...

(病院事業の財務事務の執行等について) (PDF形式, 2.73MB)

by user

on
Category: Documents
21

views

Report

Comments

Transcript

(病院事業の財務事務の執行等について) (PDF形式, 2.73MB)
平成27年度
包括外部監査の結果報告書
(病院事業の財務事務の執行等について)
名古屋市包括外部監査人
大島
嘉秋
目
第1
次
包括外 部監査の概要 ........................................................................ 1
1
外部監査 の種類 ................................................................................. 1
2
選定した 特定の事件 ........................................................................... 1
3
特定の事 件を選定した理由 .................................................................. 1
4
包括外部 監査対象期間 ........................................................................ 2
5
包括外部 監査の方法 ........................................................................... 2
(1)包括外 部監査の視点 ........................................................................ 2
(2)実施し た主な監査手続 ..................................................................... 2
6
包括外部 監査の実施時期 ..................................................................... 5
7
包括外部 監査人及び補助者の資格及び氏名 ............................................. 5
8
利害関係 .......................................................................................... 5
第2
1
名古屋 市病院事業の概要 .................................................................. 6
名古屋市 の保健医療圏 ........................................................................ 6
(1)保健医 療計画の概要 ........................................................................ 6
(2)名古屋 市の所属する医療圏 ............................................................... 8
(3)基準病 床数 .................................................................................... 9
2
名古屋医 療圏の状況 ......................................................................... 11
(1)人口 ........................................................................................... 11
(2)出生 ........................................................................................... 12
(3)死亡 ........................................................................................... 13
3
名古屋市 立病院が果たすべき役割 ....................................................... 14
(1)公立病 院の役割 ............................................................................ 14
(2)名古屋 市立病院の役割 ................................................................... 14
(3)概要 ........................................................................................... 15
第3
包括外 部監査の結果及び意見 .......................................................... 18
1
総論 .............................................................................................. 18
(1)公立病 院改革プランと名古屋市立病院の取り組 みについて ................... 18
(2)総括的 分析について ...................................................................... 47
2
各論 .............................................................................................. 62
(1)出納管 理 ..................................................................................... 62
(2)債権管 理 ..................................................................................... 63
(3)固定資 産管理 ............................................................................... 68
(4)請求管 理 ..................................................................................... 74
(5)購買管 理 ..................................................................................... 74
(6)委託事 務 ..................................................................................... 80
(7)労務管 理 ..................................................................................... 88
(8)安全管 理 ..................................................................................... 92
(9)情報シ ステム ............................................................................. 101
(10) 陽 子線治療センター ................................................................. 109
(11) 地 方公営企業会計 .................................................................... 120
第4
1
包括外 部監査の結果及び意見 ......................................................... 135
包括外部 監査の結果及び意見(発見事項一覧) ................................... 135
包括外部監査を通じて発見した、指摘すべき事項、意見を付すべき事項につい
て、それぞれ、〔指摘〕、〔意見〕として記述した。具体的には以下のとおりで
ある。
〔指摘〕法令や規則等に違反している事項、著しく不当な事項等
〔意見〕規則違反ではないが、自治体運営の有効性・効率性・経済性を踏まえ
た結果、改善することが望ましい事項
〔指摘〕、〔意見〕に記載されている【西部】、【東部】、【共通】、【病院
局】、【財政局】は、指摘・意見の対象となる拠点を示している。具体的には以
下のとおりである。
【西部】西部医療センターに対する指摘・意見
【東部】東部医療センターに対する指摘・意見
【共通】西部医療センター・東部医療センターの両拠点に対する指摘・意見
【病院局】病院局に対する指摘・意見
【財政局】財政局に対する指摘・意見
金額は単位未満を切捨てし、比率は小数点以下第 2位を四捨五入している。
なお、報告書中の金額は、端数処理の関係で総数と内訳の合計が一致しない場
合がある。
第1
1
包 括外部監査 の概 要
外部監査の種類
地 方 自 治 法 第 252 条 の 37 第 1 項 及 び 名 古 屋 市 外部 監 査 契 約 に 基 づ く 監 査 に
関する条例第 2条に基づく包括外部監査
2
選定した特定の事件
病院事業の財務事務の執行等について
3
特定の事件を選定した理由
名古屋市 の病院 事業は 、平成20年度に地方公営企業法を全部適用するととも
に 、 総 務 省 の 公 立 病 院 改 革 ガ イ ド ラ イ ン (以 下 「 前 ガ イ ドラ イ ン 」 と い う 。)
を踏まえ た計画 (名古 屋市立病院改革プラン)を 2度にわたり作成し、特色あ
る病院づ くりに取 り 組む と ともに、市立病院の再編を行ってきた。これにより、
当時 5つあった病院のうち 2つの病院が民間病院に譲渡され、 1つの病院が
指定管理 者によ る運営 となり、残り 2つの病院が母体となり西部医療センター
と東部医 療セン ター とい う 名古屋市直営の病院となった。このうち西部医療セ
ンターは 、小児 ・周 産期 医 療に加え、東海三県初の陽子線がん治療を開始し、
がん医療 の充実 を担 う病 院 となり、東部医療センターは、心臓血管疾患、脳血
管疾患に 対する 高度 医療 を 特色とした名古屋市有数の救急医療を担う病院とな
っている。
こうした 改革に よる経 営改善の結果、平成24年度には単年度の資金収支の黒
字化の達 成と不 良債 務の 解 消もできたが、経常収支では、西部医療センター開
院に伴い 導入し た高 度医 療 機器の減価償却費の影響などにより、依然として黒
字には至らない状況と なっている。また、平成26年度に46年ぶりに地方公営企
業会計基 準が見 直され た結果、引当金の状況が明らかになるなど、平成26年度
の決算より経営実態が これまで以上に明らかになった。なお、平成27年 3月に
1
総務省か ら公表 され た「 新 公立病院改革ガイドライン」においても、継続的な
経営効率化を促しているところである。
この よう な 背景 の下 、現 在名古屋市によって運営される病院において、公 立
病院とし て有す べき 適切 な 経営管理体制が整備運用されているかどうかを確認
すること は、今 後の 継続 的 な経営効率化を図るうえで重要であるため、病院事
業の財務 事務の 執行 及び 経 営にかかる事業の管理をテーマとして選定すること
とした。
4
包括外部監査対象期間
平成26年度(ただし、必要に応じて平成27年度及び過年度も対象とした。)
5
包括外部監査の方法
包括外部監査の視点及び主な監査手続は次のとおりである。
(1)包括外部監査の視点
ア
病院 事業 の事務 管理に係る規程・基準・マニュアル等は適正に整備・運
用されているか。
イ
病院 事業 の管理 運営は効率的・経済的に実施されているか。特に、医療
機 器 等の 投資 につ いてはその稼働状況や採算性、委託業務については契約
方法や管理は十分であるか。
ウ
医業収入等の調定、徴収の管理は適切に実施されているか。
エ
資産及び負債の管理は適切かつ適法に実施されているか。
オ
情報システムのセキュリティ管理に問題はないか。
カ
病院 事業 は名古 屋市立病院改革推進プランに沿った取り組みが行われて
いるか。また、モニタリング方法に問題はないか。
(2)実施した主な監査手続
包 括 外部監 査 にあ たり、名古屋市立病院の全体像を把握するため、監査に
先立 ち、 西部 医療セ ンター、東部医療センター及び緑市民病院の視察を行っ
2
た。その後、今回の監査の中心とした西部医療センターにおける資料の閲
覧・質問を実施し、その結果を基に、東部医療センターにおける資料の閲
覧・質問を実施した。
ま た 、前 記監 査の 視点に基づき、以下に記載の監査要点ごとの確認事項 に
ついて資料の閲覧・質問を実施した。
監査の視点
病院事業の
事務管理に
係る規程・
基準・マニ
ュアル等は
適正に整
備・運用さ
れている
か。
病院事業の
管理運営は
効率的・経
済的に実施
されている
か。特に、
医療機器等
の投資につ
いてはその
稼働状況や
採算性、委
託業務につ
いては契約
方法や管理
は十分であ
るか。
医業収入等
の調定、徴
監査要点
確認事項
職務分掌
現金管理、領収書の使用状況、患 者預り金
(簿外現金の 取扱)
承認行為
委員会の開催状況、経営会議等議 事録、決裁
書のルート
医療安全
医療安全対策
専門医の免許 証(更新時の確認)
B C Pへの対応
医療事故・感 染防
医療事故防止 のための安全管理体制
止他
院内感染防止
クリニカル・ インディケータ
接遇の向上
治験収入
規程整備
診療科別支出 額の割当
支出管理
会計処理・不 正リスク
固定資産管理
施設の広域活 用
(陽子線治療センター) 成果指標との 対比
当初導入計画 (収支計画)との整合性
繰入金計算理 由
業務委託
委託契約内容
仕様書の記載 内容
随意契約の理 由の明確性
修繕・修繕以 外の契約
見積書の記載 内容
臨床検査・医 事等の契約で一者随意契約を繰
り返す状況の 有無
長期継続契約 の逸脱
委託業務に対 する病院側のモニタリング状況
医薬品購入
医薬品(試薬を含む)の購入の公 平性・効率
性・経済性
後発医薬品の 使用拡大
価格ベンチマ ークの活用
診療材料購入
診療材料の購入の公平性・効率性 ・経済性
価格ベンチマ ークの活用
医事業務管理
医事業務の運 用状況
(保険者分)
医事業務にお ける統制活動の整備状況
3
収の管理は
適切に実施
されている
か。
診療債権管理
D P C分析
資産及び負
債の管理は
適切かつ適
法に実施さ
れている
か。
医業外収入管 理
購買管理
消費管理
固定資産管理
財産管理の適 否
会計処理
情報システ
ムのセキュ
リティ管理
に問題はな
いか。
病院事業は
名古屋市立
病院改革推
進プランに
沿った取り
組みが行わ
れている
か。また、
モニタリン
グ方法に問
題はない
か。
セキュリティ 管理
地域医療連携
医療従事者に 選ば
れる病院
達成感の得ら れる
職場環境
連携による資 源の
有効活用
一般会計が負 担す
べき経費の範 囲
経営効率化
再編・ネット ワー
ク化に関する 見解
経営形態の見 直し
入院外来患者未収金の管理状況
マニュアルの 整備状況
滞納債権管理 手法
不納欠損処理 の根拠整備
督促の継続的 実施状況
D P Cの活用
機能評価係数 向上への取り組み
講演料その他勤務時間内業務の収 入管理
発注と納品の統制状況
材料購入手続 及びその管理状況
血液の管理状況
薬品・診療材 料データ管理
固定資産の現物管理・実査状況
購入取引の処 理
固定資産台帳 の登録内容
除売却に関す る稟議の提出状況
回収遅延の債権の有無
退職給付引当金
貸倒引当金( 患者債権)
破産更生債権 への区分
看護師貸付金 の処理(引当金)
財務諸表の表 示科目
その他、地方 公営企業会計基準への対応
セキュリティに関するルールの整 備状況
外部記録媒体 の管理
システムへの アクセスの管理
物理的セキュ リティ管理
外部委託先管 理
地域連携パスの運用状況
かかりつけ医 の医療の支援
その他連携強 化に向けた取り組み状況
病棟クラーク の充実
病棟薬剤師の 充実
専門的な知識 を有する職員等の配置
職員提案制度 の実施
職員表彰制度 の充実
職員満足度調 査の実施
市立病院・市 立大学病院との連携
計算の前提の 整理
経営感覚に富む人材の登用
事務職員の人 材開発の強化
医師派遣等に 係る拠点機能を有する病院機能
地方公営企業法全部適用
4
6
包括外部監査の実施時期
平成27年 5月12日から平成28年 2月 4日まで
7
包括外部監査人及び補助者の資格及び氏名
外部監査人
大島嘉秋
公認会 計士、公認情報システム監査人
補助者
西原浩文
公認会 計士
同
山岡輝之
公認会 計士
同
鈴木徹也
公認会 計士
同
児山法子
公認会 計士
同
小川由美子
公認会 計士
同
佐々木留美
外国人 患者受入れ医療機関認証制度認 定調査員
同
澤井恭子
薬剤師
同
山口和彦
公認情 報システム監査人
同
武藤浩史
診療放 射線技師
同
西川幸子
その他
8
利害関係
地方自治法第 252条の29の規定により記載すべき利害関係はない。
5
第2
1
名 古屋市病院 事業 の概要
名古屋市の保健医療圏
市民 が生 活 して いく うえ で、医療に関しては、どこに住んでいても、その 人
にとって 適切な 医療 ・介 護 サービスが受けられる社会を実現すること、また、
病気にな った場 合に しっ か り「治す医療」と、その人らしく尊厳を持って生き
られるよう「支える医療・介護」の双方を実現することが必要不可欠である。
名古屋市 は西部 医療セ ンター、東部医療センター、緑市民病院の 3病院体制
をとって いるが 、名 古屋 市 の病院事業を検討するにあたり、愛知県、とりわけ
名古屋市 が位置 する 愛知 県 西部を中心とした医療圏に関する基本的な状況を把
握することとする。
なお 、愛 知 県で は、 全て の県民が健やかに安心して暮らせる社会の実現に 向
け て 保 健 医 療 施 策 の 総 合 的 基 本 指 針 で あ る「 愛 知 県 地 域 保健 医 療 計 画 」( 以 下
引用部分を除き「保健医療計画」という。)を策定している。
(1)保健医療計画の概要
保 健 医療 計画 の概 要は以下のとおりである。本報告書に記載した保健医 療
計画は 、医 療法 による 5 年ごとの見直し、及び医療法の一部の改正に伴う計
画の見直しを行 った結 果、平成25年 3月に公示されたものである。なお、後
に記載している 基準病 床数については、平成25年 3月に公示された保健医療
計画上において も平成 23年 3月に策定した保健医療計画で示したものを適用
していることから、これを記載している。
6
【図表 2- 1- 1】保 健医療計画の概要
計画の目的
計画の性格
計画期間
愛知県地域保健医 療計画 は、県民の多様な保健医療需要 に対応
し、疾病予防 から治療、リハビリ、在宅ケアに至る一 貫した保健
医療サービス が、適切に受けられる保健医療提供体制 の確立を目
指すことを目 的とし、次の 3つの基本方針の下 に、行政関係者、
保健医療関係 者、県民などが一体となって共に保健医 療の確保、
推進を図って いくための計画として策定します。
1 地域医療 の体系化及び地域の特性に配 慮した 医療機関の機能分
担、業務連携 を推進し、効率的な医療提供体制の確立 を図りま
す。
2 疾病予防 等の保健対策を推進し、生涯 を通じ た健康づくりを支
援します。
3 保健医療 従事者の確保、資質の向上及 び人材 の有効活用を図り
ます。
愛知県地域保健医 療計画 は、次の性格を持つものです。
1 愛知県の 保健医療対策の今後の基本方 針を示 すものです。
2 二次医療 圏での保健医療対策の推進方 向を示 すものです。
3 医療機関 及びその他関係機関などが整 備を進 めるに当たっての
指針となるも のです。
平成25年度から 平成29年度までの 5年間 とします。
(出典:愛 知県地域保健医療計画)
前記の計画は、健康づくりから疾病の予防、治療、社会復帰までの総合
的な 保健 医療 体制を 整備するための地域的単位である保健医療圏を設定し て
いる 。保 健医 療圏に は、一次、二次及び三次の設定があり、それぞれの保 健
医療圏の役割は以下のとおりである。
●一次 保健医療圏とは 、地域住民に密着した健康相談等の保健医療サービ
スと日 常の健康管理や かかりつけ医・かかりつけ歯科医等による初期医療
を提供していくための最も基礎的な地域単位である。
●二次 保健医療圏とは 、一般的な入院医療への対応を図り、保健・医療・
福祉の 連携した総合的 な取り組みを行うために市区町村域を超えて設定す
る圏域である。
● 三 次保 健 医 療圏 と は、高度・特殊な専門的医療や広域的に実施すること
が 必 要な 保 健 医療 サ ービスを提供するために設ける圏域で、県全域を範囲
としている。
7
(2)名古屋市の所属する医療圏
二 次 保健 医療 圏と 構成する市区町村は、次のとおりである。名古屋市は、
市域全体で名古屋医療圏を構成している。
【図表 2- 1- 2】 二 次保健医療圏の名称及び区域
名称
名古屋医療圏
区域
名古屋市
津島市、愛西 市、弥富市、あま市、大治町、蟹江町、
海部医療圏
飛島村
尾張中部医療 圏
清須市、北名古屋市、豊山町
尾張東部医療 圏
瀬戸市、尾張旭市、豊明市、日進 市、長久手市、東郷町
尾張西部医療 圏
一宮市、稲沢市
春日井市、犬 山市、江南市、小牧市、岩倉市、大口町 、
尾張北部医療 圏
扶桑町
半田市、常滑 市、東海市、大府市、知多市、阿久比町 、
知多半島医療 圏
東浦町、南知 多町、美浜町、武豊町
西三河北部医 療圏
豊田市、みよし市
西三河南部東 医療圏
岡崎市、幸田 町
西三河南部西 医療圏
碧南市、刈谷 市、安城市、西尾市、知立市、高浜市
東三河北部医 療圏
新城市、設楽町、東栄町、豊根村
東三河南部医 療圏
豊橋市、豊川市、蒲郡市、田原市
(出典:愛知 県地域保健医療計画)
8
【図表 2- 1- 3】二 次保健医療圏図
(3)基準病床数
保 健 医 療 計 画 で は 、 医 療 法 第 30 条 の 4 第 2 項 に 基 づ き 、 国 の 定 め る 算 定
方法により、療 養病床 (注 1)及び一般病床(注 2)について前記の二次保
健医療圏ごとに基準病床数を定めている。
( 注 1) 療養病 床と は、主として長期にわたり療養を必要とする患者を 入
院させるための病床のことである。
( 注 2) 一般病 床と は、療養病床、精神病床、感染症病床及び結核病床 を
除 い た病 床 の ことである。なお、精神病床、感染症病床、結核病
床はそれぞれ県全域を範囲として基準病床数を定めている。
基 準 病床 数は 、病 床を整備するための目標であるとともに、基準病床数 を
超える病床の増加を抑制する基準である。
二次保健医療圏ごとの基準病床数と既存病床数は、次表のとおりである。
9
【図表 2- 1- 4】基 準病床数と既存病床数
病床種別
医療圏
基準病床数
既存病床数
(平成23∼2 7年度)(平成24年 9月末)
名古屋
15,38 8
20,32 6
1,9 64
1, 961
尾張中部
8 62
751
尾張東部
3,5 58
4, 541
尾張西部
3,5 86
3, 578
尾張北部
4,8 54
4, 624
知多半島
3,4 73
3, 121
西三河北部
2,9 00
2, 391
西三河南部東
2,860
2,406
西三河南部西
4,676
4,429
東三河北部
6 30
485
東三河南部
6,4 44
6, 196
計
51,19 5
54,80 9
精神病床
全県域
12,554
13,031
結核病床
全県域
218
256
感染症病床
全県域
74
70
海部
療養病床及び 一般病床
(出典:愛知 県地域保健医療計画)
(注 1)「療養病床及 び 一般病床」の基 準 病床 数は、両病床 数を 合算 した数値 である。
(注 2)精神、結核、感染症の各病床については、全県単位で整備することとして
いる。
( 注 3 ) 既 存病 床 数 は、 病 院 の 開設 許 可 病床数 等 を も とに 医 療 法第 7 条 の 2 第 4項
の 規 定 に 基 づ き 補 正 を 行 っ た 後 の 数 で 、 平 成 24 年 9 月 末 以 降 の 病 院 ・ 有 床
診療所の許可 、廃止届等により変更される。
名 古 屋 医 療 圏 の 既 存 病 床 数 は 20,000 床を 超 え て お り 、 約 5,000 床 の 病 床
過剰 地域 であ る。愛 知県医療審議会医療体制部会の資料では、名古屋医療圏
は、 二次 保健 医療圏 の中で、人口は大阪市医療圏、札幌医療圏に次いで全国
で 3番目 に多いとさ れ ている。また、大学病院が 2病院あり、大規模な医療
機関が多いことも特徴である。
10
2
名古屋医療圏の状況
(1)人口
平 成 26 年 の 名 古 屋 市 の 人 口 は 総 人 口 227 万 人 、年 少 人 口 ( 0 歳 ∼ 14 歳 )
の 割 合 が 12.7 % 、 老 年 人 口 ( 65 歳 以 上 ) の 割 合 が 23.7 % で あ る 。 年 少 人 口
の 割 合 は 平 成 6 年 の 1 5.5 % か ら 平 成26 年 の 12.7 % に 低 下し て い る 一 方 、 老
年 人 口 の 割 合 は 、 平 成 6 年 の12.2% か ら 平 成 26 年 の23.7% と 増 大 し て お り 、
急速な少子高齢化が進行している(【図表 2- 2- 1】参照)。
この傾 向は 今後 も更 に進行すると予測されており、団塊の世代が75歳以上
と な る 平 成 37 年 の 総 人 口 は 224 万 人 と 平 成26 年 度 と 比 較 し 約 3 万 人 の 減 少
と な り 、 年 少 人 口 の 割 合 は 11.2 % と 1.5 ポ イ ン ト 減 少 、 老 年 人 口 の 割 合 は
27.5 % と 3.8 ポ イ ン ト 増 加 す る と予 測 さ れ て い る 。 さ ら に そ の 10 年 後 の 平
成 47 年 に は 総 人 口 は 215 万 人 と な り 、 年 少 人 口 の 割合 は 10.3 % 、 老 年 人 口
の 割 合 は 31.1 % と 平 成 26 年 と 比 較 し 総 人 口 は 約 12 万 人 の 減 少 、 年 少 人 口 の
割 合 は 2.4 ポ イ ン ト 減 少 、 老 年 人 口 の割 合 は 7.4 ポ イ ン ト の 増 加 と 少 子 高
齢化 のみ な ら ず 総人 口 自 体が減少す ると推計 されている(【図表 2- 2- 2】
参照)。
【図表 2- 2- 1】名 古屋市の年齢 3区分別人口の推移
年齢 3区分 別人口(単位:人、()は%)
0∼14歳
15 ∼64歳
65 歳以上
(年少人口) (生産年齢人口) (老年人口)
333,77 9
1,549, 278
262,39 0
平成 6年1 0月 2,153, 293
(15.5)
(71.9)
(12.2)
308,09 7
1,526, 985
324,35 1
11年10 月 2,167, 327
(14.2)
(70.5)
(15.0)
296,88 8
1,492, 896
389,70 1
16年10 月 2,202, 111
(13.5)
(67.8)
(17.7)
293,96 5
1,476, 702
466,15 2
21年10 月 2,257, 888
(13.0)
(65.4)
(20.6)
285,28 3
1,423, 843
531,69 6
26年10 月 2,276, 590
(12.7)
(63.5)
(23.7)
(参考資料: 名古屋市「毎月 1日現在の年齢 3区分別人口、平均年齢、年齢中 位
数(全市・区 別)」(名古屋市ホームページ))
(注)総人口 には年齢不詳者を含む。このため、 3 区分の各欄に記載している人
口及び%の横 計は整合しない場合がある。
年
月
総人口
(人)
11
【図表 2- 2- 2】
名古屋市の将来推計人口
年齢 3区分 別人口(単位:人、()は%)
0∼14歳
15∼64歳
65歳以上
(年少人口) (生産年齢 人口) (老年人口)
284,35 4
1,435, 189
569,30 2
平成27年 2,288, 845
(12.4)
(62.7)
(24.9)
271,75 3
1,402, 354
603,99 7
32年 2,278, 104
(11.9)
(61.6)
(26.5)
252,25 9
1,377, 847
617,54 1
37年 2,247, 647
(11.2)
(61.3)
(27.5)
232,18 3
1,332, 998
639,00 1
42年 2,204, 182
(10.5)
(60.5)
(29.0)
220,46 4
1,260, 531
669,63 6
47年 2,150, 631
(10.3)
(58.6)
(31.1)
(参考資料: 国立社会保障・人口問題研究所による将 来推計人口
(平成25年 3月推計))
年
総人口
(人)
(2)出生
平 成 24 年 の 名 古 屋 市 の 出 生 数 は 19,610 人 、 出 生 率 は 8.7 と な っ て い る 。
年次推 移で 見る と、 出生数、出生率とも年々低下しているが、平成22年には
若干 増加 に転 じてい る。愛知県と比較すると、出生率、合計特殊出生率共に
低くなっている(【図表 2- 2- 3】参照)。
【図表 2- 2- 3】出生数、出生率及び合計特殊出生率の推移
出生数(人)
出 生率(人口千対)
合計特殊出生 率
年
名古屋市
愛知県
名古屋市
愛知県
名古屋市
愛知県
平成12年
20,760
74,736
9.6
10.8
1.26
1.44
17年
19,046
67,110
8.6
9.4
1.21
1.34
22年
20,125
69,872
8.9
9.6
1.36
1.52
24年
19,610
67,913
8.7
9.3
1.36
1.46
(出典:愛知 県「名古屋医療圏保健医療計画」
出生率(名古 屋市)は名古屋市「平成26年人口 動態統計の概況」)
(注)合計特殊出生率は、そ の 年 次 の 1 5 歳 か ら 4 9 歳 ま で の 女 性 の 年 齢 別 出 生
率を合計したもので、 1人の女性が仮にその年次の年齢別出生率で一生の
間に生むとしたときの子どもの数に相当するもの。
12
(3)死亡
平 成 24 年 の 名 古 屋 市 の 死 亡 数 は 19,680 人 、 死 亡 率 は 8.7 と な っ て い る 。
年 次 推 移 で 見 る と 、 死 亡 率 は 年 々 徐 々 に 高 く な っ て い る 。(【 図 表 2- 2- 4 】
参照)。
【図表 2- 2- 4】死 亡数及び死亡率の推移
名古屋市
愛 知県
年
死亡数
(人)
死亡率
(人口千対)
死亡数
(人)
死亡率
(人口千対)
平成12年
15, 143
7.0
45, 810
6.6
17年
17,39 6
7.9
52,5 36
7.2
22年
19,01 4
8.4
58,4 77
8.1
24年
19,68 0
8.7
61,3 54
8.4
(出典:愛知 県「名古屋医療圏保健医療計画」)
平成24年の 主な死因 別 死亡数を平成17年と比較すると、名古屋市では悪性
新生物 が引 き続 き第 1 位となっており、死因の大半を占めている。また、肺
炎の死 亡数 が増 加し、 脳血管疾患に代わり 3番目に多い死因となっている。
さら に、 高 齢 化 の影 響 で 老衰の死亡 数が増加 している(【 図表 2- 2- 5】 参
照)。
13
【図表 2- 2- 5】主 な死因別死亡数及び死亡率
死亡数(人)
死因
平成17年
死亡率(人口10万対 )
平成24年
平成 17年
平成24年
名古屋市
愛知県
名古屋市
愛知県
名古屋市
愛知県
名古屋市
愛知県
17,396
52,536
19,680
61,354
785.4
724.2
868.1
8 4 3 .1
悪性
新生物
5,431
15,876
5,920
18,102
245.2
218.8
261.1
2 4 8 .8
心疾患
2,989
8,767
2,980
8,651
134.9
120.8
131.5
1 1 8 .9
脳血管
疾患
1,855
6,196
1,642
5,585
83.7
85.4
72.4
76.7
肺炎
1,490
4,862
1,749
5,515
67.3
67.0
77.2
75.8
不慮の
事故
597
2,064
610
2,019
27.0
28.5
