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オーブラックの家

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オーブラックの家
ー14は建玉に対して 20%程度の割合を占めており、商品市場全体でもある程度の存在
感を示していると考えられる(第 1-1-19 図)15。
第 1-1-19 図 市場取引に占めるインデックストレーダーの割合:
金融商品の開発の進展により市場全体でもある程度の存在感
(万枚)
80
小麦先物価格
70
シカゴ 小麦
(ドル/ブッシェル) (万枚)
12
200
建玉全体
10
60
150
40
20
(ドル/ブッシェル)
8
建玉全体
6
8
50
30
シカゴ トウモロコシ
トウモロコシ
先物価格
(右目盛)
6
インデックス
トレーダー
10
0
4
100
4
50
インデックス
トレーダー
2
2
0
(年)
0
0
(年)
(備考)1. 米国商品先物取引委員会(CFTC)より作成。
2. 毎週金曜日に公表される、その週の火曜日時点の建玉データ。先物とオプションの合計(Combined)。
また、2000 年代半ば以降、原油や金等を対象とした商品インデックスにかかるET
Fの開発も進み、投資家の裾野は個人投資家を始め、更に広がりを見せた。その結果、
01 年にはほとんど存在すらしていなかった商品インデックスETF(コモディティE
TF)の残高は、05 年には 70 億ドル、10 年末には 1,800 億ドルを超える規模にまで
なっている(第 1-1-20 図)
。
14
インデックストレーダーとは、商品インデックスに投資することにより運用を行う投資家。当業者・非当業者い
ずれにも含まれる。
15
小麦とトウモロコシの建玉におけるインデックストレーダーの割合の 06 年以降の平均は、それぞれ 23%、19%
となっている。
− 20 −
第 1-1-20 図 商品ETFの残高推移:
2000 年代初頭には存在すらしていなかったが、急拡大
(億ドル)
2,000
1,848
1,800
1,600
1,400
1,200
1,200
1,000
800
549
600
413
400
200
0
201
0
1
3
26
70
2001
02
03
04
05
06
07
08
09
10
(年)
(備考)ブラックロック社資料より作成。
(2)新興国取引所の台頭
一方、新興国における農作物や鉱物資源に対する需要の急拡大は、当該国の商品市
場での取引高の拡大にもつながっている。
中国国内には、上海、大連等数か所に商品取引所があるが、2000 年代半ば以降取引
高が急増しており、
世界の商品取引におけるこれらの取引所の存在感が増している
(第
1-1-21 図)
。上海先物取引所(SHFC)
、大連商品取引所(DCE)
、鄭州商品取引
所(CZCE)等がその代表とされ、90 年代前半に設立された比較的新しい取引所が
多いが、農作物や鉱物の取引において、今やシカゴ商品取引所(CBOT)等、数百
年の歴史を持つ世界の主要取引所をしのぐ取引高となっている16。特に、上海商品取
引所は、10 年には、商品先物の出来高で年間6億枚を超え、世界一となった。これら
の中国の商品取引所は、外資規制を設けているため、主に国内の市場参加者のみによ
る取引である。同国の旺盛な実需が、商品取引市場の取引高拡大につながっていると
考えられる。
16
FIA(Futures Industry Association)(2011)
− 21 −
第 1-1-21 図 中国の商品取引所の売買高の推移:2000 年代半ば以降急増
(兆元) (01年=100)
140 14,000
(兆元)
70
120
12,000
100
10,000
40
80
8,000
30
60
6,000
40
4,000
20
2,000
60
50
20
上海(右目盛)
0
銅(上海)
小麦(鄭州)
大連
10
大豆ミール(大連)
鄭州
0
200001 02 03 04 05 06 07 08 09 10 (年)
0
2001 02 03 04 05 06 07 08 09 10 (年)
(備考)各商品取引所より作成。
(3)コモディティの金融商品化が商品価格に与える影響
