Comments
Description
Transcript
2009 年度 日本赤十字社・ケニア赤十字社 地域保健強化事業(愛ホップ
2009 年度 日本赤十字社・ケニア赤十字社 地域保健強化事業(愛ホップ)の概要 アース製薬株式会社様によるストップモスキートプロジェクト 東アフリカのケニア共和国は、都市部を中心とした経済発展にもかかわらず、5 歳未満児の 死亡率が出生 1,000 件に対し、97 件(1990 年)から 121 件(2007 年)と年々増加傾向にあり、 度重なる干ばつが引き起こす食糧不足と不十分な保健医療サービスが、子どもの健康に深刻な 影響を及ぼしています。 5 歳未満の子どもの死亡原因では、マラリア、麻疹、肺炎や下痢などの予防や治療が可能な 感染症が約 50%、次いで早産や新生児期重症感染症、分娩時胎児仮死などの予防や治療が可能な 新生児特有の原因が 24%を占め、公衆衛生や医療の環境が改善されれば死亡率の低下に繋がりま す。 こうした状況を改善するために、日本赤十字社はケニア赤十字社とともに 2007 年(平成 19 年)11 月から、5 歳未満児の疾病と死亡の減少に貢献するために地域保健強化事業を開始 しました。事業を行うのは、首都ナイロビから北東へ約 300 キロメートルに位置するイシオロ (ガルバチューラ県)で、首都ナイロビからは車を使っても丸一日以上かかります。同県の多く は乾燥地帯で農耕地が少なく、住民の多くは牧畜で生計を立てています。慢性的な渇水と雨期の 洪水により、食糧不足や感染症などによる危機が深刻化している地域です。 2009年は、アース製薬株式会社による「ストップモスキートプロジェクト」によるご支援を 頂くなどして、地域保健師やボランティアの養成を通じて住民を対象とした保健教育を実施した ほか、月1回の訪問診療(子どもの栄養状態の確認、栄養剤の配布、妊産婦検診など)、マラリ アの感染予防を目的に蚊帳の配付等を行いました。また並行して、事業対象地域内の保健医療 施設を対象に、給水や給電設備、医療機材、無線機材の整備を行い、現地の保健医療サービスの 改善に取り組みました。 2010年 4月28日 2009年度活動実績報告書 事業名 ケニア赤十字社地域保健強化事業(愛ホップ) 事業地 ケニア共和国 ガルバチューラ県(旧イシオロ県東部) 予算 2,080万円(うち1,000万円は、アース製薬株式会社による「ストップモスキートプロジェクト」に よる寄付金を充当) 事業目標 感染症(マラリア、下痢症、肺炎及び予防接種で予防可能な疾病)及び新生児特有の病因による5 歳未満児の疾病及び死亡の減少に貢献する。 活動内容(1) 住民の健康改善のための行動変容(より健康になるための行動の変化)の普及 ① 地域保健師と赤十字ボランティアを通じた地域における衛生教育の普及 85人の地域保健師と赤十字ボランティアが、延べ5,277人の住民を対象にマラリアの感染 ア 予防、飲料水の水質と衛生管理、母乳育児を中心とした乳幼児の栄養管理等の衛生教育を 実施した。 イ 延べ6,432人を対象に母乳育児、殺虫剤を塗布した蚊帳の使用、子どもの予防接種、清潔 な飲料水の重要性と健康促進にかかるメッセージを普及した。 ウ 地元で入手可能な材料を使用したトイレを事業対象地域内の60%の世帯が整備(事業実施 前は34%のみ)した。 母子保健・栄養改善週間では「下痢症状の防止と治療」をテーマにキャンペーンを実施 エ し、延べ約7,000人を対象にテーマに関するメッセージを伝えるとともに、下痢による脱 水症状の治療に使用する経口補水塩(ORS)の作り方と使用方法を紹介した。 オ 4ヶ所の診療所の壁面に公衆衛生の重要性を訴えるメッセージを描いた。 ② コミュニティーでの公衆衛生活動の推進 県内でコレラが発生(死者2名、感染者22名)した際に、感染防止と抑制方法の研修を受 ア 講した29人の地域保健師と赤十字ボランティアが、2,600世帯を対象に浄水剤27,000錠を 配布し、住民にその適切な使用方法を指導することで、感染の拡大に努めた。 ③ 巡回診療の実施(保健医療施設へのアクセスが困難な7地区を対象に毎月1回の移動診療を実 施) ア 延べ7,869人を対象に診察と治療を実施した。 イ 1歳未満の子ども885人に予防接種を実施、県内の予防接種率が事業を開始した2007年の 65%から2009年には86%にまで改善した。 ウ 5歳未満の子ども1,068人と母親262人の栄養状態の検査を実施した。 エ 子ども757人と授乳中の母親211人にビタミンAの補給剤を提供した。 オ 784人の住民を対象に虫下し薬を処方した。 カ 浄水剤27,000錠を配布した。 ④ マラリア予防活動 ア 205張の蚊帳に薬剤を再塗布し、妊産婦と1歳未満の子どものいる世帯を対象に蚊帳779張 を配布した。 イ 861戸の住宅の壁と屋根の内側に殺虫剤を散布した。 ウ 300ヶ所のトイレに殺虫剤を散布した。 活動内容(2) 保健医療施設(県立病院、保健センター、診療所)の機能強化 ① 保健医療施設のインフラ整備 保健医療施設にソーラーパネルやバッテリー等の給電設備が新たに整備、又は更新され、 ア 無線機材、パソコン、院内の照明、ワクチンを保存する冷蔵庫等の使用が可能となり施設 機能が向上した。 イ 県立病院内の新生児室、分娩室、事務所の11ケ所に照明が設置され、夜間の分娩や救急患 者の治療が可能となり、救急患者への対応能力が向上した。 県立病院の照明が整備された月以降の月間平均分娩数は5件から20件に増加した。医療施 ウ 設での安全な分娩の推進に貢献しており、2009年8月の月間分娩数は過去最多の27件を記 録した。 エ 給電設備の強化により事業地内全ての医療施設間での無線交信が可能となり、施設間での 薬剤や医療資材の在庫報告とその供給要請を随時行うことが可能となった。 オ 今後は無線網を使った医療施設間での患者搬送体制の強化が課題となっている。 カ 分娩室の老朽化した排水処理設備の改修を行い、室内の衛生環境が改善した。 ② 保健医療施設への医療機材の整備 ア ガルバチューラ県保健局管下施設に対して医療機材(医薬品、分娩台、分娩器具、ベッ ド、酸素濃縮器、加圧減菌器等)を整備した。 ③ 保健医療施設へのその他の機材の整備 ア 活動内容(3) 地域保健師と赤十字ボランティアが活動に使用するオートバイ2台と自転車60台を整備し た。 ケニア赤十字社イシオロ県支部の事業実施基盤の整備 ① 事業管理と県内の関係機関との調整 ア 事業担当者と17の各地区のリーダーが、毎月又は半月毎に参集して、事業の進捗、課題、 経験の共有を行う連絡調整会議を開催した。 イ 事業対象地の17地区の指導者など102人を対象に事業説明を行い、事業への理解と協力を 要請した。 ウ 事業計画を県保健局、保健医療施設、各地区の指導者に共有した。 エ 日赤派遣要員が毎月1回実施する移動診療に同行し、事業の進捗状況をモニタリングし た。 ② 県支部事務所の整備 ガルバチューラ県に出張事務所が開設され、これまで定期的にイシオロ県支部から事業地 ア のガルバチューラ県に通っていた事業担当者の常駐が可能となり、関係者やボランティア との日常的な協議や事業の調整、モニタリングを円滑に行えるようになった。 2009年IHOP事業 会計報告書 通貨:日本円 コード 活動項目 AC 1032 マラリア予防資材の購入 蚊帳の調達・配布 住居への殺虫剤散布 小計 医療器材の整備 医薬品、分娩台、分娩器具、救命マスク、ベッド、酸素濃縮 器、加圧滅菌器 小計 合計 AC 1034 保健医療施設の整備 無線機材、ソーラーパネル等 分娩室の給排水設備の設置 合計 AC 1034 移動診療 移動診療 マラリア予防教育 母子保健・栄養改善週間キャンペーン 合計 AC 1031 公衆衛生推進活動 参加型公衆衛生推進活動再講習会 衛生環境改善活動 衛生救急法再講習 合計 AC 0462 地域の能力強化 ボランティア研修 衛生教育 小計 AC 1021 情報媒体の作成 パンフレット、ポスター等作成 小計 AC 0451 職員、ボランティア研修 職員、ボランティア研修 小計 AC 0552 事業モニタリング 、 評価 職員出張費 ガソリン代 小計 AC 0301 事業調整 、関係者との ネットワーク構築 