...

The ガラパゴスからの脱却(上) - Nomura Research Institute

by user

on
Category: Documents
1

views

Report

Comments

Transcript

The ガラパゴスからの脱却(上) - Nomura Research Institute
The ガラパゴスからの脱却(上)
―日本企業の強みを活かした新興国市場の攻略法―
価格と価値のバランスがめまぐるしく変わる時代・・・
アダムスミスの「神の見えざる手」が機能しない今、
もう一度価値を見直さなくてはならない
1.拡大する新興国市場
1.拡大する新興国市場
2.新興国展開における日本企業の現状・課題
2.新興国展開における日本企業の現状・課題
2009年1月
3.贅沢品を買い求め始める1万ドル世帯市場の勃興
3.贅沢品を買い求め始める1万ドル世帯市場の勃興
4.1万ドル世帯を取り込んで成功した日本企業
4.1万ドル世帯を取り込んで成功した日本企業
5.結論と隠された本質
5.結論と隠された本質
※本資料では1~3を紹介。4~5は2009年5月に掲載。
グローバル戦略コンサルティング一部
部長 北川 史和
近未来社会予測チーム
はじめに
ガラパゴス化とは何だったのか?
„ 問題は、日本市場が縮小し、海外進出を成功させなければ、
日本企業にとって成長は難しいということ
z 独自進化
(独自仕様の商品、
日本人中心の組織・マネジメント)
z 海外では別の種が栄える
(海外でデファクトスタンダード形成)
z 保護されないと生きていけない
(国際競争力がない)
z 一部の種は絶滅のおそれ
(国内市場は縮小)
Copyright(C) 2009 Nomura Research Institute, Ltd. All rights reserved.
1
はじめに
Theガラパゴスからの脱却と聞いて何を想像しますか?
ガラパゴスから
いきなり新興国に
連れてこられた
イグアナ
Copyright(C) 2009 Nomura Research Institute, Ltd. All rights reserved.
ガラパゴスから
華麗な転身を遂げた
イグアナ
2
1.拡大する新興国市場
庶民の憧れの白物家電では、
BRICsを中心に新興国市場が台頭してきている
電気冷蔵庫 需要国ベスト10 (2007年)
0
-
3,000
6,000
9,000
12,000
電子レンジ 需要国ベスト10 (2007年)
0
-
15,000
(千台)
①中国
②米国
③インド
④日本
⑤ブラジル
⑥ロシア
⑦韓国
⑧イギリス
⑨ドイツ
⑩フランス
3,000
6,000
9,000
12,000
15,000
(千台)
①米国
②中国
③日本
④イギリス
⑤ブラジル
⑥ロシア
⑦ドイツ
⑧フランス
⑧カナダ
⑩スペイン
電気洗濯機 需要国ベスト10 (2007年)
-0
6,000
12,000
①中国
②米国
③日本
④ロシア
⑤ドイツ
⑥イギリス
⑦フランス
⑧韓国
⑨インド
⑩スペイン
Copyright(C) 2009 Nomura Research Institute, Ltd. All rights reserved.
ルームエアコン 需要国ベスト10 (2007年)
0
18,000
(千台)
6,000
12,000
18,000
24,000
(千台)
①中国
②米国
③日本
④インド
⑤イタリア
⑥ブラジル
⑦サウジ
⑧トルコ
⑨スペイン
⑩台湾
出所) 日本電機工業会 「白物家電7品目の世界需要予測」
3
1.拡大する新興国市場
高級商品である薄型テレビや乗用車においても、
新興国のシェアは急激に高まってきている
„薄型テレビは、中国・その他地域のフラット化率が低く、今後も販売台数が拡大の見通し
„乗用車は、日本はマイナス成長だが、中国は年率38%成長、中南米は年率17%成長
薄型テレビの世界販売台数シェア
100%
18%
80%
(20%)
カッコ内は
各国フラット化率
29%
乗用車の世界販売台数シェア
100%
80%
(28%)
28%
37%
その他
中南米
60%
その他
(76%)
アジア(日・中除く)
中国
西欧
40%
中東欧
60%
中国
40%
西欧(EU)
米国
(82%)
20%
日本
(93%)
0%
2004
2007
出所) 電子情報技術産業協会 「AV主要品目世界需要予測」
Copyright(C) 2009 Nomura Research Institute, Ltd. All rights reserved.
