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イ オン注入に立脚した難加工性材料の超精密剥離技術

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イ オン注入に立脚した難加工性材料の超精密剥離技術
愛 総 研 ・研 究 報 告
19
第16号2014年
イオン注入に立脚 した難加工性材料の超精密剥離技術の開発
DevelopmentofUltra-PrecisionExfoliationTechnologyfor
Hard-to-ProcessMaterials
岩 田
博 之 †
HiroyukiIwata†
AbstractHydrogenion-implantationintoHard-to-ProcessMaterialsandsubsequentheattreatmentcauses
dome-shapedgas-filledblistersandcratersappearonthesurface.Thismethodbecomesanattractivenano
fabricationtechnologyhavinghighaccuracyandhighenvironment-friendlyprocess.Wenewlytriedforthis
techniquetometalmaterials,suchastitaniumandaluminum-ally,andaCFRPcompositmaterial.Whenthe
sameconditionsasasemiconductorcrystalwereused,inthealuminumMagnesiumalloy,theseparation
phenomenonwasabletobefoundoutonthesurface.Theexistenceofthecrystallinephaseconsideredtohave
formedbytherollinghasleadedexfoliation.
1.緒
言
本 学 が所 在 す る地 域 は 、 もの づ く り産 業 、 特 に 自動 車 、
術 の 最 適 化 を 追 究 す る こ と も重 要 で あ る。ま た 、固体 表 面
航 空 機 、 工作 機 械 の世 界 的 な 産 業集 積 地 で あ る.2010年
の ナ ノ ・マ イ ク ロ構 造 は界 面 現 象 に大 き な影 響 を与 え る こ
に名 古 屋 でCOP10(生
とが 知 られ て い るが 、生 産 加 工 の分 野 で の利 用 は緒 に就 い
物 多 様 性 条 約 第10回
締 約 国 会議)
が 開催 され 、 そ の 中 で環 境 負 荷 軽 減 、CO2削 減 の 中 で製 品
た ば か りで あ る。従 来 に な い精 度 の加 工 手 法 な らび に工 具
の軽 量 化 、 高 性 能 化 が強 く求 め られ た。
改 良 お よび 被 加 工材 料 に 固体 構 造 創 製 機 能 を与 え る こ と
自動 車 産 業 で は 、2015年
度 新 燃 費 基 準 へ の対 応 が 大 き
で 、飛 躍 的 な 生 産 能 率 、製 品 精 度 が 得 られ る。ナ ノ ・マ イ
な課 題 とな って お り、車 体 重 量 の軽 量化 を 強 力 に推 進 す る
ク ロ加 工 に お い て は 単 結 晶 を は じめ とす る難 加 工性 工 具
必 要 が あ り、 高 強 度 鋼 に対 す る低 負 荷 環 境 性 の加 工 技 術 、
へ の イ オ ン注 入 な ど新 規 の 技 術 導 入 が 必 要 で あ る。
鉄 鋼 材 料/ア ル ミニ ウ ム ま た はマ グネ シ ウム合 金 な ど異種
イ オ ン注 入 は 半 導 体 産 業 の 中で は 長 く要 素 技 術 と して
材 料 間 の接 合 技 術 の 開発 が求 め られ てい る。ま た 、航 空機
用 い られ て い る。目的 は、p/n半導 体 領 域 の形 成 の た め の ド
産 業 で は 、C-FRPが
ー パ ン ト注 入 ,デ バ イ ス の 電 気 特 性 の 高 精 度 化(ラ イ フ タ
軽 量 化 の 切 り札 と して 使 わ れ 始 め た
が 、製 造(成 形)、 加 工 工程 に い ま だ 大 き な課 題 を残 して
い る。ま た 耐熱 合 金 や チ タ ン合 金 も航 空機 部 品 と して 多 く
使 われ て い るが 、そ の加 工 に は 多 くの 時 間 とエ ネル ギ ー を
イ ム 制御,ド ナ ー不 活 性 化,注 入 欠 陥低 減)な
ど様 々 で あ
る。材 料 加 工 へ の 応 用 の 発 端 は,原 子 炉 の 内壁 の放 射 線 に
費 や され て い る の が 現 状 で あ る。 これ らの材 料 の 加 工 能
よ る脆 化 と考 え られ る。近 年 で はイ オ ン ミ リン グ装 置 や 集
率 、 低 環 境 負 荷 性 の飛 躍 的 な 向上 が強 く求 め られ てい る。
一 方 、製 品 と して の 性 能 を 向上 させ るた め に、塗 装 ・溶 射 ・
束 イ オ ン ビー ム加 工 装 置 な どデ バ イ ス加 工 の 領 域 で も必
コー ル ドス プ レー 等 を含 め た各 種 表 面 処 理 、 マ イ ク ロ ・ナ
ノ構 造 の付 与 も重 要 な課 題 で あ る.さ らに 各種 要 素 技術 間
の徹 底 した 連 携 ・連 鎖 に よ り、市場 ニ ー ズ に応 え る 上 で 技
須 の 技 術 と して 用 途 は 拡 大 して い る。ま た高 エ ネ ル ギー イ
オ ンの 応 用 例 と して ラザ フォ ー ド後 方 散 乱(RBS),弾
反 跳粒 子 検 出 法(ERDA)を
は じめ とす るデ バ イ ス の構 造 評
価 ・分 析 評 価 が 挙 げ られ る.
