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講義レジュメ6

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講義レジュメ6
オット-・フォン・ビスマルク(プロイセンの宰相)の言葉
ソフトウェアの法的保護 No.6
「愚者は経験に学び、賢者は歴史に学ぶ」
ソフトウェア著作権に関する裁判例
弁護士・弁理士:近藤剛史
[email protected]
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URL: http://www.kondolaw.jp/ TEL: 06−6314−1630
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イチロー語録(2005年1月9日NHK「イチロー、大リーガーの軌跡」
(復習) 著作権が認められるもの(対象)とは?
著作物の3要件とは?
「細かいことを積み重ねるしか頂上には行けないし、
それ以外に方法はない。」
「自分がやってきたことをしっかり継続すること」
「自分のミスによって凡打になったものには可能性がある」
「前に進む気持ちがあれば、楽しみはいくらでもある」
①
②
③
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1
(復習) 著作権には、どのような種類の権利があるのか?
(復習)著作権侵害となるのは、どういう場合か?
Q 支分権とは?
① 「
Q ソフトウェアにおいて、特に重要な権利(支分
権)と言えるものは何か?
② 「
性」(アクセス可能性)
性」
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民事責任と刑事責任
著作権侵害の法的効果
• 民事責任
①差止請求権
②損害賠償請求権
(不当利得返還請求権、名誉回復措置請求権)
• 刑事責任
10年以下の懲役又は1000万円以下の罰金又はこれらの併科
法人の両罰規定 1億5千万円以下の罰金
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民事責任
刑事責任
日本(大陸
法系、シビ
ルロー)
実額賠償(その時点 検察官による全件起
の時価)
訴(被害弁償などは情
状面で考慮される)
米国(英米
法系、コモ
ンロー)
懲罰的損害賠償(ペ 司法取引(plea
ナルティ)
bargaining)が行わ
れる
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2
「プログラム」に関する裁判例
ソフトウェアの表示画面に関する裁判例
・IBFファイル事件(東京高決平成4年3月31日)
市販のアプリケーションソフトをハードディスクに組み込むための指示
や情報を記述したファイルがプログラムの著作物に該当するか否か
が争われた事件であるが、東京高裁は、プログラムとは、電子計算機
に対する指令の組み合わせであり、それにより電子計算機を作動さ
せ一定の処理をさせるものでなければならないとし、さらに、創作性を
有するものが「プログラムの著作物」として著作権法上の保護を受け
る。電子ファイルであっても、上記機能を有しないものはプログラムと
はならない。プログラムを稼働させ一定の処理をさせるためには、そ
のプログラムの他、それに処理情報を与えるデータが必要であるが、
上記データを本体プログラムとは別個のファイルに記録させる場合、
そのファイルは、電子計算機に対する指令の組み合わせを含むもの
ではないので、著作権法上のプログラムではないとして当該データ
ファイルの著作物性を否定した。
・「積算くん」事件(大阪地判平成12年3月30日)
被告が制作・販売した建築積算アプリケーションソフトが、原告
が著作権を有する建築積算アプリケーションソフト「積算くん」
の著作権を侵害するとして訴えた事件であるが、大阪地裁は、
「意匠内外装積算ソフトは、著作者の意匠内外装の積算に関
する知見に基づき、製作されたものであり、その表示画面は、
同ソフトを使用する者が意匠内外装積算を行いやすいように
配慮して、著作者が製作したものであると考えられるから、右
表示画面は、著作者の知的精神的活動の所産ということがで
きる」また、「積算くんの表示画面を、あえて分類するとすれば、
学術的な性質を有する図面、図表の類というべきである」とし、
コンピュータソフトウェアの表示画面に関する著作物性を一般
