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母親の孤立と育児問題 ~地域社会の子育て支援の取り組みを考える
2002 年 主査 奥平康照、副査 常田秀子 母親の孤立と育児問題∼地域社会の子育て支援の取り組みを考える∼ 99D201 石井 茜 子育て支援 地域社会 母親の孤立 1 育児不安 目次 序章 P3∼ 6 第1章 母親の孤立と育児不安 P7∼ 21 1節 育児不安を抱えながら孤立する母親達 2節 働くことで孤立から解放されようとする母親達 第2章 日本の子育て支援の取り組み 1節 エンゼルプランの動向 2節 新エンゼルプランの動向 第3章 P22∼ 33 母親を孤立させないために ∼地域社会が親と子を育てる∼ P35∼ 58 1節 地域子育て支援グループ「わらしっこ倶楽部」の活動 2節 今、母親達が求めているものとは? ∼「わらしっこ倶楽部」アンケートから考える∼ 3節 地域で共に子育てをする重要性 ∼「わらしっこ倶楽部」インタビューから考える∼ 4節 親も子も共に育てる子育て支援作りの必要性 ∼ニュージーランドの「プレーセンター」の取り組み∼ 第4章 1節 2節 父親の協力の必要性 P58∼ 68 父親の育児参加の現状 父親の育児参加と出生動向 ∼スウェーデンの「育児休業制度」の取り組みから考える∼ 終章 P68∼ 70 参考文献・資料 P70∼ 72 2 序章 核家族化と都市化に加え、近年の少子化の急激な進行の中で、子育 て家庭は地域で孤立されつつある。また、母から子へ、子から孫へと いう育児の伝承は急速に途絶えようとしている。そのような中で、子 育てに一生懸命に取り組もうと意気込んではみたものの、具体的育児 場面に直面するとどうしていいのか分からないという母親、相談相手 がいないままに育児不安を抱え、一人悩む母親が増えている。 一方、現代は個性の時代といわれ、個としての自立が尊ばれはじめ ている。母親は、女性として、また一人の人間として自立し、自分自 身の人生を創造的に生きることに価値をおく方向性が強くなってきて いるのである。そのような中で、子育てに自分の身を拘束される苛立 ちや、社会から取り残されるという焦りが、母親の大きな精神的スト レスとなっているのであると考えられる。 また、母親のライフスタイルが認められ、自分の人生も大切にする 母親が美化されつつある現在の日本社会でも、子育ては母親の役割で あ り 、母 親 の 責 任 で あ る と い う 社 会 的 風 潮 や 固 定 観 念 は 未 だ 変 わ ら ず 、 根 強 く 残 っ て い る よ う に 思 う 。実 際 に 、 「子育ては生まれつき女性の方 が男性より適している」という意見に賛成する人を日本とアメリカで 見比べてみると、アメリカよりも日本の方がより高い数字を示してい ることが分かる。特に、子育てを母親中心で行っている層では父母と もこの意見を強く支持したという。 〔 資 料 1 参 照 〕1 ま た 、 「女性も職業 を持っても良いが、少なくとも家庭のことは責任を持つべきである」 と い う 考 え が 社 会 的 に あ り 、母 親 の ラ イ フ ス タ イ ル が 認 め ら れ る に は 、 「育児や家事を怠ることなくしなければならない」ということが前提 3 と し て あ る こ と が 分 か っ た 。〔 資 料 2 参 照 〕 2 資料1 子育ては、生まれつき女性の方が男性よりも適している賛成 (% ) 総 務 庁 青 少 年 対 策 本 部 ,1995『 子 ど も と 家 庭 に 関 す る 国 際 比 較 調 査 報 告 書 』 資料2 「 男 は 仕 事 ,女 は 家 庭 」 に 対 す る 評 価 この「育児=母親」という風潮や観念も、母親の育児不安やストレ スを増大させる大きな要因ではないだろうか。現代の母親達は、育児 という責任を一人で背負わなければならないという孤立感に苛まれ、 今まさに押しつぶされそうとしているのである。 しかし、現在は女性の教育水準や意識が向上し、それに伴って女性 4 の 社 会 参 加 も 増 え て き て い る 。実 際 に 、経 済 的 理 由 だ け で な く 、自 分 の 「生きがい」として働く、もしくは、働きたいと願う母親達が増えて きているのだ。女性の生き方や主張が多様化した現代では、母として だけ生きることは難しい時代といえるのではないだろうか。そして、 社会参加をする母親達が増えている背景に、母親の「孤立感から解放 されたい」という願いが存在しているのだと感じてならない。働くこ とで孤立した生活から抜け出そうとする母親が増えてきているのであ る。 母親の中でも特に、孤立という心理的不安を抱えているとして、最 近では専業主婦の精神的ケアーが重要視されてきている。働くことで 孤立から解放される母親に対して、専業主婦の場合、常に子どもと二 人だけの生活が強いられ、密室の中で子育てをするという状況に陥り かねないからである。 従来、親の就労は「保育に欠けている」とされ、困難を抱えた家族 と み ら れ て き た 。そ の た め 、働 く 母 親 に は 福 祉 的 対 応 が 成 さ れ て き た 。 しかし、近年では核家族化したこともあり、母親の孤立や育児不安、 そして、それが要因として起こりかねない虐待の問題が注目され、働 い て い な い 母 親 へ の 援 助 も 必 要 だ と さ れ て き た の で あ る 。2000 年 に は 「新エンゼルプラン」が施行され、家庭で子育てをしている母親も含 めた支援が様々な形で成されつつある。しかし、子育ての問題は多様 であり膨大に存在するため、行政だけでは対応しきれないというのが 現実であるようだ。 それを補充するためにも、地域で自主的に始め、活動する子育て支 援グループの存在は欠かせないものである。地域の人々が自ら動き、 問題解決を図っていくという姿勢は、今後の子育て支援に大きな変化 5 をもたらすと考える。そして、地域に母親の居場所を作ることが最も 必要である。それは、地域との結びつきが希薄になった現在では、働 いている母親、家庭で子育てをしている母親に関係なく、全ての母親 に必要なことではないだろうか。母親が自然と集まり、子育てについ て 相 談 で き る 場 、気 持 ち に ゆ と り を 持 て る 安 ら ぎ の 場 ・・・こ の 自 分 の 居 場所を母親達は求めているのである。子育て支援には、今後の地域の 「育児力」が問われているのだ。 ま た 、孤 立 し が ち な 母 親 に と っ て 、誰 の 支 援 が 一 番 必 要 か と い う と 、 父 親 の 協 力 で は な い か と 考 え る 。「 育 児 を し て く れ な く て も い い か ら 、 せ め て ね ぎ ら い の 言 葉 を か け て 欲 し い 。」 3 と い う 母 親 の 声 か ら も 、 父 親がいかに育児に協力していないかが分かる。母親達は、父親の支え を痛切に願っているのである。 「 男 女 共 同 参 画 社 会 」が う た わ れ 、父 親 の育児参加も少しずつではあるが注目され始めている。しかし、社会 の「 育 児 =母 親 」と い う 意 識 は 根 強 く 、ま だ ま だ 現 実 に 対 応 し て い な い のが現状である。 しかし、これでは夢のある子育ては実現しない。母親達が子育てを 楽しめる社会、そして、母親達が将来に展望をもてる社会が必要なの だ。これらのことを踏まえて、現在の母親達は何に悩み、何を求め、 どのような支援が必要なのか考えていきたいと思う。母親達を今、地 域社会で孤立させてはならないのである。 6 1章 母親の孤立と育児不安 1節 育児不安を抱えながら孤立する母親達 今日の子育ての困難は、多くの母親達が子育てに不安や苛立ち、悩 みを抱えながら、孤立した中で子育てをしていることにある。その結 果、育児知識の欠如や子どもの過干渉などに陥り、子どもの成長や発 達 の 過 程 で 問 題 が 生 じ る こ と が 指 摘 さ れ て い る 。多 く の 調 査 に お い て 、 家庭で子育てをしている母親の方が子育ての喜びを感じる割合が少な く、育児不安が高いことが明らかにされており、子育ての困難はとり わけ専業主婦に深刻な形であらわれている。逆に、働いている母親達 は、保育園に預けて子どもと離れる経験が子どもにも自分にも良いと 認識しており、精神的に安定を保っていて、育児不安に苦しむことが ず っ と 少 な い の だ と い う 。〔 資 料 3、 資 料 4 参 照 〕 4 / 5 資料3 無 職 /専 業 母 親 と 有 職 母 親 (働 く 母 )の 子 育 て ス ト レ ス 横 浜 市 教 育 委 員 会 /預 か り 保 育 推 進 委 員 会 ,2001 最終報告書 7 文部科学省預かり保育調査 資料 4 また、母親の疲労感を見ると、特に零歳児を持つ母親の疲労感が高 いということが分かった。資料 5 は、第一子に三歳未満の乳幼児を持 つ専業主婦に「自覚症状調べ」を実施した結果を示したものである。 ここでは、零歳児を一人持つ母親と一歳から三歳未満児を一人持つ母 親とを比較している。平均訴え率で両者を比較すると、起床時、就寝 時 と も 、い ず れ も 零 歳 児 を 持 つ 母 親 の 方 が 、高 い 訴 え 率 を 示 し て い る 。 普通、起床時の訴えは低く、就寝時の訴えは高くなるものだが、零歳 児を持つ母親は、起床時、就寝時とでほとんど差がない。乳幼児期の 子育ては大変な労働でもあるが、特に零歳児の子育てがいかに厳しい ものであるのかが分かった。6 8 資料5 母親の疲労自覚症状結果 また、 「 親 に 適 し て い な い と 感 じ る こ と が あ る 」と 訴 え る 母 親 も 多 く 、 その中でも学歴志向が強い親ほど、子育てに不安を覚える傾向がある ともいわれている。育児不安の高さと、早い時期からの教育や高い学 歴 を 求 め る 教 育 観 と は 関 連 が 強 い よ う だ 。〔 国 立 教 育 政 策 研 究 所 調 査 〕 7 三歳未満の子どものいる女性の約 8 割は、いわゆる専業主婦が占め て お り 8 、学 歴 志 向 の 強 い 母 親 が 増 え て き て い る と い う 現 状 を 考 え る と 、 母 親 の 育 児 不 安 は 見 過 ご す こ と の 出 来 な い 深 刻 な 問 題 で あ る 。し か し 、 一口に育児不安というが、これは不安や不満、焦りなど否定的な気持 ちだけではない。子どもは可愛い、育児が大切だということも分かっ ている。にもかかわらず、子どもといるだけの生活、子育て一辺倒の 生活に不安や不満、焦りを感じてしまう。このように、子どもや子育 てに対してプラス・マイナス両方の感情を抱き、その二つに引き裂か れている心理、それが育児不安の苦しさなのである。子どもや育児の 価値は認めるが、その他にも自分にとって価値があるからそれがした い、しかし、育児を自分一人に任されてしまっている今の生活ではそ 9 れができない、先の見通しもつかない。そうした閉ざされた状況がこ の育児不安の元凶なのである。 では、母親を孤立させ、育児不安へ駆り立てている具体的要因は何 なのだろうか。要因として以下の 5 点が考えられる。<①母親が子ど もの要求がわからないこと。②母親の具体的心配事が多いこと。③母 親に出産以前の子どもとの接触経験や育児体験が不足していること。 ④夫の育児への参加・協力が得られないこと。⑤近所に母親の相手が い な い こ と 。 9 > こ れ ら の 要 因 を 防 ぐ 為 に は 、や は り 、母 親 に 子 ど も の ことを相談できる話し相手を作り、母親を孤立させないことが最も必 要なのではないかと考える。また、母親の為だけでなく、これは子ど もの発達の為にも重要なことではないだろうか。 昭 和 30 年 代 後 半 か ら の 核 家 族 化 と 都 市 化 の 進 行 に 加 え 、近 年 の 急 速 な少子化は、子育て家庭の孤立化と人間関係の希薄化の危機をもたら している。 「 近 所 に ふ だ ん 世 間 話 を し た り 、子 ど も の 話 を す る 人 が い ま す か 」 と 住 宅 建 物 形 態 と の ク ロ ス 集 計 結 果 〔 資 料 6 参 照 〕 10 で は 、 一 戸建て住宅で、母親は話し相手がいない傾向にあることが分かる。ま た、その中でも農林業地域で特に母親の孤立が目立ち、旧市街地域で も そ の 傾 向 が 生 じ て き て い る と い う 。一 方 、 「一緒に遊ぶ子どもがいま すか」と住宅建物形態とのクロス集計結果、および地域特性とのクロ ス 集 計 結 果 〔 資 料 7 参 照 〕 11 か ら 、 母 親 同 様 に 子 ど も も 一 戸 建 て 住 宅 と農林業地域や旧市街地域で遊び相手がいないことが分かった。資料 6 と 7 は 、子 育 て 家 庭 の 孤 立 化 と 人 間 関 係 の 希 薄 化 の 危 機 は 、す で に 、 一戸建て住宅や農林業地域・旧市街地域では顕在化していることを示 している。 10 資料6 「近所にふだん世間話をしたり、子どもの話をする人がいま す か 」 と 住 宅 建 物 形 態 と の ク ロ ス (3 歳 半 児 健 診 ) 資料7 「 一 緒 に 遊 ぶ 子 ど も が い ま す か 」と 地 域 特 性 と の ク ロ ス (3 歳 半児健診) 資料 8 には「近所にふだん世間話をしたり、子どもの話をする人は いますか」と子どもの言語・社会性の発達とのクロス集計結果を示し て い る 。 12 母 親 の 話 し 相 手 の 有 無 と 子 ど も の 発 達 は 直 接 関 係 が な い よ うな気がするが、実際には資料 8 が示すように、子どもの成長・発達 には、母親の近所の話し相手の有無が大きな影響を及ぼし、母親の話 し相手が多いほど子どもの発達は良いという結果になっている。 11 資料8 「近所にふだん世間話をしたり、子どもの話をする人がいま す か 」 と 言 語 ・ 社 会 性 の 発 達 と の ク ロ ス (1 歳 半 児 健 診 ) 子どもの成長には、子どもの遊び相手だけでなく、母親の話し相手 も必要であるというこの結果は、子育て家庭の孤立化が深まる中で、 今 後 に 大 き な 課 題 を 投 げ か け て い る と 思 わ れ る 。ま た 、事 実 、 「近所に ふだん世間話をしたり、子どもの話し相手をしたりする人がいる」と 答えた母親は、育児での具体的心配項目がはっきりと少なく、イライ ラ や 不 安 も は っ き り と 少 な い こ と が 分 か っ て い る と い う 。 13 子 育 て 中 の母親とその子どもにとって、近所に子どもの相談ができる相手がい ることが、いかに大切かを痛感した。 母親の社会性の度合によって、子どもの遊び相手の有無が大きく左 右されることは、今後の日本社会の子育てにおいて、悪循環を生じか ねない。つまり、少子化、核家族化の進行の中で、社会性の未熟な子 ども達が育ち、その子ども達が親になり子どもを産み、そして子育て をする時、母親の社会性が未熟なために、子どもは遊び相手が得られ ず、社会性が育たないという悪循環が懸念されるのである。 母親と子どもの孤立化が深刻化している現在、子どもの「人と交わ 12 る能力」の発達は危機に直面している。母親が育児不安を乗り越え、 安心して育児が出来るために、また「人と交わる能力」の優れた次世 代を育てる為にも、今や、子育てを子育て家庭の努力だけに頼る時代 ではなくなってきているのではないだろうか。子どもの為にも、母親 を 地 域 で 孤 立 さ せ て は な ら な い の で あ る 。 14 育児不安は、時として虐待という恐ろしい現実に繋がりかねない深 刻な問題でもある。 『 子 育 て と 出 会 う と き 』の 著 者 で あ る 大 日 向 雅 美 15 は、全国約 6 千名の母親を対象に「あなたは子育てを辛く思うことが ありますか?」と「子どもが可愛く思えないことがありますか?」と い う 二 つ の 質 問 調 査 を 行 っ た 。 対 象 で あ る 母 親 は 、 乳 幼 児 の い る 20 代 後 半 か ら 30 代 初 め の 女 性 で 、そ の 8 割 が 専 業 主 婦 と し て 、民 間 企 業 等に勤める夫と核家族で暮らしている。するとその調査の結果、回答 を 寄 せ た 母 親 の 9 割 、8 割 が「 子 育 て を 辛 く 思 え る こ と が あ る 」 「子ど もが可愛く思えないことがある」と回答したという。