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はじめに
あずき、インゲン豆など大豆、落花生を除く豆類いわゆる雑豆の消費は、我が国の場合、
菓子(餡)、赤飯、煮豆などの伝統的な用途が中心であるが、嗜好の変化、食生活の洋風化の
影響もあり、こうした豆類の国内消費量は減少傾向を続けてきた。
このような状況の中で、当協会では、豆類の消費拡大を促進させるために、一般消費者、
学校給食関係者向けに、豆の特性、レシピ、調理技術情報の普及啓発、料理講習会、料理コ
ンテストの開催などに取り組んできている。また、外食・中食、流通・加工業者向けにも、
関係者の意識の高揚や新しい用途の開拓や普及を目的に、プロの豆料理選手権、豆を使用し
たパンコンテスト等のイベントを開催してきた。
一方、健康志向が高まる中、豆類のバランスの取れた栄養素の供給源としての機能、優れ
た機能性成分の供給源としての機能、嗜好性に関わる機能が再認識、注目されている。
こうした取組みや消費者意識の変化などもあって、近年は、スープ、カレー、サラダ、付
け合わせ、パンなどの洋風の用途にも使われるようになっている。
今後、雑豆類の需要拡大を更に進めていくためには、豆類や豆料理のPRや関係者の意識
の高揚などへの継続的な努力と併せて、調理時間の短縮や豆の栄養性、機能性を活かした新
しい多用な用途の開拓を狙った調理素材、素材製品の開発、普及が重要な課題である。
当協会では、こうした課題に対応するため、豆類の1次加工された調理素材の開発・普及
を検討するために「豆類食材開発研究会」を設けるとともに、同研究会の検討を具体化し、
主に豆粉等加工利用技術に関する検討、研究開発を行うために「豆類食材研究開発グループ」
を設置した。研究開発は、
(独)食品総合研究所(当時)
、
(財)十勝圏振興機構食品加工技術
センター、女子栄養大学へ委託して実施した。この報告書は、
「豆類食材研究開発グループ検
討委員会」によるプロジェクト研究の成果をとりまとめたものである。3機関の関係者に対
し、研究開発及び成果のとりまとめのご労苦に対し、深く感謝申し上げたい。併せて、本田
座長をはじめ研究会の各委員並びに検討委員会の各委員並びに豆粉末の食品化試作にご協力
頂いた各位のこれまでのご協力について、厚く御礼申し上げたい。
この報告書は、3カ年に亘る検討委員会の研究成果として、豆粉末物の調理素材について、
その素材開発、特性解明やそれを利用した食品化について得られた多くの知見を整理すると
ともに、豆新素材としての豆粉末(豆粉)が、雑豆の栄養性・機能性を広い用途で活用でき
る可能性、豆粉の特性を加味した活用モデルについても記述している。
検討委員会がスタートした3年前に比べ、ドライパック、冷凍食品、缶詰など各種の豆の素
材加工製品、調理製品の流通量も増えている。流通・加工、外食・中食関係者の関心がこう
した雑豆類に向き始めたと感じている。
豆粉末について総合的な情報を盛り込んだ本報告書が、関係者に広く活用されることを期
待している。
平成 18 年 9 月
財団法人
理事長
日本豆類基金協会
矢野 征男
目
1
次
事業の背景……………………………………………………………………………………1
2
新形態の素材開発の検討の流れ……………………………………………………………2
1)雑豆の需要拡大につながる新形態の素材開発…………………………………………5
①物理的処理による粉体化…………………………………………………………………5
ア.粉砕処理などの前処理あるいは 1 次加工処理の目的……………………………5
イ.前処理としてのソフトエレクトロンによる雑豆殺菌処理………………………6
(ア)手亡豆及び大正金時豆のソフトエレクトロン殺菌……………………………6
ウ.各種粉砕装置による粉体化の検討………………………………………………12
(ア)手亡を用いた各種粉体化処理の検討…………………………………………13
(イ)金時を用いた各種粉体化処理…………………………………………………14
(ウ)実用化を想定した粉体化処理…………………………………………………22
②酵素処理によるペースト化・粉末化処理……………………………………………26
ア.手亡酵素処理粉末のプロテアーゼ・アミラーゼによる酵素分解……………26
イ.金時・手亡粉末製造の前処理及び酵素処理条件の確立………………………26
ウ.実用化規模での雑豆素材の処理方法及びコスト試算…………………………26
③新素材の基礎加工適性評価……………………………………………………………32
ア.手亡及びその加工品………………………………………………………………32
イ.金時及びその加工品………………………………………………………………33
④粉体化及びペースト化処理の新素材導入の可能性…………………………………36
2)豆新素材の特性解明のとりまとめ……………………………………………………38
①豆新素材毎の特性(物性、化学性、調理特性)……………………………………38
ア.手亡粉末の粘度比較………………………………………………………………38
イ.酵素処理手亡粉末の粘度比較……………………………………………………38
ウ.酵素処理手亡粉末を用いた試作…………………………………………………38
エ.酵素処理手亡及び金時粉末の粘性試験…………………………………………39
オ.焙煎粉末の調整と物理的測定……………………………………………………39
カ.焙煎金時粉末を用いた試作………………………………………………………39
キ.キシラナーゼ処理粉末の粘性試験………………………………………………40
ク.補助食材としての加工適性試験…………………………………………………40
②豆新素材毎の栄養成分…………………………………………………………………40
ア.各粉末の成分分析…………………………………………………………………40
イ.手亡粉末の成分における粉砕方法別の比較……………………………………41
ウ.酵素処理による栄養成分の変動…………………………………………………41
③調理後の新素材の特性(タンパク質)………………………………………………50
3)豆新素材の調理科学的研究(豆新素材を利用した食品化)………………………51
①日常食での試作、評価(調製、嗜好性)……………………………………………51
ア.国民栄養調査結果から得られる課題……………………………………………51
イ.手亡豆粉を用いた試作……………………………………………………………51
(ア)手打ちうどん……………………………………………………………………51
(イ)サブレ……………………………………………………………………………52
②調理法毎の豆新素材の評価、利用条件(使用条件)の確定………………………52
ア.4製法5種の豆粉を利用した料理の分類の試み………………………………52
イ.豆粉を利用した食べ物の試作とその評価………………………………………52
(ア)豆粉の試食………………………………………………………………………52
(イ)各豆粉を使った試作……………………………………………………………53
(ウ)考察………………………………………………………………………………55
③有望用途の絞り込みと具体的提案……………………………………………………55
ア.実験方法……………………………………………………………………………55
(ア)豆粉の新旧の比較………………………………………………………………55
(イ)官能評価…………………………………………………………………………56
イ.実験結果……………………………………………………………………………56
(ア)豆粉の新旧の比較………………………………………………………………56
(イ)試作………………………………………………………………………………56
ウ.考察…………………………………………………………………………………61
(ア)豆粉の新旧の差異………………………………………………………………61
(イ)金時豆粉の試作結果……………………………………………………………61
(ウ)金時豆粉の調理の扱い方………………………………………………………61
参考資料:協力機関による介護食、乳児食での試作、評価…………………………75
4)豆新素材の商品性、利用目的の明確化………………………………………………89
①商品性の整理……………………………………………………………………………89
ア.食品の栄養価値の向上、改善……………………………………………………89
(製品の食物繊維質の増大、たんぱく質栄養価の改善、低アレルゲン化への貢献)
イ.加工適性の向上……………………………………………………………………89
(保水性・吸水性改良・吸油効果など)
ウ.他の食材との高い共存性…………………………………………………………89
②利用目的の明確化と品質条件…………………………………………………………90
ア.栄養強化食品(介護食、乳児食)………………………………………………90
―高度の安全性、低アレルゲン(アレルゲンフリー)
イ.簡単・ヘルシー食材(保育園・学校給食)……………………………………90
―高栄養価、調理時間の短縮
ウ.補助食材
(料理食材、製菓・製パン)……………………………………90
―高栄養化、調理時間の短縮、加工適性、嗜好性向上
執筆者一覧………………………………………………………………………………………93
参考
豆類食材開発研究会及び豆類食材研究開発グループ検討委員会委員名簿……………94
豆類食材開発研究会について………………………………………………………………95
豆類食材研究開発グループ検討委員会について…………………………………………97
豆類食材開発研究会等の開催状況…………………………………………………………98
豆類食材開発利用推進に関する研究内容…………………………………………………99
各種粉末製品価格…………………………………………………………………………100
1
事業の背景
(財)日本豆類基金協会は、平成14年に豆類のより一層の消費拡大を
実現するために外食・中食産業や外食・中食に食材を供給している調理食
品企業を対象とし、豆類の利用実態、商品化の意向、新たな用途開発の可
能性や問題点を把握するため豆類の業務需要開発に関する調査を実施した。
同調査報告書では、今後の豆類の業務需要の拡大方策として、①広範な
業務用マーケットの開拓及び②洋風利用の開拓を提案している。具体的に
は、①は豆類の形状にとらわれないで、栄養面や豆類の機能性を活かした
練り込み材料や液状等の広範な用途の開拓(スナック、パン、洋菓子類、
その他の加工食品)で、豆の食材としての中心形態は、
「ペースト、粉体の
素材製品」②はいんげん豆、えんどう、ひよこ豆、レンズ豆等を中心とし
た前菜、サラダ、付け合わせ、スープ・シチュー等の洋風利用の開拓で、
豆の食材としての中心形態は「水煮、蒸し煮等の一次製品」としている。
このような提案並びにこれまで実施した幼児食向けの豆類の消費拡大方
策の検討を踏まえ、今後における豆類の需要拡大を図るため、一次加工さ
れた調理素材を利用した豆料理・加工製品の開発・普及方向について検討
を行う「豆類食材開発研究会」を設置し、①豆類を粉体、ペースト、水煮、
蒸し煮等に一次加工し、調理素材として利用していく上での需用者のニー
ズについて。②一次加工製品の開発に当たって解決すべき技術的な課題に
ついて。③一次加工した調理素材を活用して豆類の消費拡大を図る際に留
意すべき点等について検討を開始した。また、豆類食材開発研究会の検討
を具体化するとともに、雑豆類の調理素材としての利用拡大を図るため、
豆の前処理を含めた粉末処理法の検討、粉末化物等の品質・加工適性評価
等を行い、新規調理素材としての粉末化素材等の特性を明らかにし、利用
分野について提案することを目的とした「豆類食材研究開発グループ検討
委員会」を設置し、プロジェクト研究を開始した。
プロジェクト研究は、①殺菌処理技術の開発。②粉末化処理技術の開発。
③粉末化物の加工適性評価及び機能性成分の評価。④加工食品への応用試
験。⑤粉末化物の加工食品化の実証。⑥ペーストの加工食品化の実証等を
内容とし、独立行政法人食品総合研究所、財団法人十勝圏振興機構食品加
工技術センター、女子栄養大学の協力を得て実施した。
-1-
2
新形態の素材開発の検討の流れ
本章の①節以降で、手亡及び金時を用いた新形態素材の試作として粉体化及び酵素処理
によるペースト化などの検討内容について詳しく述べるが、まず、研究を実施した 3 年間
の素材開発の流れについて概要を説明する。当初の検討において、アクの少ない手亡を用
いて、どのような粉体処理が食材として適しているか、図 1 のような試料調製の流れで検
討を行った。
図 1 に示したように、豆類の有効利用の観点と機能性成分の添加の意味でも、食物繊維
が多く、また色素などの機能性成分も多いことから皮付きでの素材化を検討するとともに、
粉体化での粒子のざらつきなどが懸念されたため、脱皮した豆においても処理を行った。
また豆類の粉体化処理で、組織が壊された後に、豆内の酵素反応により変質を生じる可能
性もあるため、粉体での品質の影響を見るため、粗粉砕の段階で短時間、熱処理を行うこ
とで、粗粉砕装置を用いた際に、加熱処理と未加熱処理での検討を行った。その後の微粉
体処理については、一般的な粉体処理に用いられるハンマーミルを用いてそのスクリーン
を変えて、ざらつきなどの発生や食材調製への影響の検討を行った。一般的加工ではない
が、乾式の粉砕装置として、コピーのカーボントナー製造等に使われているジェットミル