論として認めた。
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著作権侵害が認められるための要件に関する判例
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権利保護の必要性と他者の研究開発の自由
・ワン・レイニー・ナイト・イン・トーキョー事件
(最高裁昭和53年9月7日)
「著作物の複製とは、既存の著作物に依拠し、その内容及び形
式を覚知させるに足りるものを再製することをいうと解すべきで
あるから、既存の著作物と同一性のある作品が作成されても、
それが既存の著作物に依拠して再製されたものでないときは、
その複製をしたことにはあたらず、著作権の侵害の問題を生ず
る余地はないところ、「既存の著作物に接する機会がなく、従っ
て、その存在、内容を知らなかった者は、これを知らなかったこと
につき過失があると否とにかかわらず、既存の著作物に依拠し
た作品を再製するに由ないものであるから、既存の著作物と同
一性のある作品を作成しても、これにより著作権侵害の責に任
じなければならないものではない。」
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創作者の権利
(独占的利益)
「他者に勝手に真似されては困る。」
「同じような作りになっている。」
競合他社の権利
(研究開発の自由)
「たまたま似てしまう場合がある。」
「同じような作りにならざるを得ない
場合がある。」
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3
プログラムの創作性に関する裁判例
権利侵害に関する検討順序
・システムサイエンス事件(東京高裁H1.6.20)
プログラムの無断複製に関し、プログラムの創作性が争われた
事件であるが、東京高裁は、プログラム著作物の著作権侵害の
要件として、創作性とその後に作成されたプログラムが元のプロ
グラムの創作性を認め得る部分に類似していることが必要とし、
「プログラムはこれを表現する記号が極めて限定され、その体系
(文法)も厳格であるから、電子計算機を機能させてより効果的に
一の結果を得ることを企画すれば、指令の組み合わせが必然的
に類似することを免れない部分が少なくないものである。したがっ
て、プログラム著作物についての著作権侵害の認定は慎重にな
されなければならない」との判断を示した。
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「ダミー・コード」を用いた「依拠性」の立証
ソースコード A
Tomorrow is another day.
Yes, I can.
まず、2つのプログラム(ソフトウェア)を比較し、②「実
質的類似性」を主張、立証しなければならない。
次に、相手方企業の①「依拠性」(アクセスしたこと)を
主張、立証しなければならない。
では、上記②及び①について、実務上どうやって立証す
るのか?
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モジュールの「実質的類似性」につき判断した事例
ソースコード B
Tomorrow is another day.
Yes, I can.
(注) アメリカでは、「You can do it!」と励まし、「Yes, I can」と答える風習がある。
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・CADプログラムの無断改変事件(東京地裁平成19年3月16日)
「被告は、モジュールの管理・制限態様は、有か無かという二者択一であり、
このような態様を変更する本件改変行為は、本件ソフトウェアの本質的特
徴を根幹から変更するものとなるから、原著作物との同一性維持を要件と
する翻案権の保護は及ばない旨主張する。しかしながら、本件ソフトウェア
は、本件改変行為の前後で、本件Dllファイルを除く数多くのモジュールの
部分で共通であり、本件改変行為後も本件ソフトウェアの表現上の本質的
な特徴の同一性を維持し、これに接する者が本件ソフトウェアの表現上の
本質的な特徴を直接感得することができると認められるから、被告の上記
主張は理由がない。
被告は、本件クラックソフトにより本件Dllファイルを改変した本件改変行
為は無個性な行為であり、作成者の何らの個性も発揮されていない事実を
作出するにすぎない行為である旨主張する。しかしながら、モジュールの