その母親達が子 どもを可愛く思えない時にどうしているかについて尋ねてみると、 「イ ラ イ ラ し て 、手 を あ げ て し ま う 」や「『 あ ん た な ん か 嫌 い 』と 言 っ て し ま う 」と い う 回 答 が 3 割 強 か ら 、5 割 強 を 占 め た の で あ る 。 〔資料 9 参 照 〕 16 資料9 子どもが可愛くないとき、どうしますか? 13 回答を見ると子育ての負担と日々の生活の虚しさが加わって、イラ イラの制御がきかなくなっている様子が想像されるが、そうして苛立 ちを子どもに向ける行動に対して「母親も人間だから仕方がない」と い う 回 答 が 79.6%も あ り 、 「 子 ど も が 可 愛 そ う 。で き る だ け 愛 す る 努 力 を す べ き だ 」 は 12.0%に す ぎ な か っ た の だ と い う 。 17 このように、母親の虐待は日常いつおこっても不思議でない状況に まで陥っているのである。そして、それは育児不安を抱える全ての母 親にいえることではないだろうか。小さな育児不安が大きなものとな り、やがてその感情は抑えられないとこまできてしまう。育児不安の 延長線上に虐待が存在するといっても言い過ぎではないだろう。虐待 は、自分の知らない世界でおきている出来事ではなく、日々、深刻な 問題として日常に存在しているのである。 全 国 に 180 箇 所 あ る 児 童 相 談 所 で は 、 毎 日 虐 待 の 相 談 が 絶 え な い と い う 。 相 談 件 数 は 、 2001 年 度 は 全 国 で 約 2 万 5 千 件 で あ り 、 前 年 の 1.3 倍 で 、5 年 前 に 比 べ る と 6 倍 近 く に ま で 上 っ た 。2000 年 11 月 に 虐 待の早期発見と早期対応を目的とした児童虐待防止法が施行され、相 談所が虐待に積極的に介入をするようになり、立ち入り調査は前年の 2 倍 の 2 百 件 に 上 っ た と い う 。18 / 19 虐 待 対 象 は 、2 歳 か ら 8 歳 が 6 割 を 占 め 、 虐 待 を 行 っ て い る の は 、 20 代 か ら 30 代 の 親 が 8 割 を 占 め る と い う 。 そ の う ち 、 実 母 が 59% と い う か ら 嘆 か わ し い 。 20 ま た 、 現 在 で は身体的虐待が増える一方、養育の怠慢・放棄等のネグレクトが急激 に増えてきているという。身体的虐待に関しては、人口密度が高いほ ど虐待の割合が高い傾向にあり、現在最も高いのは大阪府であるとい われている。この要因には、人口密度が高いことからくるストレスが 大きく関係していると思われる。法律が施行されてからは、地域社会 14 の人々の関心も高まり、それが相談件数の増加に繋がっているのだと 考 え ら れ る 。 21 このように、現在の母親の心中は、抜き差しならないところまで追 い詰められている。しかし、母親が子どもに虐待をしてしまうから悪 いのではないのだ。社会が母親に目を向けず、夫がそのような状況に な る ま で 妻 を 無 視 し 、孤 立 す る 環 境 や 状 況 を 作 り 上 げ て し ま っ て い る ことが一番の問題なのである。決して、母親のせいでも、勿論、子ど も の せ い で も な い 。母 親 も 子 ど も 同 様 、被 害 者 な の で は な い だ ろ う か 。 決して、母親のことだけを責めるべきではないのだ。そのためには、 地域の人々が虐待の問題を知り、母親の現状を理解してやることが必 要であると考える。また、市などでも、虐待についての講演会や講習 会を開き、母親の現状を知る機会を地域の人々に作っていく取り組み が 必 要 で あ る 。 22 子育てというとすぐに親、特に母親の責任が強調される。しかし、 母親がその責任を果たすには、周囲の人たちの理解と支えが必要であ る。育児不安を始めとして、子どもへの高すぎる要求水準や家族の孤 立などは、虐待を引き起こす原因となりやすい。そして、小さな育児 不安も、いつ虐待という恐ろしい行為に繋がるかもわからない。これ らの要因は、できるだけ早急に軽減していく必要がある。そのために は、親が悩みを一人で抱え込み、孤立化しないよう、地域の人々がそ れを理解し、支えることに掛かっているのである。 15 2節 働くことで孤立から解放されようとする母親達 「今日もやってしまった、反省する毎日。深呼吸したり肩の力を抜い たりするけれど、プッツン切れてしまった私は、私自身を止めること が で き な い 。1 歳 9 ヶ 月 の 可 愛 い 息 子 が 時 に 暴 れ 馬 の よ う に 泣 い た り 、 我ままをぶつけてくる時、私も冷静さを失い、声を荒げたり、壊れな い 物 に や つ あ た り し た り ・・・。核 家 族 か つ 、夫 は 仕 事 で 毎 日 、深 夜 帰 宅 なので、ほとんど母子二人きりの生活だ。しつけや叱り方なんて考え ている間もなく時間が過ぎてゆく。毎日公園で遊ばせ、たくさんのマ マ友達にも恵まれているけれど、私という人間が子どもの成長とは反 対に後退していくようで怖い。子どものストレートな感情をいつも笑 顔で受け止めてあげたい、が現実はそんなに上手くいかない。もう一 度社会に出て、一から鍛え直そう!と考えつつも、今は育児が仕事と 割り切って頑張る日々だ。それにしても子育てがこんなに大変な仕事 な ん て 、誰 も 教 え て く れ な か っ た 。」 〔 朝 日 新 聞 2002 年 9 月 25 日 声 欄「育児が仕事と割り切る日々」より〕 こ れ が 、母 親 の 生 の 声 で あ る 。社 会 に 出 た く て も 出 ら れ ず 、 「育児が 仕事」と割り切る日々を現実として受け止めるしかない母親の辛さが ひしひしと伝わってくる。そして、日常に抱える育児ストレスの深刻 さを物語っていることが分かる。 今の時代は、夫一人に生計の質を頼るのはリスクが大きい時代でも あり、一家の経済的な必要性からも、妻の就労は不可欠な時代となっ た 。そ の 一 方 で 、現 代 は 女 性 の 高 学 歴 化 が 進 み 、社 会 参 加 の 気 運 が 高 ま ってきたこともあり、経済的理由だけでなく、自分の「生きがい」と 16 して働く、あるいは働きたいと願う母親達が増えてきている。実際に 若い女性達の中でも、結婚後も働くことを希望する女性が増加してい るのも事実だ。しかし、家庭と仕事を保障する制度は企業側には未だ 乏しく、保育制度も必ずしも働く母親の実情に即していない。こうし た 現 状 か ら 、仕 事 を 辞 め ざ る を 得 な か っ た 女 性 は 少 な く な い だ ろ う 。23 実際に、働く母親の約 7 割が第一子出産後、仕事を辞めていることが 厚 生 労 働 省 の 調 査 で 明 ら か に さ れ て い る 。24 そ う し た 女 性 達 に と っ て 、 子育てに専念する生活は、社会から取り残されたような焦りと不安を 募らせるものとなる。このように、始めに述べた母親の『声』のよう に、現実と理想の中で葛藤し、苦しんでいる母親達は多い。育児を優 先しなければならないという現実、そして、母親がいったん家庭に入 る と 、今 度 は 社 会 復 帰 が 至 難 の 業 と な る 現 状 が 存 在 し て い る の で あ る 。 母親達は、その現実に社会から疎外されたような孤立感に苛まれ、酷 い 焦 り を 覚 え る の で あ る 。「 ど う し て 今 の 母 親 達 は そ ん な に 焦 る の か 。 焦る必要ないではないか。今に嫌と言うほど一人の時間を持てる時が 来るのだから。そもそも子どもの小さい時の、限られた我慢がなぜで き な い の だ ろ う か 。」 と い う よ う に 思 う 人 も い る こ と だ ろ う 。 し か し 、 乳幼児の子育てに明け暮れている最中は、母親にとっては今が全てな のである。今の状況が一生続くと思うからこそ、絶望感に襲われるの で あ る 。 25 「母親ではあるけれど自分の人生も大切にしたい」といって動き出 す母親達の行動は、時として我ままと受け取られかねない。しかし、 社 会 参 加 を め ざ す 母 親 達 の 求 め て い る も の は 、「 私 探 し 」 な の で あ る 。 現代では、母親が自分を自分として認められる場を社会の中に持つこ とが、生き生きと日々を送るために不可欠な要素となってきているの 17 だ。そして、それこそが父親や働く母親にあって、専業主婦の立場で は得にくいものではないかと思う。専業主婦として暮らす母親達は、 子育ての意義や子どもを可愛いと思う気持ちを持つ大切さも精一杯理 解しようと努力している。しかし、家庭の中に閉じこもって、子ども とだけ向き合う生活の中では、 「 ○ ○ ち ゃ ん の マ マ 」以 外 の 自 分 を 見 出 しにくいのである。その見出せない環境や、自分自身に母親達は苛立 ってしまうのだ。けれど、自分が自分であるという確かな実感を親が 持てずに、どうして子どもがその子らしく成長していく過程を支援す ることができるのであろうか。母親達が自分探しに懸命になるのは、 我ままからではなく、子育て中であればこそ大切な試みなのである。 一方、子育てに専念する生活を自ら望んで選んだという女性も少なく ない。けれど、それでも尚、子育てが一段落した時を考えると自分の 生 活 に 不 安 と 焦 り を 感 じ る の だ と い う 。 26 / 27 しかし、子育ては、大変であっても、苦しい我慢だけが要求される ものではない。子育てには他の仕事には代えられない喜びもたくさん あるのだ。母親がそれを自然と感じられるようにする為には、子育て 以外の生活や時間を持つゆとりが不可欠なのである。そして、子育て が一段落した後の生活に展望が開かれていることが必要ではないだろ う か 。 母 親 が 先 を 見 通 す こ と の で き る 社 会 が 必 要 な の で あ る 。 28 では、働いている母親は本当に育児不安を抱え、孤立することはな いのだろうか。私は、それが疑問に思えてならなかった。 確かに、働きながらの子育ては、仕事にも子育てにも良い影響があ ると答える母親も多い。実際に、このことは、子育て市場のマーケテ ィ ン グ 調 査 な ど を 行 う 博 報 堂 の プ ロ ジ ェ ク ト チ ー ム「 博 報 堂 BaBU(ベ 18 イ ビ ー・ ビ ジ ネ ス・プ ロ ジ ェ ク ト )」の 意 識 調 査 で 明 ら か に も さ れ て い る。その調査の結果内容は次の通りであった。 博 報 堂 BaBU の サ イ ト で 0 歳 ∼ 5 歳 児 の 母 親 に 呼 び か け た と こ ろ 、 20 代 と 30 代 の 346 人 か ら 回 答 が 寄 せ ら れ た 。 仕 事 を 持 つ 母 親 は 106 人 、 専 業 主 婦 は 240 人 だ っ た 。 調 査 で は 、 70% が 「 子 育 て を 楽 し ん で い る 」、 93% が 「 子 育 て は 自 分 に プ ラ ス に な る 」 と 回 答 し た 。 し か し 、 同 時 に 85% が 「 育 児 ス ト レ ス を 感 じ る 」 と 答 え 、「 育 児 ノ イ ロ ー ゼ に なるかもしれないと思ったことがある」人は、今も思っている人も合 わ せ る と 、73% に も 上 っ た 。こ う し た 状 態 か ら 抜 け 出 し た き っ か け は 、 専業、有業とも「子どもの成長」が最多で、2 位が専業主婦が「ママ 友 達 が で き た 」、 働 く 母 親 で は 「 仕 事 を 始 め た 」「 子 ど も を 預 け る よ う に な っ た 」と 続 い た 。ま た 、働 く 母 親 の 76% が「 子 育 て が 仕 事 に 良 い 影 響 を 与 え る 」、83% が「 働 く こ と は 子 育 て に プ ラ ス に な る 」と 答 え た 。 専 業 主 婦 も 38% が 「 子 育 て 中 も 働 き た い 」、 70% が 「 子 ど も が 手 を 離 れ た ら 働 き た い 」 と 考 え て い る こ と が 分 か っ た 。 29 こ の よ う に 、子 育 て を し な が ら 働 く こ と は 、 「仕事にも子育てにも互 いにプラスになる」と考える母親が多く、専業主婦も働きたいと願う 人が多いことが分かった。実際に、1 節の中で述べたように、育児不 安は専業主婦より働く母親の方がはっきりと少ないということからも、 働くことは母親達に良い影響を与えているということが分かる。働く こ と は 、外 に 出 る 切 っ 掛 け に な り 、子 ど も と 離 れ て 自 分 の 時 間 を 持 ち 、 母親も子もその時間だけは自立することが出来る。社会に参加してい るという自信が持てることもメリットだろう。専業主婦との大きな違 いはそこにあるのではないだろうか。 19 しかし、社会に参加することでは保障されているが、働いている母 親も地域から孤立しているという意味では、専業主婦と同様なのでは ないかと私は考える。大和市の「子育て支援センター」では、専業主 婦だけでなく、休みの日は働く母親の利用も多いという。その母親の ほとんどが「働いているために地域と結びつきがもてない。近所の母 親 達 と 仲 良 く な れ な い 。子 育 て の 情 報 を 得 る こ と が 難 し い 。」等 と 訴 え るという。そして、専業主婦と同じような育児不安を抱えて相談に来 るというのだ。 「 NIRA 研 究 報 告 書 出 産・育 児 と 就 労 の 両 立 」の 調 査 報 告 書 30 で は 、 働く母親の地域からの孤立が結果として表れており、伺うことができ る。働いている母親も地域のネットワークシステムの利用を強く求め ていることが分かったのである。その内容とは、<①地域でお年寄り や子育て経験者をネットワークして、交流の場を作り、二重保育や病 児保育の時に力を貸して欲しい。②働く母親同士、地域でネットワー クを持ち協力し合うなど、情報交換する場をもちたい。>というもの であった。核家族化の進行などにより、働く母親も地域での社会参加 や人間関係が希薄化しているということが分かった。特に、この調査 においては、女性の働き方も約 9 割がフルタイムのパート・アルバイ トであり、平均出社時間と平均退社時間、それに平均通勤時間を加え る と お よ そ 10 時 間 を 仕 事 と 通 勤 に あ て て い る こ と に な る 。 こ の た め 、 移 住 地 域 で 過 ご す 時 間 を ほ と ん ど も て な い の が 現 状 で あ っ た 。こ れ は 、 雇用者として働く男性が地域参加する時間を持てないでいる状況と同 様である。子どもが学童年齢に達する頃までには保育園なり、学校を 通して徐々に地域ネットワークを持つことも可能になるようだが、地 域の情報や身近な援助を最も必要とする妊娠中と乳幼児期には、働く 20 母親自身もその家庭も地域と隔絶して生活しているということが分か っ た 。「 保 育 園 や 病 院 の 情 報 を 得 た い 」、 ま た は 肉 親 の 援 助 が 得 ら れ な い核家族においては「二重保育や緊急時の保育の助けを借りたい」な ど働く女性は地域のネットワークを必要としている。しかし、現状で は地域との繋がりが少なく、しかも自らがネットワーク作りにどう働 きかければよいのか分からない母親が多いのだという。民間や行政へ のネットワーク作りへの期待も大きく、どう活動していいか分からな いからこそ、期待も募っているのではないかと考える。しかし、過去 には学童保育の全国運動など、働く母親が中心となってネットワーク を作り、保育設備のレベル向上に寄与してきたという例もある。この ことからも、ネットワーク作りの切っ掛けは行政や民間サービスであ っても、内容を深めていくのは保護者自身であることが望ましいと考 え る 。 31 このように、働く母親も専業主婦同様、地域から孤立しているとい う現状が存在する。働いているからといって、育児不安が解消され、 孤立もしないとは必ずしも一概には言えないのである。これらのこと を振り返ると、行政機関や地域の人々の支援は、今後ますます母親達 に期待されることだろう。そして、子育てというものは、母親の生き 方が社会の中だけでなく、地域の中でも保障されて初めて、豊かなも のとなるのではないかと感じた。 21 第2章 1節 日本の子育て支援の取り組み エンゼルプランの動向 このように、母親の孤立、育児不安は現在に深刻な問題として存在 しており、一刻も早く母親を孤立から解放し、安心して子育ての出来 る環境を作ることが求められている。