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1−1−5−1 セラミックバルブ
【技術分類】1−1−5 【 F1 バルブの機能向上/適用流体の拡大/腐食性流体への対応 】F16K27/00@A 【技術名称】1−1−5−1 セラミックバルブ 【技術分類】化学プラント 【技術内容】 バルブでは金属を使うのが一般的である。これは、機械的強度、耐熱性、耐食性、加工性、溶接性、 そして価格の故である。金属製で発生する腐食や摩耗の問題に対して、ファインセラミックスは最も 適した材料のひとつであり、その化学的安定性、耐摩耗性、耐熱性は、大抵の金属材料の追随を許さ ない。セラミックスの耐食性例を表1に、金属とセラミックスの耐摩耗性の比較を表2に示す。 1.セラミックバルブの構造と特徴 (1)バルブの形状 一般に、脆性材料の摩耗寿命は衝突角が大きいと低下し、延性材料のそれはこの逆である。セラ ミックスのような脆性材料をバルブ材料として使う限り、スラリーを含む流体との衝突角が出来る だけ小さくなるようにバルブの形状を定める必要がある。 (2)接液部全部をセラミックスで構成する方式 図 1 は、セラミックボール弁の例で、接液部はすべてセラミックス化されている。セラミックス はアルミナと炭化珪素である。図 2 は、弁体、シールリング、弁本体に部分安定化ジルコニアを用 いたバタフライ弁である。図 3 は、弁本体、バルブプラグ、パッキンボックスなど流体に接触する 部品がすべてセラミックス化されており、入り口、絞り部、出口が直線的に配置され、滞留部のな い構造となっている。 (3)主要部だけをセラミックスにする方式 図 4 は、ボールとシートだけをセラミックスとして寿命を延ばしたボール弁である。図 5 は、バ ルブプラグとシートリングだけをセラミックスとしたアングル弁である。 【図】 表 1 セラミックスの耐食性 出典:「セラミックバルブ」、「配管技術 VOL.35 No.14 103 頁」、「1993 年 12 月 1 日」、「椎木晃 (山武ハネウエル株式会社)著」、「日本工業出版株式会社発行」 - 55 - 表 2 金属とセラミックスの耐摩耗性の比較 出典:「セラミックバルブ」、「配管技術 VOL.35 No.14 104 頁」、「1993 年 12 月 1 日」、「椎木晃 (山武ハネウエル株式会社)著」、「日本工業出版株式会社発行」 図 1 セラミックボール弁 出典:「セラミックバルブ」、「配管技術 VOL.35 No.14 105 頁」、「1993 年 12 月 1 日」、「椎木晃 (山武ハネウエル株式会社)著」、「日本工業出版株式会社発行」 - 56 - 図 2 セラミックバタフライ弁 出典:「セラミックバルブ」、「配管技術 VOL.35 No.14 105 頁」、「1993 年 12 月 1 日」、「椎木晃 (山武ハネウエル株式会社)著」、「日本工業出版株式会社発行」 図 3 ストレートスルー型セラミック弁 出典:「セラミックバルブ」、「配管技術 VOL.35 No.14 106 頁」、「1993 年 12 月 1 日」、「椎木晃 (山武ハネウエル株式会社)著」、「日本工業出版株式会社発行」 - 57 - 図 4 主要部にセラミックスを用いたボール弁 出典:「セラミックバルブ」、「配管技術 VOL.35 No.14 106 頁」、「1993 年 12 月 1 日」、「椎木晃 (山武ハネウエル株式会社)著」、「日本工業出版株式会社発行」 図 5 主要部にセラミックスを用いたアングル弁 出典:「セラミックバルブ」、「配管技術 VOL.35 No.14 106 頁」、「1993 年 12 月 1 日」、「椎木晃 (山武ハネウエル株式会社)著」、「日本工業出版株式会社発行」 【出典/参考資料】 「配管技術 VOL.35 No.14 101−106 頁」、「1993 年 12 月 1 日」、「椎木晃(山武ハネウエル 株式会社)著」、「日本工業出版株式会社発行」 - 58 - 【技術分類】1−1−5 【 F1 バルブの機能向上/適用流体の拡大/腐食性流体への対応 】F16K27/00@A F16K5/06@H 【技術名称】1−1−5−2 F16K27/06@C セラミックボールバルブ 【技術分類】化学プラント 【技術内容】 本セラミックバルブの構成と標準材質を図 1 に示す。