北米
20%
日本
0%
2003
2006
出所) 日本自動車工業会 「世界自動車統計年報」
4
1.拡大する新興国市場
中国・インドでは、耐久消費財が普及期を迎えつつある
ロジスティック曲線と新興国における耐久消費財の世帯普及率
100
DVDプレーヤー/レコーダー
自動車
デジタルカメラ
デジタルカメラ
掃除機
DVDプレーヤー/レコーダー
90
世帯普及率(
%)
80
70
60
DVDプレーヤー/レコーダー
50
自動車
薄型テレビ
40
薄型テレビ
掃除機
30
20
10
最も普及が進むゾーン
自動車
デジタルカメラ
掃除機
薄型テレビ
インドでは
普及期直前の製品が多い
中国
インド
ブラジル
0
注) ロジスティック曲線は日本におけるカラーテレビの普及率をもとに算出、プロットは各国のアンケート結果(上位層における耐久消費財所有率)を使用
出所) 各種NRIアンケートより作成
Copyright(C) 2009 Nomura Research Institute, Ltd. All rights reserved.
5
1.拡大する新興国市場
日本企業全体を見ると、
グローバル展開できている企業はごく一部である
„ グローバル展開できている日本の製造業は、「精密機器」 「輸送用機器」「電気機器」
が中心
„ 日本の名目GDP比率は、世界の約10% ⇒グローバル展開の余地は大いにあり
海外売上高比率の企業数割合 (2007年)
1
0.8
海外売上高比率
0.6
51%~
31~50%
~30%
0.4
0.2
陸運業
石 油 ・石 炭 製 品
・
食料品
・
サ ー ビ ス業
・
建設業
パ ル プ ・紙
水 産 ・農 林 業
倉 庫 ・運 輸 関 連 業
鉱業
繊維製品
鉄鋼
金属製品
医薬品
Copyright(C) 2009 Nomura Research Institute, Ltd. All rights reserved.
卸売業
非鉄金属
化学
小売業
・
ゴ ム製 品
・
そ の他 製 品
情 報 ・通 信 業
ガ ラ ス ・土 石 製 品
機械
電気機器
輸送用機器
精密機器
海運業
0
・
注)上場企業のうち、海外売上高を公表している企業が母集団
出所) 東洋経済新報社 「会社四季報」よりNRI作成
6
1.拡大する新興国市場
「グローバル化の谷」の前で座して待つか?
M&Aを行って「グローバル化の谷」を越えるか?
トイレタリー業界・自動車業界の売上高と利益率の関係
【トイレタリー業界のフライフィッシング・カーブ】
14%
【自動車業界のフライフィッシング・カーブ】
12%
コルゲート・パルモリーブ
12%
ロレアル
チャーチ・アンド・ドワイト
6%
キンバリー・クラーク
グローバル化
の谷
いすゞ自動車
Hyundai Motor Company
Hyundai Heavy Industries
Limited
スズキAudi AG
Renault SA
富士重工業
Peugeot SA
日野自動車 マツダ
ダイハツ工業
グローバル化
の谷
4%
花王
4%
BMW AG
6%
エスティローダー
エイボン・プロダクツ
アルベルト・カルバー
8%
売上高営業利益率
売上高当期純利益率
8%
トヨタ自動車
本田技研工業
クロロックス
10%
日産自動車
10%
2%
Kia Motors Corporation
0%
三菱自動車工業
General Motors Corp.
Ford Motor Company
Daimler AG
Volkswagen AG
小林製薬
2%
ライオン
0%
0
-2%
50,000
サンスター
レブロン
Fiat
100,000
150,000
200,000
250,000
-2%
5,000
10,000
15,000
20,000
売上高(百万ドル)
-4%
売上高(百万円)
注) フライフィッシング・カーブ: 規模を拡大していった場合、ある閾値を超えると収益性に陰りが見え、さらに規模を獲得すると収益が上がる現象
(左) US1$ = 109.5円 1€ = US$0.675 、(右) US1$ = 120.96円 1€ =119.15円
出所) 各種財務情報よりNRI作成
Copyright(C) 2009 Nomura Research Institute, Ltd. All rights reserved.
7
2.新興国展開における日本企業の現状・課題
アンケートの実施要領
„ アンケート名:
「新興国市場における事業展開の現状に
関するアンケート調査」
„ 実施時期:
2008年8月18日~9月5日
„ 調査対象企業:
3カ国以上で海外展開し、うち1カ国以上が
新興国である製造業1,017社
„ 有効回収数:
103社(回収率:10.1%)
Copyright(C) 2009 Nomura Research Institute, Ltd. All rights reserved.
