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労働経済学(Labor Economics)への招待
中馬, 宏之
一橋論叢, 113(4): 420-429
1995-04-01
Departmental Bulletin Paper
Text Version publisher
URL
http://doi.org/10.15057/12233
Right
Hitotsubashi University Repository
平成7年(1995隼)4月号 (42)
第113巻第4号
一橋論叢
労働経済学︵−ぎ昌冒昌O邑8︶
への招待
︵*︶
なしである。
宏 之
てである。このような特集号に続けて登場するというの
なうてしまった。ただし、今度は、編集委員の一人とし
それが、時を経ずして、再度登場させていただくことに
るという形で一昨年登場させていたたいたぱかりである。
筆者は、この特集号には、編集委員の方に依頼を受け
介・宣伝をしてみたい。
以下では筆者が専門としている労働経済学についての紹
た。同じことを今回も繰り返すわけにはいかないので、
の入門書などを紹介しながらハウ・ツーもの風に指摘し
付けておいたほうがよいと思われる点について、経済学
経済学学習法﹂と題して、主に経済学を学ぶために気を
﹁労働﹂という文字の持つイメージ
働経済学﹂に大幅に加筆訂正したものである。
九五隼三月下旬刊行予定︶の中の筆者担当部分である﹁労
は、ある特定の学問のみを宣伝することになるので、あ
れまでであるが、編集委員としてはまことに面目ないは
れなかった。需給が一致していないと言づてしまえばそ
で、うまい具合に執筆を引き受てくださる方を見つけら
分に承知しているつもりであるが、不徳のいたすところ
* 本論は、経済セミナー増刊﹁経済学ガイダンス﹂︵一九
口上はさておき、一昨年は、﹁学問への摺待一実践的
馬
まり好ましくないと考えられる。筆者自身もこの点は十
はじめに
中
420
(43)労働経済学(Labor Economics)への招待
は、他国に比べて良好な労使関係が成立しているといわ
するもの﹂といったイメージがただよってくる。この点
業によってコントロールされるもの﹂、﹁階級的な臭いの
どといった字面からは、﹁企業側と対立するもの﹂、﹁企
関係なくである。実際、労働運動、労働組合、労働者な
何かしら暗いイメージを与える。し・かも、あまり年齢に
我が国の多くの人々にとって、﹁労働﹂という文字は、
が多い。
ぷせられながら﹁労働経済学﹂が講義されているケース
ら﹁労働問題﹂、﹁社会政策論﹂といった冠を無理やりか
ところが少ないということを意味しない。過去の経緯か
多くない。ただし、このことは労働経済学を教えている
済学というタイトルで開講している経済学部はそれほど
経済学という講義はなかった。また、現在でも、労働経
い昔に学生時代を過、こした一橋大学経済学都には、労働
じ づら
れているわが国の事情からすると、ずいぶん意外な気が
︵﹁きo﹃冒go昌一8︶という言葉も、同じようなイメー
しかし、筆者が以前勤務していた大学︵東京都立大学︶
ているし、先の二つの講義も社会学部で開講されている。
ちなみに、一橋大学経済学部では、学部用に﹁労働経
ジを与えるようである。また、﹁労働経済学イコール労
では、﹁労働問題﹂あるいは﹁社会政策論﹂として労働
する。
働運動や労働組合を分析するための学問﹂といった先入
経済学が講義されている。また、東京大学経済学部では、
済学﹂と﹁労働経済学1﹂︵大学院と共用︶が開講され
観を持づている人々も数多い。筆者の個人的な感想では、
