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ベニス・シンプロン オリエント・エクスプレス
スイスのツーク湖付近を通過する列車。 鬼頭郁子が案内する ベニス・シンプロン オリエント・エクスプレス 1883年に運行が始まり、数々の歴史の舞台となったオリエント急行。往時 の姿をそのままに、 欧州を駆け抜ける列車は、まさに誰もが憧れる存在です。 今回はフラワー&テーブルコーディネーターとしてご活躍する鬼頭郁子氏が 豪華列車の旅へ誘います。 VSO E Article by Ikuko Kito Photographs by Hiro Matsui Venice Simplon -Orient- Express 25 24 ディナーを終えるとバー・カーは サロンのような雰囲気に包まれる。 写真上/バー・カーではピアノの生演奏が優雅な時間を演出する。 写真下/ディナーやランチをいただく食堂車輌。随所に歴史を感じ る設えが施される。 乗車前にプラットフォームで車掌とともに 写真に収まる鬼頭郁子氏。 極上なる空間で過ごす列車の旅 VSOE Venice Simplon -Orient- Express に 夢の 豪 華 寝 台 車﹁ベニス・シンプ 最初 ロン・オリエント・エクスプレス ﹂の 歴 史 についてお話しします。その歴史は、ベル ギーのジョルジュ・ナゲルマケールス氏が、 アメリカのプルマン社の 寝 台 車に 感 銘を 受け、1872年にワゴン・リ社を 設立し たことに始まります。それまで、ヨーロッ パの列車は国ごとに乗り換えていたため、 乗り換えなしに長距離を走ることができ、 さらに 列 車で 食 事もできる 食 堂 専 用 車 輌 を持つ寝台車が誕生したのです。 1883年 月4日、パリ東駅からイス タンブールへ向けて初めて出発したオリエ * ※ オリエント・エクスプレスは独 自の路 線を持たず 、 他の 鉄 道 会 社の 線 路 ・ 機 関 車を 使 用しているため ルートが変 更に 。定 期 運 行はフランスのカレー・ヴィル からパリを通 過し 、 サンタルチア 駅に向かう 。 時間をかけてサンタルチア駅へ向かいます。 食と美しい車窓の景色を眺めながら、約 ランチ、その後はアフタヌーンティーと、美 スイスを通過しイタリアに入ったあたりで スの 景 色をのぞみながらの 朝 食。さらに、 メントです。目覚めると、朝焼けのアルプ してからは、フレンチディナーをい 出発 いただき、就寝するのは専用のコンパート り換えます。 ンプロン・オリエント・エクスプレス﹂に乗 ここで、ワゴン・リの寝台車輌﹁ベニス・シ ギーのブリュージュへと 向 かいます︵ ※︶。 フランスのカレー・ヴィルを経由してベル トンで 下 車。いったんバスに 乗り 換えて、 食堂車輌でブランチをいただきフォーク でヴィクトリア駅を出発します。 堂車輌のみの﹁ブリティッシュ・プルマン﹂ 年 間を 通じてイギリス国 内を 運 行する 食 トリア駅の専用カウンターでチェックイン。 今回のロンドン∼ベニスのルートは1泊 2 日の 行 程です。まずはロンドン・ヴィク * しむ人に愛され、今日に至っています。 を果たします。以後、優雅に列車の旅を楽 シャーウッド氏が当時のままに見事に復活 年、ベルモンド社の 創業者、ジェームズ・ 止となってしまいました。しかし、1982 後、飛行機の普及により衰退。ついには廃 1900年代、アジアや中東へ、旅行を 楽しむ 利 用 者で 賑わった 寝 台 車は、その 間に人々の憧れになりました。 メントを持ち、その内装の優美さは、瞬く ント急行は、目を見張るようなコンパート 10 26 27 30 写真上/ロンドンのヴィクトリア駅からはしばし、 ブリティッシュ・プ ルマン社の車輌が使用される。 写真下/ヴィクトリア駅にあるベニス・シンプロン・オリエント・エク スプレス専用のカウンター 。 ここでのチェックインで旅が始まる。 歴史や小説の舞台となった 窓からの優しい光がランチのテーブルを 華やかに彩る。 