8
2.新興国展開における日本企業の現状・課題
重点を置く新興国市場は、中国・インド・タイの3ヶ国
„ 最重点と考える新興国市場としては、中国・インド・タイが多く挙げられており、
次いで、ロシア・ベトナム・マレーシア・インドネシアが多い
(N=95)
(N=101)
問11.貴社が最も重視している新興国市場(最重点新興国市場)はどこですか。
貴社が最も重視している新興国市場はどこか?
(N=95)
00
55
15
10
20
15
10
20
中国
中国
25
25
(社)
23
23
インド
インド
19
19
タイ
タイ
19
19
ロシア
ロシア
8
ベトナム
ベトナム
77
マレーシア
マレーシア
66
インドネシア
インドネシア
55
ブラジル
ブラジル
22
ドバイ・中東
ドバイ・中東
22
ASEAN
ASEAN
22
その他
その他
22
Copyright(C) 2009 Nomura Research Institute, Ltd. All rights reserved.
出所) NRI 「新興国市場における事業展開の現状に関するアンケート調査」
9
2.新興国展開における日本企業の現状・課題
現地で思うように商品が売れないことを問題視し、
「戦略が明確でない」とも言っている
„ 新興国市場における課題として、 「販売網が構築できない」、「戦略が明確で
ない」、 「価格競争力がない」を挙げている
(N=76)
問12.最重点新興国市場での事業展開において、問題に感じておられることを、
最重点国市場での事業展開で、問題に感じていることは?
(N=76 複数回答)
以下の選択肢からお選びください(○印はいくつでも)。
0%
5%
10%
15%
20%
25%
販売網が構築できない
課題1 販売網が構築できない
30.3%
30.3%
自社のブランドを確立できない
自社のブランドを確立できない
22.4%
契約行為など現地の法制度面への対応に苦労している
契約行為など現地の法制度面への対応に苦労している
19.7%
現地の人材が定着しない、すぐやめてしまう
現地の人材が定着しない、すぐやめる
18.4%
現地の人材が育たない、期待した成果が出ない
現地の人材が育たない、期待した成果が出ない
18.4%
製品・サービスのラインアップを揃えられない
製品・サービスのラインアップを揃えられない
現地での人材の採用がうまくいかない
現地での人材の採用がうまくいかない
17.1%
17.1%
現地に供給する製品・サービスの品質が安定しない
現地に供給する製品・サービスの品質が安定しない
14.5%
現地市場にフィットした製品・サービスの開発ができ
現地にフィットした製品・サービスが開発できない
ない
13.2%
安定的な物流網が構築できない
安定的な物流網が構築できない
7.9%
本社側で、どの国やどの顧客セグメントを攻めるべき
本社側で、国や顧客セグメントの攻めるべき優先順位が明確でない
かの優先順位が明確でない
6.6%
技術力の高いOEM先が見つからない
技術力の高いOEM先が見つからない
その他
その他
Copyright(C) 2009 Nomura Research Institute, Ltd. All rights reserved.
35%
31.6%
現地市場をどのように攻めるか、戦略が明確でない
課題2 現地市場をどのように攻めるか、戦略が明確でない
現地市場における価格競争力がない
課題3 現地市場における価格競争力がない
本社側で、当該新興国市場が重視されていない
本社側で当該新興国市場が重視されていない
30%
3.9%
0.0%
19.7%
出所) NRI 「新興国市場における事業展開の現状に関するアンケート調査」
10
2.新興国展開における日本企業の現状・課題
課題1:なぜ、販売網の構築が進まないのか?
⇒ そもそも、販売を行う前の段階でつまづいている
„ 販売網を構築できない理由で最も多く挙げられたのは、「製品・サービスの知
名度が低い」 (40.5%)である。販売をどう行うか以前のところで、つまづいて
いる
現地市場における販売網は構築できているか。できていない理由は? (N=74 複数回答)
0%
5%
10%
15%
20%
25%
30%
35%
販売する製品・サービスの知名度が低い
販売する製品・サービスの知名度が低い
29.7%
よい提携相手が見つからない
よい提携相手が見つからない
18.9%
販売店の条件(価格面)で折り合いがつかない
販売店の条件(価格面)で折り合いがつかない
8.1%
製品・サービスの特性が現地の商習慣になじまない
製品・サービスの特性が現地の商習慣になじまない
販売金融面での支援体制が十分に組めない
販売金融面での支援体制が十分に組めない
その他
その他
Copyright(C) 2009 Nomura Research Institute, Ltd. All rights reserved.