しかし、近年の核家族化の進行 に伴う家族形態の変化や、都市化の進展に伴う人間関係の希薄化によ り、子育て中の親が気軽に相談できる相手や仲間が身近な地域にいな いなど、家庭や地域における子育て支援機能の低下が問題とされてい る。その機能低下が「密室育児」による孤立感を増大させ、育児ノイ ローゼや児童虐待などの深刻な問題を生じさせているのだという指摘 も高まっている。このことは、第 1 章の中で取り上げた母親の孤立の 現状からもよく分かる。 わが国では、こうした問題を含めて、様々な子育て支援の取り組み が考えられてきた。中でも、世界に類を見ない速さで「少子化・高齢 化」が進んでいるわが国では、出生率の低下を背景にした少子化対策 の一環として、子育て支援への取り組みが始まったのだと言えるだろ う。 ここでわが国における子育て支援の取り組みを簡単に振り返ってみ る と 、 遡 る こ と 1990 年 、 前 年 の 合 計 特 殊 出 生 率 が 1966 年 の 1.58 を 下 回 っ た こ と が 明 ら か に な り 「 1.57 シ ョ ッ ク 」 と 騒 が れ た 年 に 、「 健 やかに子供を産み育てる環境作りに関する関係所長会議」が設置され た 。1992 年 に は 、経 済 企 画 庁 が 国 民 生 活 白 書 の 副 題 を「 少 子 社 会 の 到 22 来、その影響と対応」として、出生率低下に伴う諸問題を本格的に取 り 上 げ た の で あ る 。 32 厚生省が、厚生白書を「未来をひらく子どもたちのために子育ての 社 会 的 支 援 を 考 え る 」 と 題 し て 発 表 し た の は そ の 翌 年 の 1993 年 の こ と だ っ た 。 そ し て 、 1994 年 12 月 に 文 部 、 厚 生 、 労 働 、 建 設 省 4 大 臣 による合意によって「今後の子育て支援のための施策の基本的方向に つ い て (エ ン ゼ ル プ ラ ン )」 が 策 定 さ れ 、 わ が 国 の 子 育 て 支 援 対 策 は 本 格 的 に ス タ ー ト を 切 っ た の で あ る 。 33 このエンゼルプランは、 「子育てはとかく夫婦や家庭の問題ととられ がちであるが、その様々な制約要因を除外していくことは、国や地方 自治体はもとより、企業・職場や地域社会を含めた社会全体の役割で も あ る 」 34 と い う 観 点 か ら 子 育 て 支 援 社 会 へ の 構 築 を 目 指 し て 位 置 付 けた施策である。 施策の中では、少子化となった要因の背景として、女性の職場進出 と子育てと仕事の両立の難しさをあげている。女性の高学歴化、自己 実現意欲の高まり等から女性の職場進出が進み、各年齢層において労 働力率が上昇しており、将来においても引き続き伸びる見通しである 時代にも関わらず、子育て支援体制が十分でないこと等から子育てと 仕事の両立の難しさが存在していると指摘している。また、夫婦の子 育てについての意識をみると、理想とする子供数を持とうとしない理 由として、育児の心理的・肉体的負担に耐えられないという理由がか なり多く存在しているという。晩婚化の要因としても女性の経済力の 向上や独身生活の方が自由ということのほかに、家事、育児への負担 感や拘束感が大きいとあげられている。住宅事情と出生動向では、わ 23 が国では大都市圏を中心に、住宅事情が厳しい地域で出生率が低いと いう傾向がみられると指摘されている。また、教育費等の子育てコス トの増大も大きな要因とされている。平成 5 年の厚生白書によると、 子どもを持つ世帯の子育てに要する経費は相当に多額なものになって おり、夫婦と子ども 2 人世帯のモデルの場合、第 2 子が大学へ入学す る 時 点 で の 子 育 て コ ス ト は 可 処 分 所 得 の 約 70% と 試 算 さ れ て い る 。ま た、一方で、近年教育関係の消費支出に占める割合も増加してきてい る 。 35 このように、現在子育てをめぐる環境は厳しさを増しつつある。そ して、少子化傾向が今後も続き、子ども自身に与える影響や将来の少 子化による社会経済への影響が一層深刻化し、現実のものとなること を 考 え る と 、見 過 ご す こ と の 出 来 な い 状 況 に ま で 陥 っ て い る の で あ る 。 これらの危機的要因を踏まえて、子育て支援への方向が位置付けられ たが、エンゼルプランの基本的視点としては、以下のことが必要とさ れている。 ・子どもを生むか生まないかは個人の選択に委ねられるべき事柄であ る が 、 「子 ど も を 持 ち た い 人 が も て な い 状 況 」を 解 消 し 、 安 心 し て 子 どもを生み育てることが出来るような環境を整えること。 ・今後とも家庭における子育てが基本であるが、家庭における子育て を支えるため、国、地域、企業、学校、社会教育施設、児童福祉施 設、医療機関などあらゆる社会の構成メンバーが協力していくシス テムを構築すること。 ・子育て支援のための施策については、子どもの利益が最大限尊重さ れ る よ う 配 慮 す る こ と 。 36 24 この基本的視点を柱に子育て支援の方向は、次のとおりとされた。 (1 ) 子 育 て と 仕 事 の 両 立 支 援 の 推 進 育児休業制度の充実や労働時間の短縮の推進をはじめ労働者が子育 て を し な が ら 安 心 し て 働 く こ と が 出 来 る 雇 用 環 境 を 整 備 す る 。さ ら に 、 低年齢児保育サービスの整備を図るとともに保育所制度の改善・見直 しを含めた保育システムの多様化・弾力化を進める。 (2 ) 家 庭 に お け る 子 育 て 支 援 子育ては家庭の持つ重要な機能であることに鑑み、その機能が損な われないよう、夫婦で家事・育児を分担するような男女共同参画社会 をつくりあげていくための環境作りなどを含め、家庭生活における子 育て支援策を強化する。 また、核家族化の進行に伴い、育児の孤立感や不安感を招くことに な ら な い よ う 、安 心 し て 出 産 出 来 る 母 子 保 健 医 療 を 整 備 す る と と も に 、 児童委員等のボランティアの協力のもとに地域子育てネットワーク作 りを推進する。 (3 ) 子 育 て の た め の 住 宅 及 び 生 活 環 境 の 整 備 ゆとりを持って子どもを生み育てることができるよう、良質な住宅 の供給及び住替えの促進等により、ライフサイクルに応じた住宅の確 保が容易にできるようにするとともに、家族だんらんのあるゆとりあ る住生活を実現する。 子どもの健全な成長を養えるため、遊び、自然との触れ合い、家族 の交流の場、児童厚生施設、スポーツ施設、社会教育施設、文化施設 等を設備するとともに、子どもにとって安全な生活環境を整備する。 (4 ) ゆ と り あ る 教 育 の 実 現 と 健 全 育 成 の 推 進 子育て家庭の子育てに伴う心理的な負担を軽減するために、ゆとり 25 ある教育を実現する。また、青少年団体の諸活動、文化・スポーツ活 動等の推進による多様な生活・文化体験の機会の提供、子ども同士や 高齢者との地域社会による触れ合い、ボランティア体験などを通じて 子どもが豊かな人間性を育めるような家庭や社会の環境作りを推進す る。 (5 ) 子 育 て コ ス ト の 軽 減 子育てに伴う家計の負担の軽減を図ると伴に、社会全体としてどの よ う な 支 援 方 策 を 講 じ て い く か 検 討 す る 。 37 この施策の具体的目標は「当面の緊急保育対策等を推進するための 基 本 的 考 え 方 」 (緊 急 保 育 対 策 等 5 か 年 事 業 )に 示 さ れ て い る 。 1994 年 実 績 ・ 低 年 齢 児 (0~2 歳 児 )保 育 45.1 万 人 1999 年 目 標 → 59.8 万 人 〔保育所受け入れ枠の拡大〕 1649 箇 所 ・延長保育 7000 箇 所 → 〔 通 常 の 11 時 間 を 越 え る 保 育 〕 387 箇 所 ・一時的保育 → 1500 箇 所 〔専業主婦家庭の休養・急病や育児疲れ解消、パート就労に対応し た一時預かり〕 7 箇所 ・乳幼児健康支援一時預かり事業 → 500 箇 所 〔病気回復期にある乳幼児の保育〕 5313 箇 所 ・放課後児童クラブ → 9000 箇 所 〔保護者が労働などにより昼間家庭にいない小学校低学年児童の放 課後対策〕 26 118 箇 所 ・ 地域子育て支援センター → 1500 箇 所 〔 育 児 相 談 や 育 児 サ ー ク ル 支 援 等 を 行 う セ ン タ ー 〕 38 / 39 1994 年 度 の 実 績 を も と に 、 1999 年 ま で の 5 年 間 を 目 安 と し て 目 標 が た て ら れ た 。 こ う し て 、 エ ン ゼ ル プ ラ ン は 1994 年 に 策 定 さ れ 、 緊 急 保 育 対 策 等 5 か 年 事 業 に 示 さ れ た 目 標 数 字 の 実 現 を 目 指 し て 、1995 年に施行されたのである。 し か し 、 2003 年 を 目 の 前 と し た 現 在 、 1999 年 へ の 目 標 で あ る エ ン ゼ ル プ ラ ン の 少 子 化 対 策 は 達 成 さ れ た の だ ろ う か 。1999 年 の 達 成 状 況 を見てみると、0 歳∼2 歳児を受け入れる低年齢児保育の拡大の他は、 当初の計画目標を下回る結果となっている。 1999 年 目 標 1999 年 実 績 ・低年齢児保育 59.8 万 人 → 56.4 万 人 ・延長保育 7000 箇 所 → 5125 箇 所 ・一時保育 1500 箇 所 → 685 箇 所 450 箇 所 ・乳幼児健康支援一時預かり事業 9000 箇 所 ・放課後児童クラブ → 8392 箇 所 → 1500 箇 所 ・地域育児支援センター 110 箇 所 → 997 箇 所 40 / 41 エンゼルプランの目標達成が実現されない理由として、縦割り行政 の問題、不景気がさらに深刻化して予算の獲得が難しくなっている状 況などが指摘された。自治体の多くは財政難に陥っていて、国の補助 27 があっても新規事業に取り組む余力が乏しい状況であった。さらに、 出生率の回復が急に見込めない現状に対して、プランの実効性に疑問 の声が上がる一方、高齢者福祉サービスに対する世論の要求の高まり も重なって、子育て支援の予算確保が至難の業となったのが原因であ る と い わ れ て い る 。 42 し か し 、 最 も 根 本 的 な 原 因 は 、 少 子 化 を も た ら している原因に対する把握が、行政府関係者に充分でない点にあるの で は な い か と 私 は 考 え る 。つ ま り プ ラ ン の 中 で は 、 「子育てと仕事の両 立支援」や「家庭における子育て支援」を基本的視点として上げてい るが、その必要性をどこまで緊要課題として理解しているかという問 題ではないかと思う。 2節 新エンゼルプランの動向 2000 年 度 か ら は 、 「 少 子 化 対 策 基 本 方 針 」に 基 づ い て 策 定 さ れ た「 重 点 的 に 推 進 す べ き 少 子 化 対 策 の 具 体 的 実 施 計 画 (新 エ ン ゼ ル プ ラ ン )」 による子育て支援施策が推進され、さらに一層踏み込んだ対策を図っ て い る 所 で あ る 。従 来 は 働 い て い る 母 親 の 支 援 が 目 的 と な っ て い た が 、 家庭で保育している母親がリフレッシュするために、子どもを預ける など利用できるようになったファミリーサポートセンターの整備や、 休日保育の拡大も目標数字が明確化され、本格的に推進されるように な っ た 。〔 資 料 10 参 照 〕 43 ま た 、エ ン ゼ ル プ ラ ン 施 行 の 時 点 で は 、働 く 母 親 の 支 援 が 重 視 さ れ 、 家庭で子育てをしている母親の支援があまり重要視されていなかった。 しかし、この新エンゼルプランでは、働いている母親の支援だけでな く、家庭で子育てをしている母親も含めた、全ての母親を対象に支援 28 し て い く こ と を 方 針 と し て お り 、様 々 な 支 援 策 が 考 え ら れ て い る 。 〔資 料 11 参 照 〕 44 資 料 10 <新エンゼルプランの目標> 2000 年 度 0∼ 2 歳 児 の 受 け 入れの拡大 延長保育 59.8 万 人 センター 一時保育 予 算 (案 ) 目標値 61.8 万 人 64.4 万 人 68 万 人 9000 箇 所 10000 箇 所 10000 箇 所 200 箇 所 450 箇 所 300 箇 所 2100 箇 所 2400 箇 所 3000 箇 所 2500 箇 所 3500 箇 所 3000 箇 所 182 箇 所 286 箇 所 180 箇 所 10000 箇 所 10800 箇 所 11500 箇 所 (152) (1376) 1800 箇 所 (1700) 1800 箇 所 フ ァ ミ リ ー ・サ ポ (116) ー ト ・セ ン タ ー 82 箇 所 放課後児童クラ (9402) 9500 箇 所 ブ 2004 年 度 (8052) 100 箇 所 地域子育て支援 2002 年 度 (59.3) 8000 箇 所 休日保育 2001 年 度 注: 〔 朝 日 新 聞 2001 年 12 月 28 日 2000 年 度 の 上 段 ( )は 実 績 値 く ら し 欄「 ど う な る ? 子 育 て 支 援 」 より〕 29 資 料 11 しかし、家庭で子育てをしている母親を含めた支援というが、資料 10 に 示 す 2000 年 度 の 実 績 を 見 て も 、 働 く 母 親 の 支 援 が 目 標 を 達 成 、 または、上回っているのに対して、家庭で子育てをしている母親が利 用することの多い地域育児センターの整備や一時保育の整備は、若干 で は あ っ て も 目 標 達 成 に 至 っ て い な い 。 2004 年 ま で に は 両 支 援 と も 3000 箇 所 と い う 大 き な 目 標 値 を 立 て て い る が 、働 く 母 親 の 支 援 目 標 値 に比べると、やはり少ないのが現状である。 子どもを持つ全ての親に対して成されなければならない支援のはず だが、家庭での子育てに対する支援はまだまだ十分ではないように感 じた。働く母親に対する支援が重要視されるあまり、家庭で子育てす 30 る母親に対しての支援が後回しになっているようにすら感じられる。 子育て支援が従来の課題と異なるのは、支援対象が就労の有無に関わ ら ず 、「 子 育 て 中 の 全 て の 親 」 で あ る こ と だ 。 核 家 族 化 の 進 行 に 伴 い 、 家庭内の子育て資源が乏しい中、 「 子 ど も を 育 て る 機 能 」が 社 会 的 支 援 なくしては成り立たなくなってきている。母親の孤立や育児不安の問 題を考えると、家庭で子どもを育てる親のための支援策も、もっと充 実させる必要があると考える。 その一方、予算額についていうと、新エンゼルプランの予算額の推 移 を 1995 年 度 か ら 実 施 さ れ た エ ン ゼ ル プ ラ ン と 合 わ せ て み る と 、1995 年 度 に は 1998 億 円 だ っ た も の が 2002 年 度 に は 3304 億 円 に な っ た 。 〔 資 料 12 参 照 〕ま た 、保 育 所 運 営 費 も 年 々 増 え 続 け 、2001 年 度 の 3915 億 円 か ら 2002 年 度 は 4071 億 円 に 伸 び て い る 。こ れ は 、従 来 に 比 べ る と 大 き な 変 化 で あ る 。 45 資料12 31 し か し 、働 く 母 親 に お い て 言 え ば 、 「子育て支援の対応に変化はある よ う だ が 、そ の 実 感 は ほ と ん ど 得 ら れ な い 」と い う 声 が 多 い と い う 。46 社会状況がそれを上回るペースで変化し、母親の実態に施策が追いつ いていないという現状が存在するからであろう。子育て支援と共に、 親の働き方を見直す議論を始めなければ、予算が増えてもこの現状は 変わらないのではないだろうか。そして、働く母親の問題が少しでも 解決に向かわなければ、将来働きに出たいと願う母親達も安心して子 育てをすることはできないだろう。将来への展望が開かれていなけれ ば、母親の社会に出られない焦りは増し、育児不安や孤立の問題も解 決されないと考えるからである。孤立しがちな母親のためにも、地域 の支援と同様、働く母親の支援も充実させていく必要があるのだ。 