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癌の予防と早期発見のために ∼消化器がんを中心に∼

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癌の予防と早期発見のために ∼消化器がんを中心に∼
第50回 富士見高原病院
みんなの健康教室
癌の予防と早期発見のために
∼消化器がんを中心に∼
平成28年2月4日(木) 15:00∼
富士見高原病院
外科 消化器科
井村 仁郎
日本人の死亡原因
死亡者全体の30%はがんで亡くなっている
がん以外の病気で死ぬ人が減った為、がんの死亡者が増えている
死亡数が多い部位(2013
2013年)
年)
1位
2位
3位
4位
5位
男性
肺
胃
大腸
肝臓
膵臓
女性
大腸
肺
胃
膵臓
乳房
肺
胃
大腸
膵臓
肝臓
男女計
• 肺癌は男性で1位、女性で2位
• がんで死亡した36.1万人のうちの約5割に当たる18.9万人は消化器がんによるもの
• 胃、大腸、肝臓、膵臓などが上位を占めている
部位別死亡率 年次推移(男性)
肺がん
胃がん
大腸がん
肝臓がん
膵がん
•
•
•
•
肺癌は右肩上がり。
胃癌での死亡率は減少傾向
肝臓がんも1990年台後半をピークに減少。
大腸癌、膵癌は増加しています。
部位別死亡率 年次推移(
年次推移(女性
女性)
)
大腸がん
肺がん
胃がん
膵がん
乳がん
•
•
•
•
成長著しい大腸がんが2000年頃から胃がんにかわって1位となり増加。
肺がんも増加して2位
胃がんは男性と同じく減少傾向で3位
膵がん、乳がんも増加している。
都道府県別 癌死亡率年次推移
• 長野県の癌死亡率は他県と比べて圧倒的に低い!
• ここ20年以上1位の座をキープ
全がん死亡率が低い
全がん死亡率が
低い55県
1995年
2000年
2005年
2006年
2007年
2008年
2009年
2010年
2011年
2012年
2013年
長野県、福井県、熊本県、沖縄県、香川県
長野県、福井県、沖縄県、熊本県、山梨県
長野県、岡山県、熊本県、大分県、香川県
長野県、福井県、滋賀県、沖縄県、香川県
長野県、大分県、岡山県、熊本県、沖縄県
長野県、熊本県、滋賀県、福井県、岡山県
長野県、山梨県、福井県、三重県、香川県
長野県、滋賀県、福井県、沖縄県、三重県
長野県、岡山県、香川県、福井県、滋賀県
長野県、滋賀県、福井県、徳島県、三重県
長野県、滋賀県、福井県、熊本県、山梨県
なぜ長野のがん死亡率が低い? 高齢者就業率が高いから?
長野県産の農作物との関連も指摘されており、疫学研究がすすんでいる。
とはいっても死亡原因の1位はがん。少しでもがんになるリスクを下げて、
がんになっても早期の段階で発見することが重要。
日本人男性におけるがんの要因
男性のがんの53.3%は生活習慣や感染が原因!
日本人女性におけるがんの要因
女性の癌の27.8%が生活習慣や感染が原因
癌予防に対してできることはたくさんある。
正しい知識を持って、できることからはじめましょう。
5つの
つの健康習慣を実践することで
健康習慣を実践することで
がんになるリスクが低くなります
禁煙
節酒
食生活の
見直し
身体を動
かす
適正体重
の維持
5つの
つの健康習慣で
健康習慣で
がんになるリスクが低くなります
禁煙
•
肺癌、食道癌、膵臓がん、胃癌、大腸癌、ぼうこうがん、乳がんなど
多くのがんに関連する
•
他人のたばこの煙を避けましょう。
•
受動喫煙でも肺癌(特に腺癌タイプ)や乳癌のリスクは高くなります。
•
喫煙者はひとりで抱え込まず、専門医に相談しましょう。
喫煙で癌のリスク1.5倍!
節酒する
• 多量の飲酒でがんのリスクが高くなる。
• 1日あたりの平均アルコール摂取量
23g未満:適正
46g以上:40%がんのリスク上昇
69g以上:60%がんのリスク上昇
• 特に食道がん、大腸がん、乳がんのリスク上昇
女性のほうが男性よりも体質的に飲酒の影響を受けやすく、
より少ない量でがんになるリスクが高くなるという報告もある。
適正量である純エタノール23
適正量である純エタノール
23gは?
gは?
