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「自然法則を利用した技術的思想の創作に該当しない発明」であるとの
「自然法則を利用した技術的思想の創作に該当しない発明」であるとの審決を否定した判決 第2電気情報 1.事件番号 2.関連条文 3.判決言渡日 4.原告 (控訴人) 5.被告 (被控訴人) 6.出願番号 等 (出願経過) 7.要約 2008.8.1 新道 斗喜 平成19年(行ケ)第10369号審決取消請求事件 29条第1項柱書 平成20年6月24日 シェード アナライジング テクノロジーズ インコーポレイテッド 特許庁長官 1)出願日 国際出願(PCT/US99/22857) 平成11年(1999)10月04日 (特願2000-579144) 2)拒絶理由通知書 平成16年 9月27日 3)意見書・補正書 平成16年12月28日 4)拒絶査定 平成17年01月21日 5)拒絶査定不服審判請求 平成17年04月26日 6)補正 平成17年05月26日 7)拒絶審決 平成19年06月19日 8)審決取消訴訟 (請求認容) 平成20年06月24日 (実務の指針) 1) 発明に人の精神活動が含まれている、人の精神活動に関連するものであるが、発明の本質 が、人の精神活動を支援するための技術的手段を提供するものであり、自然法則を利用した 技術的思想の創作に該当するとして、審決を否定した判決である。 2) 構成要件の一部に人の行為により実現される要素が含まれ、また、発明を実施するために評 価、判断等の精神活動も必要となる場合であっても、全体として、発明の本質が人の精神活動 それ自体に向けられていない場合には、「発明」に該当する、としている点で注目される。 3) 発明に人の精神活動が含まれているとして、29条第1項柱書違反として拒絶理由を挙げられ た場合に、当該判例に依拠して補正することなく発明の本質が人の精神活動を支援する、又 はこれに置き換わる技術的手段を提供するものであるとして反論することも検討する。 4) 本事案の如く、人の精神活動を支援するような発明のような場合には、明細書に人の精神活 動を支援するための具体的なハードウェアの構成について記載するとともに、請求項に記載 する場合においても、ハードウェア側の処理として記載するのが望ましい。 (事件の内容) 1.請求項に規定された構成要素には、人に行為により実現される要素が含まれ、また、本願発明 を実施するためには、評価、判断等の精神活動も必要となるものと考えられるものの、明細書に記 載された発明の目的や発明の詳細な説明に照らすと、本願発明は、精神活動それ自体に向けら れたものとは言い難く、全体としてみると、コンピュータに基づいて機能する、歯科治療を支援する ための技術的手段を提供するものとして、発明に該当しないと認定した審決を取り消した。 2.(事案の概要) (発明の名称)「コンピュータに基づいた歯科治療システム」 (本願発明の構成)(平成16年12月28日付け手続補正により補正) A)歯科補綴材の材料,処理方法,およびプレパラートに関する情報を蓄積するデータベースを備 えるネットワークサーバと; B)前記ネットワークサーバへのアクセスを提供する通信ネットワークと; C)データベースに蓄積された情報にアクセスし,この情報を人間が読める形式で表示するための 1台または複数台のコンピュータであって少なくとも歯科診療室に設置されたコンピュータと; D)要求される歯科修復を判定する手段と; 1 E)前記歯科修復の歯科補綴材のプレパラートのデザイン規準を含む初期治療計画を策定する手 段とからなり, F)前記通信ネットワークは初期治療計画を歯科技工室に伝送し;また前記通信ネットワークは必 要に応じて初期治療計画に対する修正を含む最終治療計画を歯科治療室に伝送してなる,コンピ ュータに基づいた歯科治療システム。 (審決の認定) 歯科医師が,その精神活動の一環として,患者からの歯科治療要求を判定したり,初期治療計 画を策定するものであることは社会常識であるから,請求項1の『要求される歯科修復を判定す る』,『前記歯科修復の歯科補綴材のプレパラートのデザイン規準を含む初期治療計画を策定す る』の主体は,歯科医師であるといえる。