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10月号(PDF/896KB)
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2012 年 10 月号 ■NOTICIAS■ 国際協力機構アルゼンチン事務所 ■NOTICIAS■
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01 プロジェクト便り
「オゾン層・エアロゾル観測の拡充による大気環境リスクの軽減を目指して」
-高度な日本の科学技術による地球規模課題への貢献三須裕二 職員
02 ボランティア便り
「国立水研究所(INA)での活動終了に寄せて」
福島和貴 シニア海外ボランティア
03 アルゼンチン文化 コーナー
「アルゼンチンにおける高等教育」
山本フアン・カルロス 次長
04 JICA 事務所の動き
オゾン層・エアロゾル観測の拡充による
大気環境リスクの軽減を目指して
-高度な日本の科学技術による地球規模課題への貢献JICA アルゼンチン事務所
三須 裕二
アルゼンチン南部のパタゴニアで日本の大学、研究機関の研究者の方々が、オゾン層の観測を行なって
いることをご存知でしょうか?
アルゼンチンの南端に位置するサンタクルース州のリオガジェゴス市(故ネストル・キルチネル元大統
領-現クリスティーナ フェルナンデス大統領の夫-の墓がある町)では、現在、名古屋大学
環境研究所
太陽地球
水野 亮(みずのあきら)教授他のグループが中心となり、ミリ波分光放射計と呼ばれる精
密機器を用いてオゾン層の高度分布測定を行っています。ここでは、アルゼンチン国立レーザー応用研究
センター(CEILAP)をカウンターパート機関としてオゾン層に関する共同研究が行われており、同研究に対
し、JICA は長期に亘り協力してきました。
しかし、なぜ、パタゴニアでオゾン層観測なのでしょうか。観測地であるリオガジェゴス市は、南緯
50 度前後に位置していますが、毎年春先(9 月頃)から上空にオゾンホールが形成され、強力な紫外線の
影響が懸念されています。そして、このオゾンホールは、南極上空を中心に存在しており、常に移動を繰
り返しています。つまり、パタゴニア南部地域は、上空をオゾンホールが通過し、その直下には、多数の
住民が居住している地球上の数尐ない地域であるため、オゾン層観測の格好の地理的条件を備えているば
かりか、住民の健康への影響についての懸念からオゾン層の観測ニーズが非常に強い地域なのです。
もちろん日本においても北海道から沖縄まで複数の都市でオゾン層の観測が行なわれています。しかし
ながら、日本国内には、パタゴニア南部地域のように、オゾンホールが通過し、かつ一定規模の住民が居
住している観測地点は存在せず、同地域で得られるデータは、日本の研究者にとっても科学的に非常に有
益な情報とされています。
JICA では、CEILAP をカウンターパート機関とし、この南部パタゴニア地域におけるオゾン層観測体制
を強化し、紫外線に関する地域住民への必要な情報提供を目的として、2004 年から 2007 年にかけて「オ
ゾン層観測強化プロジェクト」を実施しました。また、2007 年から 2011 年には、
「パタゴニア南部地域
におけるオゾン層及び紫外線観測能力強化と住民への伝達活動プロジェクト」を実施し、計 7 年間に亘り、
技術協力を通じ、観測能力強化やネットワーク構築の拡充に協力してきました。
CEILAP では、これら一連の JICA の技術協力を通じて日本側の協力機関である名古屋大学や国立環境研
究所等の支援を受け、研究員の能力強化を図ってきました。紫
外線の影響が強く懸念されるリオガジェゴス市においては、市
環境局と協働で紫外線暴露の予防のため啓発活動等も実施して
います。また、今日では、紫外線の強度を紫や赤色で市民に分
かりやすく表示し、地域住民の紫外線暴露を軽減させるための、
紫外線レベル信号機も同市に設置されています。
そして、こうしたこれまでの協力成果を踏まえ、2013 年 4 月
からは、我が国の高度な科学技術により同分野での協力をさら
に拡充すべく科学技術協力「南米における大気環境リスクに対
応する社会システムの開発プロジェクト」が開始される予定で