ここまでみてきたように、商品取引における新たな投資家層の存在感の高まりや新
興国取引所の台頭といった 2000 年代の商品取引市場の構造変化は、
市場の価格形成に
どのような影響を与えているだろうか。
一般に、一次産品は、工業製品に比べて天候要因、地政学的要因等の影響を受けや
すく、また生産調整が行われにくい。このため、生産予測をもとに投機的取引が行わ
れやすい。実際、2000 年代後半のバイオ燃料等の開発に係る市場の投機的な動き、08
年後半の世界金融危機、その後の世界的な金融緩和による流動性の高まり等の動きと
軌を一にして、一次産品の価格は大きく変動している。
この時期にみられるようになった傾向が2点ある。1つは、商品価格と他の資産の
価格変動の相関が高まっていることが挙げられる。例えば、2000 年代の半ばから 08
年のピークに向けて商品価格が上昇した局面では、世界的な景気拡大を背景に金融資
本市場のリスク志向が高まり、株式市場では株価が上昇、為替市場では新興国通貨へ
の資金流入等がみられた。一方、金融危機発生後、金融資本市場全体にリスク回避の
動きが広がると、株価や新興国通貨が大きく売られる局面に合わせるように商品価格
も大幅に下落する動きがみられた。実際に、株式との相関係数をみると、2000 年前後
辺りまではほぼ無相関であったが、
2000 年代半ば以降は高まっている
(第 1-1-22 図)。
これは前述のように、コモディティが金融商品化し、投資家の商品取引市場への参入
が容易になったことと関係していると考えられる。かつては、コモディティは株式を
− 22 −
はじめとする伝統的資産の価格の動きとはほぼ無相関であるということで、オルタナ
ティブ(代替)資産と位置づけられていたが、現在は、幅広い投資家の資産ポートフ
ォリオに組み入れられてきているため、市場のリスク志向の影響を受けて価格が変動
する傾向にある。すなわち、投資家のリスク志向が高まれば(risk-on)
、価格が上昇し、
リスク回避志向が強まれば(risk-off)
、価格が低下する傾向がみられる。
第 1-1-22 図 商品と株式との価格相関:
2000 年前後まで無相関であったが、2000 年代半ば以降相関が高まる
(95年=100)
350
0.8
MSCI世界株式
インデックス
300
両インデックス間の相関係数
0.7
0.6
0.5
250
0.4
0.3
200
0.2
150
0.1
100
0
CRB商品
インデックス
-0.1
50
(年)
-0.2
1995
97
99
2001
03
05
07
09
(年)
(備考)1. ブルームバーグより作成。
2. 相関係数は、日次変化率についての各年毎のもの。
2つ目の傾向として、主要商品銘柄について、市場参加者別取引ポジションの推移
と価格の関係をみると、
「非当業者」の中でも、マネーマネージャーのネット・ポジシ
。近年の価格の上
ョン17と商品価格の変化に一定の相関がみてとれる(第 1-1-23 図)
昇局面では、マネーマネージャーはネットの買い(ロング)のポジションとなってお
り18、これらの投資家の動向が商品価格の形成に影響しているとみられる。彼らは、
価格ヘッジが主な取引ニーズである当業者(生産者・取引業者等)と違い、投機目的
で取引を行う投資家であるため、市場の変化に応じて素早く売買を繰り返すような取
引を行う傾向が強いとされる。投機家は反対売買によって利益を確定する動きを行う
ため、市場における投機家の存在は、理論的には、長期的に価格を安定させるもので
ある。また、色々な見方を持つ投機家が多数存在すれば、理論的には価格安定に寄与
すると考えられる。しかしながら、現状をみると、新興国の需要増加等の経済のファ
ンダメンタル要因がより増幅された形で商品価格に反映される傾向が強まり、実需に
17
ネット・ポジションとは、この場合、投資家の買い建玉と売り建玉を差し引きした残高のことをいう。
18
ロング・ポジションとは、投資家の買い建玉と売り建玉を合算したネット・ポジションが、
「買い」の状態であ
ることをいう。また、反対にネット・ポジションが「売り」である状態を「ショート・ポジション」という。
− 23 −
おける需給バランスからかい離した水準で市場価格が決定され、また、価格変動が不
安定化しやすくなってきていると考えられる。