食生活を見直す
塩分のとりす
ぎ
野菜や果物を
とらない
熱すぎる飲み
物や食べ物を
とること
減塩する
• 1日あたりの食塩摂取量
男性:9g未満
女性:7.5g未満
野菜と果物をとる
• 摂取が少ないグループでは、がんのリスクが高い。
• 野菜と果物をとることは脳卒中や心筋梗塞の予防につな
がる。
• できるだけ毎日意識的に摂取することが重要。
特に食道がん、胃癌、肺癌については野菜と果物を
とることで、がんのリスクが低くなることが期待さ
れています。
年齢別野菜摂取量
∼日本人は野菜不足∼
少なくとも年代別の平均摂取量はしっかり摂取
1日小鉢4皿の野菜料理を摂取することが目標。
身体を動かす
• 仕事や運動などで、身体活動量が高い人ほどがん全体の
発生リスクが低くなる。
• 運動はがんだけではなく、心疾患のリスクも低下させる。
• 可能な限り身体を動かす時間を増やしましょう。
推奨される身体活動量
<18歳∼64歳まで>
•「歩行またはそれと同等以上の強度の身体活動を毎日60
分行うこと」それに加えて
•「息がはずみ、汗をかく程度の運動を毎週60分程度行う
こと」
<65歳以上>
•「強度を問わず、身体活動を毎日40分行うこと」
適正体重を維持する
• BMI値=(体重㎏)/(身長m)2
• 男性:BMI値21.0∼26.9でがんのリスクが低い
• 女性:BMI値21.0∼24.9で死亡のリスクが低い
• 計算してみてください
• 太りすぎ、痩せすぎ、どちらも死亡のリスクが高くなり
ます
• 男性では肥満よりも痩せている人のほうがリスクが高い
(ただし、非喫煙者は痩せていても死亡リスクが高くならない)
• 女性ではBMI>30でがん死亡のリスクが25%高くなる。
• 男性はBMI値21∼27、女性は21∼25の範囲にあるように体重管理
5つの
つの健康習慣を実践することで
健康習慣を実践することで
がんになるリスクが低くなります
禁煙
節酒
食生活の
見直し
身体を動
かす
適正体重
の維持
胃がん
●リスク
•ヘリコバクター・ピロリ菌感染
•喫煙
•食塩
●予防
•野菜、果物摂取
ピロリ菌は胃がんの真犯人
• 胃がん、胃潰瘍、十二指腸潰瘍「真の犯人」。
• 通常、乳幼児期に感染します。
• ピロリ菌は胃の中に住み続け、慢性的炎症が続く。
⇒慢性胃炎
• ストレスや塩分の多い食事、発癌物質などの攻撃を受け
やすい無防備な状態となります。
• ヘリコバクター・ピロリ菌に感染したことがない胃にお
いて、胃がんが発生することはほとんどない。
• ただし、胃の入り口の癌(噴門癌)やその他の特殊な胃
癌は除く。
ピロリ菌ってなに?
• 大きさは0.5×2.5∼4.0μmで、数本のべん毛
を持ち、胃の中を移動する。
• ピロリ菌は、アンモニアで胃酸を中和することにより、
自分の身の周りの酸を和らげて、強酸下の胃の中で生き
ています。
ピロリ菌の感染率
ピロリ菌の予防は?
• ピロリ菌の感染率は、幼児期の衛生環境と関連。
⇒上下水道が十分普及していなかった団塊の世代以前の人
では感染が多い(約80%)。
• 衛生環境が整った現代では、ピロリ菌の感染率は著しく
低下。
• あまり神経質にならなくてもよいでしょう。
ピロリ菌の除菌方法
除菌後の注意点
• ピロリ菌を除菌することによる胃癌予防効果は34%
• 成功後も一定の割合で胃癌の発生する。
• ピロリ菌除菌によって、完全に胃癌の発生を抑制するこ
とは不可能です。
• 除菌後胃癌は除菌成功後3年目までが比較的多い。
• それ以後も漸減するが一定の割合で胃癌になる。
よって、定期的に検査する必要があります。
(ピロリ菌を除菌しても安心しないようにしましょう)
胃がん検診について
• 検診での胃癌発見は5600例
• 全国の胃癌年間発生数からみると全胃癌の5%程度しか
カバーできていない。
何が問題なのか?
• 受診率の低迷、受診者の固定、精検受診率の低迷、検診
制度が問題。
• 胃がん検診の対象年齢である40歳以上で見ると、男性は
42.6%、女性は31.6%の受診率。
胃がんの予防と早期発見のポイント
• 症状がない人は、検診を受けましょう。
• 要精検なら、必ず医療機関を受診すること。
• 慢性胃炎の症状(悪心、嘔吐、胸やけ、げっぷ、上腹部
の不快感など)がある人は医療機関受診しましょう。
• 両親や兄弟が、胃癌あるいはピロリ感染がある人は要注
意。
• ピロリ菌はなるべく早く除菌したい!
