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船舶の国際的な規制の動向 - マーシャルアイランド海事局日本支店

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船舶の国際的な規制の動向 - マーシャルアイランド海事局日本支店
船舶の国際的な規制の動向
マーシャルアイランド海事局主催セミナー(2014年11月)
Working together
for a safer world
本日のご説明事項
Q1 IMO(国際海事機関)には、どのような委員会がありますか?
条約の採択やその後の改正は、どうような手続きで実施されているのですか?ま
Q2 た、最近の条約改正で「タシット改正」などの用語が聞かれますが、どのような
意味なのですか?
Q3
条約の脚注(Footnote)や、条約本文中に引用されていないIMOの決議・サー
キュラーなどの取扱いはどのような位置づけですか?
Q4 バラスト水管理条約の批准状況は?
Q5 前回のMEPCでのバラスト水管理条約に関する主な進展は?
Q6
IMOの条約改正で近く規制強化などが実施されるものには、現在検討中のもの
も含め、どんなものがありますか?
Q7 IMOの規制動向の詳細内容はどのようにすれば入手できますか?
Q8 その他のIMOでの懸案事項は?
Q1 IMO(国際海事機関)には、どのような委員会がありますか?
2年に1回開催される総会のほか、理事会、海上安全委
員会(MSC)、海洋環境保護委員会(MEPC)などの委員
会や各種の専門分野の審議を行う小委員会から構成さ
A1
れています。小委員会については、2014年より見直し
が実施され、会議コストの削減などの合理化が図られ
ました。
Assembly
総会
Council
理事会
MSC (Maritime Safety
Committee)
海上安全委員会
MEPC (Marine
Environmental
Protection Committee)
海洋環境保護委員会
HTW (Sub-Committee on Human Element,
Training and Watchkeeping)
ヒューマンエレメント、訓練及び当直小委員会
III (Sub-Committee on Implementation of IMO
Instruments)
IMO規則実施小委員会
NCSR (Sub-committee on Navigation,
Communications and Search and Rescue)
航行、通信及び捜索救助小委員会
PPR (Sub-Committee on Pollution Prevention and
Response)
汚染防止及び対応小委員会
SDC (Sub-Committee on Ship Design and
TCC (Technical
Cooperation Committee)
技術協力委員会
FAL (Facilitation
Committee)
簡易化委員会
LEG (Legal
Committee)
法律委員会
Construction)
船舶設計及び建造小委員会
SSE (Sub-Committee on Ship Systems and
Equipment)
船舶システム及び設備小委員会
CCC (Sub-Committee on Carriage of Cargoes and
Containers)
貨物運送及びコンテナ小委員会
条約の採択やその後の改正は、どうような手続きで実施されているのです
Q2 か?また、最近の条約改正で「タシット改正」などの用語が聞かれます
が、どのような意味なのですか?
条約の改正については、従来は改正案をIMOで採択したあと
に、もとの条約の改正条項に定められた必要な国の数、船腹量
の条約締約国が受諾の意思を文書で表明する必要がありまし
た。しかしながら、最近の条約では、技術的な内容について
は、IMOの委員会で採択された改正は、一定以上の反対がない
限りは、一定期間(1年又は10ヶ月などで条約で決められ、採
択の際に決定した期間)が経過すれば、自動的に各国に受諾さ
A2
れたものとみなされ、その後一定期間(例えば6ヶ月)で改正
が発効することとされています。このような、黙っていても
(積極的に政府からIMOへ改正の受諾のための文書を寄託しな
くても)、改正条約が受諾されたものとみなされる手続きを
「タシット」改正手続きと呼んでいます。
このような、改正手続きは、SOLAS条約第I章を除く各章や
MARPOL条約の附属書などで採用されています。
IMOにおける一般的な条約改正手続き
(SOLAS条約の章(第I章を除く)、MARPOL条約附属書などのTacit改正手続き)
Approve
MSC/MEPCにおいて改正案を承認
Circulate
IMO事務局長より回章
Adopt
Accepted
Entry into force
Application
拡大MSC又は拡大MEPCにおいて採択
SOLAS(1年以上)及びMARPOL(10ヶ月以上)の
異議通告期間を経て、受諾されたものとみなされる。
受諾後6ヶ月を経過した時点で条約の改正が発効
一般的には条約改正発効日より改正が適用される
が、改正内容によっては別途適用日が改正案の中
に定められる。
条約の脚注(Footnote)や、条約本文中に引用されて
Q3 いないIMOの決議・サーキュラーなどの取扱いはど
のような位置づけですか?
