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73 4-2.生ごみ分別収集事業の今後 1)現在の実証実験調査からの拡大

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73 4-2.生ごみ分別収集事業の今後 1)現在の実証実験調査からの拡大
4-2.生ごみ分別収集事業の今後
1)現在の実証実験調査からの拡大
(1)収集車積載量からの検討
平成 26 年度は実証実験期間中の最大収集量は 3.30t(年始の収集休み明けである 1
月 6 日)となっている。ただし平均的には、火曜日は 1.77t/日、金曜日は 1.28t/日の収集と
なっている。
現在使用している収集車両について、株式会社東部清掃へのヒアリングしたところ、4t
の生ごみを積載することが可能であるとの回答であった。
最大収集量を積載可能量である 4t とすると、本年度は 3,003 世帯を対象とした中で最
大収集量が 3.30t であったことから、収集車1台当たり約 3,600 世帯(≒3,003 世帯×4t
÷3.30t)まで対象を拡大できると考えられる。
(2)収集運搬時間からの検討
現在の収集対象エリアは、南平岸~澄川~真駒内~中ノ沢・藻岩の範囲であり、定山
渓地域を除くと大規模集合住宅 24 棟、常住戸数 2,905 戸である。これらの範囲を対象と
した平均所要時間は、4 時間 47 分、総走行距離 91.0km となっている。
1 日の稼働時間を昼食休憩も含めて 8 時間と設定すると、(1)の収集車積載量からの検
討結果である常住戸数約 600 世帯の大規模集合住宅を対象に追加することは、時間的に
も十分可能と考えられる。しかし、各ステーションからの生ごみ収集は、臭気や鳥獣被害等
を考慮すると、午前中のうちに収集完了することが望ましい。現在、最後のステーションの
収集を完了する平均時刻は、11:24 であるが、最も時間を要する 1 月では 11:54 となって
いる。ゆえに、対象世帯を増やす場合は、収集時間が長くならないよう、現在の収集対象
エリアの周辺、あるいは収集ルート沿いの大規模集合住宅を中心として拡大していくことが
望ましいと考えられる。
(3)堆肥化施設受入能力からの検討
現在の実証実験調査における堆肥化施設である定山渓環生舎(株式会社ばんけいリサ
イクルセンター)の処理能力は年間 9,000t(≒25t/日)であるが、9,000t のうち生ごみの処
理計画量は 4,000t であり、平成 25 年度実績よりやや減ったものの、26 年度実績は生ご
み搬入は約 4,100t となっている。枝葉草や剪定枝の廃棄物の受け入れ量次第であるが、
既に生ごみの受け入れ能力(≒処理計画量+5%=4,200t)は限界に近づいており、今後
については、処理施設側との調整可能範囲での受入れとなる。
( 4 )処理費用からの検討
実証実験での主な処理費用は、収集運搬費と堆肥化処理費である。このうち堆肥化処
理費(円/トン)については処理量に依存する。また、収集運搬費(円/日)については収集
車両 1 台で積載可能な範囲であれば、収集量が多いほど、単位重量当たりの収集運搬費
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を低く抑えることが可能である。
しかしながら、(3)で述べたように処理施設の受け入れ能力は限界に近づいており、大
幅な拡大は厳しい状況である。
(5)住民参加状況、意見からの検討
今年度の実証実験調査における参加状況等を整理すると、次のとおりである。
【アンケート調査結果】
・アンケート回答者の 82.9%は実証実験に参加している。
・実証実験参加者の 96.4%は、引き続き協力できる。
・実証実験不参加者のうち 67.9%は、分別排出の条件が変われば参加できる。
【分別協力率】
・集合住宅での分別協力率は 67.2%。
以上より、分別協力率から実証実験に参加していると推測される 67.2%の人のうち
96.4%は継続して参加、参加していない 32.8%の人のうち 67.9%は条件が合えば参加と
すると、条件が合うと約 86%(=67.2%×96.4%+32.8%×67.9%)の人は参加する可
能性が考えられる。
(6)排出容器についての検討
アンケート調査の結果から、生ごみ専用袋以外の使用について、現在参加者のうち
15%は反対しているが、現在不参加者のうち 40%が賛成しており、排出容器の自由化に
よる協力率向上の可能性はある。しかしながら、自由化により、異物混入の増加や協力率
の低下が懸念されるため、今後、生ごみ専用袋以外の使用についても検証する必要があ
る。
2)市内全域での生ごみ分別収集の検討
市内全域を対象とした生ごみの分別収集・資源化処理を行う場合、収集車両と資源化施設
の処理能力の確保及び、ステーション管理が大きな課題と考えられる。
【収集車両】
市内全域を対象に生ごみの分別収集を行うためには多くの収集車両が必要となり、他の収
集品目の収集を変更しないとした場合、車両確保が難しく、大きな費用増加に繋がることにな
る。そのため、生ごみの分別収集を実施する場合には、燃やせるごみの収集頻度を減らすな
どの検討が必要となる。
なお、生ごみを分別収集せず、可燃ごみとして回収し、破砕分別機を用いて生ごみを分別
する方法(機械選別)を採用している都市もある。この方法では、収集車両を増加する必要は
なく、分別収集する場合と比較し市民の負担も少なくなる。ただし機械選別機の精度によって