接液部はすべてアルミナ質セラミックスとフ ッ素樹脂で構成され、耐食性が優れている。ボデーは独自のセラミック成形技術により弁室と片側の サイドカバーを一体成形した形状とし、もう一方のサイドカバーと接続する二分割構造としているの で、シール部材としてのガスケットは 1 ケ所で済み、さらにガスケットの内外径を拘束している。バ ルブ開の場合のボール位置を図 2 に、バルブ閉の場合のボール位置を図 3 に示す。バルブ開の場合、 操作トルクはステムとグランドパッキン間の摺動トルクにほぼ等しい低い値となる。バルブ閉の場合、 ボールは上流側圧力により下流側に移動して弁座に押圧され、弁座シール性が確保される。弁座シー ルは硬度が高く平滑に研削されたセラミックス製のボールと、軟質で潤滑特性のある PTFE 製のバル ブシートの組み合わせのため摺動特性が優れ、プラグ弁に比較して 20%以下の低操作トルクで開閉で きる。 ステムシールの詳細構造を図 4 に示す。ステムシールはまず PTFE でライニングしたステムの肩部 分がキャップに接触し、1 次シールとなる。この構成により弁室内の流体圧力に対応してステムがキ ャップを押圧しシールする。 【図】 図 1 セラミックボールバルブの構造 - 59 - 出典:「セラミックボールバルブ」、 「配管技術 VOL.46 No.10 64 頁」、「2005 年 9 月 1 日」、「水 野元重(日本ガイシ株式会社)著」 、「日本工業出版株式会社発行」 図 2 バルブ開の場合のボール位置 出典:「セラミックボールバルブ」、 「配管技術 VOL.46 No.10 65 頁」、「2005 年 9 月 1 日」、「水 野元重(日本ガイシ株式会社)著」 、「日本工業出版株式会社発行」 図 3 バルブ閉の場合のボール位置 出典:「セラミックボールバルブ」、 「配管技術 VOL.46 No.10 65 頁」、「2005 年 9 月 1 日」、「水 野元重(日本ガイシ株式会社)著」 、「日本工業出版株式会社発行」 - 60 - 図 4 ステムシールの構成 出典:「セラミックボールバルブ」、 「配管技術 VOL.46 No.10 66 頁」、「2005 年 9 月 1 日」、「水 野元重(日本ガイシ株式会社)著」 、「日本工業出版株式会社発行」 【出典/参考資料】 「配管技術 VOL.46 No.10 64−66 頁」、 「2005 年 9 月 1 日」 、 「水野元重(日本ガイシ株式会 社)著」、「日本工業出版株式会社発行」 - 61 - 【技術分類】1−1−5 【 F1 バルブの機能向上/適用流体の拡大/腐食性流体への対応 】F16K27/00@A F16K1/06 【技術名称】1−1−5−3 プラスチック製調節弁 【技術分類】化学プラント 【技術内容】 腐食性流体の高精度な流量制御に適したプラスチック製調節弁について記述する。 図 1 にプラスチック製調節弁の本体部構造・材質を、表 1 に仕様を示す。接液部にはすべて耐食性に 優れた樹脂を採用しており、O リング等のゴム部材は薬液に応じユーザーが選定できるよう各種揃え ている。従来、調節弁ではプラグが針状や紡錘状に滑らかに形成されているが、本調節弁ではプラグ 先端に鋭利な鍔部が設けられている。これは流体が通過する際、流体の粘性抵抗による影響を除去し 圧力抵抗のみをプラグ前後に作用させるためで、これにより、弁固有流量特性が精度よくかつ広範囲 に得られる。