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デジタル新時代に向けた新たな戦略(三か年緊急プラン)
デジタル新時代に向けた新たな戦略 ~ 三か年緊急プラン 平成21年4月9日 I T 戦 略 本 部 ~ 目 次 はじめに 第1章 1ページ 基本的方針 Ⅰ 2015 年に向けて目指すべき社会イメージ 2ページ Ⅱ 三か年緊急プラン策定の基本的考え方 3ページ Ⅲ 具体的施策の方針 4ページ Ⅳ 施策の実施に当たっての留意点 5ページ 第2章 具体的施策 Ⅰ デジタル特区等による三大重点プロジェクトの推進 (プロジェクト1)国民がサービスの利便性を実感できる新しい 電子政府・電子自治体の推進 7ページ (プロジェクト2)日本健康情報コミュニティ(仮称)構想の実 現 13ページ (プロジェクト3)デジタル教育の推進とデジタル活用人財の育 成・活用 17ページ Ⅱ 産業・地域の活性化及び新産業を育成するための取組 22ページ Ⅲ あらゆる分野の発展を支えるデジタル基盤の整備推進 28ページ -- 1i - デジタル新時代に向けた新たな戦略(三か年緊急プラン) はじめに 我が国の IT 戦略は、2001 年に施行された高度情報通信ネットワーク社会形 成基本法(平成 12 年法律第 144 号)に基づき、 「e-Japan 戦略」を決定して以 来、本格的に情報通信基盤の整備に取り組み、「e-Japan 戦略Ⅱ」では利活用 の方向への進化を目指し、現在の「IT 新改革戦略」 (2006 年 1 月 19 日)にお いては、 「構造改革による飛躍」 「利用者・生活者重視」 「国際貢献・国際競争 力強化」の理念の下、2010 年の目標年度に向け、施策の推進を図っていると ころである。 一方、この間、デジタル技術は日進月歩の速さで進展を遂げ、既に 3 年を 経た現行戦略では想定していなかった技術が具現化しつつある。加えて、百 年に一度とも言われる金融危機が世界を襲い、これに伴う我が国経済の失速 も著しく、これに対する処方箋が強く求められている。米国、英国、韓国等 の国々においては、このような危機に対し、デジタル技術に焦点をあてた新 たな戦略を相次いで検討・策定しているところである。 このような事態に鑑み、2008 年 12 月 19 日、IT 戦略本部では、現行の IT 新改革戦略の期限を待たずに、直面する経済危機を乗り越えるとともに、我 が国経済の底力を発揮するためのデジタル新時代を見据え、2015 年に向けた 新たな中長期戦略を 2009 年 6 月末までに策定することを決定した。また、こ のうち、現下の経済危機を克服するための三か年緊急プランを同年 3 月末ま でに、先行して策定することとした。 本プランは、これに基づき我が国が今後 3 年間で緊急に行うべき施策をと りまとめたものである。デジタル技術は、現在の難局を乗り越え、明るく強 い日本を取り戻すための強力な牽引力であり、この力を最大限発揮すべく、 IT 戦略本部として全力で本プランの実現に向けた取組を今後進めていく。 -1- 第1章 基本的方針 Ⅰ 2015 年に向けて目指すべき社会イメージ 2015 年までにデジタル技術とブロードバンド環境で常に世界を一歩リード し、その活用を創造と革新の推進力として、経済、社会、文化を含めた日本 の「国」としての競争力を高めるとともに、併せて、低炭素社会の実現、高 齢化・少子化への対応、電子政府の実現など世界共通の今日的課題を克服し、 世界に対するリーダーシップをとっていける社会を構築する。 また、こうした社会を実現するためには、デジタル技術自体がハードウェ ア中心の技術から、それを基盤として多様なサービスや社会変革を目指すソ フトウェアやシステム中心の技術へシフトする等の進化を続けると同時に、 経済社会のあらゆる局面に浸透し、活動の基盤となっている現状を踏まえて、 デジタル技術の持つ創造と革新の力を十分に発揮させる仕組みが重要である。 このような認識の下、民が主導し官が支援する 21 世紀型社会経済モデルの 構築に向け、世界最高水準の情報・知識活用能力を備えた国民一人ひとり、 さらに企業、NPO、地域社会を含めあらゆる主体が相互につながるとともに、 自らのイニシアチブで世界の図書館や学校、病院、行政機関、企業、民間団 体等とネットワークでつながり、必要な時にいつでもデジタル化された情報 に安全にアクセスでき、その情報を自在に活用することのできる環境を 3 年 以内に整備する。その上で、これらの更なる高度活用を通じて、生活や経済 活動における新たな価値や文化を創造し、新たな成長と雇用を生み出すこと を可能とする社会、いわば「すべての国民・企業・NPO・地域社会が元気にな り、夢を実現できるデジタル成長社会」を実現することを目指すことが必要 である。 同様に、進化し続けるデジタル技術の力を活かして、経済社会システムの あらゆる無駄を省くとともに直面する社会的課題の解決を図る等、新しい思 考と研ぎ澄まされた感覚をもって、経済社会の革新を不断に実現し続けてい く社会、いわば「進化し続ける高品質で無駄のないデジタル高度社会」の実 現を目指していくべきである。 こうした「すべての国民・企業・NPO・地域社会が元気になり、夢を実現で きるデジタル成長社会」や「進化し続ける高品質で無駄のないデジタル高度 社会」の構築は、現下の経済危機の中で、当面の推進役は政府が担うとして も、中長期的には民間主導により、国民一人ひとりや、企業、NPO、地域社会 などがイニシアチブをとりつつ、行政がそれを環境整備などの面で支え、国 民の力が結集されることによってのみ実現される。 -2- Ⅱ 三か年緊急プラン策定の基本的考え方 1.三か年緊急プラン策定の意義 未曾有の経済危機から脱却し、経済の好転に向けて雇用状況等を改善す るとともに、前述の目指すべき社会の実現に向けて、デジタル技術が有す る創造と革新の力を最大限活用するとともに、各産業分野が底力を発揮す るための基盤であるデジタル技術分野に、未来投資の要素も含め集中的・ 効果的に投資を行い、未来のデジタル社会の基盤構築に向けた取組を進め ていくことが不可欠である。 このため、不退転の決意で、情報や知識の力をフルに発揮させて、新価 値創造につなげていく基礎を早急に築くこととし、 「投資対効果」を高めて 短期・中長期の新たな価値・文化の創造に向けた取組の拡大への好循環を 形成していく。同時に、経済社会システムの無駄やデジタル情報・知識の 力の発揮の支障となる要因を排除し、社会的課題を解決する質の高い仕組 みへと変革していくための基礎作りにも、早急に着手していく。 以上のことを政府一丸となって具体的に実現するための方策として、本 「三か年緊急プラン」を策定する。 2.緊急プランで取り扱うべき重点的な取組の選定方針 現在はデジタル技術の活用が遅れているものの、今後その活用が浸透す ることにより、国民生活の利便性が大幅に向上される取組、疲弊している 地域や低迷している産業を元気にする取組、さらに今回の経済危機をチャ ンスと捉え、将来の成長につながる基盤を一挙に整備する取組に重点を置 くことが重要である。その一方で、IT 新改革戦略の下で実施されている取 組の継続性について配慮することも重要である。 以上の観点から、三か年緊急プランでは、以下の 3 つの柱を掲げる。 ① デジタル特区等による三大重点プロジェクト(電子政府・電子自治体、 医療、教育・人財)の推進 ② 産業・地域の活性化及び新産業の育成 ③ あらゆる分野の発展を支えるデジタル基盤の整備推進 なお、各柱の具体的な施策の選定に当たっては、緊急的な経済対策とし ての即効力があり、同時に、将来を見通した情報通信基盤整備の投資加速 化につながる取組であって、以下の基準のいずれかに該当するものとする。 (ⅰ)3 年間に集中して投資することにより大規模な経済的な成果を出せる 取組 (ⅱ)2015 年までの中長期的な取組のうち、最初の 3 年間に集中的な投資 を行うことにより、より効果的に成果を先取りできる取組 -3- Ⅲ 具体的施策の方針 2015 年の目指すべき社会イメージの実現に向けて、IT 戦略本部の強力なリ ーダーシップの下、情報セキュリティに留意しつつ、以下の方針により各分 野における施策を緊急に開始する。 なお、これらの施策の実施に当たり、3 年間で 3 兆円の投資を行った場合、 40 万人~50 万人の雇用創出効果が見込まれる。 1.デジタル特区等による三大重点プロジェクトの推進(各府省連携が必須) デジタル技術の活用が遅れており、取組を加速化すべき重点分野として、 「電子政府・電子自治体」、「医療」、「教育・人財」の三分野を重点プロジ ェクトとする。同三分野は各府省の連携が不可欠であることから、関係府 省がより緊密な連携(地方自治体が関連する施策の場合は地方自治体とも 連携)をとって推進する。 (1)国民がサービスの利便性を実感できる新しい電子政府・電子自治体の 推進 ¾ 国民や企業による行政情報へのアクセスを可能にするため、行政機 関等が保有する情報を再利用できる形でデジタル化する。これにより、 デジタル情報を前提とした、 「無駄の無いエコな電子政府・電子自治体」 を実現する。 ¾ また、個人・企業の行政手続の無駄を無くし、かつ行政機関等が保 有する個人・企業の情報に自ら容易にアクセスできるようにする他、 行政サービスを「住民が出向いて行政にお願いするサービス」から「行 政の側から住民にお届けするサービス」に転化する。 ¾ 電子政府・電子自治体全体を推進するため、政府全体を統括する「政 府 CIO(仮称)」の設置や、国と地方公共団体が一体的に電子行政を推 進するための体制を整備する。 (2)日本健康情報コミュニティ構想(仮称)の実現 ¾ 地域医療連携の促進に資する医療機関の機能の強化、健康情報の高 速通信ネットワークの整備、地域住民の健康長寿促進に向けた取組等 により、質の高い医療の提供、医療人財の確保を通じた医療再生、国 民健康の増進等を実現する。 (3)デジタル教育の推進とデジタル活用人財の育成・活用 ¾ デジタル活用人財の裾野を広げるためのデジタル教育に取り組むと ともに、デジタル活用能力を有する人財を育成・活用することにより、 -4- 日本全体での潜在的なデジタル活用人財の不足の解消を図る。 ¾ 放送コンテンツ等の収集、保存、公開、デジタル・ネットワーク化 を強力に推進するとともに、教育現場における地上デジタルテレビ等 を活用したわかりやすい授業を促進するため、収集された教育、教養 コンテンツを充実させ、教室への配信等の環境整備を推進する。 2.産業・地域の活性化及び新産業の育成 ¾ デジタル技術の持つ問題解決力を生かし、中小企業、農林水産業等 の現在の社会経済の基幹となる企業等の生産性向上、地域活性化、ITS の実用化・普及の加速化を図るとともに、権利情報等を集中的かつ円 滑に処理するための仕組みの強化等を通じたデジタル情報・知識の融 合・活用による産業構造の変革とデジタル技術を活用した新産業の創 出により、先進的な知価創造立国を実現する。 ¾ 環境問題への適切な対処を通じ、持続的な経済成長を実現する。 3.あらゆる分野の発展を支えるデジタル基盤の整備推進 ¾ ブロードバンドインフラ、地上デジタルテレビ等のデジタル活用社 会のハード・ソフト基盤整備、地理空間情報の充実等の情報・知識面 での基盤整備及びこれらを支える革新的技術等の研究開発を推進する。 なお、これらの実施に当たっては、情報セキュリティに留意しつつ、 国際的な展開を視野に入れたものとする。 Ⅳ 施策の実施に当たっての留意点 今後の施策を実施する際には、以下の点に留意して推進する必要がある。 1. 「Ⅰ 2015 年に目指すべき社会イメージ」の実現に向けたデジタル技術の 最も重要な役割の一つは、情報や知識がデジタル技術によって適切に加 工・処理され、流通することにより、人々の間で当該情報・知識の共有・ 集積・高度化等を可能とすることにある。 しかしながら、現在は、有用な情報があっても印刷物しかない場合など、 コンピュータやネットワークを介した開示や共有ができず、デジタル技術 の活用が行いにくい状態にあるものも多い。 また、仮に情報や知識がデジタル化していたとしても、それが単独のパ ソコンやデータベース等に留まっており、ネットワークでつながっていな いために他のコンピュータ等で活用できない場合も多い。この場合、瞬時 に多くの用途に情報や知識を活用できるデジタル技術の有用性を十分に発 揮できない。 -5- さらに、これらが解決されたとしても、デジタル技術を存分に活用して 情報や知識を取り扱うためには、デジタル化を前提にしていない制度や、 使用する者のデジタル技術の活用能力の不足も課題となる。加えて、デジ タル化された大量な情報や知識を利用ニーズに即した形で選択・活用する 技術の高度化といった課題もあわせて挙げられる。 すなわち、デジタル技術の活用に当たっては、 (i) 「(デジタル化がされておらず)開示や共有ができない」、 (ii) 「つながらない」、 (iii) 「制度や活用能力が不十分で情報や知識の活用ができない」 の三つの壁が存在している。 デジタル技術を活用した将来の社会経済を考えるに当たっては、多様な 要素を考慮する必要があるが、少なくとも上記課題はその実現の前提とな るものであり、情報や知識の力が最大限発揮されるよう、以下の観点から 取り組んでいく必要がある。 (ア) デジタル化されていないことでアクセスできない情報をリストア ップした上で、デジタル化してアクセス(公開)可能にする。 (イ) つながらないことでアクセスできなかったり、十分な活用ができな かったりする情報をリストアップした上で、つないで活用可能にする。 (ウ) 制度がデジタル技術を想定していないために、活用できない情報を リストアップした上で、制度整備によって活用可能とする。また、デ ジタル化した情報・知識を実際に活用できる人財を育成・活用する。 2.これまでの施策の実施に当たっては、利便性や効率性などメリットの部 分の説明が強調される傾向があるが、メリットだけではなく、注意を払わ なければならない点等についても説明し、国民が施策全体を理解、判断で きるよう丁寧に周知する必要がある。 3.施策の実施に当たっては、本来数値目標を設定し、進捗状況を PDCA サイ クルにより評価することが重要であるが、6 月末に取りまとめる中長期的な 目標との関係を踏まえる必要があることから、中長期的目標の議論の際に あわせて検討する。 4.なお、三か年緊急プランを含む、今後の IT 戦略の円滑な実施を担保する ために、IT 戦略本部において、グローバルな観点から将来ビジョンを継続 的に検討する体制及び、ルール・制度・規制の見直しを実施する体制を整 える。 -6- 第2章 Ⅰ 具体的施策 デジタル特区等による三大重点プロジェクトの推進 これまで「三つの壁」によりデジタル情報活用が進んでいなかったが、我が 国の国民生活の利便性の向上、IT 新改革戦略の下で実施されてきた取組の継続 性等にかんがみ、三か年緊急プランとして関係府省・機関が一体となって取組 を加速化すべき重点プロジェクトは以下のとおりである。 これら重点プロジェクトの加速化に当たっては、特定の地域・拠点において 関係府省・機関が連携し、制度・業務見直しを徹底しつつ、重点的、先導的に 施策を推進するための「デジタル特区(仮称)」を最大限活用する。このように、 「デジタル特区(仮称)」でのプロジェクトの成果を基にして、全国的な展開を 図っていく。 (プロジェクト1)国民がサービスの利便性を実感できる新しい電子政府・電 子自治体の推進 1.現状と課題 電子政府・電子自治体について、我が国は、世界に先駆けてその推進に取 り組んできたが、その後遅れて開始された先進各国の取組が加速されてきた 結果、我が国は、諸外国に比べて遅れが目立つ状況となっている。なお、 “OECD IT Outlook 2008”によると、電子政府・電子自治体の推進は、2008 年におけ る OECD 加盟国の“ICT 政策”において最優先課題とされている。 行政手続のオンライン化は、対象手続の重点化等の取組によって、全体で 見れば 2010 年度までにオンライン利用率 50%以上との目標が達成されつつあ るが、手続の中には添付書類のデジタル化の遅れや使い勝手の悪さなどから、 利用が極めて低調なものがある。 行政サービスの抜本的な改善を目指す次世代ワンストップサービス構想や 国民電子私書箱(仮称)構想については、行政サービスの質、行政事務の透 明性、行政の効率性等の向上など、そのメリットの検証がなされつつあるが、 これらを実現するためには、データ疎結合等の新技術を用いたシステム基盤 や制度の整備などを加速させる必要がある。 行政の業務・システムについては、主要システムの最適化(刷新)や内部管 理業務の見直し(BPR)とシステム化による効率化が進行しているが、その取組 は個々の業務やシステムの範囲にとどまっており、全体最適化による更なる 行政コストの削減を目指した一層の取組が求められる。 -7- 2.取組の概要 (1)デジタル化されていない壁の突破 国民や企業の行政情報へのアクセスを可能にするためには、まず行政機 関等が持つ有用な情報を再利用できる形でデジタル化することが必須条件 である。また、行政情報のデジタル化と、デジタル情報を前提とした業務 プロセスの見直しは、 「無駄の無いエコな電子行政」の実現につながる。 ① 独立行政法人国立公文書館をはじめとする行政機関等が保有する有用 な情報を再利用可能な形でデジタル・アーカイブ化する。その際、既に デジタル化されているものも含めて情報を精査し、信頼できる情報を生 成する。 ② 紙文書として保存する必要のある文書については、タグを付けること により、情報検索が容易な形で管理する。 ③ 統計情報、地理空間情報、社会基盤情報等デジタル化された行政情報 のフォーマットやデータの標準化及びアクセスしやすい形での公開を徹 底し、情報活用による新産業創出を促進する。 ④ デジタル情報の活用を前提に、行政業務プロセスの抜本的見直しを実 施する。その際、共通業務の統一化、民間へのアウトソーシングを指向 する。 (2)つながらない壁の突破 個人・企業が行政手続のために何度も窓口に出向いたり、同じ情報を違 う様式で何度も提出する無駄を無くし、かつ行政機関等が保有する個人・ 企業の情報に自ら容易にアクセスできる、 「つながった電子行政」を実現す る。また、 「住民が出向いて行政にお願いするサービス」からネットワーク 等を介して「行政の側から住民にお届けするサービス」に転化する。その 際、個人情報の保護やセキュリティの確保に万全の措置を講ずる。 ① 行政事務の原則電子化などにより、個人・企業が、デジタル情報の形 で行政から通知を受けることや、行政に一度提出した自身の情報を再提 出しないですませることなど個人・企業の利便性向上に資する「つなが った電子行政」を実現するために必要となる法制度を整備する。 ② 利用者ニーズの高い国及び地方公共団体の手続の総点検とデータ連携 のための対応方針を早急に策定し、希望する個人・企業に高度な行政サ ービスを提供する「国民電子私書箱(仮称) 」を、社会保障カード(仮称) の実証実験の成果も活用しつつ整備し、ワンストップサービスとプッシ ュ型サービス(行政の側から進んで住民にとって必要な情報をお届けす -8- るサービス)を実現する。また、これらの取組にも資する利用者志向の 次世代公的個人認証基盤を開発する。さらに、携帯電話等国民生活に広 く普及したデジタル機器などによる電子行政サービス等へのアクセス手 段の多様化を検討する。 ③ 納税者である個人や企業の負担軽減及び税務行政の効率化を進めるた め、公的個人認証の普及拡大に努めるとともに、地方公共団体の eLTAX (エルタックス)への参加を拡大し、給与支払報告書の提出など地方税 手続の電子化を推進する。