条約の脚注は、正式には条約の一部とはなっていませ
んので、強制的な性格を持つものではありませんが、
締約国やその代行で検査を実施する船級協会が条約を
適用する場合にその判断の参考とするものです。
A3 また、IMO決議や条約解釈のサーキュラーについて
は、条約本文そのものではないものの、ロイド船級協
会では、旗国から特別の指示がない限り、原則とし
て、それらの決議・条約解釈サーキュラーを実施する
取扱いをしています。
Q4 バラスト水管理条約の批准状況は?
A4
あと少しで発効要件を満たす可能性があり、発効要件を満たせばその後1年で発効
することとなります。締約国の合計船腹量は32.54%となり、発効に必要な船腹量
35%に達するのに、あと少しの状態となっています。
Q5 前回のMEPCでのバラスト水管理条約に関する主な進展は?
A5
バラスト水処理装置の型式承認基準(G8ガイドライン)を今後見直すこととなっ
たほか、PSCでの検査方法のガイドラインが採択され、4段階からなる現実的な
PSCの手法が導入されました。また、G8ガイドラインの改正前に型式承認を受
けた装置を早期に設置した船舶についてはペナルティを課さないことも合意されて
います。
船舶のバラスト水の移動による生態
系への悪影響が懸念
2004年にIMOにおいてバラスト水管
理条約を採択
その後、A.1088(28)により実施ス
ケージュールの見直しをIMO総会で
決議
現在(MEPC67時点)の批准国は43
カ国、船腹量合計32.54%(発効要
件:30カ国、35%)、近い将来の発
効が見込まれる。
IMOの条約改正で近く規制強化などが
Q6 実施されるものには、現在検討中のもの
も含め、どんなものがありますか?
主な規則変更は表のとおりですが、その
A6 他にもさまざまな条約改正、IMOの決
議、サーキュラーなどが予想されます。
適用時期(未
確定のものを
含む)
IMOの規制内容(IMOで現在検討中のものを含む)
2015年9月1日
EEDI適用拡大(新造船・契約ベース)
EEDIの規制について、自動車運搬船、RO/RO貨物船、RO/RO客船、グルー
ズ客船(非従来型推進)、LNG運搬船(直結ディーゼル以外)についてEED
Iの適用が拡大された。
2016年1月1日
海上試運転での操舵試験の最大航海喫水要件の代替条件の導入(新造船・現存
船)
2016年1月1日
タンカーへのイナートガス装置の設置義務の拡大(新造船・キール据付ベース)
現行の8000DWT以上の規制に加え、8000DWT以上の油・ケミカルタンカー
に適用を拡大
2016年1月1日
通風ダクトの耐火要件の強化(新造船・キール据付ベース)
2016年1月1日
甲板上にコンテナを積載する船舶の消火設備の強化(新造船・キール据付ベー
ス)
コンテナの内部火災時に槍のようにコンテナ壁を突き刺して注水するWater Mist
Lanceを義務付け。甲板上5段以上のコンテナを積載する場合には、消火栓の水
をコンテナ上部まで放水するためのモバイル・ウォーター・モニターを義務付け
(船舶の幅30m未満の場合は2個以上、30m以上の場合は4個以上)
適用時期(未
確定のものを
含む)
IMOの規制内容(IMOで現在検討中のものを含む)
2016年1月1日
機関区域内の機関制御室・主作業室からの脱出径路の要件強化(新造船・キール
据付ベース)
機関制御室及び主作業室からは2系統の脱出径路を要求(そのうち1系統は連続
防火シェルター)。機関区域内の脱出径路の梯子・階段の裏面に鋼製シールドで
保護。
2016年1月1日
水素燃料自動車等運搬船の要件追加(新造船・現存船)
水素燃料自動車及び圧縮天然ガス自動車の運搬船についての追加要件を規定。新
造船について電気設備防爆要件を規定し、新造船及び現存船の両方について持ち
運び式ガス検知器(2個以上)を規定。
2016年1月1日
復原性計算機の搭載義務付け(新造船・現存船)(現存船については、適用時期
は2016年1月1日以後の最初の更新検査までに実施)
非損傷時及び損傷時の復原性計算が可能な計算機を船上搭載することを義務付
け。(ガスキャリアについては、新造船・現存船について2016年7月1日を基準
として実施)
2016年1月1日
救命設備コード(LSAコード)の改正
救命胴衣のRTD(標準試験体)を用いた試験方法の一部基準を緩和。