†
愛 知 工 業大 学
愛 知 工 業大 学
工 学部 電 気 学科(豊
総合 技 術 研 究所(豊
田市)
田市)
性
愛 知 工 業 大 学 総 合 技 術 研 究 所 研 究 報 告,第16号,2014年
20
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FigurelCross-sectionTEMimageofSi
Figure3HeatedsurfaceofSi(a)
andAl-MgAlloy(b)
Figure2Cross-sectionTEMimageofAl-Mg
alloy
1995年 にBluelら
は,SOI半 導 体 ウェ ハ の 作製 プ ロセ ス
に お い て,薄 膜 活 性 層 の 剥 離 及 び 転 送 技 術 に水 素 イ オ ン注
2.実
験方法
入 を 用 い た[1]こ と は半 導 体 プ ロセ ス へ の応 用 にお い て 重
要 な 展 開 点 とな っ た.シ リコ ン支 持 基 板 と親 水 性 貼 り合 わ
次 世 代 の 輸 送 用 機 器 に 用 い る こ と が 有 力 視 され て い る
せ され た 酸化 膜 付 イ オ ン注入 基板 か ら加 熱 処 理 に よ り瞬
軽 量 か つ 高 剛 性 な 素 材 を タ ー ゲ ッ ト と し た 。金 属 材 料 と し
時 に 薄膜 層 が 取 り出 され る もの で あ り、高 い 結 晶 性 、高 精
て は ア ル ミ合 金(Al-Mg,Mg7%)、
度 か つ省 資源(キ
集 積,高
リ しろ はnmオ ー ダ)等 の特 徴 を持 つ 。高
速 か つ低 消 費 電 力 を 実 現 す るSOI構 造 デ バ イ ス の
作製 に 最適 な プ ロセ ス とな っ て い る。
この 薄 膜 形 成 メ カ ニ ズ ム の鍵 は 水 素 ブ リス タ リ ン グ現
象 に あ り,イ オ ン注 入 され た 水 素 が 加 熱 に よ り円盤 状 空 洞
を 形成 し、表 面 か ら一 定 の 深 さの 距 離 で そ れ らが 連 結 し上
層 部 を 引 き剥 が す 手 法 で あ る。 もっ ぱ ら半 導 体 結 晶
Al7%)、
マ グ ネ シ ウ ム 合 金(AZ31;
そ し て チ タ ン 。 複 合 材 料 と して は 、CFRP、
カ ー ボ ン グ ラ フ ァ イ ト板 を 取 り上 げ た 。シ リ コ ン等 半 導 体
結 晶 材 料 に お い て 剥 離 が 起 き る 条 件 と 同 等 の 条 件(注 入 エ
ネ ル ギ ー:80keV,ド
ー ズ 量:10x1016/cm-2)に
加 熱 中 の経 過 を観 察 す る た め加 熱 ステ ー ジ を装 備 した
光 学 顕 微 鏡 を 用 い,窒 素 雰 囲 気 中 そ の 場 加 熱 観 察 を 行 な っ
た.300℃
の材 料 へ の応 用例 は 無 い。 こ こで は 、金 属 材 料 お よび 複 合
ブ リ ス タ リ ン グ(隆 起)及 び 剥 離 を 観 察 し た.加
の検 証 とそ の 基礎 資 料 を 得 る こ とを 目的 と した。
て水 素 イ
オ ン注 入 を行 っ た。
(Si,Slc等)の 加 工 に利 用 され[2・3]、
金 属 ・複 合 材 料 な ど他
材 料 へ の応 用 の 可否 を 明 らか に す べ く、技 術 応 用 の可 能 性
お よび
な い しは700℃
表 面 は 、SEMあ
た.試
る.