また、国税電子申告・納税システム(e-Tax) とのデータ連携を図る。 ④ 「つながった電子行政」の環境を実現するため、国民電子私書箱(仮称) と行政情報をつなぐハブとして、「行政情報共同利用支援センター(仮 称)」を構築する。 ⑤ 効率的かつ柔軟でセキュアなシステム構築、開発・運用コストの削減、 及び業務の共通化を図るため、将来における地方公共団体のクラウドと の連携等も視野に入れつつ、「霞が関クラウド(仮称)」を構築し、全府 省横断的に業務及びシステムの最適化を推進する。また、 「バーチャル会 議システム(仮称)」を整備する。 ⑥ 電子自治体の推進に当たっては、ASP・SaaS や共同利用型のクラウド・ コンピューティングなどの技術を積極的に活用するとともに、地域情報 プラットフォームに準拠して情報システムの刷新を推進する。 ⑦ つながらない壁を突破するために必要不可欠となる個人・企業の ID の 在り方について、 (3)①の国と地方公共団体一体となり電子行政を推進 するための体制において既存の ID 体系との関係を整理しつつ検討し、IT 戦略本部において 2009 年度内に決定する。 (3)活用を妨げる制度や人財の壁の突破 電子行政全体として、個別最適でなく全体最適を追求し、行政サービス の抜本的改善、行政の効率化等の成果を挙げるため、行政の縦割りを廃し て推進する。また、国民・企業にとって有用なデジタル情報の公開、国民・ 企業による活用を妨げるような制度を徹底的に洗い出してこれを是正する。 ① 「政府 CIO(仮称)」を設置した上で、地方公共団体における CIO 設置・ 活用の推進とともに、地方分権の推進に合わせて国・地方公共団体一体 となり電子行政を推進するための体制を整備する。政府 CIO は、専任と するなどにより、電子政府推進に関する責任と権限を持ち、各省 CIO と 連携し、かつこれを統括できるようにする。また、各府省及び地方公共 団体における情報システムにかかるガバナンスを強化するため、CIO の責 -9- 任と権限を強化する。 ② デジタル情報の保存・公開・活用を妨げる制度を洗い出し是正する。 ③ デジタル情報の保存・公開・活用のリスクを最小限にするためのセキ ュリティ対策や関連技術開発を推進する。 ④ オンライン利用に関する学習機会の提供等国民の電子行政に関するリ テラシーを向上させるための取組を促進する。 3.目指すべき成果 (1)国民にとって ① 行政情報のデジタル化に伴う雇用が生まれる。 ② 行政情報に手軽かつ安価にアクセスできるようになる。 ③ 一度の手続で複数の機関への手続を済ませることができるなど、行政 手続に要する手間や費用が大幅に軽減される。 ④ デジタル情報の公開や、行政機関等が保有する利用者自身の情報にい つでもアクセス・確認できるようになるなど、透明性の向上により行政 への信頼感が増す。 (2)企業にとって ① 行政手続に要する手間や費用の大幅削減により、投資や競争力強化に リソースを充当できる。 ② 公開された行政情報を活用することで、新規ビジネス創出や企業の労 働生産性の向上が期待できる。 ③ 許認可のスピードが上がり、国際的な企業競争力が増す。 (3)行政にとって ① システムの刷新、情報の活用等により業務の質の向上、業務能率の向 上が図られる。 ② 業務の効率化により費用を節減し、こうしたリソースや人財を今後拡 充が必要な分野に充当できる。 - 10 - 図 1.国民本位の新しい電子政府・自治体の推進(国民電子私書箱構想) 国民電子私書箱とは 希望すれば、国民(及び企業)の一人ひとりに対し、電子空間上でも安心して年金記録等の個人 の情報を入手し、管理できる専用の口座(国民電子私書箱)を提供し、幅広い分野で便利なワン ストップの行政サービスが受けられる、世界で最も先進的な「あなただけの電子政府」を実現 国民の利便性向上 現状 ライフイベント毎に 大量の手続 行政機関 自治体や事業所 単位に分けて、 従業員の税や雇用 関係の手続を提出 ワンストップの実現 市役所 【引越】 ・最大26手続、7機関訪問 ・添付書類13種類 【退職】 ・最大10手続、6機関訪問 ・添付書類15種類 紙媒体等により 自分の年金記録等 を確認 将来 国と地方自治体 国と地方自治体 が対等に協議し、 が対等に協議し、 一体となって推進 一体となって推進 できる体制の整備 できる体制の整備 ■ ワンクリックで手続完了 学校 添付書類が不要 地方運輸局 etc. ■ コスト削減効果(官民合計) ・ 引越約1,000億円 ・ 退職約1,200億円 行政の見える化 行政情報共同利用 支援センター 年金保険者等 ■ 自分の記録等をいつでも 確認可能 電子私書箱 企業負担の軽減 B市 A企業 C市 ■ 従業員のデータを一括送信 ■ 確定申告のワンストップ化による コスト削減効果は約1,700億円 ◆ ◆手続のBPR(全体最適化) 手続のBPR(全体最適化) 政府CIO CIOの設置 の設置 政府 政府CIOの設置 ◆ ◆電子政府全体を統括する 電子政府全体を統括する 役割 役割 (米国オバマ政権CTO CTO**設置) (米国オバマ政権 (米国オバマ政権CTO*設置) *Chief *ChiefTechnology TechnologyOfficer Officer ■ 社会保障分野/公共サービス 分野の通知の省略等による コスト削減効果は約4,600億円 A市 実現に向けた 基盤整備 Account Card 共同基盤の整備 共同基盤の整備 ◆ ◆クラウド技術等を活用した クラウド技術等を活用した 国や地方における共同利 国や地方における共同利 用基盤 用基盤 国民電子私書箱(仮称)とは 1.仕組み (1)国民電子私書箱(仮称)は、希望する個人又は企業に提供される高度なセ キュリティ機能を持った電子空間上のアカウントであり、従来の「電子私書 箱(仮称)構想」及び「社会保障カード(仮称)構想」を発展させ、社会保 障分野のみならず、広い分野でのワンストップの行政サービスを提供するた めのもの。 (2)本人の意思に基づいて、行政手続等に必要な添付書類を直接行政機関間 でやりとりすることができる。 (3)個人又は企業は、IC カードなどにより、情報セキュリティを確保した上 で、いつでも、国又は地方公共団体が保有する自らの情報を、国民電子私書 箱(仮称)を用いて、閲覧でき、また、安心して保管することができる。 - 11 - 2.メリット (1) 個人の利便性 ① 個人が、行政機関・病院・学校などから、いつでも簡単に、必要な情報 を入手でき、自分の情報(年金記録など)が正しいかを、いつでも確認で きる。 ② 引越、退職、出産等のライフイベントにおいて、何度も役所や公共機関 に足を運び、同じ事柄(住所変更など)を手続きしなくて済む。行政手続に 必要な行政機関発行の各種証明書が不要になる。 ③ 各種の給付などの情報を役所側から連絡し、給付もれを防ぐことができ る(プッシュ型の行政サービス)。 (2)企業の利便性 ① 国と地方公共団体の手続のワンストップ化が可能となるなど、企業の事 務処理が大幅にスピードアップし、事務コストも削減できる。 ② 従業員ごと又は事業所ごとに分けて行っていた手続が、まとめて一回で 完了する。 (3)行政コストの削減 ① サービスがワンストップ化され、各種証明書の発行が不要となるため、 窓口事務を大幅にスリム化できる。 ② 外部からデジタル情報を入手することで、入力作業が不要になる。 ③ 通知文書の郵送など、紙ベースの各種通知が不要になる。 3.整備・運用上の注意点 国民電子私書箱(仮称)は、個人の情報を取り扱うシステムであるため、セ キュリティや個人情報保護に万全の対策を講じることが必要。 ① 国民電子私書箱(仮称)は、最新の技術を用い、極めて高度のセキュリテ ィが確保できるものとすることが必要。 ② 国民電子私書箱(仮称)のシステム運用管理を監視し、利用者からの苦情 等に対応するための仕組み(第三者機関等)の在り方を検討することが必 要。 ③ 利用者が、利用履歴(どのような情報がいつどこの機関に提供されたか といった記録)をいつでも確認できることが必要。 - 12 - (プロジェクト2) 日本健康情報コミュニティ(仮称)構想の実現 1.現状と課題 高齢化社会の進展に伴う患者数の増加、深刻な医師不足等を背景に、地域 医療の崩壊が叫ばれる中、医療提供体制の要である地域の中核病院等の疲弊 は、社会問題となっている。 地域医療の再生等に寄与することが期待される医療の情報化については、 IT 新改革戦略に基づき、原則レセプトオンライン化や各種の実証事業及び標 準化への取組が進められているが、医療現場でのレセプトオンラインネット ワークの有効活用や電子カルテの普及は進んでおらず、効果が見えにくい状 況にある。特に、デジタル技術を活用した医療機関間の連携は、一部の限ら れた地域を除き、ほとんど実現していない。 他方、国民の健康に関する関心が高まる中、医療・介護を含む健康関連サ ービスについても、個人の事情に応じたきめの細かい多様なニーズを満たす ことが求められてきている。しかし、そのために必要な情報システムの導入 やネットワークの敷設は、コスト負担の問題、デジタル情報活用人財の不足 等のため、あまり進んでいない。 2.取組の概要 地域医療の再生を図るため、医療機関等の情報化を強力に推進するととも に、病院、診療所、薬局など医療機関等の間の情報連携を促進する。これに より、国民がその疾病に応じた治療を適切な医療機関で受診することができ、 安心した生活が送れるようにするとともに、医療従事者の業務環境を改善す る。 このため、情報連携に不可欠な健康情報等のデジタル化を加速し、医療機 関の間での情報共有(つながり)を推進するとともに、全国どこの医療機関 であっても、画像診断情報等容量の大きいデジタル情報を瞬時に伝送するこ とができるよう高速通信ネットワークを整備する。 