26.9
27.7
自殺
479
1,466
406
1,332
21.6
20.2
17.9
18.3
老衰
331
1,431
830
3,244
14.9
19.7
36.6
44.6
腎不全
340
926
357
1,124
15.3
12.8
15.7
15.4
肝疾患
267
732
214
686
12.1
10.1
9.4
9 .4
慢性閉塞
性肺疾患
209
586
190
644
9.4
8.1
8.4
8 .8
3,408
9,630
4,782
14,452
153.9
132.7
211.0
1 9 8 .7
総数
その他
(出典:愛知 県「名古屋医療圏保健医療計画」)
3
名古屋市立病院が果たすべき役割
(1)公立病院の役割
前 ガ イド ライ ンで は、公立病院の果たすべき役割として「地域において提
供さ れる こと が必要 な医療のうち、採算性等の面から民間医療機関による 提
供が困難な医療を提供することにある。」としている。
(2)名古屋市立病院の役割
前記 1(2)「名古屋市 の所属する医療圏」のとおり、愛知県は12の二次保
14
健医 療圏 に分 かれて おり、そのうち名古屋医療圏については名古屋市全域 と
一 致 し て い る 。 名 古 屋 医 療 圏 の 医 療 施 設 数 は 、 平 成 25 年 10 月 1 日 現 在 、 病
院 132 、 診 療 所 2,075 、 歯 科診 療所 1,443 、 助 産所 67 と なっ ており 、大 学
病院や高機能な大規模病院が複数存在している。
名 古 屋市 立 病院に お いては、病院機能の選択と集中を進め、医療機能の集
約化と役割の 明確化を 進めるために、平成15年当時 5つあった市立病院のグ
ループ化や再編を進めてきた。
そ し て、 更な る病 院機能の明確化を進めるため、西部医療センターにお い
ては 「小 児・ 周産期 医療、成育医療、消化器系がんを中心とした悪性新生 物
(が ん) 医療 」をは じめとする医療機能の強化を行うとともに、陽子線治 療
施設 を有 し、 陽子線 治療への取り組みを強化している。東部医療センター に
お い て は 、「 救 急 医 療 及 び 心 臓 血 管 疾 患・ 脳 血 管 疾 患 に 対 する 高 度 ・ 専 門 医
療」 を特 長と した医 療を提供している。緑市民病院においては、指定管理 者
制度 を導 入し 、地域 密着型の総合的な役割を継続しながら、地域医療の質 の
向上に民間の運営手法を活用しながら取り組んでいる。
(3)概要
ア
西部医療センター
所在地
病院長
主な病院機能
許可病床数
診療科目
〒462-850 8 名古屋市北区平手町 1丁目 1番地の 1
田中 宏紀
DMAT指定 医療機関、地域医療支援病院 、日本医療機能評
価機構認定病 院(Ver. 6.0)、救急告示医療機関、 臨床
研修病院、地 域周産期母子医療センター、地域災害拠 点
病院、 DP CⅢ群病院
50 0床
内科、呼吸器 内科、消化器内科、循環器内科、腎臓・ 透
析内科、神経 内科、血液・腫瘍内科、内分泌・糖尿病 内
科、外科、呼 吸器外科、消化器外科、脳神経外科、乳
腺・内分泌外 科、小児外科、整形外科、精神科、児童 精
神科、小児ア レルギー科、リウマチ科、小児科、小児 科
(新生児)、皮膚科、泌尿器科、産 婦人科、眼科、耳鼻
いんこう科、 リハビリテーション科、放射線診断科、 放
射線治療科、 病理診断科、麻酔科、歯科口腔外科
(平成27年 1月 1日現在)
15
西 部 医療 セ ン ター の 特長は、前身である城北病院の小児・周産期医療 に
加え、がん医療や救急医療の充実に取り組んでいるところである。
病院機能 として は、平成25年 2月には陽子線治療センターも開設し、同
年 7 月 に は 新 生 児 集 中 治 療 室 ( NICU ) を 12 床 ま で 増 床 し 、 更 な る 充 実 を
図 っ てい る 。ま た、 同年 9月には地域医療支援病院の承認を受けており、
特 長 のあ る 医 療機 能 に加え、地域の中核的病院としての役割を果たしてい
る。
イ
東部医療センター
所在地
病院長
主な病院機能
許可病床数
診療科目
〒464-854 7 名古屋市千種区若水 一丁目 2番23号
佐藤 孝一
DMAT指定 医療機関、地域医療支援病院 、日本医療機能評
価機構認定病 院(3rdG:Ver.1. 0)、救急告 示医療機関、
臨床研修病院 、卒後臨床研修評価機構認定病院、地域 災
害拠点病院、 DPCⅡ群病院、第二種感染 症指定医療機関
4 98床(一般病床 488 床、感染症病床10床)
内科、呼吸器 内科、消化器内科、循環器内科、腎臓内
科、神経内科 、血液内科、内分泌内科、外科、心臓血 管
外科、脳神経 外科、乳腺・内分泌外科、整形外科、精 神
科、小児科、 皮膚科、泌尿器科、産婦人科、眼科、耳 鼻
いんこう科、 リハビリテーション科、放射線科、病理 診
断科、救急科 、麻酔科、歯科
(平成27年 1月 1日現在)
東 部 医療セ ンタ ー の特長は、昭和32年に現在地に移転改築して以来、救
急 診 療棟 や 心 臓血 管 センター、脳血管センターの開設等、救急医療、心臓
血 管 疾患 、 脳 血管 疾 患に対する高度専門医療を提供する機能を有している
と こ ろ で あ る 。 ま た 、 平 成 23 年 5 月 に 現 在 の 名 称 に 改 称 後 、 平 成 25 年 3
月 に は地 域 医 療支 援 病院の承認を受け、地域の中核的病院としての役割を
果たしている。
なお、平 成27 年 3月の救急・外来棟の開棟を足がかりに病棟改築の設計
を 進 めて お り 、救 急 医療を中心とした地域住民に信頼され、安心して受診
できる病院となるよう様々な取り組みを進めている。
16
ウ
緑市民病院
所在地
指定管理者
病院長
主な病院機能
許可病床数
診療科目
〒45 8-0037 名古屋市 緑区潮見が丘一丁目77番地
医療法 人純正会
神谷 保廣
救急告 示医療機関、 DPC準備病 院
300床
内科、呼吸器 内科、消化器内科、循環器内科、外科、 消
化器外科、脳 神経外科、小児外科、整形外科、小児科 、
皮膚科、泌尿 器科、婦人科、眼科、耳鼻いんこう科、 リ
ハビリテーシ ョン科、放射線科、病理診断科、救急科 、
麻酔科
(平成27年 1月 1日現在)
緑 市 民病 院 の 特長 は 、救急から健診に至るまで地域の保健、医療の中 心
的 役 割を 担 う 地域 密着型の病院としての機能を果たしているところである 。
平成24 年 4月より、指定管理者制度を導入し、民間の手法を活用した運
営を行っ ており 、平成 26年 7月からは地域包括ケア病棟を開棟し、回復期
へのニーズにこたえる病院として、その役割を担っている。
ま た 、放 射 線 治療 装 置(リニアック)や化学療法室を備えることでが ん
医療に積極的に取り組んでいる。
17
第3
1
包 括外部監査 の結 果及び意見
総論
(1)公立病院改革プランと名古屋市立病院の取り組みについて
ア
公立病院改革プラン
公 立 病院 は 、 地域 に おける基幹的な公的医療機関として、地域医療の確
保 の ため 重 要 な役 割 を果たしているが、多くの公立病院において経営状況
が 悪 化す る と とも に、医師不足に伴い診療体制の縮小を余儀なくされる等 、
そ の 経営 環 境 や医 療 提供体制の維持が極めて難しい状況にあった。このよ
う な 状況 の 中 、公 立 病院が今後とも地域において必要な医療を安定的かつ
継 続 的に 提 供 して い くためには、多くの公立病院において、抜本的な改革
の実施が避けて通れない課題となっていた。
総 務 省は 、 こ のよ う な課題解決に向け、有識者による「公立病院改革懇
談 会 」 を設 置 し 、 ( ア) 経 営効 率化、 ( イ) 再 編・ ネ ットワーク 化 、 (ウ )
経 営 形態 の 見直 しの 3つの視点から公立病院改革について議論を重ね、 平
成19年12月に前ガイドラインを策定し各地方公共団体に通知した。
ま た 、総 務 省 は、 公 立病院を設置している地方公共団体に対し、この前
ガ イ ド ラ イ ン を 踏 ま え 、 平 成 20 年 度 内 に 「 公 立 病 院 改 革 プ ラ ン 」( 以 下
「 改 革 プ ラ ン 」 と い う 。) を 策 定 し 、 病 院 事 業 経 営 の 改 革 に 総 合 的 に 取 り
組むことを要請した。
さらに、総務省は、平成27年 3月31日に「新公立病院改革ガイドライン」
( 以 下 「 新 改 革 ガ イ ド ラ イン 」 と い う 。) を 策 定 し 、 新た に ( エ ) 地 域 医
療 構 想を 踏 ま えた 役 割の明確化の視点を加え、より地域において必要な医
療 供 給体 制 の 確保 を 図り、その中で公立病院が安定した経営の下で不採算
医 療 や高 度 ・ 先進 医 療等を提供する重要な役割を継続的に担っていくこと
を目指すことを要請した。
前 ガ イド ラ イン 及び 新改革ガイドラインの 4つの視点を要約すると次 の
とおりである。
18
(ア)経営効率化
前 ガ イド ラ イ ンで は、 病院経営の健全性を確 保する観点から主要な 経
営 指 標に つ い ては 数 値目標を掲げ、経営の効率化を図ることが求められ
た 。 具体 的に は、 経常収支比率、職員給与費比率、病床利用率の 3つ の
経 営 指標 に つ いて 、 必ず数値目標を設定することを求めた。また、経営
指 標 にか か る 数値 目 標の設定にあたっては、一般会計等からの所定の繰
出 が 行わ れ れ ば「 経 常黒字」が達成される状態(すなわち経常収支比率
が 10 0 %以 上と なる こと)を想定して、これに対応した水準で各指標の
目 標 数値 が 定 めら れ るべきであるとされ、計画期間内での経常黒字化を
達成することを求めた。
ま た 、公 立 病 院と して 提供すべき医療機能が 十分に発揮されている か
を 検 証す る た め、 外 来・入院患者数等の目標値を設定することを求めて
いた。
新 改 革ガ イ ド ライ ンに おいては、原則として 個々の病院単位で数値 目
標 を 設定 す る こと を 求めている。この場合、経常収支比率及び医業収支
比 率 につ い て は、 必 ず数値目標を設定するとともに、各病院の経営上の
課 題 を十 分 に 分析 し 、課題解決の手段としてふさわしい数値目標を定め
ることを求めている。
(イ)再編・ネットワーク化
前 ガ イド ラ イ ンで は、 重要テーマとして、近 年の公立病院の厳しい 経
営 状 況、 医 師 確保 対 策の必要性を踏まえると、地域全体で必要なサービ
ス が 提供 さ れ るよ う 、地域における公立病院を、①中核的医療を行い、
医師派遣の拠点機能を有する基幹病院と、②基幹病院から医師派遣等
様 々 な支 援 を 受け つ つ日常的な医師確保を行う病院・診療所へと再編成
す る とと も に 、こ れ らのネットワーク化を進めていくことが必要である
としていた。
新 改 革ガ イ ド ライ ンに おいては、公立病院は 都道府県と十分連携し つ
つ 、 二次 保 健 医療 圏 又は構想区域等の単位で予定される公立病院等の再
編 ・ ネッ ト ワ ーク 化 の概要と当該公立病院が講じるべき具体的な措置に
つ い て、 そ の 実施 予 定時期を含めて記載することが求められている。そ
19
の 際 、都 道 府 県の 策 定する地域医療構想との整合を図るものでなけれ ば
ならないとされている。
な お 、新 改 革 ガイ ドラ インでは前ガイドライ ンによる改革プランに 基
づ き 、既 に 再 編・ ネ ットワーク化に取り組んでいる場合には、現在の 取
り 組 み状 況 や 成果 を 検証するとともに、地域医療構想の達成の推進を 図
る 観 点等 か ら 、更 な る見直しの必要性について検討することを求めて い
る。
(ウ)経営形態の見直し
前 ガ イド ラ イ ンで は、 民間的経営手法の導入 を図る観点から、例え ば
地 方 独立 行 政 法人 化 や指定管理者制度の導入等により、経営形態を改 め
る ほ か、 民 間 への 事 業譲渡や診療所化を含め、事業のあり方を抜本的 に
見直すことが求められていた。
な お 、新 改 革 ガイ ドラ インでは前ガイドライ ンによる改革プランに 基
づ き 、既 に 経 営形 態 の見直しに取り組んでいる場合には、現在の取り 組
み 状 況や 成 果 を検 証 するとともに、更なる見直しの必要性について検 討
することを求めている。
(エ)地域医療構想を踏まえた役割の明確化
新 改 革ガ イ ド ライ ンで は、都道府県が策定す る地域医療構想は各地 域
の 医 療提 供 体 制が 将 来目指すべき姿を明らかにするものであることか ら 、
各 公 立病 院 の 果た す べき役割も、この地域医療構想を踏まえたもので な
け れ ばな ら な いと し ている。したがって、各公立病院は、新公立病院 改
革 プ ラ ン ( 以 下 「 新 改 革 プ ラ ン 」 と い う 。) で は 、 立 地 条 件 や求 め ら れ
る 医 療機 能 の 違い を 踏まえつつ、地域医療構想を踏まえた当該病院の 果
た す べき 役 割 、地 域 包括ケアシステムの構築に向けて果たすべき役割 、
一 般 会計 負 担 の考 え 方、医療機能等指標にかかる数値目標の設定、住 民
の理解を明確にすべきであるとしている。
イ
名古屋市立病院の改革
名 古 屋市 は 、 市立 病 院としての市域の医療ニーズに的確に対応し、か つ
効 率 的な 経 営を 実現 していくためには 5つの市立病院を再編し、医療資 源
20
の 選 択と 集 中 を図 ることが必要であると考え、市立病院の再編に着手した 。
平成15 年12 月に「 市立 病院整備基本計画」を策定し、医療機能の集約化と
役 割 分担 の 明 確化 に よる市立病院の特長をより明確にしていくため、平成
20年 4月 1日に 5つ の市立病院を 2グループと 1病院に再編した。
【図表 3- 1- 1】市 立病院再編の経過
平成19年度
平成20∼22年度
平成23年度
平成24年度
城西病院
西部医療センター城西病院
民間病院
305床
305床
120床
城北病院
西部医療センター城北病院
西 部 医 療 セ ン ター
251床
251床
500床
守山市民病院
東部医療センター守山市民病院
平成25年度
陽子線治療センターの開設
(平成24年度)
病床の集約
200床
民間病院
200床→(平成21年4月∼)165床→(平成23年5月∼)101床
東市民病院
東部医療センター東市民病院
東 部 医 療 セ ン ター
498床
498床
498床
緑市民病院
101床
救急・外来棟の整備
(平成24年度∼平成26年度)
指定管理者による運営
(平成24年度∼平成33年度(指定期間10年間))
300床
(参考資料:「名古屋市立病院改革 推進プラン」より監査人加工)
市 立 病院 の あ り方 を 検討した結果、西部医療センターのグループにつ い
ては、平成23年 4月 1日に城西病院の民間譲渡を行うとともに、城北病院
を移転新築し西部医療 センターを平成23年 5月 1日に開院させた。西部医
療 セ ンタ ー の 開院 に あたっては、市立病院の病床を集約させ、小児・周産
期 医 療、 が ん 治療 、 そして最先端の陽子線がん治療等の特長を持つ病院と
して再編された。
東 部 医療 セ ン ター の グループについては、当初は東市民病院と守山市 民
病 院 の 2 病 院 で 運 営 し て い た が 、 平 成 23年 5 月 1 日 に 東 市 民 病 院 を 東 部
医 療 セン タ ー と改 称 し、救急医療及び心臓血管疾患、脳血管疾患に対する
高 度 専門 医 療 を提 供 する地域の基幹病院とし、また、運営方針の見直しを
図り、平成25年 4月 1日に守山市民病院の民間譲渡を行う形で再編を実施
した。
21
緑市民病院は、平成24年 4月 1日より指定管理者制度を導入し、現在は
指定管理者である医療法人純正会による病院運営が行われている。
〔発見事項①〕市立病院の再編について
一 連 の市 立 病 院の 再 編は、医療機能の選択と集中を図り、限られた医 療
資 源 を最 大 限 活用 す ることで市域の医療ニーズを的確にとらえ、更に特長
あ る 病院 づ く りを 実 現させてきた。また、民間譲渡や指定管理者制度を積
極 的 に活 用 し 、効 率 的かつ効果的な医療提供の実現に向けた改革の取り組
み は 評価 さ れ るも の である。総務省が策定した前ガイドライン等を十分に
踏 ま えた 市 立 病院 の 再編は、複数の公立病院を有する自治体のモデルケー
スの 1つとして大いに参考になると考えられる。
〔発見事項②〕名古屋市立病院の経営形態について
経営形態について、市立病院は、平成20年 4月 1日より地方公営企業法
の一部適用から全部適用に移行した。緑市民病院については、平成24年 4
月 1日から指定管理者制度を導入した。緑市民病院は、指定管理者制度導
入後は収支が改善しており、名古屋市からの繰入額が継続して減少してい
る。前ガイドラインでは、「民間的経営手法の導入を図る観点から、例え
ば地方独立行政法人化や指定管理者制度の導入により、経営形態を改める
ほか、民間への事業譲渡や診療所化を含め、事業のあり方を抜本的に見直
すことが求められる。」と記載され、経営形態の見直しの主旨が民間的手
法の導入にあることが明示されている。
これは、例えば民間病院と公立病院の人件費を比較した場合、公務員の
給与体系から公立病院の人件費が高いことが財務構造上の大きな違いにな
っていることがその理由の 1つと考えられる。
参考までに、他の政令指定都市が開設した公立病院の経営形態は、平成
27年 4月 1日時点においては次のとおりである。
22
【図表 3- 1- 2】政 令指定都市が開設した公立病院の経営形態
【北海道札幌市】
市立札幌病院
全部
【宮城県仙台市】
全部
仙台市立病院
【新潟県新潟市】
新潟市民病院 全部
【大阪府大阪市】
地方独立行政法人大阪市民病院機構
【広島県広島市】
地方独立行政法人広島市立病院機構
安芸市民病院 指定管理者
【千葉県千葉市】
青葉病院
全部
海浜病院
【神奈川県横浜市】
市民病院
全部
脳卒中・神経脊椎センター
指定管理者
みなと赤十字病院
全部
【愛知県名古屋市】
東部医療センター
全部
西部医療センター
緑市民病院
指定管理者
【福岡県福岡市】
地方独立行政法人福岡市立病院機構
【熊本県熊本市】
熊本市民病院
全部
植木病院
一部
【神奈川県川崎市】
川崎病院
全部
井田病院
指定管理者
多摩病院
【大阪府堺市】
地方独立行政法人堺市立病院機構
【福岡県北九州市】
北九州市立医療センター
八幡病院
門司病院 指定管理者
【埼玉県さいたま市】
さいたま市立病院
【京都府京都市】
地方独立行政法人京都市立病院機構
【兵庫県神戸市】
地方独立行政法人神戸市民病院機構
【岡山県岡山市】
地方独立行政法人 岡山市立総合医療センター
国立病院機構岡山市立金川病院 指定管理者
一部
【静岡県静岡市】
静岡病院 ⇒平成28年4月法人化
清水病院 ⇒平成30年代半ば法人化予定
【静岡県浜松市】
浜松医療センター
指定管理者
浜松市リハビリテーション病院
一部
浜松市国民健康保険佐久間病院
( 注 ) 表 中 の 「 全 部 」 は 地 方 公 営 企 業 法 全 部 適 用 の 医 療 機 関 、「 一 部 」 は
地 方 公 営 企 業 法 一 部 適 用 の 医 療 機 関 、「 法 人 化 」 は 地 方 独 立 行 政 法 人 化 を
示す。
経営形態
採用数
地方公営企業 法全部適用若しくは一部適用のみ
7市
地方公営企業 法全部(一部)適用と指定管理者
5市
地方独立行政 法人のみ
5市
地方独立行政 法人と指定管理者
2市
他 の 政令 指 定 都市 で は、地方公営企業法の一部又は全部適用では一定 の
限 界 があ る と 判断 し 、地方独立行政法人へ移行、あるいは移行に向けての
取り組みに着手する動きもある。
こ れ は、 各 病 院が 公 立病院として、厳しい医療環境の中、様々な課題 を
解 決 し、 よ り 良い 経 営に向かっていくために経営形態を見直していると考
えられる。
経 営 形 態 別 の 特 徴 は 【 図 表 3- 1- 3 】 の と お り で あ る 。 そ の 中 で 、 地
方独立行政法人化のメリットとしては、一般的には次の点が挙げられる。
23
 様 々 な雇 用 形 態 (短時 間正規雇用等 )や、能 力・実績に応 じた処遇
制度を設定することで人材の確保や雇用・処遇の改善が可能
 定 員 管理 が 解 消 される ため、医療環 境への柔 軟な対応及び スピード
感を持ちながら、現場に必要な人員を確保することが可能
 職 員 採用 に お い ては、 必要な即戦力 となる人 材を病院が直 接雇用す
ることが可能となり、迅速性の向上を図ることが可能
 職 員 のプ ロ パ ー 化を図 ることで、事務職員の 異動をコントロールし 、
専門的な知識・経験を持つ職員を育成することが可能
 市の関与があるため、「公」としての役割の確保が可能
逆 に 、地 方 独 立行 政 法人化の一般的なデメリットは以下の点が挙げら れ
る。
 法人化するために必要となる追加的コストの発生
( 例 )移 行 支 援 業務費 用、財務会計・人事シ ステム導入、土地建物 測
量・登記・鑑定、名称変更費用等
 人事、労務部門の新規設置に伴う職員の追加補充
 各 種 規程 の 整 備 や給与 支給基準等の 制定等、 病院独自のル ールを制
定することに伴う業務負担の発生
 病院独自で職員を確保することに伴う業務負担の追加的な発生
 職員のプロパー化による人事交流の停滞
24
【図表 3- 1- 3】公 立病院の経営形態の比較
手当措置なし
地方公営企業法
全部適用
地方公営企業法に
定める財務・組
織・職員の身分取
扱のすべてを適用
し、事業管理者に
よる運営を可能と
する制度
地方公務員
原則として同一又
は類似の地方公共
団体の職員等の給
与等を考慮して決
定する
手当措置なし
対象
される
対象
される
対象外
される
総務省繰出基準に
より一般会計から
繰入
可能
総務省繰出基準に
より一般会計から
繰入
可能
病院会計が償還
病院会計が償還
病院財産の移
転
経営基盤
なし
なし
行政組織の補助機
関で経営基盤は強
固である
行政組織の補助機
関で経営基盤は強
固である
特定の経費につい
て、設立団体から
負担金等を繰入
不可能
市が起債して法人
に貸付け
一般会計が借り換
えて償還又は法人
に引き継ぐ
なし
法人に出資
市からの財政支援
の範囲内で独立し
た経営を行う必要
がある
人材確保
市長に任命権があ
り、病院独自の採
用はできない
医療環境の変化へ
の対応等経営の柔
軟性
条例規定等の制約
があり、柔軟な経
営は困難
市長部局等との調
整が必要で職員の
増員、選考、採用
まで時間を要する
他、多様な雇用形
態の導入が困難
で、医師確保につ
いても従来どおり
条例規定等の制約
があり、柔軟な経
営は困難
市としての責任
市の組織の一部と
して直営で運営す
ることで開設者と
して責任を果たす
ことができる
市の組織の一部と
して直営で運営す
ることで開設者と
して責任を果たす
ことができる
項目
制度の概要
職員身分
給与体系
人
地方公営企業法
一部適用
地方公営企業法の
財務規定のみ(経
営の基本原則、特
別会計の設置、経
費分担の原則等)
を適用する制度
地方公務員
一般行政職員と同
じ給与表を適用
事
面 経営形態の変
更に伴う退職
手当の支給
定数管理
交付税基準財
政需要額への
算入
一般会計負担
財
政 企業債の起債
面
企業債の償還
25
地方独立行政法人
指定管理者
地方公共団体が設
立した法人格を有
する組織が公共
サービスを提供す
る制度
公の施設を民間事
業者等が管理する
制度
非公務員
法人の業務実績及
び社会情勢を考慮
して決定される
非公務員
指定管理者の規程
により独自の給与
体系の制定が可能
新法人へ通算
一括支給
退職手当債が認め
られる可能性有
対象外
される
法人が採用時期、
採用方法を独自に
設定でき、短期間
に実施可能である
医師確保について
は従来どおり
条例規定等の制約
が外れ、経営の柔
軟性は向上する
法人の中期目標等
を認可し、運営交
付金を交付するこ
とで市立病院が担
うべき医療の確保
について責任を果
たすことができる
総務省繰出基準に
より一般会計から
繰入
可能
病院会計が償還
なし
指定管理料あるい
は利用料金制の枠
内で市から独立し
た経営を行う必要
がある
指定管理者が独自
に採用時期、方法
を設定でき、多様
な人材確保や雇用
形態の導入が可能
な他、医師確保も
独自ルートによる
確保が可能
条例規定等の制約
はあるが、民間的
手法による柔軟な
経営が可能
指定管理者との協
定に基づき、市立
病院が担うべき医
療の確保について
責任を果たすこと
ができる
こ の よう な 背 景の 下 、地方公営企業法全部適用が西部医療センター及 び
東 部 医療 セ ン ター の 最適な経営形態であるかについて、定期的に検討する
必要があると考えられる。
〔意見〕名古屋市立病院の最適な経営形態の検討について【病院局】
医 療 を取 り 巻 く環 境 は急激に変化しており、病床機能に応じた医療資 源
を常に最適な水準で投入することが求められている。特に、平成26年の第
6次 医 療法 改正で は、病床の機能分化や地域医療連携の推進を更に加速さ
せ る こと が 求 めら れ 、診療報酬制度や社会保障制度に迅速に対応すること
が 求 めら れ る 。そ の ためには、必要な医療従事者の確保に加え、常に高い
医 療 の質 と 安 全性 を 提供できる体制を適時柔軟に構築できる組織づくりが
より重要となってくると考えられる。
ま た 、職 員 の 意識 改 革や専門性の向上の観点から最適な経営形態が何 か
について検討することも有用と考えられる。
今 後 、名 古 屋 市立 病 院が公立病院として期待される役割、あるいは地 域
医 療 構想 か ら 求め ら れる医療の安定的な提供の視点も含め、新改革ガイド
ラ イ ンに も あ るよ う に、経営形態についても更なる見直しの必要性につい
て検討することが望まれる。
ウ
名古屋市立病院改革推進プランの概要
名古屋市 では、 前ガイドラインを受けて、平成21年 3月に「名古屋市立
病院改革 プラン 」を、 平成23年 5月に「新名古屋市立病院改革プラン」を
策 定 した 。 こ れら の プランで名古屋市は、経営の健全化を図るための具体
的 な 施策 を 着 実に 推進し、常に良質な医療を継続的に提供していくことで 、
地 域 住民 が 安 心で 安 全に暮らしていける環境を整備し、これらの取り組み
を 着 実に 実 行 に移 していくための基本的な考え方を明示した。具体的には 、
「患者さんと職員の笑顔がみられる病院」という理念の下、 3つの目標
「 市 民の 皆 さ まに 選ばれる病院」「医療従事者に選ばれる病院」「経営の健
全化」を掲げ計画の達成に取り組んできた。
さ ら に 、 平 成 26 年 3 月 に は 、 平 成 26 年 度 か ら 平 成 28 年 度 ま でを 計 画 期
26
間 と する 「 名古 屋市 立病院改革推進プラン」(以下「推進プラン」という。)
を 策 定して いる 。 この推進プランは、西部医療センター及び東部医療セ ン
タ ー を中心 に、 い わゆる団塊の世代が後期高齢者となり、高齢化のピー ク
と さ れ る 202 5 年 ( 平 成 37 年 ) に 向 け 、 社 会 及 び 医 療 圏 を 取 り 巻 く 環 境 変
化に対応するためのステップとして策定された計画である。
【図表 3- 1- 4】公 立病院改革ガイドラインと名古屋市病院改革プラン
との対比
平成
19年度
平成
20年度
平成
21年度
平成
22年度
平成
23年度
平成
24年度
平成
25年度
総務省
○公立病院改革ガイドライン
(平成19年12月)
平成
26年度
平成
27年度
平成
28年度
平成
30年度
平成
31年度
平成
32年度
○新公立病院改革ガイドライン
(平成27年3月)
改革プラン
名古屋市
名古屋市立
病院改革プラン
(平成20∼22年度)
平成
29年度
新改革プラン
新改革プラン
新名古屋市立
病院改革プラン
(平成23∼25年度)
名古屋市立
病院改革推進プラン
(平成26∼28年度)
名古屋市立
病院改革推進プラン
(平成26∼28年度)
推 進 プラ ン は、 以下 の 3つの目標の実現に向け、各病院が具体的に取 り
組 む 内 容 を 【 図 表 3- 1- 5 】 に あ る 施 策 や 取 り 組 み 項 目 に 沿 っ て 策 定 し
ている。
目標 1
市民の皆さまに選ばれる病院
目標 2
医療従事者に選ばれる病院
目標 3
経営の健全化
27
【図表 3- 1- 5】名 古屋市立病院改革推進プランの体系
目標1 :市民の皆さまに選ばれる病院
施策1 :市民に求められる医療の提供
取組み1
取組み2
取組み3
取組み4
:救急医療
:高度・専門医療
:医療提供体制の充実
:感染症発生時の医療
施策2 :市民が安心して受けられる医療の提供
取組み5 :災害時の医療
取組み6 :医療事故・院内感染の防止
取組み7 :患者の立場に立った医療
施策3 :地域とつながりのある医療の提供
取組み8
取組み9
取組み10
取組み11
:地域医療連携
:市民の健康づくり支援
:市民との協働
:広報の充実
目標2 :医療従事者に選ばれる病院
施策4 :優れた人材が育つ職場づくり
取組み12 :医師・研修医の確保、育成
取組み13 :看護職員の確保、育成
取組み14 :その他の人材の育成
施策5 :専門性を発揮できる職場づくり
取組み15 :各職種の役割分担と連携
取組み16 :他の医療機関との役割分担と連携
施策6 :働きたくなる職場づくり
取組み17 :仕事と生活の調和がとれた職場環境
取組み18 :達成感の得られる職場環境
目標3 :経営の健全化
施策7 :経営管理体制の強化と積極的な収入の確保
取組み19 :経営分析に基づいた戦略的経営
取組み20 :医療機能の充実等による収入の増加
施策8 :効率的・効果的な病院運営
取組み21 :組織運営の効率化
取組み22 :連携による資源の有効活用
取組み23 :効率的な病院運営による支出の削減
施策9 :職員の意識改革
取組み24 :経営意識・目標の共有
取組み25 :自主的・自立的な病院運営
取組み26 :継続的な意識改革
(参考資料:「名古屋市立病院改革 推進プラン」より監査人加工)
28
当 報 告書で は、 こ れらの背景や平成26年度における推進プランの進捗状
況を踏まえ、推進プランについて以下の視点で監査を実施した。
 推 進 プラ ン の 策定 内容 は名古屋市立病院に対 する期待される役割や 計
画 の 位置 づ け から みて 適切な内容となってい るか。また、次期計画 の
策定に向けて深度と範囲の観点から考慮すべき点はないか。
 平成26年度の推進プランの進捗状況に問題はないか。
 推進プランの進捗状況に対する評価方法に問題はないか。
(ア)推進プランにおける指標の設定について
推 進 プラ ン で は、 その 策定期間内に達成させ たい目標に対する施策 か
ら 、 病院 共 通 ある い は病院ごとに具体的な取り組み方針を記載している 。
ま た 、そ の 進 捗管 理 や評価に利用するため、成果指標に落とし込める取
り組み方針については、年度別の成果指標を設定している。
設 定 され た 成 果指 標は その後の進捗評価に使 用され、病院内部での 評
価 に 加え 、 名 古屋 市 立病院運営有識者懇談会による外部意見の聴取を行
い、その達成状況をモニタリングしている。
こ れ ら推 進 プ ラン の取 り組みに対する成果指 標の設定や評価方法に つ
いて確認したところ、以下の問題点が確認された。
〔発見事項①〕
最近では、医療の質や安全性をコントロールする観点からクリニカ
ル ・ イン ディ ケー タを成果指標の 1つとして管理している病院が増え て
いる。
ク リ ニカ ル ・ イン ディ ケータとは、病院の様 々な機能や診療行為に 関
す る 情報 に つ いて 、 適切な指標を用いて数値で表したものである。クリ
ニ カ ル・ イ ン ディ ケ ータの数値を継続的に把握して改善を図り、更なる
医療の質と安全性の向上を目指すことが重要とされている。
ク リ ニカ ル ・ イン ディ ケータは、一般的には 医療の質と安全性の向 上
と い う 観 点 か ら 以 下 の 【 図 表 3- 1- 6 】 の よ う な 3 つ の 側 面 を 評 価 す
29
ることとされている。
【図表 3- 1- 6】ク リニカル・インディケータの種類
ストラクチャー:施設・設備・医療機器・医療スタッフの種類や数に関す
るデータ
プ ロ セ ス:実施した診療や看護の内容に関するデータ
ア ウ ト カ ム: 診療 や看護を提供した結果に関するデータ(例:合併症 、
医療費、身体徴候や検査所見の異常)
す な わち 、 ス トラ クチ ャーは施設・医療機器 ・職種別職員数を指す 。
プ ロ セス は 実 際に 行 われている診療や内容の評価であり、アウトカム は
実際に行われた診療や看護の結果を指している。
ク リ ニカ ル ・ イン ディ ケータでは、成果指標 として特にプロセスを 重
視 し てい る 。 スト ラ クチャーやアウトカムは当然に重要な指標である が 、
昨 今 では 医 療 の質 を 管理するためには、その「プロセス」を評価する こ
と が 最も 望 ま しい と 考えられている。この医療の質を評価する方法と し