で数ミクロンまでの粉体化処理も試み、その食材としての事前評価も実施した。その後、
図 1 に示すように予備試験での粒子のざらつきなどの状況や食材調製の結果(一部を1,
2 章に記載している)から、塗りつぶしで示す調製の流れを基本として、これらの調製試
料及びこの試料の酵素処理を施した試料を 3 章で報告する実際の食材評価などに用いた。
図 1 に示した機関名と食品については、本研究を実施した女子栄養大及び協力機関での試
作試験及び評価を実施した食品であり、3 章にその評価内容について報告する。
図 2 は平成15 年度の手亡で実施した結果を基に、金時での試料調製の流れを示す。酵
素処理については、工程の簡略化などの目的からマスコロイダーを用いた湿式でのペース
ト化を行って、酵素処理を実施する調製方法も新たに検討した。また大豆粉体素材として
一般的なきなこを例に、焙煎処理を前処理とした粉体化処理も併せて実施した。
図 1 と同様に、各処理の下に示した機関名と食品については、本研究を実施した女子栄
養大及び協力機関での試作試験及び評価を実施した食品であり、3 章にその評価内容につ
いて報告する。
-2-
-3-
加熱無し
ジェットミル
処理
ジェットミル
処理
ジェットミル
処理
ハンマーミ
ル処理
酵素処理
・女子栄養大 手打ちうどん(腰の強いタイプ)
・女子栄養大 手打ちうどん(ソフト麺タイプ)
・女子栄養大 サブレ(ショートネスの高いクッキー)
・小野冷子先生 イーストパン、クッキー
・食加技センター 蒸しパン
(注)万 下:豆を「万石篩」という篩を用いて選別する際、篩の下に落ちた豆。
電くず:豆を電光選別機で選別する際、除外された豆。
非酵素処理
・女子栄養大 手打ちうどん(腰の強いタイプ)
・女子栄養大 手打ちうどん(ソフト麺タイプ)
・女子栄養大 サブレ(ショートネスの高いクッキー)
・小野冷子先生 イーストパン、クッキー
・株式会社柳月 ケーキ生地
ハンマーミ
ル処理
連続粗粉
砕機処理
加熱有り
連続粗粉
砕機処理
ハンマーミ
ル処理
加熱無し
皮無し
皮付き
手亡(電くず、万下)
図1 平成15年度の試料調製の流れ*最終的に選択された処理条件を塗りつぶしで示した
ジェットミル
処理
ハンマーミ
ル処理
加熱有り
-4-
ハンマーミル処理
(粗粉砕機400rpm)
・女子栄養大 豆粉の試食
・女子栄養大 水羊羹
・女子栄養大 ソフトクッキー
・食加技センター クリームペースト、サブレ
・女子栄養大 豆粉の試食
・女子栄養大 水羊羹
・女子栄養大 ソフトクッキー
連続粗
粉砕機
焙煎
・女子栄養大 水羊羹
・女子栄養大 ソフトクッキー
・株式会社柳月 スポンジ
・株式会社柳月 シューケース
・有限会社林製パン 食パン
・女子栄養大 食パン
・女子栄養大 豆粉パスタ
・女子栄養大 赤飯風
・女子栄養大 グラタン用ソース
・女子栄養大 スポンジケーキ
・女子栄養大 シフォンケーキ
・女子栄養大 かるかん
・女子栄養大 蒸し羊かん
・女子栄養大 豆粉アイスクリーム
・女子栄養大 ホット金時ミルク
酵素処理
マスコロイ
ダー処理
ハンマーミル処理
(粗粉砕機200rpm)
・女子栄養大 水羊羹
・女子栄養大 ソフトクッキー
酵素処理
連続粗粉
砕機処理
*原料豆は16年度産金時、17年度産金時(塗りつぶし
*平成15~16年度の酵素処理はアルカラーゼ・フレーバーザイム・ファンガミルを使用、17年度はキシラナーゼ・ファンガミルを使用した。
・株式会社柳月 スポンジ
・株式会社柳月 シューケース
・有限会社林製パン 食パン
・女子栄養大 食パン
・女子栄養大 豆粉パスタ
・女子栄養大 赤飯風
・女子栄養大 グラタン用ソース
・女子栄養大 スポンジケーキ
・女子栄養大 シフォンケーキ
・女子栄養大 かるかん
・女子栄養大 蒸し羊かん
・女子栄養大 豆粉クッキー
非酵素処理
ハンマーミ
ル処理
金時
(皮付き、加熱有り)
図2 平成16~17年度の試料調製の流れ
1)雑豆の需要拡大につながる新形態の素材開発
①物理的処理による粉末化
ア.粉砕処理などの前処理あるいは 1 次加工処理の目的
背景にも述べられているように豆類の新規需要開拓について、粉体化処理やペースト化
処理の利点はいくつかある。豆類は栄養的にも優れた農産物でありながら、そのままでの
利用形態は、伝統的に煮豆あるいは餡としての利用が中心であり、また、「水戻し」「下ゆ
で」の下処理を必要とすることが主婦の社会進出もあって、家庭での調理を遠ざける一因
となっている。また、幼児食、高齢者食の関係者などからは誤飲の問題なども豆類の問題
としてあげられており、その意味で、形状を丸のままから粉体、あるいはペーストにする
ことで、調理加工の利便性や機能性や栄養面を活かした新規食材などの設計も大幅に広が
る可能性を持っている。
最近豆類に限らず、微粒子化処理することで機能性成分の多くを含んだ農産物の表皮部
位を可食素材として利用できることが報告されている。また大豆においてのオカラ成分を
微粒子、ペースト化して、それらの食品の副材料として利用することで、食物繊維成分を
強化した食品製造が可能となるなどの素材も開発されている。さらに微粒子化することで、
微粒子化された成分の吸収効率が改善されるなどの報告も海草類などにおいて報告されて
いる。
粉砕処理においては、得られる粒子サイズによりいくつかの粉砕方法があるが、一般的
には、処理後の取り扱い(流通や保存)や粒子サイズでの細かなサイズにおいて連続的な
粉砕処理としては乾式の方法が一般的である。そのため、使用する原料の清浄性などが得
られた粉体物の品質にも影響を与える。しかし、豆類として品質のよいものは豆粒として
の調理加工品としての利用需要も大きく、コストも高くなる。規格外などの豆を粉末化処
理などすることで付加価値を向上させることは農家収入や農産物の効果的利用についても
重要な課題であるが、その際にはこれらの原料豆の微生物的安全性を含めて品質の確保が
重要な課題となってくる。そのため、本粉体化処理の検討では、原料豆での非熱的かつ乾
燥した状態での殺菌処理の検討も実施した。
粉体化の検討においては、ペースト化処理の前処理も含めて検討した。次項以降に粉体
化処理前の殺菌処理、さらには手亡、金時を用いた粉砕処理条件の検討や最終的な粉体化
処理の処理コストや実用的な粉体化処理についても加工業者での試験結果を含めて報告す
る。
-5-
イ.前処理としてのソフトエレクトロンによる雑豆殺菌処理
ソフトエレクトロン(低エネルギー電子線)は、穀類や豆類の表層(~数 100 ミクロン)
に限定して作用し、内部の成分に影響無く殺菌をすることが可能である。
たとえば、大豆については、原料段階で 102~103オーダーの一般生菌数のものでも加速
電圧 170kV(大豆表層でのエネルギーは、60keV)のソフトエレクトロンによりほぼ検出
限界以下に菌数を低減することができる。この原料大豆を用いて豆乳を作る際、火入れの
最高加熱温度を 90℃まで低下させても、120℃で加熱していた豆乳と同じように日持ち
(25℃8日間保持しても、微生物数が増加せず)がよく、さらにこの加熱温度の低い豆乳
を用いて作った豆腐の品質指標(水分保持率やゲル化特性など)も優れていた。ソフトエ
レクトロン処理では、大豆の発芽力に悪影響は認められず、殺菌後も無処理と同様の発芽
力を有し、ラジカル消去能や、過酸化脂質量、カロテノイド含量といった成分や品質指標
にも影響は認められなかった。
なお、ソフトエレクトロン処理装置に関しては、小麦を対象にした実用規模の装置とし
て、日新ハイボルテージ社(現NHVコーポレーション)が、1時間あたり、0.5~1トン
を連続的に処理できる装置を開発している。
そこで、加工原料としての手亡や金時について、ソフトエレクトロンを用いた非加熱殺
菌が実施できれば、菌数を低減化した原料を供給することで、その後の加工における加熱
条件を緩和し、従来とは異なる特性を持つ加工品を供給することが期待される。
本研究においては、食品総合研究所にある実験用の装置を用いて、手亡および、金時の
殺菌条件について検討した。また、殺菌した原料を粉末化し、そのペーストについての日
持ちを検討した。
P
P
P
P
(ア)手亡豆および大正金時豆のソフトエレクトロン殺菌:
Ⅰ.試験方法
Ⅰ-1.ソフトエレクトロン処理
豆試料のソフトエレクトロン処理は、食品総合研究所の実験用装置を用いて行った。す
なわち、ファンデ・グラーフ型電子線加速装置(日新ハイボルテージ社製)の照射ウイン
ドウの下に、豆試料を一層に広げて回転振動させるための装置(穀物試料回動装置)を設
置し、豆を振動させながらその表面に均一に電子を照射した(図3)。この時の加速電圧は、
170kV、180kV、190kV、200kV であり、照射ウインドウと試料皿の距離は約 15cm であ
った。照射ウインドウに張られたチタン箔の厚さは 50 ミクロンで、これと試料までの空気
層の厚さから、電子の阻止能を考慮して試料表面での電子のエネルギーを計算すると、加
速電圧 170、180、190、200kV の電子は、それぞれ、60、75、90、100keV に相当する。
この時の電流値は、4μA~12μA で、厚さ 44μm のラジオクロミック線量計を、試料回動
装置の試料皿に静置して測定した単位時間あたりの吸収線量をもとに、試料の回転による
ファクターを 1/2 と仮定して吸収線量を表記した。この値は、豆のごく表層部分の見かけ
上の吸収線量であり、各エネルギーの電子は図4に示す様に、物質の表面から深部に入る
にしたがって減衰してゆき、豆の内部(胚乳部分)にはほとんど透過しない。(図4)
殺菌後の試料は、滅菌したポリエチレン袋に入れ、冷蔵庫中で保存し、できる限り早く、
-6-
微生物数の検査を行った。
Ⅰ-2.豆試料
十勝圏食品加工センターより供試された、以下の材料について、殺菌の前後における微
生物数の検討を行った。
1 手亡(全粒)上級品
2 手亡(脱皮)
3 手亡(全粒)万下
4 手亡(全粒)電くず
5 金時(全粒)
6 金時(焙煎)
Ⅰ-3.菌数測定
豆(手亡および金時)2.5g を10倍量のペプトン水でワーリングブレンダーを用いてホ
モジナイズし、その液体を適宜希釈した後、一般生菌は、標準寒天培地(日水)を用いて、
30℃で3日間、真菌(カビ、酵母)は、100μg/L クロラムフェニコール添加ポテトデキ
ストロース培地で25℃ 5日培養後、コロニー数を計数した。また、耐熱性芽胞菌につ
いては、得られたホモジュネートを 80℃、20 分間加熱処理後に、一般生菌と同様に計数
した。
Ⅰ-4.粉末ペーストの菌数測定(万下、電くず)
全粒試料(万下)は 180kV 10kGy、全粒試料(電くず)は 200kV 10kGy で処理し、
ハンマーミルで粉砕し、粉末化した。豆粉 10gに蒸留水 30ml を加え、耐熱ポリ袋に入れ
てシール後混合し、100℃で 10 分煮沸し、ペースト化した。調整当日と 20℃貯蔵3日後に
菌数(全菌数、耐熱性芽胞菌、カビ・酵母)を測定した。
Ⅱ試験結果
Ⅱ-1.豆の殺菌効果
表1に、手亡及び金時試料の殺菌前の微生物数を示した。手亡の上級品や金時の微生物
数は、101~102cfu/g程度の汚染であった。また、焙煎した金時では、ほとんど微生物が検
出されなかった。手亡の万下に関しては、微生物数も多く 104cfu/g程度の一般生菌が観測
され、カビによる汚染も多かった。
次に、これらの豆を異なるエネルギーと線量のソフトエレクトロンで処理した場合の菌
数の変化を検討した。
表 2~4 にそれぞれ、手亡上級品、万下、電くずの3つの等級の豆の殺菌効果を示した。
手亡については、上級品は 170kV 10kGy、万下は 180kV 10kGy 以上の条件で、ほぼ
検出限界(<10CFU/g)以下に菌数を低減できた。電くずは、もとの汚染菌数も多く 200keV
まで電圧を上げても菌数を検出限界以下に下げることは出来なかった。ただし
200keV10kGy では芽胞菌をかなり低減することが出来た。
金時に関しては、180kV 10kGy の処理で、ほぼ検出限界以下に微生物数を低減するこ
-7P
P
P
P
P
P
とが出来た(表5)。この場合、原料としても菌数が大変少ないので、殺菌処理の効果を評
価するのが難しく、焙煎した金時については、処理の効果は議論出来なかった(表6)。
Ⅱ-2. 殺菌原料を粉末化し、ペーストを作った際の微生物数
手亡原料(万下及び電くず)を前項で最大の効果が得られた殺菌条件(200kV 10kGy)
で処理後、スクリュー粉砕機で粗粉砕、ハンマーミル処理で粉末化した。この粉末に水を
加えた後に蒸煮してペーストを作成し、直後と20℃保存3日間保存後の菌数を測定した。
殺菌原料を使うことで、ペースト貯蔵中の菌数増加はいくぶん抑制された。ただし、工程
の過程での微生物数を追跡すると殺菌原料を粉末化したところで、菌数が増加しており、
原料で菌数を低減しても、その衛生状態を保って粉末化出来ていないことが、考えられた
(表7)。そこで、菌数の少ない上級手亡を用い粉末化過程での微生物数の推移を検討した。
(参考)に結果を示すが、粗粉砕過程でコンタミネーションが明らかになっており、この
実験において、原料殺菌の効果を議論することが困難であることが示された。
Ⅲまとめ:
インゲン豆;手亡、金時の微生物汚染状況を明らかにした。
ソフトエレクトロン処理で、原料インゲン豆の菌数低減が可能であることが示された。
原料殺菌した粉末を利用して、ペースト作成すると日持ちがいくぶん改善する傾向が認
められたが、粉末化工程での菌数管理が難しく、明確な効果を検証することが出来なかっ
た。
-8-
図3.実験室レベルでの試料回動装置の模式図と写真
図4.ソフトエレクトロンの透過力
表 1.