厚 生 労 働 省 は 、2003 年 に 向 け て 、地 域 社 会 で の 子 育 て 支 援 の 諸 施 策 と し て 予 算 を 約 2230 億 円 か け る 方 針 で あ る こ と を 明 ら か に し た 。 一 時保育など多様な子育てを支援する情報を一元的に把握し、利用者に 提供する子育て支援コーディネーターを各市町村に配置したり、小学 校区ごとに子育て支援委員会を設けたりする事業を始めるという。ま た、年長の子どもが赤ちゃんと交流することで、将来の育児不安や虐 待を予防する事業にも乗り出す。子育てサークルの支援や育児相談を 行 う「 地 域 育 児 支 援 セ ン タ ー 」を 300 箇 所 増 や し 、2700 箇 所 に 拡 充 す る と も 発 表 さ れ た 。〔 朝 日 新 聞 2002 年 8 月 22 日 「 少 子 化 対 策 労 働 省 要求 地域の子育て支援重点」より〕 少子化対策が騒がれるようになった現在、ますます子育て支援のあ り方は問われるようになってきている。そして、行政や地域市民の活 32 動への期待も一層高まりつつある。現状や目標だけでとどまるのでは なく、目に見える子育て支援対策が今後求められるのではないだろう か。形ばかりの支援ではなく、安心して子育てをすることが出来る、 本当の意味での子育て支援を忘れてはならないと感じた。 33 第3章 1節 母親を孤立させないために ∼地域社会が親と子を育てる∼ 地 域 子 育 て 支 援 グ ル ー プ「 わ ら し っ こ 倶 楽 部 」の 活 動 第 2 章では、家庭での子育ても対象に含めた様々な子育て支援の資 源を地域に用意することの必要性を指摘した。しかし、子育てという のは極めて日常的な営みである。それゆえ、制度において行政が提供 するサービスだけでは、どうしても業務のボリュームが多すぎて、支 援が行き渡らないという状況が生じると考えられる。 それを補充するためには、子育て支援の担い手が地域の中から生ま れ、自主解決の体制での新たな子育てコミュニティが形成されること が望ましいと考える。具体的には、子育ての当事者や経験者がグルー プを作りネットワークを組んで、親子で気軽に参加できる情報交換の 場や、同じ年頃の子どもを持つ親として悩みを解消し合える場を作り 出すという活動が、有効な方法として期待できると考える。 新エンゼルプランが施行されてからは、行政の呼びかけもあってか 地域の意識も高まり、様々な地域で子育てサークルのグループや子育 て講座・教室などが増え始めるようになった。子育ての情報を欲しが る母親が多いせいか、地域での活動を求め、利用する母親も増えてい るという。 大和市で活動する「子育て支援グループ わらしっこ倶楽部」も母 親達から求められている地域コミュニケーションの場の一つである。 わらしっこ倶楽部は、地域の人達がボランティアとして自主的に立ち 34 上げたボランティア子育てサークルである。活動は大和市で行ってい るが、大和市の者に限らず誰でも活動に参加することができ、私が住 んでいる相模原市からも隣の市ということもあり、多くの親子が参加 している。発足してから 8 年になるが、母親達に慕われる地域に深く 根付いたサークルである。 わ ら し っ こ 倶 楽 部 は 、1994 年 に「 母 親 の 育 児 不 安 や 幼 児 虐 待 、子 ど もを取り巻く環境や遊びなど、子育てをめぐる様々な問題について共 に考え、子育てに悩みを抱える母親などの支えになりながら、また子 ど も 達 の 健 や か な 成 長 を 願 い 、問 題 解 決 に 向 け て 取 り 組 ん で い く こ と 」 を 目 的 と し て 始 ま っ た 。 発 足 し た き っ か け は 、1993 年 (平 成 5 年 )に 大 和市社会福祉協議会で、地域の子育て支援者を養成することを目的に 開 催 さ れ た「 コ ミ ュ ニ テ ィ ・カ レ ッ ジ‘ 93∼ 社 会 福 祉 基 礎 コ ー ス 」の こ とだった。講座終了後、受講者の中で児童問題に関心のある者が集ま り、子育てをめぐる問題や自分達で何が出来るかを話し合う中で、子 育てに悩む母親達の身近な相談者として、子育てを支援するグループ を作ろうと声を掛け合い、始めることとなった。誰からも強制される ことなく自分達の意志で始め、行政からのサポートを受けながらも自 主的に作り上げてきたこのサークルを、私は今最も必要とされる地域 支 援 で は な い か と 感 じ た 。運 営 は 、国 か ら の 助 成 金 で あ る 3 万 円 (年 間 ) で 活 動 し て い る が 、社 会 福 祉 協 議 会 に ボ ラ ン テ ィ ア 団 体 と し て 入 会 し 、 年間 5 千円を会費として支払わなければいけないため、2 万 5 千円で 収 ま る よ う に 活 動 を 計 画 し て い る 。ス タ ッ フ は 、保 育 士・幼 稚 園 教 論 ・ 栄養士・子育て経験者・子育て真っ最中の母親など、子育ての問題を 一緒に考えていこうと集まった人達で成り立ち、全てボランティアで ある。スタッフ人数は、代表である篠原富子さんを筆頭に、現在 7 人 35 で 活 動 中 で あ る 。 47 本 来 は 10 人 だ が 、 3 人 休 み の 状 態 で あ り 、 ぎ り ぎ りの人数で活動しているというのが現状である。ボランティアスタッ フ自身も子育て真っ最中の母親が多いため、活動の継続はなかなか難 しいという。しかし、現在わらしっこ倶楽部を利用している母親の中 にも、 「 子 育 て が 一 段 落 つ い た ら 、今 度 は ボ ラ ン テ ィ ア と し て わ ら し っ こ 倶 楽 部 に 参 加 し た い 。」と い う 声 も 多 い 。実 際 に 、今 の ス タ ッ フ も 昔 わらしっこ倶楽部に参加していた者が多く、世代ごとに受け継がれる 地域の子育て支援が今後期待されると考える。 活動は、大和市保健福祉センター内で、月 1 回第 3 火曜日に交流会 を開催し、月1回第 2 火曜日に乳児室を開放し、主に 0 歳児の交流の 場を提供している。また、その他には子育て情報などの発行もしてお り、情報の伝達に役立てている。 交流会、乳児室の開放では「子どもを遊ばせながら子育ての話がで きる場を提供すること」を目的としており、楽しいこと、悩んでいる こと、要望などを気軽に話し合うことのできる環境作りを心掛けてい る。 〔 交 流 会 〕 (第 3 火 曜 日 開 催 ) わらしっこ倶楽部のメインである交流会は、0 歳児から参加するこ とができ、主に 0 歳∼3 歳ぐらいの子どもと母親が一緒に参加してい る。参加は、時前に申し込みなどは必要なく、直接会場に行けば参加 す る こ と が で き る 。 開 催 時 間 は 、 午 前 10 時 ∼ 12 時 で 、 そ の 間 の 出 入 りは自由にでき、来たい時に来て、帰りたい時に帰ることが出来る。 活動の部屋は、和室で行われる乳児の部屋と、講習室で行われる幼 児の部屋に分かれている。毎回、乳児の部屋と幼児の部屋を合わせて 36 50 組 前 後 の 親 子 が 参 加 し て お り 、多 く の 人 数 が 集 ま る と い う 。私 が 活 動 を 見 学 し に 行 っ た 10 月 15 日 (火 )の 交 流 会 で は 、 乳 児 の 部 屋 と 幼 児 の 部 屋 を 合 わ せ て 57 組 も の 親 子 が 参 加 し た 。そ の 内 、初 め て 来 た 親 子 は 17 組 も い た 。 酷 い 台 風 の 日 で も 、 30 組 も の 親 子 が 参 加 し に 来 る と いうのだから驚きである。いかに母親と子どもが外に交流の場を求め ているのかが分かる。また、乳児の部屋と幼児の部屋のどちらに参加 するかは、母親の判断に任されており、自由に行き来することが出来 る。ただ、事故に関しては、母親の責任において注意するよう強く呼 びかけていた。 乳 児 の 部 屋 は 、主 に 0 歳 ぐ ら い で 、ま だ 立 つ こ と が 出 来 な い「 ハ イ 、 ハイ」の段階の赤ちゃんが参加する場である。特に行事はないが、子 ど も を 遊 ば せ な が ら 、母 親 が リ ラ ッ ク ス で き る「 お し ゃ べ り の 場 」 「交 流の場」となっている。部屋にはたくさんのオモチャがあり、自由に 遊ばせることができる。オモチャは、全て、篠原さんの知り合いや、 わらしっこ倶楽部に昔参加していた母親が、子育てが終わり、要らな くなったオモチャを寄付してくれ、成り立っている。また、乳児の場 合、3 ヶ月に 1 回保健婦が来室し、健康測定や様々な育児相談を行っ て い る 。 毎 回 、 100 人 ぐ ら い の 子 ど も が 集 ま り 、 中 に は 熱 心 に 相 談 を 受けて帰る母親もいるという。 幼児の部屋は、主に 1 歳∼3 歳の立ち歩きの出来る子どもが参加す る 場 で あ る 。部 屋 に 入 る 前 に 、名 字 と 子 ど も の 名 前 、住 ん で い る 場 所 、 子どもの生まれた日が書かれた名札が配られ、それを付けて参加する ことになっており、名札を見ることで母親達の交流がしやすくなるよ うに工夫をしている。活動内容は、毎回違い、月 1 回行われるスタッ フ会で子ども達が楽しめる遊びをスタッフ自身が考え、用意すること 37 に な っ て い る 。私 が 見 学 し に 行 っ た 日 は 、 「 ダ ン ス リ ト ル バ ー ド 」と 呼 ばれる体操や手遊び、 「 お 買 い 物 ご っ こ 」と「 ま ん ま る ち ゃ ん 」と い う スタッフ手作りのパネルシアター、玉入れやマット・トンネル・平均 台の上を歩き回るミニ運動会、そして、最後にスタッフの手作りであ る紙芝居が行われた。わらしっこ倶楽部では、家では出来ない遊びを 心掛けており、子どもも親も一緒になって体を動かし思い切り発散し て い る 姿 が 印 象 的 だ っ た 。 ス タ ッ フ は 、「 わ ら し っ こ 倶 楽 部 の 中 で は 、 出来るだけ子ども達を自由にさせて欲しい。ここでは、いつもの‘だ め ,は な る べ く 言 わ な い で 欲 し い 。」と 呼 び か け て い る と い う 。そ の 方 針があってか、活動が行われている時間も出入りは自由で、中には廊 下で遊ぶ子どももいるなど、親も子どもも自由に時間を過ごしている と感じられた。また、パネルシアターや紙芝居、ミニ運動会の後に全 員に配られたメダルなど、全てがスタッフの手作りであり、その自主 的活動の凄さとスタッフの努力には驚かずにはいられなかった。 私 が 交 流 会 に 参 加 し た 日 は 、 17 組 と 始 め て 来 た 親 子 が 多 か っ た が 、 子どもは最初の内は泣いているが、しばらくすると直ぐに慣れてしま う子どもが大半だった。しかし、母親は初めてではなかなか慣れない ようで、戸惑っている様子が多く伺えた。それは、わらしっこ倶楽部 は 参 加 の 人 数 が 多 い た め 、尚 更 で は な い か と 感 じ た 。中 に は 馴 染 め ず 、 最初だけ来てその後は来なくなってしまう母親もいるという。活動日 数を増やし、慣れる機会を多くすることや、活動の場を広くすること が今後の課題となると感じた。実際に、そういった要望を母親達から も多く受けるという。しかし、ぎりぎりの人数のスタッフで運営して いるため、それも難しいのが現状である。そのため、他の子育て機関 38 やサークルの紹介にも力を入れ、利用の呼びかけを行っている。 また、場慣れするためには、交流会の「乳児の部屋」や「乳児室開 放日」の存在は欠かせないものとなっている。小さい内からわらしっ こ倶楽部に参加し、 「 乳 児 の 部 屋 」や「 乳 児 室 開 放 日 」で 友 達 の 和 を 作 ってから、その仲間と皆で交流会の「幼児の部屋」に移るという親子 の ケ ー ス が 多 い よ う だ 。 交 流 会 で は 、「 乳 児 の 部 屋 」 と 「 幼 児 の 部 屋 」 を分けることによって母親がどちらの環境も実際に見て把握すること が出来るというメリットもあると感じた。 代 表 の 篠 原 さ ん は 、「 小 さ い 頃 か ら 集 団 に 慣 れ る こ と が 大 切 で あ り 、 こ こ が 幼 稚 園 や 小 学 校 に 入 る ま で の 予 行 練 習 に な れ ば 良 い 。」と 話 し て い た 。 ま た 、「 母 親 自 身 も こ の わ ら し っ こ 倶 楽 部 に 来 る こ と に よ っ て 、 日 常 で 抱 え る 育 児 不 安 を 発 散 し て 帰 っ て 欲 し い 。」 と 強 く 願 っ て い た 。 〔子育て情報等の発行〕 身近な子育て情報を共有し、提供することを目的として始められた 子 育 て 情 報 等 の 発 行 も わ ら し っ こ 倶 楽 部 の 大 き な 役 割 と な っ て い る 。3 ヶ月に 1 回発行される「わらしっこだより」では、幼稚園・保育園・ 学習センター・子育て支援センター・子育てサークル・市民図書館等 の紹介や、リズム遊び・歌・工作等の遊びに関すること、離乳食の始 め 方 や レ シ ピ・病 気・子 ど も へ の 接 し 方 な ど の 子 育 て に 関 す る こ と 等 、 多くの情報を掲載している。また、わらしっこ倶楽部自身の紹介もし ており、子育て支援センターで配ってもらうなど、呼びかけにも利用 している。 毎回、交流会の時には「親子で遊ぼう!」という歌や手遊び、工作 など、その日遊ぶことが書かれたプリントが配られる。これも全てス 39 タッフの手作りであり、親子で楽しく遊べるよう様々な工夫がされて いる。中には、家に持って帰って、それを見ながらまた子どもと遊ぶ という母親の声も多かった。 交流会終了時には、毎回子育てに関するアンケートや、スタッフへ の質問や要望を「交流会アンケート」に書いてもらう。これは、強制 ではなく、自由参加として行っているが、毎回ほとんどの母親が協力 してくれるという。そのアンケート結果や質問の答えは、次回の交流 会で話され、参加すれば聞くことが出来る。また、意見や要望は今後 の活動の参考にしている。 そ の 他 に は 、「 ぽ っ か ぽ か 大 和 市 公 園 マ ッ プ 」 (1997 年 4 月 発 行 、 当時 3 百円で販売し、得たお金は運営費として使われているが、現在 で は 無 料 で 配 っ て い る 。 )、「 子 連 れ で 利 用 し や す い 店 」、「 他 機 関 の 子 育 て 支 援 の 取 り 組 み ・ 紹 介 」、「 幼 稚 園 一 覧 」、「 子 育 て 支 援 ア ン ケ ー ト 子育ては楽しいですか?」等、様々な情報を登載、発行している。こ れらも全てスタッフの手作りで作成されたものである。 現 在 、 わ ら し っ こ 倶 楽 部 に 登 録 し て い る 人 数 は 200 人 近 く い る が 、 もう幼稚園に入学してしまい、わらしっこ倶楽部を卒業した子どもも 多くいる。しかし、毎回のように登録者は増え、参加する人数が減る ことは無い。わらしっこ倶楽部を利用する親子も、活動を運営するス タッフも共に、世代ごとに受け継がれ、これからも地域に根付いた子 育て支援の場であり続けるだろうと私は感じた。 40 2節 今、母親達が求めているものとは? ∼「わらしっこ倶楽部」アンケートから考える∼ 1 節では、わらしっこ倶楽部の活動を紹介したが、この節では、地 域の育児力が低下している現状において、子育て中の母親は、どのよ うな気持ちで日常子どもと向き合い、また何を欲し、具体的にどのよ うな要求を持っているのかを「子育て支援アンケート」から考察して いきたいと思う。 『 子 育 て 支 援 ア ン ケ ー ト「 子 育 て は 楽 し い で す か ? 」』は 、わ ら し っ こ倶楽部が今後の子育て支援活動の参考にしようと、母親達に協力し て も ら い 、2002 年 3 月 に 集 計 し た も の で あ る 。調 査 対 象 と 人 数 は 、大 和 市 子 育 て 支 援 セ ン タ ー の「 子 育 て サ ロ ン 」参 加 者 55 人 と 、わ ら し っ こ 倶 楽 部 の「 親 子 交 流 会 」参 加 者 89 人 か ら 得 ら れ た も の で あ る 。ア ン ケート記入時の母親は、我が子を見ながらその場にて短時間で記入と いう状況であったという。しかし、それにもかかわらず、全体的に書 き 込 み が 非 常 に 多 く 、一 人 一 人 の 母 親 の 切 実 な 生 の 声 が 伝 わ っ て き た 。 