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6. クリーンエネルギー資源利用機器の技術開発状況と課題整理

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6. クリーンエネルギー資源利用機器の技術開発状況と課題整理
6.
クリーンエネルギー資源利用機器の技術開発状況と課題整理
6.1
風力発電
6.1.1 我が国における導入状況
風力発電は、2000 年度以降、毎年一定量が設置され、累積量は直線的に増加してきている。2009 年
度現在の累積導入量は 2,186MW となっている。
しかし、経年的な導入量は 2003 年度以降、ほぼ 100~400MW の間を増減しており、伸び悩み感が
ある。
※ NEDO 再生可能エネルギー技術白書(H22.7、NEDO)
図 23 我が国における風力発電導入量
6.1.2 洋上風力発電
洋上風力発電については、我が国では設置基数が少なく 2010 年 6 月現在で 2 基、1MW にとどまる
が、イギリスでは 336 基、1,041MW が、デンマークでは 315 基、663MW がすでに導入されている
(「NEDO 再生可能エネルギー技術白書」(H22.7、NEDO)による)。
NEDO では、我が国における自然環境に適した洋上風力発電設備の開発等を目的とする「洋上風力
発電等技術研究開発事業」を平成 20~25 年度にかけて実施しており、今後普及していく可能性がある。
山形県の場合、庄内地方沖合などで平均風速が 6.5m/s 以上あり、風力発電に適した風況となってい
る。
42
※ NEDO 再生可能エネルギー技術白書(H22.7、NEDO)
図 24 国別洋上風力発電導入基数・設備容量(2010/6/20 現在)
6.1.3 導入コスト
風力発電(陸上)の設置コストは 1kW 当たりおおよそ 20~40 万円弱であり、発電に要するコストは 10
~24 円/kWh となっている。発電出力が大きくなるほどコストは下がり、600kW~3MW 規模が 18~24
円/kWh であるのに対し、30MW 規模では 10 円/kWh となる(総合資源エネルギー調査会 新エネルギ
ー部会参考資料(2001 年 6 月)より)。火力発電コストに比べ約 1.5~3.0 倍であり、導入拡大のために導
入コストの引き下げが大きな課題となっている。
洋上風力発電については、発電システム価格は高いが陸上より風況が良く発電量も多くなるため、全
体の発電コストは陸上風力発電より若干高め程度で、世界の洋上発電コストは 10~13 円/kWh 程度とな
っている(図 25)。
表 29 風力発電コスト(規模 1000kW 程度の場合)
設置コスト
設置コスト総額
発電コスト
コスト比(火力発電との比較)
24~37 万円/kW
2.4~3.7 億
10~24 円/kWh
約 1.5~3.0 倍
※出典 NEDO ホームページ(http://app2.infoc.nedo.go.jp/kaisetsu/neg/neg03/index.html#elmtop)
43
※ NEDO 再生可能エネルギー技術白書(H22.7、NEDO)
図 25 風力発電コスト(陸上、洋上を含む)のまとめ
6.1.4 課題と対応策
風力発電のさらなる普及に向けた課題と想定される対応策は次のとおりである。
(「NEDO 再生可能エネルギー技術白書」を参考に整理)
(1) 低コスト化
表 29 に示すように、風力発電コストは火力発電コストと大きな開きがある。さらに、2004 年度以降は風
車需要増や鋼材の値上がりなどから設置コストが高騰している。風力発電をさらに普及させるためには、
低コスト化が不可欠となっている。
技術的な対応策、方向性は次のとおり:
 大型化や技術向上による設備費の削減⇒監視システムの行動化による遠隔監視、機器の耐久
性向上など
 発電量増加(大型化、低風速対応など)⇒ブレードの長翼化、新素材による軽量化など
(2) 設置可能地域の拡大
風力発電をさらに普及させるためには、技術的、コスト的、社会的に設置しにくい場所を候補とせざる
をえない。こうした地域としては、地形がより複雑な山間部、洋上などが想定される
技術的な対応策、方向性は次のとおり:
 複雑な地形への対応技術⇒風の実測・予測、落雷・風況変動対策など
 洋上発電機器開発⇒着床式・浮体式構造体、洋上変電所など
(3) 環境適合性の強化
風力発電には、風車音対策、バードストライク対策などの課題がある。また、洋上風力発電の場合は海
44
生生物への影響への懸念が考えられる。