適用時期(未
確定のものを
含む)
IMOの規制内容(IMOで現在検討中のものを含む)
2016年1月1日 IGCコードの全面改正(新造船・キール据付ベース)
これまでの液化天然ガス運搬船などの技術進歩を取り入れ、IGCコードを全面
改正
2016年1月1日 NOx第3次規制(北米、米国カリブ海)(新造船・キール据付ベース)
新造船について、北米・米国カリブ海のECA海域に入る場合には、NOx排出
規制に適合する必要がある。その他のNOx-ECAが将来指定される場合に
は、その指定時点でIMOが追加されるECAの第3次規制の適用開始時期を設
定することとされている。
2016年7月1日 IGCコードの全面改正(新造船・キール据付ベース)
これまでの液化天然ガス運搬船などの技術進歩を取り入れ、IGCコードを全面
改正
2016年7月1日 閉囲区域の持運び式ガス測定器の搭載義務(新造船・現存船)
操練などで閉囲区域に入る場合のガス測定が実施できる持運び式測定器の搭載を
義務付け(酸素、一酸化炭素、可燃性ガス、硫化水素など)
適用時期(未
確定のものを
含む)
IMOの規制内容(IMOで現在検討中のものを含む)
2016年7月1日
コンテナ重量の検証・報告義務付け(現存船・新造船)
コンテナを船舶に積載する場合に、荷主(荷送人)が正確な重量を測定し船長に
供与することを義務付け。測定は全体の重量の実測のほか、貨物とコンテナ重量
を合算することも可能。
2016年7月1日
ゴールベース新造船構造基準(GBS)(新造船・契約ベース)
油タンカー及びバルクキャリアについて新造船に対するGBSを適用。(ただ
し、具体的な内容は船級協会がGBSに適合した油タンカー・バルクキャリアの
規則を策定することとなり、CSRのほかにIACSの統一規則等の資料につい
て各船級協会がIMOの監査・検証を受けることとなる。CSRの適用時期・内
容についてはIACSの取り扱いによる。)
2017年1月1日
(未定)
IGFコード(新造船・契約ベース)
低引火点燃料を使用する船舶について、船舶の構造、設備、オペレーションなど
の総合的な安全措置をまとめたIGFコードを強制化することとが予定されてい
る。ただし、IGCコードの第7章により貨物を燃料として使用するガス運搬船
についてはIGFコードの適用除外とする。
適用時期(未
確定のものを
含む)
IMOの規制内容(IMOで現在検討中のものを含む)
2017年1月1日
(未定)
極海コード(Polar Code)(新造船・現存船)(ただし、貨物タンク
配置などの構造要件については新造船のみ)
南極及び北極海域を航行する船舶について、既存のSOLAS条約及びMARP
OL条約の要件に追加して、極海特有の要件を強制化したもの。強制規定とガイ
ダンスとしての規定の両方を含めたコードとなっている。
IMOの規制動向の詳細内容はどのようにすれば入
Q7
手できますか?
ロイド船級協会では、IMOの会議の結果の
LRレポートをインターネットで公開してい
るほか、Future IMO Legislationとして規制動向
の詳細内容をまとめた冊子をPDFバージョ
A7 ンで公開しています。この情報は、ロイド船
級協会の日本語版ホームページ
(http://www.lrs.or.jp)の「船級規則&出版物」を
クリックし、最新版をダウンロードすること
でご利用いただけます。
Q8 その他のIMOでの懸案事項は?
海洋汚染物質の貨物を積載していた貨物タンク洗浄水のM
AROL附属書Vでの取扱いなど、さまざまな懸案事項が
ありますが、会議の結果はそのつどロイド船級協会のIM
O会議レポートでご紹介します。
また、船舶からの地球温暖化ガス排出問題については、将
A8 来の経済的規制の可能性も念頭において、国際海運のエネ
ルギー効率の改善のための「モニタリング・報告・検証
(MRV)」のシステムの検討が進められています。
なお、長期的課題としては、GMDSS(世界的海難捜索
救助システム)やEナビゲーションの検討も見込まれま
す。
川井 啓裕
ジャパン・マリタイム・アフェアーズ
ロイド船級協会
Working together
for a safer world
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