また、地域の中核病院等と周辺の医療機関等との情報連携を阻む制約を、 情報セキュリティを確保した上で除去し、地域の医療機関等の連携体制の構 築にデジタル技術を最大限活用する。さらに、健康サービスに係る事業が医 療・介護サービスと連携するための情報基盤を整備するとともに、医療機関 等におけるユビキタスネット技術の活用を促進する。 これらの取組により、デジタル技術の活用による地域医療連携の有効性を 多面的に検証するとともに、産科医療、救急医療、生活習慣病対策等の地域 課題解決に対応した、全国普及のためのモデルである「日本健康情報コミュ - 13 - ニティ(仮称)」を全国各地で実現する(情報連携を阻む制約がある場合等は デジタル特区を活用)。 (1)地域医療連携の促進に資する医療機関の機能の強化 地域医療連携の促進の環境整備として、医療機関(地域の中核病院と周 辺の医療機関等)の機能の強化を進め、医療機関間の情報伝達・共有を推 進する。具体的には、Web 型電子カルテシステムや遠隔診療機器等の導入補 助等を強化し、医療機関間の健康情報のリアルタイムでの共有を推進する とともに、救急医療情報システムと周産期救急情報システムの連携や改善 を図り、救急患者の医療機関への円滑な受入れを支援する。その際、地域 の医療機関等の連携に必要な人的ネットワークの形成を併せて支援すると ともに、医療機関の連携におけるデジタル技術の活用方策につき、ベスト プラクティスの紹介などの普及啓発に取り組む。さらに、地域での疾病管 理等のための健康情報の集積・活用を実現するための仕組みやルールに関 する検討を行い、2010 年度までに方針を決定する。 また、すこやか親子電子手帳(Web 母子手帳)のような情報共有の取り組 みを推進する。 (2)遠隔医療に関するモデル事業の継続・拡充 遠隔医療の位置付けをより明確化するとともに、遠隔医療に係る診療報 酬の適切な活用に必要な安全性・有効性等についての科学的根拠に基づく データ(エビデンス)を検証するため、現在実施している遠隔医療のモデ ル事業をさらに継続・拡充する。 (3)医療機関等のデジタル基盤の整備 ① 医療機関間の連携の基盤を確立するために、早急に医療機関等におけ るオンライン・ネットワークを構築できるよう、レセプト電算処理シス テムの導入を支援するなど、診療所・薬局等へのレセプトオンライン化 への取組を支援する。 ② 情報セキュリティ、標準化及び相互運用性を確保し、利用者のコンセ ンサスを得た上で、電子レセプトの作成コストの低減の方法として標準 化を含めた ASP・SaaS の活用の検討を進める。 ③ 健康情報の重要性に鑑み、ASP・SaaS を活用した医療機関向けのサービ スの高いレベルでの安全性・信頼性を確保するための基準を示すととも に、その検証を可能とする情報開示指針を策定する。 ④ 医療従事者間の情報伝達・共有のため、健康情報へのセキュアなアク - 14 - セス実現に不可欠な認証基盤を整備するとともに、新規資格取得医師等 及び希望する既取得者に対し、医療における公開鍵基盤(HPKI)を実装 する HPKI カード等の適切な支給方法等を検討の上、必要な支援を行う。 ⑤ デジタル基盤の利用に伴う医療従事者の負担を軽減し、医療行為に集 中できる環境整備のため、メディカルクラークの導入強化等を検討する。 (4)健康情報の伝送が可能な高速通信ネットワークの整備 地域医療(遠隔医療を含む)、救急医療等の推進のため、全国どこの医療 機関であっても、容量の大きいデジタル情報を含む画像診断情報、診療情 報提供書等の瞬時での伝送が可能となる高速ブロードバンド網を整備する。 特に、定住自立圏構想を踏まえ、医療機関等のネットワーク及び公共シス テム基盤を整備する。 (5)地域住民の健康長寿促進に向けた取組 ① 医療機関、介護事業者、保険者、健康サービス提供者、地方自治体等 各主体が健康サービス産業群の連携の構築・維持という面で主導的役割 を果たす社会システムのモデル事業を実施するとともに、健康情報のや りとりやサービス提供に必要な情報システムの開発・実証実験等を行うこ とにより、「地域総合健康サービス産業群」を創出する。 ② 遠隔地から地域住民を適切に見守るための地域見守り支援システムの実 証等を行い、国民がどこでも安心して暮らせる地域社会を実現する。 ③ 個人に適した最適な健康サービスを提供するため、携帯端末を活用してシ ームレスに収集した個人の健康管理情報を的確に解析・配信しうる技術開発 等を行う。 (6)医療機関等におけるユビキタスネット技術等の活用促進 医療従事者の負担を増加させることなく、安全・安心に役立つユビキタ スネット技術等の活用を促進し、医療現場の安全性向上や業務の効率化を 図る。 (7)蓄積された健康情報の疫学及び臨床医学への高度活用の推進 健康情報を全国的に高度活用するため、疫学及び臨床医学のためのオン トロジー工学技術等の活用を促進し、医療の質の向上に役立てる。 - 15 - 3.目指すべき成果 医療機関等の情報化、健康情報のデジタル化、高速ブロードバンド網の整 備、医療情報システムの安全管理の徹底等による健康情報へのアクセス環境 の改善等により、全国どこでも、国民及び医療従事者にとって最良の医療環 境を実現する。 また、医療機関等間の情報伝達の円滑化により、地域医療(遠隔医療含む) や、救急医療の向上、ひいては医療人財の確保による地域医療の再生に大き く貢献する。 さらに、疾病予防・管理、介護予防等に関して、個人が健康情報を入手で き、いつでも適切な専門家のサービスを受けられる社会と、それを支える地 域に根ざした総合健康サービス産業群を創出し、国民の健康に関する多様な ニーズを満たす。 図 2.日本健康コミュニティ(仮称)構想の実現 ○ デジタル技術を活用した地域医療連携による地域医療の再生 ○ 遠隔産科医療、遠隔画像診断等による安全・安心な医療 ○ 健康情報の集積・活用の実現による医療の質の向上 ○ 健康サービス産業の創出による生涯を通じた健康・疾病管理 医療の質の向上 地域医療の再生 健康情報 を集積・活用 医療機関のブロードバンド 環境整備 生涯を通じた 健康・疾病管理 研究機関、保険者 地方自治体 日本健康情報コミュニティ(仮称) 電子カルテ、レセプトシ ステムの整備 - プライバシー、セキュリティに配慮 ー デジタル技術を活用した地 域医療連携 地方自治体 WEB母子手帳 遠隔産科医療 医療機関、介護施設 助産院 医師不足・偏在 解消に寄与 医師の過重労働 解消に寄与 安心・安全な医療 健康サービス産業 健康サービス 産業の創造 医療の安全性の向上 遠隔画像診断 住民の不安・負担を軽減 - 16 - ユビキタス健康医療 (プロジェクト3) デジタル教育の推進とデジタル活用人財の育成・活用 1.現状と課題 デジタル技術を活用した教育は、効果的で広がりのある教育のために必要 なものとなっている。 一方、教育機関におけるデジタル技術の活用不足は多々指摘されており、 この改善は政府の重要な政策課題と位置づけ、一般の情報リテラシー教育と ともに、学校教育現場へのデジタル機器の配備など、これまで様々な取組が なされてきたところである。しかし、その成果は依然として不十分であり、 IT 新改革戦略に掲げた目標の達成は憂慮すべき状況にある。 こうした状況を打開するため、教育の場におけるデジタル機器や教育コン テンツの配備を進めるとともに、これらを活用した効果的な教育を実践でき るよう、ネットワークによる教員間の情報交換・共有など効果的な手法を生 かしつつ、教員のデジタル活用指導力の向上をあわせて進め、児童生徒の自 己実現の基盤となり、将来の地域活性化、経済発展、国際連携等を担ってい くための基礎となる力を育成していくことが必要である。 また、今やデジタル技術は、パソコン、携帯端末、自動車、家電、産業機 器等から産業・行政・社会の基幹システムに至るまで活用され、個人の生活 や企業・行政等の活動に欠かせないものとなっており、経済社会全体を支え ている。そして、これを支える基礎となるのが、デジタル技術を理解し・活 用できる「人財」である。 しかしながら、我が国では、このようなデジタル技術の開発・活用に不可 欠なデジタル人財の育成・活用への取組が不足しており、潜在的な社会発展 や経済成長の機会を逸している。 こうした状況を打開するため、デジタル特区による拠点的取組も活用し、 デジタル情報や技術の活用能力を有するデジタル活用人財の育成を早急に進 め、個人の能力を高めて企業や社会のニーズにマッチした人財を供給し、経 済社会の生産性や活力を高めることが必要である。 2.取組の概要 (1)デジタル活用人財の裾野を広げ、教育の質を高めるデジタル教育及びそ のための環境整備を実施する。具体的には、初等・中等教育段階を中心と したデジタル活用教育の充実のため、以下の施策を実施する。 ① 学校等でのデジタル活用授業等を一層推進するため、校内 LAN、コンピ ュータ、電子黒板、地上デジタルテレビ等のデジタル教育基盤を全国に 整備する。また、学校等における地上デジタルテレビ等を活用したわか - 17 - りやすい授業を促進するため、教育・教養コンテンツの充実、アーカイ ブ化による教室への配信等の環境整備を推進する。 ② 上記の基盤も活用しつつ、モデル地域として教育専門家等によるサポ ート体制の下で、以下に掲げる先進的なデジタル教育を実施する。当該 モデルの成果は、サポートする教育専門家等により全国へ普及、世界へ の提案を実施する。 ・ コンピュータ、校内 LAN、電子黒板、地上デジタルテレビ等のデジタ ル教育基盤、デジタル教科書やデジタル放送番組等のデジタル教育コ ンテンツの活用による効果的な教育方法の開発・実施を推進する。 ・ 教員のデジタル活用指導力の向上を図るため、活用指導力の評価と研 修、 「ICT 支援員」の配置・派遣の促進、e-learning の活用などを実施 する。 ・ デジタル技術を活用して、家庭・地域・学校の連携を図り、住民参加 の学習などを推進する。 ・ 成績のオンライン一元管理など、校務の情報化を進め、教員の校務処 理負担を軽減する。また、低廉な費用による校務情報化を実現するた め、ASP・SaaS の活用を図る。その際、成績等の個人情報を含む教育 情報の重要性に鑑み、教育機関向けの ASP・SaaS サービスに必要とな る安全性・信頼性基準を示し、これを満たしていることを検証するた めの情報開示指針を策定する。 ③ デジタル活用能力の育成が不可欠となっている一方で、ネットいじめ など違法・有害情報に伴う弊害が社会問題化しているため、こうした問 題に対し、学校のみならず社会総がかりの取組を推進する。この一環と して、デジタル情報・技術の活用だけでなく、ネット上の危険への対処 能力を持ちつつ、自らがネット上で与え得る危害の可能性を認識して自 制する能力を養うなど、情報モラル教育を充実するとともに、企業等と も連携しつつ、家庭・地域におけるリテラシーの充実のための取組を推 進する。 (2)デジタル活用能力を有する人財を育成・活用することにより、日本全体 での潜在的なデジタル活用人財の不足の解消を図る。具体的には、以下の 取組を実施する。 ① 高度なデジタル技術を開発・活用する人財(高度デジタル人財)を育 成するため、企業等の情報部門での職務経験を有し、高度な知識・スキ ルを持ち合わせた人財を活用することにより、大学・大学院等の教育拠 点において、企業等で求められる複合領域への理解などの能力を有し、 - 18 - デジタル技術を活用する企業・ユーザー企業の事業展開に対応できる、 幅広いデジタル技術分野(セキュリティ分野を含む)の高度な人財育成・ 輩出のためのこれまでの仕組みを一層の産学官連携促進により拡大する。 具体的には、このような企業等で活躍する人財の質的・量的な拡大及び 安定的・持続的な輩出を目指し、大学院教育のみならず学部教育や社会 人のリカレント教育への展開も視野に入れ、産業界出身教員等の充実・ 強化や実践的な教材・カリキュラムの開発・普及、産学マッチングによ る実践的なインターンシップなどを加速するため、産学連携による人財 育成・交流拠点としてのナショナルセンター的機能の充実を図るととも に、大学間・産学間のネットワーク機能を強化する。これらの今後のあ り方については、すでに行われている拠点教育や「産学人材育成パート ナーシップ」等の場における議論を継続していく。なお、拠点教育の今 後のあり方に関しては、本年 8 月までに関係省庁間で結論を得る。また、 将来の天才的な技術者・クリエーターを発掘・早期育成するための集中 トレーニング、優秀なプロジェクトマネージャーによる指導等を行う。 ② 高等教育機関等における高度なデジタル活用人財候補の育成強化のた め、産業界等が提供する講師、教材等をできるだけ多くの高等教育機関 で利用するとともに、サーバー、ストレージ、アプリケーション等十分 な教育環境が整わない全国の高等教育機関等の教育環境を効率的に整備 するため、クラウド技術を活用した実践的な遠隔教育システムの開発を 促進する。開発に当たっては、当該遠隔教育システムが限られた教育ア セットの全国の高等教育機関等における共有化というナショナルセンタ ー的機能の中核を担うものであることに留意し、産学官連携で推進する。 ③ 学生や若い技術者が自らのキャリアパスをイメージできるよう、専門 家によるコミュニティを活用したデジタル活用技術者の職種ごとにモデ ルキャリア開発計画を策定し、これらを広報・普及する。また、専門家 コミュニティの形成を促進し、若手専門家の育成等を支援していく。更 に、デジタル・ネットワークを活用する業務に対応できる若手人財の育 成に資するため、「電気通信主任技術者」の資格取得を容易にするなど その活用促進を図る。 ④ デジタル技術の活用が遅れている分野に対しては、企業等でのアプリ ケーション活用、WEB 構築、コンテンツ制作等の経験がある人財を指導者 又はサポート人財として派遣し、実使用者の目線に立ったデジタル技術 導入を推進する。具体的には、産業・地域の活性化のためのデジタル活 用推進に合わせて、例えば、オンラインショッピングの運営等当該プロ ジェクトを継続的に遂行していけるデジタル活用能力人財の育成を行う。 - 19 - また、これまでデジタル活用の先進プロジェクトを主導してきた地域情 報化アドバイザー等の高度なデジタル活用能力人財が各地のプロジェク トに外部から参画することで、プロジェクトの遂行を通じて能力移転が 行われるようにしていく。 ⑤ 離職者等の再就職を目的とした職業訓練として、民間施設も活用し、 デジタル活用能力の習得機会を提供する。また、官民の適切な役割分担 のもと、職業人として誰もが共通に備えておくべき情報処理に関する基 礎的知識を測るための「IT パスポート試験」、デジタルネットワーク技 術の専門家育成を目的とする「工事担任者資格試験」及び民間の人財育 成に関する各種資格試験を活用することによって、デジタル社会基盤を 支える人財育成と雇用創出を促進する。 3.目指すべき成果 (1)国民にとって ① コンピュータや情報通信ネットワークなどの情報手段を適切かつ主体 的、積極的に活用することによる知能・技能向上が実現する。 ② 適切な情報モラルを身につけることによる、デジタル技術利用による 被害等が軽減される。 ③ デジタル活用能力のレベルに応じた職種への転換、就労機会の増加を 実現する。 (2)学校現場にとって ① 全ての公立小中高等学校等の教員への一人一台のコンピュータ配備の 実現による校務の効率化と教員のデジタル技術活用能力等の向上が実現 する。 ② 校内 LAN 整備率 100%、児童生徒 3.6 人に 1 台のコンピュータ整備、普 通教室や特別教室における地上デジタルテレビ、電子黒板等の配備によ り、児童生徒のデジタル技術活用能力の向上が実現する。 ③ 学校授業における積極的なデジタル技術の活用と、インターネット上 の情報等の適切な活用により、教科書における学習内容に幅と奥行きを 持たせたインタラクティブな授業が実現し、基礎的・基本的な知識・技 能の習得、思考力・判断力・表現力等の育成や学習意欲の向上が図られ る。 ④ 初等中等教育段階における情報リテラシー教育の充実を図り、情報リ テラシーを「読み書き」と同様、すべての生徒が習得すべき基礎的技能 とする。 - 20 - (3)産業界・中小企業にとって ① 不足するデジタル活用人財の持続的供給が可能となる。 ② 現場の事情に即したデジタル技術のサポートが日常的に得られる環境 が実現する。 ③ 将来、世界のデジタル情報・技術を先導する天才的なデジタル活用技 術者の発掘と、その才能が遺憾なく発揮できる環境が実現する。 図 3.デジタル教育の推進とデジタル活用人財の育成・活用 ○ 教員のデジタル活用指導力の向上 ○ デジタル活用人財の裾野を広げ、教育の質を高めるデジタル教育の実施 ○ 地上デジタルテレビ等の新しい教育基盤の整備 ○ 高度なデジタル技術を開発・活用する人財(高度デジタル人財)の育成等 ・家庭と学校教育連携支援 ・住民参加の学習支援 校務処理負担の軽減 効果の検証 ・成績のオンライン一元管理 サポートセンター サポートセンター 教育専門家等による地域支援 ・教育モデルの開発支援 ・教育モデルの全国普及 ・教育モデルの世界への提案 ・産学連携による地域のデジタル人財育成 時代に即したデジタル技術の習得による人財育成、就労機会の創出 時代に即したデジタル技術の習得による人財育成、就労機会の創出 ITパスポート試験等の活用 ・試験制度のさらなる普及、企業における試験制度の活用の促進 産学が連携した高度デジタル人財育成のための取組の促進 ・産業界出身教員等の充実・強化 ・実践的な教材・カリキュラムの開発・普及 ・産学マッチングによる実践的なインターンシップの推進等 - 21 - Dせ fd 」 クラウドコンピューティング (教育・校務処理) 家庭と地域と学校の連携 情報通信技術 の活用 「 ・コンピュータ、校内LAN、 超高速インターネット、 地上デジタルテレビ等の整備 ・デジタル教科書、デジタル放送 番組等の教育コンテンツの充実 日本発 世界最先端 の教育モデルの構築 新しい教育基盤の整備 特徴ある目標、全国複数地域で実施 教員のデジタル活用指導力の向上 ・「ICT支援員」の配置・派遣の促進 ・活用指導力の評価と研修 ・e-learningの活用 Ⅱ 産業・地域の活性化及び新産業を育成するための取組 1.取組の意義 現下の経済危機を克服して我が国経済の底力を発揮し、将来への持続的成 長につなげるためには、電子行政、医療、教育・人財といった 3 分野への対 処のみならず、デジタル技術の持つ潜在力を全社会・産業に行き渡らせてい くことが必要である。 具体的には、まず、デジタル技術の持つ問題解決力を生かし、中小企業、 農林水産業等の現在の社会経済の基幹となる企業等の生産性を高め、また地 域の活性化や ITS の実用化・普及の加速化を図ること等により、経済活動の 好循環を再生させることが重要である。 また、こうした取組を起爆剤として、上記 3 分野以外の様々な分野におい てもデジタル技術を安心して導入・活用していくための方策を講ずることが 必要である。 さらに、従来ばらばらに保有されていた情報・知識を効率的・効果的に発 信・入手・組み合わせて新たな価値を生み出すことで産業変革と新しい産業 力を創造することにより先進的知価創造立国を実現し、産業・国家の国際的 競争力を強化するとともに、世界に貢献していくことが必要である。 一方、21 世紀の社会経済において我々がこうした成長を実現していくため には、地球規模の課題である環境問題への適切な対処が欠かせない。これは、 制約要因として各分野の変革等を目指す際に織り込むべきものであると共に、 環境対策技術自体が我が国の強みとして国際的に生かせる可能性のある分野 でもあり、こうした強みを積極的に伸ばすことが必要である。 