受診者 1,000 人のうち、要精密検査 10~100 人で、そのう
ちがん発見 1 人という感じである。
私はこれまで、がん細胞中のペプチドホルモンについて研究してきた。その中で、肺小細胞が
んの腫瘍マーカの開発に約 15 年携わってきた。このマーカ開発の成功のカギは「腫瘍細胞の大
量産生」、「血液中の放出」、「血液中で安定すること」にあった。このプロ GRP マーカを用い
た測定キットはテルモ、国際試薬から製造販売されている。プロ GRP の臨床的有用性としては、
「肺小細胞がんの確定診断」「治療効果測定」「再発の早期発見」が挙げられる。
医者は、がん患者を診断する際に、正常組織の圧廃、破壊、通過障害などを見て症状を判断
するが、19 世紀は触診、20 世紀は CT などの画像診断によって行われてきた。今、がん診断は、
がんになりやすい人を遺伝子診断によって見つけ出すことに重きが置かれている。
腫瘍マーカ開発の未来像としては、「既存の腫瘍マーカを再評価すること」、「がん特異抗体
自己抗体の研究」、「蛋白合成について研究すること」と考えている。
静岡県立がんセンターでは産業界、地元大学の方々とともに共同研究、共同開発を行なってい
る。これまで提案されたテーマとしては、「腫瘍マーカの開発」、「テーラーメードのがん治
療」、「新規免疫療法」などがある。
ファルマバレー構想の今後の課題としては、「住民の理解と地域連携」、「広報戦略」、「都
市文化機能の育成」がある。今後、これらを時間をかけて克服していきたいと考えている。
《質疑応答》
質問
カプセル内視鏡は、アメリカ、中国で治験されているが、わが国ではされていない。
その点はいかがか。
回答
カプセル内視鏡はイスラエルで、また日本でも一部の大学病院で利用されている。がん
センターでは約 40 件の治験がされているが、今は実力をつけている最中。今後は地盤
固めをして実力を上げていきたい。
2
特別講演「遺伝子関連臨床研究と医療機器、診断薬等の開発」の要旨
治験の空洞化により、⑴新薬の承認が遅れる、⑵これにより製薬企業が衰退する、⑶研究者は
治療技術や研究水準が向上しない、といった悪影響が出ている。
治験の問題としては、遅い、質が良くない、費用が高い、という点が挙げられ、そうした点か
ら国内企業の海外治験が増えている。今後の製薬業界を考えて、日本を創薬の国際競技場化させ
ることを訴えている。その一環として、大規模治験ネットワークの構築が必要である。
一方、医療機器産業の将来ビジョンを考えるべき。医療機器業界は、⑴国際的研究開発競争の
激化、⑵特許取得の多くがアメリカである、⑶国際競争力が低下している、という状況にある。
これらを踏まえて、研究-開発-生産-販売のアクションプランが提示されている。国として
も、「全国治験活性化 3 か年計画」を立てて後押ししている。
治験までには臨床研究、臨床試験を経なければいけない。また、臨床研究倫理指針を考慮する
必要がある。臨床試験には、倫理的な観点からも GCP を守らなくてはいけない。GCP は幾度かの
変遷を経て平成 17 年 4 月に新しいものが示される。内容的には、医療機器申請資料作成のため
の臨床試験実施の基準が加わる。また、被験者に対して細かな配慮のなされた事項が同意説明文
書に含まれていなくてはいけない。
治験によるインフォームドコンセントは、自由意志による同意、プライバシーと秘密事項、被
験者の利益と不利益が重視される。また個人情報の管理として、試料などの原則匿名化、個人情