ま で 加 熱 し,試 料 表 面 に 発 生 す る
る い はSPMを
料 内 部 の 構 造 はTEMを
熱後試料 の
用 い詳 細 な形 状 計測 を行 な っ
用 い た 断 面 観 察 か ら評 価 す
イオン注入 に立脚 した難加 工性材 料 の超精密 剥離技術 の開発
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し
lcρ門.
CFRP
C-graphite
Figure4CrosssectionalTEMimageofionimplantedhard-to-processmaterials
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(a)SEMimageofsurfaceasimplanted
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(b)Whiteningover570°C
(C)Grainboundaryinionimplantedarea(XTEMimage)
(e)ResultofEDSasannealed
(d)Blistering(bulge)550°C∼600°C
FiguresSEMsurfaceimageofMg-AlAlloy(AZ31)andCross-sectinonalTEMimage
3.実
験結果
(Fig.3(b))。 これ ら剥 離 等 の現 象 の有 無 の理 由 を探 るた
め 、それ ぞれ の材 料 の イ オ ン注入 後 か つ加 熱 前 の試 料 の 断
80keVの
エ ネ ル ギー で 水 素 イ オ ン を注 入 され た 試 料 で
は 表 面 か ら1μm弱
の深 さ にイ オ ン注 入 欠 陥 層 を形 成 す
る.イ オ ン 注 入 後 のSiの
欠 陥 層 の 様 子 を 図1に
合 金 の 断 面 に はFig2が
示 す.Al-Mg
面 を透 過 型 電 子 顕微 鏡 に よ って そ の構 造 を評 価 した
(Fig.4)。 剥 離 お よび ブ リス タ リン グ が発 生 した材 料 の 共
通 点 は 、水 素濃 度 が ピー ク とな る深 さで 素材 の 単結 晶構 造
示 す よ うに欠 陥 層 が 結 晶 の 相 構 造
が存 在 して い る こ とで あ っ た。Al-Mg合 金 は 、圧 延 時 に析
の 中 に 観 察 さ れ る.イ オ ン 注 入 後 試 料 を 加 熱 し た 結 果 、ア
出 に よ り表 面 に 平 行 な 多層 の 結 晶相 構 造 が形 成 され て お
ル ミ ・マ グ ネ シ ウ ム(Al-Mg,Mg7%)の
り、これ らの存 在 が ガ ス を含 む 空 乏 の膨 張 時 に 剥離 等 の 現
合 金 で は 、Fig.3(a)
に 示 す シ リ コ ン と 同 様 に 表 面 に 直 径5μm程
ら み(ブ
リ ス タ リ ン グ)や
度の局所的膨
剥 離 の発 生 が観 察 され た
象 を導 きや す くす る こ とが わ か っ た。
愛 知 工 業 大 学 総 合 技 術 研 究 所 研 究 報 告,第16号,2014年
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〆
ン
讐 実 .