上記を実現するためには、情報・知識の生成から収集・活用に至るまでの 技術・制度面の課題の解決、つまり前述の「三つの壁」のクリアと、実際に 活用等を推進するための投資の加速策等の環境整備をバランス良く行うこと が求められる。 これらにより、現下の経済危機克服のための緊急対策において、デジタル 技術の持つ即効性を生かすとともに、安全・環境等の課題を解決しつつ、電 子政府・電子自治体、医療、教育・人財をはじめとしたすべての分野にデジ タル技術が当たり前のものとして取り入れられて活用される社会を構築し、 あわせて情報・知識を核とした新たな産業の創出等を実現することにより、 雇用と国富の増大を図ると共に、これらを我が国発のモデルとして世界への 展開を目指すべきである。 - 22 - 2.取組の概要 (1)中小企業等既存産業の基盤整備 デジタル技術が有する、即効性ある問題解決能力を生かし、経済危機に より低迷した産業全体の生産性向上を喫緊に実現する必要がある。このた め、 「IT 経営応援隊」などの官民連携の支援ネットワークや、中小企業でも 安価で容易に業務効率化を行えるインターネットを活用したソフトウェア 提供サービス(ASP・SaaS)の高信頼な基盤を整備し、中小企業における安 全なデジタル技術の活用を支援する。 また、ASP・SaaS について、利用分野に応じて安全性・信頼性の向上を図 るとともに、グローバル化等を踏まえた内外他業種との商取引や、共同資 材調達、共同販売などを可能とする電子商取引の基盤整備、共同研修基盤、 連携基盤の整備などを推進する。 (2)農林水産業活性化 デジタル技術を活用した相互情報交流や人財育成、経営の効率性の向上 を図ることで、農林水産業を活性化させるため、現在、整備が遅れている 農山漁村の条件不利地域における光ファイバ等によるブロードバンドの整 備、FWA の整備等情報通信基盤の整備を図る。 さらに、情報通信基盤・技術を活かし、携帯電話を活用した直売所の情 報提供や有害鳥獣の捕獲通報システムの普及、農作業記録の自動化、セン サー・ロボットによるほ場・ハウス・畜舎の監視・管理作業の省力化、電 子地図や衛星を活用した産地ぐるみの栽培管理による作物の収量・品質向 上、農作物市況・営農情報提供、地域生産者等のネットワーク化とそのネ ットワークを活用した小売事業者・飲食店等との情報連携による販路拡大 及び漁業無線のデジタル化による漁船の安全性の向上等を促進することに より農林水産業の活性化を実現する。 また、農業用施設、山地災害、津波・高潮などに関わる災害・防災情報 の収集・提供システムの整備による安全・安心の確保を通じ、農山漁村を 活性化する。 (3)地域活性化 地域資源を活用し、その発信力の強化及び地域の競争力の向上・地域経 済の活性化による地域活性化を図るとともに、地域に根ざした住民一人一 人のニーズに応じた情報を配信し、地域消費空間の活性化を実現する。具 体的には、農林水産物、地域の観光等の放送番組等の制作、海外展開の支 援を推進するとともに、児童・老人の見守りシステム、観光・道案内シス - 23 - テム、地域 SNS を活用した地域コミュニティの活性化、ふるさとケータイ 事業の推進、地理空間情報を活用した商店街等の活性化など地域の諸課題 に対応したデジタル技術の導入支援や地域の安心・安全に関する情報を 様々なメディアにより地域住民に提供する「安心・安全公共コモンズ」の 推進、LED 照明を活用した交通・安全情報の街角提供システムの導入、空間 コード基盤の整備など、 「ユビキタス特区」事業等による地域活性化に大き な効果が期待されるユビキタス技術の実用化に向けた取組(ユビキタスタ ウン構想の推進)を集中的に実施する。 また、地域経済圏ごとにデジタル機器のユーザーとベンダーの連携強化 を図るための「地域イノベーションパートナーシップ」などの取組を推進 する。さらに地域コンテンツのデジタル映像化支援、コンテンツ海外展開 ファンドの創設とそれらを活用した海外市場の開拓や対内直接投資を促進 することにより、ソフトパワー発信力の高い知識創造型産業を地域に創出 する。 さらに、導入コストが低廉なシンクライアント型 IC 乗車券・電子マネー システムの開発及び普及促進等により、地方都市の公共交通の再生、中心 市街地の活性化を図り、高齢者等地域に暮らす人々が生き生きとしたモビ リティ・ライフを送れるようにするとともに、地域電子マネーやポイント カードシステムによる消費刺激効果により、地域経済の活性化を図る。 (4)デジタル技術を活用した新産業創出 「安心・安全な暮らしを守る公共ブロードバンド」、「コードのいらない 快適生活環境」などを早期に実現するため、アナログテレビジョン放送の 電波跡地の活用や新たな周波数の割当てなどによる次世代無線通信技術の 研究開発等を加速化する。また、電波の有効な活用方策について、多様な 観点から検討する。併せて、映像検索技術、著作権保護(制御)技術等を 備えた情報家電を核にした次世代コンテンツ流通サービス基盤の開発・検 証を行う。 行政や地域、大学、企業等の情報・コンテンツのデジタル・アーカイブ 化や、プライバシー保護ルール、セキュリティや不正流通防止などを含む デジタルコンテンツの活用・流通環境の整備による新たな知識創造型産業 の創出、高品質のコンテンツをインターネットでデジタルテレビに配信す る IPTV サービスの展開、多様なネットワークや端末で構成されるデジタル サイネージ(デジタル広告)を用いた商業施設、公共交通機関、地方自治 体等における多様なコンテンツ配信システムの構築を支援する。こうした コンテンツ振興にあわせて、権利の所在をリアルタイムで把握できるデー - 24 - タベースを提供し、権利情報等を集中的かつ円滑に処理するための仕組み の強化など、次世代の著作権取引や権利処理のシステムを整備する。 (5)グリーン IT 等の地球温暖化対策 省エネ家電の導入、クラウドコンピューティング等における更なる省エ ネ環境を実現するデータセンター等の情報通信機器・設備、ネットワーク のすべてについて、環境面で世界最先端の技術の実用化を推進する。併せ て、最新のグリーン IT 技術及び高信頼化・セキュリティ技術の研究開発を 加速化する。 具体的には、寒冷地、地下空間、直流電流等を活用したデータセンター の構築、高速化・省電力化の両立が可能なオール光通信技術の研究開発、 インターネットにおける省電力ネットワーク制御技術やトラヒック経路制 御技術を内容とするエコインターネットの開発等を推進する。また、クラ ウドを構成する個々のコンピュータの低消費電力を実現する半導体プロセ ッサ加工技術や、負荷に応じて消費電力をきめ細かく制御する並列駆動技 術、回路が壊れた場合にもそれを取り替える必要なく回路を再構成可能な 高信頼性半導体技術の開発等を推進する。 テレワークの推進、IPv6 技術を活用したセンサーネットワークによる環 境管理システムの構築、ASP・SaaS を活用した「環境家計簿」システム等に よる家庭における CO2 排出量の見える化推進、携帯電話のリサイクルの促進 等を図る。また、デジタル関連施設の CO2 排出削減手法やデジタル技術によ る社会・経済活動における CO2 排出削減効果の評価手法について国際標準化 を推進する。さらに、製品の製造段階での CO2 排出量だけでなくライフサイ クル全体での環境貢献度の「見える化」、「価値化」を進める。 (6)ITS の実用化等の加速化 エネルギー・環境対策の効果が高く、安全面に優れた、 「ぶつからない車」 などの実現を目指す ITS の実用化・普及の加速化を図る。 この一環として、普及が拡大してきたカーナビ、VICS、ETC 等の活用や組 み合わせによる今後の多様な ITS サービスを実現するため、次世代の車載 機の普及や、それに対応した設備の、道路及びその周辺における整備を行 う。また、インフラ協調による安全運転支援システムの実用化を推進する ため、次世代の車載機の普及や、それに対応した設備の整備を行うととも に、車両開発の促進を図る。車載機については、利用者の利便に即した普 及を図る。 さらに、ITS の公共交通等への導入を進める。 - 25 - (7)国際連携強化 アジア地域をはじめ地球的規模で大学・研究開発拠点を高速大容量ネッ トワークで結び、これを活用することにより、海外との共同研究開発、共 同人材研修事業等を推進する。 また、アジア域内の電子商取引基盤整備と人財育成支援を通じ、域内の シームレスな生産・流通ネットワークと安全安心な消費市場の高度化・活 性化、国際分業による我が国中心の新産業育成を図る。 アジア、中南米等の地域の国において、我が国が強みを有するデジタル 技術を活用して防災、医療、教育等当該国が抱える課題を解決するモデル・ システムを構築し、当該デジタル技術の問題解決力を「見える化」する。 こうした取組等を通じ、デバイス技術や通信技術など我が国のデジタル 技術が各国で受け入れられる、互恵的な国際連携・展開を図る。 3.目指すべき成果 (1)中小企業の生産性向上、農林水産業活性化、地域活性化等により現下の 経済危機に対処すると共に、将来の成長に向けた社会経済基盤が整備される。 (2)デジタル技術を活用した新産業の創出、グリーン IT 等の地球温暖化対策、 ITS の実用化等の加速化、デジタル技術を軸とする国際連携強化等により、 我が国の国際競争力の強化を図るとともに、その技術力で世界に貢献する。 - 26 - 図 4.産業・地域の活性化及び新産業の育成 中小企業の生産性向上、農林水産業活性化、地域活性化、グリーンIT等の地球温暖化等の施策を推進し、 現下の経済危機に対応するとともに、将来の成長に向けた経済基盤を整備。 グリーンIT グリーンIT / グリーン・クラウド 情報通信機器の省エネと情報通信機器 による社会の省エネの加速化 ・省エネ家電の導入。