Venice Simplon -Orient- Express VSOE Venice Simplon-Orient-Express ベニスへの豪華列車の旅 鬼頭郁子が体験する TEL 03 3265 1200(予約課) [email protected] http://www.belmond.com/ 写真左/車内の調達品はどれもが上品で優雅で。 写真右2点/素材の旨味を引きだした食事は列車の旅の楽しみの一つである。 写真左/終着駅のベニス、 サンタルチア駅にて。 写真右/キャビンに飾られた花は、ロンドンで花 を購入し、鬼頭氏自らがコーディネートしたもの。 ヴィクトリア駅でイギリス国内用の﹁ブ リティッシュ・プルマン ﹂に 乗り 込み、ギリ シャの 踊り 子を 描いた 寄 木 細 工の 食 堂 車 ると、 大きく 揺れて 電 車が 走り 始めまし ﹁アイビス ﹂の 整えられたテーブル席に 座 た。 すぐにフルートグラスに 桃 のジュース とシャンパーニュが 注がれ、ウェルカムの ベリーニがサービスされます 。 日 本 でい ただくベリーニとは 違って、酸味がかなり 強く 驚いていると、﹁日本みたいに、 トロッ と 甘い 桃はヨーロッパにはないよ ﹂と 同行 者から 教えられ、これから 始まる 未 知な る 旅に 期待が 高まりました 。 下 車。いよいよ 寝 台 車 に 乗 り 換 えです 。 のブランチが 香り 高い 紅 茶で 締 英国式 めくくられると、乗り 換えのためいったん 自 分 専 用のコンパートメントは 思ったよ り 広く、テーブルにはシャンパーニュが 置 かれていました 。 マホガニーの 美しい 扉で 覆われた 洗 面 所 を 開 けると、 充 実 したアメニティー 。 何よりも 驚いたのが、 列 車 内でありなが ら、洗面所にあるグラスもカラフェもすべ て 贅 沢 なガラスであること 。それらが 美 しく 固 定して 設 置されていました 。この 美意識にたまらなく 嬉しくなりました 。 ロンドンの 花 屋さんで 買ったバラとヒ ヤシンスを 洗 面 所に 入れ、ソファーベッ ドで 一 息。そして 夢 見 心 地な 気 分でディ ナーのためにお 召し 替え 。 最 初にいただ いた 案内には、タキシードの 紳士やドレス アップした 淑 女たちの 写 真とドレスコー ドが 記 載されていたのですが、 半 信 半 疑 でバー ・カーまで 行ってみると、まさに 写 真 通 りの 華 やかに 着 飾 ったヨーロッパの 社交場でした 。 名の 食 堂 車で 極 上ディナーを 堪 能しまし アペリティフをいただき、ルネ・ラリッ クが 手がけた﹁コート・ダジュール ﹂という た 。上質なクロスと 磨かれたカトラリー 。 プレゼンテーションプレートにはラリック の 絵柄がリンクされ、アールヌーボー 調の のロゴが 。その VSOE ディナー 皿にも、安定感のあるフォルムの グラスにも、すべて 後、再びバー ・カーで、ピアノの 生演奏を 聴きながら、遅くまでディジェフティフを 楽しみました 。 ぐっすり 寝た 翌 朝は、 昨 晩とはまるで 違ったスイスの 景 色が 現れます 。 素 早く 食 をコンパートメントまで 運 んでくれま ベッドを 整えてくれたスチュワードが、朝 した 。そして、ランチまでの 間はのんびり 読書。長旅の 間、好きな 花の 香りで 過ご したいと 洗面所に 持ち 込んで 自分で 束ね たブーケが、いつの 間にか、素敵なクリス タル 花 瓶に 飾られてテーブルに 置かれて いました 。 その 後、ディナーとは 違う 食 堂 車 輌の ﹁エトワール・ドゥ ・ノール ﹂でランチ 。至 れり 尽くせりのサービスを 受け、 絶 景を 眺めてのゆったりとした 時 間。 見 知らぬ 乗 客との 軽い 挨 拶。ベルエポックの 華や かな 時代、鉄道で 旅を 楽しみ、人生を 謳歌 する 上 流 階 級の 人 々の 気 分を 味わったよ うな 不 思 議 な 感 覚。ヨーロッパを 駆 け 抜 けた 豪華列車での 一夜は、今でも 夢を 見 ていたかのようでした 。 28 29 行き届いたサービスが心地良い。 スタッフの笑顔にも癒される。 