図 2 に示すように従来の調節弁はプラグと弁座の接触により閉止していたため開閉操作 の繰り返しにより接触面が損傷し、シール性が悪くなるだけでなく流量特性にまで支障を来していた。 これに対し、本プラスチック製調節弁は閉止部がプラグから独立した位置にあるため全閉時にプラグ と弁座が接触しない。 【図】 図 1 本体部構造・材質 出典:「プラスチック製調節弁」、「配管技術 VOL.38 No.2 111 頁」、「1996 年 2 月 1 日」 、 「黒木 泰徳(旭有機材工業株式会社)著」 、「日本工業出版株式会社発行」 - 62 - 表 1 プラスチック製調節弁の仕様 出典:「プラスチック製調節弁」、「配管技術 VOL.38 No.2 111 頁」、「1996 年 2 月 1 日」 、 「黒木 泰徳(旭有機材工業株式会社)著」 、「日本工業出版株式会社発行」 図 2 プラスチック製調節弁の弁閉止機構 出典:「プラスチック製調節弁」、「配管技術 VOL.38 No.2 112 頁」、「1996 年 2 月 1 日」、 「黒木 泰徳(旭有機材工業株式会社)著」 、「日本工業出版株式会社発行」 【出典/参考資料】 「配管技術 VOL.38 No.2 109−113 頁」、「1996 年 2 月 1 日」、「黒木泰徳(旭有機材工業株 式会社)著」 、「日本工業出版株式会社発行」 - 63 - 【技術分類】1−1−5 【 F1 バルブの機能向上/適用流体の拡大/腐食性流体への対応 】F16K27/00@A F16K41/02 【技術名称】1−1−5−4 F16K27/06@C 新世代ファインセラミックス製バルブ 【技術分類】化学プラント 【技術内容】 セラミックスに使用される金属材料の、耐腐食性比較を表 1 に示す。 本セラミックス製ボールバルブの内部構造を図 1 に、仕様を表 2 に示す。全閉時には流体圧力により ボールは出口側ソケットシート面に押さえつけられシールする。弁箱に設けていたグランド部を分割 しパッキンボックスを使用することで弁箱の肉厚・外径を小さくし、軽量化が計れる。 ボールバルブ型式のほかに、高圧・高温用のプラグ型式バルブがある。その内部構造を図 2 に、仕様 を表 3 に示す。ボールバルブでは、流体がスラリー等でボールの必要回転トルクが大きい場合、セラ ミックス製弁棒を他の耐腐食性を有した金属性弁棒に変更する場合がある。プラグバルブ型式では弁 棒に曲げや高い引張力が作用しない構造としている。従って、流体に応じて弁棒は耐腐食性を有した 金属性のものに変更する必要がなく、接液部は文字通りオールセラミックス製のバルブということに なる。また、ボールバルブと異なり、本プラグバルブではバルブの液溜まりがない。 【図】 表 1 セラミックスおよび金属材料の耐薬品性評価試験結果 出典:「新世代ファインセラミックス製バルブ「コズミックスⓇ」シリーズの開発」、「配管技術 VOL.35 No.1 78 頁」 、「1993 年 1 月 1 日」、 「園田芳輝、近池善昭(株式会社フジキン)著」、 「日本工業出版株式会社発行」 - 64 - 図 1 セラミックス製ボールバルブの内部構造 出典:「新世代ファインセラミックス製バルブ「コズミックスⓇ」シリーズの開発」、「配管技術 VOL.35 No.1 79 頁」 、「1993 年 1 月 1 日」、 「園田芳輝、近池善昭(株式会社フジキン)著」、 「日本工業出版株式会社発行」 表 2 セラミックス製ボールバルブの仕様 出典:「新世代ファインセラミックス製バルブ「コズミックスⓇ」シリーズの開発」、「配管技術 VOL.35 No.1 78 頁」 、「1993 年 1 月 1 日」、 「園田芳輝、近池善昭(株式会社フジキン)著」、 「日本工業出版株式会社発行」 - 65 - 図 2 プラグバルブの構造 出典:「新世代ファインセラミックス製バルブ「コズミックスⓇ」シリーズの開発」、「配管技術 VOL.35 No.1 80 頁」 、「1993 年 1 月 1 日」、 