す。同プロジェクトは、JICA と科学技術振興機構(JST)の共同プロジェクトとして、オゾン層やこれと
関係が深い紫外線の他に火山灰等を含むエアロゾルも観測対象に加え、リアルタイムでの大気観測と市民
社会でのアラートシステムの構築を目指そうとするものです。
同協力においては、我が国の先端技術の機材も導入する他、既設の観測地であるリオガジェゴスやビジ
ャマルテリ(ブエノス市近郊)に加え、コルドバ市、バリローチェ市、エセイサ市、トレレウ市、トゥク
マン市、コモドロリバダビア市も新たに観測地として加える等、観測体制も大幅に拡充される予定です。
また、アルゼンチンでは、紫外線、火山灰等の大気環境リスクに関するアラートシステムが、必ずしも
十分に整備されていないため、併せて上記リスクに対応するシステムの構築も目指します。具体的には、
アルゼンチンの気象庁や内務運輸省民間防衛部等が、観測地で得られたデータを活用し、大気環境リスク
を軽減すべく、全国の一般市民に速やかに情報提供を行うシステムの構築が期待されています。
紫外線対策の啓発活動についても日本人観光客も多く訪れるウシュアイアやカラファテなどの空港に、
紫外線レベル表示信号機を設置することが計画されており、これらを活用し、観光客や地域住民への情報
発信も強化される予定です。
JICA としては、JST の強力な協力の下、信号機の設置に際しての本邦民間企業との官民連携の可能性
なども視野に入れ、我が国の高度な科学技術協力による地球規模課題への取り組みにおいて日本のプレゼ
ンスを示していきたいと考えています。
国立水研究所(INA)での活動終了に寄せて
福島和貴 シニア海外ボランティア
指導科目:液体クロマトグラフィ分析
ジャカランタの木に新芽が芽吹き Buenos Aires に春の訪れを告げていますが、それは、また、私のシ
ニア海外ボランティアとしての任期の終了を告げるものでもあります。日本との比較を封印し、任国の社
会通念を基本的に受入れ活動した 2 年間は短く感じられ、また、当初、思い描いていた構想への達成度に
心残りを抱いたままの帰国となりそうです。
要請された主課題は、基本的な機材の 1 つでありながら、専任者の退職等により、必ずしも十分な活用
が図られていなかった高速液体クロマトグラフ質量分析計(LC/MS)の操作法についての指導です。これは、
かつて INA で実施された技術協力プロジェクト「産業公害防止」で供与されたもので、それをフォローア
ップするというのが任務でした。
2 年間の活動を通じ、お陰様で本体については、なんとか現在のスタッフが順調に稼動させるところま
で到達し、大きな前進を見ました。周辺機器である窒素製造装置に窒素供給量不足という問題が発生して
いますが、かなりの水準のデータを得ることができています。しかし、いかなる禍根も残さない最高精度
のデータ取得を考えた時、この問題も早期の解決が望まれます。
任期期間中、配属先による自助努力も得られましたが、活動進展への見通しが暗くなり、任期の中盤か
ら、配属先との協議により、止むを得ないものについては、JICA にフォローアップ協力を仰ぐ局面も生
じました。それは、任国の社会通念に対する経験を重ねた結果であり、時間の限られた我々ボランテイア
にとっては、止むを得ない判断であったと思います。フォロ
ーアップ協力により機材、試薬類は、その後 LC/MS の最適測
定条件の検討、測定技術のスキルアップ、保守・管理の上で
大いに活用され、目指すデータも得られるようになりました。
その他、クロマトグラフ機器である液体クロマトグラフ、
ガスクロマトグラフの修理部品の調達により、性能確保や原
子吸光光度計の業務効率化への対応にも貢献することができ
ました。
活動期間中大いに悩まされたのは、任国及び配属先の事情
でした。特に次の 3 つの事情、①機材操作の専任者の配置が
なく、他の仕事を主とする職員が兼務している状況、②現政権により輸入制限が行われているため、部品、
消耗品等の調達に長期間(半年以上)要すること、③多発する停電のため、本来なされるべき連続運転が
困難なことで、これらは着任時から現時点まで進展がなく、将来への不安材料として心を痛めています。
然るにカウンターパートとの最終討議の際にも改めてこれらの問題を指摘し、対応を進言したところで
