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豊かな自然の保全(P9~P14)(PDF:1641KB)
第3章 施策の展開 第 3 章 施策 の 展開 基 本 方 針 1 豊 かな自 然 の保 全 (自 然 共 生 社 会 の構 築 ) 基本施策1 山林の保全 1 現状と課題 本市は、総面積の約 7 割を山林が占め、緑豊かな環境に恵まれています。 山 林 は 林 業 の 基 盤 と な っ て お り 、本 市 の 南 東 部 に 位 置 し 、鹿 屋 市 に ま た が る 高 隈 山 系 は 県 立 自 然 公 園 に 指 定 さ れ 、市 民 の 憩 い の 場 と し て 利 用 さ れ て い ま す 。ま た 、市 の 北 東 部 に 位 置 す る 高 峠 つ つ じ ヶ 丘 公 園 は 、霧 島 錦 江 湾 国 立 公 園 に 指 定 さ れ、 「 サ タ ツ ツ ジ 」が 約 100 種 10 万 本 自 生 し 、春 に 峠 一 帯 が ピ ン ク 色 に 染 ま る 景色を求めて多くの人でにぎわいます。 山 林 を 適 正 に 管 理 す る こ と は 、土 砂 災 害 を 防 ぐ だ け で な く 、水 源 の 涵 養 、二 酸 化炭素の吸収源確保につながります。 近 年 は 、生 物 多 様 性 の 観 点 か ら 国 際 的 に も 山 林 が 注 目 さ れ る こ と も 多 く な っ て い ま す 。高 隈 山 系 は 、ブ ナ や ケ ヤ キ の 南 限 地 と し て 知 ら れ て お り 、尾 根 部 の 落 葉 広 葉 樹 林 の 中 に ブ ナ 群 落 、ミ ズ ナ ラ 群 落 が あ り ま す 。ま た 、ブ ナ や ヒ メ コ マ ツ が 照 葉 樹 林 の 中 に 点 在 的 に 混 交 し て い る 景 観 も 珍 し い と い わ れ て い ま す 。こ う し た こ と か ら 高 隈 山 系 は 、原 生 的 な 森 林 生 態 系 か ら な る 自 然 環 境 の 維 持 、動 植 物 の 保 護 、遺 伝 資 源 の 保 存 、施 業 及 び 管 理 技 術 の 発 展 に 資 す る た め の「 保 護 林 」と し て 設定されています。 市民は、人間だけでなく動植物が快適な生活を送る ために山林の維持・管理をすることが重要であること を認識しなければなりません。しかし、昨今は林業の 衰退や従事者の高齢化等で山林の管理が行き届かなく なり、荒廃が進行する傾向にあるため、市、市民及び 事業者等が協力して山林の管理に取組んでいくことが 課題となっています。 2 施策の基本的方向 山 林 の 持 つ 多 面 的 機 能 で あ る 、水 源 の 涵 養 、多 様 な 生 態 系 の 保 全 、二 酸 化 炭 素 の吸収源確保を活かす保全・管理に努めます。 ◆指標及び数値目標 指標 単位 平 成 26 年 度 (アンケート実 施 年 度 ) 平 成 32 年 度 (中 間 年 度 ) 平 成 37 年 度 (目 標 年 度 ) 森 林 の手 入 れ・緑 の豊 かさ % 10 20 30 備考 数値目標は、市民アンケート調査の「良くなった」と「やや良くなった」を合わせた数値。 9 第3章 3 施策の展開 主体別の取組 (1) 市 の 取 組 ❒自然林の保全に努め、山林の環境に果たす役割の市民への情報提供など の 啓発を行います。 ❒ 高 隈 山 県 立 自 然 公 園 の 森 林 環 境 を 整 備 し 、希 尐 な 動 植 物 の 保 護 に 努 め ま す 。 ❒各種事業の実施においては、事前に十分な調査・検討を行い、野生生物の 生態に配慮し、野生生物の生息・生育環境の確保に努めます。 ❒野生生物の生息・生育環境の確保のため、生息地の保護や鳥獣保護区など の各種制度を活用して行為規制や保全事業を推進します。 ❒学校での教育活動、市民への広報活動、研修などを通じて自然保護及び野 生生物保護活動の普及を推進します。 ❒県森林整備・林業木材産業活性化推進事業等を活用して山林の保全に努め ます。 (2) 市 民 の 取 組 ❒本市に生息していない動植物種(外来種、移入種など)を自然に放すこと はしません。 ❒自然環境保全活動や希尐な動植物の保護運動への参加・協力に努めます。 ❒ 森 林 イ ン ス ト ラ ク タ ー な ど を 活 用 し て 、森 林 と の ふ れ あ い 活 動 を 行 い ま す 。 ❒山林を守るためのマナーの徹底に努めます。 ❒山林で実施される清掃活動、維持管理活動に積極的に参加します。 (3) 事 業 者 の 取 組 ❒垂水市に生息していない動植物種(外来種、移入種など)を自然 に放すこ とはしません。 ❒山林の自然及び生態系としての重要性に関する理解に努めます。 ❒山林の保護に配慮した事業活動に努めます。 ❒山林で実施される清掃活動、維持管理活動に積極的に参加します。 ❒山林の開発では、自然への影響を低減できる工法を採用します。 市の木(牛根松) 写真 垂水市 10 第3章 施策の展開 基本施策2 渓谷の保全 1 現状と課題 本 市 に は 、県 内 で も 有 数 の 清 流 と し て 知 ら れ る 本 城 川 上 流 に 猿 ヶ 城 渓 谷 が あ り ま す 。猿 ヶ 城 渓 谷 は 、県 立 自 然 公 園 、お お す み 自 然 休 養 林 に 指 定 さ れ て い る 高 隈 山 系 の 麓 に 位 置 し て お り 、素 晴 ら し い 緑 の 中 に 清 冽 な 水 が 流 れ 落 ち 、所 々 に 花 崗 岩 の 奇 岩・巨 岩 が 連 な っ て い ま す 。ま た 、平 成 22 年 に は「 猿 ケ 城 渓 谷 森 の 駅 た る み ず 」が 完 成 し 、大 自 然 と の 触 れ 合 い や 交 流 な ど 体 験 型 の 観 光 を 楽 し む こ と が で き 、市 内 外 か ら 多 く の 人 が 訪 れ て い ま す 。一 方 、多 く 人 が 集 う こ と に よ っ て ご み の ポ イ 捨 て 等 が 危 惧 さ れ 、そ の 美 し い 景 観 を 損 な わ な い よ う 維 持・管 理 を し て いくことが課題となっています。 2 施策の基本的方向 全国に誇れる美しい渓谷の保全・管理を行います。 ◆指標及び数値目標 指標 猿 ヶ城 渓 谷 の利 用 者 数 平 成 26 年 (現 況 年 ) 平 成 32 年 (中 間 年 ) 平 成 37 年 (目 標 年 ) 5万 9千 人 現状以上 平 成 32年 維 持 備 考 猿 ヶ 城 渓 谷 の 利 用 者 数 は 、「 年 」 単 位 で 統 計 を と っ て い る 。 (人) 60,000 50,000 40,000 30,000 20,000 10,000 0 H22 H23 H24 H25 H26 (年) 資料 垂水市水産商工課 図 3 -1 猿 ヶ 城 渓 谷 利 用 者 数 の 推 移 3 主体別の取組 (1) 市 の 取 組 ❒県立自然公園、自然休養林の各指定地域の保全を促進するため、県や関係 機関と連携し、管理に努めます。 ❒猿ヶ城渓谷総合整備事業により渓谷の整備を進めます。 ❒丌法投棄防止の啓発・監視を強化します。 ❒現存の施設については、市民からの意見を取り入れ、更に利用し易いよう 整備に努め、利用を促進します。 ❒ 猿 ヶ 城 渓 谷 の 利 用 者 増 進 の た め 、 PR 活 動 等 を 行 い ま す 。 11 第3章 施策の展開 (2) 市 民 の 取 組 ❒猿ヶ城渓谷及び周辺施設を積極的に利用します。 ❒県立自然公園、自然休養林の理解を深め、利用に際してはマナーを守りま す。 ❒ごみのポイ捨て、丌法投棄は行いません。 ❒清掃活動などのボランティア活動に積極的に参加します。 (3) 事 業 者 の 取 組 ❒事業所のレクリエーション等に猿ヶ城渓谷及び周辺施設を積極的に利用し ます。 ❒周辺で事業を行う際は、県立自然公園、自然休養林であることを理解し、 規制を遵守します。 ❒事業によって渓谷の景観が損なわれないような活動を心掛けます。 ❒清掃活動などのボランティア活動に積極的に参加します。 コラム 猿ヶ城渓谷 大 隅 半 島 の 北 西 1 0 k m に わ た っ て そ び え 立 つ 高 隈 山 系 の 一 部 は 、「 県 立 自 然 公 園・お お す み 自 然 休 養 林 」と し て 昭 和 4 6 年 に 指 定 さ れ ま し た 。猿 ヶ 城 渓 谷 は 、そ の 高 隈 山 系 の 麓 に 位 置 し 、夏 の 避 暑 地 と し て も 人 気 の ス ポ ッ ト で 、す ば ら し い 緑 の 中 に 清 冽 な 水 が 流 れ 落 ち 、所 々 に 花 崗 岩 の 奇 岩・巨 岩 が 連 な り 、降 り 注 ぐ 緑 の シ ャ ワ ー は 爽快です。 