45%
40.5%
販売する製品・サービスの力(品質や価格)が弱い
販売する製品・サービスの力(品質や価格)が弱い
販売店の条件(販売支援のための人材派遣など)で
販売店の条件(販売支援のための人材派遣など)で折り
合いがつかない
折り合いがつかない
40%
6.8%
2.7%
0.0%
21.6%
出所) NRI 「新興国市場における事業展開の現状に関するアンケート調査」
11
2.新興国展開における日本企業の現状・課題
課題2:なぜ、戦略が明確でないのか?
⇒ 戦略方針は明確だが、現地への理解が不十分
„ 戦略が明確でない理由としては、「現地における顧客の状況がよく判らない」
という回答が目立つ
(N=80)
新興国市場に対する戦略は明確か。明確でない理由は? (N=80 複数回答)
0%
5%
10%
15%
20%
現地における顧客の状況がよく判らない
現地における顧客の状況がよく判らない
20.0%
現地に戦略を描くスキルを持った人材がいない
現地における競合他社の状況がよく判らない
20.0%
現地における競合他社の状況がよく判らない
現地に戦略を描くスキルを持った人材がいない
18.8%
今まで戦略を明確にして取り組んだことがない
今まで戦略を明確にして取り組んだことがない
15.0%
現地には十分権限がない
現地には十分権限がない
6.3%
現地をマネジメントするトップが、頻繁に入れ替わる
現地をマネジメントするトップが頻繁に入れ替わる
現地に対する戦略は必要でない
現地に対する戦略は必要ではない
その他
その他
Copyright(C) 2009 Nomura Research Institute, Ltd. All rights reserved.
25%
3.8%
1.3%
10.0%
出所) NRI 「新興国市場における事業展開の現状に関するアンケート調査」
12
2.新興国展開における日本企業の現状・課題
課題3:なぜ、価格競争力が弱いのか?
⇒ 過剰仕様も、現地への理解が不十分だから?
„ 価格競争力が弱い理由として最も多く挙げられたのが、「製造コストが高い」
(39.0%)である。次いで、「現地のニーズレベルに対して製品・サービスの仕
様が高すぎる」(29.9%)となっている
現地市場で貴社製品・サービスの競争力は高いか。高くないのはなぜか? (N=77 (N=77)
複数回答)
0%
5%
10%
15%
20%
25%
30%
35%
製造コストが高い
製造コストが高い
29.9%
販売量が少ないことが固定費負担を大きくしている(コ
販売量が少なく固定費負担が大きい
スト全般を高くしている)
22.1%
物流コストが高い(移動中の破損や保険代の高さなどを
破損や保険分も含めて物流コストが高い
含む)
16.9%
販売コストが高い(流通マージン、販促リベート、小売
流通マージンなど販売コストが高い
店棚コストなどを含む)
16.9%
市場を確保するための戦略的な低価格設定ができない
市場拡大のための戦略的な低価格設定ができない
16.9%
市場でのブランドステイタスが低いために高価格が消費
ブランド認知が低いために高価格が受け入れられない
者から受け入れられない
宣伝活動やフェア等の費用負担が大きい
宣伝活動やフェア等の費用負担が大きい
その他
その他
Copyright(C) 2009 Nomura Research Institute, Ltd. All rights reserved.
45%
39.0%
現地のニーズレベルに対して製品・サービスの仕様が高
現地ニーズに対して製品・サービスの仕様が高すぎる
すぎる
運営資金コストが高い
運営資金コストが高い
40%
14.3%
6.5%
5.2%
10.4%
出所) NRI 「新興国市場における事業展開の現状に関するアンケート調査」
13
2.新興国展開における日本企業の現状・課題
現実を認識すれば、日本企業のグローバル化はそれなりに
やり方を考える必要がある
„日本的経営を一気にあきらめて、「グローバル化の谷」を越えなさいとは言え
ない
アンケート上の課題
インタビューを踏まえたアンケートの解釈
z 知名度がなく、販売網が充分では
ない
z ターゲット顧客、セグメントへの理解
不足
z 顧客への理解が不足しており、
どのように攻めるか戦略が不明確
z 自らのコアコンピタンスへの理解と同
時に、チャレンジの本質への理解も
不足
z 製造コストが高く、競争力がない
z M&AやOEMにも積極的ではない
z 標準化への取り組みはこれから
z 「現地で知られていない」中で、ブラン
ド・ストーリーをどうするかが悩み
z 短期的な成果を求められる
z 日本的マネジメントから離れられない
出所) NRI 「新興国市場における事業展開の現状に関するアンケート調査」、及び中国・インド・タイ・フィリピン・ブラジル経営者へのインタビュー
Copyright(C) 2009 Nomura Research Institute, Ltd. All rights reserved.