管理・制限態様は、管理・制限を行うか否かの選択だけではなく、行うとし
てどのような程度、方法による管理・制限を行うかという選択の余地がある
ところ、被告従業員は、本件クラックソフトにより本件Dllファイルを改変する
という選択を行ったものであり、何らかの個性が発揮されたものというべき
であるから、被告の上記主張は、採用することができない。」
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4
「依拠性」及び「実質的類似性」につき判断した事例
・パソコン用将棋ソフト著作権侵害事件(神戸地裁平成9年8月20日判決)
「(1)「MOVEP」のソースプログラムと、原告ソフトの同じ機能を有する
「com-itte」のソースプログラムとを比較すると、前記認定のとおり別表1
のとおりとなり、両者はほとんど同一であり、わずかに異なる部分も、通
常の実力をもったプログラマーであれば容易に想到し、改変できる程度
のもので、単なるオプティマイズしたに過ぎないものである。(2) 原告ソフ
トの制作担当者は、将棋ソフトでは被告ソフトが一番強いという評判で
あったことから、被告ソフトを逆アセンブルしてそのソースプログラムに接
し、これを解析して原告ソフトを制作した。
(二)上記認定の原告ソフトの制作経過及び被告ソフトの「MOVEP」の
ソースプログラムとこれに相当する原告ソフトの「com-itte」 のソースプロ
グラムとの対比結果に照らせば、原告ソフトの「com-itte」 は、被告ソフト
の「MOVEP」を基に制作された、これと類似のものと認められる。」
「原告ソフトは、被告ソフトの一部のプログラム「MOVEP」と類似性の
あるプログラムを含むものであり、そのプログラムは、その機能に照らし、
ソフト全体の中のステップ構成割合にかかわらず、被告及び原告各ソフ
トの重要な部分を構成するものと認められ、したがって、原告ソフト(その
販売)は、被告著作権を侵害するものというべきである。」
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ゲームの改変に関する判例
・ときめきメモリアル事件(最判平成13年2月13日)
ゲームソフトにおいて、著作者の想定していない主人公
(プレイヤー)のパラメーターを記録したメモリーカードを輸
入販売したことが同一性保持権を侵害するか否かが争わ
れた事件。
最高裁は、「本件ゲームソフトにおけるパラメータは、それ
によって主人公の人物像を表現するものであり、その変化
に応じてストーリーが展開されるものであるところ、本件メモ
リーカードの使用によって、本件ゲームソフトにおいて設定
されたパラメータによって表現される主人公の人物像が改
変されるとともに、その結果、本件ゲームソフトのストーリー
が本来予定されていた範囲を超えて展開され、ストーリー
の改変をもたらすことになるから」、本件メモリーカードの使
用は、本件ゲームソフトを改変し、同一性保持権を侵害する
とした。
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ハードディスクへの複製とメモリーへのロード
複製行為の有無が争われた裁判例
・スターデジオ事件(東京地判平成12年5月16日)
デジタル衛星放送を利用して音楽を配信することは、レコード製
作者が有する複製権等を侵害するか争われた事件であるが、東
京地裁は、受信チューナーのRAMにおけるデータ等の蓄積が
「複製」に該当するかどうかにつき、著作権法上の「複製」、すなわ
ち「有形的な再製」に当たるというためには、将来反復して使用さ
れる可能性のある形態の再製物を作成するものであることが必
要であると解すべきところ、RAMにおけるデータ等の蓄積は、一
時的・過渡的な性質を有するものであるから、RAM上の蓄積物
が将来反復して使用される可能性のある形態の再製物といえな
いことは、社会通念に照らして明らかというべきであり、したがって、
RAMにおけるデータ等の蓄積は、著作権法上の「複製」には当た
らないと判示した。
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日本では、プログラムの使用に伴うメモリへのロー
ドは、一次的・瞬時的なものであり、「複製」とは考
えられていない。
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5
ファイル交換ソフト(中央サーバー設置型)に関する裁判例
ファイルローグ(P to P)の図解
公衆送信(送信可能化)の主体?