技術的な対応策、方向性は次のとおり:
 低風車音風力発電システムの開発、風車音シミュレーションモデルの開発
 生物モニタリング技術、環境低負荷施工技術の確立など
(4) 系統連系対策
風力発電は変動が大きく、系統連系を行う上での課題となっている。
技術的な対応策、方向性は次のとおり:
 出力平準化技術
 蓄電池システムの高度化
 高精度な発電量予測技術
 大規模施設での集中制御システムの開発
6.1.5 技術ロードマップ
NEDO による技術ロードマップは次のとおり。
45
表 30 風力発電の技術ロードマップ(NEDO)
※ NEDO 再生可能エネルギー技術白書(H22.7、NEDO)
46
太陽光発電
6.2
6.2.1 我が国における導入量
太陽電池機器の出荷量をみると、家庭用が中心の電力用の伸びが著しい。
特に、各種補助金や電力の固定価格買い取り制度がスタートした 2009 年度には導入量が大きく増加
している。
(kW)
民生用
3,000,000
電力用
2,500,000
2,000,000
1,500,000
1,000,000
500,000
2009
2008
2007
2006
2005
2004
2003
2002
2001
2000
1999
1998
1997
1996
1995
1994
1993
1992
1991
1990
1989
1988
1987
1986
1985
1984
1983
1982
1981
0
※出典 社団法人太陽光発電協会資料
図 26 我が国における太陽電池機器の国内出荷量の推移(累計)
6.2.2 導入コスト
財団法人新エネルギー財団資料によれば、住宅用太陽光発電システムの設置コストは年々減少し
2003 年度に 70 万円/kW を切り、2005 年度には 66 万円/kW となっている。
NEDO の新エネルギーガイドブックによれば、非住宅用太陽光発電システムの設置コストは 104 万円
/kW であり、住宅用と大きな開きがある。
1kWh 当たりではおおよそ 37~46 円程度である(再生可能エネルギー全量買取に関するプロジェクト
チーム資料)。NEDO による太陽光発電ロードマップ「PV2030+」(NEDO、2009 年)では、2020 年に
14 円/kWh 程度、2030 年に 7 円/kWh 程度、2050 年に 7 円/kWh 未満という目標が示されている。
47
※出典 財団法人新エネルギー財団ホームページ(http://www.solar.nef.or.jp/josei/kakakusuii.htm)
図 27 住宅用太陽光発電システム設置価格の推移
表 31 太陽光発電システム設置コスト
※出典 「新エネルギーガイドブック 2008」(NEDO)
48
6.2.3 課題と対応策
太陽光発電のさらなる普及に向けた課題と想定される対応策は次のとおりである。
(「NEDO 再生可能エネルギー技術白書」を参考に整理)
(1) 経済性の改善
上記のように、NEDO による太陽光発電ロードマップでは大幅なコスト削減を目標としている。
次のような技術的な課題と対応策が示されている。
 製造コストの削減⇒基板の薄膜化(結晶系シリコン太陽電池)、製造工程数の少ない太陽電池開
発(CIS 系太陽電池)、材料が安価で製造が容易な太陽電池開発(有機系太陽電池)、量産化と
市場拡大など
 生涯発電量の増加⇒トップレベルの発電効率の維持、太陽電池モジュール・部品・部材の高耐久
化、運用中の故障診断・メンテナンスなど
 設置・施工費を含む販売コストの低減⇒標準化による施工の簡易化、建材一体化による部材の削
減、流通体制の合理化など
(2) 革新技術の開発
性能を飛躍的に向上させる革新技術として、高効率多接合型太陽電池、量子ナノ構造太陽電池など
の研究開発が進められている。
(3) 利用及び用途の拡大
利用面での課題として、出力変動や発電量と電力需要とのミスマッチが指摘されている。
次のような技術的な課題と対応策が示されている。
 変動の平準化⇒蓄電機能の付帯、需給予測など
 電力系統側での対応
 蓄電機能や他のエネルギーシステムと連系したシステムの構築
 クリーンエネルギーの大量導入に対応する系統の整備・強化
(4) 利用基盤・利用環境の整備
次のような技術的な課題と対応策が示されている。
 太陽光発電システムの信頼性の確立
 評価技術開発(変換効率、発電量、耐久性、安全性、運用中の劣化状況など)
 認証・品質保証
 ユーザーへの実用性能の表示
 電気事業法、建築基準法など関連する法律の整備
 太陽光発電システムのリサイクル・リユース体制の整備
 グリーン電力証書システムの整備、など