照明のLED化 ・情報通信機器による高度エネルギー管理 ・情報通信機器・システム・ネットワークの省 エネ。グリーンパワーエレクトロニクス ・ネットワーク等を活用した環境負荷低減 国際連携強化 世界に先駆けたグリーン・クラウド 基盤のグローバルハブ化 我が国のデジタ ル技術が各国で 受け入れられる、 互恵的な国際連 携・展開 情報 交通流の円滑化、渋滞の解消により、 CO2排出量を削減し、運輸部門のエネ ルギー・環境対策を早期実施 アジア域内における高度知識経済圏の構築 デジタル技術の「見える化」 アジア、中南米等の課題 アジア、中南米等の課題 を解決するモデル・シス を解決するモデル・シス テムの構築 テムの構築 産業・地域活性化、産業育成 産業・地域活性化、産業育成 共通トラストマーク制度・ 紛争処理システム(ADR)の整備・連携 ・事業者の信頼性に ・事業者の信頼性に 係る共通評価基準の 係る共通評価基準の 策定 策定 ・ADR制度の整備 ・ADR制度の整備 と域内連携 と域内連携 地域ITユーザーと地域ITベンダ の地域主導による連携を進める 仕組みの早期全国展開。 地域 イノベーションパートナーシップ ASP・SaaSサービスベンダ 運用・保守は アプリケーションソフト サービスベンダ 情報交流・相互協力 顧客 管理 地域ITベンダ 人事 管理 財務 管理 域内の産業界・大学等 域内の産業界・大学等 における標準の普及促 における標準の普及促 進 進 地域活性化・農林水産業活性化 地域特化型コンテンツの発信 による地域経済の活性化 消費者・観光客の参 加を得たモデル事業 の実施 様々な 地域事業者 BtoC販路開拓 BtoB販路開拓 街に特有な 情報・ コンテンツ 導入コスト安価、運用・保守コスト負担少 地域 IT 経営応援隊事務局 地域ITユーザー 電子商取引のルールの 共通化 魅力ある地域産品の市場拡大 ASP・SaaSを活用した中小 企業の業務効率化の推進 IT人材育成支援 事業者責任、消費者保護等 事業者責任、消費者保護等 に関する共通ルールの策定 に関する共通ルールの策定 デジタル技術・知識の即効性を活かした経済危機克服と デジタル技術・知識の即効性を活かした経済危機克服と 問題解決力を活かした新産業の創造等を実現 問題解決力を活かした新産業の創造等を実現 中小企業等既存産業の基盤整備 グリーンIT ・IT産業等による「グリーンIT ・IT産業等による「グリーンIT ミッション」の派遣(工場やビル ミッション」の派遣(工場やビル 等の省エネ可能性診断等) 等の省エネ可能性診断等) ・普及啓発セミナーの開催 ・普及啓発セミナーの開催 ・情報セキュリティレベル ・情報セキュリティレベル の自己評価共通基準の策定 の自己評価共通基準の策定 ・ISMSの導入支援 ・ISMSの導入支援 日本が世界の情報の集積地 ITSの実用化等の加速化 ITSの実用化等の加速化 スマートウェイ 企業情報セキュリティの確保 人材育成 地域活性化 モデル事業 電波・可視 光通信等の 先端技術 いま、 その時の 街情報 ブランド創造 にっぽんの農業・食 IT化支援 ビジネスマッチング 地方自治体と連携 方 地 政 府 連 携 気象ロボット 市況情報 連携促進 支 援 農業気象情報 インターネット CATV網 A社ユーザ 情報処理サービス B社ユーザ そのものを購入 - 27 - ITを活用した農作物 市況・営農情報提供 農地監視カメラ 農 家 テレビや情報端 末で情報を入手 し、農業経営に 活用。 Ⅲ あらゆる分野の発展を支えるデジタル基盤の整備推進 1.取組の意義 上記に掲げた社会経済の実現に当たっては、これを支える安心で高度なデ ジタル基盤の確保、具体的にはデジタル機器・設備やネットワークの高度化 と普及と、これを実現する技術・研究開発等の環境整備が重要である。これ らは前述の「三つの壁」の解決を側面から支えるものとして、デジタル活用 社会の前提として未来の成長を保証する重要な要素である。 具体的には、ブロードバンドインフラ、地上デジタルテレビジョン放送を 含むデジタル活用社会のハード・ソフト基盤整備、地理空間情報の充実等の 情報・知識面での基盤整備及びこれらを支える革新的技術開発等の研究・技 術開発を行っていくことが重要である。 また、デジタル情報の活用を推進する上では安心して活用できる環境整備 が不可欠であることから、「第2次情報セキュリティ基本計画」(2009 年 2 月 3 日、情報セキュリティ政策会議決定)に基づく施策を着実に推進する。 2.取組の概要 (1)ブロードバンドインフラ整備 ブロードバンドネットワークは、あらゆる分野におけるデジタル技術・ 情報等の活用の基盤中の基盤となるものである。このため、目指すべきデ ジタル技術・情報活用国家の実現に向け、国民の誰もがブロードバンド環 境を利用できるよう、2010 年度末までにブロードバンド・ゼロ地域の解消 を図る他、地域の図書館、学校、病院、行政機関等のブロードバンド網に よる接続を加速化する。併せて、条件不利地域等における携帯電話の利用 可能エリアの拡大の加速を図る他、無線によるブロードバンドの整備促進 を図る。また、現行のシステムを上回る超高速ブロードバンドの推進に取 り組む。 (2)地上デジタルテレビジョン放送への円滑な移行 2011 年 7 月の地上デジタルテレビジョン放送への移行を確実に完了し、 跡地電波等を活用したニューサービス(ITS や移動受信用地上放送など)の 展開等に向けた先行投資を呼び込めるよう、IT 戦略本部の下に閣僚級の会 議「デジタル放送移行完了対策推進会議(仮称)」を速やかに設置し、国を 挙げた省庁横断的な取組に万全を期するとともに、学校、病院等の公共施 設における先導的なデジタル化、高齢者に対する周知・サポートの徹底等 について、官民連携した実効的な取組を積極的に進める。 - 28 - (3)革新的なデジタル技術創成のための研究開発 我が国が強みを持つデジタル技術関連の革新的な技術の研究開発を加速 化し、デジタル技術を活用した新産業のシーズを創出することにより、我 が国の国際競争力の強化を図る。具体的には、世界最高水準の超高速・高 信頼・極小エネルギー消費型の革新ネットワーク技術、次世代デバイス技 術、特別な眼鏡の要らない三次元映像技術、言語の壁を乗り越える自動音 声翻訳技術、大量情報解析技術等の研究開発を推進する。 (4)地理空間情報の充実 位置参照情報及び三次元地理空間情報等の整備、電子タグ等の活用並び に多様な地理空間情報の流通及び相互利用を推進することにより、地理空 間情報のシームレスな提供と活用環境を整備し、移動中等の様々なシーン における新たな産業の育成を推進する。 3.目指すべき成果 (1)電子政府・電子自治体、医療、教育・人財の最重点分野をはじめとした あらゆる分野の発展を支える社会基盤が整備される。 (2)環境対策と社会経済の発展を両立する 21 世紀型成長モデルを支えるデジ タル基盤が整備される。 - 29 - 図 5.あらゆる分野の発展を支えるデジタル基盤の整備推進 電子行政・医療・教育の最重点分野をはじめとしたあらゆる分野の発展を支える社会基盤を整備し、 環境対策と社会経済の発展を両立する21世紀型成長モデルを支えるデジタル基盤を構築。 ブロードバンドインフラ整備 図書館 地上デジタル放送への円滑な移行 病院 行政機関 学校 陰) 地理空間情報の充実 地理空間情報の高度化の加速と活用の推進 データ 整備 デジタル基盤の整備 デジタル基盤の整備 ・IT戦略本部の下に閣僚級の会議「デジタル放送移行完了対策推進会議(仮称)」を設置 ・跡地電波等を活用したニューサービス(ITSや移動受信用地上放送など)の展開等 デジタル活用社会におけるハード・ソフトの デジタル活用社会におけるハード・ソフトの 基盤整備及び革新的技術等の研究開発等 基盤整備及び革新的技術等の研究開発等 火山土地条件図 土地条件図 GIS交換標準規格 に沿った標準化 沿岸海域土地条件図 革新的なデジタル新技術創成のための研究開発 都市圏活断層 図 三次元位置情報技術 サイネージ技術 *** *** *** 地理情報データ 「エキナカ」おす すめラーメンは 基本空間データ 位置参照情報等 ネットワークでの利用 電子タグ等 新技術の活用 地理空間情報の利用推進 防災計画 環境保全 *** *** *** *** *** *** *** *** *** 三次元映像技術 少し本屋に 寄りたいな 自動音声翻訳技術 ** **** ******* ***** **** ** : ** ***** **** ** : ** エレベータは どこだろう? 次世代半導体基盤技術 極端紫外線(EUV)露光装置 集光ミラー 革新ネットワーク技術 真空チャンバ 反射型マスク ・超高速 ・高信頼 ・超省エネ デブリシールド 都市計画 デブリとは:プラズマからの飛散粒子(ダスト) - 30 - ヘッドホンひとつで外国人と コミュニケーション 用語解説集 (参考) 用語 用語解説 オントロジー工学 用語間の意味上の関連付けを利用し、高度な活用・分析を行う工学。医療分野では、 所見(例:腹部、鈍痛)に対して症状(吐き気)、病名(○○病)、原因、処置(投薬)を対 応させることにより、医療判断の支援を行う等の活用が期待される。 環境家計簿 購買行動からCO2排出量を自動的に計算できる家計簿のこと。家庭におけるCO2排出 量の「見える化」推進に資するもの。 データーサービスやインターネット技術などが、ネットワーク上にあるサーバー群(クラ クラウドコンピューティン ウド(雲))にあり、ユーザーは今までのように自分のコンピュータでデータを加工・保存 することなく、「どこからでも、必要な時に、必要な機能だけ」を利用することができる新 グ しいコンピュータネットワークの利用形態。 健康情報 診療情報、レセプト情報、健診結果情報及び健康関連情報の総称。 