...

複合ビタミソ剤(ノイロビタソ錠⑧)による光線過敏型薬疹 一貼布試験と光

by user

on
Category: Documents
23

views

Report

Comments

Transcript

複合ビタミソ剤(ノイロビタソ錠⑧)による光線過敏型薬疹 一貼布試験と光
ただいま、ページを読み込み中です。5秒以上、このメッセージが表示されている場合、Adobe®
Reader®(もしくはAcrobat®)のAcrobat® JavaScriptを有効にしてください。
Adobe® Reader®のメニュー:「編集」→「環境設定」→「JavaScript」で設定できます。
日皮会誌:103
(5),
663―666,
1993 (平5)
「Acrobat JavaScriptを使用」にチェックを入れてください。
なお、Adobe® Reader®以外でのPDFビューアで閲覧されている場合もこのメッセージが表示され
複合ビタミソ剤(ノイロビタソ錠⑧)による光線過敏型薬疹
ます。Adobe® Reader®で閲覧するようにしてください。
一貼布試験と光貼布試験の両方に陽性を示した1例−
酉 抜 和 喜 夫
要 旨
液性小丘疹出現し,次第に前腕神側・前胸部・頚部に
複合ビタミン剤レイロビタソ錠⑧)内服約3週後よ
も拡夫したため当科を受診した.尚,前記脳動脈瘤の
り日光裸露部に紅斑・漿液性小丘疹を生じた1例にっ
術後からボルタレソ⑥とミオナール⑧を時々内服して
き報告した.本剤による日光過敏症の報告はこれまで
いた.
にはない.貼布試験の結果はICDRG判定基準により
初診時現症:頚部から前胸部Vネックにかげて,朧
(十),同じく光貼布試験(UVA
斤を伴うびまん性紅斑があり粟粒大以下の細かい漿液
6J/cm2)の結果は(枡)
と反応増強.正常人コントロール5名について同様試
性小丘疹も混在していた(Fig.
験を施行したがすべて陰性であった.したがって,本
にも淡い紅斑と粟粒大前後の漿液性小丘疹や小水庖が
1).平背から前腕神側
症例は,光遅延型アレルギー性薬疹発症中に光なしの
集談ないし多発して認められた(Fig.
遅延型アレルギーも誘導されたものと考えられた.
化粧品使用による遮光のため皮疹は存在しなかった.
2入尚,顔面は
治療および経過:臨床経過と症状よりサンデンある
緒 言
いはノイロビタソの薬剤匹光線過敏症を疑い,この2
複合ビタミソ剤ノイロビタソ⑧は神経機能の円滑化
剤の中止とステロイド剤の内服・外用にて初診後約2
をめがして開発されたもので,1錠中には
週間で皮疹は消失した.尚,ボルタレソとミオナール
Octotiamine
ぱ内服を継続させた.2週後下記の試験を実施した.
25mg (VBI誘導体)・Riboflavin 2.5mg
(VB2)・Pyridoxine hydrochloride 40mg(VB6)・
Cyanocobalamin
0.25mg (VB12)を含有する.さら
光線テスト:デルマレイ(エーザイ製M-DMR-100
型)を用い30cmの距離で患者背部に照射し,24時間後
に賦形剤として乳糖,崩壊剤としてHydroxypropyl
に最少紅斑量を測定した.
Cellulose,光沢剤としてMagnesium
cm2で,UVAは8T/C
ティンダ剤としてHydroxypropyl
Triacetin, Macrogol
着色剤としてIron
Stearate,コー
Methylcellulose,
6000,Talc, Titanium
Dioxide,
Oxide を微量含有する㈹これまで
UVBの最少紅斑量は90m
でめった.
貼布試験・光貼布試験:原因薬剤決定のため施行し
た.ザジテソ1カプセル(重量139mg),
/イロビタソ
光線過敏症の副作用報告は見あたらない.今回,著者
1錠(同135mg),ボルタレソ1錠(同144mg),ミオナー
ぱ本剤内服開始約3週後より日元禄露部にのみ皮疹を
ル1錠(同158mg)をすりつぶし,各々に300mg重量
生じた1例を経験し,その患者に貼布・光貼布試験を
の白色ワセリンで混合した.これら4斉リを患者背部に
行い両試験とも陽性であったので報告する.
Finn
症 例
た.貼布24時間後にテープ除去し,一度判定後右列に
患者:47歳女.
のみUVA