事業関係者会議 四半期事業調整会議 小計 AC 0151 支部の基盤整備 支部建物建設支援 事務所備品 小計 AC 0158 事業実施能力の強化 事業担当者給与 県支部事務所賃貸料補助 事務機器整備 通信費 ガソリン代 小計 事業費総計 事業管理費(事業費総額の5%) 総合計 予算額 支出額 収支差額 287,100 211,700 498,800 363,770 30,495 394,265 -76,670 181,205 104,535 3,480,000 853,991 2,626,009 3,480,000 3,978,800 853,991 1,248,256 2,626,009 2,730,544 2,067,120 2,320,000 4,387,120 3,043,903 987,655 4,031,558 -976,783 1,332,345 355,562 1,604,280 103,820 490,100 2,198,200 3,425,509 193,616 478,563 4,097,687 -1,821,229 -89,796 11,537 -1,899,487 234,204 252,300 353,858 840,362 184,383 188,951 383,382 756,717 49,821 63,349 -29,524 83,645 533,600 640,320 1,173,920 832,856 345,016 1,177,872 -299,256 295,304 -3,952 220,400 220,400 326,853 326,853 -106,453 -106,453 252,880 252,880 93,519 93,519 159,361 159,361 403,680 0 403,680 419,759 162,416 582,175 -16,079 -162,416 -178,495 237,800 83,520 321,320 226,163 164,466 390,629 11,637 -80,946 -69,309 1,740,000 0 1,740,000 80,572 159,055 239,627 1,659,428 -159,055 1,500,373 3,860,253 174,000 97,440 167,040 0 4,298,733 19,815,415 990,771 20,806,185 4,234,274 186,560 127,115 129,956 1,000,926 5,678,831 18,623,725 931,186 19,554,911 -374,021 -12,560 -29,675 37,084 -1,000,926 -1,380,098 1,191,690 59,585 1,251,275 2009年12月31日換算レート:1ケニアシリング=1.16円 事業費のうち、10,000,000円は、アース製薬株式会社様からのご寄付により実施いたしました。 2009 年 IHOP 事業 活動報告写真 (1)-③ 移動診療で薬を処方する五十嵐要員(中央) (1)-②-ア コレラ発生時に住民を対象に感染予 防方法を教える赤十字ボランティア (1)-④-ア 研修会に参加する赤十字ボランティアと 地域保健師 (2)-①-エ (1)-④-ア 蚊帳とマラリア予防薬を受取る妊 産婦 蚊帳を受け取る女性 無線を使用する地域保健師 (1)-③-イ 予防接種を受ける子供 事業地の子供たち (1)-①-ウ 地域で入手可能な材料で作ら れたトイレ (1)-③ 移動診療で活躍するケニア赤ボランティア (1)-④-イ (1)-①-ウ 殺虫剤の散布作業 トイレの内部 (2)-②-ア (2)-①-ア (2)-②-ア 医療機材の贈呈式 ガルバチューラ県立病院に設置さ れたソーラーパネル ガルバチューラ県立病院に整備 されたベッド マルカダ診療所に設置された 36 メートルの 無線中継アンテナ (2)-①-カ (1)-①-オ ガルバチューラ県立病院の分娩室 で改修された排水処理設備 ガルバチューラ県立病院の壁面に 描かれた公衆衛生メッセージ