14
2.新興国展開における日本企業の現状・課題
液晶テレビでは、韓国勢の活躍が目立つ
„ 新興国の液晶テレビのシェアは、韓国勢が目立つ。日本勢ではソニーが健闘
している
液晶テレビの販売シェア (台数ベース)
ソニー
14.8%
その他
42.6%
シャープ
4.4%
その他
10.8%
サムスン
PHILIPS
13.6%
サムスン
36.8%
東芝
5%
その他
4%
LG
30%
ソニー
8%
6.6%
中国
VIDEOCON
インド
ブラジル
8.3%
東芝
8.3%
LG
8.3%
シャープ
12.4%
LG
15.9%
PHILIPS
18%
ソニー
17.2%
サムスン
29%
出所) 中国: 市場調査会社奥維コンサルティング調べ(2008年)、インド: TV VEOPAR JOURNAL, Feb.08 (2007年)、ブラジル: 各種資料よりNRI推計(2007年)
Copyright(C) 2009 Nomura Research Institute, Ltd. All rights reserved.
15
2.新興国展開における日本企業の現状・課題
サムスンは新興国で、
ハイエンドからローエンドまで全面展開している
„ ローエンドの白物家電で稼いだ収益を、液晶テレビのブランド投資に活かし
ている
サムスンの新興国市場における商品ラインアップ
z白物家電で収益基盤を形成
z白物家電で得た収益を液晶テレビの広告宣伝・販促費に投入
面で商品ラインをそろえる
ブランド認知
①TV
②通信
液晶テレビ
携帯電話
ブランド投資
ブランド投資
③白物家電
電子
レンジ
収益性
Copyright(C) 2009 Nomura Research Institute, Ltd. All rights reserved.
冷蔵庫
洗濯機
エアコン
収益基盤
出所) 各種資料よりNRI作成
16
2.新興国展開における日本企業の現状・課題
韓国メーカーは、新興国で大量の広告宣伝を行っている
„ LGは、インド国民が好きなクリケット、映画のスポンサーとなって認知度を
向上させている
【クリケット】
z 家電部門の単独スポンサー契約を締結
z 2回のワールドカップ及び9回の国際大会のスポンサー
z クリケット公式テレビ5,000台を限定発売。プレミアム戦略を進めた
【インド映画(ボリウッド)】
z インドで最高の人気を誇る映画俳優のアビシェーク・バッチャンをモデルに
起用し、イメージマーケティングを行った
„ 韓国の電機メーカーは、新興国市場における「積極的な宣伝」投資を年間
数十億円という単位で行っている
z 相当程度の事業規模と収益源となる事業を持ち、ブランドを育てている
Copyright(C) 2009 Nomura Research Institute, Ltd. All rights reserved.
出所) 各種資料よりNRI作成
17
2.新興国展開における日本企業の現状・課題
LGは徹底したローカル向け開発で、きめ細かく対応している
„ インドで製品開発に携わる現地エンジニア数は200人以上にのぼり、現地の
市場特性を踏まえた開発を行っている
LGのインド向け商品開発例
【テレビ】
【冷蔵庫】
z低音出力の強化
(低音重視の嗜好に合わせて)
z10の言語を予め内蔵した字幕機能
z不安定な電圧に対応したコンデンサー
開発
zドアロック機能
(メイドが開けられないように)
z野菜用の冷蔵室の拡大
(ベジタリアン対応)
【洗濯機】
【電子レンジ】
zインド料理も調理可能な機能
z洗濯羽のない洗濯機
(サリーが傷まないように)
zドラム洗濯機
(水不足に対応、水の消費量の減少)
出所) 裵河鎭 「LG電子・サムスン電子」、企業研究会 「インドビジネス実務ガイド」(2007年)
Copyright(C) 2009 Nomura Research Institute, Ltd. All rights reserved.
18
2.新興国展開における日本企業の現状・課題
しかし、所得が高くなると日本製品を嗜好する傾向も
うかがえる。何かが足りない
„ 所得水準の高いブラジルになってくると、栄華を極めた韓国勢にもブランド力
の面で陰りが出てくる
„ 現地の店頭インタビュー調査でも、「お金があればソニーが欲しい」という意見
が多い
好きなメーカー/ブランドは? (ブラジル N=623)
世帯所得
US$ 4,700~11,700
0%
50%
ソニー(BRAVIA)
16.8%
9.1%
50%
パナソニック(VIERA)
2.4%
シャープ(AQUOS)
0.5%
14.1%
7.8%
9.1%
Copyright(C) 2009 Nomura Research Institute, Ltd. All rights reserved.