49
6.2.4 技術ロードマップ
技術ロードマップは次のとおり。
表 32 革新的太陽光発電技術開発ロードマップ(資源エネルギー庁)
※出典 「Cool Earth-エネルギー革新技術 技術開発ロードマップ」(資源エネルギー庁)
50
表 33 太陽光発電の技術ロードマップ(NEDO)
51
※ NEDO 再生可能エネルギー技術白書(H22.7、NEDO)
6.3
太陽熱利用
6.3.1 我が国における導入量
平成 8 年度頃まで年間 15,000~20,000 件あった一般住宅用の設置件数は以降減少傾向をたどり、
平成 19 年度以降は 5,000 件を下回っている。
(件)
40,000
35,000
30,000
25,000
20,000
15,000
10,000
5,000
H21
H20
H19
H18
H17
H16
H15
H14
H13
H12
H11
H9
H10
H8
H7
H6
H5
H4
H3
H2
H1
S63
S62
S61
S60
0
※出典 「2010 ソーラーシステム・データブック」(社団法人ソーラーシステム振興協会)より作成
図 28 国庫補助金利用による一般住宅用ソーラーシステムの設置状況
52
6.3.2 導入コスト
「新エネルギーガイドブック 2008」(NEDO)によれば、太陽熱温水器の設置コストは約 30 万円/台、ソ
ーラーシステムの設置コストは約 90 万円/台となっている。
6.3.3 課題と対応策
太陽熱利用のさらなる普及に向けた課題と想定される対応策は次のとおりである。
(「NEDO 再生可能エネルギー技術白書」を参考に整理)
(1) 設置コストの削減
設置コストの削減に向け向けた対応策は次のとおり:
 大量生産による量産効果
 システムのコンパクト化・パッケージ化
 施工費の削減⇒設計手法の見直し、工法の標準化、省人工化、建材一体型集熱器の採用など
(2) 高効率化
高効率化に向け向けた対応策は次のとおり:
 集熱効率の向上⇒集熱器の効率向上、貯湯タンクの断熱性能向上など
 機器効率の向上
 システム効率の向上⇒大規模化、太陽光発電システムとのハイブリッド化など
6.4
中小水力発電
6.4.1 我が国における導入量
中小水力発電の導入量は全国 1,344 か所、発電電力量 18,791MWh となっている。
表 34 10,000kW 未満の既開発の水力発電
※ 資源エネルギー庁 出力別包蔵水力調査
6.4.2 導入コスト
中小水力発電の設置コストは出力 1kW 当たり約 76 万円となっている。
発電コストは約 14 円/kWh であり、火力発電コストの約 2 倍である。
53
表 35 中小水力発電の設置コスト
※出典 「新エネルギーガイドブック 2008」(NEDO)
6.4.3 課題と対応策
中小水力発電のさらなる普及に向けた課題と想定される対応策は次のとおりである。
(「NEDO 再生可能エネルギー技術白書」を参考に整理)
(1) 発電効率の向上
高効率化に向け向けた対応策は次のとおり:
 発電効率と割高な電気設備とのバランスへの配慮
(2) イニシャルコストの削減
イニシャルコストの削減に向けた対応策は次のとおり:
 設備費の削減⇒システムの合理化、簡素化、標準化
 施工費の削減⇒装置の運搬、設置に人手を要さないシステム化
(3) ランニングコストの削減
ランニングコストの削減に向けた対応策は次のとおり:
 出力単位当たりのメンテナンス人員数の削減⇒メンテナンスフリー化、操作性の向上
(4) 水量の確保
水量の確保に向けた対応策は次のとおり:
 取水口への土砂堆積、目詰まり対策
6.5
バイオマスエネルギー
6.5.1 我が国における利用量
我が国におけるバイオマスエネルギーの利用量及び利用率を図 29 に示す。
バイオマスの種類によって利用量は大きく異なり、黒液(木材パルプを化学的に分解・分離した際に発
生する廃液)はほぼ 100%、製造工場等残材は約 95%、家畜排せつ物は約 90%がすでに利用されてい
る。一方、林地残材は利用率約 1%と低く、食品廃棄物が約 25%、農作物非食用部が約 30%の利用率
となっている。
54
6.5.2 山形県における未利用率
山形県における地域ブロック別・種類別バイオマス未利用率を表 36 に示す。
汚泥系バイオマス以外は地域による大きな差は見られない。
種類別では、果樹剪定枝、林地残材、生ごみの未利用率が高く、家畜ふん尿、もみ殻、製材端材の未
利用率が低い。
※ 農林水産省「バイオマス・ニッポン総合戦略推進アドバイザリグループ」資料
図 29 我が国におけるバイオマスの利用状況