原料豆の微生物汚染状態
(CFU/g)
一般生菌
耐熱性芽胞
102
1手亡(全粒)
1.8 x
2手亡(脱皮)
4.6 x 101
8.6 x
P
P
P
P
1
3手亡(全粒)万下
4.0 x 10
4手亡(全粒)電くず
4.6 x 104
P
1
5金時(全粒)
2.8 x 10
6金時(焙煎)
<10
P
2.6 x103
1.1 x 10
P
P
P
P
1
P
P
P
P
1.3 x 101
P
真菌
101
P
2.9 x 102
P
5.5 x104
P
P
0
8.6 x 10
P
2.5 x10
P
<10
<10
-
-9-
P
P
=測定せず
P
P
1
P
表2.ソフトエレクトロン処理による殺菌効果
手亡
上級品(cfu/g)
全粒手亡
一般生菌
無処理
170keV 10kGy
170keV 20kGy
180keV 10kGy
皮剥手亡
耐熱性芽胞
1.8 x 102
<10*
<10
<10
P
8.6 x 101
<10
<10
<10
P
P
一般生菌
耐熱性芽胞
4.6 x 101
<10
<10
<10
P
P
1.3 x 101
<10
<10
<10
P
P
*検出限界以下
表3 ソフトエレクトロン処理による殺菌効果
一般生菌
耐熱性芽胞
無処理
170kV 10kGy
4.0 x 101
1.1 x 101
170kV 20kGy
180kV 10kGy
真菌
1.1 x 101
2.6 x 103
<10
7.0 x 100
<10
1.0 x 100
<10
<10
<10
P
P
P
P
P
P
x
x
x
x
x
x
x
x
手亡
耐熱性芽胞
104
103
103
104
103
103
102
102
P
P
P
P
P
P
P
P
P
P
P
P
P
P
P
P
2.9
9.0
2.8
4.9
4.0
1.2
1.1
x
x
x
x
x
x
x
102
10
10
10
10
10
10
P
P
0.5 x 10
表5.ソフトエレクトロン処理による殺菌効果
P
電くず (CFU/g)
真菌
5.4 x 104
1.6 x 10 2
2.5 x 10
1.3 x 103
1.1 x 103
3.5 x 102
5.0 x 10
P
P
<10
金時(cfu/g)
一般生菌
耐熱性芽胞
2.8 x 101
<10
8.6 x 100
<10
P
P
- 10 -
P
P
P
P
金時
無処理
180keV 10kGy
P
P
P
一般生菌
9.6
1.4
2.2
3.4
4.3
9.0
1.7
2.2
P
P
表4.ソフトエレクトロン処理による殺菌効果
無処理
170kV-10KGy
170kV-20KGy
180kV-10KGy
180kV-20KGy
190kV-10KGy
190kV-20KGy
200kV-10KGy
万下 (cfu/g)
手亡
真菌
2.5 x101
<10
P
P
P
P
P
P
P
P
P
表6.ソフトエレクトロン処理による殺菌効果
金時焙煎(cfu/g)
焙煎金時
一般生菌
無処理
180keV 10kGy
表7.
耐熱性芽胞
<10
<10
真菌
<10
<10
<10
<10
殺菌原料を粉末化し、ペーストを作った際の微生物数(cfu/g)
万下 (無処理)
万下 (200keV-10KGy)
生菌数
芽胞菌
真菌数
生菌数
芽胞菌
真菌数
全粒
9.6×10
1.5×10
0.4×10
<10
<10
<10
粉末
4
9.6×10
0.3×10
0.1×10
ペースト(0 day)
0.5×10
0.2×10
<10
ペースト(3 day)
1.8×104
3.3×10
<10
P
P
1.6×10
0.1×10
7.7×10
0.2×10
<10
0.6×10
<10
3.1×104
2.9×102
P
P
3
P
P
全粒
3.3×105
粉末
5
2.0×10
ペースト(0 day)
0.5×10
ペースト(3 day)
3.8×105
P
P
P
電くず (200keV-10KGy)
芽胞菌
真菌数
5.8×10
3.5×103
2
3
P
P
5.8×102
P
P
1.1×10
P
0.1×10
P
生菌数
P
2.0×10
P
P
P
P
電くず (無処理)
生菌数
P
P
P
芽胞菌
真菌数
3.9×103
1.6×10
<10
5
2
P
P
1.0×10
P
2.1×10
P
P
<10
0.2×10
<10
7.1×104
P
P
P
P
6.6×102
P
0.1×10
<10
2.4×10
<10
P
参考:粉末化工程での微生物数の推移の検証
殺菌原料及び並下試料において、ハンマーミルによる粉砕後に微生物汚染が増加する現
象について原因を解明するため、粉砕の段階を追って菌数測定を行った。
万下
サンプル
①全粒
②全粒粉砕
③粗粉砕
④ハンマーミル
生菌数
5.9×10
5
6.4×10 5
2.2×10 5
芽胞菌
5
2.5
3.1×10
4.4×10
電くず
サンプル
①全粒
②全粒粉砕
③粗粉砕
④ハンマーミル
生菌数
芽胞菌
4
6.5×10
3.4×10 2
4
1.2×10 2
6.3×10
1.7×10
7.0×10
5
4
2.4×10
8.2×10
2
3
①通常の測定 ②全粒を滅菌ホモジナイザーで小規模粉砕 ③粗粉砕(エクストルーダー)
④ハンマーミル(分解してアルコール滅菌):粉砕順序は万下→電くず
- 11 -
ウ.各種粉砕装置による粉体化の検討
粉体化処理の検討概要
粉体化処理の検討においては、まず、食品総合研究所で所有している粗粉砕装置(スエ
ヒロ EPM 製連続圧縮粉砕機)
、ハンマーミル、ジェットミルを使用して条件を変えながら、
粉体化処理を実施して、それらの粒度分布等を測定するとともに、食材として利用する際
の特性などについて共同研究機関での試作実施とその評価を元に粉体化処理の最適条件を
検討していった。さらに粉体化処理においても比較的アクの少ない手亡を最初に用いて、
粉体化処理を行い、その際には、色々な規格の豆を用いて粉体化した際の菌数や食材化し
た際の評価検討を元に使用する規格についての条件の検討を行った。
また豆の外皮の有無などについての影響を確認した。
さらに従来からの豆粉食品であるきなこ(焙煎大豆粉)の事例を参照に焙煎処理を前処
理としても実施して粉体化処理を行い、特性評価を得て、焙煎の良否についても検討を加
えた。
最終的には、最適な粉体化と想定される条件においては加工業者への粉体化物の製造委
託を実施して、処理コストなどについての算定も実施した。
以下に粉体化処理での検討フローを示す。なお、すべての処理を各材料において実施は
してはいない。
材料
手亡(各種規格品)、金時
↓
前処理
殺菌処理、剥皮処理、焙煎処理
↓
粉砕処理
粗粉砕(加熱処理の併用の有無)
、ハンマーミル粉砕、ジェットミル粉砕
↓
処理後の検討
粒度分布、微細構造、微生物検査、食材試作評価、ペースト化処理
↓
実用化検討
処理コストの算出、加工業者への委託加工
- 12 -
(ア)手亡を用いた各種粉体化処理の検討
いくつかの粉体化処理を実施して、粉体試料の物理的評価を行ない、粉体化処理の条件
の選定を行った。重要な課題としては、酵素失活工程の省略等の効率的製造方法の検討(粉
体化処理のどこかで加熱処理を加える)、皮の粉砕化の検討
(歩留まりの向上と高機能化)、
微細化・粒子の均一化による機能性の向上という 3 点である。
まず予備粉砕(材料:手亡(皮付き及び皮無し))での試験条件を示す。
使用した粉砕装置の写真と特徴を図5に示す。
粗粉砕及び加熱処理(連続圧縮粉砕機)
処理条件:スクリュー回転 200RPM
加熱時の設定温度
150,200,230℃
微粉砕(ハンマーミル)
処理条件:フィルターサイズ
0.5mm
極微粉砕(ジェットミル)
予備試験結果
微粉砕、極微粉砕の試料 8 点について粒度分布の測定を行った。
図6にハンマーミルの 4 試料、図7にジェットミルの4試料の粒度分布を示す。
結果として皮の有無での顕著な粒度分布の差はなく、微粉砕処理で平均 40 から 50 ミク
ロン程度であり、極微粉砕処理で平均 6 ミクロン前後であった。微粉砕試料(ハンマーミ
ル)では、大きな粒子でのざらつきが認められた。これは、粒度分布で示されている
0.3-0.7mm 程度の粒子に起因するもとと考えられる。図8の左側にこの条件(ハンマーミ
ルとジェットミル)での粒子状態についての走査電子顕微鏡写真を示す。ハンマーミルで
は、大きな粒の点在が認められた。ジェットミルでは、澱粉粒子もほとんどが壊れていた。
これらの粉体化試料は、共同研究実施者へ供試した。その結果、ペースト化処理を実施し
ている十勝圏食品加工技術センターとの打ち合わせで、皮付きでも素材として分離等は生
じていないし、加工試験の方での取り扱いに支障がないことで、皮付きでの粉砕条件を詰
めることにした。また極微粉砕試料では、澱粉粒の破壊に起因すると思われる粘度の上昇
が著しく、微粉砕処理を粉砕条件として選択した。加熱処理による酵素失活などの影響に
おいては、250℃での処理では、焦げ臭があったことから、230℃に設定して、粉末
処理を行なった。トリプシンインヒビター等の失活の期待と品質的に未加熱処理に比べて
品質的に問題がなかったことから、この加熱処理での粉末化を行い、その試料をジェット
ミルで極微細粉末にしたものを試料として提供した。
ハンマーミル試料では、ざらつきがあることで、食品の試作にはジェットミルでの試料
のみを用いたが、処理コストを勘案するとハンマーミルでの試料調整が有利であるため、
ハンマーミルのフィルターサイズを 250 ミクロンに変更して試料を得た。その結果、ほと
んどざらつきがなく、この試料での酵素処理でのペースト化、そのままでの食材化が可能
と考えられた。図9にフィルターサイズを変更した後の粉体試料の粒度分布を示す。先に
ざらつきの要因となった 100 ミクロン以上の粒子はほぼなくなったことから、このハンマ
- 13 -
ーミル試料で食材調整が、食感的に可能と考えられる。しかし、フィルターサイズを細か
くすることで、処理能力が低下したことと、フィルターを通らない大きな粒子が発生した
ことで収率が10%程度低下することが明らかになった。
また図8の左側にこの条件での電子顕微鏡写真を示す。なお、ここまでの使用した手亡は
提供された規格外品での粉末化試料を調整したが、特に「万下」原料は残存微生物量も多
く、ペースト化した際や粉体試料を食材に使用する際に色が悪いため、実際の利用では、
規格品か、規格外品であっても粒の色や張り等の形質が良質なものを使用することが適切
であると判断した。
予備試験でのまとめ
加熱処理を併用したスクリュー粉砕機による粗粉砕処理とフィルターサイズを調整した
ハンマーミルによる粉砕処理で、皮も含めた粉末試料の調整が可能であった。
これらを用いて、粉末試料としての食材材料としての試料や酵素処理でのペースト化食
材材料を提供することが可能である。
しかし、現時点でのハンマーミルでの処理量は、小型ハンマーミルであり、1 時間当た
り 5kg程度であり、また粉砕時の吸湿による目詰まりや粉砕されない硬い大きな粒子の
発生による歩留まり低下の問題が発生した。今後は、想定される処理量に応じたハンマー
ミル等の粉砕装置の選択と、最適処理条件の検討を必要である。また粗粉砕に用いた加熱
スクリュー粉砕機での微生物の混入が認められたため、これらの防止策もあわせて検討す
る必要がある。
(イ)金時を用いた各種粉末化処理
(ア)での結果をもとに、金時において粉体化処理を実施した。
原料は、平成16年度収穫の北海道産金時でみがき処理をしたものを用いた。
処理条件は以下のとおりである。
粗粉砕及び加熱処理(連続圧縮粉砕機)
処理条件:スクリュー回転 200RPM、400RPM
加熱時の設定温度
230℃
微粉砕(ハンマーミル)
処理条件:フィルターサイズ
250 ミクロン)
なお、焙煎条件は、きなこ製造時と同様とした。
(1ロット:60kg、焙煎温度:152℃、焙煎時間:19 分 42 秒)
試験結果
未焙煎
粉体化処理は手亡と同様に実施した。今回は、粗粉砕処理でのスクリュー回転数による
