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植物と緑地を守る

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植物と緑地を守る
(まちづくりの現場から
地域と行政の連携で
植物と緑地を守る
手稲区には、住宅地の近くに緑あふれる公園や緑地が数多くあります。
特に富丘西公園と星置緑地、稲穂ひだまり公園には、市内でも珍しい植物が群生しています。
これらの公園では平成1 6年から、北海道大学大学院農学研究院教授の近藤哲也先生と、
植物の専門家である笠康三郎さん(有限会社緑花計画)の指導のもと、地域と行政が協力し、
植物や緑地の魅力を知り、守り育てる取組みが進められています。
己西公園
三丘115莱5丁目)
北海道を代表する花で「札幌
市の花」にもなっている日本在
来種のスズランが自生しています。
高台緑
札樽
自動車道
手稲IC
丸LUA
忘丘西公園t
手稲中学校国道5号緑
星置緑地
(手稲区星置1条5丁目)
春にはミズ八ショウが一面に
咲きます。さまざまな植物や野
鳥も観察できます。
稲穂ひだまり公園
回道5号緑
(手稲区稲穂4条1丁目)
可憐な花をつけ、早春の妖精
高台緑
とも呼ばれるカタクリが、丘陵地
稲穂ひだ蒙り
公園
の樹林に群生しています。
札博自動車道
富丘西公園で開かれた保全作業講習会。
地域と行政、専門家が連携して保全を進めています。
12
-「Ylェ
富丘西公園のスズラン保全活動
雷哀
6/4⑳ 6/8●
7/16◎ 7/27●
10/80 10/26●
保全作業講習会 自然観察会
保全作業講習会 自然観察会
保全作業講習会 保全区域の大掃除
(富丘丸山町内会)
(巷丘丸山町内会) ススキの青刈り作業等
(菖丘丸山町内会) お疲れさま会
80人の参加者があった春の観察会
秋の大掃除。作業の後は恒例の「お疲れさま会」を開催
地域住民の手で日常的に保全
こまめな活動で大きな効果
「札幌市の花」にもなっている北海道を代表する花、スズ
これまで5年にわたって保全活動を続けてきたことで、ス
ラン。富丘西公園のスズラン保全活動は平成1 6年に始まりま
スキの勢力が弱まり、スズランによく白光が当たるようにな
した。月に1回程度の日常的な手入れと、観察会にあわせた
りました。スズランの株と花は着実に増え、いまでは足の踏
大規模な保全作業が主な活動です。日常的な手入れを行う
み場に困るほど群生した場所もありますo今後は、ある程度
富丘丸山町内会のボランティアは、総合学習の授業で小学生
スズランが復活した区域は手をつけず、まだ作業が必要な区
に作業を指導するなど、さまざまな保全活動に取り組んでい
域で保全作業を続けていきます。秋の大掃除のほかは大規
ます。自然観察会は年に3回程度開かれ、スズランの咲く初
模な作業が減り、日常的な保全作業が増えるため、公園で保
夏には毎年、約80人が参加。夏の保全作業では、スズランの
全作業講習会を開き、作業ができる人材を育てています。
生育を圧迫しているススキの刈り取りや帰化植物の抜き取り
を行い、秋の大掃除は枯れ草を刈り取り、運び出します。
手稲中央小学校の5年生は平成1 8年から、総合学習の一環として草抜き
やススキ刈りを行っています。普段の観察会や保全作業に参加する生徒も
多く、平成1 9年に「子どもリーダー」も誕生。秋の大掃除には、富丘児童会
館の子どもたちも作業を手伝い、植物染めやクラフトにチャレンジ。子ど石
たちの協力は、取組みにさらなる元気を与えています。
13
冨⊆⊆冨冨冨副
まちづくりの現場から
より魅力ある星置緑地に
4/10●
コミ拾い
4/20●
自然観察会
10/19●
ササ刈り作業
帰化植物の抜き取り作業
秋に行うサ廿の刈り取り
星置緑地で行われた自然観察会
4月に行われた緑地周辺のコミ拾い
9/4●
アシ刈り作業
7/6●
アシ刈り作業
作業後、意見交換会を開催。
翌年の取組みについて話し合った
緑地そのものの魅力を探る活動に
「みどりのサポーター」が大活躍
ミズハショウが一面に咲く星置緑地では、平成1 7年から自
保全作業では、アシは根に養分をため込む前の夏に、ササ
然観察会を開催し、参加者の協力で保全作業も行ってきました。
はほかの植物が枯れて植生を傷めずにすむ秋に刈り取ります.