て 、 あ ら か じ め 決 め ら れ た 指 標 ( Indicator ) を 自 ら の 病 院 で 算 出 し
て そ れを 自 ら の努 力 で向上させることにより医療の質を高めようとい う
病院が増えているところである。
現 在 の推 進 プ ラン では 、設定した成果指標に 、前記のストラクチャ ー
や ア ウト カ ム を中 心 とした指標の設定が多く、プロセスを管理する指 標
の設定が不足している。
30
〔意見〕医療の質に着目した成果指標の設定について【共通】
策 定 され た 推 進プ ラン において設定された成 果指標は、両病院共通 の
指 標 とし て は 、病 床 利用率や平均在院日数等から、一般的な医療機関 に
お け る管 理 指 標や 経 常収支比率、職員給与費比率等財務的な指標まで 網
羅 的 に設 定 さ れて い る。また、病院ごとの成果指標として、西部医療 セ
ン タ ーで は 分 娩件 数 や放射線治療件数等の指標を、東部医療センター で
は 心 臓カ テ ー テル 検 査件数や内視鏡下手術件数を成果指標として設定 し
て お り、 両 病 院共 通 で管理すべき指標と病院の特長を踏まえた指標に 区
分している点は評価される。
これらの管理指標に加え、新改革プランでは、それぞれの病院の特長
を分析し、厚生労働省の「医療の質の評価・公表等推進事業」への参加
団体が用いているプロセスに関する指標などを参考に、より多くのプロ
セスを意識した指標を設定若しくは公表することが望まれる。
な お 、 総 務 省 に よ る新 改 革 ガ イ ド ラ イ ン に お い て も、「 当 該 公 立 病 院
が 、 その 果 た すべ き 役割に沿った医療機能を十分に発揮しているかを 検
証 す る観 点 か ら、 適 切な医療機能等指標について、数値目標を設定す る 」
と 記 載さ れ て いる 。 このように、新改革プランでは医療機能・医療品 質
に か かる 指 標 の設 定 を求めていることからも、医療の質を指標で管理 す
ることの重要性は着実に高まっている。
〔発見事項②〕
推 進 プラ ン におけ る医療の質の向上のための取り組みの 1つとして、
ク リ ニカ ル ・イン デ ィケータを平成26年度に検討のうえ、策定・公表す
る こ とと し て いた 。 しかし、クリニカル・インディケータの策定は、 各
病 院 の経 営 戦 略室 を 中心として進められているが、監査時点において は 、
検 討 段階 と し て未 公 表であり、推進プランからは遅延している状況が 見
受けられた。
検 討 段階 の 指 標に つい ては、西部医療センタ ー及び東部医療センタ ー
の 共 通の 指 標と個 別 病院の特性に合わせた個別指標としており、平成27
年 度 中に 平 成 26年 度 の単年度分の実績数値と算出方法について公表する
31
予 定 であ る 。 また 、 求められている役割に応じて指標の更なる検討を 考
えている。
西部医 療セ ンタ ーでは、今後、平成27年度から 3年程度の推移を示す
予 定 とし て お り、 現 在のところ他病院との比較は予定していなかった 。
ま た 、ク リ ニ カル ・ インディケータの策定は、公表することが目的と な
っ て おり 、 指 標管 理 の体制は未整備である。加えて、公表する指標に つ
いての説明及びその値が示す解釈については明記する予定はない。
〔意見〕クリニカル・インディケータの策定・公表について【共通】
推 進 プラ ン に 従い 、早 期のクリニカル・イン ディケータの策定・公 表
が 望 まれ る 。 また 、 公表する際には、一般市民にもわかりやすいよう に
指 標 の説 明 や 値が 示 す解釈等の説明書きを追記する等、工夫すること も
必要である。
ま た 、医 療 の 質の 向上 のためには、集計した クリニカル・インディ ケ
ー タ を時 系 列 で分 析 する以外にも、他施設との比較やその数値の改善 の
た め のチ ー ム を組 織 するなど、改善を図る体制の整備も実施すべきで あ
る。
〔発見事項③〕
前 ガ イド ラ インに おける検討すべき内容の 1つである経営の効率化に
関 連 する 指 標 とし て 、推進プランでは成果指標としては職員給与費比 率 、
経 常 収支 比 率 のほ か 、材料費比率の改善に向け材料費対医業収益比率 や
後発医薬品採用比率等を設定し、進捗評価を進めているところである。
こ の 設定 さ れ た指 標の 中で、経費に関する管 理指標が欠けている。 イ
ン フ ラコ ス ト を無 視 できない医療機関において、経費の管理は重要で あ
り 、 特に 委 託 費や 水 道光熱費の管理、消耗物品費についてはどの病院 に
おいても改善に向けて着手すべき課題が多くあると思われる。
な お 、 新 改 革 ガ イ ド ラ イ ン で は 、「 経 常 収 支 比 率 」 と 「 医 業 収支 比 率 」
の 2つ は 必ず設 定 するとされているが、推進プランでは医業収支比率 は
設定されていない。
32
〔意見〕経営の効率化に関連した指標の設定について【共通】
経 営 の効 率 化 とい う視 点から、経費領域にお いて管理すべき指標が な
い か 検討 す る こと が 重要であると考えられる。例えば、経費に関する 指
標 と して 経 費 比率 や 委託費比率を管理指標として設定する方法もある 。
委 託 費に お い ては そ の費目ごとに発生額を把握し、モニタリングする こ
とも有 用な 管理 方法 の 1つである。平成26年度ベースで西部医療センタ
ー 及 び東 部 医療セ ン ターの委託費合計額は22億円を超えているため、委
託 費 をは じ め とす る 経費に管理指標を設定し、コントロールすること も
重要である。
〔発見事項④〕
地 域 医療 支 援 病院 とは 、医療施設機能の体系 化の一環として、患者 に
身 近 な地 域 で 医療 が 提供されることが望ましいという観点から、紹介 患
者 に 対す る 医 療提 供 、医療機器等の共同利用の実施等を通じて、第一 線
の 地 域医 療 を 担う か かりつけ医、かかりつけ歯科医等を支援する能力 を
備 え 、地 域 医 療の 確 保を図る病院としてふさわしい構造設備等を有す る
ものについて、都道府県知事より個別に承認された病院を指す。
期待される役割としては、主に以下の 4つである。
 紹 介 患者 に 対 す る医療 の提供(かか りつけ医 等への患者の 逆紹介も
含む)
 医療機器の共同利用の実施
 救急医療の提供
 地域の医療従事者に対する研修の実施
平成27年 4月 1日時点において、西部医療センター、東部医療センタ
ー 共 に地 域 医 療支 援 病院として承認を受けており、これらの役割を十分
に果たすことが市民や地域の医療機関から期待されている。
こ れ ら の 期 待 さ れ る役 割 と 成 果 指 標 を 比 較 す る と 、「 医 療 機 器 の 共 同
利 用 の実 施 」 と「 地 域の医療従事者に対する研修の実施」に関する成果
指標が欠けている。
33
〔意見〕地域医療支援病院の要件に着目した成果指標の設定について
【共通】
「 医 療機 器 の 共同 利用 の実施」と「地域の医 療従事者に対する研修 の
実 施 」と い う 役割 は 、地域の医療機関との連携をより促進する意味で 、
ま た 、地 域 全 体の 医 療提供能力の底上げを担う意味でも重要な項目で あ
る。
推 進 プ ラ ン で は 、 病 院 職 員 に 対 す る 継 続的 な 意 識 改 革 の 1 つ と し て
計 画 的な 研 修 の実 施 を目標としているが、地域医療支援病院として求 め
ら れ る役 割 と して 地 域の医療従事者にもその教育の機会を提供すると い
う 観 点を 踏 ま えた 指 標の設定を新改革プランで加えていくことが望ま れ
る 。 また 、 医 療機 器 の共同利用の実施を促進させる取り組み方針の策 定
も望まれる。
(イ)アクションプランの策定について
事 業 計画 を 策 定す る場 合には、確認された課 題に対し、改善施策を 講
じ て いく た め 、改 善 に向けてどのように職員が取り組んでいくかを整 理
し た アク シ ョ ンプ ラ ンを作成する方法が一般的である。アクションプ ラ
ン に は 、 様 々 な 取 り 組 み に つ い て 、 5W1H 「 い つ ( When )、 ど こ で
( Where )、 誰 が ( Who )、 何 を ( What )、 な ぜ ( Why )、 ど の よ う に
( How )」 を 明 示 し 、 実 行 管理 に も プ ラ ン を 活用 す る こ と で 、 事業 計 画
の実効性を高めることができる効果がある。
全 国 的に 見 て 、改 革プ ラン策定時において、 課題に対する改善施策 の
実 行 にス ム ー ズに 着 手できなかった病院があり、その原因を整理した と
ころ、主な理由として以下の 3つが挙げられた。
 改 善 施策 は あ っ ても病 院全体で取り 組みに着 手するための ステッ プ
(アクションプラン)が明確になっていなかった。
 取 り 組み が部 門や担当者任せになり、PDCAサイクル(計画(Plan )
→ 実 行( Do )→ 評価( Check)→改善( Action))で管理する仕 組
みを病院内で設けていなかった。
34
 ア ク ショ ン プ ラ ンの数 が多すぎ、病 院の課題 の重要性に関 係なく取
り 組 みに 着 手 し ようと したために取 り組み内 容が浅くなっ てしまっ
た。
〔発見事項〕
推 進 プラ ン で は様 々な 施策及び施策に対する 取り組みが網羅的に記 載
さ れ てい る 。 一方 、 その取り組み一つひとつに対してのアクションプ ラ
ン が 策定 さ れ てい な い。そのため、推進プランでは計画期間中に様々 な
取 り 組 み が 行 わ れ る と さ れ て い る が 、 誰が ( ど の 部 門 が )、 ど の よ う に 、
いつまでに取り組みを開始するのかが明確となっていない。
〔意見〕アクションプランの策定について【共通】
推 進 プラ ン に おい て、 例えば、職員の意識改 革とされる施策に対し 、
経 営 意識 ・ 目 標の 共 有を果たすために「全ての職員が市立病院全体の 経
営 状 況を 認 識 する と ともに、経営に対する危機意識を持ち、明確にし た
目標を共有する」という取り組みを予定している。
こ の 取り 組 み を実 行し ていくために、以下の ようなアクションプラ ン
を作成する必要がある。
アクションプラン例
 開示すべき経営状況の範囲を明確にする
 どのような方法(会議体)で全ての職員に開示するかを定める
 職員に開示する頻度(四半期・半期等)を定める
 この取り組みの実施主体を明確にする
 いつから取り組みをスタートするかを明確にする
推 進 プラ ン に 記載 され た取り組みをいち早く 実効性あるものにして い
く た めに 、 適 切な 範 囲と内容を考慮したアクションプランを策定するこ
とが望まれる。
35
(ウ)平成26年度の推 進プランの進捗状況について
推進プランに おける平成26年度の進捗状況については、平成27年 9月
に 名 古屋 市 立 病院 運 営有識者懇談会が開催され、外部意見が取りまとめ
られたところである。
推 進 プラ ン の 進捗 状況 については、推進プラ ンに掲げた成果指標及 び
各年度の目標数値に対する達成度を、以下の基準で評価している。
【 図表 3- 1- 7】目標数値に対する達成度を考慮した評価基準
【評価基準】
◎
○
△
×
目標の120%以上を達成し、特にめざましい成果があった
目標を概ね達成した(80%以上)又は
達成はできなかったが、合理的な理由がある
目標の50%以上∼80%未満
目標の50%未満
( 出 典 : 名 古 屋 市 立 病 院 改 革 推 進 プ ラ ン の 平 成 26 年 度 の 進 捗 状 況 に つ いて)
な お 、数 値 目 標を 持た ない取り組み内容につ いては総括的評価とし て
記載されている。
36
【図表 3- 1- 8】西 部医療センターの成果指標の実績
目標1 市民の皆さまに選ばれる病院
25年度
実績
救急搬送件数
2,040件
取組み1
救急搬送後入院率
42.7%
分娩件数
1,411件
母体搬送件数
94件
新生児搬送件数
118件
がん手術件数
434件
胃がん
64件
大腸がん
138件
肺がん
74件
乳がん
102件
取組み2
肝臓がん
11件
食道がん
18件
化学療法件数(外来)
2,658件
放射線治療新規患者数
438人
放射線治療件数※
9,375件
IMRT件数※
3,249件
がん登録件数
1,112件
陽子線治療患者数
286人
手術件数
3,931件
取組み3 内視鏡検査件数
5,614件
がん相談件数
183件
取組み6 医療安全セミナー参加人数
585人
入院患者満足度
取組み7
外来患者満足度
紹介率
56.5%
取組み8 逆紹介率
72.9%
退院調整及び一般相談患者数
2,562人
取組み9 市民健康講座参加者数
731人
※放射線治療件数・IMRT件数の計画値は、当初計画値より変更
目標2 医療従事者に選ばれる病院
初期臨床研修医人数
取組み12 後期臨床研修医人数(シニアレジデント人数)
医学生病院見学人数
認定看護師数
取組み13
離職率(病院局計)
目標3 経営の健全化
職員給与費比率
経常収支比率
入院患者数(1日平均)
入院診療単価
取組み19 新規入院患者数
外来患者数(1日平均)
外来診療単価
外来診療単価(陽子線除く)
患者未収金
許可病床利用率
取組み21
平均在院日数
材料費対医業収益比率
取組み23
後発医薬品採用比率(購入額)
計画
3,000件
40.0%
1,300件
120件
175件
480件
100件
175件
60件
90件
18件
18件
2,500件
355人
9,000件
3,000件
780件
400人
4,500件
5,700件
200件
400人
40.0%
60.0%
53.0%
70%
2,300人
840人
26年度
実績
達成率
1,959件
65.3%
43.5%
108.8%
1,375件
105.8%
109件
90.8%
117件
66.9%
475件
99.0%
69件
69.0%
149件
85.1%
94件
156.7%
103件
114.4%
14件
77.8%
14件
77.8%
3,209件
128.4%
459人
129.3%
10,017件
111.3%
3,205件
106.8%
1,096件
140.5%
483人
120.8%
4,119件
91.5%
5,713件
100.2%
195件
97.5%
691人
172.8%
60.2%
113.6%
78.6%
112.3%
3,413人
148.4%
636人
75.7%
計画
実績
評価
△
○
○
○
△
○
△
○
◎
〇
△
△
◎
◎
〇
〇
◎
◎
○
○
○
◎
○
○
◎
△
26年度
25年度
実績
5人
18人
38人
2人
7.7%
25年度
実績
48.2%
92.3%
432人
48,224円
11,915人
1,015人
16,309円
12,982円
6,890万円
86.4%
11.4日
21.9%
3.5%
6人
23人
50人
1人
10.5%
計画
55.4%
96.1%
450人
52,539円
11,200人
1,005人
17,801円
13,072円
8,962万円
90.0%
12.1日
22.9%
4.0%
達成率
100.0%
87.0%
106.0%
100.0%
164.1%
評価
○
○
○
○
◎
26年度
実績
達成率
47.4%
116.9%
102.6%
106.8%
419.8人
93.3%
52,734円
100.4%
12,419人
110.9%
1,074人
106.9%
18,949円
106.4%
13,478円
103.1%
6,160万円
145.5%
84.0%
93.3%
11.9日
101.7%
20.5%
111.7%
6.1%
152.5%
評価
○
○
○
○
○
○
○
○
◎
○
○
○
◎
6人
20人
53人
1人
6.4%
(参考資料: 名古屋市立病院改革推進プランの平成2 6年度の進捗状況についてよ り
監査人加工)
37
〔発見事項①〕
西 部 医療 セ ン ター につ いて、がん医療におい ては、陽子線治療セン タ
ー に おけ る す い臓 が んの抗がん剤併用治療等の治療領域の拡大、外来 化
学 療 法、 放 射 線治 療 を組み合わせた治療の提供実績が確実に伸びたた め 、
愛知県がん診療拠点病院にふさわしい達成状況となっている。
そ の 他、 紹 介 率・ 逆紹 介率共に計画値を上回 る結果となり、地域の 拠
点 と なる 地 域 医療 支 援病院として果たすべき医療連携の促進という役 割
を十分に果たしている結果となっている。
財 務 数値 に お いて は、職員給与費比率が50%を下回る結果となったこ
と に 加え 、 経 常収 支 比率が開院以来初めてとなる黒字を達成している 。
機 能 分化 と 強 化、 そ して連携の促進という診療報酬制度が求める医療 の
方 向 性に 十 分 に対 応 した結果が診療単価の上昇に反映し、結果として 収
支改善につながったと思われる。
一方で、救急搬送件数は平成26年度の計画件数 3,000件を下回る
1,959 件とな った ほか、母体搬送件数や新生児搬送件数においても計画
値に対し、わずかではあるが未達成となった。
〔意見〕成果指標の達成状況について【西部】
救急搬送件数が伸びなかった点については、救急医療において、内
科 ・ 小児 科 の 二次 救 急受け入れ体制が十分に整わなかったことも影響 し
ていると考えられるため、対応を検討されたい。
財 務 数値 に お いて は、 経常収支が黒字となり 、経営の健全化が図ら れ
ている。今後も引き続き健全化に向けた取り組みが期待される。
38
【図表 3- 1- 9】東 部医療センターの成果指標の実績
目標1 市民の皆さまに選ばれる病院
救急搬送件数
取組み1 救急搬送後入院率
CPA患者受入件数
心臓血管外科手術件数
心臓カテーテル検査件数
心臓カテーテル治療(PCI)件数
アブレーション件数
脳卒中入院患者数
SCU稼働率
脳血管内治療件数
取組み2
内視鏡下手術件数
外科
泌尿器科
婦人科
内視鏡検査件数
化学療法件数(外来)
がん登録件数
取組み3 手術件数
取組み6 医療安全院内セミナー参加人数
入院患者満足度
取組み7
外来患者満足度
紹介率
取組み8 逆紹介率
退院調整及び一般相談患者数
取組み9 市民健康講座参加者数
取組み11 市民フォーラム参加人数
目標2 医療従事者に選ばれる病院
初期臨床研修医人数
取組み12 後期臨床研修医人数(シニアレジデント人数)
医学生病院見学人数
認定看護師数
取組み13
離職率(病院局計)
目標3 経営の健全化
職員給与費比率
経常収支比率
入院患者数(1日平均)
入院診療単価
取組み19
新規入院患者数
外来患者数(1日平均)
外来診療単価
患者未収金
許可病床利用率
取組み21
平均在院日数
材料費対医業収益比率
取組み23
後発医薬品採用比率(購入額)
平成25年度
実績
6,361件
39.2%
25件
233件
866件
228件
271件
479人
93.9%
74件
941件
415件
70件
456件
3,934件
1,356件
500件
3,975件
831人
48.5%
71.9%
2,182人
770人
412人
平成25年度
実績
14人
14人
63人
3人
7.7%
平成25年度
実績
56.3%
98.5%
418人
59,007円
10,349人
877人
9,936円
10,527万円
85.6%
13.1日
32.2%
9.4%
計画
6,000件
40.0%
90件
240件
1,000件
250件
320件
450人
95%
55件
1,220件
550件
100件
570件
4,600件
1,400件
470件
4,000件
500人
40.0%
60.0%
50.0%
70.0%
2,800人
800人
400人
平成26年度
実績
達成率
6,723件
112.1%
38.7%
96.8%
40件
44.4%
183件
76.3%
848件
84.8%
238件
95.2%
239件
74.7%
503人
111.8%
94.3%
99.3%
66件
120.0%
905件
74.2%
420件
76.4%
76件
76.0%
409件
71.8%
4,460件
97.0%
1,198件
85.6%
461件
98.1%
4,000件
100.0%
818人
163.6%
46.8%
93.6%
84.9%
121.3%
3,524人
125.9%
945人
118.1%
0人
0.0%
評価
○
○
×
△
○
○
△
○
○
◎
△
△
△
△
○
○
○
○
◎
○
◎
◎
○
×
計画
14人
16人
50人
2人
10.5%
平成26年度
実績
達成率
12人
85.7%
16人
100.0%
58人
116.0%
3人
150.0%
6.4%
164.1%
評価
○
○
○
◎
◎
計画
60.9%
97.1%
431人
62,307円
11,263人
871人
10,135円
7,776万円
86.5%
12.3日
30.3%
9.0%
平成26年度
実績
達成率
60.3%
101.0%
96.7%
99.6%
402.8人
93.5%
60,599円
97.3%
10,467人
92.9%
861.7人
98.9%
10,113円
99.8%
9,345万円
83.2%
80.9%
93.5%
13.9日
88.5%
29.9%
101.3%
9.7%
107.8%
評価
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
(参考資料: 名古屋市立病院改革推進プランの平成2 6年度の進捗状況についてよ り
監査人加工)
39
〔発見事項②〕
東 部 医療 セ ン ター につ いて、期待される救急 医療・心臓血管領域・ 脳
血 管 領域 の 医 療に お いては、心臓血管外科手術件数においては前年実 績
や 計 画値 を 下 回る 結 果となっているが、その他においては高い成果を 示
し て いる 。 特 に救 急 搬送受け入れ件数は大きく伸びており、名古屋市 内
に お ける 救 急 医療 の 担い手として大きな貢献を果たしていることが数 値
からも読み取れる。
地 域 連携 という観 点からは、逆紹介率が84.9%と非常に高くなってい
る 。 一方 、 高い逆 紹 介率に対し、紹介率が50%を下回っている。また、
財務数値にお いては、材料費対医業収益比率が29.9%とほぼ30%に近い
高 い 水準 であるこ とに加え、職員給与費比率が60.3%と高い比率となっ
ている。
〔意見〕成果指標の達成状況について【東部】
前 記 のと お り 、財 務数 値においては、材料費 対医業収益比率、職員 給
与費比率が高い水準にある。
平 成 26 年 度 の 経 常 損 益 は 約 4 億 4,375 万 円 の 赤 字 と な っ て お り 、 こ
れ以上の赤字幅の拡大は防がなければならない。
地 域 に求 め ら れる 必要な医療を十分に提供していることは評価される 。
し か し、 経 営 の健 全 化にかかる取り組みについては評価結果では一様 に
「○
目 標 を おお む ね達成した」とされている。計画との対比におい て
は評価結果のとおりであるが、現状の経営状況を考慮すれば、例えば
60% を 超 え る職員 給 与費比率等、より健全化を進めるべき項目について
は 「 ○」 と 評 価す る のみで問題ないか検討することが望まれる。設定 し
た 目 標水 準 自 体が 長 期的な視点より適切であるか、目標を見直す必要 は
な い かと い う よう な 踏み込んだ評価があっても良いのではないかと考 え
られる。
紹 介 率向 上 に 向け ての 取り組みに関しては、 基本的な施策である地 域
連 携 パス の 活 用や 症 例検討会等の開催により、地域の開業医との連携 を
強 化 する 等 の 取り 組 みも必要であるが、紹介患者以外の外来患者が多 い
40
た め に紹 介 率 が上 が らない可能性もある。病院の機能分化の促進とし て
外来診療のあり方を考える視点についても検討することが望まれる。
〔発見事項③〕
成果指標を設定していない取り組みについては、評価結果において
「 全 体を 通 し ての 分 析・評価」欄にて総合的な意見としてまとめられ て
いる。
例 え ば、 災 害 時の 医療 に対する取り組みや人 材育成のための学会・ 研
修 参 加支 援 、 チー ム 医療の推進等成果指標のない取り組みについては 平
成 26 年 度 の 各取り 組 みに対する進捗状況について個別・具体的に確認さ
れていない。
〔意見〕成果指標が設定されていない取り組みについて【共通】
推 進 プラ ン で 設定 した 取り組みのうち特に成 果指標のない取り組み に
つ い ては 、 取 り組 み の達成年度を明確にし、その進捗も含めて評価を 受
ける方法を採用すべきではなかったかと考えられる。
数値での目標設定になじまない取り組みであっても、期限を明確に
す る こと 等 に より そ の進捗について外部委員の評価が容易となり、改 善
へのプロセスにつながることが期待される。
〔意見〕後発医薬品採用比率について【共通】
両病院の成果指標にある後発医薬品採用比率(購入額)について、その
達成状況は高く評価されている。後発医薬品採用比率について、厚生労働
省では 既に 平成 30年 3月末までに数量シェアベースで60%を目標とする
「後発医薬品のさらなる使用促進のためのロードマップ」を策定し取り組
みが進 めら れて いる 。さらに、平成27年 6月の閣議決定では平成29年央
に70% 以上と するとともに、平成30年度から平成32年度末までの間のな
るべく早い時期に80%以上とする、新たな数量シェア目標が定められてい
る。今後の評価方針としては計画に対する実績のみならず、このような政
府の方針に対する達成状況を考慮した指標の見直しや評価が望まれる。
41
エ
地域医療構想
愛 知 県に お い て地 域 医 療構想の策定に着手 し ているところであり 、 平成
27 年 7 月 開 催 の愛知 県医療審議会医療体制部会において、二次保健医療圏
別の患者動向や必要病床数の計算結果が公表された。
【図表 3- 1-10】愛 知県全体における機能別必要病床数推計
千床
70.0
60.0
59.2
50.0
12.8
40.0
5.2
30.0
57.8
56.2
59.2
10.8
19.5
24.5
20.0
20.6
10.0
0.0
13.8
2013年の既存病床
高度急性期
急性期
6.9
2014年の病床報告
回復期
2025年の必要病床
慢性期
既存病床
(出典:平成 26年病床機能報告結果(愛 知県ホ ームページ)、 社会保障制度改革
推進本部 医 療・介護情報の活用による改革の推進に 関する専門調査会第 1
次報告)
愛 知 県全体 と して は 、【図表 3- 1-10】のとおり2025年(平成37年) に
向 け 、高 度 急 性期 病 床、急性期病床においては病床過剰、一方で回復期病
床 に つ い て は 約 1 万 4,000 床 が 不 足 と い う 結 果 で あ り 、 今 後 回 復 期 病 床
の需要に対応するための病床機能の調整が求められることになる。
同 じ く、 名 古 屋市 立 病院が属する名古屋医療圏の将来の必要病床数に つ
い て は 【 図 表 3- 1-11 】 の と お り 、 愛知 県 全 体 の 傾 向 と 同 じ く 、 2025 年
に向け、約 5,50 0床の回復期病床の確保が大きな課題となってくることが
想定される。
42
【図表 3- 1-11】名 古屋医療圏における機能別必要病床数推計
千床
25.0
20.0
15.0
10.0
20.6
21.2
3.6
3.2
22.5
3.6
1.7
7.2
7.7
7.9
8.3
2.9
2.9
2025年の必要病床
2040年の必要病床
8.7
5.0
6.6
0.0
2014年の病床機能
高度急性期
急性期
回復期
慢性期
(参考資料: 平成26年病床機能報告結果 、愛知 県医療審議会医療体制部会
資料(平成2 7年 7月27日)より監査 人加工)
な お 、名 古 屋 市立 病 院の各病院別の病床機能届出状況は次のとおりで あ
る(【図表 3- 1-12】)。
43
【図表 3- 1-12】市 立病院の病床機能届出状況(単位:床)
西部医療
東部医療
センター
センター
施設名称
緑市民病院
全体
500
488
205
高度急性期
400
298
0
平成26年 7月 1日時点 急性期
100
190
205
回復期
0
0
0
慢性期
0
0
0
全体
500
488
300
高度急性期
400
298
0
急性期
100
190
300
回復期
0
0
0
慢性期
0
0
0
全体
0
0
95
高度急性期
0
0
0
急性期
0
0
95
回復期
0
0
0
慢性期
0
0
0
6年が経過し た日
差引
(出典:愛知 県医療審議会医療体制部会(平成27年 7月27日))
〔発見事項〕
将 来 の名 古 屋 医療 圏 の病床機能別需要を考慮した場合、どの病院が回復
期 病 床を 整 備 する こ とでこの課題に対応するかという点が重要となってく
る と 思 わ れ る 。【 図 表 3- 1-13】 にあ るよ う に、名 古屋 市民は 医療 ニーズ
が 発 生し た 場 合、 全 ての病床区分で名古屋医療圏の医療機関で入院してい
る 割 合が 高 い こと が 確認できる。これは、大学病院や救命救急センター等
の 医 療機 関 、 医療 従 事者等医療資源に恵まれ、名古屋市民が安心して市内
で 医 療 を 受 け る こ と が で き る 環 境 にあ る こ と を 示 し て い る 。 し か し 、【図
表 3- 1- 14 】 の と お り 、 他 圏 域 や 県 外 か ら 流 入 患 者 が 多 い こ と が 特 徴 的
44
な 名 古屋 医 療 圏で 今 後、回復期患者の名古屋医療圏への流入数が増加する
可 能 性が 高 い 中、 将 来的には回復期需要を有する名古屋市民の病床を確保
す る こと が 困 難に な ってくると予想される。この課題に対し、名古屋市立
病 院 が市 民 の 医療 ニ ーズにどのようにこたえていくのかという点について
は検討すべき重要な課題である。
〔 意 見〕 名 古 屋医 療 圏で想定される将来の回復期病床の不足について【共
通】
名 古 屋市 の 病 院事 業 として、名古屋市立病院の安定した医療の提供が 最
優 先 事項 と 考 えら れ るが、名古屋市民にとっての医療を確保するという点
に お いて 、 回 復期 医 療への病床の確保は、将来の名古屋医療圏全体に及ぶ
重要な課題である。
こ の 課題 に 対 し、 名 古屋市立病院として高度急性期及び急性期医療に 加
え 、 回復 期 医 療も 担 っていく必要があるのか検討していかなければならな
い。
新 改 革プ ラ ン 策定 時 においては、地域医療構想を踏まえた役割の明確 化
を 記 載す る こ とと さ れている。新改革プラン作成にあたっては、各病院が
果 た すべ き 役 割を 明 確にするとともに、名古屋市民が求める回復期病床に
つ い て、 名 古 屋市 立 病院がどのように役割を果たしていくのか、愛知県や
他の医療機関と協力しながら検討を進めて頂きたい。
45
【図表 3- 1-13】名 古屋市民の入院した医療圏
人/日
5,000
4,500
4,325
4,240
4,000
その他
3,500
知多半島
3,000
2,742
2,500
海部
尾張中部
2,000
1,500
尾張北部
3,819
3,735
1,507
尾張東部
2,191
1,000
名古屋
1,321
500
0
高度急性期
急性期
回復期
慢性期
(参考資料: 愛知県医療審議会医療体制部会資料(平 成27年 7月27日)より 監
査人加工)
【図表 3- 1-14】名 古屋医療圏における流入流出患者数
高度急性期
1,200
人 /日
急性期
回復期
慢性期
1,113
1,011
1,000
800
600
506
504
506
流入 流出
流入 流出
416
400
200
551
186
0
流入 流出
尾張東部
尾張北部
尾張中部
海部
知多半島
流入 流出
その他
(参考資料: 愛知県医療審議会医療体制部会(平成2 7年 7月27日)より監査 人
加工)
46
(2)総括的分析について
ア
財政状態及び経営成績の推移
西 部 医療 セ ン ター 、 東部医療センター、緑市民病院の財政状態及び経営
成 績 の推 移 は以 下の とおりである。なお、平成26年度より地方公営企業会
計 の 基準 と な る地 方 公営企業法施行令、地方公営企業法施行規則並びにそ
の 関 係 法 令 が 改 正 ( 以 下 「 地 方 公 営企 業 会 計 基 準 の 見 直 し 」 と い う 。)さ
れ 、 これ に 伴 い、 貸 借対照表の負債の部、資本の部の金額が大きく増減し
て い る。 ま た 特別 損 失に、地方公営企業会計基準の見直しに伴う、過年度
退職給付引当金繰入額が多く計上されている。
具体的には、以下の 4点について決算書に大きな変動が生じている。
① 借 入資 本 金 を資 本 区分から負債区分に計上することになったことによ
り、固定負債及び流動負債が増加する一方で資本金が減少している。
② 退 職給 付 引 当金 不 足分、賞与引当金を新たに計上することにより、固
定負債及び流動負債が増加している。
③引当金の計上不足分であった部分を特別損失に計上している。