車窓の外にはどこを走っていても絵画のように 美しい光景が広がる。 Information VIRGINATLANTIC ヴァージン アトランティック航空 もう一つの旅の思い出が生まれる空間 ヒースロー空港ラウンジ 「ザ・クラブハウス」 高まる胸の鼓動。発車 ベルが鳴る前の期 待 に満ちた感覚は、豪華列 車の旅ならではの醍 醐 味。列 車が停 車するプラットホームは、旅人 の数だけ、様々なドラマの舞 台となってきた。 他 方、空の旅ではどうだろう。特に、ヴァージ ン アトランティック航空に搭乗する前ともな れば、豪華列車での旅と同 様に胸がときめいて くるもの。そんな搭乗客が様々な思いを胸に、 出 発の前の安らかなひと時を過ごす場所が、 ザ・クラブハウスと呼ばれる空 港ラウンジだ。 ロンドン・ヒースロー空 港のターミナル 3に あるこのラウンジは、アッパークラス利用者だ けに許されたラグジュアリーな空間。インテリ アはモダンでスタイリッシュなトーンにまとめ られ、会員制のクラブのような雰囲気である。 ヴァージン アトランティック航空だけあり、 サービスも斬 新かつ個 性 的だ。 業界初となる ジャグジーやスチームサウナといった本格的な スパ施設を備えるほか、N Yの有 名サロンのス 1 タッフによるヘアカットも用意。搭乗前に身体 の芯からリフレッシュすることができる。 食 事も期 待を裏 切られることはない。ブラッ サリーではレストラン形 式で朝 食を提 供。イブ ニングタイムには 14 mのバーカウンターを有 すバーで、 カクテルグラスを傾けるのもいい。 搭 乗する前から体 感するヴァージン アトラ ンティック航空ならではのサービスの数々 。極 上の空 間は、豪 華 列 車の旅に勝るとも劣らな 2 い、あなただけの特 別な旅の思い出が生まれる 3 かもしれない。 1.スタイリッシュなインテリアが印象的なヒースロー空港ターミナル3にある空港ラウンジ「ザ・クラブハウス」。 アッパー クラス専用のラグジュアリーな空間だ。 2.カクテルバーの14mのカウンターは、 ザ・クラブハウスの名物の一つ。ゆっくりと寛ぐのに最適。 3.ニューヨークの有名サロン「Bumble and bumble」の専任スタッフが常駐する。滑走路を眺めながらのヘアカットは 貴重な経験となるはず。 Information Virgin Atlantic www.virgin-atlantic.com [お知らせ] ヴァージン アトランティック航空では、2015年1月31日ロンド ン(ヒースロー)発東京(成田)行き、同年2月1日東京(成田)発ロンドン (ヒースロー)行きを最後に、東京(成田)−ロンドン路線が廃止となります。 31 アッパークラス専用のチェックイン・ エリア「アッパークラス・ウィング 」 もヒースロー空港 ターミナル 3に。 ショーファーカーサービスを利用す れば、送迎車に乗ったままのチェッ クインが可能で、最短でわずか 10 分で空港ラウンジに到着できる。 30 メイフェアに佇む英国の正統 The Dorchester, London ザ・ドーチェスター ロンドン 美しい花々に彩られた 「ザ・プロムナード」 のエントランス。アフタヌーンティーはこ ちらで堪能できる。 ロ ン ド ン のメ イ フェア に あ る 5 つ 星 の 老 舗 ホ テ ル 、 ザ・ドーチェ ス タ ー 。い か に も 英 国 ら し い ク ラシックな 色 合 いの 花 装 飾 はゴー ジャス で 圧 巻 。こ のサ ロ ン のア フ タ ヌーン ティーは 常 に 評 判 が 高 く 、 ティーやラ ン チ に は 訪 れ た こ とはあ ったのですが 、宿 泊 は 初 め てです 。 さすがに 女 性 に 人 気 のパリの ムーリ ス を は じ め、 ラ グ ジュア リーなホ テ ル を 展 開 す るドーチェ ス ター ・コ レ ク ション 。お 部 屋 の ベッ ド や バ ス タ ブ の 快 適 さ も、 サービ ス も す べ て が 贅 沢 で パー フ ェ ク ト 。