・ファイルローグ事件(東京高判平成17年3月31日)
ファイル交換ソフトの一種である「ファイルローグ(File Rogue)」を一般に頒
布し、これを使ったインターネット上の電子ファイル交換サービスを運営する
会社に対して、同サービスを利用した音楽ファイルの交換による著作権侵害
を理由に、音楽著作権管理事業者が同サービス提供の差止めと損害賠償を
求めた事件であるが、本サービスの利用者が、著作権者に無許諾で音楽
ファイルをMP3形式に変換して公開する行為が著作権侵害(複製権侵害、
自動公衆送信権侵害及び送信可能化権侵害)を構成するとしたうえで、被告
自らは、本件各MP3ファイルをパソコンに蔵置し、その状態でパソコンを被告
サーバに接続するという物理的行為をしているわけではないため、被告が、
送信可能化権及び自動公衆送信権を侵害していると解すべきか否かについ
ては、①被告の行為の内容・性質、②利用者のする送信可能化状態に対す
る被告の管理・支配の程度、③被告の行為によって受ける同被告の利益の
状況等を総合斟酌して判断すべきであるとし、被告は、本件各著作物の自動
公衆送信及び送信可能化を行っているものと評価することができ、原告の有
する自動公衆送信権及び送信可能化権の侵害の主体であると解するのが
相当であると判示した。
著作権管理事業者
実際の公衆送信(送信可能化)
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ウィニー(Winny)事件の概要
運営会社
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ウィニー(Winny)事件の図解
Winny(ウィニー)を開発した東大大学院情報理工学系
研究科助手の金子勇氏(被告人)が、いわゆるファイル交
換ソフトであるWinny(ウィニー)を開発し、自らのホーム
ページにおいて公開していたところ、同ソフトをダウンロー
ドした被告人2名(正犯者)が自己のパソコンから第三者
が著作権を有するゲームソフト(「スーパーマリオアドバン
ス」など)や洋画(「ビューティフル・マインド」など)のデジタ
ルコンテンツ(データ)について無許諾で自動公衆送信可
能な状態にし、著作権者たる第三者の有する公衆送信権
(著作権法23条1項)を侵害したことから、同ソフトの提供
行為が正犯者の著作権法違反行為を幇助したものとして
開発者の刑事責任が問われた事件
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金子氏
Winnyの提供が
「幇助」(共犯)となるか
正犯者
正犯者
著作権侵害行為
被害者(ゲームや映画の
著作権者)
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6
ウィニー(Winny)事件の判示事項(判断基準)
・ウィニー(Winny)事件(平成18年12月13日京都地裁判決)
「WinnyはP2P型ファイル共有ソフトであり、被告人自身が述べる
ところやE供述等からも明らかなように、それ自体はセンターサー
バを必要としないP2P技術の一つとしてさまざまな分野に応用可
能で有意義なものであって、被告人がいかなる目的の下に開発
したかにかかわらず、技術それ自体は価値中立的であること、さ
らに、価値中立的な技術を提供すること一般が犯罪行為となりか
ねないような、無限定な幇助判の成立範囲の拡大も妥当でない
ことは弁護人らの主張するとおりである。
結局、そのような技術を実際に外部へ提供する場合、外部へ
の提供行為自体が幇助行為として違法性を有するかどうかは、
その技術の社会における現実の利用状況やそれに対する認識、
さらに提供する際の主観的態様如何によると解するべきであ
る。」
ウィニー(Winny)事件判決の判示事項(責任根拠)
「被告人は、ファイル共有ソフトの一つであるWinnyを開発、公開する
ことで、これを利用する者の多くが著作権者の承諾を得ないで著作物
ファイルのやりとりをし、著作権者の有する利益を侵害するであろうこと
を明確に認識、認容していたにもかかわらず、Winnyの公開、提供を継
続していたのであって、このような被告人の行為は、自己の行為によっ
て社会に生じる弊害を十分知りつつも、その弊害を顧みることなく、あえ
て自己の欲するまま行為に及んだもので、独善的かつ無責任な態度と
いえ非難は免れない。また、正犯者らが著作権法違反の本件各実行行
為に及ぶ際、被告人が公開、提供していたWinnyが、正犯者らの本件各
実行行為にとって重要かつ不可欠な役割を果たしたこと、Winnyネット
ワークにデータが流出すれば回収等も著しく困難であること、Winnyの
利用者が相当多数いると認められること等からすれば、被告人のWinny