報管理者による保護の徹底、守秘義務の徹底、試料などの保存、管理、廃棄の方法などが厳正に
求められる。これは個人情報保護法の観点からも重要視される。
今、わが国では、大規模治験ネットワーク構想が進められている。その目標としては、 治験
供給力の競争促進を通じて治験機関の減少、質の向上、コスト低減を実現させるとともに、国民
に世界最高水準の医薬品、医療機器を速やかに提供することにある。治験機関は全国に 24 あ
り、うち静岡県内には 2 か所。また、国立病院機構による治験推進も行われている。
治験データについては、海外データに頼っているのが現状。せめて国産データの割合をもっと
増やしていきたい。
第 5 回
■講演 1 「個に対応する用具の必要性」
講師
静岡県立静岡がんセンター 副看護部長 青木 和恵 氏
■講演 2 「医療器具および看護用具の安全性~ヒヤリ・ハット事例から考える~」
講師
静岡県立静岡がんセンター 副看護部長 鶴田 清子 氏
■日時
平成 16 年 11 月 25 日(木曜日) 午後 5 時から 8 時まで
■会場
フジロイアルプラザホテル(富士市水戸島 290 番地の 1)
■要旨
1
講演 1「個に対応する用具の必要性」の要旨
この内容についての詳細は開発テーマとなるため、公表できません。
2
講演 2「医療器具および看護用具の安全性~ヒヤリ・ハット事例から考える~」の要旨
この内容についての詳細は開発テーマとなるため、公表できません。
第 6 回
■講演
「悪性腫瘍(がん)のリハビリテーション~医療関連機器の現状と未来~」
講師
静岡県立静岡がんセンターリハビリテーション科 部長 辻 哲也 氏
■日時
平成 16 年 12 月 13 日(月曜日) 午後 5 時から 8 時まで
■会場
フジロイアルプラザホテル(富士市水戸島 290 番地の 1)
■要旨
この内容についての詳細は開発テーマとなるため、公表できません。
第 7 回
■講演
「2005-FEEL TECHNOLOJY HYOKAN PROJECT」
講師
株式会社フィールテクノロジー 代表取締役 三谷 明彦 氏
■日時
平成 17 年 2 月 17 日(木曜日) 午後 5 時から 8 時まで
■会場
フジロイアルプラザホテル(富士市水戸島 290 番地の 1)
■要旨
有限会社フィールテクノロジーは、三谷明彦社長が 2002 年 2 月に資本 2,000 万円、従業 18 人で
設立し、同年 11 月株式会社へ組織変更した冷蔵機器を開発、販売するベンチャー企業であり、零度
以下で食材を凍らさずに長期保存する冷蔵庫「氷感庫」で注目を集めている。食材だけにとどまら
ず、大手企業や大学と提携して臓器や血液を保存する医療分野での利用を目指した研究にも取り組
んでおり、今年ハワイにもオフィスを開設した。
1
氷感技術開発のきっかけ
三谷明彦社長は、創業前、地元の信用金庫などを経た後、平成 10 年に脱サラしてカニ料理店を
開業した。氏は当初から高級食材のカニの鮮度を落とさずに保存する方法、食材のロスを削減す
る方法を模索し続けてきた。その後、高電圧をかければ零下で凍らないことがわかり、無凍結で
食品を冷蔵する装置の開発に取り組んだ。安定した高電圧状態を作ることが課題になったが、こ
の問題は電圧を一定に保つ制御装置を装着することで克服、冷凍でも冷蔵でもない、新しい保存
方法である零度以下で食材を凍らさずに長期保存する「氷感庫」の開発に至った。
2
氷感技術とは?