﹁労働経済学﹂という形で、従来型の﹁労働問題﹂や
初めて経済学を学ぷ人々にとっては、労働経済学
労働経済学者︵含む筆者︶はあまり労働運動や労働組合
い学問であることも影響している。実のところ、労働経
このような先入観があるのは、労働経済学が結構新し
す根源であり、多くの人々に日々の暮らしを可能にさせ、
るが、考えてみると、労働とは、そもそもモノを作り出
以上のような暗いイメージを持つ労働という言葉であ
﹁社会政策論﹂が講義されていると聞いている。
済学が経済学部で広く講義されるようになってきたのは、
人生の充実感さえもたらしてくれる重要なものでもある。
のことに詳しくないのであるが⋮⋮。
それほど昔のことではない。例えば、筆者が二〇年くら
421
一橋論叢 第113巻 第4号 平成7年(1995年)4月号 (44)
く、極めて重要な役割を果たしている。人生をおくるな
悩んでもいよう。
用制度は将来どのようになづていくのだろうか﹂と思い
﹃日本型﹄雇用制度崩壊論を耳にするとき、﹁わが国の雇
かで、﹁やりがい﹂を十分に感じられない職業を選択し
労働経済学は、このような日常生活に直接かかわっ七
したがって、それは、時代や経済体制の違いに関わりな
レーションのたまることはないだろう。
て︵あるいは、させられて︶しまうことほど、フラスト
また、方法論的には、﹁ミクロ経済学、マクロ経済学や
のアプローチの仕方も、かなり実際的かつ現実的である。
くるような問題を分析対象としている。したがって、そ
労働経済学とは?
労働経済学とは、まさにこの労働に関連する人々の暮
雇用や賃金に関連する諸問題の本質を明らかにしてい
計量経済学、歴史学、実地調査などの成果を援用しつつ、
く﹂という特徴をもっている。中でも、特にミク回経済
らしの様々な側面を分析する学問である。この点をより
具体的に説明するために、卑近な例をあげてみよう。一
企業といった経済主体が外的な経済環境の変化に対して
学的な色彩が濃い。﹁ミクロ経済学的﹂とは、労働者や
っては﹁どのようなタイプのバイトをするか﹂は、快適
どのような行動をとるかに留意しながら諸問題を分析す
橋大学の学生諸君にとどまらず、多くの大学生諸君にと
な学生生活をおくる上で大切な問題であろう。また、五
る傾向をさしている。
労働経済学の特徴をより具体的に説明するために、先
労働経済学の分析対象
月 病 をわずらっている 一 年 生 諸 君 ︵ 筆 者 に も 経 験 あ る ︶
の中には、﹁自分はどうしてこんな大学に入学する必要
い。さらに、今回のような深刻な不況がやってくると、
の卑近な例を続けてみよう。この種の日常的な問題に対
があったのだろうか﹂と悩んでいる人々もいるに違いな
多くの四年生諸君は、入りたい企業に採用してもらうた
して、労働経済学は、まず次のような問いかけをする。
つまり、
めにはどのようなアプローチをしたらよいかと思案して
いるはずである。そして、マス・メディアをにぎわす
422
(45)労働経済学(Labor Economics)への招待
﹁大学を卒業してサラリiマンになると賃金は月給で
ブ・サーチとは、労働市場の中でどの様な役割を果た
か?﹂
とは、どのような要因により発生しているのだろう
何だろうか? そもそも、世の中に存在する賃金格差
﹁アルバイト間の賃金格差をもたらしている要因とは
のだろうか?﹂
タイム労働の場合、なぜ時給で支払われることが多い
に伝えようとしている大切なことの一つは、考える道具
もあることはよくあることである。労働経済学が学び手
なる例に過ぎない。多様な現実の中では、答えがいくつ