100%
US$ 23,300 ~
0%
50%
36.6%
28.4%
LG
PHILIPS
0%
30.3%
サムスン
Semp TOSHIBA /東芝
(REGZA)
100%
US$ 11,700~23,300
39.0%
9.5%
3.8%
22.4%
3.4%
0.0%
100%
20.5%
2.9%
0.5%
10.7%
15.7%
注) 1Real = US$0.432
出所) NRI 消費者調査、及び店頭インタビュー (ブラジル 2008年)
19
3.贅沢品を買い求め始める1万ドル世帯市場の勃興
注) 本資料では新興国における所得1万ドル以上4万ドル未満の世帯を「1万ドル世帯」と定義。
„韓国流は全てにおいてうまくいっているわけで
はない。日本は日本流の考え方を見出さなくて
はならない
„現地でのグループインタビューをしていて我々
は気がついた。新興国で1万ドル程度の世帯所
得があると、結構贅沢な暮らしをしているという
ことを
Copyright(C) 2009 Nomura Research Institute, Ltd. All rights reserved.
20
3.贅沢品を買い求め始める1万ドル世帯市場の勃興
世帯所得が1万ドルを超えると、
贅沢品への関心が高まり、「極楽係数」が上昇する
今後1年間に、あなたの家庭ではどんなことに積極的にお金を使いたいか? (ブラジル N=623 複数回答)
US$ 4,700~11,700
世帯所得
0%
50%
1. 外食
2. 美容
100%
40.9%
37.6%
55.3%
11. 住宅設備関連
53.8%
21.6%
41.8%
Copyright(C) 2009 Nomura Research Institute, Ltd. All rights reserved.
54.3%
60.5%
57.1%
70.0%
71.2%
84.8%
58.0%
55.2%
28.1%
63.9%
71.4%
67.8%
25.4%
46.2%
61.0%
62.9%
36.1%
10. 娯楽、交際費
100%
73.3%
62.4%
60.1%
33.2%
50%
46.7%
66.3%
8. 自分自身の教育、学習関連
0%
65.9%
48.6%
7. 旅行費用
US$ 23,300 ~
62.0%
59.1%
6. 趣味、レクリエーション関連
14. 投資
100%
63.5%
5. 自動車
13. 預金
50%
60.1%
4. 家具、インテリア、寝具
12. 生命保険、損害保険
0%
49.0%
3. 家電製品
9. 家族の教育、学習関連
US$ 11,700~23,300
55.7%
29.5%
49.3%
41.0%
50.0%
52.9%
注) 1Real = US$0.432
出所) NRI 「消費者調査」 (ブラジル 2008年)
21
3.贅沢品を買い求め始める1万ドル世帯市場の勃興
消費に対して貪欲なお国柄。貯蓄率は高い
今後1年間に、あなたの家庭ではどんなことに積極的にお金を使いたいか? (中国 N=5,242 複数回答)
世帯所得
~ US$ 7,300
0%
50%
1. 外食
US$ 7,300~14,600
100%
0%
50%
32.0%
12.1%
17.1%
3. 家電製品
11.3%
15.9%
5. 自動車
8.9%
7. 旅行費用
8. 自分自身の教育、学習関連
10. 娯楽、交際費
12. 生命保険、損害保険
14.6%
52.0%
37.3%
57.6%
6.3%
42.7%
4.1%
9.6%
35.1%
33.3%
6.1%
4.0%
45.5%
11.5%
13. 預金
14. 投資
11.1%
49.6%
4.9%
11. 住宅設備関連
20.7%
3.5%
17.6%
48.2%
19.9%
58.7%
16.7%
Copyright(C) 2009 Nomura Research Institute, Ltd. All rights reserved.