の公開、提供という行為が、本件の各著作権者が有する公衆送信権に
対して与えた影響の程度も相当大きく、正犯者らの行為によって生じた
結果に対する被告人の寄与の程度も決して少ないものではない。」
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ウィニー(Winny)事件判決の判示事項(情状酌量)
「もっとも、被告人は、Winnyの公開、提供を行う際に、イン
ターネット上における著作物のやりとりに関して、著作権侵害
の状態をことさら生じさせることを企図していたわけではなく、
著作権制度が維持されるためにはインターネット上における
新たなビジネスモデルを構築する必要性、可能性があること
を技術者の立場として視野に入れながら、自己のコンピュー
タプログラマーとしての新しいP2P技術の開発という目的も持
ちつつ、Winnyの開発、公開を行っていたという側面もあり、
被告人は本件行為によって何らかの経済的利益を得ようとし
ていたものではなく、実際、Winnyによって直接経済的利益と
得たとも認められないこと、何らの前科前歴もないことなど、
被告人に有利な事情も存する。」
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ウィニー(Winny)事件を考える視点
一般的判断
・(研究開発の)自由保障
・拡張適用の危険性
個別事例の判断
・著作権者の法益保護
・違法行為蔓延の防止
社会科学の世界では、多くの場合、唯一の正解というものは存在せず、ど
の立場、どの視点、どういう判断基準から考えると、どういう結論になるのか
という論理(ロジック)と、当事者間の公平、類似案件との比較、将来への
様々な社会的影響等から妥当な結論と言えるかどうかの判断が重要となる。
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7
ウィニー事件控訴審判決
正犯と従犯の関係
幇助犯
正犯者
正犯者
Ex.金物屋がナイフを提供した場合は?
実行行為
被害者
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ファイル交換ソフトWinny(ウィニー)をめぐり、著作権
法違反のほう助罪に問われた元東大助手に対し、2009
年10月8日、大阪高裁は、「犯罪に利用される可能性を
認識しているだけではほう助と評価することはできない」
として無罪判決を言い渡した。
大阪高裁は、ウィニーについて「通信の秘密を保持しつ
つ多様な情報交換を可能にするとともに、著作権の侵害
にも使える価値中立なソフト」と認定し、元助手に対して
は「被告は著作権侵害をする者が出る可能性を認識し、
認容していたが、それ以上に違法行為を勧めたとはいえ
ない」と結論付けた。
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ソフトウェアの違法コピーに関する裁判例
ウェブ管理者の責任に関する裁判例
・「2ちゃんねる」対小学館事件(東京高判平成17年3月3日)
インターネットの掲示板「2ちゃんねる」に対談記事を無断転載された漫画
家と出版社が、書き込みを放置した掲示板運営者に対し掲載差止めと損害
賠償を求めた事件であるが、東京高裁は、「インターネット上においてだれも
が匿名で書き込みが可能な掲示板を開設し運営する者は、著作権侵害とな
るような書き込みをしないよう、適切な注意事項を適宜な方法で案内するな
どの事前の対策を講じるだけでなく、著作権侵害となる書き込みがあった際
には、これに対し適切な是正措置を速やかに取る態勢で臨むべき義務があ
る。掲示板運営者は、少なくとも、著作権者等から著作権侵害の事実の指
摘を受けた場合には、可能ならば発言者に対してその点に関する照会をし、
更には、著作権侵害であることが極めて明白なときには当該発言を直ちに
削除するなど、速やかにこれに対処すべきものである。」としたうえで、「直ち
に本件著作権侵害行為に当たる発言が本件掲示板上で書き込まれている
ことを認識することができ、発言者に照会するまでもなく速やかにこれを削除
すべきであった」管理人が削除要請に対する是正措置を取らなかったことは、
「故意又は過失により著作権侵害に加担していた」として、管理人は「著作権
法112条にいう「著作者、著作権者、出版権者・・・を侵害する者又は侵害す
るおそれがある者」に該当」すると判示した。
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・東京リーガルマインド事件(平成13年5月16日東京地裁)
司法試験予備校が、ソフトウェアの違法インストール(デッド・
コピー)を行っていた事件
侵害行為によって得た被告の利益額について、「無許諾複製