第 1-1-23 図 主要商品銘柄の取引主体別ポジションと価格の推移:
マネーマネージャーのネット・ポジションと商品価格に一定の相関
ニューヨーク
ニューヨーク 銅
原油
(ドル/バレル)
150
スワップ
ディーラー
120
(万枚)
30
WTI先物価格
(右目盛)
20
10
マネー
マネージャー
-10
0
60
-2
-30
30
0
(年)
-6
-8
小麦先物価格
(右目盛)
10
(ドル/トン)
12
スワップ
ディーラー
0
-10
マネー
マネージャー
-20
当業者
銅先物価格
(右目盛)
マネー
マネージャー
2
1
当業者
0
(年)
シカゴ トウモロコシ
シカゴ 小麦
(万枚)
20
3
-4
-20
当業者
4
2
90
0
(ドル/トン)
5
(万枚)
6
スワップ
4
ディーラー
(万枚)トウモロコシ先物 スワップ
価格(右目盛) ディーラー
40
10
20
8
0
6
-20
4
-40
2
-60
0
-80
(年)
(ドル/ブッシェル)
8
7
6
5
4
3
2
1
マネー
当業者
マネージャー
0
(年)
(備考)CFTCより作成。
4.交易条件の変化と国際的所得移転
世界貿易に占める一次産品貿易の割合は、近年の世界的な資源需要の高まりととも
に、一次産品価格の上昇の流れを受けて、年々拡大している(第1-1-24図)。一次産品
に係る貿易構造は各国で様々であるが、資源価格の上昇は、通常、資源輸入国から資
源輸出国への所得移転の拡大を意味する。
以下では、一次産品価格の上昇がもたらす経済的影響について、交易条件の観点か
ら考察する。
− 24 −
第1-1-24図 世界貿易に占める主要一次産品貿易のシェア:
世界的な資源需要の高まりとともに一次産品価格上昇の流れを受け、拡大
(2)各国の一次産品貿易(GDP比、2007年)
(1)世界貿易に占める一次産品貿易のシェア
(%)
1995
2000
2005
2008
小麦
0.28
0.18
0.15
0.24
米
0.11
0.09
0.08
0.11
(%)
60
50
トウモロコシ
0.18
0.12
0.10
0.15
コーヒー
0.26
0.15
0.12
0.14
綿花
0.18
0.10
0.08
0.07
鉄鉱
0.16
0.14
0.27
0.44
10
銅鉱
0.11
0.08
0.14
0.18
0
ニッケル鉱
0.03
0.03
0.04
0.06
-10
アルミ鉱
0.09
0.08
0.09
0.09
原油
3.13
4.67
6.03
7.69
天然ガス
0.55
0.75
1.04
1.28
合計
5.08
6.39
8.14
10.45
30
鉱産物
農産物
20
-20
輸出
燃料
輸入
韓国
中国
日本
インド
イタリア
ドイツ
タイ
アメリカ
フランス
英国
メキシコ
南アフリカ
ブラジル
インドネシ ア
オーストラ リア
カナダ
ニュージー ランド
マレーシア
アルゼンチ ン
ロシア
チリ
サウジアラ ビア
(備考)UNCTAD、世界銀行より作成。
一次産品
貿易収支
40
(1)交易条件の変化
一般に、一次産品価格の上昇は、資源輸出国の交易条件の改善、資源輸入国の交易
条件の悪化をもたらす。交易条件とは、輸出価格指数を輸入価格指数で除した比率で
あり、輸入価格に比して輸出価格が上昇(下落)する場合には、交易条件は改善(悪
化)し、自国にとって貿易を行うことが有利(不利)となる。
2000年代における各国の交易条件の推移をみると、日本と韓国については、一次産
品価格の動きに合わせて輸入価格が大きく変動しており、08年の原油価格が高騰した
局面では交易条件は大きく悪化した(第1-1-25図)
。両国については、輸出価格の上昇
が抑えられる傾向があり、輸入価格とのかい離が広がることで交易条件が悪化してい
る。他方、ドイツ、アメリカ等の欧米諸国は、日本、韓国と同様に資源輸入国である
ものの、交易条件は安定的に推移している。08年の原油価格高騰局面においても、輸
入価格の上昇に合わせて輸出価格が上昇しており、
交易条件の悪化が抑制されている。
また、資源輸出国である石油輸出国の動向をみると、交易条件は輸出価格の動きにほ
ぼ同調して推移している。
− 25 −
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