表 36 山形県における地域ブロック別バイオマス種別未利用率
●林地残材
(m3/年) ●間伐材
(m3/年)
発生総量 既利用量 未利用量 未利用率
発生総量 既利用量 未利用量 未利用率
山形県計
201,409
20,092
181,317
90.0% 山形県計
40,356
18,731
21,625
53.6%
村山地域
43,067
0
43,067
100.0% 村山地域
10,602
4,241
6,361
60.0%
最上地域
73,115
14,623
58,492
80.0% 最上地域
8,064
4,435
3,629
45.0%
置賜地域
30,559
0
30,559
100.0% 置賜地域
7,902
3,161
4,741
60.0%
庄内地域
54,687
5,469
49,218
90.0% 庄内地域
13,768
6,894
6,894
50.1%
●製材端材
(m3/年) ●果樹剪定枝
(t/年)
発生総量 既利用量 未利用量 未利用率
発生総量 既利用量 未利用量 未利用率
山形県計
110,873
86,924
23,949
21.6% 山形県計
39,456
0
39,456
100.0%
村山地域
19,807
15,529
4,278
21.6% 村山地域
25,806
0
25,806
100.0%
最上地域
20,974
16,443
4,530
21.6% 最上地域
450
0
450
100.0%
置賜地域
6,739
5,284
1,456
21.6% 置賜地域
5,182
0
5,182
100.0%
庄内地域
63,353
49,669
13,684
21.6% 庄内地域
8,018
0
8,018
100.0%
●稲わら
(t/年) ●もみがら
(t/年)
発生総量 既利用量 未利用量 未利用率
発生総量 既利用量 未利用量 未利用率
山形県計
453,295
312,316
140,979
31.1% 山形県計
110,135
97,569
12,566
11.4%
村山地域
108,785
67,447
41,338
38.0% 村山地域
26,431
24,317
2,114
8.0%
最上地域
69,365
44,394
24,971
36.0% 最上地域
16,853
13,988
2,865
17.0%
置賜地域
95,940
64,280
31,660
33.0% 置賜地域
23,310
20,513
2,797
12.0%
庄内地域
179,205
136,196
43,009
24.0% 庄内地域
43,540
38,751
4,789
11.0%
55
●家畜ふん尿
(t/年) ●生ごみ
(t/年)
発生総量 既利用量 未利用量 未利用率
発生総量 既利用量 未利用量 未利用率
山形県計 1,078,705 1,047,495
31,210
2.9% 山形県計
67,644
14,102
53,542
79.2%
村山地域
322,507
315,391
7,116
2.2% 村山地域
35,704
6,859
28,845
80.8%
最上地域
121,518
119,804
1,714
1.4% 最上地域
7,021
1,328
5,693
81.1%
置賜地域
266,549
258,003
8,546
3.2% 置賜地域
11,587
3,316
8,271
71.4%
庄内地域
325,427
311,592
13,835
4.3% 庄内地域
13,332
2,599
10,733
80.5%
●下水汚泥
(t/年) ●し尿処理汚泥
(t/年)
発生総量 既利用量 未利用量 未利用率
発生総量 既利用量 未利用量 未利用率
山形県計
35,385
14,877
20,508
58.0% 山形県計
15,002
1,966
13,036
86.9%
村山地域
19,360
8,627
10,733
55.4% 村山地域
6,238
1,966
4,271
68.5%
最上地域
1,578
0
1,578
100.0% 最上地域
1,364
0
1,364
100.0%
置賜地域
7,372
1,350
6,022
81.7% 置賜地域
3,873
0
3,873
100.0%
庄内地域
7,075
4,900
2,175
30.7% 庄内地域
3,528
0
3,528
100.0%
※ 山形県バイオマス総合利用ビジョン(平成 16 年3月、山形県文化環境部)より作成
6.5.3 導入コスト
導入コスト、設備の設置コストは条件により大きく変動し、一概には整理できないが、参考として表 37
に示す。
NEDO「新エネルギーガイドブック 2008」によれば、原油価格の高騰によりバイオエタノールの利用は