100%
8.6%
38.4%
9. 家族の教育、学習関連
50%
45.5%
8.4%
2.1%
6. 趣味、レクリエーション関連
0%
40.4%
2. 美容
4. 家具、インテリア、寝具
100%
US$ 14,600 ~
26.3%
60.3%
27.0%
53.5%
62.6%
52.0%
注) 1RMB = US$0.146
出所) NRI 「消費者調査」 (中国 2007年)
22
3.贅沢品を買い求め始める1万ドル世帯市場の勃興
教育投資が旺盛で堅実。貯蓄率も高い
また、消費に対しては堅実さが目立つ
今後1年間に、あなたの家庭ではどんなことに積極的にお金を使いたいか? (インド N=1,510 複数回答)
世帯所得
~ US$ 2,100
0%
50%
1. 外食
2. 美容
50%
27.9%
38.3%
29.4%
29.9%
12.2%
34.9%
26.5%
34.5%
26.0%
8.3%
37.1%
15.2%
19.8%
69.3%
20.4%
66.6%
31.3%
49.5%
34.2%
13. 預金
Copyright(C) 2009 Nomura Research Institute, Ltd. All rights reserved.
67.5%
29.9%
40.2%
34.0%
43.8%
66.1%
15.3%
100%
17.3%
8.3%
11. 住宅設備関連
0%
46.7%
33.0%
2.9%
9. 家族の教育、学習関連
14. 投資
100%
18.6%
42.8%
7. 旅行費用
12. 生命保険、損害保険
50%
39.6%
6. 趣味、レクリエーション関連
10. 娯楽、交際費
0%
US$ 10,600 ~
43.7%
8.6%
4. 家具、インテリア、寝具
8. 自分自身の教育、学習関連
100%
27.8%
3. 家電製品
5. 自動車
US$ 2,100~10,600
51.3%
71.0%
27.2%
73.6%
27.9%
注) 1Rupee = US$0.0212
出所) NRI 「消費者調査」 (インド 2007年)
23
3.贅沢品を買い求め始める1万ドル世帯市場の勃興
世帯所得が1万ドルを超えたところから、
日本企業が得意な中型車を乗り始める
„ 世帯所得が1万ドルを超えると、小型車を持つことは当たり前になってくる
„ 1万ドルを超えると、中型車を購買する層が増え始める
自動車保有者の世帯所得 (中国 N=312)
100%
90%
80%
70%
60%
50%
40%
30%
14,660
~21,990ドル
47%
10,262
~14,660ドル
23%
20%
14,660
~21,990ドル
10,262
~14,660ドル
10%
14,660
~21,990ドル
6%
0%
小型車
(1リッター前後)
Copyright(C) 2009 Nomura Research Institute, Ltd. All rights reserved.
10,262
~14,660ドル
中型車
大型車
(2リッター前後)
(3.5リッター以上)
146,600ドル
以上
102,620
~14,660ドル
73,300
~10,262ドル
58,640
~73,300ドル
43,980
~58,640ドル
36,650
~43,980ドル
29,320
~36,650ドル
21,990
~29,320ドル
14,660
~21,990ドル
10,262
~14,660ドル
7,330
~10,262ドル
7,330ドル
以下
注) 1RMB = US$0.146
出所) NRI 「中国自動車アンケート」 (2007年)
24
3.贅沢品を買い求め始める1万ドル世帯市場の勃興
新興7カ国における世帯当り年間所得分布の予測
(~2020年)
„ 世界銀行の統計( World Bank,“ International Development Statistics” )をもとに、可処分所得についての世
帯所得階層別(上位20%から下位20%までの5階層)データを、対数ロジスティック分布に基づいて連続曲線に
変換
„ 一人当たりGDPの成長に伴って、各国の所得分布がどう推移するかを推計する際に、短期的には各国の実績
データの傾向を用いたうえ、中・長期的には韓国の実績データを参照。人口の伸びの予測は国連推計を活用、
各国GDPの今後の成長についてはIMFのデータに加え、2015年以降はNRI推計
6.00%
6.00%
中国
5.00%
6.00%
インド
06
07
07
5.00%08
5.00%08
08
09
09
09
10
10
4.00%
3.00%
11
11
11
12
12
12
3.00%13
3.00%13
13
14
14
14
15
15
2.00%
1.00%
2.00%
16
16
16
17
17
17
1.00%18
1.00%18
18
19
19
19
20
20
20
0.00%
0.00%
0
10,000
20,000
30,000
40,000
年
4.00%
15
2.00%
06
07
10
4.00%
ブラジル
06
0.00%
0
10,000
(US$)
Copyright(C) 2009 Nomura Research Institute, Ltd. All rights reserved.