ま た 、刀 剣 山 の 断 崖 に は 赤 松( 南 限 地 )の 美 し い 幹 肌 を 見 る こ と が 出 来 、心 を 和 ま せてくれます。 猿 ヶ 城 渓 谷 の 下 流 に 位 置 す る 内 之 野 橋 は 、県 が 実 施 し て い る 公 共 用 水 域 の 水 質 調 査 地 点 に な っ て い ま す が 、 こ こ は 、 県 内 47 の 調 査 地 点 の 中 で 唯 一 AA 類 型 ( 最 も き れ いな水域)に指定されています。 猿ヶ城渓谷 森の駅たるみず 写真 垂水市 12 第3章 施策の展開 基本施策3 動植物の保全 1 現状と課題 本 市 に は 、鹿 児 島 県 レ ッ ド リ ス ト に 記 載 さ れ て い る 希 尐 な 動 植 物 が 数 多 く 生 息 しています。その中で、動物では、ヤマネが国の天然記念物に指定されており、 植 物 で は 、ハ ヤ ト ミ ツ バ ツ ツ ジ 、シ シ ン ラ ン 、ウ チ ョ ウ ラ ン 、ガ ン ゼ キ ラ ン 及 び ナ ゴ ラ ン は 県 の 野 生 希 尐 動 植 物 保 護 条 例 の 適 用 種 と な っ て い ま す 。ま た 、ク マ タ カ 、ブ ッ ポ ウ ソ ウ と い っ た 希 尐 な 鳥 類 も 確 認 さ れ て お り 、新 城 海 岸 で は ア カ ウ ミ ガメが上陸します。 野生の動植物は、相互に有機的な関係を結ぶこ とで、生態的バランスの上にその生息あるいは生 育環境が成り立っており、特定の種を保護すれば よいというものではありません。多様な生物によ り成り立つ生態系の観点で、動植物の生育・生息 環境を保全・保護していくことが課題となってい ます。 ガンゼキラン 写真 (一財)鹿児島県環境技術協会 2 施策の基本的方向 生物多様性確保の観点で、動植物の生育・生息場所の保全に努めます 。 ◆指標及び数値目標 指標 平 成 26 年 度 (現 況 年 度 ) 平 成 32 年 度 (中 間 年 度 ) 平 成 37 年 度 (目 標 年 度 ) 1頭 上陸 上陸 ウミガメ上 陸 数 (頭) 10 9 8 7 6 5 4 3 2 1 0 H17 H18 H19 H20 H21 H22 H23 H24 資料 鹿児島県ホームページ 備 考 平 成 23 年 度 と 25 年 度 は 監 視 を 実 施 し て い な い 。 図 3 -2 垂 水 市 の ウ ミ ガ メ 上 陸 数 13 H25 H26 (年度) 第3章 施策の展開 アカウミガメ 写真 (一財)鹿児島県環境技術協会 3 主体別の取組 (1) 市 の 取 組 ❒希尐動植物の生育・生息状況の把握に努めます。 ❒森林に生息する動植物を保護するため、高隈山系などの森林環境の保全に 努めます。 ❒協働による自然環境調査の実施を検討します。 ❒海岸の環境保全に努め、ウミガメの保護活動を進めます。 ❒ NPO 等 市 民 に よ る 希 尐 動 植 物 の 保 護 活 動 を 支 援 し ま す 。 ❒公共工事に際しては、希尐動植物の生育・生息環境の保全に努めます。 (2) 市 民 の 取 組 ❒希尐な植物を自生地から持ち帰らないようにします。 ❒動植物の生育・生息環境の保全に努めます。 ❒自然環境調査に参加します。 ❒外来種の取扱いは法律に則して行います。 ❒海岸の環境保全に努め、ウミガメの保護活動に協力します。 (3) 事 業 者 の 取 組 ❒事業の実施に際しては、希尐動植物の生育・生息環境の保全に努めます 。 ❒所有する森林や農地の管理には、希尐動植物に配慮します。 ❒自然環境調査に参加します。 ❒外来種の取扱いは法律に則して行います。 ❒海岸の環境保全に努め、ウミガメの保護活動に協力します。 コラム ヤマネ 森 の 妖 精 と も 言 わ れ て い る ヤ マ ネ 。そ の 小 さ な 体 と 、長 い 毛 並 み は 非 常 に 可 愛 ら し い も の で す 。ヤ マ ネ は 日 本 に お い て 絶 滅 が 危 惧 さ れ て い る 天 然 記 念 物 で す 。昔 か ら そ の姿と生態を変えていないことから生きた化石ともいわれています。 本市では、高隈山系一帯に生息していることが確認されています。 和名:ヤマネ 体長:60~80mm 目名:ネズミ目(齧歯目) 分布:ヨーロッパ、ロシア、アフリカ、中央アジア、 科名:ヤマネ科 中国、日本 14