そ し て 評 判 の ス パ は 、 フ ェ イ シ ャ ル・ト リ ー ト メ ン ト は 、 トリートメン Carol Joy London で、 驚 くほど Kerstin Florian トは 口 角 が 上 が り び っく り 。 技 術 の 高 さ も も ち ろ ん 、 美 し いイ ン テ リ ア のリ ラック ス ルーム 、 と ろ け る ような 至 福 の 時 間 でした 。 アレキサンドラ・シャンパリモー が 手 掛 け た ド ー チ ェ ス タ ー ・ス イートは 、甘 すぎず 、シノワズリー な 要 素 を 取 り 入 れた 居 心 地 の 良 い 空 間 。 壁 のランプから 、タッセ のスイートには 、どんな 方 が 宿 泊 ﹁こ ルまでもが 、すべておし ゃれ 。 されるんでし ょう ? ﹂と 思 ってい たら、 ホテルエントランスには 、 The Dorchester, London 32 33 見 たこともないような 特 別 仕 様 Park Lane, Mayfair London, W1K1QA, UK TEL 0120-086-230(日本での予約) http://www.dorchestercollection.com/ の 高 級 車 が 並 んでいました 。 Information 評判の高いザ・ドーチェスターの アフタヌーンティー 。 ディナーの後は「ザ・バー・アット・ザ・ドーチェスター」 で 見た目にも美しいカクテルを楽しみたい。 「ドーチェスター・スイート」 はアレキサンドラ・シャンパリモーが 手掛けた優雅な空間。 BELMOND HOTEL CIPRIANI, VENICE ベルモンド ホテル・チプリアーニ スパでは健康とスキンケアを重 視。プライベートテラスのある 静 かな環 境 で上 質 なトリート メントを体験することができる。 ヴェネチアのサン・マルコ広場から ホテルの 専用シャトルボートで 分 が 広がっていました。イタリア語で 前には 美しいヴェネチアのラグーン ハニーが手がけた素敵な空間。目の ホテルのメインダイニンク﹁オロ ﹂ は、アメリカの建築家、アダム・ティ リラックスできます。 気遣いが行き届き、安らかな香りで う方も多いのですが、ここのスパは り屋な日本人にはちょっと苦手とい す。ヨーロッパのスパは、恥ずかしが 数 々のトリートメントが 受けられま ティー&ウェルネス・センター﹂では、 しい庭園に面した﹁カサノバ・ビュー スイミング 広い敷地内には、庭園、 プール、テニスコートなどがあり、美 開いたことでも有名です。 トに宿泊し、友人たちとパーティーを このホテルのスイー ニーが結婚前夜、 リーなホテルです。ジョージ・クルー ベートな 時間を 過ごせるラグジュア 光客の喧騒から離れ、贅沢でプライ プリアーニ﹂があります。ここは、観 ブ 御 用 達の﹁ベルモンド ホテル・チ ほどの対岸に、多くの著名人やセレ 5 BELMOND HOTEL CIPRIANI, VENICE バー﹂ もおすすめです。 パッション 〟が 人 気の﹁ガビアーノ・ ルーツとテキーラのカクテル〝ニーナ また、ジョージ・クルーニーが、彼の 母親の 名前をつけた、パッションフ 別です。 オーガニックワインといただくと 格 くお 味も 繊 細。ソムリエおすすめの はどれも独創的で、盛り付けも美し に 煌 きます。 作 り 出 されるお 料 理 ガラスのシャンデリアがゴージャス されたドーム型の 天井からはムラノ 〝黄金〟 を意味する通り、金箔で加工 Information Giudecca 10 30133 Venice Italy TEL 0120-229-800(日本での予約) http://www.belmond.com/ 34 35 写真上/ホテルへは専用のシャトルボートでアクセスする。 写真下/庭には緑が生い茂る。 まさに喧騒とは別世界が広がる。 ジョージ・クルーニーが命名したカクテルもある 「ガビアーノ・バー」 。 運河を目の前に望む 「パラディオ・スイート」。 緑と水に囲まれた壮麗なホテル ラグジュアリーな雰囲気に包まれるメインダイニング「オロ」。ミシュランスター シェフであるダビデ・ビセット氏による独創的な料理を五感で堪能したい。