工事担任者資格試験 利用者が電気通信事業者のネットワークに自らのネットワークや端末設備等を接続す る際に、必要な知識及び技能を持った者が工事を行い、又は実地に監督することによ り、全体としての電気通信回線設備を保護し、利用者が安定した良好な電気通信サー ビスを受けられるようにするために設けられた国家資格制度。 情報家電 簡単なインターフェイスを利用して、インターネット等への接続や相互接続が可能とな る家電などの情報通信技術を組み込んだ一般向け電気製品。 シンクライアント型IC乗 改札機で行っている多くのデータ処理(運賃計算等)を、オンラインによりセンターサー バーで処理するIC乗車券システム。 車券 地上デジタルテレビジョ 地上波を用いたデジタル方式によるテレビジョン放送。既存のアナログ放送に比べて 映像、音声の高品質な放送が可能であり、コンピュータ等との相互接続が容易である ン放送 ほか、電波の有効利用が図られるのが特長。 地域電子マネー 地域の特性を踏まえた「地域内の決済機能」、「地域マネー機能」等を持たせた電子マ ネー。 地理空間情報 時刻に関する情報を含む屋内外の位置の情報と、位置の情報に関連付けられた様々 な事象に関する情報。 デジタル・アーカイブ 博物館・美術館・公文書館や図書館の収蔵品や蔵書をはじめ、有形・無形の文化資源 等をデジタル化して保存・蓄積・修復・公開し、ネットワーク等を通じて利用を可能とす る施設、もしくはシステムの総称。 デジタルサイネージ 表示と通信にデジタル技術を活用して平面ディスプレイやプロジェクタなどによって映 像や情報を表示する広告媒体。 テレワーク ITを活用して、場所や時間にとらわれない柔軟な働き方であり、企業等に勤務する被 雇用者が行う雇用型テレワーク(例:在宅勤務、モバイルワーク、サテライトオフィスでの 勤務)と、個人事業者・小規模事業者等が行う自営型テレワーク(例:SOHO、在宅ワー ク)に大別される。 ※テレワーカー:ITを活用して、場所や時間にとらわれない柔軟な働き方を週8時間以 上する人と定義する。 - 用1 - 用語 用語解説 電気通信主任技術者 電気通信事業者が管理する事業用電気通信設備について、総務省令で定める技術基 準に適合するよう工事、維持及び運用の監督を行う者。電気通信主任技術者として必 要な最低限の専門的知識及び能力についての試験に合格した者等から選任しなけれ ばならない。 電子カルテ 診療情報(診療の過程で得られた患者の病状や医療経過等の情報)を電子的に保存 した診療録若しくはそれを実現するための医療情報システム。 電子黒板 コンピュータの画面上の教材をスクリーン又はディスプレイに映し出し、その画面上で 直接操作して、文字や絵の書き込みや移動、拡大・縮小、保存等ができる機器である。 モニターに接続してスクリーンに投影する「ユニット型」や「ボード型」、プロジェクタと一 体となった大型ディスプレイ状の「一体型」に大別される。電子情報ボードともいう。 電子タグ IC チップとアンテナを内蔵したタグ。この中に個別の識別情報等を格納しておくことで、 電波を利用し、接触することなく近接した距離において格納されたデータを読み書きす ることが可能となる。 バックオフィス 利用者と直接的なやりとりが発生しない業務。総務、人事、会計などの基幹業務。 これに対して、住民や企業などの利用者と直接的なやりとりが発生する業務を、「フロ ントオフィス」という。 ブロードバンド・ゼロ地 ブロードバンドがまったく利用できない世帯の存在する地域。 域 ユビキタス技術 「いつでも、どこでも、何でも、誰でも」アクセスができる環境を実現するとともに、利用 者が意識することなく情報を利活用できるようにするための情報通信技術で、例えば、 電子タグやセンサー等のデバイス技術、デバイスを要素として構成されるシステム技 術及びそれらをつなぐネットワーク技術などのこと。 ユビキタスネットワークとは「いつでも、どこでも、何でも、誰でも」アクセスが可能なネッ ユビキタスネットワーク トワーク環境。なお、ユビキタスとは「いたるところに遍在する」という意味のラテン語に 由来した言葉。 リカレント教育 主に学校教育を終えた後の社会人が大学等の教育機関を利用して受ける教育のこ と。仕事に就きながら必要な知識や技能を習得する教育訓練を行うOJTや、仕事を一 時的に離れて行う教育訓練(OFFJT)も包含される。 レセプト 保険医療機関等が療養の給付等に関する費用を請求する際に用いる診療報酬明細 書等の通称。 レセプトオンライン化 保健医療機関等が行う療養の給付等に関する費用の請求について、紙レセプトの提 出に代えてオンラインによるレセプトの提出とすること。 ASP Application Service Providerの略。ビジネス用アプリケーションソフトをインターネットを 通じて顧客に提供する事業者を指す。また、当該事業者がビジネス用アプリケーション ソフトをインターネットを通じて顧客に提供するサービスを「ASPサービス」という。 CIO Chief Information Officerの略で、組織における情報戦略を考え、実現する責任者。特 に、各府省情報化統括責任者(CIO)連絡会議におけるCIOは、組織・予算・制度を含む 行政情報化関連施策全般にわたり、各部局等を総合調整し、府省内全体の行政情報 化を推進する者。 - 用2 - 用語 用語解説 EDI Electronic Data Interchange(電子データ交換)の略。 異なる企業間で、受発注や決済 などの取引に関する情報を広く合意された規約に基づきコンピュータ間で交換するこ と。このうち、インターネットの通信環境を利用したものが「インターネットEDI」である。 e-Gov Electronic Government(電子政府の総合窓口)の略。各府省がホームページで提供し ている行政情報の総合的な検索・案内サービスを提供している。 e-Learning インターネット等の電磁的手段を利用した学習形態。広義での通信教育の一つ。必要 な学習内容だけを受講できることや、教師と生徒がリアルタイムでやりとりできること、 動画・音声を利用した学習教材の利用が容易であること等が特長。 eLTAX 地方税ポータルシステムの呼称で、地方税における手続を、インターネットを利用して 電子的に行うシステム。 ETC Electronic Toll Collection System(自動料金支払いシステム)の略。車両に設置された ETC車載器と有料道路の料金所に設置された路側機との無線通信により、車両を停 止することなく通行料金を支払うシステムであり、ITS(高度道路交通システム)の一 つ。 FWA Fixed Wireless Accessの略。無線による加入者系データ通信サービスの方式の一つ。 22GHz、26GHz、38GHzの3つの周波数帯を使用し、数Mbpsから数十Mbpsの高速な データ通信を行なうことができる。 GIS Geographic Information System の略。位置に関する情報をもったデータ(空間データ) を総合的に管理・加工し、視覚的に表示できる高度な分析や迅速な判断を可能にする 技術。 HPKI 医師等の個人が電子署名を行うための公的資格等の確認機能を有する保健医療福 祉分野の公開鍵基盤(ヘルスケアPKI:Healthcare Public Key Infrastructure)。 ICT支援員 学校でのデジタル情報活用を促進するため、授業におけるデジタル技術支援を中心 に、教員をサポートする人材。デジタル機器等の設定・操作、機器や教材等(情報モラ ルを含む)の活用に関する助言、簡単なメンテナンスなどを行う。 IPTV 放送番組などの映像コンテンツをIPネットワークを通じて配信するサービスのこと。テレ ビ(標準画質・ハイビジョン画質)と同等の映像品質を保証し、テレビ受像機での視聴を 前提とした映像配信サービスを限定的に指すこともある。配信スタイルも様々で、予定 された番組編成に沿って配信し続ける方式や、見たいときに視聴者が番組を選べるV OD方式・ダウンロード方式などがある。 IPv6 Internet Protocol version 6の略。インターネットで利用されている現在のIPv4に代わる インターネットプロトコル(IP)。アドレス資源を128ビットで管理しているため、識別できる コンピュータの最大数は約340兆の1兆倍の1兆倍。 ITS Intelligent Transport Systems(高度道路交通システム) の略。情報通信技術等を活用 し、人と道路と車両を一体のシステムとして構築することで、渋滞、交通事故、環境悪 化等道路交通問題の解決を図るもの。 ITパスポート試験 職業人誰もが共通に備えておくべき情報処理技術に関する基礎的な知識を測る試験。 情報処理技術者試験のうちレベル1に相当する。 - 用3 - 用語 用語解説 NPO Non Profit Organizationの略。ボランティア活動などの社会貢献活動を行う、営利を目 的としない団体の総称。 PDCAサイクル 計画(Plan)-実行(Do)-事後評価(Check)-措置(Action)の継続的な繰り返し。 SaaS Software as a Serviceの略。ネットワークを通じてアプリケーションソフトの機能を顧客 の必要に応じて提供する仕組みのこと。 VICS Vehicle Information and Communication System(道路交通情報通信システム)の略。 渋滞や交通規制等の道路交通情報を即時にカーナビゲーションシステムに提供する システム。 Web母子手帳 平成19年度総務省モデル事業として岩手県遠野市で構築されたシステムで、携帯電 話やパソコンでインターネットを使用し妊娠中の様子や子供の成長を記録することがで きる(母子保健法に定める母子健康手帳とは異なるもの)。 - 用4 -