軌道に乗った。
表 37 バイオマスの導入コスト(参考)
バイオマス種類
ストーブ燃料用木質ペレット
ボイラ燃料用木質ペレット
木質バイオマス燃焼
メタン発酵
エタノール発酵
導入コスト(参考)
(販売単価、H21 年下期)
バーク:30~50 円/kg
ホワイト:39~45 円/kg
全木:35~44 円/kg
(販売単価、H21 年下期)
バーク:23~31 円/kg
ホワイト:34~39 円/kg
全木:33~38 円/kg
(施設整備費目安)
50t 未満:平均 38,000 円/t
50t 以上:平均 3,700 円/t
(施設整備費目安)
13,000~60,000 円/t
(製造コスト目安)
糖蜜原料:90 円/L
規格外小麦原料:98 円/L
食用米原料:479 円/L
※ NEDO 再生可能エネルギー技術白書より作成
6.5.4 課題と対応策
バイオマスエネルギーのさらなる普及に向けた課題と想定される対応策は次のとおりである。
(1) 収集・運搬等コストの低減
バイオマスは、広く薄く地域に分散しているため収集・運搬等のコストがかかる。このため、少量をオン
サイトで扱う規模の設備が多くなる。スケールメリットが働かず、コスト低減が困難な状況にあるため、普及
56
に向けた改善が不可欠である。
(2) 発生する残さ対策
メタン発酵など処理後の残さ処理コストも大きく、有効利用のあり方を含めた検討が必要となっている。
(3) バイオマス資源の確保
穀物系のバイオマスは食糧と競合するため、セルロース系など非穀物系バイオマス資源を有効利用す
るための安定的な技術が必要である。この場合、エタノール発酵させるためのセルロースの糖化技術の
確立が急がれる。
6.5.5 技術ロードマップ
技術ロードマップは次のとおり。
表 38 輸送用代替バイオマス燃料製造の技術開発ロードマップ(資源エネルギー庁)
※出典 「Cool Earth-エネルギー革新技術 技術開発ロードマップ」(資源エネルギー庁)
57
表 39 バイオマスエネルギーの技術ロードマップ(NEDO)
※ NEDO 再生可能エネルギー技術白書(H22.7、NEDO)
58
温度差エネルギー
6.6
6.6.1 我が国における導入量
温度差エネルギーを利用した地域熱供給事業は 2005 年までは増加傾向にあったが、以降は横ばい
で推移している。
※ NEDO 再生可能エネルギー技術白書より引用
図 30 温度差熱利用の地域熱供給事業件数
6.6.2 課題と対応策
温度差エネルギー利用のさらなる普及に向けた課題と想定される対応策は次のとおりである。
(「NEDO 再生可能エネルギー技術白書」を参考に整理)
(1) 低コスト化
温度差エネルギーを利用する場合、掘削等大きな初期費用が発生するものがあり、低コスト化が望ま
れる。
 開発・施工費の削減⇒開発区域のコンパクト化、共同溝等既存インフラの活用、掘削費の削減、
建物支持杭の利用
 ランニングコストの削減⇒メンテナンスフリー化
(2) 高効率化
特に高温熱源でない場合に対応した効率化が必要である。
 熱源機の高効率化⇒高効率のヒートポンプやターボ冷凍機
 配管熱損失の低減⇒断熱性能向上、供給地・需要地のマッチング
(3) 高耐久化
機器の耐久性向上のための技術開発が必要である。
 河川・海洋環境への対応⇒腐食防止
59
6.7
地熱エネルギー
6.7.1 我が国における導入量
「新エネルギーガイドブック 2008」(NEDO)によれば、全国 19 地点、20 プラント(事業用:15 プラント、
自家用:5 プラント)が稼働しており、発電出力は 548,900kW となっている(2004 年時点)。
6.7.2 導入コスト
地熱発電の設置コストは 1kW 当たり、80 万円、発電コストは 16 円/kWh であり、火力発電単価の 2
倍程度となっている。
表 40 地熱発電の設置コスト
※出典 「新エネルギーガイドブック 2008」(NEDO)
6.7.3 課題と対応策
地熱エネルギー利用のさらなる普及に向けた課題と想定される対応策は次のとおりである。
(「NEDO 再生可能エネルギー技術白書」を参考に整理)
(1) 低コスト化
コスト低減に向け、次のような対応策が指摘されている。
 地熱探査技術の向上⇒地質等各種調査、物理探査技術
 スケール(配管等への析出物)対策⇒熱水からのシリカ除去
(2) 高耐久化
次のような対応策が指摘されている。
 耐食性⇒耐食性材料の選定、耐食コーティング
(3) 利用可能資源の拡大
未利用資源の利用にむけ、次のような対応策が指摘されている。
