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電子遷移

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電子遷移
分子分光学2 電子遷移
分子分光学2:
14.1 二原子分子の電子スペクトル
(a)項の記号
電子状態に名前をつけまし う
電子状態に名前をつけましょう
項記号: 原
項記号
原子の電子状態を表す記号
電 状 を表す記号
電子の軌道角運動量Lとスピン角運動量S、および全電子角運動量Jを使っ
て表記する。
項
重要
2原子分子の電子状態 項記号 の付け方
方針
1.Λの決定
全電子の分子軸周りの軌道角運動量Λ(電子の全軌道角運動量Lの
分子軸(量子化軸) の射影成分)を決定し ギリシ 大文字でラベルする
分子軸(量子化軸)への射影成分)を決定し、ギリシャ大文字でラベルする。
2.2S+1の決定
電子の全スピン角運動量S(個々の電子のスピン角運動量量子数の和)を
使って、2S+1(多重度)でラベルする。
等核2原子分子なら
3.反転対称性(パリティ g/u)の決定
全電子軌道の反転対称性 パリティ(gまたはu)を決定し、ラベルする。
4 鏡映対称性(+/‐)の決定
4.鏡映対称性(+/
)の決定
全電子軌道の原子核を含む面における鏡映対称性(+または‐)を決定し、
ラベルする。
+/‐
/
2S+1
S Λ
g/u
/
等核2原子分子
2S+1
Λ
異核2原子分子
2原子分子の電子状態 項記号 の付け方
1.全電子の分子軸周りの軌道角運動量Λ(電子の全軌道角運動量Lの
分子軸(量子化軸)への射影成分)を決定し、ギリシャ大文字でラベルする。
電子は分子軸に対して方向量子化されている
L = l1+l2+l3+...
電子全軌道角運動量量子数=
個々の電子の軌道角運動量量子数の和
電子全軌道角運動量量子数の分子軸への射影成分
個
個々の電子の分子軸(量子化軸)周りの角運動量の合計
電
分 軸 量
軸
角運動量 合計
2.電子の全スピン角運動量S(個々の電子のスピン角運動量量子数の和)を
電
角 動 (個
電
角 動
数 和)を
使って、2S+1(多重度)でラベルする。
S = s1+s2+s3+...
2S+1 多重度
全スピン角運動量Sの分子軸への射影成
分はΣである。全電子角運動量の分子軸
への射影成分はΩ
射影成分は = Λ+ Σとなる。
となる
等核2原子分子なら
3.反転対称性(パリティ g/u)の決定
全電子軌道の反転対称性
電 軌道 反転対称性 (g
(gまたはu)を決定し、ラベルする。
)を決定 、ラ
する。
2電子の場合 軌道のパリティの掛け算
gg x g = g
xg=g
u x u = g
g x u = u
4.鏡映対称性(+/‐)の決定
全電子軌道の原子核を含む面における鏡映対称性( または )を決定し
全電子軌道の原子核を含む面における鏡映対称性(+または‐)を決定し、
ラベルする。
2電子の場合 軌道の鏡映対称性の掛け算
(+) x (+) = (+)
((‐) x (‐
) ( )) = (+)
( )
(+) x (‐ ) = (‐)
O2
1πg,x
yz-plane
1πg,y
(closed shell) × ((+)) × ((–)) = ((–))
O2
Σ term: reflection in a plane containing the internuclear axis. A + superscript on the internuclear
axis A + superscript on
Σ
H2の電子軌道とエネルギー
電
電子配置(基底電子配置)
基底電
反結合性軌道 1σu
結合性軌道1σg
結合性軌道
H2(基底状態)の場合
電子配置(基底電子配置)
1.Λの決定
σ軌道にある1電子の分子軸周りの軌道
角運動量λは0
Λ= λ1+ λ2=0+0=0
2.2S+1の決定
S= 1/2+(‐1/2)=0
2S+1=1
+/‐
+/
1
Σg/u
/
H2(基底状態)の場合
3.反転対称性(パリティ
転対称性(パ
g/u)の決定
) 決定
電子配置(基底電子配置)
2個の電子はg軌道にある
g x g = g
4.鏡映対称性(+/‐)の決定
個の電子は 軌道にある
軌道にある