す。
いずれにしても精密分析機器類の活用にはマンパワーを始めとし、機器類を取り巻く環境要因も極めて
重要です。また、配属先の機器類には、経年という別の要因もあり、今後、これらの部品が製造中止にな
る等、様々な問題が発生することも想定されます。
多くの問題を抱えながらも LC-MS は、農薬、除草剤、殺虫剤、
殺菌剤、微生物産生毒素、生体試料などの微量分析を得意とす
るため、早期に常時稼動機器ラインアップに名を連ね、環境中
のこれら化学物質について精度の高いデータを継続して発信す
る状況になることを切に望んでいます。それらは、必ずやアル
ゼンチンの環境科学に多大な寄与する貴重なデータとなるはず
です。
“行ってらっしゃい!!”と書かれたカードを記念に戴き、
「私が辞めるときは、必ずきちんと後任者へ引継ぎます」とい
うスタッフの言葉を信じて、LC/MS が、今後ともフルに活用さ
れることを願いながら INA の門を後にしました。
アルゼンチンにおける高等教育
山本フアン・カルロス 次長
UNDP の「人間開発報告書 2009」によれば、人間開発指数の構成要素であるアルゼンチンの教育指数
(2007)
(「人間開発報告書
2010」には、
『教育指数』の記載無し)は、0.946 であり、域内では、キュ
ーバ(0.993)
、ウルグアイ(0.955)に次いで高く、他方、「人間開発報告書 2010」における高等教育比
率(2001-2009)は、68.1 で、中南米地域では、ベネズエラ(78.1)に次いで高い比率となっており、教
育については、総じて中南米地域では非常に高いレベルにあることがわかります。
アルゼンチンにおける高等教育は、1995 年に制定された高等教育法に基づき、大学教育と非大学高等
学校より構成されています。大学教育は、①Universidad(通常の大学)と②Instituto Universitario
と称する単一学科の大学からなり、非大学高等学校は、日本の短期大学に相当し、③Instituto Superior
No Universitario と称されております。大学として位置付けられている①Universidad と②Instituto
Universitario は、全国に 115 校存在し、内訳は、以下の通りです。
国立大学 47、私立大学 46、国立 Instituto Universitario 7、私立 Instituto Universitario
12、
州立大学 1、外国大学 1(ボローニャ大学)
、国際大学 1(FLACSO:ラテンアメリカ社会科学部)
大学は、国が管轄し、Instituto Superior
No
Universitario は、各州が管轄しており、各州の教
育省(州レベルにおいても地方行政機関に「省」が存在)代表者より構成されている教育連邦審議会が、
その調整に当たっています。また、Instituto Superior No Universitario は、全国に約 1,700 校存在
し(半数以上が教員育成機関)、約 35 万人の学生が学んでおり、就学年数は、2~4 年間です。
大学で学士の学位を授与する学科として認められるための条
件は、最低授業年数 4 年間、最低授業時間数 2,600 時間であり、
大学院では、Especialidad(専門職学位)の学位を授与するた
めの最低授業数が 360 時間、Maestría(修士学位)の学位を授
与する最低授業数は 540 時間(そのうち、160 時間が研究)で、
Doctorado(博士学位)については、最低授業時間数の指定はあ
りません。
また、得られる学位としては、医師、歯科医師、薬剤師、各
種工学系学士、建築士、心理士、獣医師等、政府が規定してい
る 29 の資格を伴う学位が存在します。
学士の学位を取得するための基準就学年数(計画的に履修し
た場合の学位取得までに要する期間)は、大学や学科によって様々なのも当国大学教育の特徴です。さら
には、学生の多くが仕事をしながら学んでいることから、実際の平均就業年数は、基準就学年数を大幅に
上回っています。例えば、国立大学において会計士の資格を取得するための基準就学年数(全大学の平均
値)は 5 年間ですが、実際の平均就学年数は 8.1 年であり、医師の場合、基準就学年数 6.4 年に対し、平