 バイナリー発電(熱水と低沸点媒体の独立サイクルによる発電)⇒低温の熱水・蒸気利用技術
 高温岩体発電:高温で水分に乏しい岩体による発電、実験段階
60
雪氷熱エネルギー
6.8
6.8.1 我が国における導入量
我が国の雪氷熱エネルギーの利用件数は、北海道、新潟を中心に数十件見られる。山形県内にも 16
件ある。
※出典 「雪氷熱エネルギー活用事例集 4」(平成 20 年 3 月、北海道経済産業局)
図 31 雪氷熱の利用状況(件数)
6.8.2 導入コスト
NEDO「新エネルギー導入ガイドブック 2008」によれば、雪氷熱エネルギーシステムの経済性は、「イ
ニシャルコストは電気冷房に比べて 2 割程度割高で、ランニングコストは逆に電気冷房の 4 割程度割安と
なり、トータルコストは 1~5 割程度割高」となっている。
冷熱を製造するのにエネルギーやコストがほとんどかからないというメリットがある。
6.8.3 課題と改善策
雪氷熱エネルギー利用のさらなる普及に向けた課題と想定される対応策は次のとおりである。
(「NEDO 再生可能エネルギー技術白書」を参考に整理)
(1) 低コスト化
低コスト化に向け、次のような対応策が指摘されている。
 設備費・施工費の削減⇒既存建物の転用、建物と貯雪庫の一体化
 収集費・輸送費の削減⇒地産地消費、人工降雪機の活用
 冷熱回収コストの削減⇒システムの大規模化
(2) 高効率化
高効率化に向け、次のような対応策が指摘されている。
 熱貯蔵効率の向上⇒貯蔵設備の断熱性向上、貯蔵設備構造の工夫
 熱交換効率の向上⇒熱交換器の高効率化
61
廃棄物エネルギー
6.9
6.9.1 我が国における導入量
環境省によれば、平成 20 年度における一般廃棄物の余熱利用施設数は 980(公共施設 849+民間
施設が 131)あり、余熱利用なしの 587(同 167)を大きく上回る。
また、環境省「一般廃棄物処理事業実態調査結果(平成 20 年度版)」によれば、総余熱利用量(実績
値)合計は 66,745 千 GJ(民間施設を含まない)となっている。
表 41 一般廃棄物焼却施設における余熱利用施設数
区分 余熱利用あり
発電
場内発電 場外発電
215
余熱利用
無し
11年度
97
614
12年度
1,111
1,034
228
233
92
604
13年度
1,090
1,022
234
236
83
590
14年度
1,035
966
244
263
85
455
15年度
995
79
401
16年度
992
907
279
227
96
281
171
81
382
17年度
904
840
273
230
102
285
179
62
414
18年度
877
812
264
235
103
292
186
63
424
19年度
856
792
258
244
103
297
188
51
429
20年度
849
783
251
242
105
297
193
49
420
(民間)
131
26
7
59
8
35
17
24
167
年度
蒸気利用
場内蒸気 場外蒸気
225
その他
温水利用
場内温水 場外温水
1,028
1,103
923
244
271
※出典 「日本の廃棄物処理(平成 20 年度版)」(環境省)
6.9.2 導入コスト
廃棄物発電はごみ焼却施設等に併設するため、単独でのコスト算出が困難である。
NEDO「新エネルギーガイドブック 2008」に示される廃棄物発電コストの参考値(表 42)では、設置コ
ストが 9~25 万円/kW、発電コストは 9~11 円/kWh となっており、火力発電コストの 1.2~1.5 倍となって
いる。
表 42 廃棄物発電の導入コスト(参考)
※出典 「新エネルギーガイドブック 2008」(NEDO)
6.9.3 課題と対応策
循環型社会の形成に向けて焼却処理量が減少傾向にある中、廃棄物エネルギー利用は難しくなりつ
62
つある。ごみ量が減少すると熱利用効率が低下し、高コスト化する可能性がある。
循環型社会に対応した廃棄物エネルギー利用のあり方を検討する必要がある。
6.10
6.10.1
波力エネルギー
我が国における導入量
欧米において、一部商用プラントの運転が開始されたとのことであるが、我が国では一部で研究、実用
化に向けた検討が行われている段階である。
6.10.2
課題と対応策
技術的にまだ確立されておらず今後の技術動向に着目する必要がある。
護岸に併設する、沖合の潮流を利用するなどのタイプがあるが、漁業との関連性を十分に考慮する。
63
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