効果とそれぞれの粉体化処理での電力量を算出して、処理コストも併せて求めた。
粗粉砕処理では、処理量
88kg/時であり、粉砕機の消費電力は 2.8kW(200 回時)、
3.2kW(400 回転時)となった。その結果、処理コスト 1kg あたり
0.9~1 円(200℃に加熱
しているヒーターを含む)となった。微粉砕(ハンマーミル)では、処理量
- 14 -
3.3kg/時
粉
砕機の消費電力
1.1kW であり、処理コストは 1kg あたり
得られた粉体試料の粒度分布は、粒度分布
6.6 円となった。
粉砕回転数に関わらず、ほぼ一定で平均粒
径は 63 ミクロンであった。図10に粗粉砕機のスクリュー回転 200rpm の際の粒度分布を
示す。
焙煎
粉体化処理においては、
焙煎処理においては、
粗粉砕時の粉砕機の消費電力は、
2.2kW(200
回時)、2.7kW(400 回転時)となり、未焙煎試料に比べ低くなったため、処理コスト 1kg あ
たり 0.53 円~0.65 円は若干低下した。微粉砕(ハンマーミル)での処理コストは未焙煎試
料と同様で、処理コスト 1kg あたり 6.6 円であった。
得られた粉体試料の粒度分布は、粉砕回転数に関わらず、ほぼ一定で平均粒径は 14 ミク
ロンとなった。 図11,12に粗粉砕機の回転数 200rpm、400rpm の際の粒度分布を示す。
考察
焙煎材料においては、粉砕処理における消費電力量の低下、さらにハンマーミルの最終
粉砕処理後の粒度分布測定においては、非常に細かく粉砕処理できることが確認された。
特に、手亡も含めて、粒度分布で認められた 2 成分ピークでの大きな粒子画分が消失して
おり、焙煎処理によって、組織が硬化し、一部は脆くなったことで粉砕処理が容易になり、
かつ微粒子化したものと考えられる。さらに焙煎処理しているために微粒子化しても澱粉
粒の崩壊による加水時の粘度上昇などの現象も生じないと考えられ、粉体処理としては使
用しやすい形態のものが製造可能であると考えられた。しかし、焙煎臭や焙煎にかかるコ
ストなどから、食材として利用する食品の設計などにおいて十分な考慮が必要であると考
えられる。
- 15 -
-16-
図5
*現在は、比較的処理量の多い
装置もあり、乾燥した素材での
粉砕は比較的容易。難としては、
口径サイズ以下の粒子について
は比較的広い粒径分布を持つ。
処理量は、現状(250ミクロン
フィルター)で5kg/時間程度。
ハンマーミル
粉砕機構: 高速の回転刃で、
周辺部に素材を叩きつけて、粉
砕する。下方のスクリーンの口
径により、口径サイズ以下の粉
体物が得られる。
使用した粉砕機装置とその特徴
粉砕機構: 異方向回転の2本
のスクリューにおいて、豆を粗
粉砕する。粉砕は、スクリュー
同士での切断、割断とニーデイ
ングデスク同士での圧縮、せん
断での粉砕化を行なう。回転数
は、500rpmまでで、バレルの
温度調節が可能で、豆類の短時
間加熱処理に水分の低下、酵素
失活などの作用も期待できる。
処理量としては、現状では、
100kg/時間程度である。
連続圧縮粉砕機
ジェットミル
粉砕機構: ある程度の微細粒
子(20-30メッシュ以下)を素
材としてしようし、サイクロン
中の高速空気の流れの中で、粉
体同士の衝突により粒子を細か
くする。その後の粉砕物回収の
条件により、粒径サイズは比較
的絞った粉砕物が得られる。
現状として、乾燥式の粉砕処理
装置としては、もっともサイズ
的に細かく出来る。数ミクロン
レベルまで。処理量は、現状で
10kg/時間程度。
コピーのソナー作成用に使われ
るなど処理量的にも多くできる
が、処理単価は高い。
皮付き・
熱処理あり
皮なし・
熱処理あり
ハンマーミル(500ミクロンフィルター時)の処理後の粒度分布
皮なし・
熱処理なし
図6
皮付き・
熱処理なし
-17-
皮付き・
熱処理あり
皮なし・
熱処理あり
ジェットミルの処理後の粒度分布
皮なし・
熱処理なし
図7
皮付き・
熱処理なし
-18-
-19-
ジェットミル 皮付き
皮付き ハンマーミル(500ミクロン)
図8 処理物の走査電子顕微鏡写真
皮付き ハンマーミル(250ミクロン)
-20-
図9
使用豆:手亡 万下、電くず
ハンマーミル(250ミクロンフィルター時)の処理後の粒度分布
図10
図11
図12
金時(未焙煎:粗粉砕機 200rpm)の粉体試料の粒度分布
金時(焙煎:粗粉砕機 200rpm)の粉体試料の粒度分布
金時(焙煎:粗粉砕機 400rpm)の粉体試料の粒度分布
- 21 -
(ウ)実用化を想定した粉体化処理
平成17 年度収穫の北海道産金時でみがき処理をしたものを用いた。
前年度までと同様に、粗粉砕処理(スエヒロ EPM 製連続圧縮粉砕機:特注)を用い
て、処理条件については、バレル温度 230℃、スクリュー回転 200rpm、処理速度
85kg
/時とした。得られた粗粉砕物はハンマーミルにおいて 250 ミクロンスクリーンを用い
て微粉砕物を得た。今回は、従来のハンマーミルより大型のハンマーミル(吉田製作所
製 1018-S3型)を使用した(図13)
。このハンマーミルは処理量が時間あたり 50kg
と今まで使用していたハンマーミル(レッチェ社製クロスビータミル SK1)に比べ、処
理量が 10 倍近くあり、また粉砕部分の構造も若干異なるので、同様なスクリーンを設
置した場合も、粉砕物の粒度分布が異なることも予想されるため、粉砕機の違いによる
特性把握と大型機でより実用的な状況に近い条件でのコスト試算を行うために使用した。
処理条件としては、処理速度
30kg/時、スクリーンは 250 ミクロンである。
試験結果
微粉砕処理した金時粉末は、粒度分布を測定し、また処理コストを算定したところ、
図14のような粒度分布をとり、平均粒径はメデイアン径で 25 ミクロンと、昨年度ま
での小型ハンマーミルで得られた平均粒径よりも小さくなった。この粒度分布及び平均
粒径は、昨年度実施した焙煎金時の値に近く、昨年度は、焙煎したことで、豆の粉砕が
容易となったためと考察したが、今回の大型のハンマーミルにおいては、装置が大型化
して、ミルの外径も大きくなったことで、内部での衝撃力の増加などからより細かくで
きたものと考えられる。
また処理コストは、従来の工程では、ハンマーミルでの処理コストは、6.6円/1kg
であったが、今回では、処理量 30kg、消費電力
2.5kW であり、処理コストは、1.7
円/1kg と大幅に低減した。粗粉砕処理コストも含めて、3 円/1kg であり、装置の大
型化等でその処理コストが大きく低減化できることを示唆したデータとなった。得られ
た粉砕物は、評価及び食品試作のために、共同研究実施機関(当所タンパク質研究室、
女子栄養大学、十勝圏地域食品加工技術センター)及び協力機関(こどもの城、ビーン
スターク・スノー、キユーピー)に供試した。
実際の豆粉末化した雑豆について活用するためには、ある程度の量を安定的に品質を
損なわないで粉末化する加工業者などを利用することが想定される。そこで、農産加工
業者を検索して、こちらでの今までの粉砕処理物の特性に近い加工物の調整を依頼して、
その粒度分布等の評価とそこでの処理コストから実用化のための指針を得た。
粉砕処理は、有機加工食品の認定工場であり、主に健康食品の受託加工を行っている
業者に依頼した。この工場では、殺菌、粉砕、造粒、打錠、充填までの加工を行ってお
り、粉砕装置としても粗粉砕から微粉砕まで各種の装置を有している。また有機 JAS の
認定工場であり、コンタミネーションなどの防止から、材料の微生物管理などの殺菌処
理や粉砕処理についての微生物検査や粒度分布測定など処理物などの評価や品質調整な
どについて信頼性のある工場として依頼した。
- 22 -
業者での粉砕処理は、20kgを依頼して、得られた粉砕物は18kgであり、10%
のロスがあった。このロスについては当方のハンマーミル処理でも以前にも報告してい
るが、スクリーンを通過しない堅い粗粒状物質などが残ることから、この程度のロスは
考慮しなければならないと考えられる。こちらの要望として、以前の粉砕物のデータか
ら60ミクロン程度の平均粒径ということであったが、図14の粒度分布状態で、平均
粒径はメデイアン径で 57 ミクロンとほぼ同様な性状となった。さらに関連して微生物検
査を実施して、一般生菌数で8×102 /1gとみがき処理をしていることもあって、非
P
P
常に少ない微生物菌数であった。
今回の20kg処理については、少量で予備試験なども行ったため、処理コストは、
2500 円/kg と非常に高価となったが、実際の担当者に大量処理でのコストを問い合わせ
たところ、1 トン処理で 450 円/kg、2トン処理で 350 円/kg との回答を得た。
粉体化処理では、小麦粉などの専用機で大量処理するものでは、コストは非常に安価
となるが、現状での検討した粉体化処理では、処理自体のランニングコストは、報告で
述べたようにkg当たり数円であるが、人件費、減価償却、さらに衛生的製造法として
の周辺設備などを含めると比較的高価となっている。
考察
上記のような管理された工程で特性も安定した素材を得るには、外部業者での処理で
は相当なコストが必要であることが明らかになった。
したがって、付加価値の高い食品として販売するか、そうでなければ粉砕装置などを
導入して大量に処理するシステムを業界あるいは業者の方で構築することが必要である
と考える。その場合には、当方の実験では電気代で換算した処理コストはkgあたり3
円から8円程度であったが、装置のコスト、さらに粉体処理では、残存した粉末等での
微生物増殖などが製品の微生物混入などに大きく影響するため、十分な洗浄や衛生管理
などを実施して、また処理要員の確保などを行うことが必要であるので、これらの総合
コストを今後は勘案する必要がある。
注:メディアン径
測定物の粒度分布において、積算 50%粒子径を示す。
粒度分布の図において、折れ線グラフでの相対粒子量の50%の部分の粒子径の値を
指す。
図13
大型ハンマーミル(吉田製作所製 1018-S3型)
処理量
最大 50kg/時
- 23 -
図14
図15
参考図
金時のハンマーミル処理(食総研)後の粒度分布
金時のハンマーミル処理(外部委託)後の粒度分布
昨年度の金時のハンマーミル処理(食総研)後の粒度分布
- 24 -
参考図
参考図
黒豆含有粉体食品(市販品)の粒度分布
青大豆含有粉体食品(市販品)の粒度分布
- 25 -
②酵素処理によるペースト化、粉末化処理
ア.手亡酵素処理粉末のプロテアーゼ・アミラーゼによる酵素分解
上記粉末の粘性を除去するため、酵素処理について検討した。原料は手亡のうち、比較
的低価格なランクの万下(篩いで分けられた粒の小さい豆)と電くず(電子色彩判別装置
で除外されたもの)を試験に用いた。粉砕は上記粉砕法のうち、より低コストに調製でき
ることから、原料は皮付き、加熱有りのハンマーミル処理で行った。粉末を 30%になるよ
うに調製し、初めにアルカラーゼ(2.4L FG,ノボザイムス)、フラバザイム(ノボザイムス)
でタンパクを分解した後、アミラーゼ(ファンガミル, ノボザイムス)で澱粉を分解し、凍結
乾燥後に粉砕した。酵素処理粉末を電子顕微鏡で観察し、非酵素処理の粉末と比較した(図
16)ところ、非酵素処理の粉末では、澱粉粒子が見られたが、酵素処理の粉末では粒子状
のものは存在せず、砕かれた破片が結合したような大きな組織が観察された。このことか
ら、酵素処理によって澱粉粒が破壊され、老化した状態を形成していると考えられる。
イ.金時・手亡粉末製造の前処理および酵素処理条件の確立
原料は十勝産金時および手亡を用いた。粉砕はハンマーミル粉砕の他、より簡便に調製
できる方法として、一晩原料豆を水浸漬し、マスコロイダーで磨砕する方法も用いた。酵
素処理は、上記と同様の条件で行なった。調整した豆粉の粒度分布をエタノールを分散媒
としてレーザー解析・散乱法で測定した結果を表8に示す。非酵素処理の粉末と酵素処理
の粉末で比較すると、ハンマーミル粉では金時が 63.3μm と 42.2μm、手亡が 61.2μm