するのである。もちろん、そこで与えられる返答は、単
析が可能であるかを、具体的な返答例をもって示そうと
けに対する答えを探すには、どのような経済学による分
などの問いかけをする。そして、次に、それらの問いか
しているのだろうか?﹂
﹁そもそも教育とは、あるいは学歴とは、社会におい
としての経済学を利用して、自分のオリジナルな意見や
支払われることが普通であるが、アルバイトやパート
てどのような役割を果たしているのだろうか?﹂
とである。
判断をどのようにして導くことができるかを例示するこ
言われるが、経済学部に入ってきて自分の能カが増し
繰り返して言うが、上記のような問いかけはあくまで
﹁教育には人々の潜在能カを増大させる機能があると
たと素直には感じられない。どうしてだろうか?﹂
も例に過ぎない。より一般的には、労働経済学は、以下
のような問題を分析対象としている。つまり、
﹁﹃日本型﹄雇用制度というが、そもそもどのような意
味で﹃日本型﹄なのか?﹂、﹁このような雇用制度が長
雇用に関連する問題一労働力や失業者数の測定方法、労
年にわたうて存続しているということは、それがある
種の合理性を持うていると考えられるが、どのような
働者の就業・非就業の決定要因、労働時間や雇用量の決
まり方、雇用調整の発生要因とその方法、技能・技術の
意味で合理的と言えるのだろうか?﹂
﹁ジ目ブ・サーチの必要な理由とは? そもそもジョ
423
一橋論叢第113巻第4号平成7年(1995年)4月号(46〕
要因とその役割、労働組合の社会的機能とその役割、
ト、産業構造の変化と労働移動、ジョブ・サiチの発生
社会の功罪、長期雇用と短期雇用のメ”ツト・デメリソ
形成プロセスとその決定要因、教育の経済的機能、学歴
る雇用保証など当てにせず、目ら市場性の高い技能・技
いような雇用制度が望ましい。そのためには、企業によ
﹁労働者の立場からすると、転職しても不利にならな
な通説について検討してみよう。
術を身につけておくべきである﹂
賃金に関連する問題一賃金体系と人的資本投資行動、賃
は、現実には﹁なぜ転職すると不利になりがちなのか﹂、
労働経済学を教える立場からすると、まず学生諸君に
﹁なぜ技能・技術の中に市場性の低いものが存在するの
金支払い形態と労働意欲、退職金・企業年金の役割、同
一労働・同一賃金の原則の妥当性、賃金格差と労働市場
る労働経済学の返答例は、
か﹂といった問を発することをすすめる。この問に対す
役割、
返答例一︵イ︶様々な職業紹介機関、新聞・雑誌の求人
の均衡・不均衡、賃金の下方硬直性と失業、付加給付の
などといった問題である。したがって、﹁労働経済学イ
広告、ロコミ、縁故などを通じた労働力の配分メカニズ
である。
ている、
分メカニズム︵内部労働市場とよぷ︶によって補完され
の外部労働市場の機能障害は、企業組織内での労働力配
ムのなかで十分な適材適所配分が行われない、︵口︶こ
ム︵外部労働市場とよぷ︶に頼るだけでは、経済システ
コール雇用と賃金の経済分析﹂と言ってよいかもしれな
い。
労働経済学の分析例
労働経済学的な分析の雰囲気を味わっていただくため
に、以下では労働経済学による分析例をもっと詳しく紹
介してみたい。ここでは、﹃目本型﹄雇用制度崩壊論と
の関連でマス・メディアに登場することの多い次のよう
424
(47)労働経済学(Labor Economics)への招待
た技能・技術あるいはそれらの生産性が企業の内と外と
右されることを意味する。そうすると、労働者に体化し
働サービスの種類と価値が経営層の経営手腕に大きく左
内部労働市場が重要ということは、企業内で必要な労
年代のはじめにフランク・ナイトという有名なアメリカ