したプログラムの数に正規品1個当たりの小売価格を乗じた額
であると解するのが相当である」とした。また、被告の違法複製
品を全て正規品に置き換え、正規品を購入することによって許
諾料全額を支払ったから、原告らの損害は生じていないとの主
張に対しては「被告の原告らに対する著作権侵害行為(不法
行為)は、被告が本件プログラムをインストールして複製したこ
とによって成立し、これにより上記著作権侵害行為によって、
原告らに与えた損害を賠償すべき義務を負う。原告らの受け
た損害額は、被告が本件プログラムを違法に複製した時点に
おいて、既に確定しているとみるのが相当である。」と判示した。
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8
ソフトウェアの違法コピーに関する裁判例(その2)
ソフトウェアの違法コピーのケース
・大阪ヘルプデスク事件(平成15年10月23日大阪地裁)
パソコンスクールが、ソフトウェアの違法インストールを行って
いた事件。
大阪地裁は、「「受けるべき金銭の額に相当する額」は、侵害
行為の対象となった著作物の性質、内容、価値、取引の実情
のほか、侵害行為の性質、内容、侵害行為によって侵害者が
得た利益、当事者の関係その他の訴訟当事者間の具体的な
事情をも参酌して認定すべきものと解される。そして、本件に
現れたこれらの事情を勘案すると、本件においては、原告らが
請求できる「受けるべき金銭の額に相当する額」は、本件プロ
グラムの正規品購入価格(標準小売価格)と同額であると認め
るのが相当である」と判示した。
適法化
違法コピー
購入
ライセンスの取得
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私的使用(fair use)のための複製
権利者と利用者とのバランス規定
創作者の権利
(独占的利益)
著作権法18条から29条
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利用者の権利
(人類共通の財産)
著作権法30条から50条
「制限規定」
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「著作権の目的となっている著作物は、個人
的に又は家庭内その他これに準ずる限られ
た範囲内において使用することを目的とする
ときは、次に掲げる場合を除き、その使用す
る者が複製することができる。」
(著作権法30条1項柱書)
利用者の権利
(人類共通の財産)
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9
私的使用の例外(著30条1項②号)
プログラムの場合の特別規定
②技術的保護手段の回避による可能になった
又は障害が生じないようになった場合
→コピープロテクトを外して、複製行為を行っ
た場合、たとえ家庭内で行っていたとしても、
「私的使用」とは言えなくなる。
創作者の権利
(独占的利益)
第47条の2(プログラムの著作物の複製物の所有者による複製等)
プログラムの著作物の複製物の所有者は、自ら当該著作物を電
子計算機において利用するために必要と認められる限度において、
当該著作物の複製又は翻案(これにより創作した二次的著作物の
複製を含む。)をすることができる。ただし、当該利用に係る複製物
の使用につき、第113条第2項の規定が適用される場合は、この
限りでない。
2 前項の複製物の所有者が当該複製物(同項の規定により作成
された複製物を含む。)のいずれかについて滅失以外の事由によ
り所有権を有しなくなつた後には、その者は、当該著作権者の別
段の意思表示がない限り、その他の複製物を保存してはならない。
近藤総合法律事務所 大阪市北区西天満5−1−3南森町パークビル6階
URL: http://www.kondolaw.jp/ TEL: 06−6314−1630
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まとめ
プログラムの場合の特別規定2
第113条(侵害とみなす行為)
2 プログラムの著作物の著作権を侵害する行為によつて作成された
複製物(当該複製物の所有者によつて第47条の2第1項の規定に
より作成された複製物並びに前項第1号の輸入に係るプログラムの
著作物の複製物及び当該複製物の所有者によつて同条第1項の規
定により作成された複製物を含む。)を業務上電子計算機において
使用する行為は、これらの複製物を使用する権原を取得した時に情
を知つていた場合に限り、当該著作権を侵害する行為とみなす。
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