初診:1990年6月4日.
しか.尚,UVA照射後は紺色の風呂敷の切片で貼布・
既往歴:1982年脳動脈瘤手術.
光貼布試験部位を覆って遮光した.結果は,ノイロビ
現病歴:1990年5月上旬よりアレルギ一性鼻炎のた
タソ(重量換算濃度31%)の貼布試験がICDRG基準で
め近医でザヅテソ⑧・ノイロビクソ⑧の投与を受け内服
(斗),光貼布試験部位は(舟)であった(Fig.
を続けてしたところ,同5月末になり子背に紅斑・漿
Table
東北厚生年金病院皮膚科
平成4年n月13日受付,平成5年2月5日掲載決定
T/
「!でも紅斑出現せず,正常範囲内
Chambers
on Scanpor⑧を用いて2列に貼布し
6J/cm2を照射した.その24時間後に再判定
1).これに対し,サンデン・ボルタレン・ミオ
ナールはいずれも陰性であった.また,ノイロビタン
のみで同様な手技を正常人コントロール5名(9∼43
別刷請求先:(〒983)イ山台市営城野区福室学高砂10
歳)に実施したが,貼布試験・光貼布試験とも全員陰
東北厚生年金病院皮膚科 酉抜和喜夫
性であった.尚,内服試験および成分貼布試験につト
3と
酉抜和喜大
664
亀
參
肆
1
Fig. 1 Diffuse erythema
y.ア
声声
Fig. 2 Sn・lall serous
and small papules are
papules
on the dorsal
aspect
ofthe hand.
seen on chest and neck.
Table 1 Results of patch (PT)
and photopatch
test (PPT)
24 h
48 h
PPT
PT
I Zaditen ≪ 32%
in pet
2 Neurovitaii⑥ 31%
in pet
3
in pet
in pet
Voltaren非 32%
4 Myonal
R 34%
一
PT
(UVA
6 J/cm2)
−
一
÷
舟
−
一
一
−
一
一
十∼升
ては患者の同意が得られず施行出来なかった.
考 察
貼布試験と光貼布試験の両試験に陽性を示しさらに
後者の反応が明らかに強い場合、理論的には3つの可
能性が考えられる≒第1は接触アレルギーと光接触
アレルギーが共存する、第2は貼布試験陽性反応が紫
Fig.
3 The results of patch test fleft) and
photopatch
1; Zaditen
Mvonaト片
tests (.right).
t、2 ; Neurovitaii皿、3; Voltaren爪 4;
665
複合ビタミソ剤の光線過敏型薬疹
外線により非特異的に増強された,第3は貼布試験部
位の不十分な遮光のためmasked
かったためと推論したい.
photopatch
testに
ビタミンは,生体内では合成されず外界から摂取す
なった,の3通りである.第2の可能性はMohajerin
る必要がある.その製剤は副作用の発現がきわめて稀
&
で安全性が高く,日常診療において広く用いられてい
Epsteinの実験データ3)から否定されている.第3の
可能性も自験例では遮光はほぼ完全であったと言える
る.ビタミソB製剤全身投与による薬疹としては過去
ため否定的である.したがって自験例は第1のタイプ
10年間(1983∼1992年)にわずかに4例のみである.
つまり光遅延型アレルギーのみならず遅延型アレル
それは,ミタソ50による局所紫斑型6)(原因成分剤
ギーも成立していると考えてよかろう.
Thiamine-disulfide),ビタメジソによる葺麻疹型7)・紅
自験例のように,臨床は露出部の光線過敏型薬疹の
斑丘疹型8)(原因成分剤はいずれもThiamine-
みであるが光貼布試験の他に貼布試験も陽性であった
monophosphate-disulfide),ネオラミソ3Bによる固定
例がすでに報告されている.花田ら4)の例はCarbarn-
疹型9)(原因成分不明)であり,光線過敏型薬疹の報告
azepinによる,高橋ら5)の例はピロキシカム内服によ
は著者の調べ得た限りではまだない.
る日光過敏型薬疹で,両例とも薬剤の貼布・光貼布・
ところで,自験例は成分貼布試験が実施出来ず,真
リンパ球幼若化試験がすべて陽性であり,さらに実施
の原因成分剤は不明であった.しかし,ノイロビタノ