か? この問いかけに対する一つの返答例は、一九二〇
なぜ外部労働市場は機能障害を起こしがちなのだろう
この点は、何も日本に限ったことではない。それでは、
にもとづく昇進・昇格プロセスによって行われている。
ニークな事象とが混在する。ビジネスの世界では、特に
に保険などで対処できる事象と、一つ一つがきわめてユ
ナイトの返答例一現実世界には、繰り返して生じるため
の経済学者によって与えられている。
で異なってしまう可能性を高める。言い換えれぱ、転職
のコストを高め、技能・技術の市場性を低めがちとなる。
もちろん、このようなコストや市場性の程度は固定的
なものでなく、刻々と変化する外的な経済環境にしたが
って変化していく。また、それらの程度は、どのような
職業を選択する−かによっても異なる。例えば、大学の
ある。ところが、このようなユニークな事象に対処する
後者の事象にどのように対処できるかがクリティカルで
業の最たるものであろう。しかしながら、すべての職業
ためには、市場メカニズムに加えて、経営者の経営手腕
︵特に社会科学系の︶先生などは、転職コストの低い職
が大学の先生のようなものになることはありえない。そ
すると、経営者の善し悪しは、この種のユニークな事象
を機軸とした企業組織的対応に頼らざるを得ない。そう
焦点をあわせて考えてみよう。
に直面したときに的確な判断のできる人材をどの程度最
の理由を、外部労働市場の機能障害がなぜ発生するかに
就職してみるとよりハヅキリすることであるが、企業
適に配置できるかに大いに依存することになぢ。
また、最近の労使間のインセンティブ
︵動機︶問題を
組織内における様々な人材の配分は、価格メカニズム
どを含めた広い意味での潜在能カ、働きぶりや実績ある
重視する情報の経済学は、
︵賃金︶重視の外部労働市場と異なり、労働者の人柄な
いはそれらを集約した人事考課情報︵企業版﹁通知表﹂︶
425
業務にたずさわる労働者の働きぷりや生産性を測定し確
知ることができない、︵口︶労働者、特に非定型の上級
頼るだけでは、個々の労働者の潜在能力について十分に
情報の経済学の返答例ニイ︶企業は、外部労働市場に
するには本質を見きわめる目、そのための鋭利な分析ツ
なってくれる。また、﹁受け売りをする自分﹂から脱却
の本質が見えてくると、経済学は実に強力な分析道具と
想をつかしてしまった諸君も多い。しかし、いったんそ
からず卒業してしまった諸君や、経済学のつれなさに愛
済学部に入学しながら、結局、経済学の﹁け﹂の字もわ
定することは極めて難しい、︵ハ︶労働者は、景気の波
ールを備えることが不可欠であるが、経済学はその要請
ろうことは類推できよう。なお、詳しくは、参考文献に
要因は、いずれも労使の関係を長期的なものとするであ
などの要因をより強調する。これらの︵イ︶∫︵ハ︶の
が、経済学の場合、その学ぴ手に対する﹁つれなさ﹂が
ない。学問とは、一般的にそのようなものかもしれない
に、それは分析ツールとしてなかなかうまく使いこなせ
このような鋭さを持った経済学であるが、悲しいこと
大きいように思える。おそらく、その理由の一つは、経
との魅力をもう一つ強調してみよう。経済学は、初学者
最後に、多少繰り返しになるが、労働経済学を学ぶこ
なかった多くの人々が、サラリーマンとなった後に経済
であろう。このことは、学生時代に﹁け﹂の字もわから
ズムで動いているか﹂に関する現実感覚を要求するから
済学が学び手に﹁現実経済がおおよそどのようなメカニ
にとづてなかなかつかみどころのない学問である。筆者
学の考えるための適具としての重要性を痛感し、その
れよう。