④ リ ース 会 計 導入 に 伴い、固定資産区分にリース資産を計上、固定負債
区分及び流動負債区分にリース債務の計上をしている。
このため 、平成25年度以前と平成26年度の財務諸表は大幅に変化してい
る。
47
西部医療センター
貸借対照表
固定資産
有形固定資産
うち、土地
うち、建物
投資
流動資産
うち、現金 預金
うち、未収 金
資産合計
固定負債
うち、企業 債
うち、他会 計借入金
うち、退職 給付引当金
流動負債
うち、企業 債
うち、未払 金
繰延収益
負債合計
資本金
剰余金
資本剰余金
欠損金
資本合計
負債・資本合 計
(単位:千円)
平成 24年度
41,082,311
41,082,311
5,967,602
23,743,879
4,586,690
2,501,218
2,038,559
45,669,001
12,243,051
1,443,000
124,1 07
1,760,487
1,760,487
14,003,538
32,319,232
△ 653,770
2,194,624
△ 2,848,394
31,665,462
45,669,001
平 成25年度
39,262 ,906
39,258 ,201
5,938, 809
21,723 ,719
4,705
5,136, 033
2,841, 814
2,234, 729
44,398 ,940
12,578 ,807
1,331, 000
124,1 07
1,629, 430
1,629, 430
14,208 ,238
30,936 ,052
△ 745, 350
3,037, 921
△ 3,78 3,272
30,190 ,701
44,398 ,940
平成 26年度
36,896 ,968
36,884 ,906
5,722, 122
20,741 ,792
12,061
7,482, 417
5,059, 469
2,414, 718
44,379 ,386
32,341 ,329
18,641 ,260
1,331, 000
2,886, 926
5,092, 582
2,059, 155
1,986, 763
556,26 8
37,990 ,180
8,773, 857
△ 2,38 4,652
1,407, 260
△ 3,79 1,912
6,389, 205
44,379 ,386
(単位:千円)
損益計算書
医業収益
うち、入院 収益
うち、外来 収益
医業費用
うち、給与 費
うち、材料 費
医業利益(△ は損失)
医業外収益
医業外費用
経常利益(△ は損失)
特別利益
特別損失
当年度純利益
(△は純損失 )
平成24 年度
10,266,471
6,936,272
2,662,388
13,461,128
5,987,164
2,445,282
△3,194,657
2,408,732
697,892
△1,483,817
256,105
11,767
平成2 5年度
12,412 ,728
7,600, 169
4,040, 014
15,746 ,888
6,084, 278
2,716, 778
△3,334 ,160
2,848, 105
784,77 8
△1,270 ,833
341,18 4
5,228
平成 26年度
13,819 ,376
8,079, 676
4,964, 982
15,062 ,963
6,649, 023
2,833, 865
△1,243 ,586
2,568, 666
912,82 4
412,25 5
1,048, 131
2,985, 886
△1,239 ,479
△934,8 77
△1,525 ,499
(出典:名古 屋市病院事業決算書)
48
(増減理由)
・地方 公 営 企 業会 計 基準 の見直しにより借入資本金は資本の部から負 債
の 部 へ計 上 さ れる こととなった。平成26年度における自己資本比率は
14.4%で あり、平 成25年度における借入資本金を除いた自己資本比率
は18.8% である。 平成26年度の自己資本比率の減少は、資本制度の見
直 し にあ た り 減資 した ことによる自己資本減 少、及び退職給付引当 金
計上に伴う負債の増加によるものである。
・平成 26 年 度は 、 入院患者数は前年及び計画を下回る結果となったが、
紹 介 患者 数の増加 や DPC導入による入院診療単価の増加などにより入
院 収 益 は 前 年 度 比 4 億 7,950 万 円 増 と な っ た 。 ま た 、 陽 子 線 治 療 セ
ン タ ー の 外 来 収 益 が 14 億 3,344 万 円 と 前 年 よ り 6 億 円 を 超 え る 収 益
増 加 に加 え 、 患者 数、 外来診療単価ともに計 画を上回る結果となり 、
外来収益は前年度比 9億 2,496万円増となった。
・費用 に お い ては 、 看護 体制の強化や陽子線治療センター職員の増員 の
影響もあり、給与費が 5億 6,474万円増加している。
・経 常 収 支 は 、 旧 城 北 病 院 の 建 物 の 除 却 等 に よ り 13 億 1,656 万 円 の 固
定 資 産除 却 費 を計 上した平成25年度より大きく改善し、開院以来初の
経 常 黒字 を 達 成し た。 しかしながら、地方公 営企業会計基準の見直 し
に 伴 う退 職 給 付引 当金 計上額等を特別損失に 計上したため、純損益 は
15億 2,549万円の赤字となった。
49
東部医療センター
貸借対照表
固定資産
有形固定資産
うち、土地
うち、建物
投資
流動資産
うち、現金 預金
うち、未収 金
資産合計
固定負債
うち、企業 債
うち、他会 計借入金
うち、退職 給付引当金
流動負債
うち、企業 債
うち、未払 金
繰延収益
負債合計
資本金
剰余金
資本剰余金
欠損金
資本合計
負債・資本合 計
(単位:千円 )
平成 24年度
7,048,594
7,048,388
180,852
5,244,734
20 6
1,827,211
△ 183,182
1,951,430
8,875,806
1,079,806
234,6 11
1,373,166
1,247,484
2,452,973
11,706,916
△ 5,284,082
639,921
△ 5,924,004
6,422,833
8,875,806
平 成25年度
8,117, 397
8,116, 636
180,85 2
4,981, 513
761
2,795, 767
771,60 2
1,965, 596
10,913 ,165
795,81 0
234,6 11
2,259, 895
2,146, 909
3,055, 705
12,772 ,150
△ 4,91 4,689
933,65 5
△ 5,84 8,344
7,857, 460
10,913 ,165
平成 26年度
15,388 ,872
15,385 ,876
180,85 2
10,814 ,563
2,996
4,972, 822
2,963, 490
1,995, 233
20,361 ,695
10,991 ,369
7,894, 575
3,024, 013
5,837, 502
670,10 1
4,639, 090
1,390, 904
18,219 ,775
4,691, 497
△2,549 ,578
2,790
△ 2,55 2,368
2,141, 919
20,361 ,695
(単位:千円)
損益計算書
医業収益
うち、入院 収益
うち、外来 収益
医業費用
うち、給与 費
うち、材料 費
医業利益(△ は損失)
医業外収益
医業外費用
経常利益(△ は損失)
特別利益
特別損失
当年度純利益
(△は純損失 )
平成24 年度
11,299,272
8,807,012
2,073,397
11,931,765
6,230,457
3,476,415
△632,49 2
1,106,871
282,086
192,292
285,364
25,733
平成2 5年度
11,601 ,254
9,001, 454
2,126, 408
12,544 ,634
6,631, 821
3,737, 960
△943,3 80
1,048, 306
297,07 0
△192,1 44
288,38 7
20,583
平成 26年度
11,541 ,763
8,909, 550
2,126, 345
12,811 ,803
7,097, 138
3,455, 845
△1,270 ,039
1,277, 229
450,94 3
△443,7 54
299,73 5
3,158, 007
451,92 3
75,659
△3,302 ,025
(出典:名古 屋市病院事業決算書)
50
(増減理由)
・地方 公 営 企 業会 計 基準 の見直しにより借入資本金は資本の部から負 債
の 部 へ計 上 さ れる こととなった。平成26年度における自己資本比率は
10.5%で あり、平 成25年度における借入資本金を除いた自己資本比率
は41.1% である。 平成26年度の減少は、資本制度の見直しにあたり減
資 し たこ と に よる 自己 資本減少、及び退職給 付引当金計上に伴う負 債
の増加によるものである。
・入院・外来患 者数が計画を下回った結果、入院収益は 9,190万円の減
収、外来収益はほぼ横ばいとなった。
・費 用 に お い て は 職 員の増 加 に 伴 い、 4 億 6,531 万円 の 給 与 費 が 増加 と
な っ た一 方 、 診療 材料 費の高額な手術の割合 の減少に加え、診療材 料
の 見 直し 、 価 格交 渉に よる購入価格の減など のコスト削減に努めた 結
果、医業費用では 2億 6,716万円の増加となった。
・地方 公 営 企 業会 計 基準 の見直しに伴う退職給付引当金計上額等を特 別
損失に計上したため、純損益は33億 202万円の赤字となった。
51
緑市民病院
貸借対照表
固定資産
有形固定資産
うち、土地
うち、建物
投資
流動資産
うち、現金 預金
うち、未収 金
資産合計
固定負債
うち、企業 債
うち、他会 計借入金
うち、退職 給付引当金
流動負債
うち、企業 債
うち、未払 金
繰延収益
負債合計
資本金
剰余金
資本剰余金
欠損金
資本合計
負債・資本合 計
(単位:千円 )
平成 24年度
3,711,40 4
3,711,38 6
50,00 2
3,170,76 0
18
△ 1,708,69 8
△ 1,732,01 8
23,32 0
2,002,70 6
409,00 0
46,28 4
46,28 4
455,28 4
8,214,53 1
△ 6,667,10 9
239,35 8
△6,906,46 7
1,547,42 1
2,002,70 6
平 成25年度
3,518, 028
3,518, 010
50,002
2,998, 392
18
△ 1,80 6,782
△ 1,81 7,355
10,573
1,711, 246
273,00 0
1,784
1,784
274,78 4
8,104, 024
△ 6,66 7,562
366,32 4
△7,033 ,886
1,436, 462
1,711, 246
平成 26年度
3,328, 346
3,328, 328
50,002
2,911, 344
18
△ 1,87 5,039
△ 1,88 0,999
7,139
1,453, 306
1,160, 045
1,160, 045
392,16 5
389,60 6
2,558
344,92 7
1,897, 138
1,735, 129
△ 2,17 8,961
△2,178 ,961
△ 443, 831
1,453, 306
(単位:千円)
損益計算書
医業収益
うち、一般 会計負担金
うち、その 他医業収益
医業費用
医業利益(△ は損失)
医業外収益
医業外費用
経常利益(△ は損失)
特別利益
特別損失
当年度純利益
(△は純損失 )
平成 24年度
8,03 3
4,352
3,680
799,647
△791,61 3
591,020
54,906
△255,49 9
145,724
32,009
平成2 5年度
8,478
4,307
4,170
705,96 1
△697,4 83
484,14 7
47,633
△260,9 69
136,03 2
2,482
平成 26年度
9,246
4,166
5,080
595,39 0
△586,1 43
489,31 7
40,315
△137,1 42
136,01 5
4,181
△141,7 84
△127,4 19
△5,308
(出典:名古 屋市病院事業決算書)
52
(増減理由)
・平成 24 年 度よ り 指定管理者制度への移行がなされている。このため、
入院収益、外来収益、材料費は計上されていない。
・指定管理者制度適用のため、退職給付引当金は計上していない。
・現金 預 金 が マイ ナ スであるのは、名古屋市病院局全体の現金預金額を 、
西 部 医療 セ ン ター と東 部医療センター個々で 把握している現金預金 金
額 を 病院 別 の 貸借 対照 表上に計上した結果の 差引きで緑市民病院の 現
金預金金額として病院別貸借対照表上記載するためである。
イ
繰入金の推移
(ア)概要と推移
一 般 会計 か ら の繰 入金 は、補助金、負担金、 又は出資によるものに 大
別 さ れる 。平 成26 年 度は、主に以下の内容に対して繰入が行われてい る 。
【図表 3- 1-15】一 般会計からの繰入金の内訳
収益的収入
一般会計負担 金
一般会計補助 金
資本的収入
一般会計補助 金
一般会計出資 金
救 急 医 療 の 確 保の た めの 経 費 、 保 健 衛生
行 政 事 務 に 要 する 経 費が 繰 り 入 れ ら れ、
病 院 決 算 書 上 は「 医 業収 益 」 と し て 計上
さ れ て い る 。 また 、 児童 手 当 に 要 す る経
費 に つ い て は 「医 業 外収 益 」 と し て 計上
されている。
特 殊 医 療 に 要 する 経 費、 高 度 医 療 に 要す
る 経 費 ( 陽 子 線 治 療 の 収 支 差 等 )、 医 師
確 保 対 策 に 要 する 経 費、 建 設 改 良 に 要す
る 経 費 ( 企 業 債 利 子 )、 緑 市 民 病 院 の 指
定 管 理 者 へ の 交付 金 に要 す る 経 費 等 が繰
り 入 れ ら れ 、 病院 決 算書 上 は 「 医 業 外収
益 」 と し て 計 上さ れ てい る 。 ま た 、 改革
プ ラ ン に 要 す る経 費 のう ち 、 特 例 債 元金
償 還 に 要 す る 経費 分 が「 特 別 利 益 」 とし
て計上されて いる。
建 設 改 良 に 要 する 経 費( 建 設 改 良 費 、リ
ー ス 資 産 購 入 費 )、 企 業 債 元 金 償 還 に 要
す る 経 費 、 耐 震改 修 に伴 う 企 業 債 元 金償
還 、 病 棟 改 築 に要 す る経 費 分 等 が 計 上さ
れている。
病 院 の 財 産 的 基礎 と なる 施 設 整 備 に 要す
る経費分が計 上されている。
53
西部医療セン ター、東部医療センター、緑 市民 病院の繰入金の推移は以
下のとおりで ある。
【図表 3- 1-16 】一般会計繰入金の病院別推移
西部医療センター(陽子線治療センターを含む)
予算科目
(単位:千円)
平成 24年度
平成25年度
平成26年度
医業収益
一般会計負担 金
278,53 3
319, 246
3 27,100
医業外収益
一般会計補助 金
2,111, 185
2,58 4,733
1 ,486,953
医業外収益
一般会計負担 金
19,333
22,1 19
2 2,727
特別利益
一般会計補助 金
254,00 0
254, 000
2 54,000
資本的収入
一般会計補助 金
1,225, 799
83 4,123
908,620
3,888,85 2
4,014,2 22
2,9 99,401
西部医療セン ター計
(出典:名古 屋市病院事業決算書)
東部医療センター
(単位:千円)
予算科目
平成24年度
平成25年度
平成26年度
医業収益
一般 会計負担金
269, 668
3 31,430
374,858
医業外収益
一般 会計補助金
978, 332
9 26,774
882,538
医業外収益
一般 会計負担金
23, 657
24,789
25,332
特別利益
一般 会計補助金
283, 599
2 83,996
284,397
資本的収入
一般 会計出資金
36, 000
4 08,000
2 ,238,000
資本的収入
一般 会計補助金
285, 885
2 88,061
299,257
1,877,1 42
2,2 63,052
4, 104,383
東部医療セン ター計
(出典:名古 屋市病院事業決算書)
54
緑市民病院
(単位:千円)
予算科目
平成24年度
平成25年度
平成26 年度
医業収益
一般会計負担金
4,352
4,307
4 ,166
医業外収益
一般会計補助金
5 36,504
431,349
325,9 72
特別利益
一般会計補助金
1 36,000
136,000
136,0 00
資本的収入
一般会計補助金
1 40,375
126,966
139,2 57
817,232
698,623
60 5,396
緑市民病院計
(出典:名古 屋市病院事業決算書)
な お 、平 成 26年 度の繰入額を病院別かつ、基準内繰入・基準外繰入の
区分別に集計すると以下のとおりとなる。
【 図 表 3- 1-17 】 一 般 会 計 繰 入 金 の 病 院 別 内 訳 ( 平 成 26年 度 )
項目
収益的収入
基準内繰入
基準外繰入
資本的収入
基準内繰入
基準外繰入
計
西部医療セン ター
(全体)
西部医療
陽子線治療
センター
センター
1,675, 143
415,63 7
1,675, 143
388,43 7
27,2 00
827,77 6
80,843
827,77 6
80,843
2,502, 920
496,48 0
東部医療
センター
1,567, 125
1 ,567,125
2,537, 257
2,5 37,257
4,104, 383
緑市民病院
466,13 8
3 66,138
100,000
139,25 7
139 ,257
605,39 6
( 単 位 :千 円 )
計
4,124, 045
3,996,8 45
127, 200
3,585, 134
3,585,134
7,709, 180
(出典:名古 屋市病院局資料「一般会計補助金の積算 内訳」)
(注 1)陽 子線治療センターについては 運営負 担金の額を記載している。
(注 2)基 準内繰入、基準外繰入につい て
公営企業が経営に関する基本原則を堅持し、経営の健全化、経営基盤を強化す
るため、毎年度地方財政計画において一般会計から公営企業に対する繰入金を計
上することとされている。繰出の範囲は総務省より毎年通知されており、この基
準 の範 囲内 のもの を基準 内繰 出( 公営企 業側に おい ては 基準内 繰入 )、 範囲 外 のも
のを基準外繰 出(公営企業側においては基準外繰入) としている。
55
西 部 医療 セ ン ター における平成26年度医業外収益の繰入額の減少は、
旧 病 院に か かる取 壊 しや土壌汚染対策費が平成26年度より計上されてい
な い こと 、 及 び陽 子 線治療の収支差額が改善したことによる。また、 東
部 医 療セ ン ターの 平 成26年度資本的収入(一般会計出資金)の増加は、
東部医療センターの救急・外来棟改築等に要する経費の計上による。
西 部 医療 セ ン ター 、東 部医療センター及び陽 子線治療センターの収 益
的 収 入 に 対 応 す る 経 費( 決 算額 ベ ース ) の推移は 【図 表 3- 1-18 】【 図
表 3- 1−19】のとお りである。
56
【図表 3- 1-18】西 部医療センター(陽子線治療センターを除く)、東部医療セ
ンター収 益 的収 入決 算内 訳
(単位:千円 )
西部医療センター
東部医療センター
項目
平成24年度 平成25年度 平成26年度 平成24年度 平成25年度 平成26年度
260,637
287,466
272,832
256,766
310,195
340,633
251,834
280,599
265,965
250,859
305,910
336,516
耐震利息
6,867
6,867
6,867
4,434
4,285
4,117
災害備蓄
1,936
-
-
1,472
-
-
保健衛生 行政事 務に要 する経費
16,761
16,205
27,068
12,902
21,235
34,225
公立病院附属看護師養成所の運
営に要する経費
48,752
54,786
49,313
48,321
51,361
46,678
建設改良に要する経費
170,864
164,592
156,938
16,537
16,446
21,292
高度医療に要する経費
63,932
24,799
-
19,423
5,011
-
特殊医療に要する経費
251,794
412,486
455,949
426,588
421,391
375,715
研究研修に要する経費
38,312
37,261
40,023
38,584
38,803
40,004
長期給付に要する経費
311,106
269,674
270,770
313,101
279,149
279,411
48,024
46,533
42,712
27,155
30,436
26,049
535,895
930,740
259,694
295,920
293,090
298,079
特例債利息
11,817
8,767
5,578
12,216
9,007
5,669
特例債元金
254,000
254,000
254,000
283,599
283,996
284,397
109
89
116
105
86
116
救急・外来棟開設準備
-
-
-
-
-
5,304
旧守山市 民病院 土壌汚 染対策
-
-
-
-
-
2,592
190,536
490,328
-
-
-
-
79,432
177,555
-
-
-
-
77,259
76,989
77,114
73,917
75,082
79,705
2,484
-
-
2,383
-
-
3,451
-
-
5,029
-
-
15,882
22,119
22,727
18,627
24,789
25,332
救急医療の確保に要する経費
宿日直手当、空床確保
院内保育 所の運 営に要 する経費
公立病院改革プランに要する経費
プラン実施状況の点検・評価
旧城北病院取壊工事費
城西病院土壌汚染調査・対策
医師確保対策に要する経費
地方公営企業会計制度改正対応
に要する経費
子ども手当に要する経費
児童手当に要する経費
合計
1,845,155 2,343,653 1,675,143 1,555,257 1,566,990 1,567,125
(出典:名古 屋市病院局資料「一般会計補助金の積算 内訳」)
57
【図表 3- 1-19】陽 子線治療センター収益的収入決算内訳
(単位:千円)
陽子線治療セ ンター
平成24年度
平 成25年度
平成26 年度
4,326
3,485
5,649
1,820
2,190
2,800
7,960
8,683
13,580
1,992
1,992
2,006
920
1,162
1,447
800,87 7
818,93 3
390,15 3
1,135
1 5,575
27 ,200
799,742
8 03,358
36 2,953
817,89 7
836,44 6
415,63 7
項目
建設改良に要 する経費
研究研修に要 する経費
長期給付に要 する経費
医師確保対策 に要する経費
児童手当に要 する経費
高度医療に要 する経費
治療料等の 減免に対する補助
陽子線治療 の収支差
合計
(出典:名古屋市病 院局資料「一般会計補助金の積算 内訳」)
「 公 立病 院 改 革プ ラン に要する経費」を除い た水準で比較すると、 平
成24 年度 から 平成2 6 年度の収益的収入(一般会計からの繰入金)は、西
部 医 療セ ン タ ー( 陽 子線治療センターを除く)においては主に特殊医 療
に関する経費 の増加に より 1億 618万円増加し、東部医療センターにお
いては横ばいとなっている。
(イ)収益的収入(基準内)の算定方法
基 準 内繰 入 と され る経 費のうち、金額の大き い特殊医療に要する経 費
についての決定方法を確認したところ、予算においては人件費・材料
費 ・ その 他 経 費の 積 算により算定されていた。例えば、西部医療セン タ
ー の 特 殊 医 療 に か か る 経 費 4 億 5,594 万 円 の う ち ICU 医 療 に対 す る 経
費 1億 4,765万円の 予算上の算定根拠は以下のとおりである。
【図表 3- 1- 20】繰入額の算定過程
【収入】
予定入院患者 数(人)
日数(日)
単価(千円)
収入合計(千 円)
23
365
51
431,88 9
58
【支出】
(A) 給与費
(注 1)
項目
人数(人)
平均給与(千
円)
当該業務の
業務量(注 2)
病院全体の
業務量(注 3)
(A) 積算額
(千円)
医師
看護師
39
7,283
その他
92
7,700
パート等
4
12,486
−
−
110
110
−
−
3,165
3,165
49,944
284,03 7
24,621
14,015
合計
403,24 5
372,61 7
(注 1)給 与費の積算方法は以下のとお りであ る。
医師・看護師 :
(当該業務にかかる)人数× 平均給与
当該業務の業 務量
その他・パー ト等:
全体の給与費(注 4)×
病院全体の業 務量
(注 2)当 該業務の業務量=(当該医療 にかか る入院患者数)×(入院
診療単価÷外 来診療単価)
(注 3)病 院全体の業務量=(病院全体 の入院 患者数)×(入院診療単
価÷外来診療 単価)+(病院全体の外来患者数)
(注 4)そ の他・パート等における「全 体の給 与費」=(全体の)人数
×平均給与
(B) 材料費
収入(千円)
材料費率(% )
(B)材料費 (収入×材料費率)( 千円)
431 ,889
28.6
123,52 1
(C) その他経費
(a)医業費 用(千円)
(b)(当該業務の)業務量
(c)病院全 体の業務量
(C)その他 の経費 (a)×(b)÷(c)
(千円)
2,3 99,654
110
3,165
83,401
【必要経費】
収入 (千円 )
支出(A)+ (B)+(C)( 千円)
収支差 (千 円)
4 31,889
5 79,539
△147,6 50
( 出典:平成26年度一般会計補助金 積算内訳)
59
ウ
他団体比較
地 方 公営 企 業 法全 部 適用の病院について、繰入額を他の自治体と比較し
た結果は次のとおりである。
【 図 表 3- 1-2 1 】 他 の 自 治 体 病 院 と の 繰 入 金 比 較
名古屋市
項
目
札幌市
西部医療
センター
東部医療
センター
収益的収入
2,090,780
1,567,125
3,657,906
資本的収入
908,620
2,537,257
病床(床)
500
1床あたり
繰入額(収
益的収入)
1床あたり
繰入額(資
本的収入)
(単位:千円)
市立札幌
病院
横浜市
市民病院
センター
(注1)
2,000,061
1,119,892
2,048,166
3,445,877
1,506,003
601,250
740,207
1,341,457
498
998
798
650
300
950
4,181
3,146
3,665
2,506
1,722
6,827
3,334
1,817
5,094
3,452
1,887
925
2,467
1,412
合計
合計
3,168,058
(参考資料: 各団体の平成26年度決算書等より 監査人加工)
(注 1)セ ンターとは、脳卒中・神経脊 椎セン ターを指す。
(注 2)比 較対象団体は、政令指定都市 が設置 している地方公営企業法全部適用 の
公立病院のう ち平成26年度の病院別決算 書が監 査実施時点で開示されていたもの
を抽出してい る。
〔発見事項〕
一 般 会計 か ら 病院 事 業会計への繰入額は、西部医療センター、東部医療
セ ン タ ー 合 計 で 71 億 378 万 円 、 緑 市 民 病 院も 加 え た 全 体 で は 77 億 918 万
円 と なっ て お り、 市 の財政に与える影響は大きい。地方公営企業法全部適
用他団体 と比較 したと ころ、平成26年度においては 1床あたり繰入額は収
益 的 収 入 ( 経 常 的 経 費 )、 資 本 的 収 入 と も に や や 高 い 水 準 に あ る 。 経 常 的
経費については、特に 西部医療センターが 1床あたり 418万円と高くなっ
ている。西部医療センターにおいては陽子線治療センター分として 4億
1,563万 円が繰り入 れ られていることも大きく影響している。過年度と比
較 す れば 収 支 差額 は 改善されており、陽子線治療の収支差を補てんするた
め の 繰入 金 額は 減少 しているものの、依然として年間 4億円以上の経費負
担となっている 。東部 医療センターについても、1床あたり 314万円(「公
60
立 病 院 改 革 プ ラ ン に 要す る 経 費 」を除 い たとし て も、 1 床あ た り 254 万円 )
の繰入と試算され、他団体よりもやや高い水準にある。
ま た 、資 本 的 収入 分 についても他団体を大きく上回っているが、これ は
東 部 医療 セ ン ター 建替の途上という時期的な要因によるものと考えられる 。
〔意見〕一般会計繰入金の水準について【病院局】【財政局】
陽 子 線治 療 セ ンタ ー について、稼働率の更なる上昇と同時に人件費・ 経
費 の 抑制 を 達 成し て いくことが、繰入金を減少させるうえで重要なポイン
ト と なる 。 ま た、 西 部医療センター・東部医療センターにおいても、現在
推 進 プラ ン の 成果 指 標として設定している職員給与費比率や材料費比率の
目 標 値を 予 算 上織 り 込むこと等により経常的経費の繰入額の見直しを図っ
ていくことが考えられる。
一 方 、資 本 的 収入 分 については、改革プランの途上にあることから、 短
期 的 に繰 入 金 が増 加 することはやむを得ないものではあるが、支出がその
繰 入 目的 に 対 して 十 分な効果をもたらしているかを確認していくことが望
まれる。
61
2
各論
(1)出納管理
ア
医事会計システム上の書損の取扱いについて
病 院 では 、 出 納管 理 業務として主に①窓口業務、②小口現金、③駐車場
利 用 料金 の 収 受、 ④寄附金の受入、⑤旅費等の経費精算業務を行っている 。
こ の うち 窓 口 業務 に ついては、西部医療センター、東部医療センター共
に外部業者に委託している。
〔発見事項〕
西 部 医療 セ ン ター の 窓口職員の業務フローを確認したところ、以下の問
題点が確認された。
現 状 では 、 窓 口職 員 による収入収受業務として、会計窓口で診療に要し
た 費 用と し て 現金 を 収納したときは、費用の算定、収納した現金にかかる
データ (以 下「 収納 データ」という。) の登録等のために使用するシステム
( 以 下 「 医 事 会 計 シ ス テ ム」 と い う 。) に よ り 出 力 し た領 収 証 書 を 患 者 に 交
付 す ると と も に、 そ の控えを収納の事実を確認する証拠書類として保管し
ている。
領 収 証書 の 出 力後 に 請求内容に誤り等があった場合は、出納員が、当該
領 収 証書 に か かる 収 納データを書損扱いとしているが、書損の確認は実施
されていない。
仮 に 、不 正 に 収納 デ ータの一部を書損扱いとし、現金と領収証書控を窓
口 職 員が 隠 し た場 合 、当日の医事会計システム上の入金合計と現金残高、
領 収 証書 控 が 一致 す るため、その不正行為が発見できない状況となってい
る。
な お 、東 部 医療 セン ターでは入金済み書損一覧データを作成し、毎月 1
回 チ ェッ ク す る手 続 を実施することで前記の問題に対する統制手続を実施
している。
62
〔意見〕書損取扱いデータの顛末確認の実施について【西部】
窓 口 業務 の 現 金収 受 については直接現金を取り扱うため、内部統制の整
備 及 び運 用 の 徹底 が求められる。外部委託を実施している場合であっても 、
委 託 業者 が 行 うべ き 管理運用体制の確認に加え、病院としても委託した業
務 に つい て 、 内部 統 制が有効に機能しているかを確認し、必要に応じて直
接確認する手続が必要となる。
今 回 の事 例 で は、 医 事会計システム上で書損としたデータの顛末の確認
が 必 要で あ る 。書 損 とした請求データについて、そのログを確認し、不正
の 兆 候の 有 無 を確 認 し、兆候がある場合にはその内容を確認する必要があ
ったが、現状では未実施となっている。
現 金 を直 接 取 り扱 う 窓口業務を外部業者に委託していることから、病院
と し て委 託 職 員の 業 務に対する内部統制を整備するとともに、適切な管理
を実施されたい。
(2)債権管理
ア
個人診療報酬未収金の滞納管理
医 業 未収金 のう ち 、平成26年度時点の自己負担分の過年度未収金額は、
西 部 医 療 セ ン タ ー に お い て 44,408,756 円 、 東 部 医 療 セ ン タ ー に お い て
53,052,8 88円である 。
未 収 金の 管 理に おい ては、「名古屋市債権管理条例」のほか、名古屋市 病
院 局 と し て 別 途 「 滞 納金 事 務 処 理 要 綱 」( 以下 「 滞 納金 要 綱 」と いう 。) を 定