結果は次の通りである。 Q1 あ な た の 年 齢 は 何 歳 で す か 。 Q2 お 子 さ ん の 性 別 と 年 齢 を 教 え て く だ さ い 。 41 Q3 お 子 さ ん と 同 居 し て い る ご 家 族 は ど な た で す か 。お 子 さ ん か ら 見 た 続柄でお答えください。 ① 父 親 142 人 ⑤兄弟姉妹 4 人 ② 母 親 144 人 ③ 祖 父 15 人 曾お祖母さん 1 人 ④ 祖 母 15 人 おじさん 1 人 * 回 答 者 の 年 齢 は 〔 25∼ 29 才 〕 30.6% 〔 30∼ 34 才 〕 50.0% と 若 く 、 子 の 人 数 は〔 一 人 っ 子 〕が 73.6% と 多 い 。子 の 年 齢 も〔 0∼ 1 才 〕57.0% であることを考え合わせれば、第 1 子を子育て中の母親が多く、今 後 、第 2 子 第 3 子 と 出 産 の 可 能 性 が あ る 。ま た 、 〔 核 家 族 〕が 86.8% と 大 半 を 占 め 、〔 同 居 〕 は 僅 か 13.2% で あ る 。 Q4 子 育 て は 楽 し い と 思 い ま す か 。〔 回 答 数 143〕 ① 楽 し い 72 人〔 50.3% 〕② ど ち ら か と い え ば 楽 し い 61 人〔 42.7% 〕 ③ ど ち ら と も い え な い 9 人 〔 16.3% 〕 ④ ど ち ら か と い え ば 楽 し め な い 1 人 〔 0.7% 〕 Q5 育 児 に 関 し て 悩 む こ と は あ り ま す か 。〔 回 答 数 143〕 ① い つ も 悩 ん で い る 8 人〔 5.6% 〕② 時 々 悩 む 72 人〔 50.3% 〕③ た ま に 悩 む 52 人 〔 36.4% 〕 ④ 悩 む こ と は な い 11 人 〔 7.7% 〕 Q6 ど ん な こ と に 悩 み ま す か 。〔 複 数 回 答 〕 ① し つ け の ト ラ ブ ル 99 人 食 事 に 関 す る 悩 み 〔 32 人 〕 離 乳 食 に 関 す る 悩 み 〔 19 人 〕 断 乳 に 関 す る 悩 み〔 2 人 〕ト イ レ ッ ト ト レ ー ニ ン グ に 関 す る 悩 み〔 19 人 〕 自 我 の 発 達 に 関 す る 悩 み〔 13 人 〕睡 眠 に 関 す る 悩 み〔 3 人 〕そ の 他 (癖 、 性 格 等 )〔 17 人 〕 ② 発 達 に 関 す る 悩 み 18 人 身体・体重に関する悩み〔5 人〕言葉に関する悩み〔5 人〕歩行 42 に 関 す る 悩 み〔 2 人 〕歯 の 生 え 方 に 関 す る 悩 み〔 1 人 〕そ の 他〔 2 人〕 ③ 身 体 上 の 悩 み 21 人 体質に関する悩み〔8 人〕皮膚のトラブルの悩み〔5 人〕アレル ギーに関する悩み〔3 人〕その他〔5 人〕 ④ 他 の 人 と の 関 係 40 人 友 達 と の ト ラ ブ ル 〔 21 人 〕 他 の 子 と 上 手 く 関 わ れ な い 〔 11 人 〕 友達作りが難しい〔4 人〕人見知り〔3 人〕小学校での友達のこ と〔1 人〕 ⑤ 身 内 に 関 す る 不 満 や 心 配 12 人 祖母と子育てが合わない・子どもを甘やかす等。 ⑥ その他 4 人 将 来 の こ と・子 ど も と 2 人 き り に な る と た ま ら な く 寂 し い・泣 く ことが多くイライラする等。 *『 子 育 て は 楽 し い で す か 』の 問 に 対 し て 、 〔 楽 し い 〕50.3% 、ど ち ら か と い え ば 楽 し い 〕 42.7% と 、 全 体 に 子 育 て を 肯 定 的 に と ら え て い る 母 親 が 多 い 。し か し 、 『 育 児 に 関 し て 悩 む こ と は あ り ま す か 』に 対 し て は 、〔 時 々 悩 む 〕〔 た ま に 悩 む 〕 を 合 計 す る と 86.7% と 高 く 、 さ らに悩みの内容も様々であり、その多さに深刻さも伺える。 Q7 あ な た の 子 育 て 情 報 源 は 何 で す か 。〔 複 数 回 答 〕 ① 友 人 ・ 近 所 の 人 か ら の 口 コ ミ 119 人 ② 両 親 ・ 兄 弟 姉 妹 か ら の ア ド バ イ ス 80 人 ③ 育 児 支 援 セ ン タ ー 52 人 ④ 育 児 サ ー ク ル 27 人 ⑤ 市 の 広 報 29 人 ⑥ テ レ ビ ・ 新 聞 38 人 ⑦ 育 児 雑 誌 57 人 ⑧ イ ン タ ー ネ ッ ト 19 人 ⑨ そ の 他 (色 々 な 人 の 意 見 、 本 、 わ ら し っ こ 倶 楽 部 等 )4 人 43 Q8 色 々 な 子 育 て 情 報 に 迷 う こ と あ り ま す か 。 ① 多 す ぎ て 、 ど う 選 ん だ ら 良 い か 迷 う 13 人 〔 9.0% 〕 ② 多 す ぎ て 迷 う が 、自 分 な り に 選 ん で 活 用 し て い る 73 人〔 50.7% 〕③ 迷 い は 無 い 、 助 か っ て い る 48 人〔 33.3% 〕④ 必 要 な 子 育 て 情 報 を 入 手 す る 方 法 が 分 か ら な い 9 人 〔 6.3% 〕 ⑤ そ の 他 (祖 母 が 昔 の し き た り を 押 し 付 け る )1 人 〔 0.7% 〕 Q9 ど の よ う な 情 報 に 迷 い ま し た か 。〔 自 由 記 載 〕 ① 情 報 に よ っ て ア ド バ イ ス や 指 示 が 違 う〔 15 人 〕② 情 報 の 種 類 が 多 すぎて迷う〔5 人〕③情報の受け取り方が違うことでの迷い〔4 人〕 ④根拠の無い不確かなもの〔1 人〕⑤情報の通りにいかない〔1 人〕 *『子育て情報』に関しては、情報が多い中〔迷いはあるが自分なり に 選 び 利 用 し て い る 〕 50.7% 〔 迷 い は 無 く 、 助 か っ て い る 〕 33.3% と大半の母親が情報を賢く利用している。しかし、情報の迷いに関 しては具体的内容への記入も多く、情報の選び取りの難しさも見ら れる。 Q10 子 育 て 中 の 悩 み や 迷 い は 、 誰 に 相 談 し ま す か 。〔 複 数 回 答 〕 ① 夫 104 人 ② 母 方 の 親 89 人 ③ 父 方 の 親 12 人 、兄 弟 姉 妹 7 人 ④ 近 所 の 友 人 94 人 ⑤ 職 場 の 友 人 6 人 ⑥ 学 生 時 代 の 友 人 41 人 、そ の 他 の 友 人 (元 職 場 ・ 転 居 ・ セ ン タ ー で 知 り 合 う )3 人 ⑦ 専 門 機 関 (保 健 所 ・ 育 児 支 援 セ ン タ ー 等 )34 人 ⑧ 子 育 て サ ー ク ル 9 人 ⑨ 育 児 雑 誌 12 人 ⑩ 相 談 せ ず 、一 人 で 選 ん で い る 4 人 ⑪ 一 人 で 悩 ん で い る 0 人 ⑫ そ の 他 (お 世 話 に な っ て い る 人 ・ イ ン タ ー ネ ッ ト ・ 幼 稚 園 の お 母 さ ん )4 人 Q11 夫 や 家 族 は 、ど の よ う な 育 児 参 加 や 手 助 け を し て く れ ま す か 。 〔複 数回答〕 44 ① ミ ル ク ・ 離 乳 食 の 手 助 け 57 人 ② お む つ 替 え 77 人 ③ お 風 呂 に 入 れ て く れ る 117 人 ④ 子 ど も と 遊 ん で く れ る 114 人 ⑤ 夜 中 の 寝 か し つ け 40 人 ⑥ そ の 他 2 人 ⑦ 何 も し て く れ な い 2 人 Q12 夫 や 家 族 に 、 ど の よ う な 育 児 参 加 や 手 助 け を も っ と し て 欲 し い で す か 。〔 自 由 記 載 〕 子 ど も と も っ と 遊 ん で 欲 し い〔 23 人 〕 ・直 接 的 な 手 助 け (寝 か し つ け 、 お む つ 替 え 、 お 風 呂 等 )〔 12 人 〕・ 育 児 か ら 解 放 さ れ て 、 私 だ け で 自 由 に な る 時 間 を 作 っ て 欲 し い 〔 9 人 〕・ 言 わ れ な く て も 積 極 的 に 子 ど も と 遊 ぶ な ど 面 倒 を み て 欲 し い 〔 6 人 〕・ 母 親 は 子 ど も か ら 離 れ ら れ な い の で 家 事 の 手 伝 い を し て 欲 し い 〔 6 人 〕・ 休 日 に は で き る だ け 子 ど も の 面 倒 を 見 て 欲 し い〔 5 人 〕 ・そ の 他 (会 社 よ り 家 庭 を 第 一 に 考 え て欲しい、子育ての大変さを分かって欲しい、ねぎらいの言葉が欲 し い 、 精 神 的 フ ォ ロ ー を し て 欲 し い 等 )〔 21 人 〕・ 充 分 し て も ら っ て い る 〔 11 人 〕 *『家族の育児参加』に関しては、当然のことながら夫への期待や要 求 が 多 い 。悩 み の 相 談 も〔 夫 に す る 〕が 72.2% と 多 く 、ま た 、 〔子ど もと遊んで欲しい〕など、直接子どもにかかわる育児参加の要求度 合いが高い。その中で自由記述の項に〔充分してもらっている〕と の 回 答 が 7.6% と 少 数 で は あ る が 記 入 さ れ て い る の を 見 る と 、夫 の 育 児参加による母親の安定感・安心感が伺える。少子化問題では、各 行政・民間機関の子育て支援が様々な形で行われているが、まず、 何より大切なことは、父親を早く家族のもとに帰してあげることで はないかと感じた。各家族、平均水準の経済力を確保の上に、長時 間の勤務を短縮し、子育てに父親が多く参加できる状況を作りだせ るよう、政治・行政・企業等々関係機関にも努力を切望したい。 45 Q13 子 育 て 中 に ス ト レ ス を 感 じ る こ と が あ り ま す か 。〔 回 答 数 140〕 ① よ く 感 じ る 25 人 〔 17.9% 〕 ② 時 々 感 じ る 64 人 〔 45.7% 〕 ③ た ま に 感 じ る 42 人 〔 30.0% 〕 ④ 感 じ な い 9 人 〔 6.4% 〕 Q14 ス ト レ ス を 感 じ る 時 は ど ん な 時 で す か 。〔 複 数 回 答 〕 ① 子どもに関して A 親 の 言 う 事 を 聞 か な い〔 69 人 〕B 教 え た 事 が な か な か 出 来 な い〔 15 人〕C 他の子と比べて頼りなく思ってしまう〔8 人〕D 他の子と上 手 く 付 き 合 え な い (け ん か を 含 む )〔 17 人 〕 ② 夫に関して A 育 児 に 参 加 し て く れ な い 〔 17 人 〕 B 育 児 に 関 心 が 無 い 〔 8 人 〕 C 子 育 て の 相 談 に の っ て く れ な い〔 12 人 〕D 仕 事 が 忙 し す ぎ る〔 9 人 〕 ③ 祖父母に関して A 育 児 の 意 見 を 押 し 付 け て く る 〔 21 人 〕 B 子 ど も に 甘 す ぎ る 〔 28 人〕C 育児に協力してくれない〔5 人〕D 過保護〔3 人〕 ④ その他 自 分 の 時 間 が 無 い〔 4 人 〕・家 事 が 思 う よ う に 進 ま な い〔 3 人 〕・し て あ げ た い 事 と 出 来 な い 事 と の ギ ャ ッ プ〔 1 人 〕・自 分 が 疲 れ て い る 時 〔1 人〕 Q15 あ な た は 、 ス ト レ ス を 感 じ た 時 ど の よ う に し ま す か 。〔 複 数 回 答 〕 ① 子 ど も に あ た っ て し ま う 40 人 ② 夫 に あ た っ て し ま う 46 人 ③ 我 慢 す る 22 人 ④ 気 分 転 換 を 考 え る 90 人 Q16 あ な た は 、ス ト レ ス の 解 消 を ど の よ う に し て い ま す か 。 〔複数回答〕 ① 子 供 の 昼 寝 を 利 用 し て 、 で き る だ け 自 分 の 時 間 を と る 84 人 ② 友 人 と お し ゃ べ り を す る 100 人 ③ 子 ど も と 一 緒 に 好 き な 事 を 楽 し む 37 人 ④ 夫 に 預 け て 一 人 で 外 出 す る 35 人 ⑤ ど う 解 消 し て い い か 分 46 からない 4 人 Q17 ス ト レ ス 解 消 の た め に 、 こ ん な 事 が 出 来 た ら と 思 う こ と は あ り ま す か 。〔 自 由 記 載 〕 ス ト レ ス 解 消 の た め に 自 分 の 好 き な 事 を や り た い 〔 61 人 〕・ 気 軽 に 安 心 し て 子 ど も を 預 け ら れ る 所 が 欲 し い 〔 11 人 〕・ 子 ど も と 少 し 離 れて 1 人になれる時間が欲しい〔9 人〕子どもと一緒に気分転換を したい〔4 人〕 * 『 子 育 て 中 の ス ト レ ス 』 に 関 し て は 〔 よ く 感 じ る 〕〔 時 々 感 じ る 〕 を 合 わ せ る と 63.6% と 半 数 を 超 え て い る 。〔 た ま に 感 じ る 〕 も 含 め る と 9 割 を 占 め る 割 合 と な る 。『 ど ん な 時 に ス ト レ ス を 感 じ る か 』 の 問 に 対 し て 、〔 子 ど も が 親 の 言 う 事 を 聞 か な い 〕 と 回 答 し た 母 親 が 47.9% と 多 い 。 子 ど も の 年 齢 を 考 え 合 わ せ る と 、 子 ど も に と っ て は そ れ が 当 然 の 姿 で あ る に も か か わ ら ず 、母 親 は そ の 事 を 分 か っ て い て も 、や は り ス ト レ ス を 感 じ る と い う 、育 児 の 大 変 さ が 伝 わ っ てくる。 Q18 子 ど も と の 生 活 の 中 で 『 虐 待 』 と い う 言 葉 が 気 に な る 事 が あ り ま す か 。〔 回 答 数 128〕 ① い つ も 気 に し て い る 12 人 〔 9.4% 〕 ② 時 々 気 に し て い る 68 人 〔 53.1% 〕③ あ ま り 気 に な ら な い 38 人〔 29.7% 〕④ 全 く 気 に し な い 10 人 〔 7.8% 〕 *『 虐 待 』に 関 し て は〔 い つ も 気 に し て い る 〕 〔 時 々 気 に な る 〕を 合 わ せ る と 62.5%と 半 数 を 超 え 、 虐 待 と い う 言 葉 へ の 反 応 の 高 さ が 伺える。 47 こ の よ う に 、全 体 を 通 し て 見 る と 、ス ト レ ス を 何 と か 上 手 に 解 消 し 、 子育ての悩みを抱えながらも「楽しい子育てをしよう」と努めている 健気な母親の姿が伺える。しかし、約9割の母親が子育てを楽しいと 思う一方で、同じく9割が日常でストレスを感じているというのも事 実である。核家族化・地域育児力の低下・情報過多・不況・リストラ 等々、子育ての環境が厳しい状況にある中、何とかそれぞれ個人の努 力で育児を行っていても、この状況に例えば家族の病気・祖父母の介 護など 1 つでも負担になる要因が加われば、 「 楽 し く 子 育 て を 」の 日 常 は脆く崩れる危険性を常に秘めているのではないだろうか。それだけ に、 「 子 ど も は 社 会 の 宝 」と し て 、子 育 て に 関 す る 関 係 諸 機 関 を は じ め 、 多くの人々に、子育て支援の具体的整備を、早急に推進していく必要 性を感じてもらいたいと思った。また、子育てに対して、地域社会全 体の関心・協力を願うものである。大きな子育ての力が様々な地域で 今後生まれることを期待してならない。 3節 地域で共に子育てをする重要性 ∼「わらしっこ倶楽部」インタビューから考える∼ 2 節で述べたように、母親達は、育児不安や育児ストレスを抱えな がらも何とか個人で努力し、日々子育てをしている状況であることが 分かった。そして、この状況を考えると、地域での子育て支援がいか に必要なものなのかということも分かる。 で は 、「 わ ら し っ こ 倶 楽 部 」 の よ う な 子 育 て 支 援 グ ル ー プ は 、 母 親 、 そして子どもにどのような効果をもたらしているのだろうか。 「わらし っこ倶楽部」に参加する母親達の『声』から考えてみたいと思う。 48 私は、母親達に「なぜ、わらしっこ倶楽部に参加しようと思ったの か 」、 そ し て 、「 わ ら し っ こ 倶 楽 部 に 参 加 し て み て ど う 感 じ た か 」 を イ ン タ ビ ュ ー し て み た 。