20,000
30,000
40,000
0
10,000
20,000
30,000
40,000
(US$)
(US$)
出所) World Income Distribution 2008-09, Euromonitor International;
25
World Development Indicators,各年版, World BankよりNRI予測
3.贅沢品を買い求め始める1万ドル世帯市場の勃興
新興7カ国における世帯当り年間所得分布の予測
(~2020年)
タイ
6.00%
年
06
07
タイ
5.00%
インドネシア
6.00%
06
年
07
08
5.00%
08
09
09
10
10
4.00%
4.00%
11
11
12
12
13
3.00%
13
3.00%
14
14
15
15
2.00%
2.00%
16
16
17
17
18
1.00%
18
1.00%
19
19
20
20
0.00%
0.00%
0
10,000
6.00%
20,000
30,000
40,000
(US$)
0
6.00%
マレーシア
06
年
07
08
5.00%
5.00%
20,000
ベトナム
ベトナム
30,000
40,000
(US$)
06
年
07
08
09
09
10
10
4.00%
10,000
4.00%
11
11
12
3.00%
13
12
3.00%
14
14
15
2.00%
2.00%
16
18
17
1.00%
19
0.00%
0
10,000
20,000
30,000
40,000
Copyright(C) 2009 Nomura Research Institute, Ltd. All rights reserved.
18
19
20
0.00%
15
16
17
1.00%
13
20
0
10,000
20,000
30,000
40,000 (US$)
(US$)
出所) World Income Distribution 2008-09, Euromonitor International;
World Development Indicators,各年版, World BankよりNRI予測
26
3.贅沢品を買い求め始める1万ドル世帯市場の勃興
新興7カ国における所得1万ドル以上の世帯数は、
2010年に全世帯の2割超、2018年には約半数になる
新興7カ国における所得別世帯数の予測 (~2020年)
ブラジルワールドカップ
2014年
上海万博
南アフリカワールドカップ
2010年
16.1%
18.7%
21.7%
24.9%
28.3%
31.6%
35.3%
39.0%
42.7%
46.1%
49.4%
52.4%
1万ドル以上世帯の比率
全世帯の約半数に
全世帯の20%を超える
1.1%
1.3%
1.4%
1.6%
1.8%
55.1%
1.9%
2.2%
2.5%
3.0%
3.5%
(億世帯)
10
4.1%
4.8%
5.6% (うち4万ドル以上世帯の比率)
5億2,050万世帯
4万ドル以上世帯
1億1,890万世帯
8
世帯数
1万ドル以上
4万ドル未満世帯
6
4
1万ドル未満世帯
2
0
08
09
10
11
12
13
Copyright(C) 2009 Nomura Research Institute, Ltd. All rights reserved.
14
15
16
17
18
19
20 (年)
出所) World Income Distribution 2008-09, Euromonitor International;
World Development Indicators,各年版, World BankよりNRI予測
27
3.贅沢品を買い求め始める1万ドル世帯市場の勃興
所得1万ドル以上の世帯数の国別構成比
所得1万ドル以上の世帯数の国別構成比
【2008年】
【2020年】
ブラジル
12%
ブラジル
29%
ベトナム
0%
ベトナム
1%
1億1,890万世帯
中国
53%
タイ
5%
マレーシア
3%
インドネシア インド
4%
6%
タイ
3%
5億2,050万世帯
中国
69%
マレーシア
1%
インドネシア
7%
インド
7%
出所) World Income Distribution 2008-09, Euromonitor International;
World Development Indicators,各年版, World BankよりNRI予測
Copyright(C) 2009 Nomura Research Institute, Ltd. All rights reserved.
28
3.贅沢品を買い求め始める1万ドル世帯市場の勃興
所得4万ドル以上の世帯数の国別構成比
所得4万ドル以上の世帯数の国別構成比
【2008年】
【2020年】
中国
66%
中国
38%
ブラジル
49%
864万世帯
5,289万世帯
インド
3%
ベトナム
0%
タイ
4%
インドネシア
1%
マレーシア
5%
ブラジル
24%
ベトナム
0%
タイ
3%
インド
2%
インドネシア
マレーシア
2%
3%
出所) World Income Distribution 2008-09, Euromonitor International;
World Development Indicators,各年版, World BankよりNRI予測
Copyright(C) 2009 Nomura Research Institute, Ltd. All rights reserved.
29
1.拡大する新興国市場
2.新興国展開における日本企業の現状・課題
3.贅沢品を買い求め始める1万ドル世帯市場の勃興
4.1万ドル世帯を取り込んで成功した日本企業
5.結論と隠された本質
注) 本資料では新興国における所得1万ドル以上4万ドル未満の世帯を「1万ドル世帯」と定義。
上記4~5は「The ガラパゴスからの脱却(下)」とし、2009年5月にご紹介します。
Copyright(C) 2009 Nomura Research Institute, Ltd. All rights reserved.
30
Fly UP