め て おり 、 発 生し た 未収金について要綱に従い以下のような督促を行うこ
ととしている。
( ア )入院 収益 にあ って は納入通知書発行年月日の翌月20日までに入金のな
い も のに つ いて、 外 来収益にあっては診察日の翌月2 0日までに入金のな
い も のに つ い て、未 収金整理カードを作成する。ただし、外来収益に あ
っ て は、 未 収 金整 理 リストによって代用することもできることとする が、
未 収 金整 理 リ ストは 滞納が発生した年度中に未収金整理カードに作り 替
えなければならない(滞納金要綱第 1(2))。
63
(イ) 未収金整理 カー ド及び未収金整理リスト(以下「未収金整理カード等」
という 。) を作成し たときは、その月内に最低 1度は電話催告を行うこ
ととする (滞納金要綱第 1(3)) 。
(ウ)電 話 催 告 を し て も 納 付 等 が な い も の に つ い て は 、 督 促 状 を 発 送 す る 。
な お 、督 促 状 の発送 時期は、未収金整理カード等を作成した月の翌月 の
1 0日 頃 とし 、期 限を 当該月の末日とする。納期限の延長を承認したもの、
分 割 納入 を 承 認した ものについて、延長期限又は分割納入期限を徒過 し
た も のに ついては 、適宜督促状を送付するものとする(滞納金要綱第 1
(4)(5))。
( エ )督促 状 を送 付 しても納付等がないものについては、催告書を発送する
(滞納額 200円未満を除く)(滞納金要綱第 1(6))。
( オ )催告 書 を送 付 しても納付等がないもののうち以下の要件を満たすもの
に つ いて は 、 支払督 促の申立てを行うことを前提に、原則として支払 督
促 の 申立 て を 行う月 の二月前までに臨戸徴収を行うものとし、不在で あ
っ た 場合 は不在催 告書をポストに投函するものとする(滞納金要綱第 1
(7))。
a 滞 納 金 額 が 概 ね 2 0万 円 以上 ( 1 人 当 た り の金 額 と す る 。) で あ る こ
と
b 督促状又は催告書が返戻されていないこと
c 文書を受け取る者、連帯保証人等が日本語を理解できること
d 名 古 屋 簡 易裁 判 所の管轄(名古屋市、日進市、西春日井郡等)に住
所地が存すること
e その他支払督促を行うことに適さない事由がないこと
な お 、前 記 掲 げる 要件 に該当しないものにつ いては、適宜電話催告 、
文書催告、臨戸徴収等を行うこととする(滞納金要綱第 1(8))。
( カ )臨戸 徴 収後 、 なお納付等がないものについては、特別催告書を内容証
明郵便によって発送する(滞納金要綱第 1(9))。
( キ )特別 催 告書 を 送付しても納付等がないものについては、名古屋簡易裁
判所に支払督促の申立てを行う(滞納金要綱第 1(10))。
( ク )適宜 電 話催 告 、文書催告、臨戸徴収、支払督促等を行ってもなお納付
64
等 が ない ものにつ いては、原則最低年 1回は催告書による催告又は臨戸
徴収を行う(滞納金要綱第 1(11))。
〔発見事項〕
個 人 診療 報 酬 未収 金 の管理状況について、未収金整理カード等による 記
録 管 理の 徹 底 が実 施 されていることは確認できた。また、債権管理に関す
る 要 綱も 整 備 され て おり、前記のとおり債権回収を実施するために必要と
なる手続については十分に規定されている。
し か し、 実 際 には 、 債権回収に着手する順序として、高額債権かつ悪 質
な 場 合を 優 先 的に 着 手しており、名古屋市病院局にあっては少額な患者債
権 に 対し て も 催告 手 続、臨戸徴収や支払督促は実施しているものの、なお
多額な未収金が発生している。
〔意見〕個人未収金の督促対応について【共通】
最 近 では 、 少 額訴 訟 制度の活用や医療費未収金回収業務を委託する病 院
も少なくない。
滞 納 金要 綱 を 見直 し 、悪質な事例については早期より少額訴訟に踏み 切
る ケ ース を 認 める 、 あるいは弁護士等の外部業者を活用することで、病院
としてのより強い姿勢を見せることが重要である。
そ の 他、 病 院 職員 以 外の外部を活用した滞納管理方法についても検討 し、
少しでも回収率を上げるための取り組みが望まれる。
イ
返戻レセプトの取扱いについて
医 療 機関 は 、 その 診 療行為に対する報酬を保険者等に請求するため、 診
療 報 酬の 明 細 を明 ら かにした診療報酬明細書(レセプト)を作成し、診療
報 酬 請求 書 と とも に 、社会保険診療報酬支払基金又は国民健康保険団体連
合 会 (審 査 支払 機関 )に提出する。通常、当月分を翌月10日までに審査 支
払機関に提出し、通常では 2ヶ月後に審査支払機関より入金となる。
審 査 支払 機 関 にレ セ プト等を提出したものの、その内容に不備がある た
め に 、提 出 済 みの レ セプトが医療機関に返戻される場合がある。この返戻
65
さ れ たレ セ プ トは 、 内容の不備等を調査修正して、後日、通常のレセプト
と 合 わせ て 審 査支 払 機関に再度提出される。しかしながら、調査修正に時
間 を 要す る な どの 理 由から、返戻された月の翌月期限までに再度提出でき
ないまま保留となっている場合がある。
〔発見事項〕
こ の 返戻 レ セ プト に ついて、返戻時点でいったん医業収益と医業未収 金
の 取 消し 処 理 を行 い 、実際の再請求時点まで医業収益と医業未収金の再計
上 が 行わ れ て いな い。つまり、医業収益及び未収金が未計上となっている 。
し か し、 実 際 には 返 戻レセプトにかかる診療報酬債権は実在している た
め 、 現在 の 処 理で は 再請求が行われるまでの間、診療報酬債権(資産)及
び診療報酬収益(収益)が過小計上となっている。
〔指摘〕返戻再請求保留分の未計上について【共通】
返 戻 レセ プ ト に関 わ る診療報酬については、返戻を受けた場合であっ て
も 、 再請 求 不 可能 な ものを除き診療報酬債権自体は消滅しない。決算時に
診 療 報酬 債 権 (資 産 )及び診療報酬収益(収益)を計上することが必要で
ある。
ウ
患者預り金について
西 部 医 療 セ ン タ ー の 地 域 医 療 連 携 室 で は、 通 知 「『 市 立 病院 に お け る入
院患者日用品等預り金にかかる取扱指針』の運用について」に基づき、
「 入 院患 者 ( 日用 品 費)預かり金について」という独自マニュアルを追加
で 作 成し 、 患 者の 所 持する貴重品の預かりを行っている。この通知では、
真 に 必要 か つ やむ を 得ないと判断した場合に限定をしているものの、患者
から現金の他に預金通帳や有価証券を預かることを予定している。
〔発見事項〕
運 用 指針 で は 、預 か り保管の状況について「預かり金管理状況報告書 」
に て 各月 末 に 管理 課 長に対し報告を求めているのみである。やむを得ない
66
場 合 には 院 長 判断 で 通帳と印鑑も保管し、病院金庫の中に一緒に保管して
いる。
し か し、 通 帳 と印 鑑 を一緒に保管していると、万が一、双方盗難にあ っ
た場合容易に患者の預金が使用され、これが病院の責任となってしまう。
〔意見〕患者預り金管理の徹底について【共通】
患 者 から の 預 かり 金 品については、万が一紛失した場合は最終的には 病
院 の 責任 と な る。 こ のため、決算書上では貸借対照表上で預り金計上する
ことが考えられる。
さ ら に、 通 帳 と印 鑑 の保管について一緒に保管せず、別々の場所に保 管
す る 等、 患 者 の資 産 保全を物理的に担保する方策を細則等で規定し、管理
を十分に徹底することが望まれる。
エ
看護学生学資金支給の会計処理について
看 護 学校 等 の 養成 施 設を卒業後、看護師又は助産師として名古屋市立 病
院 に 勤 務 し よ う と す る 学 生 に 対 し 、 「 名 古 屋 市 立 病院 看 護 学 生 学 資 金 支給
要 綱 」 ( 以 下 「 学 資 金要 綱 」 と い う 。) に 基づ き 、 看 護 学 生学 資 金と し て 一
定額を支給する制度を設けている。
学 資 金に つ い ては 、 学資金要綱により学生が学資金を返還する場合を 定
め て いる が 、基 本的 には養成施設を卒業後、名古屋市立病院に 1年以上 勤
務した場合には学資金の返還が免除となっている。
な お 、 平 成 26 年 度 に お け る 看 護 学 生 学 資 金 支 給 額 は 5,460 万 円 で あ る 。
〔発見事項〕
学 資 金要 綱 によ れば 、名古屋市立病院に 1年以上勤務した時点で免除 と
しており、支給時点では実質的には看護学生に対する貸付債権である。
し か し、 会 計 上は 看 護学生に対し学資金を支給した時点で費用処理し て
いる。
67
〔 意 見〕 看 護 学生 へ の貸付金の債権計上及び適切な引当金の設定について
【病院局】
看 護 学生 に 対 し、 学 資金を貸与した段階で費用処理するのではなく、 貸
付 金 とし て 資 産計 上 した上で、貸付金に対し過去の免除実積率を考慮した
引当率に基づき、引当金の設定が望まれる。
引 当 金の 設 定 につ い ては、期末に計上された債権のうち、翌事業年度 よ
り 名 古屋 市 立 病院 で 勤務を開始する看護学生に対する貸付金に対し、引当
金を設定する方法が考えられる。
(3)固定資産管理
ア
有形固定資産の管理
名 古 屋 市 病 院 局 会 計 規 程 第 78 条 に お い て 、「 固 定 資 産は 、 有 形 固 定 資 産 、
無 形 固 定 資 産 及 び 投 資 と す る 。」 と 規 定 さ れ て お り 、 有 形 固 定 資 産 に つい
て、具体的には次のとおり規定されている。
第79条
有 形固定資産は、次の各号に掲 げるも のをいう。
(1) 土地
(2) 建物
(3) 器機 備品
(4) 構築 物
(5) 車両
(6) 器具 及び備品( 耐用年数が 1年以上か つ取得価 格が10万円以
上のものに限 る。)
( 7 ) リー ス資 産 (ファ イ ナン ス ・リ ー ス 取引 に おけ る リー ス 物件
の 借 主 で ある 資 産で あっ て 、当 該 リ ー ス物 件が 第 1号 か ら前 号ま
でに掲げるも のである場合に限る。)
(8) 建設 仮勘定
固 定 資産 台 帳 は病 院 ごとに整備されている。包括外部監査においては 西
部 医 療セ ン タ ーの 固定資産台帳についてその記載方法を確認するとともに 、
サ ン プリ ン グ によ る 現物との照合により、台帳と現物との整合性、管理の
68
適切性について確かめた。その結果、以下の事項が発見された。
なお、照合にあたっては、固定資産を管理するシステムより出力した
「固定資産一覧表」と現物との照合を実施している。
〔発見事項①〕
現 状 、名 古 屋 市病 院 局会計規程等には固定資産台帳と現物との照合に つ
いての定めがなく、定期的な照合が行われていない。
固 定 資産 の 網 羅的 な 現物確認を実施しなければ、固定資産台帳が実態 を
表 さ ない 恐 れ があ り 、実在しない固定資産が財務諸表に計上される、ない
し は 、実 在 し ない 固 定資産に対する減価償却費が計上されることにより、
損 益 に影 響 を 及ぼ す リスクが生じる。また、内部的にも、適切な除却手続
を 経 ずに 資 産 が廃 却 されたり持ち出しされたりした場合、これを適時に発
見することができない。
〔指摘〕病院による固定資産の現物確認について【共通】
固 定 資産 実 査 を実 施 する旨、実施時期及び実施方法等について規定す る
必 要 があ る 。 また 、 規程に基づき計画的・網羅的に固定資産実査を実施す
る必要がある。
〔発見事項②〕
固 定 資産台 帳を 閲 覧したところ、発注額の合計が10万円以上となる器 具
又 は 備品 に つ いて 、 一式として固定資産計上していた。しかし、一式とし
て計上する単位について明確な方針はないとのことであった。
69
【図表 3- 2- 1 】一式として登録されていたもの(例)
固定資産名称
構造規格
診察室等備品 一式⑤(什器13)
㈱内田洋行 1262-1126 /㈱ 内田洋行
5-821- 8932/5-824- 72 52/5-82 4-9
⑲8階病棟電 化製品一式
東芝19A 2/シャープ AQU OS LC-32E8 /
パナソニッ ク DIGA DMR- BR 590-K
(出典:名古 屋市病院局
(単位:円)
取得年月日
設置 場所
取得価額
平成23年 3月28日
産婦人科
188,656
平成23年 3月25日
8階病棟
(外科・耳
鼻科・放射
線科・特別
室)
119,234
固定資産一覧表)
〔指摘〕固定資産台帳への登録単位について【共通】
一 式 の計 上 単 位は 、 基本的には、使用や移動、除却が同時に行われるも
の で ある と 考 えら れ る。固定資産の登録単位の考え方については、内部的
に取決めを行い、登録単位を統一することが必要である。
〔発見事項③〕
【 図 表 3- 2- 2 】 の 備 品 に つ い て は 固 定 資 産 台 帳 に 記 載 さ れ た 設 置 場
所 ( 眼科 、 放 射線 治 療科)と異なる場所(内科)にて使用・保管されてい
た。
【図表 3- 2- 2】固 定資産台帳記載の設置場所と異なる場所に保管されてい
たもの(西部医療センター)
(単位:円)
固定資産名称
取得年月日
ウイルス対策 用ノートパソコン
平成21年 6月 16日
眼科
144,085
デジタルカメ ラ
平成23年 4月 27日
放射線治療科
262,150
(出典 :名古屋市病院局
設置場所
取 得価額
固定資産一覧表)
〔意見〕固定資産台帳記載の設置場所について【西部】
台 帳 の設 置 箇 所か ら の移動が無制限に行われてしまうと所在や責任が 不
70
明 確 とな る 恐 れが あ る。特にパソコンやデジタルカメラ等の流用のリスク
が 比 較的 高 い 物品 に ついては、移動も含めて厳格に管理することが望まれ
る 。 固定 資 産 の保 管 場所を移動する場合は、移動申請書を提出し固定資産
台帳上にその状況を反映させることが望まれる。
〔発見事項④〕
監 査 人が 現 物 調査 を 行った器機備品のうち、以下のものについて現物 が
確認できなかった。
【図表 3- 2- 3】現物が確認できなかったもの(西部医療センター)
(単位:円)
固定資産名称
取得年月日
設置場所
取得価額
誘発電位・筋 電図検査装置
平成10年 1月16日
整形外科
4,360, 670
(出典:名古 屋市病院局
固定資産一覧表)
〔意見〕現物が確認できない物品について【西部】
現 物 が確 認 で きな か った物品は既に廃棄を行ったものと考えられるとの
こ と であ っ た が、 固 定資産を廃棄する際は、廃棄申請書の決裁をもって行
うことを徹底することが望まれる。
〔発見事項⑤〕
監 査 人が 現 物 調査 を 行った器機備品のうち、以下のものについて現物に
固定資産の内容を示すシールが貼りつけられていなかった。
71
【図表 3- 2- 4】固 定資産の内容を示すシールが貼りつけられていなかっ
たもの(西部医療センター)
(単位:円)
固定資産名称
取得年月日
治療用人体フ ァントーム
昭和57年 3月3 1日
レントゲン
デジタルカメ ラ
平成23年 4月2 7日
放射線治療科
(出典:名古 屋市病院局
設置場所
取得価額
2,480,0 00
262,1 50
固定資産一覧表)
〔意見〕現物へのシール貼付について【西部】
固 定 資産 の 設 置時 に は、固定資産の内容を示すシールを貼りつけ、シー
ル が 劣化 し た 場合 は 貼り直す等、使用期間にわたって、台帳との整合性を
確認できるように対応することが望まれる。
イ
固定資産取得手続(各種医療機器類)
平成26 年度に 、西部 医療センターでは、治療計画支援システム 2台、閉
鎖式保育器 4台(NI CU)等を始め、各種医療機器類を購入している。東部
医 療 セン タ ー では 、 一般撮影装置一式、鼻咽喉ビデオスコープシステム一
式 、 血管 内 超 音波 診断装置一式等を始め、各種医療機器類を購入している 。
医 療 機器 本 体 の調 達 は入札により実施しているほか、メンテナンスは 故
障 等 が発 生 し た都 度 修繕対応を図っており、保守契約は高額医療機器等限
定した範囲で締結している。
固 定 資産 取 得 手続 に ついては、その調達方法及び保守を含めた契約方 法
に特段の問題は見受けられなかった。
ウ
治験受託料収入を財源とする固定資産の購入について
治 験 受託 料 収 入に つ いては今後の治験研究等の活動のために使用するこ
と を 前提 に 、そ の収 入を得た診療科・部門がその収入額の最大 8割まで支
出することを認めている。
西部医療センターでは、製薬会社等と治験に関しての受託契約(以下
「治験契約 」と いう 。) を締結し、その治験契約より得られた収入を病院決
72
算上、収益として計上している。
〔発見事項〕
西 部 医療 セ ン ター で 各診療科・部門に配分された治験受託料収入を財 源
に 購 入し た 固 定資 産 の内訳を確認したところ、電子カルテシステム用デス
クトップパソコンやタブレット、デジタルカメラ等が含まれていた。
治 験 受託 料 収 入を 財 源に購入した固定資産については、その取得目的 が
専 ら 研究 目 的 に使 用 されるもののみが対象となるべきであり、病院として
整 備 が必 要 な もの で あれば病院の予算で整備すべき資産であるが、前記の
固 定 資産 に つ いて は 、治験受託料収入を財源に購入する必要性を確認する
こ と がで き な かっ た 。名古屋市病院局としては、取得時に取得申請部署に
口 頭 で取 得 目 的を 確 認したとされているが、書面による確認は実施されて
いなかった。
ま た 、前 述 の とお り 、固定資産の現物確認を行ったところ、治験受託 料
収 入 にて 購 入 した デ ジタルカメラが固定資産台帳に記載された所管部署に
は な く、 他 部 門で 管 理されており、その変更事実を院内で把握していない
事例が確認された。
〔意見〕治験受託料収入による固定資産の購入について【西部】
治 験 受託 料 収 入を 財 源とする支出においては、その使途を研究目的の 支
出 に 限定 す る こと や 、病院の購買フローと同じ方法で物品等の取得をする
ことが前提である。
そ の ため 、 治 験受 託 料収入を財源とした支出については、その目的が 定
め ら れた 規 程 に従 い 適切であるかを十分に検討し、支出の事後承認や研究
目 的 外の 支 出 では な いことを明らかにするため、その過程及び結果を文書
に て 残す こ と が必 要 である。特に、固定資産購入については、病院の固定
資 産 とし て 管 理す る 対象となるため、その利用状況や現物の状況について
は 当 初の 取 得 目的 と 整合しているかを定期的に管理把握することが望まれ
る。
73
(4)請求管理
ア
特定保険医療材料の請求管理について
特 定 保険 医 療 材料 に おいては、特定保険医療材料の消費に対する診療報
酬 上 の請 求 が 正し く 、漏れなく行われているかを確認することが必要とな
る 。 なお 、 特 定保 険 医療材料とは、医薬品と同じように公定価格が決めら
れ て おり 、 保 険請 求 ができる医療材料又は医療機器のことを指す。当然で
あるが、必要以上の材料の消費分については保険請求ができない。
〔発見事項〕
特 定 保険 医 療 材料 の 消費と医事請求との突合状況について確認したとこ
ろ、西部医療センター 、東部医療センターにおいて、平成26年 4月 1日か
ら 7 月31日までに納品 されたステントグラフト、カテーテル等の高額な医
療 材 料に つ い て、 そ の消費と医事請求との突合を実施していた。また、突
合の結果、消費数量の95%以上が請求されていることを確認していた。
しかし、継続的に確認するフローは確立していない。
〔意見〕特定保険医療材料の医事請求管理について【共通】
東 部 医療 セ ン ター で は心臓カテーテル検査を実施しており、高額なカテ
ー テ ルの 使 用 に対 す る請求漏れの影響は特に大きい。また、請求できない
使 用 ロス の 実 態を 把 握するためにも、一定の時期のみ調査をするのではな
く 、 常時 、 請 求と 消 費の差異を管理把握できる仕組みを整備運用すること
が望まれる。
(5)購買管理
ア
診療材料の購入
新 規 診療 材 料 の採 否 については、西部医療センターにおいては「診療材
料 審 査 委 員 会 」、 東 部 医 療セ ン タ ー に お い て は 「 診 療 材 料 節 減 部 会 」 に諮
り 、 意思 決 定を 行っ ている。診療材料購入の 2病院一括契約については、
原 則 とし て 西 部医 療 センターと東部医療センターの半年単位の購入数量の
見込みを 立て、 名古屋 市病院局が、46∼48者の卸業者に対して電子メール
74
で一斉に見積り提出依頼を行う。
【図表 3- 2- 5】
一括契約の診療材料購入フロー
(名古屋市病 院局へのヒアリングをもとに監査人作成 )
〔発見事項〕
平 成 26 年度 上半期 に ついて診療材料初回見積り提出者数を調査したとこ
ろ 、【 図 表 3- 2- 6 】 の 結果となった。見積 り依頼先は46者ある に もか か
わ ら ず 、 診 療 材 料 1 品 目に 対 し 、 見 積 り提 示 が 1 者 に とど ま っ て い る 例
が大半であり、 1者と 2者で全体の 98.3%を占めている。
【図表 3− 2− 6】平成26年度上半期
初回見積提出 者数
1者
品目数
5,294
2者
診療材料初回見積書提出者数
3者
978
92
(出典:名古 屋市病院局提供資料)
75
4者
14
合計
6,378
〔意見〕診療材料購入にかかる競争性の促進について【共通】
診 療 材料 購 入 の実 態 が、価格競争を経た契約とは言い難く、見積り競 争
が 形 がい 化 し てい る とも考えられる状況である。名古屋市病院局では見積
り 提 出者 数 を 増加 さ せる努力はしているが、業界特有の商習慣が阻害して
い る 可能 性 が ある 。 現在、見積り競争に参加していない業者の参入を促す
た め 、例 え ば 、ホ ー ムページ上で参加要件や必要な手続を丁寧に説明し、
見 積 り競 争 へ の参 加 を要請する等、より積極的なアクションを取ることが
望まれる。
イ
医薬品及び診療材料購入に係るスケールメリット活用
名 古 屋市 病 院 局で は 、西部医療センター、東部医療センター合わせて 、
平 成 26 年 度 に 医 薬 品 36 億 9,748 万 円 、 診 療 材 料28 億 7,053 万 円 、 医 療 消
耗備品 5,676万円の材料を購入している。基本的に、材料品目別に購入数
量 が 多 い ほ ど 、 有 利 な 単 価 で 購 入 す る こ と が 可 能 で あ る 。 米 国 で は GPO
( Group Purcha sing Organization ) と い う 組 織 が 普 及 し て お り 、 約
90%以上の病院が参加しているといわれる。近年、日本国内にも日本版
GPO に 相 当 す る 組 織 ( 以 下 「 共 同 購入 グ ル ー プ 」 と いう 。) が 設立 、 運 営
されてい る。当 該組織 の中には一般社団法人化して会員数を 100病院以上
に 伸 ばし て い る例 が あり、会員には公立病院、公的病院も含まれている。
名 古 屋市 の 場 合、 医 学部附属病院を含む公立大学法人名古屋市立大学が名
古 屋 市か ら 独 立し て 法人化した経緯があり、組織は異なるものの現在も病
院間の情報交流は可能な関係性が保たれている。
〔発見事項〕
現 在 、名 古 屋 市病 院 局は、西部医療センター、東部医療センターを管 轄
し て おり 、 名 古屋 市 立大学医学部附属病院との間で価格情報の共有や、見
積 り 合わ せ 説 明会 に 参加し合うなど交流関係が存在するものの、同病院と
の 共 同購 入 は 行っ て いない。また、共同購入グループ等には加盟していな
い。
76
〔意見〕スケールメリットを活用した材料購入について【共通】
西 部 医療 セ ン ター 、 東部医療センター、及び名古屋市病院局が一体とな
っ て 診療 材 料 の価 格 交渉を実施しているが、この手法のままではコスト削
減 に 限界 が あ る。 公 立病院や公的病院が、共同購入グループに加入し、材
料 費 削減 効 果 を実 現 している事例もあるため、名古屋市病院局は、スケー
ル メ リッ ト を 最大 限 に活用し、名古屋市立大学医学部附属病院と医薬品及
び 診 療材 料 の 共同 購 入や、第三者団体が主催する共同購入グループ等への
加盟を視野に入れた検討が望まれる。
ウ
診療材料品目数の抑制
病 院 では 、 診 療科 固 有の診療材料が存在する一方、診療科横断的に使 用
さ れ る診 療 材 料も 少 なからず存在する。診療材料品目別に単価が設定され
る が 、購 入 量 がま と まれば、単価の抑制が期待できる。また、医療材料の
標準化が進めば、各医療現場での手技の標準化が進むとも考えられる。
西 部 医療 セ ン ター に は「診療材料審査委員会」が設置され、新規採用 材
料 品 目の 採 用 に関 す る意思決定を行っている。診療材料審査委員会の資料
等 に よる と 、 1 年間 発注がない品目採用を中止する等、品目数の抑制努 力
を 行 っ て い る 。 具 体 的 に は 、「 診 療 材 料 審 査 委 員 会 」 の 小 委 員 会 で あ る
「 SPD委員会」を中 心に、平成26年度に納入実績なしの品目と、最終納品
が平成2 3年、 平成2 4年 の品目を採用中止とするなど、採用診療材料品目数
削 減 に取 り 組 んだ 結 果、物流システム上の採用品目数が大幅に削減されて
い る 。一 方 、 新規 採 用は、同等品有りの材料について一増一減がほぼ実行
さ れ てい る が、 同等 品無しの材料を含めると、一増一減は約 6割弱程度の
実 現 とな っ て いる 。 結論として、既存採用品目総数については、特段の問
題は見受けられなかった。
エ
医薬品の購入
新規医薬品の採否については、西部医療センター、東部医療センター
各 々 の 施 設 に て 、「 薬 事 委員 会 」 に 諮 り 、 意 思 決 定 を 行 っ て い る 。 医 薬 品
購 入 の 2 病院一 括契 約については、原則として西部医療センターと東部医
77
療 セ ンタ ー の 半年 単 位の購入数量の見込みを立て、東部医療センターの薬
剤科及び 名古屋 市病院 局が、12∼13者の卸業者に対して電子メールにて一
斉 に 見積 り 提出 依頼 を行っている。平成26年度について医薬品初回見積 り
提出者数を調査したところ、【図表 3- 2- 8】のような結果であった。
医薬品 1品目に対し、見積り提示が 5者あった例が最多であった。次い
で 、 4者、 6者で あっ た例が多い。医薬品については、価格の競争性につ い
て特段の問題は見受けられなかった。
【図表 3- 2- 7】一 括契約の医薬品購入フロー
プロセス
西
部
半期に一度の契約依頼
名古屋市病院局
A
B
C
東部(薬剤科)
D
E
F
……
名古屋市病院局
西
部
見積依頼・受領
最安値で落札
12者
契約
納品/検収
東
部
(名古屋市病 院局へのヒアリングをもとに監査人作成 )
78
【図表 3- 2- 8】平 成26年度
初
回
提出者数
上半期
品目数
下半期
品目数
医薬品初回見積書提出者数
1者
2者
3者
4者
5者
6者
7者以上
合計
49
1 00
161
5 26
706
460
60
2,0 62
90
70
156
5 16
678
489
86
2,0 85
(出典:名古 屋市病院局提供資料)
オ
試薬の購入
試 薬 は、 医 薬 品や 診 療材料の領域と比較して、流通業者数が少ない。多
く の 医療 機 関 で試 薬 の購入に適切な競争性を担保することが容易ではない
といわれている。
【図表 3- 2- 9】一 括購入の試薬購入フロー
プロセス
東
部
西
部
年に1度の契約依頼
見積依頼・受領
最安値で落札
発注
名古屋市病院局
A
B
C
D
E
F
G
7者
契約
名古屋市病院局
納品/検収
西
部
東
部
(名古屋市病 院局へのヒアリングをもとに監査人作成 )
79
〔発見事項〕
新 規 試薬 の 採 否に つ いては、西部医療センター、東部医療センター各々
の 施 設 に お い て 、「 新 規 伺い 書 」 に よ り 意 思 決 定 を 行 っ て い る 。 試 薬 の 購
入 の 2病 院一括 契約 については、原則として、西部医療センターと東部医
療 セ ンタ ー に於 ける 1年単位の購入数量の見込みを立て、名古屋市病院 局
が 7の卸 業者に対 し て電子メールにて一斉に見積り提出依頼を行っている。
契 約 は 、 名 古 屋 市 病 院 局 が 締 結 し て い る 。 平 成 26 年 度 は 、 約 1,000 品 目
の見積り依頼を実施し たところ、約 650品目は 1者からのみ見積りが提示
された。
〔意見〕試薬購入にかかる競争性の促進について【共通】
平成26年度は、試薬 1品目に対し、見積り提示が 1者にとどまっている
例 が 大半 で あ り、 価 格競争を経た契約とは言い難い。希少な検査に使用す
る 試 薬等 メ ー カー が 限定的な場合もあるものの、現在、見積り競争に参加
し て いな い 業 者の 参 入を促すため、例えば、ホームページ上で参加要件や
必 要 な手 続 を 丁寧 に 説明し、見積り競争への参加を要請する等、より積極
的なアクションを取ることが望まれる。
(6)委託事務
ア
ネットワークシステム保守
西 部 医療セ ンタ ー における平成26年度の病院情報システムの保守委託業
務 は 、 18 件 の 契 約 を 合 計 1 億 9,041 万 円 に て 以 下 の 理 由 に 基 づ き 随 意 契
約 を 締結 し て いる 。 この中には、部門ネットワークシステム保守が含まれ
て い るが 、 一 般に 部 門ネットワークシステム保守は、メーカー等以外の業
者 で あっ て も 業務 実 施が可能である。ただし、医療業界では現場に情報シ
ス テ ムが 導 入 され て から比較的日が浅いため、製造業界に代表される他業
界 の よう に 情 報シ ス テム等に精通した職員が育っていない事情を考慮すべ
き で ある と す る議 論 もある。また、ソフトウェアとネットワークシステム
を 同 一の 会 社 、若 し くは、関連会社に発注することにより、不具合時に迅
80
速な対応が期待できるといった考え方もある。
〔発見事項〕
西 部 医療 セ ン ター は 、部門ネットワークシステム保守業務を以下の理 由
により契約審査会に諮り随意契約(以下「保守業務随意契約理由」とい
う。)している。
文書名「契約 審査会に付議する案件」による随意契約 理由
地方公営企業 法施行令第21条の14第 1項 第 2号及び地方公共団 体の物 品
等又は特定役 務の調達手続の特例を定める政令第10 条第 1項第 1号。
「病院情報シ ステム(各部門システムを含む。)は、本市の発注仕様内容
を実現するた めに、基本プログラムに関連するシステ ム、機器等を有機
的に統合させ て構築されたものであり、当該システム の保守に必要なシ
ステム全体に 関する知識やプログラム修正等の技術・ 能力等を有し、緊
急時にも迅速 ・適格に対応できる業者が限定されてい るため。」
〔 意 見〕 病 院 情報 シ ステムの部門ネットワークシステム保守委託業務の随
意契約について【西部】
西 部 医療 セ ンタ ーの 平成26年度病院情報システムの保守委託業務のうち 、
ネ ッ トワ ー ク 保守 業 務は、保守業務随意契約理由に該当しないと考えられ
る 。 医療 業 界 では 、 情報システム導入の黎明期を通過したばかりの地点で
あ り 、職 員 の 経験 と 知識面や商習慣から切り分けが行われない実態もある
が 、 ネッ ト ワ ーク 保 守業務を本体の情報システムから切り離す事例は一般
的 に 浸透 し て おり 、 医療業界においても将来的な方向性と考えられる。病
院 情 報シ ス テ ムの 保 守委託業務のうち、ネットワーク保守業務は競争が可
能 な 領域 で あ り、 現 契約のあり方を見直し、競争可能な領域を切り分ける
こ と が必 要 で ある 。 見直しを行い、競争環境下にて費用を合理化すること
が望まれる。
81
イ
代理店との随意契約について
平 成 26 年度 の病院 情 報システムに関連する各種部門システムの保守委託
業 務 は、 前 記 の保 守 業務随意契約理由に基づき西部医療センターと陽子線
治療センターを合わせ て 1億 262万円で随意契約を締結している。各種部
門 シ ステ ム の 保守 委 託業務のうち、大半はメーカーでなく、代理店と随意
契約を締結している。(注)
(注)代理店と随意契約を締結しているシステム
周 産 期 部 門 シ ス テ ム、 検査部 門シ ステム 、生 理検査 部門 システ ム、手
術 ・ ICU 部門 シ ス テム、内視鏡情報管理システム、眼科部門システム 、
放射線医用画像情報システム
〔発見事項〕
西 部 医療 セ ンタ ーは 、 7つの部門システム保守業務を代理店と随意契 約
している。
〔 指 摘〕 病 院 情報 シ ステムの部門システム保守委託業務の随意契約につい
て【西部】