と 58.7μm、マスコロイダー粉末では金時が 71.5μm と 67.2μm、手亡が 55.4μm と
47.7μm ほどの粒子で、およそ 42~70μm の範囲だった。また酵素処理の粉末の方が若
干小さい傾向が見られたが、これは酵素処理によって粒子が脆くなり、粉砕の衝撃で小さ
い粒子が発生したためと考えられる。また図17は、ハンマーミル粉末を走査型電子顕微
鏡で観察した写真である。金時・手亡の両粉末で、非酵素処理の粉末には餡粒子や澱粉粒
が存在し、酵素処理の粉末はタンパク質や澱粉が分解された組織が観察された。また図1
8はマスコロイダー粉末を走査型電子顕微鏡で観察した写真である。手亡では粒子状のも
のが酵素によって完全に分解されていたが、金時では若干澱粉粒の混在が観察された。こ
れは、マスコロイダーで磨砕されたペースト中の粗い粒子が多少残り、若干酵素が効きに
くい部分が生じてしまったためと考えられる。
これまでの結果、金時および手亡のペースト化・粉末化を検討し、物性的には良好な素
材が得られたが、味覚について若干の苦味が生じていた。これは、試験に用いた酵素(プ
ロテアーゼ)により、苦味を生じるアミノ酸が生成されていると考えられるため、酵素の
種類について再度検討を行った。磨砕した金時豆ペースト 4kg にさらに 2kg の水を加え、
沸騰浴中で品温 80℃以上で 1 時間加熱した。原料の 0.02%のキシラナーゼ(樋口商会)お
よび 6%のアミラーゼ(ファンガミル, ノボザイムス)を加え、55~60℃で 2 時間酵素処理し
た後、品温 80℃以上で 1 時間加温して酵素失活し、凍結乾燥後に粉砕した。
ウ.実用化規模での雑豆素材(酵素処理)の処理方法及びコスト試算
雑豆素材(マスコロイダー使用)の酵素処理におけるマスバランスを図19に、乾燥粉
末およびペースト製造時のコスト試算を表9に示した。また、製造工程における工程図を
別添した。
- 26 -
非酵素処理 万下
酵素処理 電くず
非酵素処理 万下
酵素処理 電くず
図16 酵素処理粉末の電子顕微鏡写真(400 倍)
表8 粉末の粒度分布表
平均粒子径 (μm)
ハンマーミル処理 マスコロイダー処理
金時
手亡
金時
手亡
非酵素処理
63.3
61.2
71.5
55.4
酵素処理
42.2
58.7
67.2
47.7
- 27 -
金時
非酵素処理
酵素処理
手亡
非酵素処理
酵素処理
図17 ハンマーミル粉末電子顕微鏡写真
金時
非酵素処理
酵素処理
手亡
非酵素処理
酵素処理
図18 マスコロイダー粉末電子顕微鏡写真
- 28 -
手亡、金時(1.0kg)
+加水(3.0kg)
浸
漬
(16~18 時間、室温)
マスコロイダー処理
+加水(2.0kg)
加
熱 [6kg]
(80℃、1 時間)
加
+酵素添加(キシラナーゼ:0.2g)
(ファンガミル:6.0ml)
(55~60℃、2 時間)
熱 [6kg]
(80℃、1 時間)
ペースト [全量:6kg]
(固形分:15%)
乾
燥
[全量:0.9kg]
ドラムドライヤー
回収率:90%
図19 雑豆素材(マスコロイダー使用)の酵素処理におけるマスバランスシート
- 29 -
表9 乾燥粉末およびペースト製造時のコスト試算
○乾燥粉末の場合
原料費
豆:200,000 円(1 トン、稼働日 2 日)
キシラナーゼ: 2,400 円(0.2kg)
ファンガミル: 24,000 円(6.0kg)
電気・燃料費
100,022 円(加熱、発酵:41,600 円、乾燥:58,422 円)
人件費
計
Kg 単価
76,000 円(15,200 円×2 日×2 人、15,200 円×1日)
402,422 円(900kg、回収率 90%)
447 円/kg
(設備等償却費、利益は含まず)
○ペーストの場合
原料費
豆:200,000 円(1 トン、稼働日 2 日)
キシラナーゼ: 2,400 円(0.2kg)
ファンガミル: 24,000 円(6.0kg)
電気・燃料費
人件費
計
Kg 単価
41,600 円(加熱、発酵:41,600 円)
91,200 円(15,200 円×2 日×2 人、15,200 円×2 人)
359,200 円(6 トン、固形分 15%)
60 円/kg
(設備等償却費、利益は含まず)
【参考】
原料豆の価格
2 等(円/60kg)
万下(円/60kg)
手亡
18,000(300 円/kg)
15,000(250 円/kg)
金時
22,000(366 円/kg)
12,000(200 円/kg)
酵素の価格
キシラナーゼ
12,000 円/kg
ファンガミル
4,000 円/kg
- 30 -
電くず(円/60kg)
10,000(166 円/kg)
工程
-31-
製品
雑豆
ドラムドライヤー
マスコロイダーー処理
別添資料 酵素処理粉末製造工程図
乾燥粉末
(16~18時間)
水浸漬
(固形分 15 %)
冷凍保存
ペースト製品
(加熱→冷却→加熱)
80℃→55℃→90℃
10~16時間
酵素処理
③新素材の基礎加工適性評価(新素材の難消化性タンパク挙動、消化吸収)
食品中の難消化性のタンパク質は、未消化のまま吸収されることにより、アレルギーを引き起こ
す可能性が高いと考えられている。そこで、本研究では、いんげん豆に含まれるタンパク質の試験
管内消化特性を検討し、さらに、粉砕や酵素処理、ならびに調理加工(ぺースト化、生あん、焙煎
等)にともなってタンパク質の消化特性がどのように変化するか調べた。これまでの研究から、い
んげん豆主要タンパク質成分であるファゼオリンは消化酵素に対する耐性が非常に高いことが知ら
れていた。このファゼオリンの消化耐性は、加熱によって顕著に改善される。一方、本研究の過程
で我々は、分子量 20kDa 付近に消化酵素に耐性をもつタンパク質を見出した。これらのタンパク質
を中心に、その消化特性の挙動を検討した。また、タンパク質の分子内架橋結合(ジスルフィド結
合)が消化酵素に対する耐性に関与することから、いんげん豆タンパク質のジスルフィド結合につ
いても解析を行った。
ア.手亡及びその加工品(酵素処理ペースト、生あん)
様々な条件で粉砕処理を行った手亡粉についてタンパク質の試験管内消化特性を調べた。
本実験では、コスト面に配慮して、万下や電くずの安価な原料を使った豆粉についても消
化特性を検討した。実験には以下の試料を用いた。
手亡(通常規格)
皮付き/皮なし
熱処理なし/150℃加熱/230℃加熱
ジェットミルによる微粒化処理 有り/無し
万下・電くず
皮付き 230℃加熱
酵素処理ペースト(並下・規格外)
生あん凍結乾燥品
試験管内消化試験はペプシンアッセイ法(J. D. Astwood et al Nature Biotechnology 14.,
1269-1273 ,1996)を用いた。また、タンパク質分子に含まれるジスルフィド架橋結合を対
角線電気泳動法で調べた。
手亡粉タンパク質の消化性について、皮の有無、粉砕時の加熱処理、微粒化処理によっ
て消化性に顕著な差異はなかった。ハンマーミル粉砕時の加熱処理により若干低分子画分
(トリプシンインヒビター等)が分解されやすくなる傾向が認められた。生の粉では、主
要タンパク質であるファゼオリンが消化耐性を示したが、ファゼオリン(Pha)の消化性は加
水加熱ペーストでは顕著に改善された(図20)。生/加水加熱ペーストいずれにおいても
難消化性タンパク質(LgB) が検出された。手亡からタンパク質を抽出し、対角線電気泳動
法により、分子内及び分子間ジスルフィド結合の解析を行ったところ、20kDa 難消化性タ
ンパク質は、分子間ジスルフィド結合をもつタンパク質サブユニットであることが明らか
になった(図21)。レクチンは、血液凝集性があり、いんげん豆を加熱が不十分な状態で
摂取すると高い毒性を示すことが知られている。図20に示したように、生の手亡粉では
レクチン(Lec)はペプシンに対して消化抵抗性を示したが、加熱ペースト化によって速やか
に消化されるようになった。
酵素処理ペーストおよび生あんのタンパク質組成と消化性について検討したところ、酵
素処理ペーストでは、豆のタンパク質がほぼ完全に消失していたが、酵素に由来するもの
- 32 -
と見られるタンパク質が検出された(図22)。生あんでは、溶出するタンパク質が著しく
減少し、上に述べた 20kDa 難消化性タンパク質のバンドも検出されなくなっていた(図2
3)。
イ.金時及びその加工品(豆ペースト、酵素処理ペースト、焙煎粉)の消化特性
金時についても、上記手亡と同様にタンパク質の試験管内消化特性を調べた。試料には、
酵素失活処理後、乾燥・脱皮した脱皮豆を高速遠心粉砕機で粉砕した豆粉を使用した。加
工品の消化特性については、豆ペースト、酵素処理ペースト、焙煎粉について検討した。
タンパク質の試験管内消化試験と、ジスルフィド結合の解析はア.と同様に行った。また、
ジスルフィド結合の反応性をモノバイメイン蛍光標識法で解析した。
金時粉にも手亡と同様に 20kDa 難消化性タンパク質が検出された(図24)。タンパク質
に占める 20kDa 難消化性タンパク質の比率は手亡より高かった。ペースト化処理による難
消化性タンパク質の挙動を調べるため、金時の脱皮豆と豆粉からペーストを調製したとこ
ろ、あん粒子を保持した脱皮豆ペーストで、20kDa 難消化性タンパク質が著しく減少して
いた(図25,26)。
焙煎豆粉のタンパク質組成としてはファゼオリン、レクチン、10~16kDa 低分子タンパ
ク質が主なタンパク質成分であった(図27)。今回用いた焙煎処理豆粉では 20kDa 難消化
性タンパク質は検出されなかった(レーン 9,11)。焙煎に伴う加熱により、ファゼオリン
が消化されやすくなり、15 秒のペプシン消化で大部分が消化された(レーン 2)
。16kDa の
タンパク質はトリプシンインヒビターと推定されるが、ペプシン消化 60 分まで、徐々に消
化されていった。
酵素処理ペーストの消化性を検討したところ、ファゼオリンは酵素処理によってほぼ消
化されていたが、酵素に由来するものと推察されるバンドが検出された(図28)。
図20
手亡粉(左)および加水加熱ペースト(右)のペプシンアッセイ
M;分子量マーカー 1-8;消化
0 分,0.25 分,1 分,2 分,4 分,8 分,15 分,60 分
C;コントロール,P;ペプシン
- 33 -
M 1 2 3
図21 手亡豆粉の対角線電気泳動
図22
4 5 6 7
8 9 10
酵素処理ペーストのペプシンアッセイ
M;分子量マーカー (150, 100, 75, 50, 37, 25,
15, 10 kd)
1-8;消化 0 分,15 秒,1 分,2 分,
4 分,8 分,15 分, 60 分
9;コントロール 10;
ペプシン
図23
生あんタンパク質の
電気泳動パターン(左 A)と顕
微鏡写真(右)
図24
金時豆粉のペプシンアッセイ
M;分子量マーカー (150, 100,
75, 50, 37, 25, 15, 10 kd)
1-8;消化 0 分,15 秒,1 分,2
分,4 分,8 分,15 分, 60 分
9;
コントロール 10;ペプシン
図25
大正金時豆および豆粉ペーストの SDS-PAGE
M, 分子量マーカー
1, 豆ペースト 2,豆ペースト(アミラ
ーゼ処理)3, 豆粉ペースト 4,豆粉ペースト(アミラーゼ処
理)5,豆粉
←, 20kd 難消化性タンパク質
- 34 -
図26
豆ペーストの顕微鏡写真
M
1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
11
←ファゼオリン
←レクチン
←20kDa
←16kDa
図27焙煎大正金時豆粉タンパク質のペプシン消化耐性
M;分子量マーカー 1-8;消化
0 分,0.25 分,1 分,2 分,4 分,8 分,15 分,60 分
9, 11;コントロール 10;ペプシン
M
1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
11
