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Laparoscopic Adenomyomectomy
70 日エンドメトリオーシス会誌 2011;32:70−71 〔シンポジウム2/子宮腺筋症の妊孕能への影響〕 子宮腺筋症に対する治療法の選択基準 ―Laparoscopic Adenomyomectomy:術式の安全性と治療効果の検討― 順天堂大学医学部産婦人科学教室 北出 目 的 真理 卵管疎通率,創部の状態を評価した. 子宮腺筋症に対する腹腔鏡下妊孕能温存療法 3)術後の症状に関する長期予後:術後の症状 である Laparoscopic Adenomyomectomy (LA) の推移,ホルモン療法の使用状況を評価した(術 は,radicality と fertility のバランスが難しい難 後3年間) . 易度の高い術式である.当科では2種類の標準 4)妊娠・分娩予後:術後妊娠率と分娩転帰に 術式を開発し(Wedge Resection, Double Flap ついて検討した(不妊症2 0例) . 法) ,2 0 0 0年から LA を導入している.本講演 成 績 では LA の安全性や治療効果,妊娠予後を pro- 1)手術成績のすべての項目において2群間で spective に追跡し,妊孕能温存希望例における 有意差はなく,術中合併症はみられなかった(図 子宮腺筋症治療の選択基準を提示した. 3) . 対象と方法 2)子宮創部への術後癒着は1 0例(4 5. 4%) , 術式の選択基準(図1)と手術方法(図2) 付属器への新生癒着は1例(4. 5%)に認めら を示す.当科における LA の適応は,腺筋症腫 れた(図4) .卵管閉塞や子宮創部の菲薄化は 瘤の直径が7∼8Ú以下の症例を対象とした 認められなかった. (び ま ん 型 腺 筋 症 を 除 く) .Wedge Resection 3)月経時疼通の VAS(Visual Analog Scale) (WR)の手術方法は,筋層を V 字型に切り込 は術前に比べて有意に低下し(9. 4→3. 3) ,月 み漿膜を病巣とともに切除する方法で,腺筋症 経過多もほとんどの症例で改善した.この傾向 腫瘤が漿膜に接する外側分布型のものを対象と は術後3年目まで続いたが(図5) ,経過中に し て い る.一 方 Double Flap 法(DF)は,腺 1 2例(2 2. 0%)でホルモン療法を要した. 筋症結節を内膜付近まで半切した後,内膜側の 0)で,その 4)術後の妊娠率は4 5. 0%(9/2 病巣をえぐる様に切除し,残った漿膜側の正常 うち7例(7 7. 8%)が出産に至った.妊娠中・ 筋層を上下のフラップとして重ね合わせる方法 分娩時の子宮破裂は認めなかった(図6) . で,子宮内膜に接する内側分布型の子宮腺筋症 に対し施行している. 以上の結果を解析し作成した,子宮腺筋症に 対する治療法の選択基準を提示する. 2 0 0 0年∼2 0 0 7年に当科で LA を施行した5 5例 に対して,以下の4項目を検討した. 結 論 腹腔鏡下腺筋症切除術は低侵襲かつ治療効果 1)手術成績:WR 群(2 0例)と DF 群(3 5例) に優れた有用な手術療法であるが,適応症例に において,手術時間,術中出血量,検体重量を 限界があり,安全に手術を行うためには術者の 比較検討した. 技量に応じた手術適応を遵守するのが望まし 2)SLL による評価(2 2例) :術後癒着の程度, い. 子宮腺筋症に対する治療法の選択基準―Laparoscopic Adenomyomectomy:術式の安全性と治療効果の検討― 71 (%) 子宮腺筋症 100 n=22例 90 Diffuse Focal 80 70 薬物療法 ≧ < cm ・OC ・Progestin 開腹 ・Danazol ・Ultra-long/ART cm 腹腔鏡 60 Post operative adhesion 50 45. 4% 40 30 前壁 後壁 20 De novo adhesion 10 当科では,局在型子宮腺筋症に対して子宮腺筋症摘出術 を行っているが,腺筋症腫瘤の直径が8cm 未満であれ ば,腹腔鏡手術を選択している. 腺筋症のタイプと大きさによる術式の選択肢 図1 4. 5% 0 子宮創部 附属器周囲 LA 後6ヵ月目に施行した second look laparoscopy で術 後癒着を評価した. 子宮創部の術後癒着は4 5. 4%,付属器周囲の新生癒着は 4. 5%に認めた. 図4 術後癒着の評価―子宮創部癒着と付属器周囲癒着― 楔状切除術 wedge resection(WR) 漿膜に接した 病巣に有効 a.針状モノポーラーで 腺筋症を楔状に切除 dysmenorrhea b.筋層を寄せる 様に仮縫いうる。 c.仮縫いの間の 筋層を縫合する d.子宮の奨膜を 縫合して形成 ダブルフラップ法 double flap method(DF) hypermenorrhea 10 10 8 8 6 6 4 4 2 2 0 0 (M) 術前 6 12 18 24 30 36 VAS (Visual Analog Scale) 評価 6 12 18 24 30 36 (M) 最も月経量が多かった状態を 10とした時の相対的なスコア 術前 術後の月経時疼痛(dysmenorrhea)と過多月経(hyper漿膜に接した 病巣に有効 a.針状モノポーラーで 腺筋症を半切する。 b.奨膜とその下の 筋層を残して、 腺筋症を抉り取る。 c.残った奨膜をフラップとし、上 下に重ね合わせるように縫合する。 腹腔鏡下子宮腺筋症摘出術における2つの手技 図2 menorrhea)の程度 を VAS(Visual analog scale)で 評 価した. どちらの症状も VAS は術後有意に低下し,少なくとも 術後3年目までは症状の抑制効果がみられた. 図5 術後症状の推移(術後3年目までの長期予後) N.S. 200 400 N.S. 45 350 143.5 100 118.7 50 277 250 25 20 169.3 DF群 63.6% 分娩 妊娠 5 妊娠なし 11例 その他 妊娠 0 WR群 DF群 WR群 DF群 検体重量 手術時間,出血量,検体重量の比較では,2群間で有 意差を認めなかった. 図3 妊娠あり 9例(11妊娠) 32.4 10 出血量 手術時間 30.8 15 0 WR群 30 150 50 0 35 200 100 >12Mのfollow up例 45.0% 40 300 150 術後不妊症例 20例 50 N.S. 2つの術式における手術成績の比較 経膣分娩 妊娠 帝王切開 妊娠 早産 妊娠 流産 妊娠 不明 妊娠 LA 後の不妊症例における術後妊娠率は45. 0%であり, そのうちの6 3. 5%が分娩に至った. 分娩方法はほとんどの症例で腹式帝王切開を選択した. 図6 術後の妊娠・分娩の転帰