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はじめに) 検討 1

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はじめに) 検討 1
はじめに)
近年、内視鏡外科手術の発展・普及によりその手術技術力向上のための教育・トレーニ
ングは重要であり、かつ複雑な問題となっている。内視鏡外科手術のトレーニング方法と
しては Box trainer・Virtual Reality Simulator などで行うことが一般的であるが未だ確立
されたものはなく、またその学習度を客観的に評価する方法に関しても確立したものがな
いのが現状である。そのため効果的なトレーニングシステムの構築とその技術評価法の確
立が切望されている。本研究では初学者を対象としたより効率的なトレーニングカリキュ
ラムの構築とその技術評価法の確立を目的とした。
検討 1)
内視鏡外科手術に必要とされる特殊性(困難性)はモニターで認識した二次元画像を三次
元構築し、目と手の協調運動を行う空間認知能力と通常より長い特殊な device を用いて操
作を行う鉗子操作能力である。トレーニング経験のない被験者を対象とし、内視鏡外科ト
レーニングを行うことでそれぞれの能力がどのように上達するか、またいずれかの能力改
善が技術向上における大きな因子であるかを検討した。
対象・方法)
内視鏡外科手術トレーニング経験のない医学生対象とし、Box trainer を用いて 4 種類の
縫合結紮手技を行い、その時間を測定した。
① 通常持針器+直視下での縫合結紮
② 通常持針器+モニター下での縫合結紮
③ 内視鏡外科手術用持針器+直視下での縫合結紮
④ 内視鏡外科手術用持針器+モニター下での縫合結紮
① が通常の手術で行われる手技で、④が内視鏡外科手術で一般的に用いられるトレーニ
ング手技である。②、③がその中間に位置するものでそれぞれ空間認知能力を反映したも
の、鉗子操作能力を反映したものと考えられる。
無作為に 3 つのトレーニンググループに分け、それぞれ②・③・④のトレーニングを 40 分
間行った前後で内視鏡下縫合結紮手技の改善率を調べた。また HUESAD(Hiroshima
University Endoscopic Surgical Assessment Device)を用いて評価を行った。
結果)
③でトレーニングを行った群は②・④でトレーニングを行った群より内視鏡下縫合結紮
手技のトレーニング前後での改善率が有意に良かった。HUESAD を用いた評価で③トレー
ニング群の鉗子操作能力の改善を認めた。
初期の内視鏡外科手術トレーニングでは、空間認知能力よりも鉗子操作能力が上達しや
すく、その上達により手技が早期に向上する。そのため初期の内視鏡外科手術トレーニン
グではモニターを使用したトレーニングの前に、まず直視下で鉗子操作能力のトレーニン
グを行うべきである。
検討 2)
我々は内視鏡外科手術技術力の客観的評価法として HUESAD という独自の評価システム
を開発した。HUESAD の軌道計測において Novice は目標に近づくにつれ先端が細かくぶれ
るが Expert はぶれることなく目標地点に到達することが示された。これは目標地点を補正
するためと考えられ、このため内視鏡外科手術技術力の高い人は低い人よりも内視鏡外科
手術用鉗子を早く正確に目標地点に到達させることできるという仮説をたてた。そこで今
回新たなパラメーターとして目標地点近くからその目標に到達するまでの時間:
Approaching time の測定評価を行い、この Approaching time が Experts と Novices の技術力評
価に有用かどうか検討した。
対象・方法)
内視鏡外科手術経験豊富な医師 (Experts)と内視鏡外科手術トレーニング経験のない広島
大学医学部 5 年生 (Novices)を対象とし、Approaching time、Total time、Intermediate time(Total
time – Approaching time)を計測し評価を行った。
結果)
最も一般的な項目である Total time に関して Expert は Novice に比べ、有意に短い時間
で pole に到達できた。次に Approaching time も Expert は Novice に比べ、有意に短い時
間で pole に到達することができた。しかし Intermediate time においては両群間に明らか
な有意差は認めなかった。
Total time の構成成分である Approaching time が実際に技術レベルの測定に重要であり、
Approaching time は HUESAD を用いた客観的技術評価法の 1 つの項目として有用である。
まとめ)
本研究で初学者を対象とした、より効率的なトレーニングカリキュラムとその新たな技術
評価法を示すことができた。
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