した内服試験では非露出部にも皮疹が誘発された.高
錠の成分のうちRiboflavin
橋らは,その機序として,ピロキシカムは光がなくて
ide・Cyanocobalamin
・ Pyridoxine
hydrochlor-
ぱそれぞれ生体内において必須
もある程度蛋白と結合する八光が当たるとより多く
なVB2,VB6,VB12そのものであり,原因成分として
蛋白と結合し抗原が過剰になる可能性を考えている.
はVB1誘導体のOctotiamineあるいは緒言で記載し
自験例もおそらく同様な感作機序と考えられ,臨床的
た種々0微量添加剤による可能性を考えたい.
に被覆部に皮疹がみられなかったのは,遅延型アレル
本論文の要旨は日皮学会東北地方会第281回例会にて報
ギー性薬疹を起こすに十分な程の抗原量が生成されな
告した.
文
献
1)藤沢薬品工業社内資料(医薬情報室).
32(増刊9号):66-71, 1990.
2)堀尾 武:光パッチテストと内服照射テスト.佐
6)中村義郎,青木政之:チアミソジスルフィド注射
藤吉昭編:光線過敏症,改訂第2版,金原出版,
液による局所紫斑型薬疹,臨皮,37:1105-1108,
東京,
3)
1991, 220-226.
Mohajerin
violet
44
AH,
light on patch
: 213-217,
1983.
Epstein
S : Influence
tests,J
of ultra-
Invest
D erm心房,
1965.
7)高島 務,清水良輔,玉置昭治:ビタミソBIによ
る薬剤熱とインドメサシソによるアレルギー性肝
障害を示した1例,皮膚,29
: 637-641, 1987.
4)花田順子,照井 正,竹松英明,酉抜和喜夫,田上
8)相原道子,石田麻美,厚坂啓司,池滓善郎:ビタミ
八朗:湿疹型接触過敏反応と光線過敏反応とを同
ソB1誘導体(TPDS)によると思われる薬疹,皮
時に示したCarbamazepin
膚臨床,30 : 1373一一1377,
1988.
疹,臨皮,42
: 1095-1098,
(Tegretol
Ryによる薬
1988.
5)高橋一夫,池滓善郎,大沢純子,杉山朝美,中嶋
弘:ピロキシカムによる光線過敏症の2例,皮膚,
9)横尾雅子,岡 大介:ネオラミソ3B⑧による固定
薬疹の1例,皮膚,
32(増刊8号):229-231, 1990.
酉抜和喜夫
666
A
Case
of Photosensitive
―Positivity
to Both
l
Eruption
Patch
Photopatch
NeurovitanR
Test―
Division of Dermatology, Tohoku
Kosei-Nenkin Hospital, Sendai,Japan
of NeurovitanR,
cyanocobalamin).
female
a
with
13,1992; accepted for publication February 5,1993)
an eczematous
multivitamin
Positive patch
(併)at the UVA-irradiated
B
test (升) was
site. The
eruption
mixture
obtained
patient became
J Dermatol,
with
to have
103: 663∼666,1993)
words: photosensitive
drug
eruption, vitamin
on sun-exposed
(octotiamine,
reaction to the drug。
Key
by
Torinuki
report a 47-year-old
apn
and
Induced
Wakio
(ReceivedNovember
intake
Drug
B
riboflavin,
areas
which
pyridoxine
was
caused
the drug, but the severity of the reaction was
not only photoallergic
by oral
hydrochloride
reaction but also delayed
and
greater
allergic
Fly UP