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技術功労賞受賞 - 日本フルードパワーシステム学会

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技術功労賞受賞 - 日本フルードパワーシステム学会
石崎
随
義公:技術功労賞受賞
想
技術功労賞受賞*
石崎義公**
* 平成 24 年 6 月 4 日原稿提出
** 株式会社タカコ,〒619-0240 京都府相楽郡精華町祝園西 1-32-1
アキシアルポンプと共に 50 年
この度の技術功労賞の受賞に際し,フルードパワーシステム学会の皆様方に深く感謝いたします.名誉あ
る賞を戴きましたことで,今後も日本の油圧業界発展のために頑張って参りたいと存じます.また,ご推薦
をいただきました方々に,重ねて御礼申し上げます.
振り返ってみると,私は約 50 年間,油圧一筋で生きて来たように思う.それもアキシアルピストンポンプ
にずっと係ってきている.初めての出会いは 1963 年.当時トーマ型といわれた斜軸式アキシアルピストンポ
ンプは,ドイツ・リンデ社から日本の荏原製作所にライセンスを付与して製造する物であった.私が係った
コンロッドと呼ばれる内蔵部品は,15mm ぐらいの径で,長さ 50mm ぐらいの軸の両端に球面が付いている
部品であり,ポンプ 1 個に 7 本使用される.この球面体の精度を通常の機械で出すことは難しく,その上,
細い孔が中心部を貫通する超精密な部品であった.
私が勤務していた大阪の金属部品製造会社は,特殊な技術力,特に球面体においては独自の技術を持って
いた会社で,私は当時,品質管理課に所属していた.大阪から何度も川崎市にある荏原製作所の精機部に通
い,当時の技術担当責任者である三谷喜朗さん(後にタカコ海外勤務.関係会社社長)と打ち合わせをよく
行なった.その後,1971 年に日本製鋼所で油圧式トランスミッション HST の研究をされていた,小曽戸博さ
ん(現・タカコ技師長)との出会いがある.その研究内容は斜板式(スワッシュプレートタイプ)のポンプ
とモーターを組み合わせた HST に,
シュースリッパーの付いたタイプのピストンを開発するといったもので,
小曽戸さんと端面の形状について議論を交わした思い出がある.私が知る限りにおいて,日本で最初の HST 1
号機であったと思う.
1972 年頃から,業界では斜板式アキシアルピストンポンプやモーターを開発する動きが活発になり,海外
のメーカーと技術提携をする会社や,独自で開発する会社など,にわかに忙しくなって来た.私は少しだが,
研究においては先行していたこともあり,このアキシアルピストンポンプのロータリーグループ(ピストン,
シリンダーブロック,リテーナープレート,スラストプレート)を専門的に製造する会社を作ろうと思い,
当時勤務していた日本ピストンリングの関係会社(川崎市)を退職し,会社を創業しようと決心した.それ
が 1973 年の春である.
若い頃に勉強しながら働いていた東大阪市に帰り,多くの仲間がいる鉄工所の町で,一人でガレージを改
造した工場から出発した.社名は生まれ故郷である滋賀県信楽町(陶器の町)多羅尾村(たらお)にある髙
香山(たかこやま)から名称をもらって,タカコとつけた.
私の若い頃に,難しい球面加工技術を教えてくれた東大阪の技術者・匠の技術を持つ職人が集まってくれ
て,ファブレスのものづくりがスタートする.特殊技術を持った町工場の職人が加工工程を引き受けてくれ
る事で,図面を書く私の要求に対し,完璧なまでにものづくりが行なわれていった.私は技術者であるが,
営業からなんでもすべてをやらねばならず,サンプルを自ら持って会社回りをしていた.大企業が相手のた
め大変な日々であったが,昔の友人である三井さん(現・タカコ顧問)や平井さん,竹内さん,吉井さん達
が応援に来てくれて,大変心強く思えた.
第 43 巻
第 E1 号
- E30 -
2012 年 8 月(平成 24 年)
石崎
義公:技術功労賞受賞
同じ頃,萱場工業の浜松町本社で開発されていた HST 1 号機のロータリーグループは,私が納入した製品
であった.
当時の設計担当は阿部さんだった.また不二越の 1 号機のピストン Assy にも納入させてもらった.
当時の設計担当は西本さんだった.少し遅れて油研工業の 1 号機にも採用してもらったが,この時は田中専
務様(当時)が突然当社に来られて,すぐに取引が開始された.これらの設計については,今回一緒に受賞
した大橋さんや設計責任者の小山さんたちと頻繁に会議を行なった.この頃,従来の斜軸式ピストンポンプ
やバルブ技術の発展とともに,油圧業界においては活発な時代であった.幸いにも,タカコは順調な発展を
させてもらい,1981 年,創業 8 年目に自分の土地の上に工場を建設できるようになった.約 1000 ㎡に 660
㎡の工場を建てたが,大半は借金で工面していた.