各 種 部門 シ ス テム の うち大半の相手先との随意契約理由は、前出の保守
業 務 随 意 契 約 理 由 の と お り で あ る 。随 意 契 約 理 由 中 、「 当 該 シ ス テ ム の 保
守 に 必要 な シ ステ ム 全体に関する知識やプログラム修正等の技術・能力等
を 有 し、 緊 急 時に も 迅速・適格に対応できる業者」は、代理店との契約を
説明できているとは言い難い。
各 種 部門 シ ス テム の 保守委託契約先は、特約店証明書、サービス代行店
証 明 書、 販 売 店証 明 書等を提出している代理店であるが、随意契約理由に
整合していない。
各 種 部門 シ ス テム の 保守委託契約に関して、随意契約理由に整合する業
者との契約を締結するか、随意契約理由を変更すべきである。
ウ
エレベータ保守委託契約
西部医療センターは平成23年 5月に新築され、18基のエレベータ(乗用、
人 荷 用、 非 常 用、 寝 台用、小荷物専用昇降機)が設置されており、一括し
82
て 保 守契 約 を 締結 し ている。東部医療センターは、過去から増改築等が繰
り 返 し行 わ れ てい るため、経過年数の異なるエレベータが設置されている 。
エ レ ベー タ 保 守は 、 メーカーに限らず第三者もサービス提供が可能な 業
務 で ある 。 ま た、 一 般に修繕費に対する保険料が含まれると言われるフル
メ ン テナ ン ス の仕 様 は、老朽化した設備であれば保守業務の仕様の選択に
一 定 の根 拠 が 見出 せ るが、経過年数の短い設備では合理性に欠けると考え
られる。さらに、エレ ベータ保守は昨今、 365日24時間リモート保守で監
視可能と なって おり、 現場での点検は毎月でなく 3ヶ月に 1回が主流化し
ている。
〔発見事項〕
名 古 屋市 病 院 局で は 、エレベータ保守契約はエレベータメーカーと随 意
契 約 を締 結 し てお り 、メーカー以外のサービス業者の見積りを入手してい
な い 。西 部 医 療セ ン ターのエレベータ保守委託業務仕様書によると、フル
メ ン テナ ン ス 契約 を 締結しており、リモート保守を採用し、かつ、現場で
の点検を毎月行っている。
〔 意 見〕 エ レ ベー タ 保守委託契約にかかる競争性の促進と点検仕様の見直
しについて【共通】
名 古 屋市 で エ レベ ー タ保守はメーカーとの随意契約が容認されている と
し て も、 エ レ ベー タ 保守は、メーカー以外のサービス業者が業務提供可能
な 領 域で あ り 、必 ず しもメーカーと契約する必然性はないと考えられる。
競 争 性担 保 目 的で 、 メーカー以外のサービス業者を交えた競争入札を実行
することが望まれる。
西 部 医療 セ ン ター 及 び東部医療センターの新救急・外来棟は、築年数 が
比 較 的 浅 い の で 、 保 守 契 約 内 容 も フ ル メ ン テ ナ ン ス に 限 ら ず 、 POG 契 約
(注 1)やスポット契 約(注 2)の可能性も含めて検討することが望まれ
る 。 東部 医 療 セン タ ーの、築年数が一定以上経過している棟に設置されて
い る エレ ベ ー タ保 守 に関しても、過去の故障履歴やワイヤー等の大型部品
交 換 実施 か ら の経 過 年数等にかんがみ、エレベータごとに適した保守のあ
83
り方を選択することが 望まれる。 365日24時間監視型のリモートメンテナ
ンスに加 入して いるエ レベータであれば、現場点検は 3ヶ月に 1回が主流
化 し てお り 、 現場 点 検を毎月実施していることに対して見直しの余地があ
ると考えられる。
(注 1) PO G契約と は、パーツ、オイル、グリースの交換のみを含めた
エ レ ベー タ 保 守契 約の 仕様を指す。大型部品 の交換等は含まれない の
が特徴である。
( 注 2 ) スポッ ト 契約とは、定期点検等の保守契約を含めず、故障時 に
修理費と交換部品費を支払うエレベータ保守契約の仕様を指す。
エ
放射線部門収支及びモダリティ収支
西 部 医 療 セ ン タ ー の 放 射 線 部 門 に は 、 CT 装 置 、 MRI 装 置 、 IVR/CT 装 置 、
一般撮影装置、透視、 検査、パノラマ撮影、乳房撮影装置、 SPECT装置、
PET/CT装置、回 診撮影装置、骨密度測定装置、リニアックが設置されてい
る 。 放 射 線 部 門 の モ ダ リ テ ィ は 、 CT 装置 、 MRI 装 置 、 PET/CT 装 置 等 の 上
位機種で は、取 得金額 が 1台当たり 1億円を超えるものも少なくないうえ
に、年間保守料金が 2 ,000万円を超過し、また、病院情報システムと連携
する放射 線部門 システ ムとの接続費用がモダリティ装置 1台当たり50万円
程 度 は発 生 す る等 、 病院の設備投資の中でも金額的重要性が高いことで知
ら れ る。 一 方 で、 西 部医療センターは、病院機能の中心に先進的ながん治
療 を 掲げ て お り、 診 療活動に欠かせない投資という側面が否めない事情が
あ る 。こ の よ うな 背 景の下、モダリティ別の設備投資に対する回収状況を
数 値 で把 握 す るこ と は、病院経営状況を把握し、次なる投資を計画するた
め に 重要 で ある 。平 成26年度放射線部門収支報告書によると、モダリテ ィ
別 収 支 に は ば ら つ き が あ る も の の 、 放 射 線 部 門 全 体 の 収 支 は 6 億 4,578
万円と、当初計画値である 3億 391万円を大幅に上回っている。
84
【図表 3- 2-10】モ ダリティ別当初計画と収支実績(平成23∼26年度)
平成23∼2 6年度
(累計)
当初計画
収支実績
モダリティ
CT装置、M RI装置、一般撮影装置、透 視検査、
パノラマ撮影 、回診撮影装置
PET/CT 装置、骨密度測定
リニアック装 置、乳房撮影装置、IVR/CT 装置
SPECT装 置
(出典:西部 医療センター提供資料)
85
黒字
黒字
黒字
赤字
赤字
赤字
黒字
赤字
【図表 3- 2-11】IVR /CT装置の当初計画と収支実績
(単位 千円)
30,000
20,000
10,000
0
収支実績
当初計画
-10,000
-20,000
-30,000
-40,000
平成23年度
24年度
25年度
26年度
27年度
28年度
(出典:西部 医療センター提供資料)
【図表 3- 2-12】 SP ECT装置の当初計画と収支実績
(単位 千円)
2,000
0
-2,000
-4,000
収支実績
-6,000
当初計画
-8,000
-10,000
-12,000
平成23年度
24年度
25年度
26年度
(出典:西部 医療センター提供資料)
86
27年度
28年度
〔発見事項①〕
放 射 線画 像 診 断、 治 療装置等のモダリティ別の収支計画では、リニア ッ
ク 装 置 、 乳 房 撮 影 装 置 、 IVR/CT 装 置 、 SPECT 装 置の 4 機 種 は 、 当 初 計 画
期間である平成23年度 ∼28年度の 6年間を通して連続して収支をマイナス
と計画している。
実 績 で は 、 リ ニ ア ッ ク 装 置 、 乳 房 撮 影 装 置 、 IVR/CT の 3 機 種 は 、 当 初
計画に反して平成26年度までの収支実績の累計はプラスとなったが、
SPECT装置は、収支はマイナスとなっている。
〔意見〕当初計画からマイナス収支のモダリティについて【西部】
モ ダ リテ ィ 別 の収 支 計画を策定し、実績値を継続的に対比し報告して い
る 点 につ い ては 評価 できる。しかし、そもそも導入時から少なくとも 6年
間 は 連続 し て 収支 が マイナスとされる医療機器を病院として整備すること
の 必 要性 や 、 マイ ナ ス幅を抑えるための方針を明確にした文書等は確認す
る こ とが で き なか っ た。当初計画からマイナス収支のモダリティは、計画
時に整備の趣旨や収支に関する考え方を文書化することが望まれる。
また、 SPECT装置の収支計算には放射性同位元素等の材料費が含まれて
おらず、モダリティの収支が正確とはいえない報告も確認された。
当 初 計画 は マ イナ ス 収支であり、実績が黒字となっているモダリティ に
つ い ても 同 様 に計 画 時に整備の趣旨や収支に関する考え方を文書化するこ
とが望まれる。
〔発見事項②〕
東 部 医療 セ ン ター は 、放射線部門収支及びモダリティ別収支を作成し て
いない。
〔意見〕放射線部門及びモダリティ別収支の作成について【東部】
東 部 医療 セ ン ター は 、放射線部門収支及びモダリティ別収支を作成し て
おらず、西部医療センターと同様に作成することが望まれる。
放 射 線画 像 診 断、 治 療装置等のモダリティは、導入時に採算計算を通 し
87
て 収 支計 画 と する こ とが必要である。また、特にモダリティ別の収支がマ
イ ナ スで あ っ ても 導 入する場合には、投資判断が十分に行われた結果、病
院 と して の 必 要性 が あるがゆえに導入したという理由を明文化し、保管す
ることが後々において投資判断を検証するうえで有用となる。
ま た 、モ ダ リ ティ 別 の収支計算において、発生することが明らかに予 定
される材料費は含めると良い。
(7)労務管理
ア
労働時間管理について
医 療 従事 者 が 質の 高 い医療サービスを提供していくためには、適切な 労
務 管 理を 実 施 する こ とが必要であるが、様々な職種や勤務体制、雇用形態
が 採 られ て い るこ と から労働時間の管理は複雑となっている。しかし、厚
生 労 働 省 に お い て も 、「 労働 時 間 の 適 正 な 把 握 の た め に 使 用 者 が 講 ず べき
措 置 に関 す る 基準 」 を定めているように、賃金の未払や過重な長時間労働
を 防 ぐた め に 、医 療 機関においても、労働時間の適正な把握が求められて
いる。
西 部 医療 セ ン ター 及 び東部医療センターの勤怠管理は、正規職員につ い
て は 、名 古 屋 市病 院 局で一括管理する勤怠管理システムを導入しており、
出 勤 管理 に 加 え、 職 員各自が超過勤務申請を行うことにより、労働時間の
管理を実施している。
一 方 で、 非 常 勤職 員 (研修医、シニアレジデントを除く)の勤怠管理 は、
各 病 院に お い て出 勤補助簿や超過勤務申請等による紙運用がなされている 。
非 常 勤職 員 の 労働 時 間管理については、西部医療センターでは、勤務時間
記 録 簿が 使 用 され て おらず、各時刻は記録として残っていない。なお、東
部 医 療セ ン タ ーで は 、当該記録簿により、勤務時間の開始時間及び終了時
間の記録をすることにより、労働時間の記録を実施している。
〔発見事項〕
西 部 医療 セ ン ター の 非常勤職員について、労働時間は就業規則等で定 め
ら れ てい る も のの 、労働日の始業・終業時刻が記録として残されておらず 、
88
適 切 に労 働 時 間が 管 理されているとは言い難い。超過勤務手当が支給され
る 非 常勤 職 員 は、 超 過勤務申請を行うことにより、所定労働時間外の勤務
時 間 も把 握 は 可能 で あるが、超過勤務手当が支給されない嘱託医師等の日
額 で 報酬 が 支 払わ れ ている非常勤職員は、労働時間の把握ができない状況
にある。
ま た 、西 部 医療 セン ターの嘱託医師就業規程において、 6時間超の手術
業務(麻 酔業務 を除く )は、病院局長が定める業務として、定額の 1.5倍
相 当 額を 支 給 する と 定めており、勤務時間が嘱託医師の報酬にかかる基礎
としても使用されている。
〔意見〕非常勤職員の労働時間管理について【西部】
西 部 医療 セ ン ター の 非常勤職員について、始業・終業時刻の確認及び 記
録 を 実施 す る こと が 望まれる。中でも、嘱託医師においては、報酬の加算
に 労 働時 間 ( 手術 時 間)を基礎としているため、適正な労働時間の管理が
必要である。
イ
職員の資格管理について
医 師 をは じ め 、医 療 機関で働く多くの職員は、業務独占資格とされた 国
家 資 格等 を 有 した 資 格者として採用されている。また、これらの国家資格
等 に 加え 、 各 職種 の 中での専門性に関して、各種団体により各種専門・認
定 資 格が 設 け られ て いる。一般的に、医療機関においては、国家資格に加
え 、 各種 認 定 資格 に ついても医師等の医療従事者及び医療機関の専門性を
証 す るも の と して 、 宣伝材料や、医師等の報酬の加算手当の要件として活
用されている。
西 部 医療 セ ン ター 及 び東部医療センターにおいては、ホームページの 医
師 紹 介ペ ー ジ にお い て指導医・認定医・専門医について掲載し、また、看
護 部 の紹 介 ペ ージ に おいて認定看護師について専門性の情報提供をしてい
る 。 厚生 労 働 省で は ホームページの内容の適切なあり方に関して、医療機
関 の ホー ム ペ ージ の 内容の適切なあり方に関する指針(医療機関ホームペ
ー ジ ガイ ド ラ イン ) を示し、ホームページに掲載されている内容を国民・
89
患 者 が適 切 に 理解 し 、治療等を選択できるよう、客観的で正確な情報提供
に努めるべきであるとしている。
ま た 、専 門 医 資格 の 活用として、西部医療センターの嘱託医師におい て
は 、 医師 免 許 取得 年 数とともに専門医資格を有することが日額報酬の決定
要件とされている。
〔発見事項〕
両 病 院の 専 門 医の 資 格管理方法について確認したところ、認定資格の 資
格管理が厳密に実施されていない状況が見受けられた。
西 部 医療 セ ン ター に おいては、採用時及び専門医の資格申請時には資 格
認 定 証の 確 認 を実 施 していた。しかし、専門医資格ごとに該当となる医師
名 ( 医師 数 ) を列 挙 した表形式で把握しているにとどまり、各医師の専門
医 の 認定 期 間 や認 定 更新時の確認は実施されていなかった。また、指導医
及 び 認定 医 の 資格 に ついては、ホームページ上で情報提供しているが、認
定証等の管理は実施されていなかった。
東 部 医療 セ ンタ ーに おいても、年に 1度、院外広報誌を作成する際に は、
経 歴 に変 わ り はな い か確認を行っているが、認定証等の管理等は実施され
ていなかった。
〔意見〕専門医の資格管理について【共通】
医 師 等の 専 門 性に つ いて、ホームページ等で積極的に情報提供してい る
こ と は、 患 者 や地 域 住民による医療機関の選択を支援する取り組みとして
有 効 であ る と 考え ら れる。また、専門医資格の有無による嘱託医師の報酬
決 定 方法 も 客 観的 な 評価方法となっている点で評価できる。しかし、専門
医 等 の資 格 を 活用 す る医療機関においては、正確な情報を把握することが
求 め られ る 。 専門 医 の認定期間の終了時には再度資格認定証等の確認を実
施 し 、認 定 医 、指 導 医の認定証管理を実施すること等により、一定のルー
ルを定めて専門医等の認定資格の管理を実施することが望まれる。
90
ウ
職員満足度調査について
職 員 満足 度 の 向上 は 、医療機関にとって患者満足度の向上と共に重要で
あ る 。職 員 が 満足 す ることによって、人的サービスの質の改善が進むと患
者 満 足の 向 上 にも 寄 与する。また、医師、看護師不足に代表されるように
優 秀 な有 資 格 者の 獲 得競争が激化している中では、満足度向上による職員
の確保は必要となる。
推 進 プラ ン に おけ る 達成感の得られる職場環境の取り組みとして、平成
26年 度 から 各病院 において職員満足度調査を実施している。職員満足度 調
査 の 目的 は 、 職員 の 満足度、問題意識を把握することにより、組織運営や
職 場 環境 整 備 に反 映 させることで、満足度を高め職員のモチベーションの
維持・向上を図ることとしている。
平 成 26 年度 の調査 で は、調査用紙は、他病院の質問項目を参考として名
古 屋 市病 院 局 で作 成 し、西部医療センター、東部医療センター、管理部の
常勤職員 及び非 常勤職 員を対象としている。調査時期は、 7月∼10月の間
で 2週間 程度の 期間 を設定し、各所属で配布、回収を行っている。全体の
回収率は、62.9%であった。
調 査 結果 に つ いて は 、病院ごとに単純集計して、病院比較結果を各病院
へ フ ィ ー ド バ ッ ク し て い る 。「 自 分 の 仕 事 の 成 果 が 正 当 に 評 価 さ れ て い る
か 」、「過 度 に 精 神的 不安を感じることなく仕事ができているか」等のソフ
ト 的 な支 援 体 制の 質 問項目の点数が低い結果となっている。一方で、これ
ま で 取り 組 ん でき た 処遇の向上については、一定程度達成できていると分
析されている。
〔発見事項〕
調 査 結果 か ら 得ら れ た改善策の検討については、名古屋市病院局より当
調 査 結果 に つ いて 各 病院へフィードバックしているが、各病院において調
査 結 果を 踏 ま えて 、 どのように改善していくかの検討ができていない状況
に あ る。 ま た 、分 析 については病院ごとの単純集計のみ実施し、職種別等
の 層 別の 分 析 は実 施 されず、全体の傾向の把握にとどまっている。職員満
足 度 調査 の 実 施後 、 具体的な改善対策の検討及び実施につなげることがで
91
きていなかった。
〔意見〕職員満足度調査結果の活用について【共通】
一 般 的に 、 様 々な 組 織運営における取り組みが満足度の結果として表 さ
れ る ため 、 課 題は 病 院ごと、組織ごとに異なることが多い。そのため、調
査 結 果を 踏 ま え、 管 理者層が真剣に考えることが重要であり、組織運営の
中での課題解決へつなげていくことが望まれる。
ま た 、分 析 に おい て は医療機関には様々な職種や雇用形態の方が働い て
い る ため 、 層 別の 分 析を実施することにより、現状をより詳細に把握し改
善施策へつなげられることが望まれる。
(8)安全管理
ア
インシデント、アクシデントと医療安全管理体制について
西部医 療セ ンタ ーの 「医療安全マニュアル」( 3 医療安全管理に関する
基 本 的 な 考 え 方 ( 6 )) に お い て 、各 部 門 ( 診 療 部 門、 看 護 部 門 、 薬 剤 部
門等)で発生したインシデントや医療事故(以下「アクシデント」とい
う 。) に つ い て は 必 ず 報 告し 集 積 ・ 分 析 ・ 対 策 を 講 じ る 一 連 の シ ス テ ム を
構 築 し、 医 療 事故 の 再発防止のため、広く組織に周知を図り、情報を共有
す る と定 め て いる 。 そして、同マニュアルにおいて、インシデント報告制
度 及 びア ク シ デン ト 報告制度、さらに名古屋市病院局及び名古屋市厚生院
医 療 事故 等 公 表基 準 が設けられており、それぞれのインシデント、アクシ
デントの定義は以下の【図表 3- 2-13】のとおりである。
92
【図表 3- 2-13】医療安全マニュアルにおけるインシデント・アクシデントの
定義
用語の定義
インシデント
日常の医療現 場で「ヒヤリ」
とした、「ハット」した経験
等、結果的に アクシデントやト
ラブルに至ら なかったニアミス
などをいう
医療事故(ア クシデント)
過失の有無 にかかわらず、医
療の全過程に おいて発生する人
身事故一切を 包括していうもの
であり、患者 ばかりでなく、医
療従事者が被 害者である場合や
医療行為とは 直接関係のない転
倒・転落等も 含む
程度
医療行為が患 者に実施される前に発見された場合
医療行為が患 者に実施されたが、身体への影響を
及ぼすに至ら なかった場合
(医療行為が 患者に実施され、身体への影響を及
ぼすに至らな かったが、経過観察を要した場合も
含む。)
【グレード 0】
医療行為が患 者に実施されたが、身体への影響は
小さく、処置 は不要であった場合
【グレード 1】
医療行為が患 者に実施され、身体への影響が中等
度であり、処 置が必要となった場合
【グレード 2】
医療行為が患 者に実施され、身体への影響は大き
く、患者を死 に至らしめる可能性がある、又は重
大もしくは不 可逆的障害を与えもしくは与える可
能性がある場 合
【グレード 3】
医療行為が患 者に実施され、患者を死に至らしめ
た場合
(出典:名古 屋市病院局及び名古屋市厚生院医療事故 等公表基準)
ま た 、上 記 の 他に も インシデント・アクシデントの分類には公益財団 法
人 日 本 医 療 機 能 評 価 機 構 ( 以 下 「 医療 機 能 評 価 機 構 」 と い う 。) が 実 施す
る 医 療事 故 情 報収 集 等事業における分類があり、西部医療センターと東部
医 療 セン タ ー のイ ン シデント・アクシデント報告システムでは、同分類に
基づく入力ができる。その分類は、以下の【図表 3- 2-14】、【図表 32-15】のとおりである。
93
【図表 3- 2-14】西 部医療センターのインシデント・アクシデント報告シ
ステムの分類
区分
インシデント
医療事故
(アクシデン ト)
程度
【事象レベル 0.01】
仮に実施され ていても、患者への影響は小さかっ
た(処置不要 )と考えられる
【事象レベル 0.02】
仮に実施され ていた場合、患者への影響は中程度
(処置が必要 )と考えられる
【事象レベル 0.03】
仮に実施され ていた場合、身体への影響は大きい
(生命に影響 しうる)と考えられる
【事象レベル 1】
実施されたが 、患者への実害はなかった(何らか
の影響を与え た可能性は否定できない)
【事象レベル 2】
処置や治療は 行わなかった(患者観察の強化、バ
イタルサイン (注)の軽度変化、安全確認のため
の検査などの 必要性は生じた)
【事象レベル 3a】
簡単な処置や 治療を要した(消毒、湿布、皮膚の
縫合、鎮痛剤 の投与など)
【事象レベル 3b】
濃厚な処置や 治療を要した(バイタルサインの高
度変化、人工 呼吸器の装着、手術、入院日数の延
長、外来患者 の入院、骨折など)
【事象レベル 4a】
永続的な障害 や後遺症が残ったが、有意な機能障
害や美容上の 問題は伴わない
【事象レベル 4b】
永続的な障害 や後遺症が残り、有意な機能障害や
美容上の問題 を伴う
【事象レベル 5】
死亡(原疾患 の自然経過によるものを除く)
(出典:西部 医療センター「インシデントレポートシ ステム」より抜粋)
(注)バイタ ルサインとは、生きている状態を示す指 標。体温・呼吸・脈拍・
血圧等。生命 徴候。
94
【図表 3- 2-15】東 部医療センターのインシデント・アクシデント報告シ
ステムの分類
区分
インシデント
医療事故
(アクシデン ト)
程度
【事象レベル 0】
エラーや医薬 品・医療用具の不具合が見られたが
患者には実施 されなかった
【事象レベル 1】
患者への実害 はなかった(何らかの影響を与えた
可能性は否定 できない)
(障害の継続 性:なし、程度:−)
【事象レベル 2】
処置や治療は 行わなかった(患者観察の強化、バ
イタルサイン の軽度変化、安全確認のための検査
などの必要性 は生じた)
(障害の継続 性:一過性、程度:軽度)
【事象レベル 3a】
簡単な処置や 治療を要した(消毒、湿布、皮膚の
縫合、鎮痛剤 の投与など)
(障害の継続 性:一過性、程度:中等度)
【事象レベル 3b】
濃厚な処置や 治療を要した(バイタルサインの高
度変化、人工 呼吸器の装着、手術、入院日数の延
長、外来患者 の入院、骨折など)
(障害の継続 性:一過性、程度:高度)
【事象レベル 4a】
永続的な障害 や後遺症が残ったが、有意な機能障
害や美容上の 問題は伴わない
(障害の継続 性:永続的、程度:軽度∼中等度)
【事象レベル 4b】
永続的な障害 や後遺症が残り、有意な機能障害や
美容上の問題 を伴う
(障害の継続 性:永続的、程度:中等度∼高度)
【事象レベル 5】
死亡(原疾患 の自然経過によるものを除く)
(障害の継続 性:死亡、程度:−)
【その他】
医療に関する 患者からの苦情、施設上の問題、医
療機器の不具 合・破損、麻薬・劇薬・毒薬の紛失
(出典:東部 医療センター医療事故の影響レベル)
前 記 の名 古 屋 市病 院 局及び名古屋市厚生院医療事故等公表基準におい て、
イ ン シデ ン ト 及び アクシデントの各種統計的資料を公表するとされており 、
「 市 立病 院 医 療事 故等行為別分類統計」として病院ごとに公表されている 。
95
各 病 院の 公 開 され て いるインシデント、アクシデント報告件数の推移は以
下の【図表 3- 2-16】【図表 3- 2-17】のとおりである。
イ ン シデ ン ト の報 告 件数は、両病院とも年度ごとの推移に顕著な変化 は
な く 、東 部 医療 セン ターの報告件数は西部医療センターの 2倍程度とな っ
て い る。 ま た 、ア クシデントの報告件数は、西部医療センターにおいては 、
顕著な変化はないが、東部医療センターにおいて増加傾向である。
96
【図表 3- 2-16 】インシデント報告件数の推移
(件)
4,000
3,713
3,627
3,573
3,500
3,000
2,500
2,000
1,951
1,700
西部医療
センター
1,706
東部医療
センター
1,500
1,000
500
0
平成24年度
(出典: 名 古屋市
平成25年度
平成26年度
市立病院医療事故等 行為別 分類統計)
【図表 3- 2-17】ア クシデント報告件数の推移
(件)
80
70
70
61
60
51
50
38
40
30
西部医療
センター
32
25
東部医療
センター
20
10
0
平成24年度
(出典: 名 古屋市
平成25年度
平成26年度
市立病院医療事故等 行為別 分類統計)
ま た 、西 部 医 療セ ン ターの医療安全管理体制については、西部医療セ ン
ターの 「医 療安 全マ ニュアル」( 5 安全管理の組織体制)において、統括
安 全 管理 者 ( 病院 長 )の下に組織横断的に病院内の安全管理業務を担う医
療 安 全管 理 室 を設 置 し、審議機関として医療事故対策委員会、周知徹底機
97
関 と して リ ス クマ ネ ージャー会を設置している。そして、各部署にリスク
マ ネ ージ ャ ー を配 置 し、事故防止及び安全対策に関する事項の各職員への
周知徹底等を図っている。
〔発見事項〕
医療機能評価機構の収集等事業による分類においては、ヒヤリハット
( イ ンシ デ ント )は 、事象レベル3aの「簡単な処置や治療を要した(消 毒、
湿 布 、 皮 膚 の 縫 合 、 鎮 痛 剤 の 投 与 など )」 場 合 ま で を イ ン シ デ ン ト と し、
ア ク シデ ン トの 基準 は、事象レベル3bの「濃厚な処置や治療を要した(バ
イ タ ルサ イ ン の高 度 変化、人工呼吸器の装着、手術、入院日数の延長、外
来 患 者の 入 院 、骨 折など)」場合以上とされている。そのため、「医療行為
が 患 者に 実 施 され たが、身体への影響は小さく、処置は不要であった場合 」
を ア ク シ デ ン ト と し て い る 医 療 安 全マ ニ ュ ア ル (「 名 古 屋 市 病 院 局 及 び名
古 屋 市 厚 生 院 医 療 事 故 等 公 表 基 準 」) の 定 義 と は そ の 範 囲 が 一 致 し て いな
い状況が見受けられた。
〔意見〕インシデント・アクシデントの定義について【共通】
イ ン シデ ン ト ・ア ク シデント報告は、医療事故等の防止及び再発防止 を
図 る とと も に 、患 者 安全に対する組織全体の意識向上を図るため、必ず報
告 し 、集 計 ・ 分析 後 、各種分析結果や事故防止策等について院内周知へつ
なげていく必要がある。
名 古 屋市 病 院 局に お いては、従前より医療事故の公表基準として、市 の
関 係 施設 と 共 通の 定 めである「名古屋市病院局及び名古屋市厚生院医療事
故 等 公表 基 準 」を 使 用してきた。しかし、その後に医療機能評価機構の収
集 等 事業 へ の 報告 等のため、同事業に基づく分類も並行して使用している 。
各 分 類は そ れ ぞれ の 目的のため使用されているものであるが、複数の分類
基 準 を持 つ こ とに よ り同一事案について組織内で異なる認識につながる可
能 性 があ る た め、 関 係施設とも協議のうえ分類の整合性を図ることが望ま
れる。
98
イ
医療安全対策及び院内感染対策の研修参加について
医 療 安全 や 感 染対 策 の知識向上は、医療従事者にとって、安全管理意識
を 醸 成す る た めに 必要であり、医療法等でも研修の実施が求められている 。
ま た 、名 古 屋 市病 院 局においても、推進プランにおける医療事故・院内感
染 防 止の 取 り 組み の評価指標として、医療安全セミナーの参加人数を掲げ 、
取 り 組み を 推 進し て いる。院内感染防止のための院内感染研修会の参加率
を 確 認し た とこ ろ、 平成26年度の西部医療センターの感染対策セミナー の
参加率は以下の【図表 3- 2-18】のとおりであった。
【図表 3- 2-18】西 部医療センターにおける院内感染対策研修会参加率
職
種
護
看
師
医
師
コメディカル
事
務
職
委
託
等
全
体
第 1回参加率
66 .7%
28 .7%
60 .6%
15 .2%
79 .5%
62 .5%
第 2 回参加率
65.7%
14.0%
45.7%
6.2%
54.7%
52.3%
第 3回参加 率
7.9%
5.3%
28.3%
13.3%
―
9.7%
(出典: 西部 医療セ ン ター提供 資料(院 内 感 染対策研 修参加 率 )よ り監査人 加工)
(注)第 3 回の院内感染対策研修会は全 職員を 対象にしておらず、集合 eラー ニ
ングを開催し ていないため参加率が低い。
〔発見事項〕
院 内 感染 対 策 研修 会 は、医療法上でも実施が定められているが、西部医
療 セ ンタ ー の 院内 感 染対策研修会は、医師、事務職の参加率が低い状況が
見受けられた。
〔意見〕院内感染対策研修会の参加率について【西部】
院 内 の感 染 対 策意 識 を更に高めるためには、院内感染対策研修会の参加
率 を 向上 さ せ るた め の取り組みが必要である。対象者を明確にすることや
受講履歴を管理する等、研修会への参加を意識づけることが望まれる。
ウ
患者満足度について
患 者 満足 度 は 、推 進 プランの成果指標にも掲げられており、患者満足度
99
調査を通じて、接遇の向上等の取り組みとして活用されている。
患 者 満足度 調査 は 、従前は直営で実施しており、平成26年度より外部に
委 託 して い る。 患者 満足度の成果指標は、総合的な満足度について、 5段
階 評 価で 最 も高 い評 価を得た割合としている。平成26年度の患者満足度 の
計画値及び実績値は以下の【図表 3- 2-19】のとおりである。
平 成 26 年度 の調査 結 果は、計画値を大きく下回る結果となり、特に外来
患者満足度の成果指標が低くなっていた。
満足度調査及びその結果の活用の取り組みについて、確認を行った。
【図表 3- 2-19 】患者満足度調査に関する成果指標
入院/外来
入院患者満足 度
外来患者満足 度
平成26年度
計画
40%
40%
60%
60%
病院名
西部医療センタ ー
東部医療セン ター
西部医療センタ ー
東部医療セン ター
平成26年度
実績
37.3%
17.6%
18.4%
8.8%
(出典:名古 屋市立病院改革推進プラン、平成26年 度 患者満足度調査の結果)
(注)5段階 評価でも最も高い評価を得た割合
〔発見事項〕
推 進 プラン にお け る患者満足度調査の成果指標は、平成26年度は計画値
と 実 績値 が 大 きく 離 れており、名古屋市病院局では、その主な要因は他病
院 と の比 較 を 可能 と するため委託化したことにより、調査の実施方法及び
成 果 指標 の 設定 方法 の考え方を変更したことと分析している。平成26年 度
の 実 績 を 受 け 、 平 成 27 年 度 及 び 平 成 28 年 度 の 計 画 値 は 、 平 成 27 年 9 月 に
成果指標の算出方法を変更している。
ま た 、調 査 結 果に つ いて、西部医療センターでは名古屋市病院局からフ
ィ ー ドバ ッ ク され た 後、院内で掲示するほか、接遇向上委員会での検討資
料 、 評価 点 が 低い 個別項目に関連する委託会社への指導へとつなげている 。
し か し、 患 者 満足 度 の調査結果を受けて、具体的な患者満足の向上へ向け
た ア クシ ョ ン プラ ンを検討するまでには至っていない状況が見受けられた 。
100
〔意見〕患者満足度調査結果及びその活用について【共通】
調 査 結果 は 接 遇に 関 しては一部活用されているが、病院全体としての 患
者 満 足度 の 向 上を 目 指した取り組みになっているとは言い難い。調査結果
を 分 析し 、 具 体的 な アクションプランを検討する等、改善施策につなげる
こ と が必 要 で ある 。 加えて、調査結果を院内掲示する際には、調査で発見
さ れ た課 題 を 明確 に するとともに、検討した対応策等も併せて掲示するこ
とが望まれる。
(9)情報システム
今 回 の情 報シ ステ ムの監査は、情報システム全般のうち、電子カルテシ ス
テ ム と 医 事 会 計 シ ス テ ム ( 以下 「 電 子 カ ル テ シ ステ ム 等 」 と い う 。) を 対 象
範囲 とし た。 また、 個人情報の保護への関心の高まりを受けて、個人情報等