そうすると,請求項1において,歯科医師が,その精神活 動の一環として『判定する』こと,『策定する』ことを,それぞれ『手段』と表現したものと認められ る。」「念のため,この点について,特許請求の範囲の記載以外の明細書の記載及び図面の記載 を見ても,『要求される歯科修復を判定する手段と;』と『前記歯科修復の歯科補綴材のプレパラー トのデザイン規準を含む初期治療計画を策定する手段とからなり』に関し,何らかの定義,即ち, 歯科医師が主体でない,或いは歯科医師の精神活動に基づくものでないなどの定義は記載され ていない。本願明細書の発明の詳細の説明には,『一般的に,歯科医師は初期治療計画および設 計要件を策定し,・・・』【0004】,『特定のケースにおいて,歯科医師は第一のステップとして患者 の歯の状態の複雑な検査及び診断を行う。これは,一般的に基礎歯周検査,臨床検査,放射線検 査,TMDスクリーニング等からなる。歯科医師はさらに患者の歯の状態の要求に応じた治療計画 を策定する・・・』【0011】,『・・・医師及び技工士は双方向歯科治療ネットワーク(“サイト”)にアク セスする前に共同で評価を行う。・・・』【0013】,『・・・提案とはここで重要な表現であり,これは採 用する治療方法の選択は最終的に歯科医師が決定するものであり,技工士またはサイトによって なされるものでないからである。・・・』【0018】との記載があって,歯科医師が,主体として,患者か らの歯科治療要求を判定したり,初期治療計画を策定することは開示されているが,『判定する手 段』,『策定する手段』については,特別な構成が採用されるなどの記載はなされていない。」「請求 項1は,当初の『双方向歯科治療方法』から『コンピュータに基づいた歯科治療システム』の発明に 補正され,『判定し』,『策定し』を『判定する手段』,『策定する手段』に補正しているが,『判定する 手段』,『策定する手段』に関して,上述のとおりその発明の特定事項として,歯科医師が主体の精 神活動に基づく判定,策定することを,上記『手段』と表現したものであるから,請求項1に係る発 明全体をみても,自然法則を利用した技術的創作とすることはできない。」「してみると,請求項1に 係る発明は,特許法第2条第1項で定義される発明,すなわち,自然法則を利用した技術的創作 に該当しないというほかない (本件明細書に開示された構成) (裁判所の認定) 「請求項に何らかの技術的手段が提示されているとしても,請求項に記載された内容を全体とし て考察した結果,発明の本質が,精神活動それ自体に向けられている場合は,特許法2条1項に 規定する『発明』に該当するとはいえない。他方,人の精神活動による行為が含まれている,又は 精神活動に関連する場合であっても,発明の本質が,人の精神活動を支援する,又はこれに置き 換わる技術的手段を提供するものである場合は,『発明』に当たらないとしてこれを特許の対象か ら排除すべきものではないということができる。」とした上で,「請求項1に規定された『要求される歯 科修復を判定する手段』及び『前記歯科修復の歯科補綴材のプレパラートのデザイン規準を含む 初期治療計画を策定する手段』には,人の行為により実現される要素が含まれ,また,本願発明1 2 を実施するためには,評価,判断等の精神活動も必要となるものと考えられるものの,明細書に記 載された発明の目的や発明の詳細な説明に照らすと,本願発明1は,精神活動それ自体に向けら れたものとはいい難く,全体としてみると,むしろ,『データベースを備えるネットワークサーバ』, 『通信ネットワーク』,『歯科治療室に設置されたコンピュータ』及び『画像表示と処理ができる装置』 とを備え,コンピュータに基づいて機能する,歯科治療を支援するための技術的手段を提供するも のと理解することができる。」「したがって,本願発明1は,『自然法則を利用した技術的思想の創 作』に当たるものということができ,本願発明1が特許法2条1項で定義される『発明』に該当しない とした審決の判断は是認することができない。」などとして、審決を取り消した。 以上 3