とりこ
の場合も、﹁熱心にミクロ経済学やマクロ経済学の教科
虜になってしまっている例が多いことによっても見て取
い﹂というもどかしい思いをしたことがある。また、経
書などを読んでみてもなかなか現実の理解につながらな
緒びにかえて
ある拙書︵﹃労働経済学﹄︵一九九五︶︶を参照されたい。
に十分に答えてくれるものである。
に応じて大きく変動する賃金のリスクを嫌う、
第4号 平成7年(1995年)4月号 (48)
一橋論叢 第113巻
426
(49)労働経済学(Labor Economics)への招待
この点、労働経済学は、様々な経済学のツールを利用
いずれも筆者の友人達によるものである。ここでは、独断
ものも含む︶が出版予定であると聞いている。ちなみに、
,労働経済学﹄︵小野旭著、東洋経済新報社、一九九四年︶
色の労働経済学・労使関係論の教科書。
年︶著者の長年にわたる聞き取り調査やデータ分析をも
とに、現実の労働経済の仕組みを分かりやすく解説した異
﹃仕事の経済学﹄︵小池和男著、東洋経済新報社、一九九一
と偏見を交えて以下の著書をあげておこう。
して我々の日常的な諸間題を分析し理解するための豊富
な例を提供してくれるので、上記のような現実感覚を会
得する上で大いに役立つ。また、卒業して様々な職業人
となっていく学生諸君に対し、我々の社会の仕組みにつ
いて知っておいた方が良いであろう様々な予備知識をも
与えてくれる。振り返ってみると、筆者自身が経済学が
経済学の予傭知識をほとんど要求することなしに読者に現
実の労働経済の仕組みの本質を教えてくれる労働経済学の
強力な﹁実学﹂であることを身を持って知ったのは、小
生の大学院時代の恩師がどのようにして現実の問題を分
教科書。
に説明。
学の最前線の理論を現実の問題例と対比させながら直感的
うな諸問題を分析している労働経済学の教科書。労働経済
にミクロ経済学の分析道具をつかって、本論で紹介したよ
,労働経済学﹄︵中馬宏之著、新世社、一九九五年︶ おも
析されているかを門前の小僧的に学習してからであった。
その恩師の口癖は、﹁勉強に無駄なものはない﹂である。
付論一労働経済学を学習するための教科魯・参考書
あるものとしては、
また、アメリカの大挙3,4年生用の教科書として定評が
峯ao昌−豊昌宙8目o巨員︵甲印雲﹃雪冨﹃oq與まカー
この付論では、労働経済学を学習するための教科書や参
書には、筆者の自己宣伝的な部分もあるので注意されたい
考書について紹介しておこう。ただし、紹介されている著
ω三;著︶、ω8貝句昌昌彗彗︷OO目寝ξ二竃一.
彗αカー≧σ価ユ著︶一匡彗o彗俸内oミ﹂竃︷ー
;o冒昌〇三鶉9峯o鼻彗∼弔ξ一︵Ulω.麦昌實昌o争
るうえでも面白い。また、毛色はやや異なる交二人の著
などがある。これらの本は、アメリカ労働市場の特徴を知
済学の教科書に較ぺて、あまり多くない。しかしながら、
最近の雇用情勢の悪化も影響してか、本年︵九五年︶には、
教科替一労働経済学の教科書は、ミクロ経済学やマクロ経
筆者の知っているだけでも三冊の労働経済学の本︵筆者の
427
一橋論叢 第113巻 第4号平成7年(1995年)4月号(50)
名なゲーム理論の専門家による、
冒冒o巨ε◎晶彗ざき昌彗﹄昌昌円鷺昌昌戸︵勺、;一−
血o﹃oヨ彗ら−■カoσ①﹃房著︶一∼彗巨8土與戸冨竃︵労働経済
,労働白書﹄︵労働省、各年版︶、﹃経済白書﹄︵経済企画庁、
働経済の状態を知るための代表的なデータの提示。
︵O向OU各年版︶
︵アメリカ労働省月報︶、冒国OU目≡旦ξ昌彗一〇巨ξOこ
新聞﹄、﹃日経産業新聞﹄、,峯昌;与F暮昌憲まざξ﹄