2個の電子は+
(+) x (+) = (+)
+
H2(基底状態)の項記号
1
+
Σg
H2(励起状態)の場合
1.Λの決定
Λ= λ1+ λ2=0+0=0
1σg11 σu1
Σ
2.2S+1の決定
S= 1/2+1/2=1
2S+1=3
3.反転対称性(パリティ g/u)の決定
g x u = u
4.鏡映対称性(+/‐)の決定
+
(+) (+) (+)
(+) x (+) = (+)
+
3
+
Σu
He2
1.Λの決定
電子配置(基底電子配置)
Λ= λ1+ λ2+ λ3+ λ4=0+0+0+0=0
2.2S+1の決定
S= 1/2+ 1/2 +(‐1/2) +(‐1/2) =0
2S+1=1
3.反転対称性(パリティ g/u)の決定
g x g x g x g = g
4.鏡映対称性(+/‐)の決定
+
(+) x (+) x (+) x (+) = (+)
(+) x (+) x (+) x (+) = (+)
+
閉殻(電子軌道がすべて電子
が配置されたとき)の結果
Λ= 0 S=0 g (+)
2s と2pから構成される軌道のエネルギー
pz
反結合性軌道
2σu
pz
2πg
px py
2p
px py
2p
2πu
px py
px py
結合性軌道
pz
反結合性軌道
2s
結合性軌道
2σg
pz
1σu
1σg
2s
(d) 等核二原子分子の構造(第二周期の等核二原子分子の軌道エネルギー)
原子によってσ オ
原子によってσ
オービタルを構成する2sと2pzの混合が異なるため
ビタルを構成する2sと2pzの混合が異なるため
σ オービタルの軌道エネルギー(特に2σg)が変化する
Li2 2 Be2 2 B2 2 C2 2 N2
O2 2 F2
分子軌道の構成原理
原子と同様に
1.軌道エネルギーの低い方から順に1軌道に2個までの電子を配置する
2.縮退した軌道に配置する場合には、スピンを平行にして異なる軌道に配置する
σg2 σu2σg2 σu2 σg2 πu2 πu2 πg1 πg1
閉殻
pz
O2(基底状態)の場合
‐
2σu
pz
2πg
px py
px py
2
2p
2
2p
2 u
2π
px py
px py
2σg
pz
pz
1σu
2s
2s
1σg
O2(基底状態)の場合
σg2 σu2σg2 σu2 σg2 πu2 πu2 πg1 πg1
閉殻
1.Λの決定
Λ λ1+ λ2=1+(‐1)=0
Λ=
1+( 1) 0
π軌道の
λは 1または 1
λは+1または−1
3
‐
Σg
πg ‐ πx
2.2S+1の決定 π 軌道
x
S 1/2+
S=
1/2 1/2
=1
1
πy 軌道
2S+1=3
3 反転対称性(パリテ g/u)の決定
3.反転対称性(パリティ
/ )の決定
g x g = g
4.鏡映対称性(+/‐)の決定
((‐)) xx (+) =
(+) = ((‐))
πg+ πy
(b) π オービタル
πx 軌道(2つの2px 軌道からつくられる)
πy 軌道(2つの2py 軌道からつくられる)
エネルギーは同じ
エネルギ
は同じ
(2重に縮退している)
反結合性軌道 g
結合性軌道 u
π オービタルの結合性軌道と反結合性軌道の
オ ビタルの結合性軌道と反結合性軌道の
反転対称性はσ オービタルとは反対になる
(b)選択律
2原子分子の電子遷移の選択律
1. Σ 項については Σ+↔ Σ+ と Σ– ↔ Σ– だけが許容
2. ラポルテの選択律
ポ
選択律
パリティの変化を伴う遷移だけが許容
許容 g ↔ u
禁制
g ↔g u ↔u
始状態の波動関数 x 遷移双極子モーメント x 終状態の波動関数が
偶関数になれば許容、奇関数になれば禁制
µはx, y, z(奇関数)と同じ対称性すなわち u対称性をもっている。
g→g
u→u
g↔u
g × u × g = u 禁制
u × u × u = u 禁制
g × u × u = g 許容
Σ↔Σ 遷移を引き起こす µは z(分子軸方向)対称性だけであり
これは(+)の対称性を持っている。
Σ+↔Σ– (+) × (+) × (–) = (–) 禁制
Σ+ ↔ Σ+ (+) × (+) × (+) = (+) 許容
Σ– ↔ Σ– (–)
( ) × ((+)) × (–)
( ) = (+)
( ) 許容
問 許容遷移はどれか?