1
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Figure6Cross-sectionalTEMimageofAl-MgAlloy(a)andCFRP(b)
一 方Mg合 金(Az31;Al7%
,Fig.5)で
は 、加 熱 中 の ブ リ
透過 型 電 子 顕微 鏡 法 に よ り評価 した と こ ろ、圧 延 時 の析 出
ス タ リン グ は不 明瞭 で 、加 熱 後 は 剥離 と呼 ぶ よ り方 向性 を
に よ り形 成 した と思 わ れ る結 晶 相 の 存在 が 、剥 離 の発 生 を
持 つ"え ぐれ"形 状 が形 成 され た。よ り問題 な の は、570℃
導 い て い る こ とが わ か っ た 。この こ とか ら、多 結 晶 を主 体
加 熱 で 表 面 に は 白色 化 合 物 層 で 覆 われ て お り、目的 とは 異
とす る金 属材 料 等 に お い て も、条 件 に よ って 水 素 イ オ ン注
な る結 果 とな っ た こ とで あ る。 マ グ ネ シ ウム合 金 とCFRP
入 を用 い た 剥 離 技 術 が 転 用 可能 で あ る こ と を示 す こ とが
の透 過 型 電 子 顕 微 鏡 に よ る構 造 解 析 か ら,イ オ ン 注入 後 こ
できた。
れ らの試 料 の断 面 構 造 に は,明 確 な イ オ ン 照射 領 域 が 現れ
ない こ とが わ か った.こ れ ら試 料 にお い て は,物 理 的 な作
謝辞
用 よ りむ しろ化 学 的 作 用 が 現 象 の 要 因 と な っ て い る こ と
本研 究 の一 部 は 、平 成22年 度 文部 科 学省 私 立大 学 戦 略 的研
が わ か った.A1、Ti、c一
究基 盤 形 成 支援 経 費(プ ロジ ェ ク トSlOO1033)な
グ ラ フ ァイ ト、CFRPを
そ の場
らび に公
加 熱 を行 った が 、表 面 上 の変 化 は あ る も の の 、ブ リス タ リ
益財 団法 人 科 学 技術 交 流 財 団 知 の拠 点 あい ち重 点研 究 プ ロ
ン グ あ る い は 剥 離 現 象 は確 認 で き な か っ た 。A1-Mg合
金
ジ ェ ク トの援 助 を受 け て行 わ れ た。 イ オ ン注 入 実 験 の一 部
か らは表 面 に水 平 に層 構 造 が形 成
は公 益 財 団法 人若 狭 湾 エ ネ ル ギ ー に て行 われ た.試 料 作 製
の注 入 前 の断 面TEM像
され て い た.複 合 材 料 で あ るCFRPは
レジ ン(エ ポ キ シ樹
の 一部 は愛 知 産 業科 学 技 術 総 合 セ ンタ ー にて 実 施 した.ま
脂)と 炭 素繊 維 に よ る複 合 材 料 で あ る.内 部 に含 まれ る炭
た ご協 力 頂 い た本 学 工学 部 電 気 学 科 電子 情 報 工 学 専攻 所 属
素 繊 維 は直 径Sumで
の 学生 に紙 面 を借 りて感 謝 す る。本 研 究 は 、平成22年 度 文
あ る(図6(b)参 照).元 来有 機 物 の樹
脂 で あ る レ ジ ン 内 に注 入 され た イ オ ンの 痕 跡 は確 認 で き
部 科 学省 私 立 大 学戦 略 的研 究 基盤 形成 支 援 経 費(プ
ず,ま た数 十nmの
ク トS1001033)な
オ ー ダ ー の 改 質 を行 な うイ オ ン 注入 の
ロジ ェ
らび に公 益財 団法 人 科 学技 術 交 流財 団知
加 工 は 数 ミ ク ロ ンオ ー ダ の 表 面 粗 度 や 内 部 構 造 を 持 っ
の拠 点重 点 研 究 プ ロジ ェ ク ト(難 加 工性 材 料 の 超 精密 ・高
CFRPに
能 率加 工技 術 の 開発)の 援 助 を受 け て行 われ た 。 一 部 のイ
は現 状 で は不 適 で あ っ た.
オ ン 注入 は公 益財 団法 人 若 狭 湾 エ ネル ギー 研 究 セ ンタ ー に
て 実施 した。 試料 作 製 な らび に評価 に ご協 力 頂 い た本 学学
4.結
言
生 、 田實 洗 大 氏(現:サ
水 素 イ オ ン注 入 を 用 い て 半 導 体 薄 膜 を形 成 す る手 法
を、 新 た にチ タ ン 、 アル ミな ど金 属材 料 、CFRP等
カ エ 理研 工 業株 式 会 社)に 紙 面 を
借 りて感 謝 す る。
炭 素系
複 合 材 料 へ 転 用 を試 み た 。シ リ コン 等 の 半 導 体結 晶 と同 じ
参 考文 献
条 件 を用 い た とこ ろ、アル ミ ・マ グネ シ ウム合 金 に お い て
[1]M.Bruel,Electronicsletters31(1995)1201,
表 面 に剥 離 現 象 を見 出す こ とが で きた 。試 料 の 断 面構 造 を
[2]Q.Y.Tong,R.W.Bower,MRSBulletin23(1998)40
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