←ファゼオリン
]**
図28
酵素処理ペーストの消化性
M;分子量マーカー 1-8;消化
0 分,0.25 分,1 分,2 分,4 分,8 分,15 分,60 分 9, 11;
コントロール 10;ペプシン
学会発表等
1.大正金時豆粉におけるタンパク質の試験管内消化性について,門間美千子,関友子,五十部誠
一郎,日本食品科学工学会第 50 回大会講演要旨集 p.91(2003)
2.いんげん豆タンパク質の試験管内消化性試験,門間美千子,関友子,五十部誠一郎,第 24 回
種子生理生化学研究会 講演要旨集 p.13-14(2003)
3.いんげん豆の難消化性 20kDa タンパク質について,門間美千子・関友子・五十部誠
一郎,日本農芸化学 2004 年度大会講演要旨集 p.64(2004)
- 35 -
④粉体化及びペースト化処理の新素材導入の可能性
①②に新形態素材として粉体化及び酵素処理によるペースト化などの検討について述べ
てきた。また得られた素材の基礎加工適性についても記載してきた。緒言にも述べたよう
に豆類を粉砕し、粉状にすることによる一番のメリットというのは、様々な加工食品への
利用用途が広がるということである。
まず、豆の使用にあたっての選択要件であるが、粉体化することで、金時豆などについ
ては煮豆などではあく抜きを要しているため、そのまま粉体化処理では粉体素材の苦みな
どが懸念されたが、平成16~17 年での検討でも皮付きでの素材化で食品化についてのあ
る程度の嗜好性の確保が確認された。前述したように皮を含めることで豆自体の利用率の
向上が図れ、さらに食物繊維やアントシアンなどの機能性成分の多くを含む皮の添加で栄
養的にも優れた素材が提供できる可能性を有している。
また使用する豆の規格等については、豆自体としての利用について品質的に優れている
大粒のものは価格も高いことから、出来れば小粒のものや一部品質の低下した豆を用いる
ことでコスト低減を図るとともに、生産された豆の有効利用の観点からも、白手亡におい
ていくつかの規格のものを検討した。その場合小粒のものは十分食材としても利用可能で
あったが、品質の劣化したものは、微生物汚染もひどく、また粉体処理物を用いた場合の
色の問題(明度が下がる、黒っぽい)から、あまり用いることは適当でないと判断された。
処理については、粗粉砕時の加熱処理では完全な酵素失活は認められなかったし、また
加熱温度が高いと臭いの面で嗜好性が低下した(焦げ臭)が、200℃程度の粉砕での加熱
処理ではその後の微粉体化処理も良好であり、食材としても十分利用できた。
もっとも重要な粉体化での目標とする粒度分布であるが、当初のハンマーミル処理では
500 ミクロンスクリーンでは得られた粉体物の一部に、舌ざわりなどで違和感を認めたが、
250 ミクロンスクリーンでの粉体化物(平均粒度 約 50-60 ミクロン)では、舌ざわり等
で違和感は認められなかった。ジェットミル処理で得られた粉体物は平均粒径が 10 ミクロ
ン前後と細かいが、豆の澱粉粒が破壊され、食材として利用する際に粘りが多く出てきた。
これらについては、スープなどの用途では粘りを出すなどでは利用可能であるが、粉体処
理としては大量処理が困難で、処理コストも高くなるジェットミル処理では実用的な粉体
化処理はなじまないと判断された。
豆類はデンプン、タンパク質を主体とする成分から構成されている。これらの成分は加
工という工程における加熱等を含めた物理的な要素が加わることにより、様々な変化をし、
最終食品としての美味しさあるいは形態を崩してしまうことがある。そこで、幅広い加工
食品への応用が可能な粉体を開発すべく、物理的に考慮した素材について検討を行ったも
のが酵素処理粉末である。通常、インゲン系の豆類は、加熱によりタンパク質及びデンプ
ンは凝集するという性質を持っている。これにより、様々な素材と混合した場合、粘りあ
るいは凝固という物理的な変化が生じ、最終食品の本来の物性あるいは味に非常に大きな
影響をおよぼすと考えられる。そこで、豆類に含まれるタンパク質及びデンプンを酵素に
より部分分解し、加工工程における加熱等による要素が加わった場合の豆本来の物理的変
成を防止することにより、様々な素材と混合することによっても、その他の素材に影響を
およぼさず、美味しい最終食品ができる素材としてさらに加工食品への応用用途が広がる
- 36 -
可能性が考えられる。
以上、述べたような使用する豆の選択、前処理、さらに豆本来の物性を生かした粉末(ハ
ンマーミル処理粉末)及び豆本来の物性を破壊した酵素処理粉末の2つの素材を使い分け
ることにより、加工食品への応用用途は格段に広がるものと考えられる。
これらの新形態素材については、2 章でその特性を、3 章で食材として使用した際の食品
試作とその評価について述べて、それぞれの新形態素材の適した利用法について提案して
いく。
- 37 -
2)豆新素材の特性解明のとりまとめ
①豆新素材毎の特性(物性、化学性、調理特性)
第 1 章で調整した雑豆のペーストや粉末について、様々な食品への応用を提案する目
的から、その物性、化学性、調理特性について検討した。
ア.手亡粉末の粘度比較
上記の粉末は、そのままで用いる以外に、小麦粉などの他の素材に配合して用いるとい
う利用法も考えられる。それにより、発育段階および介護段階に応じた様々なメニューに
応用することができる。しかしそのためには、これらの粉末の物性を把握することが必要
である。そこで、皮付き・皮無し手亡を用いたハンマーミル処理およびジェットミル処理
粉末の粘度をブラベンダービスコグラフで測定した(図29、表10)。その結果、どの粉
末も測定開始から 14~17 分で糊化し始め、その後 320~500BU まで粘度が上昇した。すな
わち、これらの豆粉を小麦粉などに混ぜて用いた場合には、製品作成時の生地の延びや、
澱粉の老化によって製品の品質保持に影響を与えることが予想されることから、この粘性
を除去した粉末についても検討を加える必要性が考えられた。
イ.酵素処理手亡粉末の粘度比較
皮付き手亡の万下・電くずを用いた、非酵素処理と酵素処理の粉末の粘度を比較した(図
30、表11)
。非酵素処理の粉末は、昇温開始から 16 分後に糊化し始め、最高粘度は 550BU
以上となった。一方酵素処理の粉末では測定中に粘度は上がらず、酵素処理によって粉末
の糊化力が除去されたことが示された。
ウ.酵素処理手亡粉末を用いた試作
非酵素処理および酵素処理の手亡粉末を料理研究家および2社の企業に提供し、菓子類
及びパン類等への加工原料として使用していただき、平行して当センターでも試作を行な
った。試作品の写真を図31に、配合表を表12に示した。相対的に、酵素処理の粉末の
方が他の素材の物性に影響を与えにくいことから、非酵素処理の粉末よりも多く配合する
ことができる。これらの結果から、各粉末の物性を生かした使い方や配合の検討が必要と
思われた。
(1)イーストパンおよびクッキー(料理研究家 小野冷子先生試作品、図31-a)
非酵素処理および酵素処理の粉末を小麦粉に混ぜて使用した場合の影響を比較するた
め、イーストパンおよびクッキーを試作した。このうち、酵素処理の粉末を用いた場合の
配合表を表6に示した。イーストパンの試作では、非酵素処理の粉末を用いた場合、冷め
た時の老化が激しく、パサついてしまうことから、酵素処理の粉末が適していると思われ
た。クッキーでは、酵素処理の粉末を用いた方が、非酵素処理の粉末よりも固めの仕上が
りとなった。
(2)ケーキ生地(株式会社 柳月試作品、図31-b)
非酵素処理の粉末のみを用いたショートケーキ生地では、スポンジ自体は独特の豆の臭
みが気になるが、飾りの生クリームでマスキングされることがわかった。また、ロールケ
ーキでは小麦粉と非酵素処理の粉末を1:1の割合で用いた結果、色合いは良好であった
が、豆の風味がせず、スポンジの生地の立ち上がりが若干悪かった。
(3)蒸しパン(食品加工技術センター試作品、図31‐c)
蒸しパンの試作では、イーストパンと同様に非酵素処理の粉末を用いた場合の老化が激
- 38 -
しいことから、酵素処理の粉末が適していた。小麦粉と酵素処理の粉末を1:1で混合し
て用いたが、若干の苦味を生じていたことから、ヨーグルトや黒糖、ココアでのマスキン
グが有効と考えられる。
エ.酵素処理手亡および金時粉末の粘性試験
まず、金時粉末の粘性を測定した(図32、表13)。その結果、非酵素処理の粉末は 11
~13 分、温度も 60℃台で糊化し始め、最高粘度はハンマーミル粉末で 840BU と高い数値と
なり、
マスコロイダー粉末は 590BU であった。
一方、
酵素処理の粉末では昇温から 17 分後、
約 80℃で糊化し始めたが、最高粘度はそれぞれ 45、80BU だった。このことから、非酵素
処理の粉末ではハンマーミル粉末よりもマスコロイダー粉末の方が粘性が低いこと、マス
コロイダーの酵素処理の粉末は若干の澱粉粒が残っているが、粘性は殆ど失われているこ
とが判った。
次に手亡粉末の粘性を金時と同様に測定した(図33、表14)。測定開始から 16~17
分後、80℃前後で糊化が始まり、非酵素処理の粉末では最高粘度はハンマーミル粉末で
390BU、マスコロイダー粉末で 490BU、酵素処理の粉末では最高粘度はそれぞれ 40、85BU
であった。これらの結果から、非酵素処理の粉末を小麦粉などに混合する場合、生地の延
びに影響を与えるため、配合量が制限されてしまう可能性が考えられる。一方酵素処理の
粉末では粘性が除去されているため、配合量を多くできると予想される。しかし非酵素処
理の粉末、特に金時粉末は粘性が非常に高く、その粘性を利用した食品への応用も示唆さ
れた。
オ.焙煎豆粉の調整と物性測定
これまで、豆粉の調整は生豆で行ってきた。しかし生の乾燥豆ではえぐみが残り、特に
金時の場合は若干の渋味も混在するため、その後の調理加工でマスキングするなどの工夫
が必要であった。この豆のえぐみを軽減させるとともに風味を改善するため、粉砕前の金
時に焙煎処理を加えた粉末について調整した。この場合、焙煎時に加熱がかけられること
から、調整した粉末の物性が未焙煎の粉末と異なる可能性が考えられたため、これらの粉
末について粘性を測定した(図34、表15)。その結果、回転数の違いで差は見られず、
両粉末とも昇温開始から 14.5~15 分後、温度 72℃台で糊化し始め、25 分程度で粘度が
300BU に達した後はゆっくりと粘度が増加し、測定中の最高粘度は 500 以上であった。未
焙煎の豆をハンマーミル粉砕した場合と比較すると、糊化開始までの時間が 3~4 分長く、
糊化開始温度は 10℃高くなっており、
昇温開始から 60 分後の粘度では半分程度であった。
このことから、金時を焙煎することにより粉末の粘性はある程度失われ、未焙煎の粉末と
は異なる物性を示すことが示唆された。
カ.焙煎金時粉末を用いた試作
上記で調製した焙煎金時豆粉末について試作を行い、試作品の写真を図35に、配合表
を表16に示した。焙煎により、粉末はきな粉のような良好な香ばしさがあった。但し粉
末自体が茶色を帯びていることから、使用時は色を生かすかマスキングする必要があると
考えられる。サブレおよびクリームペーストの試作では、小麦粉と豆粉の配合を1:1に
してサブレを試作した結果、作業性に問題は無かったが、若干焦げ臭とパサ付き感があっ
た。そこで練りゴマといりゴマを配合したところ、焦げ臭やパサ付きがともにマスキング
されていた。ゴマ風味との相性が良かったことから、クリームペーストを試作した結果、
- 39 -
違和感のない風味が得られ、豆の風味も良かった。
キ.キシラナーゼ処理粉末の粘性試験
酵素処理による苦味を除去するため、酵素の種類について再度検討を行った。その結
果、豆の細胞壁を破壊するキシラナーゼを使用することにより、これまでの処理と同等の
粘度を有する素材を得ることが可能となった。この新しい製法により豆粉末の試作を行う
と同時に粘性についての比較試験を行った。その結果、前回の試作品とほぼ同様に粘性が
除去された豆素材が完成した(図36、表17)