こ の 日 は 、初 参 加 17 人 、2 回 以 上 26 人 の 計 43 人といつもより少しすくなかったが、様々な意見や感想を聞かせてく れた。 まず、わらしっこ倶楽部に参加した理由は、次のような声が返って きた。 ・子どもの社会性を育てたいから 人見知りをするので人慣れさせたく、色々な人と接する機会を作 りたかったから。子どもを大勢の子ども達の中で遊ばせたかったか ら。子どもに良い刺激になると思ったから。 ・親子共に友達を作りたいから 引っ越してきたばかりで近所に友達がいなく、子どもを同じくら いの子どもと遊ばせたかったから。 ・普段の生活に変化が欲しいから 外出するきっかけになるから。 ・子育てについて知りたいから 初めての子育てで迷うことも多く、色々な人の話を聞いてみたか ったから。子育ての悩みを相談したいから。 ・気軽に参加できるサークルだから 乳児・幼児に分かれていて安心だから。無料だから。近所だった から。 ・親子一緒に楽しい時間を過ごせると思ったから 手遊び・運動遊びなどが楽しみで、色々な遊びをさせたいから。 どんな事をするのか興味を持ったから。 49 ・友達に誘われたから ・ 室内で遊べて、公園以外に遊べる場所の 1 つと思ったから このように、母親達は様々な思い、そして地域子育て支援に多くの 期待を抱いて参加しに来ていることが分かった。 では、実際に参加し、母親達は何を感じたのだろうか。様々な感想 や意見、要望が返ってきた。 ・ 人 数 が 多 く 、お も ち ゃ も た く さ ん あ り 、気 兼 ね な く 思 い 切 り 遊 ば せ られた。 ・ 同じくらいの子どもママ達とのお喋りが楽しかった。 ・ 情 報 交 換 や 子 ど も の 悩 み な ど 皆 で 共 有 で き 、ス タ ッ フ か ら の ア ド バ イスも参考になる。 ・ 子 ど も 同 士 の 触 れ 合 い は 大 切 、子 ど も に と っ て 新 た な 発 見 や 刺 激 が 多くて良かった。 ・ 他の子を見てこれからの成長の行方が参考になる。 ・ 外 で 遊 べ な い 時 期 の 室 内 遊 び は 、良 い 発 散 に な る し 、そ の 遊 び 方 も 参考になる。 ・ 身長、体重を図ってもらえて嬉しい。 ・ 自 分 の 子 の 成 長 が 、実 感 で き る が 、他 の 子 ど も の 成 長 も 楽 し く 見 る ことが出来る。 ・ 短い時間で区切っているので子どもが飽きずに楽しめる。 ・ 色々な遊び方、子育て情報が教えてもらえて、嬉しい。 ・ 親 子 一 緒 に 楽 し め 、ち ょ っ と の 悩 み で も 相 談 で き る の で 、気 軽 に 来 ることが出来る。 ・ 運動会、クリスマスなど、季節の行事を体験できて良かった。 50 ・ 子どもを見て、いらいらしていた気持ちが和みスッキリした。 ・ 毎晩続いていた子どもの夜鳴きが全く無くなった。 ・ 父親の参加も呼びかけた方が良いと思う。 こ の よ う に 、わ ら し っ こ 倶 楽 部 の 活 動 は 、母 親 に と っ て も 子 ど も に とってもプラスとなっているようだ。 「うちの子はこれでいいのだろう か 。」「 発 達 が 遅 れ て い る の で は な い だ ろ う か 。」「 自 分 の 子 ど も の 扱 い は こ れ で い い の だ ろ う か 。」等 と 不 安 は 募 り 、そ の 結 果 す ぐ イ ラ イ ラ し 、 子育てに自信が持てなくなってしまう。こういった悩みや心配を多く の母親達が抱えているが、この「わらしっこ倶楽部」に来ると、特別 相談しなくても大抵解消されてしまうようだ。他の子どもの様子を見 ると、自分の子どもについて一人で心配していたことが大丈夫だと分 かったり、また他の母親の扱い方を見たり話すうちに、子どもの扱い 方が自然に分かってくるようになる。 幼 稚 園 入 園 前 の 子 ど も を 持 つ 親 達 は 、ほ ぼ 同 じ 年 齢 の 子 ど も や 親 達 と自然に接し交流する機会が案外少ないようである。それが、ここに 来れば色々な年齢の子ども達と母親たちが出会え一緒に過ごすことが 出来る。それは、教えられなくても見ることだけで学ぶ、子どもや子 育てについて観察学習する絶好の機会となっており、その効果を上げ ているようだ。 ま た 、子 ど も に と っ て も こ こ は 豊 富 な 観 察 学 習 の 場 で あ る 。他 の 子 どもや親達のすることを見て、それに刺激を受け興味を持ち、自分も そ う し よ う と 一 生 懸 命 真 似 て い る 様 子 が 、子 ど も 達 の 多 く に 見 ら れ た 。 乳児といえども母親だけに密着依存しているわけではなく、他の人々 と の 交 流 も 平 行 し て 広 げ て い け る 力 が あ る の だ と 私 は 感 じ た 。実 際 に 、 51 様々な研究の中でも、子どもが小さい内から複数の愛着対象を持って いることは、長期的に子どもの発達にプラスに働くのだということが 立証されている。複数のネットワークを持って育つことが、知的面に ついても自立目的指向性、弾力性など人格的、情緒的、社会的面につ い て も 発 達 を 促 進 さ せ て い る こ と が 認 め ら れ て い る の だ 。 48 複 数 の 多 様な人によって育てられることが子どもの発達にとってもプラスであ るといえるだろう。 わ ら し っ こ 倶 楽 部 の 代 表 で あ る 篠 原 さ ん は 、「 小 さ い 内 か ら 子 ど も に社会性を身に付けさせることが大切である。それには、母親が様々 な活動に参加し、 〔 社 会 力 〕を 付 け る こ と が 必 要 で あ る 。母 親 の〔 社 会 力 〕に よ っ て 、子 ど も の〔 社 会 性 〕も 変 わ っ て き て し ま う 。」と 指 摘 す る。また、母親の育児不安やストレスに対しては、篠原さんが良く言 う 言 葉 が あ る 。 そ れ は 、『 ネ レ テ ィ ブ セ ラ ピ ー (お 喋 り 療 法 )』 で あ る 。 近所付き合いが薄くなり、 「 井 戸 端 会 議 」が な か な か 見 ら れ な く な っ た 現在だが、誰かと話し、通じ合い、心をリフレッシュさせることが重 要なのであると言う。篠原さんは、母親の孤立の問題を長年取り上げ てきたが、それが一番感じることだと言っていた。孤立しがちな母親 に対しては、 「 外 に 出 れ ば 情 報 は い く ら で も あ る が 、外 に 出 な け れ ば そ れを教えてくれる人はいない。外に出てくる母親は良いが、中には出 て来たがらない母親も多い。一人での子育ては育児不安という大きな 負 担 と な る 。一 歩 、外 に 出 る と い う 勇 気 を 持 っ て 欲 し い 。」と 切 実 に 願 っていた。しかし、母親の方から相談してくれれば、何かしらの対応 は出来るが、こちらから直接支援しに出向くようなことは難しいと言 う。現在は、行政の役目として成され、支援は主にサークル内の活動 のみとなっている。また、ボランティアである活動を続けていくため 52 には、母親が自分達の支援を必要としてくれているということを行政 や地域にアピールし、伝えていかなければ存続が難しいということも あ る と 言 う 。 し か し 、「 必 要 と し て く れ る 母 親 が い る 限 り 、『 母 親 と 子 ど も 一 人 一 人 が 主 役 で あ る ! 』を モ ッ ト ー に 頑 張 っ て 続 け て い き た い 。 そして、母親達の現状をできるだけ多くの人に知ってもらい、子育て の 輪 が さ ら に 広 が る こ と を 願 っ て い る 。」 と 話 し て い た 。 わ ら し っ こ 倶 楽 部 は 、母 親 達 に 無 く て は な ら な い 存 在 と な っ て い る ことが分かった。しかし、現在は活動に来られない母親に対しては、 まだ支援が成されていないということに引っかかりを感じた。大阪市 淀川区で活動している、ある子育て支援サークルでは、母親の電話を 受 け て 2 人 で 自 宅 を 訪 れ 、1 人 が 子 ど も の 面 倒 を み て 、1 人 が 話 し 相 手 になるという育児相談を有志で行っていると新聞で読んだことがある。 育児で追い詰められた人は、仲間内の価値観を押し付けすぎると傷つ く こ と が あ る と い う 。49 言 い 換 え れ ば 、追 い 詰 め ら れ て い る か ら こ そ 、 押し付けに感じてしまうのかもしれない。子育てサークル内の支援に も 限 界 と い う も の が あ る の だ と 感 じ た 。行 政 関 係 者 に よ る 家 庭 訪 問 は 、 なかなか母親達に受け入れられないという現状を考えても、活動に来 られない母親にも目を向けた、母親に身近な子育てサークルが地域に 増えれば良いと思った。また、わらしっこ倶楽部も含めて、母親だけ への支援になってしまっているサークルがほとんどである。父親や子 どもを育てている全ての人を視野にいれたサークルも同じく増えれば 良いと思う。繋がりたいと願いながらも、きっかけが掴めずに孤独を 感じている母親のケースは多い。 「 き っ か け 」と な る 地 域 コ ミ ュ ニ ケ ー ションの場が必要なのであると強く感じた。 現 代 で は 、集 合 住 宅 と い え ど も 踏 み 込 ん だ 親 し さ は 敬 遠 さ れ 、一 定 53 の距離を置くことに居心地のよさを感じる近所付き合いに、慣れきっ てしまっているという状態が人々の間に存在する。また、子どもが何 か良くないことをしていても注意したり叱ったりすることをしない大 人 が 増 え て い る 。子 ど も に よ る 凶 悪 事 件 が 相 次 い で い る た め 、 「中学生 が 怖 く て そ ば に 寄 れ な い 。」と 言 う 人 も い る ほ ど だ 。し か し 、乳 幼 児 の 頃にできた親子同士の繋がりは、子どもが中学生など成長した後も顔 の分かる関係が継続され、いじめや非行などに対する地域の問題解決 能力が高まるという効果もあると考えられる。お互い知らないことが 怖 さ に 繋 が り 、 関 係 の 希 薄 と な っ て い る の で は な い だ ろ う か 。 50 け れ ど、小さい頃から子ども自身に地域での活動意識が深く根付いていな ければ、中学や高校に進むと、学校中心になり、どうしても地域との 関わりが薄れていってしまうのも事実だ。それには、世代を超えた、 皆の居場所となる活動が必要となってくる。様々な世代と繋がれば、 子どもの社会や大人への信頼も生まれ、次の地域リーダーとなる存在 も将来へと繋がるのではないだろうか。 第4節 親も子も共に育てる子育て支援作りの必要性 ∼ニュージーランドの「プレーセンター」の取り組み∼ 子 ど も の 成 長 だ け で な く 、親 も 子 と 共 に 成 長 で き る 子 育 て 支 援 作 り も必要である。他外国に目を向けてみると、日本の子育て支援に参考 とすべき活動が多く存在する。ニュージーランドでは、日本と同様、 育児に戸惑い不安を抱く母親が多いが、 「初めから親は立派に子育てが できなくても当たり前。父親も母親も学習しながら親になっていくの だ 。」と い う 考 え 方 が 社 会 の 隅 々 ま で 合 意 と な っ て 行 き 渡 っ て い る 。ま 54 た、子育て能力は学習するものであるという理念を具体化した機関と してプレーセンターが全国に点在している。保育補助金が交付されて いる親主体の保育機関で、親が保育施設の管理運営や保育に主体的に 参画し、子どもと遊びながら社会参加の道を開き、親として成長して い く こ と を 目 的 と し て 運 営 さ れ て い る 。子 ど も を 遊 ば せ る と 同 時 に「 親 育 て 」 の 組 織 と し て 機 能 し て い る プ レ ー セ ン タ ー は 、 全 国 545 箇 所 あ る 。 0∼ 5 歳 児 1 万 7 千 人 が 利 用 し て お り 、 幼 稚 園 (無 償 )や 保 育 セ ン タ ーと並んで、ニュージーランドでは乳幼児保育機関として確固たる位 置を保っている。 活 動 の ス タ ッ フ は 、全 て が 子 ど も の 親 で あ り 、専 業 主 婦 も パ ー ト や フルタイムで働く親もいる。一週間を午前と午後に分けてローテーシ ョンを組み、交代で保育にあたっている。中には、父親の姿も多く見 られるという。 プ レ ー セ ン タ ー に 集 う 親 は 、自 分 の 子 、よ そ の 子 の 区 別 を 持 た ず 子 ども達と遊び、互いに他の親の子育てを学び合う。子育ての技術を伝 授し合い、価値観や文化の多様性への配慮も学び、親としての自信を 育んでいく。一方、子ども達はそうした親達に見守られながら、異年 齢の子ども達と遊び、社会性を身に付けていく。親も子も共に育ち合 う拠点を地域の中に持っているのだ。これは、子育ての孤独や閉塞感 から解放される 1 つの方法であろう。しかも、こうした活動はいずれ もプレーセンター連合によって綿密に考案された高水準のプログラム に基づいてなされ、一定期間の研修を積むと、教育養成カレッジ卒業 生と同等の保育者資格が取得できるようになっている。このように、 プレーセンターは、母親の就労やスキルアップも視野に入れて活動し ているのである。 55 ニ ュ ー ジ ー ラ ン ド プ レ ー セ ン タ ー 連 盟 の マ リ オ ン・ピ ル キ ン ト ン 副 会 長 は「 親 も 子 も 社 会 の 一 部 な の だ 。コ ミ ュ ニ テ ィ で 育 て よ う と い う 考 え 方 が 大 切 で あ る 。」と い う 。ニ ュ ー ジ ー ラ ン ド に は 、地 域 全 体 で 子 育 てをしようという雰囲気が満ちているのである。 日 本 は 、大 ま か に 言 っ て 、親 は 働 く た め に 子 ど も を 保 育 園 に 預 け る か 、専 業 主 婦 と し て 自 分 で 見 る し か 選 択 肢 が な い 。 そ れ に 対 し て 、プ レ ーセンターは、親が働いているかどうかに関係なく、お互いに育児を しながら学び、仲間作りを楽しくやっていこうという場だ。育児の知 識や運営の方法を学ぶことで、社会的な能力を身に付けることもでき る。母親の孤立や子どもへの虐待などが問題になる中、こうした親の 自主的な教育・学習活動に、政府が財政的な援助をする仕組みは、日 本でも参考になるのではないだろうか。 ニ ュ ー ジ ー ラ ン ド で も 親 の 労 力 が 少 な く な く 、加 え て 家 庭 外 の 労 働 に携わる女性が増えたこともあって、近年ではプレーセンター利用者 が減少の傾向にもあるという。しかし、親、特に母親の育児力に過大 な幻想を持つことなく、子育てを親育てと考える理想を高く揚げてい る点は、私達が学ぶべき点ではないだろうか。親が「親として育つ可 能性」を信じ、支援することこそ、今の日本社会が最も力を注ぐべき 子 育 て 支 援 で あ る と 考 え る 。 51 / 52 地 域 で 人 々 に よ り 、自 主 的 に 行 わ れ る 子 育 て 支 援 の 活 動 は 、か つ て 地域コミュニティが有していたであろう相互援助的な子育ての知恵を 現代に蘇らせる新しい方法として全国的に広がりつつある活動だとい える。そして、一緒に子育てをしながら、親が子育てに関する知識や 技術や経験を学び、子育てをする力を身につけたり、さらに高めたり 56 することができる仲間と出会う場・機会を作りだすことが重要な鍵を 握る時代を迎えている。述べてきたことを振り返ると、こうした当事 者による組織が主体となって行う子育て支援に対し、行政や専門職が 側面的に支えるというスタイルの地域での問題解決システムが必要で はないかと考える。子育ての問題は、親の第一主義的責任が問われて き た 時 代 が 長 く 、特 に 子 育 て グ ル ー プ の よ う な 活 動 に 対 し て は 、 「主婦 の 遊 び 」と 冷 や や か に 見 る 人 も 多 か っ た 。そ れ が 、少 子 社 会 を 迎 え 、新 エ ン ゼ ル プ ラ ン が 制 度 化 し た 今 日 で は 、子 育 て に 伴 う 負 担 感 を 軽 減 し 、 家庭や夢や希望を持つことができる支援をしていくことに、徐々にで は あ る が 変 わ り つ つ あ る 。 