重要 なデ ータ へのア クセスがどのように管理されているかといった観点にも
留意し、監査を行った。
西 部 医療 セン ター では、電子カルテシステム等について、富士通のシス テ
ム( 電子 カ ル テ シス テ ム はHOPE/EGMAIN-GX 、医事会 計シス テムは HOPE/X- W)
を導 入し てい る。電 子カルテシステムと医事会計システムは連携しており、
電子 カルテ シ ステム 等は、西部医療センターの医療サービス提供にあたっ て、
電子 カル テを はじめ とする医療情報の管理を行い、同センターの運用におい
て重要な役割を果たしている。
監 査 の実 施に あた っては、西部医療センターの電子カルテシステム等を 対
象と して 、資 料の検 討を行うとともに情報管理室を中心にヒアリングを行っ
た。また、必要に応じて東部医療センターに照会を行った。
101
【図 3- 2-20】電子 カルテシステム等機能概要
電子カルテシ ステム
(HOP E/EGMAIN-GX)
・基本機能
患者基本情報
・統合部門ラ イブラリ
会計済情報
医事会計シス テム
・カルテ文書
(HOP E/X-W)
・レセプト電 算
・DPC
・オーダ機能
・看護
依頼・会計・病名・予約
情報等
・クリティカ ルパス
・抗がん剤オ ーダ
・その他
DPC
(参考資料: 西部医療センター「病院情報システム間 連携全体関連図」)
ア
情報システムに関する規程の整備について
情 報 シ ス テ ム に 関 す る 規 程 と し て 、 西 部医 療 セ ン タ ー で は 、「 病 院 情 報
シ ス テム 運 用 管理 規程」、「病院情報システム障害対応規程」が定められて
お り 、 東 部 医 療 セ ン タ ー で は 、「 病 院 情 報 シ ス テ ム 運 用 管 理 規 程 」 が 定 め
ら れ てい る 。 また 、 東部医療センターでは「東部医療センターにおける情
報 の 保護 及 び 管理 の 方法に関する定め」が、情報の取扱いについて規定し
ている。
〔発見事項〕
西 部 医療 セ ン ター に おいて、電子カルテシステム等の開発・変更に関す
る 規 程は 整 備 され て いなかった。また、電子カルテシステム等へのアクセ
ス 権 に関 し て 、パ ス ワードポリシーについては、東部医療センターでは規
程 レ ベル で 明 記さ れ ているものの、西部医療センターでは、電子カルテシ
ス テ ム等 の マ ニュ ア ル(パスワードの設定について)において、個別に規
定されていた。
102
さ ら に 、「 病 院 情 報 シ ス テ ム 運 用 管 理 規 程 」 に つ い て 、 規定 内 容 に 関 し
て 差 異が 見 受 けら れ た。例えば、東部医療センターの「病院情報システム
運 用 管理 規 程 」で は 、病院情報システムのセキュリティ方針にかかる規定
が あ るも の の 、西 部 医療センターの「病院情報システム運用管理規程」で
は同様の規定がなかった。
〔 意 見〕 情 報 シス テムに関する規程等の整備レベル・内容について【西部 】
西 部 医療 セ ン ター と 東部医療センターは、同等の電子カルテシステム 等
を 有 して お り 、情 報システムの重要度も同等であると考えられる。一般に 、
内 部 統制 の 評 価は 、 規程等ルールの整備状況の評価とルールに従った、業
務 の 運用 状 況 の評 価 で実施されるが、内部統制の有効性、効率性確保の観
点 か らは 、 類 似の シ ステム環境下の場合、規程等ルールを可能な限り合わ
せ る こと が 有 効で あ るとされる。このため、電子カルテシステム等の運用
に あ たっ て も 、規 程等の整備に際し、同じ目線、レベル感をもって整備し 、
両センター間で整合性を保つことが望まれる。
イ
外部記録媒体の管理について
外 部 記録 媒 体 につ い ては、外部記録媒体利用基準を設定し、利用簿へ の
記 入 等を 行 っ てい る 。外部記録媒体については、情報漏えいのリスクがあ
る た め、 媒 体 の管 理 状況について、外部記録媒体利用簿の閲覧と質問によ
り、外部記録媒体の管理状況について検討した。
〔発見事項①〕
外 部 記録 媒 体 の利 用 時には、外部記録媒体利用簿に、利用者、利用期 間、
利 用 目的 及 び 利用 先 、暗号化、利用時所属長確認、データ消去、返却日、
返 却 時所 属 長 確認 を 記入する書式となっている。利用時には、外部記録媒
体 利 用簿 に 部 署単 位 で媒体ごとに、外部記録媒体利用簿を作成、管理する
こ と とな っ て いる 。 しかしながら、西部医療センター管理課の外部記録媒
体 利 用簿 と 外 部記 録 媒体管理簿を照合したところ、利用実績のない外部記
録媒体が 3件発見された。
103
〔意見〕必要数以上の外部記録媒体の保有について【西部】
情 報 漏え い の リス ク を低減するため、データ持出し可能な外部記録媒 体
を必要数に限定することが望まれる。
〔発見事項②〕
経 理 部門 の 外 部記 録 媒体の現物を確認したところ、外部記録媒体利用 簿
に 6 つ の USB が 登 録 し て あ る と こ ろ 、 現 物 は 4 つ で あ り 、 残 り の 2 つ は
廃 棄 さ れ た と の こ と で あ っ た 。「 病 院 局 に お け る 外 部 記 録 媒 体 利 用 基 準」
では、「 7 外部 記録 媒体の廃棄」において、不要となった外部記録媒体は
速 や かに 廃 棄 する 旨 、及び、廃棄は病院局総務課、西部医療センター管理
課 又 は、 東 部 医療 セ ンター管理課において定期的に取りまとめるが、廃棄
ま で は所 属 部 署に て データを復元不可能な状態にしたうえで保管する旨が
規 定 され て い る。 外 部記録媒体利用簿には、廃棄を示す記号が記載されて
い た が、 廃 棄 方法 に ついての記録がなく、実際に、当該外部記録媒体が、
復元不可能な方法で廃棄されたかを確認することができなかった。
〔意見〕外部記録媒体の廃棄時の記録について【西部】
外 部 記録 媒 体 を廃 棄 する場合には、ツールを用いたデータの削除手法 を
記 載 する 、 物 理的 に 破壊したことを示す写真を残す等、復元不可能な状態
にして、廃棄したことがわかる形で記録に残すことが望まれる。
な お 、そ の 他 注意 す べき事項として、西部医療センターの外部記録媒 体
利 用 簿に つ いて 、記 載事項が漏れや複数回の外部記録媒体の利用を 1度に
チ ェ ック し て いる よ うに見受けられるものが発見された。利用の都度、現
物を確認されるよう徹底されたい。
ウ
じょうほくカードの管理について
電 子 カル テ シ ステ ム 等の利用にあたっては、じょうほくカードによっ て
ア ク セス ・ 認 証が 行 われる。このため、電子カルテシステムへのアクセス
の 正 当性 を 担 保す る 手段として、じょうほくカードの管理は重要なため、
同カードの管理状況について検討した。
104
〔発見事項〕
「 じ ょう ほ く カー ド 」が情報管理室の執務室内の入り口付近の机上の 保
管箱に設置してあった。
〔意見〕一時利用のカードの管理運用方法について【西部】
「 じ ょう ほ く カー ド 」は入退室可能なカードであり、外部の者が容易 に
ア ク セス で き ない よ うな形で保管し、利用時のみ利用者に手渡しし、利用
簿に記載する等の運用が望まれる。
な お 、そ の 他 注意 す べき事項として、西部医療センターにて、じょう ほ
く カ ード ( 電 子カ ル テ)利用申請書を閲覧したところ、利用者と申請者が
同 一 のケ ー ス が発 見された。ルールに従った申請を行うよう注意されたい 。
エ
電子カルテシステム等へのアクセス権の棚卸しについて
電 子 カル テ シ ステ ム 等へのアクセス権は、電子カルテ情報等重要な情 報
へ の 不適 切 な アク セ スを未然に防止する観点から、厳密に管理する必要が
あ り 、西 部 医 療セ ン ターにおいても、電子カルテシステム等へのアクセス
権の棚卸しを実施している。
〔発見事項〕
西 部 医 療 セ ン タ ー に お い て は 、「 電 子 カ ル テ 利 用 者 マ ス タ 棚 卸 に つ い て 」
に基づい て、平 成26 年 5月度にアクセス権の棚卸しを実施しているが、同
棚 卸 しに お いて 、 47件のアクセス権の抹消等の措置が行われており、日 常
業 務 にお け る アク セ ス権の抹消手続が十分に実施されていない可能性があ
る 。 また 、 病院 情報 システム運用管理規程では、第13条(アクセス管理 )
に お いて 、 ア クセ ス 管理について規定されているものの、棚卸しについて
言 及 され て い ない 。 なお、棚卸し時のアクセス権のメンテナンス記録を確
認 す ると 、 非 常勤 医 師のアクセス権の抹消が多くなっているが、本来であ
れ ば 、異 動 等 によ り 業務上の必要性がなくなった都度、アクセス権の削除
申 請 によ り ア クセ ス 権を削除することが必要と考えられる。また、アクセ
ス 権 の棚 卸 し は、 適 時の削除申請がなされていることを前提として、補完
105
的 に 、ア ク セ ス権 の 日常業務におけるメンテナンス不足を補う性質のもの
であり、異動後棚卸しまでアクセス権が残っていることは適切ではない。
〔意見〕アクセス権の抹消漏れについて【西部】
電 子 カル テ シ ステ ム 等へのアクセス権が不要になった場合には、速や か
に ア クセ ス 権 の抹 消 がなされるよう、異動情報を適時に反映することが望
まれる。
オ
サーバールームへの物理的なアクセスについて
電 子 カル テ シ ステ ム 等の物理的なセキュリティ確保の観点からは、サ ー
バ ー 等重 要 機 器へ の アクセスを必要最小限に限定する必要がある。かかる
観 点 から 、 西 部医 療 センターの電子カルテシステム等の重要機器(サーバ
ー 等 )が 保 管 され ている、西部医療センターのサーバールームを視察した 。
〔発見事項〕
サーバールーム内部に、更衣用ロッカーが置かれていた。
〔意見〕サーバールームへの物理的なアクセス制限について【西部】
物 理 的な セ キ ュリ テ ィ確保の観点からは、極力、サーバールームへの ア
ク セ スは な く すこ と が望まれる。サーバールームの目的に沿わない物品に
ついては、その他の場所へ移動されたい。
カ
電子カルテシステム等の開発・変更管理について
電 子 カル テ シ ステ ム 等を安定的に運用するには、システムの開発・変 更
プ ロ セス が 整 備さ れ 、必要なテストや関連各局の確認を必要に応じて受け
た う えで 、 シ ステ ム の変更が本番環境にリリースされる必要がある。かか
る 観 点か ら 、 電子 カ ルテシステム等の開発・変更管理について検討した。
な お 、西 部 医 療セ ン ターでは、電子カルテシステム等の開発・変更につい
ては、「システム変更申請・完了報告書」を運用している。
106
〔発見事項〕
「 シ ス テ ム 変 更 申 請 ・ 完 了 報 告 書 」に お い て は 、 作 業 申 請 ( ベ ン ダ ー )、
申 請 承 認 ( 西 部 医 療 セ ン タ ー )、 完 了 報 告 ( ベ ン ダ ー )、 完 了 報 告 の 回 覧
( 西 部医 療 セ ンタ ー )となっているが、完了報告(ベンダー)欄の押印の
な い ケー ス が あっ た 。また、当該書式は、電子カルテシステム等の保守委
託 先 の書 式 で あり 、 システム変更管理についての、西部医療センターとし
ての規程等が整備されていないことが発見された。
〔意見〕システム変更管理の規程整備について【西部】
通 常 、電 子 カ ルテ シ ステム等については、標準的なパッケージを部分 的
に カ スタ マ イ ズし て 導入することが想定され、病院側の情報システム部門
が 独 自に 開 発 する 部 分は少ない。開発・変更の際には、主要な部分につい
て 、 導入 さ れ た電 子 カルテシステム等の開発ベンダーに委託することが想
定 さ れる が 、 病院 側 にも外部委託先の管理責任はあるため、システムの重
要 度 等を 踏 ま えた う えで、一定の管理、チェックは主体的に行うべきであ
る。管理にあたっての所定のルールを整備されたい。
キ
リモートアクセスによる電子カルテ情報変更の手順について
電 子 カル テ シ ステ ム 等の運用においては、システム開発ベンダーが、 電
子 カ ルテ シ ス テム の 情報の補正を行う際に、電子カルテシステム等にリモ
ー ト アク セ ス を行 い 、画面を閲覧しながら、電子カルテシステムの情報補
正の指示を行うことがある。
〔発見事項〕
リ モ ート ア ク セス に よる電子カルテ情報変更の手順が明確化されたも の
があるか確認したところ、整備されていなかった。
な お 、電 子 カ ルテ 情 報の変更が発生した場合には、運用上、作業内容 は
適 宜 記録 し 、 電子 カ ルテ情報の変更があった際に、その理由が明らかにな
るとのことであった。
107
〔意見〕電子カルテ情報変更の手順の明確化について【西部】
電 子 カル テ 情 報を 取 り扱う性質上、また、セキュリティの観点からも、
リ モ ート ア ク セス の 許可、作業内容の管理に関するルールを明確に整備す
ることが望まれる。
ク
電子カルテシステム等ベンダーとの運用保守契約について
電 子 カル テ シ ステ ム 等の運用にあたっては、情報システムの安定的な運
用 を 行う た め 、外 部 ベンダーとの運用保守契約を締結し、各種サポートを
受 け る場 合 が 多い 。 しかしながら、運用の具体的な項目、レベル、目標等
に つ いて 、 明 確に 定 めておかないと、電子カルテシステム等のトラブルが
発 生 した 場 合 に、 責 任の所在が不明確となるリスクがある。また、システ
ム 運 用・ 保 守 の効 率 性の観点からも、保守内容を明確にすることは、保守
コ ス トの 妥 当性 を検 討する際の 1つの視点ともなる。かかる観点から、電
子カルテシステム等のベンダーとの運用保守契約について検討した。
〔発見事項〕
電 子 カル テ シ ステ ム 等については、外部ベンダーとの間で保守契約を締
結 し て い る 。 保 守 内 容 に 関 し て は 、「 病 院 情 報 シ ス テ ム 運 用 保 守 業 務 委 託
仕様書」 におい て、1 . サーバーの保守、2.市販ソフトウェアのサポートサ
ービス、 3.業 務アプ リ ケーションソフトウェアのサポートサービス、4.オ
ペレータ等の派遣、5. 遠隔監視、6.電子カルテ操作等研修、7.定例会の開
催 等 規定 さ れ てい る が、具体的なサービス内容についてのサービスレベル
ア グ リ ー メ ン ト ( 以 下 「 SLA 」と い う 。)が 規 定 さ れ て いな い た め、 業 務
内容の定量的な評価がしにくい状態となっている。
〔意見〕電子カルテシステム等ベンダーとの SLA締結について【西部】
電 子 カル テ シ ステ ム 等のベンダーとの間で、サービス提供に先立ち、目
標 値 を定 め 、 その 達成を踏まえて、業務内容を評価し、業務改善や経済性 、
効率性を踏まえたシステム運用を行うことが望まれる。
108
なお、 SLAで規定する項目例としては以下の項目が考えられる。
・サービス稼働率
・障害対応時間
・OS、ミドルウェア のセキュリティパッチ対応状況
・ 前記 の ほ か、 病 院情報システム運用管理規程に規定する、委託先実
施の運用管理項目
(10) 陽子線治療セ ンター
ア
陽子線治療に関する動向
が ん は、 我 が国 の死 亡原因の第 1位であることは周知のとおりである が、
平成23 年には 全国で 約 36万人ががんで死亡している。従来、がん治療は腫
瘍 部 位を 切 除 する 等 外科的処置と抗がん剤による化学療法を中心に行われ
て き たが 、 近 年放 射 線による治療も広がってきた。放射線は放射能と混同
さ れ 、人 体 に 対し て 有害な面が指摘される傾向にあるが、正しい活用法に
よ り 治療 効 果 が高 い こともわかってきている。特に、外科的治療に耐えら
れ な い高 齢 者 や化 学 療法の副作用が懸念される患者にとっては最後の望み
と も いえ る 。 主に 根 治を目指して活用されるが、根治の見込みが少ない患
者 に 対し て の 緩和 治 療としても効果があり、身体的負担の少ない治療方法
としてより広く処方されていくと考えられる。
放 射 線治 療 で 使わ れ ているのは大きく分けて光子線、電子線、粒子線 の
3 種類であ り、光 子線には X線、ガンマ線、粒子線では陽子線と炭素線が
現 在 治療 に 使用 され ている。 X線、電子線では患部のみならず正常組織 や
皮 膚 へも ダ メ ージ を 与えるため、正常組織の回復を待つために数十回に分
け て 放射 線 を照 射す る必要があり、治療には 2ヶ月程度の通院が必要とさ
れている。
109
【図表 3- 2-21】放 射線治療の体系概略
(出典:がん と闘う患者と家族のための情報サイト)
こ れ に対 し て 近年 粒 子線を活用した治療が広がりつつある。粒子線は 体
内 の あ る 一 定 の 深 さ で 線 量 が 最 大 と な る と い う ブ ラ ッ グ ピ ー ク ( Bragg
Peak) と呼ば れる 物理 学的特徴があり、そのため線量のピークに患部が当
た る よう 調 整 すれ ば 集中的な照射が可能となり、体表や周辺の正常細胞へ
の照射をより低い線量に抑えることができ、副作用が抑えられる。また、
X線 に 比べ てより 高い放射線量を使うことができるため通常の放射線治療
が効かな い腫瘍 にも効 果が期待できるとされている。平成27年10月現在、
全国で粒 子線施 設は陽 子線、炭素線の両方合わせて13施設(重粒子線 4箇
所、陽子 線10 箇所) あ り、東海 3県では西部医療センターの陽子線治療セ
ンターが 唯一の 施設で あり、平成25年 2月の稼動開始以降、順調に症例数
を 伸 ばし 、 地 域の ニ ーズにこたえつつある。なお、愛知(社会医療法人明
陽会で平 成29 年度に 運 営開始を予定(注 1))、神奈川(神奈川県立がんセ
ンターで平成27年12月に運営開始を予定(注 2))、京都(京都府立医科大
学で平成3 0年 度の稼 動 開始を目標(注 3))、岡山(津山中央病院が岡山大
学 と 共 同 で 平 成 28 年春 に 運 営 予 定 (注 4 )) で も 新 規 建 設 の計 画が あ る 。
比較的少ない副作用で、より多くのがんを治療できると期待されている。
(注 1)社会医療法人明陽会 成田記念陽子線センターホームページ
http://p ro.meiyokai.or.jp/proton/
(注 2)神奈川県立がんセンター 重粒子線治療施設 i-ROCKホームページ
http://k cch.kanagawa-pho.jp/i-rock/
(注 3)日本経済新聞 平成27年 7月27日記事 施設や装置は日本電
産㈱永守氏の寄贈が表明されている。
(注 4)朝日新聞 平成27年 5月 9日記事
110
【図表 3- 2-22】日 本の粒子線治療施設
重粒子線
陽子線
都道府県
●
北海道
北海道 大学病院陽子線治療センター
●
福島県
南東北 がん陽子線治療センター
●
群馬県
●
茨城県
●
千葉県
●
●
千葉県
施設名称
群馬大学医学 部附属病院 重粒子線医学セン
ター
筑波大学附属 病院 陽子線医学利用研究セン
ター
国立が ん研究センター東病院
放射線医学総 合研究所 重粒子医科学センタ
ー
相澤病院 陽 子線治療センター
(Ai-PR OTON)
●
長野県
●
静岡県
静岡県 立静岡がんセンター
●
愛知県
名古屋 陽子線治療センター
●
福井県
福井県 立病院 陽子線がん治療センター
●
兵庫県
兵庫県立粒子線医 療センタ ー
佐賀県
九州国際重粒子線 がん治療 センター
●
●
鹿児島県
メディポリス 国際陽子線治療センター
(出典:公益 財団法人医用原子力技術研究振興財団ホ ームページ)
イ
陽子線治療センターの経営状況について
名 古 屋陽 子 線治 療セ ンターは、がんの治療法の 1つである、陽子線治 療
を提供す る施設 として 平成25年 2月より前立腺がんの陽子線治療を開始し
た 。 その 後 、 治療 部 位を肝臓、肺、頭頸部、骨軟部、すい臓と拡大すると
と も に、 利 用 者数 も 開設後は順調に伸びている。陽子線治療は、体への負
担が少な く、通 院治療 も可能なクオリティオブライフ( QOL:生活の質)
に優れた治療として今後の重要ながん治療法として位置づけられている。
陽子線治 療セン ターは、開設当時は 3室ある照射室のうち、 1室のみの
稼 動 とな っ てい たが 、その後残る 2室も既に稼動を開始している。病院は
陽 子 線治 療 セ ンタ ー で適用するがんの領域の拡大や診療時間の延長を視野
に入れ、利用者数は年 間 800人を採算ラインと設定し、平成31年度に単年
度黒字化するとする計画を策定している。
111
【図表 3- 2-23】陽 子線治療センター収支見込(平成23∼31年度)
(単位:人、百万円)
準備期間
治療開始
0年目
1年目
2年目
3年目
4年目
5年目
6年目
7年目
23年度
24年度
25年度
26年度
27年度
28年度
29年度
30年度
31年度
区分
患者数
収入
サービス購入料
うち割賦元金
(税込)
うち割賦利息
うち運転保守維
持管理費(税込)
支出
人件費
光熱水費
消耗品費
一般管理費(そ
の他経費)
計
純損益
累積損益
0
0
138
1
4
731
160
461
1,328
300
862
1,358
400
1,149
1,358
500
1,436
1,359
600
1,723
1,359
700
2,010
1,360
800
2,297
1,361
98
40
346
133
579
210
591
199
603
187
615
176
627
164
639
152
652
140
0
0
0
0
251
181
128
12
539
211
128
25
568
258
128
33
568
306
128
41
568
374
128
50
568
429
128
60
568
483
128
70
568
483
128
79
0
125
121
129
136
140
115
120
120
138
1,177
1,813
1,905
1,969
2,052
2,092
2,161
2,171
△ 138 △ 1,173 △ 1,353 △ 1,043
△ 820
△ 616
△ 369
△ 151
125
△ 138 △ 1,311 △ 2,664 △ 3,706 △ 4,526 △ 5,142 △ 5,511 △ 5,662 △ 5,537
(出典:名古 屋市病院局作成資料)
(ア)利用者数について
平成24年度から 3年間の利用者数の見込及び実績の推移は【図表 32-24】のとおりである。
【図表 3- 2-24】陽 子線治療センター利用者数の見込及び実績
(人)
600
483
500
400
300
286
300
200
見込
実績
160
100
0
1
15
平成24年度
平成25年度
平成26年度
(出典:名古 屋市病院局作成陽子線治療センター利用 者数実績報告資料)
112
〔発見事項〕
陽子線治療センターの年間利用者数は、平成26年度の想定利用者数
300 人 を 大 き く 上 回 る 483 人 と な っ た 。 こ れ は 、 名 古 屋 市 健 康 福 祉 局
や 名 古屋 市 病 院局 の 働きかけによる医療機関との連携強化、市民への 広
報 、 治療 対 象 の拡 大 や新規の治療法の確立に向けた取り組みの結果で あ
ると評価される。
利 用 者の 居 住 地域 別割合では、平成26年度末時点における開設時から
の 利 用者 全体の 29.6%が名古屋市内在住の方であり、その他の愛知県か
ら 43.8 % 、 岐 阜 県 及 び 三 重 県 で 21.7 % と 東 海 3 県 で 約 95 % を 占 め て い
る。
ただし、平成 31年度に採算ラインとする年間利用者数 800人を達成す
るため には 、今 後 5年間、利用者数を毎年65人程度増加させることが求
められ る。 現状 では 、患者数は順調に伸びているが、年間利用者数 800
人 を 達成 す る ため に は、相当の取り組みが求められる。特に、愛知県 内
の 民 間医 療 機関で 平 成29年度に陽子線治療センターの開設が予定されて
い る 。東 海 地 区に 複 数の陽子線治療施設が整備されることにより、陽 子
線 治 療の 普 及 が促 進 され、需要の増加が期待される一方で、陽子線治 療
患者獲得に向けた競争の激化が予想される。
〔意見〕陽子線治療センターの利用者獲得に向けた取り組みについて
【西部】
名 古 屋市 健 康 福祉 局や名古屋市病院局では、平成31年度までに採算ラ
インに 必要 な利 用者 数 800人の確保に向けた前記にある取り組みが行わ
れ て いる と こ ろで あ る。ここで、これまでの取り組みを踏まえ、今後 の
利 用 者獲 得 に 向け た より具体的な方針を計画上明示していく必要があ る
が、現時点においては十分には行われていない。
前 記 にあ る 背 景を 考慮 した場合、陽子線治療 センターの利用者が伸 び
続 け る保 証 は ない と 思われる。今後の動向を見据え、更なる陽子線治 療
セ ン ター の 患 者獲 得 に向けた具体的な運用計画を文書化し、その計画 に
基づく取り組みを確実に実施していくことが期待される。
113
(イ)収支について
平 成 24 年 度 か ら 3 年 間 の 収 益 見 込 及 び 実績 の 推 移 は 【 図 表 3- 2-25 】
のとおりである。
【図表 3- 2-25】陽 子線治療センター収益見込及び実績
(百万円)
2,000
1,457
1,500
1,000
848
見込
実績
461
500
0
862
4
92
平成24年度
平成25年度
平成26年度
(出典:名古 屋市病院局作成陽子線治療センター収支 実績)
〔発見事項〕
平 成 26 年 度 に お け る 陽 子 線 治 療 セ ン タ ー の 収 益 は 14 億 5,653 万 円 と
見 込 額を 大 き く上 回 った。これは、陽子線治療センターの努力の成果 で
あ り 、結 果 と して 市 からの運営費繰入額の減少にもつながったもので あ
る。
た だ し、 前 記 の今 後の 利用者の増加に向けた 課題に加え、先進医療 と
して一部民間保険の適用となったとはいえ、陽子線治療の治療費 288万
3,000円 は全額自 己 負担であり、誰もが容易に利用できる治療方法では
ない。
ま た 、陽 子 線 治療 は自 由診療であるため、治 療費の価格設定は原則 医
療 機 関が 個 別 に設 定 することが可能であるため、価格競争が進む可能 性
が あ る 。 平 成 24 年 度 か ら 3 年 間 の 支 出 見 込 及 び 実 績 の 推 移 に つ い て は
114
【図表 3- 2-26】の とおりである。
【図表 3- 2-26】陽 子線治療センター支出見込及び実績
(百万円)
2,500
2,000
1,500
1,813
1,684
1,905
1,872
一般管理費
(その他経費)
1,177
909
1,000
人件費
500
0
サービス購入料
見込 実績
見込 実績
見込 実績
平成24年度
平成25年度
平成26年度
(出典:名古 屋市病院局作成陽子線治療センター収支 実績)
支 出 にお い て は、 当初見込額に近い水準で推移しており、平成26年度
の支出額は18億 7,21 6万円となった。
支 出 額の 内 訳 とし ては 、支出額が大きい順に 民間事業者に対するサ ー
ビ ス 購入 料 、 人件 費 、光熱水費、消耗品費である。サービス購入料に つ
いては後述の「(ウ) サービス購入料について」で検討する。
そ の 他で は 、 人件 費の 支出が増加している。 人員については、利用 者
数 の 増 加 に 対 応 す る た め 、 以 下 の 【 図 表 3- 2-27 】 の と お り 体 制 を 強
化している。
結 果 、 人 件 費 は 平 成 25 年 度 の 1 億 8,408 万 円 に 対 し 、 平 成 26 年 度 は
3億 162万円の支出と 1億 1,754万円の増加となっている。
115
【図表 3- 2-27】陽 子線治療センター職員数
職
種
医
師
看 護 師
診療放射線技 師
行政職(技術 )
行政職(事務 )
合計職員数
平成26年 3月末
3
4
8
2
1
18
平成27年 3月末
3
8
13
3
3
30
(単位:人)
平成27年 7月末
4
9
16
3
3
35
(出典:名古 屋市病院局作成陽子線治療センター職員 配置状況)
〔意見〕陽子線治療センターの収支について【西部】
以 上 述べ て き たよ うな 背景の下で、今後も収 益が伸び続ける保証は な
く、年 間利 用者 数 80 0人を前提として採算性を評価するのではなく、よ
り 利 用者 数 が 少な い 場合においても黒字化を達成できる経営を目指す 必
要がある。
そ の ため に は 、収 益の 伸びのみに着目するの ではなく、支出を抑制 す
る取り組みについても同時に検討する必要がある。
特 に 、人 員 の 増加 につ いては、利用者数の増 加に対応することをそ の
理 由 とし て い るが 、 今後も収益が伸び続けることを前提として計画等 を
進めることについては慎重な対応が望まれる。
(ウ)サービス購入料について
陽 子 線治 療 セ ンタ ー施 設整備事業を進めるに あたり、市は陽子線治 療
施 設 の設 計 業 務、 建 設業務、運転・保守・維持管理業務等を一体とし て
民間事業者と 契約している。この契約は平成43年 3月31日までの長期に
わたる契約とされている。
契 約 金額 は 、以下 の 3項目に分かれて設定されている(いずれも税抜
額)。
a 施設整備費相当
割賦元金 111億 1,400万円
b 施設整備費相当
割賦金利
22億 5,060万円(金利変動による
変更あり)
116
c 運転・保守・維持管理費相当 101億 1,539万円(物価変動によ
る変更あり)
(注)金額は原契約におけるものである
平 成 26 年 度 にお ける実際の民間事業者への支払額は、施設整備費元金
は 5 億 9,992 万 円 、 運 転 ・保 守 ・ 維 持 管 理 委 託料 5 億 7,657 万 円 と な
っ て いる 。 さ らに 、 割賦利息を含めると民間事業者へのサービス購入 料
支払額 は合 計で 13 億を超える額となる。これは、平成26年度の陽子線治
療 セ ン タ ー の 年 間 収 益 額 14 億 5,653 万 円 に 迫 る 額 を 民 間 事 業 者 に 支 払
っていることになる。
民 間 資金 の 活 用や 一括 的な発注によることで 効率的な陽子線治療セ ン
タ ー の運 転 ・ 保守 ・ 維持管理業務委託がなされているとされているが 、
以下の点について検討が望まれる。
〔発見事項①〕
委 託 業務 の 範囲に ついて、「運転・保守・維持管理業務」の定義は事業
契 約 書で は 陽 子線 治 療センターにおける業務のうち、以下に規定する 業
務及び当該業務を実施するうえで必要な関連業務とされている。
①陽子線がん治療装置の運転・日常点検業務
②医療運営支援業務
③建築物の保守管理業務
④設備の保守管理業務
⑤治療装置等の保守管理業務
これら の前 記 5 項目のうち一部の項目について、必ずしも20年間同 一
の 委 託業 者 に 継続 し て委託する業務である必要性が明確になっていな か
った。
〔意見〕民間事業者との包括的な契約について【西部】
こ の うち 、 前 記① 及び ⑤においては、治療装 置の専門性・複雑性等 を
考 慮 し、 装 置 の製 造 業者である民間事業者と保守契約を締結する方法 が
117
望ましいと考えられる。
一 方 で、 ③ 及 び④ にお いては、治療装置の運 転や当該装置の保守管 理
と は 異な り 、 装置 の 製造業者である民間事業者以外の事業者でも業務 実
施 が 可能 で あ ると 考 えられ、現在の委託業者に委託する必要性が明確 と
なっているとは言い難い。
今 後 に向 け 、 陽子 線治 療センターにおける委 託業務内容を包括的に 委
託する必要性について、対外的に説明できるように整理されたい。
〔発見事項②〕
運 転 ・保 守 ・ 維持 管理 委託料の年間別見積額 の内訳、業務内容の見 直
し や 委託 料 の 交渉 で 必要となる管理業務別の想定人員について、運転 業
務 を 実施 す る 想定 人 員については民間事業者から提案書資料として入 手
し て いる 。 ま た、 民 間事業者の委託業務水準は入札時に求めた陽子線 治
療 装 置の 性 能 等に 関 する要求水準書を基準として継続的にモニタリン グ
を行っている。
し か し、 当 初 の年 間別 見積額や管理業務別の 想定人員等と比較して 、
現 在 の業 務 内 容と 支 払額が適切であるかのモニタリングは実施してい な
い。
な お 、運 転 ・ 保守 ・維持管理委託料における20年間における総額ベー
スの内訳は【図表 3- 2-28】となっている。
118
【図表 3- 2-28】陽 子線運転・保守・維持管理委託料総額内訳(20年間)
(単位:百万円)
区分
建築設備維持管理業務
設備日常管理業務
設備機器定期点検業務
医療関係業務
環境衛生業務
植栽管理業務
建物・設備の調査・検査
事務管理費