。
ク.補助食材としての加工適性試験
豆粉末を2社の企業に提供し、菓子類及びパン類等への加工原料として使用していただ
き、その試作試験を行った。試作品の写真を図37に、配合表を表18に示した。
(1)スポンジケーキおよびシューケース(株式会社 柳月試作品、図37-a)
スポンジケーキは、
作業性はまあまあであったが、
小麦粉のみよりも吸水性が高かった。
酵素処理の粉末は焦げやすく、また焼き上がりの後に生地が縮んでしまう傾向にあったこ
とから、非酵素処理の粉末の方が適していると思われる。食味についてはどちらも豆の風
味が良好であった。シューケースは、色が黒ずんでおり豆の風味があまりしなかったが、
生地はしっかりしていて崩れにくく、モナカと中間のような食感であった。非酵素処理・
酵素処理の粉末の両方とも、性質さえ掴めば菓子に用いるのは可能である。
(2)食パンおよびコッペパン(有限会社 林製パン試作品、図37-b)
金時粉 10%の添加では、非酵素処理の粉末、酵素処理の粉末のどちらとも作業性は良か
った。風味は非酵素処理の粉末では苦味(エグみ)が強く、老化しやすかったが、酵素処
理の粉末は老化はみられなかった。しかし 10%の添加では、あまり豆の風味がしなかった
ことから、添加量を 15%、20%に増加して試作した。20%添加ではベトついて扱いにくく、
ドライフードを添加しても焼成時の生地の立ち上がりが悪かったが、15%の添加では立ち
上がりがよい上に、豆の風味がしていた。以上の結果より、パン生地に混合するこなとし
ては、食味の面から非酵素処理の粉末よりも酵素処理の粉末が適していると思われる。添
加量は試作で用いた配合では 15%が適当であった。さらに酵素処理の粉末を使用した場合、
通常(小麦粉のみを使用した場合)よりも加水量が多くなることから、出来上がりがしっ
とりとした食感になるメリットも示唆された。
② 豆新素材毎の栄養成分
ア.各粉末の成分分析
手亡・金時・大豆(きな粉)
・米粉・小麦粉について成分分析を行った。水分は 135℃の
常圧乾燥法、タンパク質はケルダール法、脂質は酸分解法、灰分は 550℃灰化法、食物繊
維はプロスキー変法、リンはバナドモリブデン酸吸光法、その他のミネラルは原子吸光法
で分析した。表19は手亡および金時の粉末成分について、大豆(きな粉)と米粉、小麦
粉と比較したものである。雑豆中のタンパク質は手亡で 21.9%、金時では 24.3%含まれて
おり、また脂質はきな粉の 10%程度であった。炭水化物は 70%前後含まれており、このう
ち水溶性および不溶性食物繊維はきな粉・米粉・小麦粉と比較しても含有率が高く、総食
物繊維としては 20%以上含まれていた。カリウム、カルシウム、マグネシウム、リンなど
のミネラルは、米粉・小麦粉と比較して非常に多く、きな粉と比較しても大差は無かった。
これらの結果から、手亡や金時は低脂肪でタンパク質および炭水化物含量が高く、中でも
- 40 -
食物繊維が豊富でミネラルもバランスよく含んでいる良質の食材であることが伺える。
イ.手亡粉末の成分における粉砕方法別の比較
粉砕方法別に手亡粉末の成分を分析し、比較した結果を表20に示した。全ての条件で、
一般成分・ミネラルに大差は無く、各粉末化処理によるこれらの成分に影響はないと考え
られた。食物繊維においては、ジェットミル処理よりもハンマーミル処理した粉末の不溶
性食物繊維が高い値を示した。これは、豆の餡粒子が食物繊維様の働きを示すことから、
ハンマーミル処理では餡粒子になり得る組織が粉砕されずに残っていることを示唆してい
る。
ウ.酵素(キシラナーゼ)処理による栄養成分の変動
金時豆粉末の非酵素処理・酵素処理の粉末におけるポリフェノール含量(表21-a)
及び食物繊維含量(表21-b)について比較を行った。その結果、非酵素処理、酵素
処理にかかわらず両者の含量については大きな違いはみられなかった。
- 41 -
ジェットミル処理
ハンマーミル処理
1000
1000
皮付き
皮付き
皮無し
800
皮無し
600
BU
BU
800
400
600
400
200
200
0
0
20
40
60
80
100
0
120
0
20
40
60
80
100
120
時間(分)
時間(分)
図29 粉末の粘性試験
表10 ブラベンダービスコグラフ測定結果
700cm・g = 1000BU
糊化開始 糊化開始 最高粘度
時間(分) 温度(℃)
(BU)
ハンマーミル処理
皮付き
17.0
79.6
320
皮無し
17.0
79.5
500
ジェットミル処理
皮付き
14.0
皮無し
16.0
万下
70.8
76.8
409
460≦
電くず
1000
1000
非酵素処理
非酵素処理
酵素処理
800
800
酵素処理
600
BU
BU
600
400
400
200
200
0
0
0
20
40
60
80
100
120
0
20
40
60
時間(分)
時間(分)
図30 手亡酵素処理粉末の粘性試験
表11 ブラベンダービスコグラフ測定結果
ブラベンダービスコグラム分析結果 700cm・g=1000BU
糊化開始 糊化開始
最高粘度
時間(分)
温度(℃)
(BU)
万下
非酵素処理
酵素処理
電くず
非酵素処理
酵素処理
16
―
76.3
―
568
―
16
―
76.4
―
555
―
―:測定不可
- 42 -
80
100
120
イーストパン
クッキー
図31- a. 手亡粉末試作品(料理研究家 小野冷子先生試作品)
ショートケーキ
ロールケーキ
図31 b. 手亡粉末試作品(株式会社柳月試作品)
プレーン蒸しパン
ヨーグルト蒸しパン
黒糖蒸しパン
ココア蒸しパン
図31- c. 手亡粉末試作品(食品加工技術センター試作品)
- 43 -
表12 手亡粉末試作品配合表
イーストパン
クッキー
原材料名
バター
砂糖
卵黄
ヨーグルト
薄力粉
酵素処理
粉末
BP*
塩
配合量 配合率
(g)
(%)
50.0
35.0
10.0
15.0
60.0
24.1
16.9
4.8
7.2
28.9
30.0
14.4
7.5
0.2
3.6
0.1
原材料名
砂糖
塩
卵黄
ヨーグルト
牛乳
酵素処理
粉末
BP*
強力粉
イースト
*ベーキングパウダー
配合量 配合率
(%)
(g)
15.0
2.0
10.0
80.0
50.0
4.8
0.6
3.2
25.5
15.9
30.0
9.6
1.5
120.0
5.0
0.5
38.3
1.6
*ベーキングパウダー
原材料名
手亡粉
小麦粉
全卵
砂糖
蜂蜜
バター
牛乳
ケーキ生地
配合量(g) 配合率(%)
45
10.3
45
10.3
200
46.0
90
20.7
10
2.3
25
5.7
20
4.6
ヨーグルト蒸しパン
プレーン蒸しパン
原材料名
卵
酵素処理粉末
小麦粉
砂糖
生クリーム
BP
塩
配合量 配合率
(g)
(%)
50
25
25
20
15
4
0.2
35.9
18.0
18.0
14.4
10.8
2.9
0.1
原材料名
卵
酵素処理粉末
小麦粉
砂糖
ヨーグルト
サラダ油
BP
ホワイトキュラソー
塩
黒糖蒸しパン
原材料名
卵
酵素処理粉末
小麦粉
砂糖+黒糖
生クリーム
BP
塩
50
25
25
20
10
5
4
3
0.2
35.2
17.6
17.6
14.1
7.0
3.5
2.8
2.1
0.1
ココア蒸しパン
配合量 配合率
(g)
(%)
50
25
25
20
15
4
0.2
配合量 配合率
(g)
(%)
35.9
18.0
18.0
14.4
10.8
2.9
0.1
原材料名
卵
酵素処理粉末
小麦粉
砂糖
ヨーグルト
ココア
サラダ油
BP
塩
- 44 -
配合量 配合率
(g)
(%)
50
25
20
20
10
5
5
4
0.2
35.9
18.0
14.4
14.4
7.2
3.6
3.6
2.9
0.1
マスコロイダー
ハンマーミル
900
900
600
BU
BU
酵素処理
300
300
0
0
20
40
時間(分)
60
酵素処理
600
非酵素処理
0
非酵素処理
0
80
20
40
時間(分)
60
80
60
80
図32 金時粉末のブラベンダービスコグラフ
表13 金時粉末の糊化性
糊化開始 糊化開始 最高粘度
時間(分) 温度(℃)
(BU)
ハンマーミル
非酵素処理
酵素処理
マスコロイダー
非酵素処理
酵素処理
11.0
17.0
61.8
79.5
840
45
13.0
17.0
67.2
79.5
590
80
マスコロイダー
ハンマーミル
900
900
非酵素処理
酵素処理
酵素処理
600
BU
BU
600
非酵素処理
300
300
0
0
20
40
時間(分)
60
80
0
0
20
40
時間(分)
図33 手亡粉末のブラベンダービスコグラフ
表14 手亡粉末の糊化性
糊化開始 糊化開始 最高粘度
時間(分) 温度(℃)
(BU)
ハンマーミル
非酵素処理
酵素処理
マスコロイダー
非酵素処理
酵素処理
16.5
17.0
78.0
79.0
390
40
16.3
17.3
77.4
80.0
490
85
- 45 -
900
200rpm
400rpm
BU
600
300
0
0
20
40
60
時間(分)
80
100
図34 焙煎金時粉末のブラベンダービスコグラフ
表15 焙煎金時粉末の糊化性
糊化開始
時間(分)
粉砕回転数
200rpm
400rpm
サブレ(プレーン)
糊化開始 最高粘度
温度(℃)
(BU)
15.0
14.5
72.8
72.4
500≦
500≦
サブレ(セサミ)
図35 焙煎金時粉末試作品
表16 焙煎金時粉末試作品配合表
サブレ(プレーン)
クリームペースト
サブレ(セサミ)
原材料名 配合量(g) 配合率(%) 原材料名 配合量(g) 配合率(%)
豆粉
50
20.0
豆粉
50
19.2
薄力粉
50
19.2
薄力粉
50
20.0
バター
50
19.2
バター
50
20.0
砂糖
50
19.2
砂糖
50
20.0
生クリーム
45
17.3
生クリーム
50
20.0
練りゴマ
煎りゴマ
5
10
クリームペースト
原材料名
豆粉
牛乳
砂糖
練りゴマ(白)
ショートニング
配合量(g) 配合率(%)
50
100
80
10
10
- 46 -
20.0
40.0
32.0
4.0
4.0
1.9
3.8
900
BU
600
300
0
0
20
40
60
時間(分)
80
100
図36 酵素(キシラナーゼ)処理金時粉末のブラベンダービスコグラフ
表17 酵素(キシラナーゼ)処理金時豆粉末の糊化性
糊化開始 糊化開始 最高粘度
時間(分) 温度(℃)
(BU)
17.0
酵素処理
81.0
10
非酵素処理
スポンジケーキ
シューケース
図37-a 酵素(キシラナーゼ)処理金時粉末試作品(株式会社柳月試作品)
- 47 -
非酵素処理
酵素処理
酵素処理
食パン(豆粉 10%)
10%
非酵素処理
コッペパン(豆粉 10%)
15%
20%
食パン(豆粉 10~20%)
図37-b 酵素(キシラナーゼ)処理金時粉末試作品(林製パン試作品)
表18 酵素(キシラナーゼ)処理金時粉末試作品配合表
シューケース
原材料名
配合量(g) 配合率(%)
水
金時粉
強力粉
全卵
グラニュー糖
塩
バター
130
40
40
180
5
2
50
29.1
8.9
8.9
40.3
1.1
0.4
11.2
食パン・コッペパン
原材料名
強力粉
金時粉
脱脂粉乳
食塩
砂糖
油脂
イースト
配合量(g) 配合率(%)
100
10
3
2
5
5
3.5 *
加水
77.8
7.8
2.3
1.6
3.9
3.9
2.7
70
* 金時粉は 10~20%で比較した
- 48 -
表19 手亡・金時粉末ときな粉・米粉の成分比較
表20 手亡粉末の成分分析表
一般成分(g/100g)
タンパク質
灰分
脂質
炭水化物
食物繊維(g/100g)
水溶性食物繊維
不溶性食物繊維
ミネラル(mg/100g)
ナトリウム
カリウム
カルシウム
鉄
ハンマーミル処理
皮付
皮無し
加熱無し
加熱
加熱無し