は、異物の混入割合が多くなるなどの問題がある。そのため、分別した生ごみの資源化用途
も踏まえ、収集方法を検討する必要がある。
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【資源化施設】
全市分の生ごみを資源化処理できる施設が市内にはないことから、これを実施するために
は、処理施設の設置、もしくは近隣他市町村にある処理施設への委託等を検討する必要が
ある。
なお、本実証実験では堆肥化による生ごみの資源化について検討を進めているが、近年
はガス化による生ごみの資源化も行われている。地域によって収集される生ごみの質や量が
異なることや、資源化した後の利用先の確保等の問題があり、その地域に適した資源化方法
を選定する必要がある。
ここでは、家庭系生ごみの堆肥化やガス化を行っている主な自治体について、収集方法
や資源化用途を表 4-3 にまとめた。また、堆肥化とガス化について、処理方法やメリット・デメリ
ットを表 4-4 に挙げた。
表 4-3 家庭系生ごみの資源化を行っている主な自治体
資源化方法
処理の概要
人口規模
(人)
44,442 分別収集
28,591 分別収集
事業主体
富良野広域連合
有機物を分解し、
堆肥化
山形県長井市
堆肥を生産する方法
など事例多数
北空知衛生センター組合
34,177
生ごみ
新潟県長岡市
280,922
など
山口県防府市
有機物を分解し、
118,202
生ごみと
ガス化
メタンガス(バイオガス)を 南但広域行政事務組合
58,768
紙ごみ
発生させる方法
など
北広島市
59,931
生ごみと
下水汚泥の
富山県黒部市
42,356
混合処理
など
有機物を分解し、エタノール 京都府京都市(実証実験) 1,420,719
エタノール化
(アルコール)を精製する方法
など
生ごみ収集の方法
分別収集
分別収集(一部、紙おむつも受入)
可燃ごみとして収集後、機械選別
可燃ごみとして収集後、機械選別
分別収集
ディスポーザー破砕生ごみを下水道管路にて回収
一般廃棄物として収集後、機械選別
※人口規模は、平成26年1月における域内人口を示す。
表 4-4 生ごみ資源化の方法とその特徴
ガス化
堆肥化
生ごみの分別収集をする場合
生ごみの分別収集をしない場合
・生ごみや紙類などからバイオガスを発生させる。
・可燃ごみを破砕し、発酵させる生ごみや紙ごみ以
外のごみを除去する。
・乾式メタン発酵を行う例が多い。
・生ごみなどからバイオガスを発生させる。
・生ごみから異物を除去し、水分調整を行う。
・湿式メタン発酵を行う例が多い。
・微生物の働きによって堆肥を生産する。
施設の概要
生ごみ
受入
異物の
除去
発酵
熟成
堆肥
生ごみ
受入
生ごみを
破砕
異物の
除去
水分調整
メリット
デメリット
※1
費用
・事例が多く、小規模なものも導入可能。
・製造が比較的容易である。
・投入するエネルギーが比較的少ない。
・悪臭対策が必要。
・需要先となる農地や顧客の確保が必要。
・成分の変動がある。
施設規模 約50t/日(約18,000t/年)のとき
建設コスト 約10億円
メタン
発酵
バイオ
ガス
発電
発酵
残渣
堆肥
液肥
可燃
ごみ
受入
可燃ごみ
を破砕
生ごみや
紙ごみ以
外のごみ
を除去
メタン
発酵
バイオ
ガス
発電
発酵
残渣
堆肥
液肥
・ガス発電により、エネルギーの創出が可能。
・汚泥の処理処分が比較的容易である。
・生ごみに異物が混入している割合が少なく、投入
前の前処理にかかる労力、コストが小さい。
・各家庭における生ごみの分別が不要で、住民の負
担が少ない。
・発酵に適した温度まで加温する必要がある。
・ガスタンクや脱硫設備が必要となる。
・各家庭における生ごみの分別が必要で、住民の負 ・可燃ごみから生ごみや紙ごみを選別するために、
担がある。
破砕・選別機の導入・設置が必要。
施設規模 約50t/日(約18,000t/年)のとき
建設コスト 約15億円
施設規模 約50t/日(約18,000t/年)のとき
建設コスト 約109億円※2
※1 「バイオマス再資源化技術の性能・コスト評価」柚山ら(2006)、「さまざまな有機性廃棄物を対象とする堆肥化施設・メタン発酵施設に関する調査分析」北海道大学
(2011)を参照。
※2 生ごみ分別をしない場合のガス化施設建設費用は、ガス化施設単独での建設費用に関する資料が無いため、防府市クリーンセンターを例に焼却施設や
リサイクル施設を含めた建設費用を掲載した。
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大都市における家庭系生ごみ資源化の事例は少ないが、今後も他自治体の動向を注視
する必要がある。また、生ごみの収集量や資源化施設の建設及び維持・管理コストを比較し、
本市に適したごみ収集方法及び資源化方法について検討を行う必要がある。
【ステーション管理】
過年度の実証実験調査報告書では、「管理人が常駐する集合住宅専用の箱型ステーショ
ンについては、分別収集の可能性について一定の目処がついた」としているが、それ以外の
ごみステーションについては、鳥獣被害や汚染等が発生する可能性が高いと考えられること
から、ごみステーションの衛生管理という点で、より一層、市民の理解や協力が不可欠であ
る。
上記の課題を踏まえた上で、市民の理解や協力が得られる家庭系生ごみの効率的な分別
収集・資源化手法をさらに調査・検討していくことが望まれる。
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