各年版︶、,海外労働白奮﹄︵労働省、各年版︶、,日本経済
という本は、情報の非対称性から派生する経済主体︵労働
学関連は、第10章壬13章︶
者や企業︶間のインセンティブ問題を重視する最近の経済
りやすく説明している。ちなみに、筆者は、この本を今年
的なものである。分析のためには、これらの統計表に明示
統計書など 以下に掲げるものは、いずれもハンドブック
腰論のエソセンスを数学モデルを使わないで直感的に分か
度の3年生用のゼミの教科書に予定している。
﹃労働統計要覧﹄︵大蔵省印刷局、各年版︶、﹃活用労働統
してあるもともとの統計を参照する必要がある。
計﹄︵日本生産性本部、各年版︶、,統計要覧﹄︵大蔵省印刷
労働経済1こ関連する最新資料 労働経済についての最新資
料を得るためには、以下のようなものが有用である。なお、
局、各年版︶
,日本労働研究雑誌﹄ 月刊誌、各号の最後に詳細な邦語文
︵労働経済に関連する文献検索資料︶
我が国の労働関係のデータの豊富さは、世界一であると言
われている。
献目録を収録している。
ばれる︶ 過去二〇−二五年間の世界中の主だった経済誌、
冒昌;竺o︸冒昌目昌ざ=言冨言富o昌︵雰o目=一と呼
雑誌、白書など
﹃労働調査月報﹄︵労働省、各月版︶ 労働省の専門家によ
があり、昨年まで両版は同一内容であづたが、今年より個
経済関連書籍を網羅している。ライブラリー版と個人版と
る刻々と変化する労働情勢の分析、労働省による最新調査
の概要紹介、最新の労働統計掲載。
人版の掲載範囲が限定されることになった。一橋大学図書
﹃労政時報﹄︵労務行政研究所、各週版︶ 個別企業の人事
関連施策︵例えぱ、人事考課、教育訓練、雇用調整などの
館の参考室で、誰にでも利用可能である。もちろん、雑誌
邦語による最近の有用な労働関係の単行本 最後に、最近
﹃−;;竺9目8;昌ざF篶o;言;﹄も図書館にある。
実例︶紹介、様々な機関で実施されたアンケート結果の紹
介、最新の労働政策や労働法令の紹介。
﹃日本の労働政策︵労働省編︶﹄︵労働基準調査会、各年版︶
わが国において実施されている労働政策の概要の紹介、労
428
(51)労働経済学(Labor Economics)への招待
の有用と思われる単行本について、気のついたものをアル
ファベソト順に列挙しておく。
,検証べ日本型﹂雇用調整﹄︵中馬宏之著、集英社、一九
九四年︶
﹃日本経済と就業構造﹄︵樋口美雄著、東洋経済新報社、一
,職場の労働組合と参加一労使関係の日米比較﹄︵小池和男
九九一年︶
著、東洋経済新報社、一九七七年︶
﹃アメリカのホワイトカラー﹄︵小池和男著、東洋経済新報
社、一九九三年︶
﹃日本の失業行動﹄︵水野朝夫著、中央大学出版部、一九九
﹃夫卒社員の初期キャリア管理に関する調査研究報告昏
一九九三年︶
大卒社員の採用・配属・移動・定着﹄︵日本労働研究機構、
,労働市場の理論﹄︵大橋勇雄著、東洋経済新報社、一九九
,高齢化社会の労働市場一就業行動と公的年金﹄︵清家篤著、
〇年︶
﹃査定・昇進・賃金決定﹄︵橘木俊詔編、有斐閣、一九九二
東洋経済新報社、一九九三年︶
,労働組合の経済学一期待と現実﹄︵橘木俊詔・連合総研編、
年︶
房、一九九三年︶
﹃職場類型と女性のキャリア形成﹄︵脇坂明著、御茶の水書
東洋経済新報社、一九九三年︶
,日本の労働市場分析一〃内部化した労働”の視点より﹄
︵一橋大学教授︶
二年︶
︵村松久良光著、白桃書房、一九八三年︶
,日本の労働市場一外部労働市場の機能と構造﹄︵小野旭著、
東洋経済新報社、一九八一年︶
429
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