この頃に海外との取引を進めるため,1978 年頃より,ドイツ・ハノーバー見本市に行っていたが(後に出
展)
,その際,ブルーニングハウス(現・ボッシュレックスロス)の設計担当ボイットラー氏との出会いがあ
った.彼と出会ったことで,後に彼が設計し,世界的ヒット商品となった A10V-45 アキシアルピストンポン
プのピストン Assy の注文を得られることになる.それだけでなく,現在も世界でもっとも売れているポンプ
シリーズである,ヒドロマチックの設計者バルツアー氏やオランダのアイントホーヘン工科大学の Prof.Dr.
シュレッサー氏からも,さまざまな技術指導をしてもらう機会ができたのである.
世界的な販売戦略を立てるため,製造方法においては,他社に追従されない高品質・高精度を作りだす必
要があり,社員一丸となって,工法開発にもっとも力を入れて行くことを会社の重要方針とした.たとえば,
ピストンの外径公差は,最大のバラツキ 0.002mm 以内で量産可能する.また,真円度は 0.004mm 以内にする
などの,厳しい基準を設けた.中小企業が勝ち残って行くためには,購入した機械をそのまま並べるだけで
は残れない.人のやっていない方法,つまり新たな工法を開発し,自社で考えた設備で製造を行なうことに
より,QCD (Quality, Cost, Delivery)においてナンバーワンになることが成長の源であると考え,全員で取り組
んだことが,会社の成果を上げることに繋がった.そして QCD で,ある程度の勝算が見込めると思った時,
世界最大の見本市ハノーバーメッセへ単独でブースを出すことにした.見本市の会場では,展示方法にいろ
いろ工夫をし,お客様にブースへ立ち寄ってもらうための作戦を考えた.ターンテーブルに日本人形を置き,
ぐるぐる回したりもした.結論からいうと,このメッセで海外の多くのお客様とコンタクトすることができ
たのである.取引が始まった会社は,ボルボ,マンネスマン,キャタピラー,イートン,パーカハネフィン,
セスナ等々,世界の超大手企業であった.
アキシアルピストンポンプのロータリーパーツは,本来お客様の工場内で作られるべき,油圧機器におい
てもっとも重要な部品であることから,競争相手はお客様の工場という厳しい環境の中での営業を行なって
きた.品質精度はお客様の工場以上で,価格は内製コストの 40%以上安くなければならない.それらのさま
ざまな課題をクリアし,すべての会社と取引が始まり,大量の注文をいただくようになった.これらの海外
メーカーとの取引実績が評価され,日本国内の大手油機メーカや建設機械メーカ,農業機械メーカとの取引
が始まった.創業当初思っていた,アキシアルピストンポンプのロータリー部品ユニット会社として認めら
れる会社となることができ,日本および世界における油圧業界の発展に貢献できたのかも知れない.
製造工場としては,1990 年アメリカ・カンザス州にアメリカ工場.1997 年滋賀県信楽町に滋賀工場.2003
年ベトナム・ホーチミンにベトナム第一工場.2008 年ベトナム・ホーチミンにベトナム第二工場.2003 年京
都府精華町に本社ビルを建設することができた.現在,グループ全員で約 1500 名の従業員で,日夜がんばっ
ている.アキシアルピストンポンプのピストン製造数は,高圧タイプ・低圧タイプを合わせて年間約 2,550
万本程度であり,世界シェアでは大体 70%程度と思われる.
近年では,世界初の超小型ピストンポンプの製品化を行い,販売を始めている.今後もフルードパワー技
術の発展のため,また日本がその重要な役割を担っていけるよう,技術革新を進めていきたい.
今後とも皆様方各位のご指導をお願いし,技術功労賞をいただきましたお礼の言葉とさせていただきます.
第 43 巻
第 E1 号
- E31 -
2012 年 8 月(平成 24 年)
石崎
義公:技術功労賞受賞
著者紹介
いしざきよしとも
石 崎 義 公君
1944 年 3 月 19 日生まれ.滋賀県甲賀市信楽町多羅尾出身.1964 年 近畿大学理工学部
(Ⅱ部)中退.1973 年 株式会社タカコ創業.現在、株式会社タカコ取締役相談役,
TSW PRODUCT CO., LTD (米国)名誉会長,TAKAKO VIETNAM CO., LTD (ベトナ
ム)名誉会長,ゼネラルプロダクション株式会社
代表取締役社長,NPO 地域基盤技
術継承プラザ理事長,東大阪商工会議所常議員,TOPS 東大阪代表幹事などを務める.
著書に「まあ いっぺん聞いとくなはれ」産経新聞出版がある.
E-mail:[email protected]
URL: http://www.takako-inc.com/index.php
第 43 巻
第 E1 号
- E32 -
2012 年 8 月(平成 24 年)
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