振電遷移
禁制である遷移が分子非対称な振動により許容化したもの
g → g や u → u などが許容になる。
例 d‐d遷移
(c)振動構造
(c) 振動構造
フランクーコンドンの原理
原子核は電子よりはるかに重いので、電子遷移は原子核がそれに
応答するよりずっと速く起こる
(d)フランクーコンドン因子
フランクーコンドンの近似 The Franck–Condon approximation
電子波動関 ψε と
振動波動関数 ψυ の積
電子双極子モーメント
(振動波動関数の重なり積分)
|S(υf,υi)|2 フランクーコンドン因子
ク
ド 因子
For Br2, Re = 228 pm
250 cm–1
S(0,0)2 = 5.1 × 10–10
(e)回転構造
振動スペクトルには3つの枝がある
重要
P枝 ΔJ = −1
υ + 1 ← υ遷移
遷移において
お
低波数方向に
Q 枝 ΔJ = 0 ほとんど1本
R枝 ΔJ = 0
高波数方向に
Q 枝は分子軸周りに電子軌道角運動量
Q
枝は分子軸周りに電子軌道角運動量
を持つ場合のみ現れる(例 NO基底状態 Π)
理想的な分子
想的な分
(剛体回転子+調和振動子)
実際の分子
実際の分子
スペクトル線の間隔
Jともに広がる
一本線から密集した束状になる
本線から密集した束状になる
Jともに狭くなる
と
を別々に求めるには
1H35Cl Cl
(d) 回転構造
二原子分子の電子スペクトルに現れる回転構造
電子振動エネルギー
回転定数
基底状態 B
励起状態 B’
回転定数
基底状態 B
励起状態 B’
結合長
励起状態>基底状態
励起状態<基底状態
帯頭
(バンドヘッド)
Q
P head
Q
R
R
P head
14.2 多原子分子の電子スペクトル
多原子分子 電子
ク
(a)d‐d遷移
金属錯体中の金属原子の遷移
配位場開裂定数
ligand field splitting parameter
ligand‐field splitting parameter
重要
d‐d遷移(g‐g遷移)は禁制
しかし、振動との結合で許容になる
(振電相互作用)
→ 遷移強度は弱い
(b)電荷移動遷移
: CT(Charge Transfer) bands
金属錯体において金
属と配位子間の遷移
LMCT: ligand to metal
MLCT:metal to ligand
電子が長い距離を移動するので
遷移双極子モーメントは大きい
遷移強度は強い
重要
(c)π* ← π および π* ← n 遷移
(c)π* ← π および
π* ← n 遷移
重要
π* ← π
←
π* ← n 許容遷移 遷移強度強
遷移強度強い(ε大)
( 大)
禁制遷移 遷移強度弱い( ε小)
シアニン色素のスペクトル( π* ← π 遷移)
共役長によるシフト
1重項
S0
1重項
3重項
S=1/2 1/2=0 S=1/2+1/2=1
S=1/2‐1/2=0
2S+1=1
2S+1=3
S2
T2
1重項
S1
3重項
T1
1重項状態 S
3重項状態 T
電子励起状態がたどる道
電 励起状態 緩和 程
電子励起状態の緩和過程
重要
14 3 蛍光とりん光
14.3 蛍光とりん光
発光寿命が異なる2つの放射過程がある
寿命が な
放射
があ
蛍光
寿命短い
同じスピン多重度を持つ電子状態間
の遷移
りん光
寿命短い
異なるスピン多重度を持つ電子状態
間の遷移
系間交差ISC
無放射過程
1重項
3重項
系間交差ISC
異なるスピン多重度を持つ
状態間の遷移
(電子スピンが変化する)
スピン軌道相互作用が原因
内部転換IC
高い電子励起状態から
高
電子励起状態から
低い電子基底状態の
高振動状態への遷移
高振動状態は溶液中では
振動緩和する
ジャブロンスキーダイアグラム
1重項
14.4 解離と前期解離
無放射過程
直接解離
反発型のポテンシャルをもつ電子状態に励起されると分子は解離する
吸収スペクトルはブロードで構造を持たない
CF3I
前期解離
安定なポテンシャルを持つ電子励起状態であっても
反発型のポテンシャルを持つ電子励起状態と相互作用してい
るといずれ解離する
ず 解離す
吸収スペクトルは離散構造と連続構造が重なったものになる
200nm <240nm
レーザー
分光学におけるレーザーの優位性と応用
重要
高い放射強度
高い単色性
高い指向性
高い干渉性
パルス可能
レーザー光の特徴
強い光?