作業は背が高く伸びるアシと、一面に広がりつつあるササの
アシの刈り取りは平成19年から、7月上旬と9月上旬の2回、実
刈り取りが中心です。観察会のほかに意見交換会を開き、作業
施。緑地東側の入口付近は見通しがよくなり、ガマや工ゾコマ
の仕方を学んだり、ミズバショウをはじめとする星置緑地の魅
ナなどの植物も日にできるようになりました。
これまでミズハショウの季節に緑地を訪れる人はいましたが、
力と楽しみ方についてアイデアを出し合っています。平成1 9
うっそうと草木が茂っていた緑地。見通しがよくなれば、安心
年4月に行った野鳥観察会は、意見交換会から生まれました。
こうした活動の定着に伴い、平成19年の7月には「みどりの
して散策を楽しめるようになります。平成20年4月には周囲の
講習会」を開催。保全作業の仕方と緑地の植物について講習
ごみ拾いも初めて行われ、地域の力で魅力ある緑地へと生ま
を受けた住民が「星置緑地みどりのサポーター」に認定されま
れ変わりつつあります。アシとササの勢力が弱くなり作業は楽
した。現在29人の「み
になりましたが、帰化植物が増えるおそれがあります。今後は
どりのサポーター」が
緑地の変化を観察しながら、地域と行政で連携し、状況に応じ
中心となって、緑地の
た手入れを続けていく予定です。
日常的な手入れを行っ
ています。
14
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1- 二 一
ヽ
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カタクリを守り育てる稲穂ひだまり公園
4/27●
自然観察会
6/19◎
カタクリのタネまき
10/26●
ササ刈り作業
枯れ葉、枯れ枝の除去作業
大勢の人が訪れる稲穂ひだまり公園の観察会
周辺の町内会の人たちが中心となって行った、
ササ刈りと枯れ葉と枯れ枝の除去作業
時間をかけて守り育てる
知られていなかったカタクリの存在
稲穂ひだまり公園の丘陵地の樹林に、カタクリが群生して
カタクリを育てていくためには、春の生育期によく日光の
います。カタクリは早春の短い時期に可憐な花をつける多年
あたる環境をつくることと、タネから新しい個体を増やして
草。気温に敏感で、生育環境をつくることが難しいといわれ
いくことが大切です。そのため秋に、周辺の町内会関係者が
ています。
中心となって保全作業を実施。背が高く伸びるササを刈り取っ
地域のカタクリ保全の取組みは、平成1 9年4月に開催され
たり落ち葉や枝などをよけて、春を迎え、カタクリの芽がた
た自然観察会に始まります。予想を超える約1 00人の参力0者
くさん出るように準備をしました。ササ刈りは2年続けて行っ
が集まり、さまざまな植物を観察して、春の訪れを楽しみま
ており、ササの勢力は弱まっています。
した。しかし参加者に話を聞いてみると、この公園にカタク
また、平成20年6月にはカタクリのタネをまきました。タネ
リの群落があることを知っていた人はごくわずか。意見交換
にはアリが好む物質がついており、アリが運ぶことで分布域
会ではこの公園のカタクリを守りたいという声も多く、秋に
を広げます。タネまきの参加者はアリがタネを運ぶ様子を観
保全作業を行うことになりました。
察しながら、約8年後に花をつけるカタクリに思いを馳せて
いました。
カタクリのタネまきの様子
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