食材を零度以下で、凍らせないまま鮮度を保つ特別な技術が「氷感」。電場、磁場などに代表さ
れる非熱エネルギーを利用し、食品の酸化、細胞の破壊を防ぐ技術のこと。
3
氷温と氷感の違い
氷温は、零度から物が凍り始める氷結点までの、物が凍らない温度帯に合わせて保存する。氷
感は、本来は物が凍る温度でも、静電気などにより凍ることがない。氷感ならば、零度で凍り始
める水が、マイナス 6 度でも凍らずに保存できる。氷感庫からペットボトルの水を取り取り出し
たばかりの水は、液体のままの状態になる。
4
氷感庫の凍らない仕組
氷感庫は、保冷庫内部を 3,000 ボルト以上の高電圧状態にすると、分子の活動が活発になり、
零下でも凍らない現象を利用した。また、無凍結低温度帯(過冷却)を作り出し、で食品の長期
保存、熟成、細胞の破壊を防いでいる。通常の冷凍庫で凍結させれば食品の細胞が傷み、解凍時
にうまみが流出することもあるが、この保冷庫を使えば食品を傷めずに長期保存や熟成が可能に
なる。
5
地元の JA が氷感庫を導入
地元の JA では同社から大型の氷感庫を導入し、米、野菜、果物などの食材や生花などを長期保
存している。通常より出荷時期を遅らせて希少性を高めるほか、零下で熟成して味をまろやかに
するのが目的。
6
桃の鮮度保持実験
桃を冷蔵保存と氷感保存に分けて鮮度保持実験を行った結果、どちらも産地、収穫時期、保存
期間(2 か月間)は同じなのに、冷蔵保存した桃は腐ってしまうが、氷感保存した桃は水々しく、
おいしさもアップしていた。
7
氷感技術の主な特徴
⑴
うまみ成分のアップ
長期保存ができると共に、食品のうま味も向上するというデータが地元の島根大学等により実
証されている。一度冷凍したものを解凍すると、細胞が破壊されてドリップ(うまみ成分)が
流出してしまう。しかし、氷感庫では細胞を傷めずに長期間鮮度が保つことができ、冷蔵庫よ
り低温なので腐食が進みにくい。うまみを引き出す効果もある。食材も生き物。低温にさらさ
れることで、糖分、アミノ酸を増加させるからである。
⑵
長期保存が可能
氷感は劣化を進行させる有害物質の発生を防ぎ、長期の鮮度が保たれる。物質が凍り始める寸
前の温度のことを氷結点とうが、この氷結点を過ぎてもなお、凍らない現象を過冷却現象とい
う。過冷却状態にある物質は、凍らず、食物の細胞を破壊することもないので、長期保存が可
能となる。
8
氷感庫導入の効果
⑴
省エネ効果
冷凍庫と冷蔵庫では、一般的に冷凍この方が多くの電力を消費する。氷感庫では、冷凍せず
に高い温度帯で冷凍保存と同等の鮮度保持効果が期待できるため、その分節電、省エネになる。
⑵
仕入原価等の削減
例えば、12 月にはクリスマス商戦など、いちごの価格が毎年高騰する。いちごを扱うお店で
はこの時期を避けて、事前に仕入れ、氷感庫で氷感保存しておけば仕入原価の大幅な削減が可
能になる。
9
今後の課題
現状では一般の保冷装置に比べ販売価格が高いが、需要が増えることで量産効果が出てくれば
価格を下げることもできる。積極的に需要を掘り起こして価格を下げ、市場の拡大をどう図って
いくかが今後の課題。
10
氷感技術の活用分野、広がる可能性
氷感技術は、
食品の保存以外にも医療の分野など、さまざまなところから注目されている技術。
大手企業や大学と提携して臓器や血液を保存する医療分野での利用を目指した研究にも取り組ん
でいる。当社は、血液や臓器を零下で凍らさずに保存する装置の試作に成功している。移植用臓
器は一般に提供 10 時間も保持できないが、この装置を利用すれば 24 時間以上の保存が可能にな
る他、血液も保存期間が大幅に延びる可能性がある。同社は医療用保冷装置の開発、研究は東京
大学、九州大学などと共同で進めたり、エア・ウォーター(大阪市)とも共同で実用化に向けた
各種実証実験等も進めている。
また、最近は物流分野も進出、氷感庫を取り入れた車両の開発も手がけている。食材保存用の
装置をベースにして実用化し、食品輸送業者や飲食店に売り込みを図る計画だが、新鮮な食材を
零下で凍らせずに運ぶことができれば物流革命にもつながる可能性もある。また、家電メーカー
と提携して量産体制を整え、家庭用氷感庫の開発も目指しており、さらに可能性は広がる。
1
団体の名称や人物の肩書、各種制度の内容は講演、視察等の時点のままですので、御留意く
ださい。
2
静岡県中小企業団体中央会が作成した原稿を基にしています。
主
催 富士市 産業経済部 産業政策課
〒417-8601 静岡県富士市永田町一丁目 100 番地
電話番号:0545-55-2779 E-mail:[email protected]
事務局 静岡県中小企業団体中央会 東部事務所
〒410-0881 静岡県沼津市八幡町 7 番 1 号
電話番号:055-963-4511 E-mail:[email protected]
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