• 40歳以下の除菌で90%以上は癌を抑制できるといわれて
います。
(全体としては、30∼40%のリスク低下)
大腸がん
●リスク
•喫煙、飲酒、肥満・内臓脂肪、赤肉、
加工肉、家族歴
●予防
•身体活動、食品からの食物繊維、牛乳、
カルシウム、にんにく、ビタミンD
大腸がん早期発見のために
•
•
•
•
•
便潜血検査2日法を毎年受けること。
ただし、進行大腸がんの陽性率は75%、早期がんは40%。
2日法の場合+10∼20%高くなります。
毎年受けることで、癌の拾い上げが可能。
必ず毎年受けましょう。
注意:2回のうち1回でも陽性であれば大腸カメラをしましょう。
便潜血検査の再検査は全く意味がありません!
精密検査
• 精密検査は大腸カメラがゴールデンスタンダード
• 病変の生検や早期がんの内視鏡的治療を行える点で非常
に優れている。
• 問題点:
1. 下剤を多量に服用
2. 検査の苦痛
3. 出血や穿孔のリスク
CTコロノグラフィー
CT
コロノグラフィー
CTを用いてあたかも内視鏡の画像を見るように3次元に撮影できる。
良い点:
•検査自体の苦痛が少ない
•下剤は必要だが、内服する量は少ない
悪い点:
•1cm以上の病変の検出度は高いが、それより小さい病変・平坦な病変
に関しては、検出能は内視鏡に劣る。
•生検・治療ができない(結局内視鏡が必要となる)。
⇒どのような患者様におすすめできるか
•腸が癒着していてカメラをすすめることができない。
•過去に大腸カメラをしたが、痛くてできなかった。
• 検診で便潜血陽性を指摘されたが、大腸カメラがイヤなので
受診していない
→そういう方にもCTコロノグラフィーをすすめます!
CTコロノグラフィー画像
CT
コロノグラフィー画像
膵がん
• 死亡数で第4位。最近増加傾向です。
●リスク
喫煙、肥満、飲酒、糖尿病、高身長
●予防
食品からの葉酸(レバー、うなぎ、
枝豆、パセリなど)
膵臓ってどこ?
膵がんの5年生存率
ステージ
Ⅰ
Ⅱ
Ⅲ
Ⅳ
5年生存率
57%
44%
24%
3-11%
•膵がんの5年生存率は、全がんの平均よりも下回る。
⇒予後が悪いがん
•早期の発見が難しい上に治療が難しい。
ステージⅠで発見したい
ステージⅠで、癌の大きさが1cm以下ならば、5年生存率
80.4%。
膵がん早期発見のために
• 市町村の検診では、該当するものなし。
• 任意型検診(人間ドックなど)で、画像の検査行う。
• いかなる画像検査でも1cm以下の膵がんを見つけること
は、困難である。
• 膵がんに随伴する、間接的所見
を見つける(膵管拡張、嚢胞)
⇒腹部エコー、MRIが有効。
肝臓がん
肝臓がんの原因
• B型肝炎ウイルス、C型肝炎ウイルスの持続感染。
• 肝細胞がんの約60%がC型肝炎ウイルスが原因
約15%がB型肝炎ウイルスが原因
他の原因として……
• アルコール多飲→アルコール性肝硬変→発がん
• 非アルコール性脂肪肝炎→肝硬変→発がん
糖尿病などの生活習慣病、喫煙などとも関連がある
肝炎ウイルス
• C型肝炎ウイルスの感染経路
輸血、針刺し事故、刺青
• B型肝炎ウイルスの感染経路
垂直感染:母子感染
水平感染:性行為、輸血、刺青、針刺し事故
肝炎ウイルスに感染すると…..
C型:約70%が慢性肝炎に移行
5−10年間の慢性肝炎を経て、約60%が肝硬変へと進展。
肝硬変になってからは年間約8%が肝細胞癌を発症する。
B型:約5%が慢性肝炎→肝硬変に進展する。
肝炎ウイルスに対する経口抗ウイルス薬が劇的に進化!
高確率でウイルスを退治できる。
当院の人間ドックの紹介
「がん」早期発見のための基本検査
•胃カメラ ⇒食道がん、胃がん
•腹部エコー ⇒肝臓、胆嚢、胆管、膵臓、腎臓、
卵巣、膀胱など
•便潜血反応検査 ⇒大腸がん
•胸部レントゲン ⇒肺がん
※腹部エコーは身体に負担が少なく、そして広く
見ることのできる検査です。
オプションでおすすめ
・乳房エコー、マンモグラフィー
両方行うと、なお良い。早期の乳癌を発見できる可能性高
・PSA
前立腺の腫瘍マーカーです
・血中ピロリ抗体
ピロリ感染があるかどうかを調べます
・膵臓ドック(MRI)
膵管拡張や嚢胞を検出して膵がん早期発見を目指す
・大腸カメラ
大腸がん発見のゴールデンスタンダード
•胸部CT
かなり小さな肺がんも検出可能
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