均就学年数 9.2 年です。また、これが私立大学の場合になると、会計士の場合、基準就学年数 4.3 年間に
対し、平均就学年数 6.5 年間です。
(2007 年大学統計より)一般的に私立大学の学生の方が、資力のある
家庭の学生が多く、勤労学生が尐ないためか、学生の平均就学
年数が国立大学の学生のそれよりも短く、効率よく早めに卒業
できるようです。
全国の大学の学生総数は、1,718,507 人であり(2010 年現在、
以下の数字は同年の統計)
、そのうち、国立大学が約 80%を占め
ており、残り約 20%が私立大学で学ぶ学生です。全国には、国
立大学が 47 校存在し、過去 20 年間に亘って、首都圏に複数の
国立大学が新設されましたが、依然としてブエノスアイレス大
学のプレゼンスが非常に高く、国立大学の学生総数の 22.3%、
(入学者総数の 19.0%、卒業者総数の 24.3%)、教員総数の 18.7%
を占めております。国立大学の中で、5%以上の生徒数のシェア
を占めている大学は、ラプラタ大学(7.8%)
、コルドバ大学(7.7%、国内の主要都市 29 か所に工学系の学
部を有する国立技術大学(UTN)
(6.0%)とロサリオ大学(5.7%)です。即ち、これらの 5 校で国立大学の
生徒数の 49.5%を占めていることになります。
2000 年~2010 年における全国の大学における学生数の年間
増加率は 2.5%ですが、私立大学の増加率は 5.8%であり、国立大
学の増加率(1.8%)を大きく上回っています。この背景として
は、国立大学のマンモス化による私大への学生の流入、子弟を
私大に通わせることができる資力を有した家庭の増、大学進学
率の上昇に伴う私立大学の定員増、近隣諸国からの入学者増等
の諸事情がありそうです。
学費は、国立大学においては無料であり、ブエノスアイレス
大学を始め、多くの大学では、入学が無試験です。このため、
入学生は非常に多いのですが、最初の 1 年目で退学する学生数
も多く、卒業まで至る学生の比率は、非常に尐ないのが実情です。
(入学生:415,070 人、卒業生:99,439
人)
また、学生に占める高い女性比率も特徴の1つであり、国立大学では 56.3%、私立大学では 55.0%が女
性、卒業者数ベースでは、それぞれ 59.7%と 60.9%であり、真面目に勉強した女性の社会進出が進んでい
るという裏付けデータにもなりそうです。
なお、学生に人気のある専攻分野は、学生数の 43%を占める社会科学分野(経済学、法学系)と 25%を
占める応用科学分野(工学、建築学、農学等)で、社会で直接的に役に立つ分野に人気があります。
教員は、国立大学における教員数は、149,123 人であり、そのうち、フルタイムの教員は、わずか 19,931
人、ハーフタイムが 29,557 人であり、パートタイムが非常に多く、102,097 人にも上っています。
大学院生については、学生総数が 111,471 人であり、そのうち、専門職学位過程で 49,871 人、修士課
程で 43,352 人、博士課程で 18,248 人であり、修了者数は、専門職学位過程で 6,226 人、修士課程で 2,963
人、博士課程で 1,518 人です。大学院生が最も多い分野は社会科学であり、最も尐ない分野は基礎科学で
す。
10 月 8 日~11 月 30 日: 第三国研修「自然保護官育成」実施
10 月 13~20 日: 第三国研修「自然保護官育成」・島川在外研修講師来ア
10 月 15~26 日: 第三国研修「貧困人口向け食糧安全保障(Pro Huerta)」実施
10 月 15~26 日: 第三国研修「中南米の有用天然植物資源の開発と持続的利用」実施
10 月 22 日~11 月 9 日:第三国研修「中小企業における経営・生産管理技術の応用」実施
10 月 27 日~11 月 3 日:第三国研修「中小企業における経営・生産管理技術の応用」・平本在外研修講
師来ア
10 月 29 日~11 月 23 日:第三国研修「南米地域人獣共通感染症の予防と制圧対策」実施
平成 24 年 10 月-118 号
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