「園田芳輝、近池善昭(株式会社フジキン)著」、 「日本工業出版株式会社発行」 表 3 プラグバルブの仕様 出典:「新世代ファインセラミックス製バルブ「コズミックスⓇ」シリーズの開発」、「配管技術 VOL.35 No.1 80 頁」 、「1993 年 1 月 1 日」、 「園田芳輝、近池善昭(株式会社フジキン)著」、 「日本工業出版株式会社発行」 【出典/参考資料】 「配管技術 VOL.35 No.1 76−81 頁」、「1993 年 1 月 1 日」 、「園田芳輝、近池善昭(株式会 社フジキン)著」、「日本工業出版株式会社発行」 - 66 - 【技術分類】1−1−5 【 F1 バルブの機能向上/適用流体の拡大/腐食性流体への対応 】F16K27/00@A 【技術名称】1−1−5−5 プラスチックバルブの変遷 【技術分類】化学プラント 【技術内容】 プラスチックバルブの歴史と現在の問題点および将来の課題を記述した。 (1)1950 年代(図 1):プラスチック製として恐らくは最初のバルブである。 (2)1960 年代(図 2):初代と同一構造であるが、外観形状が変更されコンパクト化されている。 (3)1970 年代(図 3) :ボールを固定するユニオンとパイプ接続用のボディキャップを別々の部品に 分ける大きな構造変更があった。ステムはバルブ外側から組み込んでいたのでナットで抜け防止 を行っていたが、内部からの組み込みに変更され外観的にすっきりとしてコンパクトになった。 (4)1980 年代(図 4) :ユニオンは従来、ボディキャップとキャップナットでボディの中に固定され ていたが、ユニオンとボディがねじ勘合に改良された。外観の違いこそあれ、現在流通している 世界中のプラスチックボールバルブのほとんどが構造・機能共にこれらの形式である。 (5)1990 年代(図 5) :次世代のボールバルブとして新機構がいくつか取り入れられた。トップフラ ンジの採用、ボトムスタンドの設置、ダブルステム O リング等である。 プラスチックバルブは耐腐食性に優れるが、その構成材料で耐薬品性が異なる。薬品の混合物・種 類・温度・濃度等の流動条件・頻度・ヒートサイクル等の広義の意味での使用条件も大きく影響する ため、材料選択如何でプラスチックバルブの使用価値及び寿命が決定される。 【図】 図 1 1950 年代製 出典: 「プラスチックバルブの変遷について」、 「バルブ技報 VOL.14 No.1 12 頁」、「1999 年 9 月 30 日」、「甲斐秀人(旭有機材工業株式会社)著」、「社団法人 図 2 1960 年代製 - 67 - 日本バルブ工業会発行」 出典: 「プラスチックバルブの変遷について」、 「バルブ技報 VOL.14 No.1 12 頁」、「1999 年 9 月 30 日」、「甲斐秀人(旭有機材工業株式会社)著」、「社団法人 日本バルブ工業会発行」 図 3 1970 年代製 出典: 「プラスチックバルブの変遷について」、 「バルブ技報 VOL.14 No.1 13 頁」、「1999 年 9 月 30 日」、「甲斐秀人(旭有機材工業株式会社)著」、「社団法人 日本バルブ工業会発行」 図 4 1980 年代製 出典: 「プラスチックバルブの変遷について」、 「バルブ技報 VOL.14 No.1 13 頁」、「1999 年 9 月 30 日」、「甲斐秀人(旭有機材工業株式会社)著」、「社団法人 日本バルブ工業会発行」 図 5 1990 年代製 出典: 「プラスチックバルブの変遷について」、 「バルブ技報 VOL.14 No.1 13 頁」、「1999 年 9 月 30 日」、「甲斐秀人(旭有機材工業株式会社)著」、「社団法人 日本バルブ工業会発行」 【出典/参考資料】 「バルブ技報 VOL.14 No.1 10−16 頁」、 「1999 年 9 月 30 日」、 「甲斐秀人(旭有機材工業株 式会社)著」 、「社団法人 日本バルブ工業会発行」 - 68 -