建築物
修繕・更新費
建築外部
建築内部
外構
電気設備
空調設備
衛生設備
放射線機器
運転・日常点検業務
運転・日常点検業務
年次点検業務
その他
治療装置
保守管理業務
機器保守業務
計画保全用部品
予備品
計
金額
860
135
313
111
11
44
4
242
392
85
73
12
77
78
50
17
4,142
1,913
841
1,388
4,722
150
3,568
1,004
10,115
(参考資料: 名古屋市病院局提出資料より監査人加工 )
〔意見〕運転・保守・維持管理委託のモニタリングについて【西部】
20年間にわ たり、総額 100億円の契約を締結するのであれば、少な く
と も 年度 ご と に提 案 どおりの人数やサービスを民間事業者が業務を実 施
し て いる の か 継続 し て確認し、委託費について見直しが必要となる項 目
が な いか 確 認 する 必 要がある。民間事業者からの当初提案に基づいた サ
ー ビ ス実 施 が なさ れ ているか、また、実際の工数や積算単価から委託 費
を見直す必要はないか継続的に確認・検証されることが望まれる。
119
(11) 地方公営企業 会計
ア
地方公営企業会計に関する近年の動き
(ア)会計基準の見直し
平成2 4年 1月 、地方公営企業会計の基準とされる地方公営企業法施行
令 、 地方 公 営企業 法 施行規則及びその関連法令が約47年ぶりに大幅改正
( 公 布) され 、平 成 26年度の予算及び決算より適用されることとなっ た 。
こ こ でい う 、 地方 公営 企業とは、地方公共団 体、すなわち県や市等 が
経 営 す る 企 業 の う ち 、 水 道 事 業 ( 簡 易 水 道 事 業 を 除 く )、 工 業用 水 道 事
業 、 軌道 事 業 、自 動 車運送事業、鉄道事業、電気事業、ガス事業、病院
事業等に関わる事業を公共の福祉増進のために行っている企業である
(地方公営企業法第 2条)。
名 古 屋市 で は 、病 院事 業、水道事業、工業用 水道事業、下水道事業 、
自 動 車運 送 事 業、 高 速度鉄道事業がこの地方公営企業にあたり、地方公
営 企 業会 計 基 準が 適 用され、一般会計とは別に地方公営企業会計として
予算の策定や決算書の作成が行われている。
(イ)会計基準の見直しの背景
今 回 、地 方 公 営企 業会計基準が改正されるまでの約47年の間に、民間
企 業 の会 計 基 準は 大 きく変わり、退職給付会計や減損会計の導入等、民
間 企 業の 経 営 のあ り 方そのものにまで大きく影響を及ぼす改正もなされ
てきた。
総 務 省が 平 成 24 年に公表した「地方公営企業会計制度の見直しについ
て 」 には 、 以 下の よ うに地方公営企業会計制度の見直しの背景が示され
ている。
<改正の背景>
a 企業会計基準の見直しの進展
企 業 会 計 基 準 が国際基 準を踏 まえ て見直 され ている 一方 、地方 公
営 企 業会 計 制 度は昭和 41年以来大きな改正がなされておらず、相互
の 比 較 分 析 を 容 易に す るため にも企 業会計制 度との 整合を 図る必要
が生じている。
120
b 地方独立行政法人の会計制度の導入及び地方公営企業改革の推進
地 方 独 立 行 政 法人化を 選択す る地 方公営 企業 も増え てお り、同種
事 業 の 団 体 間 比 較の た めにも 、地方 公営企業 会計基 準と企 業会計原
則 に 準 じ た 地 方 独立 行 政法人 会計基 準との整 合を図 る必要 が生じて
い る 。 地 方 公 会 計の 整 備にお ける会 計モデル も、企 業会計 原則に準
じた会計制度が導入されている。
c 地域主権改革の推進
地方分権改革 推進委員会の第 2次勧告(平成20年12月 8日)及び
第 3 次 勧 告 ( 平 成 21年 10 月 7 日 ) に お いて、「 義 務 付け ・ 枠付け の
見 直 し と 条 例 制 定権 の 拡大」 及び「 地方自治 体の財 務会計 における
透 明 性 の 向 上 と 自己 責 任の拡 大」が 掲げられ た。地 方公営 企業につ
いても、地域主権改革に沿った見直しを進める必要がある。
d 公営企業の抜本改革の推進
「 債 務 調 整 等 に 関 す る 調 査 研 究会 報 告 書 」( 平 成 20 年 12 月 5 日 )
に お い て 、「 総 務 省 に お い て は 、 公 営 企 業 の 経 営 状 況 等 を よ り 的 確
に 把 握 で き る よ う、 公 営企業 会計基 準の見直 し、各 地方公 共団体に
お け る 経 費 負 担 区分 の 考え方 の明確 化等、所 要の改 革を行 うべきで
ある。」との提言がなされている。
121
【図表 3- 2-29】地 方公営企業会計基準の見直しにおける主な改正点
No
1
改正点
借入資本金の負 債計上
2
補助金等により 取得した
固定資産の償 却制度等
3
引当金の計上
4
5
繰延資産
たな卸資産の価 額
6
減損会計
7
リース取引にか かる会計
基準
セグメント情報 の開示
8
9
10
キャッシュ・フ ロー計算
書の作成
勘定科目等の 見直し
11
繰入資本金制 度の廃止
イ
決算書への影響の概要
資本の部に計上されていた借 入資本金を負債の
部に計上する 。
償却資産又は 改良に伴い交付される補助金、一
般会計負担金 等については「長期前受金」とし
て負債(繰延 資産)に計上したうえで、減価償
却見合い分を 順次収益化する。
退職給付引当金、賞与引当金 、貸倒引当金等を
計上する。
新たな繰延資産の計上は原則 としてしない。
時価が帳簿価額より下落して いる場合には該当
時価とする、 いわゆる低価法を義務づける。
固定資産の収益性の低下によ り投資の回収が見
込めなくなっ たこと等に対応して固定資産の帳
簿価額を切り 下げる。
リース契約に ついて、資産として計上すべきも
のを資産計上 し減価償却も行う。
注記にてセグメント区分ごと に、セグメントの
概要、損益、 資産負債に関する情報を開示す
る。
現金・預金の 収入・支出の内訳を開示する。
地方公営企業法の資金不足 の状況をはじめとす
る経営情報が 、財務諸表上、可能な限り明らか
にされるよう 勘定科目の見直しを図る。また、
注記により重 要な会計方針等、以前より詳細な
情報を開示す る。
減債積立金を使用して企業 債を償還した場合、
建設改良積立 金を使用して建設改良を行った場
合等に、その 使用した額に相当する額を資本金
へ組み入れる 制度(組入資本金制度)を廃止す
る。
地方公営企業会計基準の見直しへの対応について
今 回 の監査 にお い ては、平成26年度決算書における地方公営企業会計 基
準の見直しへの対応状況を主な対象範囲とした。
(ア)貸倒引当金計上及び破産更生債権等について
貸 倒 引当 金 と は、 未収 金等の債権のうち、回 収することが困難と見 込
ま れ る額 を 当 期の 損 失として認識した際、それに見合って計上される債
権 の 控除 勘 定 であ る 。病院事業の場合、患者が自己負担する医業未収金
122
が 回 収で き ず 不納 欠 損になる可能性がある場合に、貸倒引当金を計上 す
ることになる。
ま た 、破 産 更 生債 権等 とは経営破綻又は実質 的に経営破綻に陥って い
る 債 務者 に 対 する 債 権であり、貸借対照表上では通常、固定資産の部 に
区分表示される。
「 地 方公 営 企 業が 会計 を整理するに当たりよ るべき指針」では、貸 倒
引 当 金 は 、 債 権 全 体 又 は 同 種 ・ 同 類 の 債権 ご と に 、 債 権 の 状 況 に応 じ て
求 め た過 去 の 貸倒 実 績等合理的な基準により算定するとある。具体的 に
は 、 一般 に 公 正妥 当 と認められる会計基準である「金融商品会計基準 」
及 び 同実 務 指 針の 考 え方に従い、債権の評価に関して、債権者の財政 状
態 及 び経 営 成 績に 応 じて①一般債権、②貸倒懸念債権、③破産更生債 権
等に区分し、それらの区分に応じ回収可能性を評価して算定される。
〔発見事項〕
現 状 の名 古 屋 市病 院局 の会計処理では、債権 全体又は同種・同類の 債
権 の 状況 の 把 握が さ れておらず、過去の貸倒実績等の合理的な基準も 設
け ら れて い な い。 貸 倒引当金は債権管理計画で設定された将来の不納 欠
損見込額にて計上されている。
監 査 人が 患 者 未収 入金 残高から分納対象金額 を除いた金額と過去の 不
納 欠 損処 理 金 額に 基 づき簡便的に貸倒引当金を算定(注)した結果、 平
成 26 年 度 の 貸 倒 引 当 額 の 試 算 額 は 9,449 万 円 で あ っ た 。 一 方 、 名 古 屋
市 病 院 局 の 決 算 書 で は 9,598 万 5,000 円 計 上 さ れ て お り 、 差 額 の 約
149万円が貸倒引当金 の過大計上となっている。
また、 平成 26 年度 末時点の患者未収金のうち、発生年度から 2年経過
し て いる も の で分 納 対象ではないものを回収することが困難と見込ま れ
る債権と仮定すると、概算で 8,062万円となる。
( 注 )影 響 額 算定 上 は、簡便的に、一般債権については過去 3年の貸
倒 実 績率 を 乗 じた 額とし、破産更生債権等は債権発生後 2年経過し
分 納 が行わ れ てい ないものと定義し、試算上の貸倒率を 100%とし
て計上している。
123
〔指摘〕貸倒引当金算定と破産更生債権の分類について【共通】
「 地 方公 営 企 業が 会計 を整理するに当たりよ るべき指針」に基づき 、
① 債 権の 回 収 可能 性 を区分する規程を設け、②この規程に基づいて債 権
区 分 を行 い 、 ③貸 倒 実績率を算定し、④貸倒実績率等の合理的な基準 に
より貸倒引当金金額を算定し計上する必要がある。
貸 倒 実績 率 は 過去 の実 績等に基づき計算した 合理的な算定方法を設 定
し 、 また 、 破 産更 生 債権等に相当する債権については固定区分に計上 す
る必要がある。
(イ)たな卸資産の評価方法について
地方公 営企 業法 施行規則第 8条第 1項では「資産については、この省
令 に 別段 の 定 めが あ る場合を除き、その取得原価又は出資した金額を も
つて帳簿価額としなければならない。」と定めている。更に第 3項第
3号 に 「 た な卸資 産 であつて、事業年度の末日における時価がその時の
帳 簿 価額 よ り 低い も の(重要性の乏しいものを除く。)」は「事業年度の
末 日 にお け る 時価 」 での評価が規定されている。このような評価の方 法
は、「収益性の低下に基づく簿価切り下げの方法」と言われている。
病 院 事業 に お いて は、 医薬品について薬価改 定による薬価引下要因 に
よ る 時価 の 下 落、 診 療材料については償還価格下落による時価の下落 を
評価する必要がある。
〔発見事項〕
た な 卸資 産 評 価損 の計 上の要否を判断するた めの資料が正式には作 成
さ れ てお ら ず 、ま た 収益性の低下に基づく簿価切り下げの方法に関す る
規 程 が文 書 化され て いない。さらに平成26年度名古屋市病院事業決算に
関 す る書 類に おけ る注記では、Ⅰ.重要な会計方針、 1たな卸資産の評
価 基 準及 び 評 価方 法 として「先入先出法による原価法」としており、 収
益 性 の低 下 に 基づ く 簿価切り下げの方法での評価をしている旨の記載 が
行われていない。
124
〔指摘〕たな卸資産の評価方法について【共通】
た な 卸資 産 に 対す る収 益性の低下に基づく簿 価切り下げの方法の適 用
に つ いて の 規 程を 文 書化することが必要である。また、注記について は 、
「 Ⅰ .重 要な 会計 方針、 1たな卸資産の評価基準及び評価方法」として
収 益 性の 低 下 に基 づ く簿価切り下げの方法の適用の旨を明記する必要 が
ある。
(ウ)減損処理について
地 方 公営 企 業 法施 行規 則においては、固定資 産の減損について下記 の
とおり規定されている。
地方公営企業 法施行規則第 8 条第 3 項
次の各号に掲げる資産については、事業年度の末日において、帳
簿価額として 当該各号に定める価格を付さなければな らない。
一
略
二
固定資産であつて、事業年度の末日において予測することが
できない減損が生じたもの又は減損損失を認識すべきもの
そ
の時の帳簿価額から当該生じた減損による損失又は認識すべき
減損損失の額 を減額した額
固 定 資産 の 減 損と は、 資産のもたらす収益性 が低下したことにより 設
備 投 資額 の 回 収が 見 込めなくなった状態であり、減損処理とは、その よ
う な 場合 に 一 定の 条 件の下で回収可能性を反映させるように帳簿価額 を
減 額 する 会 計 処理 を いう。この会計処理は、固定資産の帳簿価格が実 際
の 収 益性 や 将 来の 経 済的便益に比べ過大となっている場合に、帳簿価 格
を 適 切な 金 額 まで 減 算することにより経営成績の実態を早期に明らか に
す る 効果 が あ る。 ま た、減損は、キャッシュ・フローを伴わない資産 の
含 み 損の 処 理 であ り 、減損実施後の減価償却負担の軽減により、長期 的
には財務体質の改善が期待されるものである。
固 定 資 産 の 減 損 処 理 は 【 図 表 3- 2-30 】 の 4 つ の プ ロ セ ス を 経 て 実
施される。
125
【図表 3- 2-30】減損処理までのプロセス
固定資産のグループ化
減損の兆候の把握
減損の認識
減損損失の測定
資産グループとは「他の固定資産又は固定資産グループのキャッシ
ュ ・ フロ ー か らお お むね独立したキャッシュ・フローを生み出す最小 の
単 位 」で あ る 。名 古 屋市は、西部医療センター、東部医療センター、 緑
市 民 病院 の 各拠点 を 資産グループとして設定している。平成26年度決算
に お いて 、 各 病院 で は医業損失が発生しているが、一般会計からの繰 入
金 を 加 味 す れ ば 、「 固 定 資 産 又 は 固定 資 産 グ ル ー プ が 使 用 さ れて い る 業
務 活 動か ら 生 ずる 損 益又はキャッシュ・フローが、継続してマイナス 」
と は なら な い こと か ら、名古屋市病院局は全ての拠点について減損の 兆
候はないと判断している。
126
地方公営企業 が会計を整理するに当たりよるべき指針
第 4章第 1節第 3
減損会計 3
規則第41条 第 1号の「減損の兆候」と は、固定資産又は固定資産グル
ープに減損が 生じている可能性を示す事象をいい、例 として次の事象が
考えられる。
(1) 固 定 資 産 又 は 固 定 資 産 グ ル ー プ が 使 用 さ れ て い る 業 務 活 動 か ら 生 ず
る損益又はキャッシュ・フローが、継続してマイナスとなっている
か、あるいは 、継続してマイナスとなる見込みである こと
(2) 固 定 資 産 又 は 固 定 資 産 グ ル ー プ が 使 用 さ れ て い る 範 囲 又 は 方 法 に つ
い て 、 当 該 固 定 資 産 又 は 固 定 資 産 グ ル ー プ の 回 収 可 能 価 額 を 著 し く低
下させる変化 が生じたか、あるいは、生ずる見込みで あること
(3) 固 定 資 産 又 は 固 定 資 産 グ ル ー プ が 使 用 さ れ て い る 事 業 に 関 連 し て 、
経営環境が著 しく悪化したか、あるいは、悪化する見 込みであること
(4) 固定資産又は固定資産グループ の市場価格が著しく下落したこと
し か し、 東 部 医療 セン ターについては、新病 棟の建設に向けての設 計
を 開 始 し て お り 、 中 で も 外 来 棟 及 び 救 急 診 療 棟 は 平 成 27 年 3 月 の 新 棟
(救急 ・外 来棟 )の 完工に伴い閉鎖され、平成27年11月より取り壊し工
事を開始している。
したがって、 平成27年 3月(平成26年度決算期末)時点では、外来 棟
及 び 救急 診 療 棟は 稼 動しておらず、また、取り壊しに関する予算も平 成
27年 3月に承認 され ていることから、建物が他の目的に転用されないこ
とも明らかになっていたといえる。
127
【図表 3- 2-31】東部医療センター建替対象と完成予定
① 平成26年度末の状況
平 成 27 年 度 以 降 、 東
病棟以外は全て建て
替えることを 計画中
平成26年度 末に完成
平 成 27 年 度 に 取 り 壊
すことについて予算
承認あり
② 完成予定
(参考資料: 名古屋市病院局からの入手資料より監査 人加工)
〔発見事項①〕
平 成 26 年 度 の決 算書上で、東部医療センターの外来棟及び救急診療棟
( 取 得 価 額 総 額 15 億 1,272 万 円 、 帳簿 価 額 3 億 6,462 万 円 ( 平 成 26 年
度 末 時 点 )) に つ い て 、 減 損 損 失 の認 識 ・ 測 定 、 減 損 損 失 の 計上 が 行 わ
れていない。
平成27年 3月(平成26年度決算期末)時点では、外来棟及び救急診療
棟 は 既に 稼 動 を終 了 しており、建物が他の目的に転用されないことも 明
128
ら か と な っ て い る 。 こ の 事 実 は 、「 固 定 資 産 又 は 固 定 資 産 グ ルー プ が 使
用 さ れ て い る 範 囲 又 は 方 法 」 に つ い て 、「 当 該 固 定 資 産 又 は 固定 資 産 グ
ル ー プの 回 収 可能 価 額を著しく低下させる変化が生じたか、あるいは 、
生ずる見込みであること」に該当する。
こ の 点 、「 企 業 会 計 基 準 適用 指 針 第 6 号 固 定 資産 の 減 損 に 係 る 会 計基
準の適用指針」においても、次のとおり記載がある。
企業会計基準 適用指針第 6号固定資産の減損に 係る会計基準の適用指針
第71項
資産のグルーピングは、実務的には、投資の意思決定を行う
際の単位等を考慮してグルーピングの方法を定めることになると考えら
れている。それには、資産の処分や事業の廃止に関する意思決定を含む
( 減 損 会 計 意 見 書 四 2. ( 6 ) ① 参 照 )。 こ の た め 、 資 産 の 処 分 や 事 業 の
廃止に関する意思決定を行い、その代替的な投資も予定されていない場
合における資産が他の資産又は資産グループのキャッシュ・フローから
概ね独立したキャッシュ・フローを生み出す最小の単位に該当すると考
えられる(第 8項参照)。
す な わ ち 、 こ れ に 従え ば 、 外 来 棟 及 び 救 急 診 療 棟 につ い て 、「 資 産 の
処 分 や事 業 の 廃止 に 関する意思決定を行い、その代替的な投資も予定 さ
れ て いな い 場 合に お ける資産」として別途把握され、この資産グルー プ
について減損の兆候が生じていると言える。
さ ら に、 今 後 の稼 動の 予定がないことから帳 簿価額を上回る将来キ ャ
ッ シ ュ・ フ ロ ーが 獲 得されないことが明らかであり、減損を認識し、 計
上する必要があったと判断される。
な お 、減 損 を 実施 した 場合は、減損対象とな った資産のうち、補助 金
等 を 財源 と す るも の については、資産額に対応して長期前受金が計上 さ
れ て いる た め 、こ れ を同時に取り崩して長期前受金戻入額を計上する 。
し た が っ て 平 成 26 年 度 におい て減 損を 実施 し た場合 は、 1 億 1,242 万円
(名古屋市病院局試算値)の長期前受金戻入額が同時に計上される。
129
〔指摘〕東部医療センターの建物に係る減損処理について【東部】
東 部 医療 セ ン ター の外 来棟及び救急診療棟に ついて、減損処理を実 施
すべきであった。
市 は 、こ の こ とに つい て、資産の処分に関す る意思決定を行った資 産
が 減 損の 兆 候 に該 当 するとしても、一般企業等と異なり取り壊しに関 す
る 予 算の 成 立 後の 変 更も考えられるため、取り壊しに関する工事契約 時
に 当 該兆 候 を 認識 す るものとしている。しかし、決定後の特殊な事情 に
よ る 変更 は 一 般企 業 も公的機関も同様に考えられ、特に今回の外来棟 及
び 救 急診 療 棟 につ い ては、新たに救急・外来棟が完成し、稼動済であ る
こ と から 、 期 末時 点 で本来の用途として使用されていないことは明ら か
である。
な お 、今 後 、 新病 棟を 建設後、北棟等既存の 建物を取り壊すことを 計
画 し てい る こ とか ら 、計画対象の建物についても適切な時期に減損の 検
討を行うことが必要である。
〔発見事項②〕
減 損 の兆 候 の 把握 にお いて、その判断経緯を 示した資料が残されて い
ない。
〔意見〕減損処理の要否判断経緯の文書化について【共通】
実 際 の減 損 処 理の 有無 にかかわらず、その判 断経緯を文書として残 す
ことが必要である。
(エ)セグメント情報の開示について
平 成 26 年 度 名古 屋市病院事業決算に関する書類における注記の中でセ
グ メ ント 情 報 を記 載 しており、病院ごとのセグメント負債金額を開示 し
ている。
セ グ メン ト 情 報と は、 地方公営企業会計全体 の情報を事業の種類別 や
所 在 地 別 な ど の 一 定 の 事 業 単 位 ( 以 下 「 報 告 セ グ メ ン ト 」 と い う 。) に
分 割 した 情 報 をい う 。報告セグメントの区分は、企業会計におけるマ ネ
130
ジ メ ント ・ ア プロ ー チ(企業の最高意思決定機関が意思決定等のため に
使 用 する 事 業 単位 ご とに開示する方法)の考え方を踏まえながら、各 地
方公営企業において決定される。
セ グ メン ト 情 報に 関す る注記で開示が求めら れる内容は、①報告セ グ
メ ン トの 概 要 、② 報 告セグメントの営業収益等である。①報告セグメ ン
ト の 概要 と し ては 報 告セグメントの決定の方法、各区分に属する事業 の
内 容 が適 当 で ある と 考えられ、病院事業では例えば病院単位ごとの開 示
が 考 えら れ る 。ま た 、②の報告セグメントの営業収益等として、報告 セ
グ メ ント ご と の医 業 収益、医業費用、医業損益、経常損益のほか、各 セ
グ メ ント に 帰 属す る 資産、負債、減価償却費、その他の項目の金額の 記
載が求められている(地方公営企業法施行規則第40条第 1項参照)。
ま た 、一 般 管 理費 等の 特定のセグメントに直 接配分できない費用や 、
複 数 セグ メ ン トが 共 通して使用する資産等については、明確な定めは な
い が 、企 業 会 計に 準 拠して関連するセグメントに合理的な基準により 配
分 す るも の と考え ら れる(企業会計基準適用指針第20号「セグメント情
報等の開示に関する会計基準の適用指針」第11項参照)。
〔発見事項〕
住 民 税・ 所 得 税の 預り 金及び西部医療センタ ーで発生した保証金等 の
預 り 金が 、 全 額東 部 医療センターのセグメント区分に記載されており セ
グ メ ント 情 報 の開 示 金額が誤っている。これは、過去からの慣習や、 名
古 屋 市病 院 局 本庁 の 職員を各病院別に帰属させるための合理的な基準 が
整備されていないためである。
〔指摘〕セグメント区分の見直しについて【共通】
資産、負債の帰属先を明確に分けることが必要である。また、住民
税 ・ 所得 税 の 預り 金 といった、双方の病院に従事するような共用資産 、
負債は合理的に分ける基準の策定をする必要がある。
131
ウ
会計に関するその他の事項について
今 回 の監査 にお い ては、平成26年度決算書における地方公営企業会計 基
準 の 見直 し へ の対 応 状況を主な対象範囲としたが、その検討過程において
以 下 のと お り 、従 来 からの会計基準への対応に関する発見事項も認められ
た。
(ア)たな卸資産の計上について
病 院 会計 準 則 (注 )において、たな卸資産とは、医薬品(以下「薬品 」
という。)、診療材料、給食用材料貯蔵品等と規定されている。
(注)病院会計準則とは、病院ごとに作成される財務諸表の作成基準と
して厚生労働省が示したものである。
〔発見事項〕
現状、名古屋 市病院局会計規程では、第 4章第 1節第65条に「貯蔵 品
と は 、 薬 品 で あ っ て 、 た な 卸 経 理 を 行 う も の を い う 。」 と あ る。 こ の た
め 、 薬品 以 外 のた な 卸資産は管理対象外としており、診療材料の在庫は
資 産 とし て 未 計上 と なっている。しかし、診療材料の期末在庫高が資産
全 体 の残 高 に 占め る 割合は重要と考えられ、期末の診療材料の内容を把
握 す るこ と に より 、 購買管理に資する情報の入手が可能となるほか、診
療材料費をより正確に把握することが可能となると考えられる。
〔意見〕診療材料の計上について【共通】
診 療 材料 も 貯 蔵品 として名古屋市病院局会計規程に規定するとともに 、
たな卸資産として管理し、資産計上することが望まれる。
(イ)無形固定資産の計上について
地方公 営企 業法 施行規則第 5条第 1項においては、固定資産の項目 の
ひとつとして、無形固定資産を計上することを定めている。
病 院 事業 で 計 上さ れる 一般的な無形固定資産 としては、ソフトウェ ア
や電話加入権がある。
132
計 上 すべ き 資 産を 確認 したところ、電話加入 権を西部医療センター 及
び東部医療センター合計で33回線有していることが確認された。
〔発見事項〕
平 成 26 年 度 決算 書において、無形固定資産として計上すべき電話加入
権 33 回 線 、 評 価 額 49 , 500 円 ( 平 成 26 年 愛 知 県 財 産 評 価 基 準 書 よ り 、 取
引相場のある 電話加入 権以外の電話加入権の価額 1,500円を適用)につ
いて資産計上が行われていない。
〔指摘〕電話加入権の計上について【共通】
電話加入権について資産計上することが必要である。
(ウ)投資その他の資産の計上について
現 在 、西 部 医療セ ンター、東部医療センターにて各 2台の車両を保有
してい る。 平成 17 年 1月より、自動車リサイクル法が施行され、当該車
両 を 廃車 に す る際 に 支払うべきリサイクル料金については、車両購入 時
(自動 車リ サイ クル 法施行前生産車両について平成20年 1月までに車検
を 受 けて い る 場合 は その車検時)に、公益財団法人自動車リサイクル 促
進 セ ンタ ー に 預け 入 れている。当該預託金は廃車時に使用されるため 、
廃車までの間「投資その他の資産」として計上される。
〔発見事項〕
平 成 25 年 度 の車 両購入時にリサイクル預託金分を費用計上処理してい
る。(西部医療センター 14,710円、東部医療センター 9,540円)
〔指摘〕リサイクル預託金の計上について【共通】
リサイクル預託金について資産計上することが必要である。
(エ)医業外収益と費用の総額計上について
西 部 医療 セ ン ター では 、病院で使用する電力 について、熱供給業者 が
133
病 院 建物 内 に 設置 し ているコージェネレーション設備より供給を受け て
い る 。こ の 際 、電 力 発電に必要な電力料は他のエリアの電力料と包括 し
て 請 求さ れ る こと か ら、病院より電力会社に支払ったうえで、電力の 使
用 実 績に 応 じ 熱供 給 業者に請求している。熱供給業者に請求している 電
力料は年間約 3,60 0 万円程度であり、請求金額を医業外収益計上してい
る。一方、電力料は病院の医業費用に計上している。
〔発見事項〕
熱 供 給業 者 か らの 電力 代金収入の経済的実態 は、電力発電に必要な 電
力 料 を熱 供 給 業者 の 代わりに病院が立て替え払いし、回収したものに す
ぎ ず 、西 部 医 療セ ン ターの経済活動の成果とは言いがたい。したがっ て 、
熱 供 給業 者 か ら入 金 される電力料は、病院の収益として計上すべきも の
で は なく 、 立 替金 の 回収と解される。同様に、対応する費用として計 上
さ れ てい る 電 力料 は 立替金の支出であると解され、いずれも損益計算 書
上に総額として計上すべきものではない。
〔指摘〕医業外収益と医業費用の総額計上について【西部】
電 力 供給 会 社 請求 金額 は、費用計上している 電力料と相殺し、純額 で
処理する必要がある。
134
第4
1
包 括外部監査 の結 果及び意見
包括外部監査の結果及び意見(発見事項一覧)
包括外部監査の結果、【指摘】11件・【意見】49件を識別した。識別した指摘
及び意見の一覧は、【図表 4- 1- 1】【図表 4- 1- 2】のとおりである。
【図表 4- 1- 1】結果及び意見 一覧(総論部分)
ページ
発見事項
26
〔意見〕名古屋市立病院の最適 な経営形態の検討について【病 院局】
31
〔意見〕医療の質に着目した成 果指標の設定について【共通】
32
〔意見〕クリニカル・インディ ケータの策定・公表について【 共通】
33
〔意見〕経営の効率化に関連し た指標の設定について【共通】
34
〔意見〕地域医療支援病院の要件に着目した成果指標の設定について
【共通】
35
〔意見〕アクションプランの策 定について【共通】
38
〔意見〕成果指標の達成状況に ついて【西部】
40
〔意見〕成果指標の達成状況に ついて【東部】
41
〔意見〕成果指標が設定されて いない取り組みについて【共通 】
41
〔意見〕後発医薬品採用比率に ついて【共通】
45
〔意見〕名古屋医療圏で想定される将来の回復期病床の不足について
【共通】
61
〔意見〕一般会計繰入金の水準 について【病院局】【財政局】
135
【図表 4- 1- 2】結果及び意見 一覧(各論部分)
ページ
発見事項
63
〔意 見〕書損取扱いデータの顛末確認 の実施について【西部】
65
〔意 見〕個人未収金の督促対応につい て【共通】
66
〔指 摘〕返戻再請求保留分の未計上に ついて【共通】
67
〔意 見〕患者預り金管理の徹底につい て【共通】
68
〔意見〕看護学生への貸付金の債権計上及び適切な引当金の設定について
【病院局】
69
〔指 摘〕病院による固定資産の現物確 認について【共通】
70
〔指 摘〕固定資産台帳への登録単位に ついて【共通】
70
〔意 見〕固定資産台帳記載の設置場所 について【西部】
71
〔意 見〕現物が確認できない物品につ いて【西部】
72
〔意 見〕現物へのシール貼付について 【西部】
73
〔意 見〕治験受託料収入による固定資 産の購入について【西部】
74
〔意 見〕特定保険医療材料の医事請求 管理について【共通】
76
〔意 見〕診療材料購入にかかる競争性 の促進について【共通】
77
〔意 見〕スケールメリットを活用した 材料購入について【共通】
80
〔意 見〕試薬購入にかかる競争性の促 進について【共通】
81
82
83
〔意見〕病院情報システムの部門ネットワークシステム保守委託業務の随意
契約について 【西部】
〔指摘〕病院情報システムの部門システム保守委託業務の随意契約について
【西部】
〔意見〕エレベータ保守委託契約にかかる競争性の促進と点検仕様の見直し
について【共 通】
87
〔意 見〕当初計画からマイナス収支の モダリティについて【西部】
87
〔意 見〕放射線部門及びモダリティ別 収支の作成について【東部】
89
〔意 見〕非常勤職員の労働時間管理に ついて【西部】
90
〔意 見〕専門医の資格管理について【 共通】
92
〔意 見〕職員満足度調査結果の活用に ついて【共通】
98
〔意 見〕インシデント・アクシデント の定義について【共通】
99
〔意 見〕院内感染対策研修会の参加率 について【西部】
101
〔意見〕患者満 足度調査 結果及びその活用について【共 通】
136
103
〔意見〕情報シ ステムに 関する規程等の整備レベル・内 容について【西部】
104
〔意見〕必要数 以上の外 部記録媒体の保有について【西 部】
104
〔意見〕外部記 録媒体の 廃棄時の記録について【西部】
105
〔意見〕一時 利用のカードの管理運用方法について【 西部】
106
〔意見〕アクセ ス権の抹 消漏れについて【西部】
106
〔意見〕サーバ ールーム への物理的なアクセス制限につ いて【西部】
107
〔意見〕システ ム変更管 理の規程整備について【西部】
108
〔意見〕電子カ ルテ情報 変更の手順の明確化について【 西部】
108
〔意見〕電子カ ルテシス テム等ベンダーとの SLA締 結について【西部】
113
〔意見〕陽子線治療センターの利用者獲得に向けた取り組みについて【西
部】
116
〔意見〕陽子線 治療セン ターの収支について【西部】
117
〔意見〕民間事 業者との 包括的な契約について【西部】
119
〔意見〕運転・ 保守・維 持管理委託のモニタリングにつ いて【西部】
124
〔指摘〕貸倒引 当金算定 と破産更生債権の分類について 【共通】
125
〔指摘〕たな卸 資産の評 価方法について【共通】
130
〔指摘〕東部医 療センタ ーの建物に係る減損処理につい て【東部】
130
〔意見〕減損処 理の要否 判断経緯の文書化について【共 通】
131
〔指摘〕セグメ ント区分 の見直しについて【共通】
132
〔意見〕診療材 料の計上 について【共通】
133
〔指摘〕電話加 入権の計 上について【共通】
133
〔指摘〕リサイ クル預託 金の計上について【共通】
134
〔指摘〕医業外 収益と医 業費用の総額計上について【西 部】
137
Fly UP