53 た だ し 、こ う し た 制 度 が 、自 分 達 が 必 要 と す る 新 し い 子 育 て 環 境 を 地域に作ろうとする、小さくはあっても自発的な動きを損なうもので あってはならない。子育てについて学び合い考え合う集団を自ら創り 出し、運営していくことを通じて、親が親としての力を養い、子育て の楽しさを満喫できるように支援してくこともまた、子育て支援社会 を構築するための重要な要素なのである。 第4章 父親の協力の必要性 1節 父親の育児参加の現状 父 親 の 育 児 参 加 の 必 要 性 は 、第 3 章 2 節 の「 子 育 て ア ン ケ ー ト 調 査 」 の結果の中で、母親達の多くが父親の協力を求める回答を寄せたこと からも切実だということが分かる。様々な支援がある中で、第一番に 子育てに加わるべきは、何といっても父親なのではないだろうか。社 57 会的な支援、家族外に助けを求める前に、これまで子育ては母親に一 任してきた父親が名ばかりの親ではなく、実質的に子育てを担うこと は当たり前のことであると考える。しかし、実際はほとんどと言って いいほど子育ては母親の役目となり、父親の協力が得られていないと いうのが現状のようだ。 では、一般サラリーマンである父親は、平日にどのくらい家事育児 に参加しているのだろうか、その実態に注目してみようと思う。総務 庁 統 計 局 「 社 会 生 活 基 本 調 査 」 (1996 年 )に よ る と 、 夫 婦 と 子 ど も の い る 所 帯 の 平 日 の 家 事 育 児 時 間 は 、 無 業 の 妻 は 7 時 間 49 分 に 対 し 、有 業 の 妻 (共 働 き )は 4 時 間 23 分 で あ る と い う 。妻 の 就 業 状 態 に よ っ て 妻 自 身の家事育児時間が異なるというこの数値は納得いくが、問題は夫の 家 事 育 児 時 間 で あ る 。妻 が 無 業 の 場 合 の 夫 の 家 事 育 児 時 間 は 15 分 、妻 が 有 業 の 場 合 は わ ず か 11 分 に す ぎ な い 。 妻 の 就 労 状 態 に か か わ ら ず 、 夫の家事育児時間はまったく変わらないこと、しかも、どちらもその あ ま り の 短 さ に 愕 然 と す る も の が あ る 。 54 また、最初の子どもの時にはまだ手伝う傾向にあるが、二人目以上 の 子 ど も の 場 合 に は 、手 伝 わ な く な る 父 親 が 多 い こ と が 分 か っ た 。 〔資 料 13 参 照 〕 55 そ し て 、父 親 は 子 ど も の 成 長 と 共 に 、子 ど も と 遊 ば な く な る 傾 向 に あ る こ と も 分 か っ た 。〔 資 料 14 参 照 〕 56 小 学 校 入 学 後 の 健 診 で は 、「 遊 ば な い 」 父 親 は 21% の 5 人 に 1 人 へ と 急 増 す る と い う 。 58 資 料 1 3 「 お 父 さ ん (夫 )は 育 児 を よ く 手 伝 っ て く れ ま す か 」 と 出 生 順 位 と の ク ロ ス (4 ヶ 月 児 健 診 ) 資料14 お 父 さ ん は 子 ど も と よ く 遊 び (あ や し )ま す か また、父親が一週間にどのくらいの時間、子どもと一緒に過ごして いるかを諸外国と比較してみると、ここにも日本の男性の育児とのか か わ り の 少 な い 実 態 が 示 さ れ て い た 。〔 資 料 15 参 照 〕 57 資料15 子 供 と 一 緒 に 過 ご す 時 間 の 国 際 比 較 : 一 週 間 (父 親 ) 59 このように、日本の父親の育児参加は、母親が無業、有業にかかわ らず、どちらにしても得られておらず、子どもが成長するにつれて子 育てに協力しない父親が増えていることが分かった。また、子どもと 父親が触れ合う時間を諸外国と比べてみても、歴然と差があることが 分かった。 しかし、専業主婦に育児不安が強いことや、働く母親が増えてきて いる現状を考えると、父親の育児参加は必要不可欠なのである。そし て、母親を孤立させないためにも、父親の理解と支えが最も重要とな ってくるのだ。 実際に、父親の育児参加と母親の育児不安の軽減には、非常に密接 な関係があるともいわれている。父親がほとんど子育てに関わらず、 母親が一人で奮闘している場合に育児不安は強いと明らかにされたの で あ る 。〔 資 料 16 参 照 〕 58 同 じ 親 で あ り な が ら 、 現 実 に は 自 分 だ け が 閉ざされた生活をしているという不満と孤立感が結果として表れたの だろう。逆に、父親も積極的に子育てに関わっている場合には、母親 の育児不安は低いのである。 60 資料16 父 親 の 育 児 参 加 に よ っ て 母 親 の 育 児 不 安 は 低 迷 す る (数 値 得点) これらのことは、育児を母親だけでしている状況が問題をはらんで いるということを示している。現代では、従来の「母の手で」が社会 の変化と共にマッチしなくなってきているのだ。むしろ、母親だけの 育児が問題を持ちやすいのである。しかし、こうした現代であっても 母 親 は 、「 日 々 の 具 体 的 な 家 事 育 児 は 手 伝 っ て く れ な く て も 仕 方 が な い 。 夫 も 仕 事 で 疲 れ て い る の だ か ら 。」と 、父 親 に 理 解 を 示 し 、一 人 で 子 育 てをやらざるを得ない状況に陥っているのだ。夫が日常の子育てを一 緒にしてくれれば、それに越したことはない。けれど、実際には仕事 が忙しくて、そうした日常的な世話を必ずしも求められないという実 情 を 母 親 は 承 知 し て い る の で あ る 。 59 / 60 日本の男性が家事や育児に参加する比率がこのように低い現象は、 通勤時間を含めて、労働時間が非常に長いのが主な原因といえるだろ う。またそれに加えて、家事や育児は女性がすべきものだとする考え 方が根強いことも、こうした現象を生むもう 1 つの要因として指摘で きる。逆にこの考え方が結果的に長い労働時間を許容している一因と も な っ て い る の で あ る 。 61 61 また、育児休業制度による育児休暇は、男性も取得できることにな っ て い る が 、 現 在 の 取 得 率 は 、 男 性 は 0.55% 、 女 性 は 57.9% (1999 年 調 査 )に と ど ま っ て い る 。 こ の 要 因 に は 、 男 性 が 育 児 休 暇 を 取 る に は 、 上司や同僚の理解を取り付けるのが容易でないこと、仮に取れたとし ても仕事を優先してないとされ、人事査定が低くなること等が考えら れる。ここにも、家事や育児は女性がすべきものという考えが根強く 存在しているのである。これでは、育児休業制度があっても全く意味 がないのも同然である。政府は「男女共同参画社会」をうたっている ぐらいなのだから、男性女性が育児休暇を同じくらい取れるような社 会風土とシステムを設ける推進策をとるぐらい当然のことではないだ ろ う か 。 62 / 63 このように、父親の育児参加には、厳しい現状が存在する。父親の 子育てに対する関心の向上と共に、企業や社会の意識も変えていく必 要があると強く感じた。 2節 父親の育児参加と出生動向 ∼スウェーデンの「育児休業制度」の取り組みから考える∼ 日 本 の 育 児 休 業 制 度 は 、 1991 年 に 成 立 し 、 翌 年 の 1992 年 に 本 格 的 に 施 行 さ れ た 。1995 年 か ら は 、育 児 休 業 利 用 者 に 対 し て 休 業 前 の 賃 金 の 25% を 雇 用 保 険 か ら 給 付 す る 制 度 も 始 め た 。現 在 の 給 付 割 合 は 、休 業 前 賃 金 の 40% で 、 そ の う ち 30% が 休 業 中 に 「 育 児 休 業 基 本 給 付 金 」 と し て 給 付 さ れ て い る 。上 限 は 月 14 万 4630 円 で あ り 、復 職 し て 6 ヶ 月 以 上 働 け ば 、残 り 10% が「 育 児 休 業 者 職 場 復 帰 給 付 金 」と し て 支 給 されることになっている。この育児休業は、子どもが一歳になる前日 62 ま で 、 希 望 す る 期 間 、 取 得 す る こ と が で き る と い う 。 64 / 65 し か し 、1 節 で も 述 べ た が 、取 得 率 は 30 人 以 上 の 企 業 で 男 性 は 0.55% 、 女 性 は 57.9% (1999 年 度 調 査 )に と ど ま っ て お り 、例 え 取 得 で き た と し ても、職場の理解を得ることは難しい。実際に、男女とも 4 人に 1 人 は 育 児 休 業 後 、復 帰 し て い な い か 転 職 な ど で 職 場 を 去 っ て い る と い う 。 66 ま た 、 給 付 額 が 月 14 万 4630 円 以 下 で は 、 生 活 が 厳 し い と い う 人 も 少なくないだろう。母親が専業主婦で収入を得ていなければ、それは 尚更である。このことを理由に取得を拒む親も多いのではないだろう か。そして、配偶者が専業主婦で、常態として子を養育できる者がい る場合、企業によっては育児休業の対象から除外されてしまうことも あるという。共働き家庭が中心となり、全ての父親を対象とした制度 となっていないことにも引っ掛かりを感じた。 このように、日本の育児休業制度は、制度化されているものの、子 育て支援の問題解決に活かされていないというのが現状である。 一方、他外国に目を向けてみると、スウェーデンでは男性のうち 4 割が育児休業制度を利用しており、日本が見習うべき成果を上げてい る 。 ス ウ ェ ー デ ン は 、 子 ど も 一 人 に つ き 夫 婦 で 合 計 480 日 間 の 育 児 休 業を取得することができ、週に何日か休んだり、半日勤務にしたり、 休 業 の 形 は 親 が 自 由 に 決 め る こ と が で き る 。 し か し 、 そ の う ち の 60 日間は「父親割当」で、母親は使うことができないというシステムに なっている。 〔 資 料 17 参 照 〕ま た 、育 児 休 業 中 は 、 「 親 保 険 」と い う 制 度 か ら 所 得 保 障 さ れ る 。財 源 は 、事 業 主 が 納 め る 2.2% の 社 会 保 険 料 と 税 で 、 2001 年 の 給 付 総 額 は 約 1960 億 円 に 上 っ た 。 手厚い制度を背景に、妻が出産した男性の 4 割が育児休業している 63 が 、そ れ で も ま だ 課 題 は あ る よ う だ 。親 保 険 の 所 得 保 障 に は 、年 約 386 万 円 (月 約 32 万 円 )の 上 限 が あ り 、高 報 酬 の 人 は 頭 打 ち に な っ て し ま う 。 〔 資 料 18 参 照 〕親 保 険 受 給 者 の 1 割 弱 が 、こ の 上 限 に か か っ て し ま う という。政府は現在、父親の育児休業を取りやすくする為、親保険の 上限を引き上げたり、父親割当日数を増やしたりすることを検討して い る 。 67 資料17 資料18 このように、少子化対策に力を入れ、男女関係なく子育てをすると い う 風 潮 が 根 付 い て い る ス ウ ェ ー デ ン で は 、2001 年 の 合 計 特 殊 出 生 率 は 1.60 人 で あ っ た 。 1999 年 に は 1.50 人 に 落 ち 込 ん で い た が 、 2000 年 か ら 回 復 の 兆 し が 見 え て い る と い う 。 68 一方、家事育児は母親の役目であるとする風潮が未だ根強い日本で は 、 2000 年 が 1.36 人 、 2001 年 に は 1.33 人 ま で 下 回 っ た 。〔 資 料 19 64 参 照 〕 推 計 に よ る と 、 出 生 率 は い っ た ん 盛 り 返 し て 2032 年 以 降 に は 1.39 人 に 安 定 す る と し て い る 。し か し 、前 回 推 計 (1997 年 調 査 )の 1.61 人 に 比 べ る と 大 幅 に 減 少 し て い る の が 現 状 で あ る 。 69 そ れ に し て も 、 私 が 生 ま れ た 年 で あ る 1980 年 の 1.75 人 と 現 在 の 出 生 率 を 見 比 べ て み て も 、あ ま り の 減 少 の 速 さ に 驚 き を 隠 せ な い も の が あ る 。少 子 化 同 様 、 孤立化も進んでいる現在であるが、母親の孤立が少子化と深い関係に あるように思えてならなかった。 資料19 実際に、少子化傾向は働く母親にだけでなく、専業主婦にも広がっ ているということが分かった。国立社会保障・人口問題研究所の調査 に よ る と 、結 婚 後 10 年 以 上 15 年 未 満 の 専 業 主 婦 の 場 合 、1992 年 調 査 65 で は 結 婚 し て か ら 平 均 で 2.21 人 の 子 ど も を 産 ん だ が 、 1997 年 調 査 で は 2.14 人 に 減 っ た 。ま た 、結 婚 後 5 年 未 満 の 専 業 主 婦 に 対 し て「 こ れ か ら 何 人 子 ど も を 産 む か 」 聞 い た と こ ろ 、 1992 年 は 平 均 2.16 人 だ っ た が 、 1997 年 に は 2.11 人 に 落 ち た と い う 。 70 乳幼児を持つ母親を全国規模で調査している大日向雅美は、 「仕事を 持たない主婦の産み控えが進んでいるのではないか」と推測する。そ の要因として大日向は、専業主婦の孤立感を挙げている。 大日向雅美の調査では、幼稚園児、保育園児の父親のうち、いつも 子どもと遊んだり風呂に入れたりするのは 3 割であり、着替えや食事 の世話をしたり、健康診断や予防接種に連れて行ったりする父親は 1 割 に 満 た な か っ た と い う 。ま た 、1 章 の 1 節 で も 述 べ た が 、 「子育てに 自信をなくすことがある」と答える母親は、働く母親よりも専業主婦 に多い。 大日向は、 「 地 域 の コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン が 希 薄 に な る 一 方 で 、仕 事 に 縛られている父親が育児に参加する時間は少ない。経済的な不安も加 わ っ て 、主 婦 は 2 人 目 、3 人 目 を 産 む こ と を た め ら っ て い る 。」と 指 摘 し、夫を職場から家庭に戻して妻との育児負担を進めることが必要だ と 強 調 す る 。 71 このように、他外国と比べてみても、育児休業制度などの子育て支 援制度がいかに社会に浸透し、活用できているかによって、父親の育 児参加の状況も、子どもの出生動向も変わってきてしまうのだという ことが分かった。働く母親にだけでなく、専業主婦にも少子化の影が 映り、その要因が孤立化であるとするならば、これは見過ごすことの 66 できない深刻な問題である。 子どもが大家族と地域社会の中で育った時代には、父親の役割はそ れほど大きくはなかったのではないだろうか。しかし現代のように、 地域社会の繋がりが薄れ、しかも子どもが少なくなり、子育て中の母 親が孤立化している状況の中では、父親に対する期待が大きくなるの は当然の結果ではないだろうか。母親達は、父親の支えを今まさに必 要としているのである。 ま た 、少 子 化 対 策 に つ い て い え ば 、 「企業や男性の意識をどうかえて いくのか」が、今後の大きな課題となるだろう。そして、子育てに夢 をもてる社会を築き上げていくことが強く求められているのである。 終章 都市化が進み、どこか一線をおく近所づきあいに慣れ親しんでしま っている現代の私達にとって、地域の結びつきの希薄化は、当たり前 のものとなってしまったのだろうか。しかし、子育ての悩みを相談す る相手が近所にいなく、密室の中で子育てをしている母親の現状を考 えると、これは見過ごすことのできない深刻な問題である。 働く母親よりも専業主婦に育児不安が大きいこと、三歳未満の子ど ものいる母親の 8 割が専業主婦であること、そして、働く母親も地域 から孤立しているという現状を考えると、子育て支援は全ての母親に 必 要 で あ る と い え る 。特 に 、地 域 の 人 々 が 自 主 的 に 子 育 て 活 動 を 始 め 、 地域に広げていき、行政の力を借りながらも自分達の力で問題解決を 図っていくという姿勢は、現在の子育て支援に最も求められている支 67 援ではないかと考える。また、地域の人々をサポートしていく意味で も、行政の支援も同様に向上していく必要がある。 