電球100W 半導体レーザー4mW
遠くに行っても広がらない →
空間的コヒーレンス、および時間的コ
空間的
ヒ レンス および時間的
ヒーレンスが高い
高
コヒーレント光源
光源
インコヒーレント光源
干渉性がない
Light bulb
コヒーレンス長
コヒ
レンス長
~400nm
コヒーレント光源
電磁波の干渉性が高い
He‐Ne laser
~10cm
時間的コヒーレンス
高 (す
高い(すべての光の振動数は同一
光 振動数
コヒーレンス時間は∞)
時
)
低い(振動数が異なる光が混在 コヒーレンス時間は有限)
コヒ レンス時間とコヒ レンス長(時間的コヒ レンスの測度)
コヒーレンス時間とコヒーレンス長(時間的コヒーレンスの測度)
コヒーレンス長
コヒーレンス時間
∆λ: 波長の広がり
∆v: 振動数の広がり
波長・振動数の広がりが小さくなればコヒーレンス長・時間は大きくなる
→ コヒーレントな光になる
空間的コヒーレンス
高い(波面が揃っている)
低い(波面が乱れている)
コヒーレンス長は∞
14.5 レーザー作用の一般原理
LASER
Light Amplification by Stimulated Emission of Radiation
放射の誘導放出による光増幅
(a)吸収強度:
A: A:
B: B’:
ρ:
自然放出のアインシュタイン係数
誘導吸収のアインシュタイン係数
誘導放出のアインシュタイン係数
放射エネルギー密度
放射エネルギ
密度
誘導吸収
吸収・放出
速度定数
Bρ
誘導放出
B’ρ
重要
自然放出
N’ 励起状態
の占有数
A
N 基底状態
の占有数
W=NBρ
吸収速度
(
ρ)
W=N’(A+B’
放出速度
自然放出
光が存在しなくても
起こる
誘導吸収
光の存在(ρ)で起こる
誘導放出
重要
レーザーには反転分布(占有数の逆転)が必要
2準位系で反転分布は不可能
重要
占有数: 上準位 <下準位
分布: 熱平衡状態
ボルツマン分布 T > 0
占有数: 上準位=下準位
分布: 熱平衡状態
ボルツマン分布 T = ∞
どんなに強力に励起しても上準位=下準位
で平衡(吸収速度と放出速度が同じ)になり、
これ以上励起はできない。利得は0。
占有数: 上準位>下準位
分布: 非平衡状態
T<0 ?
反転分布になり利得がある。
しかし 準位系では不可能
しかし2準位系では不可能
反転分布は3準位以上の系で可能になる
重要
寿命が短
寿命が短い準位
速 緩
速い緩和
寿命が長い準位
遅い発光
3準位レーザー
4準位レーザー
速い
重要
速い
遅い
遅い
速い
レーザー発振
コヒーレンスの高い光の発生
レン の高 光の発生
共振器内で誘導放出を繰り返
す と 位相 揃 た光になる
すことで位相の揃った光になる
レーザーの例
アルゴンイオンレーザー
炭酸ガスレーザー
レーザーの例
例
ヘリウムーネオンレーザー
レーザーの例
例
エキシマレーザー(紫外光)
Xe*+ Cl
308 nm
XeCl
レーザーの例
例
色素レーザー(波長可変)
レーザーの例
レーザーのパルス化(Q スイッチ)
Q スイッチレーザーの例
Nd:YAG レーザー
Nd:YAG (neodymium‐doped yttrium aluminum garnet; Nd:Y3Al5O12) レーザーのパルス化(モードロック)
モードロックレーザーの例
チタンサファイヤレーザー(フェムト秒レーザー)
Ti:sapphire lasers (Ti:Al2O3 lasers, titanium‐sapphire) 14.6 レーザーの化学への応用
分光学におけるレーザーの優位性と応用
重要
高い放射強度
高い単色性
高い指向性
高い干渉性
パルス可能
レーザーの特長と応用例
特性
利点
応用
高い出力
多光子過程
非線形分光法(多光子イオン化分光)
飽和分光法
単
単一分子分光(近接場分光等)
接
等
高い単色性
高分解能
量子状態選択
高分解能分光法
同位体分離
高い平行性
長い光路長
高感度分析(キ ビテ リングダウン分光)
高感度分析(キャビティリングダウン分光)
高いコヒーレンス
ビーム間の干渉
反応制御 Phase control
パルス化が可能
ル 化 可能
正確な励起のタイミング
確な励起 タイ ング
緩和・高速反応追跡(ポンププローブ分光)
緩和
高速反応追跡(ポン
分光)
多光子イオン化分光
(2+1) REMPI
Scheme of Resonance Enhanced Multiphoton Ionization Scheme of Resonance Enhanced Multiphoton
Ionization
2+1 multiphoton ionization spectrum of NH3
飽和吸収分光(Doppler free)
超高分解能分光の標準(時間標準)の応用
質量 長さ 時間の標準
質量・長さ・時間の標準
1kgとは直径、高さとも39mmの円柱形で、白金90%、イリジウム10%の合金の質量
1mとは光が1/299792458秒間に進む距離
1secとは133Cs原子の基底状態の二つの超微細構造準位の間の遷移に対応する放
射の周期の9192631770倍の時間
Caesium standard
two hyperfine ground states of caesium‐133 atoms 9,192,631,770 Hz.
同位体分離
AVLIS (Atomic Vapor Laser
(Atomic Vapor Laser Isotope Separation) Isotope Separation)
238U 502.74nm
235U 502.73
nm
MLIS Molecular Laser Isotope Separation
MLIS Molecular Laser Isotope Separation
UF6の振動回転準位
16um赤外光の発生
Fly UP