また、父親の育児参加についていえば、制度の活用を図ること、父 親 の 意 識 と 社 会 の 意 識 を 変 え て い く こ と が 必 要 で あ る 。こ の 論 文 で は 、 育児休業制度のことを取り上げたが、その他にも「短期間勤務制度」 や「フレックスタイム制度」などの様々な制度の充実が求められてい る 。し か し 、日 本 で こ れ ら の 制 度 を 導 入 し て い る の は 、ほ ん の ご く 僅 か な企業のみである。制度の活用が図られるためには、社会の一層の理 解と協力が必要なのだ。 また、母親の孤立、父親の協力の少なさ、制度活用の不十分さ、子 育て支援機能の低下は、日本の少子化の現状にさらに拍車をかけると 考えられる。母親の孤立も日本が少子化となった一つの要因であると 考えると、早急に問題の数々を見直していく必要がある。 子どもの成長を見守り支援しようとする努力は、母親にだけ求めら れるものではなく、父親は勿論、地域の人々、子育てに関わる専門職 の人など、社会全体に求められていることである。全ての人が子育て に関心を持ち、その成長を支援していこうと努力し合う関係を築き上 げていくことは、孤立の現状から母親を救い、母親にゆとりある子育 て環境を保障することに繋がる。そして、これは母親にとっても、子 どもにとっても良い影響をもたらす。親も子と共に成長することがで きるのだ。母親を地域社会から孤立させないためにも、子育てを皆で 共有していく努力が必要なのである。 子育て支援は、母親がいきいきと生きてこその支援である。母親が 子育てに夢を持てる社会、また、母親が自分の人生も大切にできる社 会を、私は願ってならない。それは、将来、母親となる女の私にとっ 68 ても重要なことだと感じられるからである。そして、何よりも母親の 生きる姿を一番見ているのは子どもなのではないだろうか。その生き るというメッセージを伝えていくのも母親である。親子が喜びを分か ち合い、語り合える子育てが現代には求められているのである。 参考文献・資料 <文献・活動資料> ・ 大 日 向 雅 美 『 子 育 て と 出 会 う と き 』 1999 年 、 NHK ブ ッ ク ス ・ 柏木恵子『子育て支援を考える 変 わ る 家 族 の 時 代 に 』 2001 年 、 岩 波 ブ ッ ク レ ッ ト NO.555 ・ 佐 々 木 保 行「 子 育 て 期 の 母 親 と 育 児 ノ イ ロ ー ゼ 」 『育児ノイローゼ』 1982 年 、 有 斐 閣 新 書 ・ 原 田 正 文『 育 児 不 安 を 超 え て 思 春 期 に 花 ひ ら く 子 育 て 』1999 年 、 朱鷺書房 ・ 『 NIRA 研 究 報 告 書 課題 < NIRA 市 民 フ ォ ー ラ ム > 女 性 の 社 会 参 加 と 第 三 回 「 出 産 ・ 育 児 と 就 労 の 両 立 」』 1992 年 、 総 合 研 究 開 発 機構 ・ 『 子 ど も 虐 待 防 止 ハ ン ド ブ ッ ク 』 2001 年 、 神 奈 川 児 童 相 談 所 ・ 『 児 童 虐 待 マ ニ ュ ア ル 』 2001 年 、 日 本 医 師 会 ・ 篠 原 富 子 (ス タ ッ フ 代 表 )『 子 育 て 支 援 グ ル ー プ わらしっこ倶楽部 活 動 報 告 書 2001.4∼ 2002.3』2002 年 5 月 、子 育 て 支 援 グ ル ー プ わ らしっこ倶楽部スタッフ作成 ・ 篠 原 富 子 (ス タ ッ フ 代 表 )『 子 育 て 支 援 ア ン ケ ー ト 69 子育ては楽しい で す か ? 』 2002 年 3 月 、 子 育 て 支 援 グ ル ー プ わらしっこ倶楽部 スタッフ作成 <新聞記事> ・ 「 下 降 傾 向 、な ぜ 続 く ど う な る 少 子 化 対 策 :上 」 『 asahi.com』ニ ュ ー ス 欄 、 2001 年 9 月 11 日 、 朝 日 新 聞 社 、 http://www.asahi.com ・ 「働く女性の 7 割、第 1 子出産後離職 厚 労 省 調 査 」『 asahi.com』 出 産 ・ 子 育 て 欄 、 2001 年 10 月 22 日 、 朝 日 新 聞 社 ・「 親 に 適 さ な い と 感 じ る 半 数 」『 asahi.com』 出 産 ・ 子 育 て 欄 、 2001 年 10 月 25 日 、 朝 日 新 聞 社 ・ 佐 藤 実 千 秋 (編 集「 ) ニュージーランド報告㊤」 『 朝 日 新 聞 』く ら し 欄 、 2001 年 12 月 14 日 、 朝 日 新 聞 社 ・ 「 仕 事 と 子 育 て 互 い に プ ラ ス 」『 朝 日 新 聞 』 家 庭 欄 、 2001 年 12 月 16 日 、 朝 日 新 聞 社 ・ 「 ど う な る ? 子 育 て 支 援 」『 朝 日 新 聞 』 く ら し 欄 、 2001 年 12 月 28 日、朝日新聞社 ・ 「少子化対策労働省要求 地域の子育て支援重点」 『 朝 日 新 聞 』2002 年 8 月 22 日 、 朝 日 新 聞 社 ・ 大 久 保 真 紀 (編 集 )「 虐 待 ㊤ 重い決断命さえ左右 メモ欄」 『朝日新 聞 』 第 3 社 会 欄 、 2002 年 9 月 25 日 、 朝 日 新 聞 社 ・ 「 急 増 す る ネ グ レ ク ト 」『 朝 日 新 聞 』 2002 年 9 月 20 日 、 朝 日 新 聞 社 ・ 「 育 児 が 仕 事 と 割 り 切 る 日 々 」『 朝 日 新 聞 』 声 欄 、 2002 年 9 月 25 日、朝日新聞社 ・ 杉 原 里 美 (編 集 )「 増 子 化 の 国 ㊦『 親 保 険 』で 育 児 も 仕 事 も 」 『朝日新 聞 』 く ら し 欄 、 2002 年 10 月 4 日 、 朝 日 新 聞 社 70 ・ 「あなたがつくる特集 社 会 ・ 地 域 が 子 ど も を 育 て る ㊦ 」『 朝 日 新 聞 』 く ら 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ページ 71 1 柏 木 恵 子『 子 育 て 支 援 を 考 え る 変 わ る 家 族 の 時 代 に 』2001 年 、岩 波 ブ ッ ク レ ッ ト NO.555、 P16、 P19 2 佐 々 木 保 行「 子 育 て 期 の 母 親 と 育 児 ノ イ ロ ー ゼ 」 『 育 児 ノ イ ロ ー ゼ 』1982 年 、 有 斐 閣 新 書 、 P35 3 「子育て支援アンケート 子 育 て は 楽 し い で す か ? 」2002 年 3 月 、子 育 て 支 援グループ わらしっこ倶楽部スタッフ作成 の中の母親の声より 4 柏 木 恵 子『 子 育 て 支 援 を 考 え る 変 わ る 家 族 の 時 代 に 』2001 年 、岩 波 ブ ッ ク レ ッ ト 、 P19、 P21 5 前 田 恵 美「 子 育 て 支 援 社 会 の 構 築 に 向 け た 視 点 (2) 在宅での子育てにも必要 な 支 援 」『 japan.internet.com』 ニ ュ ー ス 解 説 欄 、 2002 年 2 月 14 日 の 記 事 、 日 本 総 合 研 究 所 、 P1 6 佐 々 木 保 行「 子 育 て 期 の 母 親 と 育 児 ノ イ ロ ー ゼ 」 『 育 児 ノ イ ロ ー ゼ 』1982 年 、 有 斐 閣 新 書 、 P42 7 「親に適さないと感じる半数」 『 asahi.com』 出 産 ・ 子 育 て 欄 、 2001 年 10 月 25 日 の 記 事 、 朝 日 新 聞 社 8 大 日 向 雅 美 『 子 育 て と 出 会 う と き 』 1999 年 、 NHK ブ ッ ク ス 、 P1 9 原田正文 『 育 児 不 安 を 超 え て 思 春 期 に 花 ひ ら く 子 育 て 』1993 年 、朱 鷺 書 房 、 P94∼ 95 10 同 上 文 献 P50∼ 51 11 同 上 文 献 P50~51 12 同 上 文 献 P52~53 13 同 上 文 献 P99 14 同 上 文 献 P54 1 5 大 日 向 雅 美 (お お ひ な た ま さ み )、 現 在 恵 泉 女 学 園 大 学 教 授 、 専 攻 心 理 学 ・ 女 性学 1 6 大 日 向 雅 美 『 子 育 て と 出 会 う と き 』 P88、 P129∼ 130 17 同 上 文 献 P130 1 8 大 久 保 真 紀 (編 集 )「 虐 待 ㊤ 重 い 決 断 命 さ え 左 右 メ モ 欄 」『 朝 日 新 聞 』 第 3 社 会 欄 、 2002 年 9 月 25 日 の 記 事 、 朝 日 新 聞 社 1 9 『 子 ど も 虐 待 防 止 ハ ン ド ブ ッ ク 』 2001 年 、 神 奈 川 児 童 相 談 所 、 P6 2 0 『 児 童 虐 待 マ ニ ュ ア ル 』 2001 年 、 日 本 医 師 会 21「 急 増 す る ネ グ レ ク ト 」 『 朝 日 新 聞 』 2002 年 9 月 20 日 の 記 事 、 朝 日 新 聞 社 22『 子 ど も ・ 家 庭 シ ン ポ ジ ウ ム 「 児 童 虐 待 を 考 え る 」 ∼ 地 域 で 子 育 て を 支 え る ために∼』小田原市主催 に参加して感じたことを含む 23 大 日 向 雅 美 「 母 親 達 を 孤 立 さ せ な い た め に 」 『働く母親の子育て支援』論点 ― 育 児 ・ 保 育 ・ 教 育 ― 欄 テ ー マ 論 考 2、2002 年 8 月 2 日 、チ ャ イ ル ド ・ リ サ ー チ ・ ネ ッ ト ・ ラ イ ブ ラ リ ー 、 P8 2 4 「 働 く 女 性 の 7 割 、第 1 子 出 産 後 離 職 厚労省調査」 『 asahi.com』出 産 ・ 子 育 て 欄 、 2001 年 10 月 22 日 の 記 事 、 朝 日 新 聞 社 2 5 大 日 向 雅 美 『 子 育 て と 出 会 う と き 』 P82∼ 83 26 同 上 文 献 P215∼ 216 27 大 日 向 雅 美 「 母 親 達 を 孤 立 さ せ な い た め に 」 『 働 く 母 親 の 子 育 て 支 援 』 P8 2 8 大 日 向 雅 美 『 子 育 て と 出 会 う と き 』 P83 29 「 仕 事 と 子 育 て 互 い に プ ラ ス 」 『 朝 日 新 聞 』家 庭 欄 、2001 年 12 月 16 日 の 記 事、朝日新聞社 3 0 『 NIRA 研 究 報 告 書 < NIRA 市 民 フ ォ ー ラ ム > 女 性 の 社 会 参 加 と 課 題 第三 72 回 「 出 産 ・ 育 児 と 就 労 の 両 立 」』、 1992 年 、 総 合 研 究 開 発 機 構 、 P81∼ 82 同 上 文 献 P82 3 2 前 田 恵 美 「 子 育 て 支 援 の 構 築 に 向 け た 視 点 (1)」 『 japan.internet.com』 ニ ュ ー ス 解 説 欄 、 2002 年 2 月 13 日 の 記 事 、 日 本 総 合 研 究 者 、 P1 33 同 上 記 事 P1 3 4 「 今 後 の 子 育 て 支 援 の た め の 施 策 の 基 本 的 方 向 に つ い て (エ ン ゼ ル プ ラ ン )」 『 エ ン ゼ ル プ ラ ン 全 文 』 厚 生 労 働 省 ホ ー ム ペ ー ジ 、 P1 35 同 上 論 文 P1 36 同 上 論 文 P1∼ 2 37 同 上 論 文 P2 3 8 前 田 恵 美 「 子 育 て 支 援 の 構 築 に 向 け た 視 点 (1)」 『 japan.internet.com』 P1 3 9 「 重 点 的 に 推 進 す べ き 少 子 化 対 策 の 具 体 的 実 施 計 画 に つ い て (新 エ ン ゼ ル プ ラ ン )の 要 旨 」『 新 エ ン ゼ ル プ ラ ン に つ い て 』 厚 生 労 働 省 ホ ー ム ペ ー ジ 、 P3 4 0 前 田 恵 美 「 子 育 て 支 援 の 構 築 に 向 け た 視 点 (1)」 『 japan.internet.com』 P1 4 1 「重 点 的 に 推 進 す べ き 少 子 化 対 策 の 具 体 的 実 施 計 画 に つ い て (新 エ ン ゼ ル プ ラ ン )の 要 旨 」『 新 エ ン ゼ ル プ ラ ン に つ い て 』 P3 4 2 大 日 向 雅 美 『 子 育 て に 出 会 う と き 』 1999 年 、 NHK ブ ッ ク ス 、 P174∼ 175 43 「 ど う な る ? 子 育 て 支 援 」 『 朝 日 新 聞 』く ら し 欄 、2001 年 12 月 28 日 の 記 事 、 朝 日 新 聞 社 、 P15 4 4 同 上 記 事 、 P15 4 5 同 上 記 事 、 P15 4 6 同 上 記 事 、 P15 47 『 子 育 て 支 援 グ ル ー プ わ ら し っ こ 倶 楽 部 活 動 報 告 2001.4∼ 2002.3』 2002 年 5 月、わらしっこ倶楽部スタッフ作成 48 柏 木 恵 子 『 子 育 て 支 援 を 考 え る 変 わ る 家 族 の 時 代 に 』 2001 年 、 岩 波 ブ ッ ク レ ッ ト NO.555、 P42 49 「 あ な た が つ く る 特 集 社 会 ・ 地 域 が 子 ど も を 育 て る ㊦ 」『 朝 日 新 聞 』 く ら し 欄 、 2002 年 11 月 22 日 の 記 事 5 0 前 田 恵 美 「 子 育 て 支 援 社 会 の 構 築 に 向 け た 視 点 (3) 子育てのネットワーク づ く り 」『 japan.internet.com』 ニ ュ ー ス 解 説 欄 、 2002 年 2 月 20 日 の 記 事 、 日 本 総 合 研 究 所 、 P1 51 「 ニ ュ ー ジ ー ラ ン ド の 保 育 施 設 ∼ 親 も 育 て る 場 に 」 『 日 本 経 済 新 聞 (夕 刊 )』 2001 年 4 月 25 日 の 記 事 、 日 本 経 済 新 聞 社 5 2 佐 藤 実 千 秋 (編 集 )「 ニ ュ ー ジ ー ラ ン ド 報 告 ㊤ 」 『 朝 日 新 聞 』 く ら し 欄 、 2001 年 12 月 14 日 の 記 事 、 朝 日 新 聞 社 5 3 前 田 恵 美 「 子 育 て 支 援 社 会 の 構 築 に 向 け た 視 点 (3) 子育てのネットワーク づ く り 」『 japan.internet.com』 P1 5 4 大 日 向 雅 美 『 子 育 て と 出 会 う と き 』 1999 年 、 NHK ブ ッ ク ス 、 P50∼ 51 55 原 田 正 文 『 育 児 不 安 を 超 え て 思 春 期 に 花 ひ ら く 子 育 て 』 1993 年 、 朱 鷺 書 房 、 P120∼ 121 56 原 田 正 文 『 育 児 不 安 を 超 え て 思 春 期 に 花 ひ ら く 子 育 て 』 P120∼ 121 5 7 大 日 向 雅 美 『 子 育 て と 出 会 う と き 』 P51 58 柏 木 恵 子 『 子 育 て 支 援 を 考 え る 変 わ る 家 族 の 時 代 に 』 2001 年 、 岩 波 ブ ッ ク レ ッ ト NO.555、 P21∼ 22 59 同 上 文 献 P22 6 0 大 日 向 雅 美 『 子 育 て と 出 会 う と き 』 P56 31 73 同 上 文 献 P51 杉 原 里 美 (編 集 )「 増 子 化 の 国 ㊦『 親 保 険 』で 育 児 も 仕 事 も 」 『 朝 日 新 聞 』く ら し 欄 、 2002 年 10 月 4 日 の 記 事 、 朝 日 新 聞 社 63 柏 木 恵 子 『 子 育 て 支 援 を 考 え る 変 わ る 家 族 の 時 代 に 』 P47∼ 48 6 4 「 下 降 傾 向 、な ぜ 続 く ど う な る 少 子 化 対 策:上 」 『 asahi.com』ニ ュ ー ス 欄 、 2001 年 9 月 11 日 の 記 事 、 朝 日 新 聞 社 65 杉 原 里 美 「 増 子 化 の 国 ㊦ 『 親 保 険 』 で 育 児 も 仕 事 も 」 『 朝 日 新 聞 』 2002 年 10 月 4 日 の 記 事 66 同 上 記 事 67 同 上 記 事 68 同 上 記 事 6 9「 下 降 傾 向 、な ぜ 続 く ど う な る 少 子 化 対 策:上 」 『 asahi.com』2001 年 9 月 11 日 の 記 事 70 同 上 記 事 71 同 上 記 事 61 62 74