加熱
ジェットミル処理 皮付
皮無し
加熱無し
加熱
加熱無し
加熱
22.7
4.7
2.4
70.2
23.3
4.9
2.1
69.7
24.8
4.5
2.1
68.7
24.7
4.7
2.1
68.6
21.2
4.7
2.4
71.8
29.3
5.6
3.0
62.2
24.9
4.8
2.4
67.9
23.7
4.6
2.8
68.9
2.3
25.9
2.2
27.4
2.4
21.3
2.5
19.9
2.5
16.0
3.1
18.2
2.3
17.7
2.2
19.2
2.6
1738.0
138.0
8.1
3.0
1728.3
127.8
8.1
4.7
1714.1
66.5
7.1
3.0
1717.5
66.9
8.2
1.4
1689.2
115.5
8.0
0.8
2146.5
81.7
10.1
2.0
1820.7
73.6
8.0
0.9
1722.8
89.9
7.8
表21 金時粉末の有効成分分析
a ポリフェノール含量
b 食物繊維含量
不溶性 水溶性
(g/100g) (g/100g)
(g/100g)
16年度産金時粉末
0.4
16年度産金時粉末
15.9
5.3
17年度産金時粉末
17年度産金時
酵素(キシラナーゼ)処
理粉末
0.3
17年度産金時粉末
17年度産金時
酵素(キシラナーゼ)処
理粉末
17.9
4.5
15.9
7.3
0.2
*各粉末約1gに50mlの蒸留水を加え、
5時間振とうして抽出した。
- 49 -
③調理後の新素材の特性(タンパク質)
豆新素材の調理特性試験の一環として、依頼を受けた3種類の菓子類についてタンパク
質組成を調べた。試料としては、クッキー(ビーンスターク)
、豆粉入り蒸しパン(こども
の城)、豆スイートポテト(こどもの城)を用い、タンパク質組成は電気泳動法(SDS-PAGE)
により検討した。
ア.クッキー クッキーや豆粉入り蒸しパンでは、脂肪等の他原料に由来する成分が多い
ためバンドパターンに乱れが見られた。外部委託(金時、ハンマーミル非酵素処理粉)と
食総研(金時、ハンマーミル非酵素処理粉)の試料で、ファゼオリン、レクチン、10~16kDa
低分子タンパク質由来と見られるバンドが検出された。酵素処理試料(金時、マスコロイ
ダー酵素処理粉)でファゼオリンは分解されて検出されなかった。いずれの試料でも難消
化性 20kDa タンパク質は検出されなかった。
イ.豆粉入り蒸しパン 外部委託と食総研の試料で、ファゼオリン、レクチン、10~16kDa
低分子タンパク質由来と見られるバンドが検出された。ファゼオリン、レクチンの含量が
高かった。酵素処理試料では、ファゼオリンは顕著に減少した。30kDa 付近のバンドが主
要タンパク質となっていた。レクチンの分子量と重なるが、おそらく使用した酵素に由来
するものと考えられる。いずれの試料でも難消化性 20kDa タンパク質を含め低分子側に
多くのバンドが検出された。
ウ.豆スイートポテト 上記の豆粉入り蒸しパンと同様のバンドパターンを示した。
M
1
2
3
4
5
6
7
8
9
←ファゼオリン
←レクチン
←20kDa
←16kDa
加工品のタンパク質組成 (SDS-PAGE)
M;分子量マーカー 1-3;クッキー 4-6;豆粉入り蒸しパン
ト
1, 4, 7; 外部委託 2, 5, 8; 食総研; 3, 6, 9; 酵素処理
- 50 -
7-9;豆スイートポテ
3)豆新素材の調理科学的研究(豆新素材を利用した食品化)
①日常食および介護食、乳児食での試作、評価(調製、嗜好性)
ア.国民栄養調査結果から得られる課題
日本人の食事内容の質・量的変化が、生活習慣病の増大にかなり関与していることは事
実であり、その背景にある社会環境、生産・流通システム、生活観などの変容と大きく関
っている。豆類の国民栄養調査栄養結果をみると、大豆以外のその他の豆類の摂取量は極
めて少なく(厚生労働省「国民栄養調査」食品群別摂取量の推移 参照)
、21 世紀における
国民健康づくり運動(健康日本 21)で掲げる一日当たり豆類摂取目標量(成人 100g以上)
を大きく下回っている。大豆は各種製品で摂取されていることを考えると、豆類摂取量を
増加していくためには、大豆以外の豆の優れた栄養学的利点(
「五訂食品成分表」雑豆の栄
養成分表、食品可食部の全窒素 1g当たりのアミノ酸組成 参照)を明確にし、幼いころか
ら食べなれる習慣を作ることが生活習慣病の予防、健康な食生活の確保の上で重要と思わ
れる。また、乾豆を粒のまま利用することは、予備浸水の必要性や軟らかくするまでの加
熱時間の長さから利用を狭める要因となり、また、水煮缶、ドライパックのようにすぐ使
える形態が以前に比べで増えているが、大豆以外の豆は煮豆・餡等に使うものとして、強
い固定観念が組み込まれている世代が親の代になっているため、利用の拡大に限界がある
のが現状のようである。
このような点から、豆を粉末化するという発想は他の食材と共存し易く、意識せずに味
になじませられるため、それを繰り返せば、大人あるいは高齢になって“懐かしい味”の
食材になり得る。すなわち、長期的戦略をたて、保育園や学校給食に使える“食物”を、
具体的に提案していくことが必要となる。そのため、安全で消化吸収のよい加工形態や豆
粉の製造を検討するとともに、調理・加工特性の良し悪しと嗜好性の関りを考察すること
が重要と考えられる。
イ.手亡豆粉を用いた試作
(ア)手打ちうどん
(1)腰の強いタイプ
材料は手亡豆粉(皮あり、およびハンマーミル酵素処理)
、強力粉:豆粉=8:2、5:5、
10:0(基準)
、粉 100gにつき水 45g、精製塩 4gを用いた。まず粉に塩水を加えて均一
になるまでこね、30 分ねかして中捏ねを軽くし、さらに 20 分ねかした後、径 30cm の円
形にのし、屏風畳して 3mm 幅にカットした。沸騰湯で 5 分ゆで、水洗い後すぐ試食した。
その結果、5:5使用の場合は加水して捏ねる段階、中こねの段階で、豆粉入りはポロ
ポロして扱い難く、酵素処理粉は特にそれが強く感じられた。ゆでた時もゆで汁に煮とけ
るようであり、ゆであがり倍率は 1.38(基準は 1.72)となった。8:2 は両者とも腰が
あったが、酵素処理粉は麺にえぐみが残り、皮ありは豆の風味のある麺となり、後者の方
がやや食べ易かった。
(2)ソフト麺タイプ
材料は、手亡豆粉(皮あり、およびハンマーミル酵素処理)
、強力粉:豆粉=8:2、5:
5、10:0(基準)
、粉 100gにつき微温湯 60g、精製塩 6.2gを用いた。作り方は、前述
(1)と同様に行なった。但しゆで時間は 5、10 分とした。
- 51 -
その結果、5:5使用の場合はいずれも生地としてまとまり難く、特に酵素処理豆粉は
豆の刺激臭があり、
中こね時や製麺時は硬くて伸ばし難かった。
ゆで汁にはトロミがあり、
ゆで麺もえぐい、塩からい、苦いという味に対するマイナス評価であった。8:2 は皮あり
手亡粉の方が酵素処理より製麺性が高く、食感も好まれた。腰がないので、咀嚼しやすい
ように感じられた。ゆで時間は 5 分、10 分で大差ないようであった。ゆで上がり倍率は基
準が 1.80、8:2 の皮ありは 1.75、酵素処理粉は 1.65、5:5 の皮ありは 1.69、酵素処理
粉は 1.56 であり、酵素処理粉系はゆでて崩れ易いようである。ゆで麺を1晩冷蔵したが老
化感はなく、腰のないやわらかさであった。
(イ)サブレ(ショートネスの高いクッキー)
材料は、手亡豆粉(皮あり、およびハンマーミル酵素処理)
、薄力粉:豆粉=8:2、5:
5、10:0(基準)、上記の粉 100g、バタ-60g、砂糖 15g、卵黄 20g、バニラエッセンス、
卵黄の水溶きを使用した。バターを軟らかく練り、砂糖をいれ混ぜた後、卵黄を加えて軽
くまぜ、香料を加えた。さらにふるった粉を入れてこね、布巾をかけ 1 時間ねかした。麺
棒で 4~5mmにのして長方形に切り、卵黄の水溶きをはけで塗り、170℃のオーブンで 10
分焼成した。
その結果、5:5 は生地としてまとめ難かった。酵素処理粉入りの焼き色は濃くなり、
5:5 は焦げたきな粉臭が強かった。しかし、いずれもサクサク感があり、8:2 のサブレ
がほのかな豆の香りがあり、甘味も穏やかで、ナチュラルな風味のサブレであった。
②調理法毎の豆新素材の評価、利用条件(使用条件)の確定
豆の粉末化製品を利用した食べ物を調製し、その性質や嗜好性を把握して、新たな用途
を提案できるような基礎的知見を得ることを目的とした。
ア.4製法5種の豆粉を利用した料理の分類の試み
豆、豆粉を使う食べ物は主食、主菜、副菜、デザート類に利用され、多種多様であるが、
それぞれを水分含量からみると、水分含量 70%以上(和風茹で麺類、ゼリー、カスタード
プデイング等)
、60%台(飯、茹でスパゲテイ、こしあん等)
、50%台(水羊羹、串団子等)
、
40%台(ホットケーキ、草もち、今川焼きなど)
、30%台(菓子パン類、タルト、ケーキ
等)
、20%台(ドーナッツ、カステラ等)
、10%以下(スナック菓子、サブレ、クッキー、
バターケーキ、煎餅類)と分類した。
豆粉を利用する食べ物について、水分含量の違いは食味や風味を確認するひとつの視点と
して捉えられる。
イ.豆粉を利用した食べ物の試作とその評価
(ア)豆粉の試食
5 種の豆粉(A:手亡皮あり・ハンマーミル非酵素処理粉(以下「手亡皮あり粉」とい
う。
)
、B:金時・ハンマーミル酵素処理粉(以下「ハンマーミル粉」という。
)
、C:金時・
マスコロイダー酵素処理粉(以下「マスコロイダー粉」という。
)
、D:金時焙煎 200rpm
粉砕粉、E:金時焙煎 400rpm 粉 )のうち、加熱せずに食べることのできる D、E の 2
種について、本学修士課程の学生 11 名に、味と口触りについて官能評価させた。2点識
- 52 -
別試験を行ったところ、味については有意差がみられず、口触りについては1%の危険率
で有意差があり、400rpm の方が幾分なめらかで、粘る感じがあり、顎にまとわりつくと
評価された。この食品は何かという問に、両者とも、大豆、きな粉、黒豆が共通してあげ
られ、200rpm に対しては 2 名からコンソメの味というコメントがあり、1 名からはきな
粉、貝柱、ゴマの混合パウダーという記述があったが、美味しいという表現は見られなか
った。このまま食する場合には、きな粉の代用的な使い勝手になる可能性が考えられるた
め、焙煎粉の特有な味を緩和するように他の副材料・調味料・香辛料との取り合わせが必要
であろう。
(イ)各豆粉を使った試作
水分含量の違いにより、味、香り、テクスチャー等に 5 種類の差異が明確になると考え
られるため、水羊かんとソフトクッキーを取りあげ、色は測式色差計による測定やデジタ
ルカメラによる記録、物性はレオメーター、食味評価は研究室員 10 名(5、6名の学生を
含む)により、食味について官能評価を実施した。
(1)水羊かんの場合
a.基本配合と調製方法
実験Ⅰ:通常の水羊かんの基本配合は、出来上がり重量に対し粉寒天 0.5%・砂糖 30%・
生あん 30%であるが、本実験では生あんに替えて A~E の豆粉を用いて調製した。一般に
生あんの代用で使用される市販さらしあんを対象として、生あんと同等の水分量となるよ
うに水を加えた。ビーカーに水 120gに粉寒天 1.0g を振り入れて煮溶かした後、砂糖 60g
と試料の豆粉 16.8g を混合したものを撹拌しながら混和し、
沸騰湯せんで 5 分間加熱した。
加熱終了後、ビーカー内の試料重量を全て 200g になるよう蒸発分は水を補い、45℃にな
るまで撹拌しながら冷まし、50ml ビーカー2 個に分注して、4℃の冷蔵庫で冷却した。ま
た、豆粉やさらしあんの入らない 0.5%寒天(砂糖 30%)のゲルも調製した。
実験Ⅱ:実験1の 0.5%より軟らかい方が水羊かんとしてのテクスチャーが好まし
いものが存在すると予想されたことから、寒天使用量のみ変更し 0.2、0.3、0.4%の
それぞれの水羊かんを実験Ⅰと同様に作成した。
b.色調
寒天濃度 0.5%、砂糖 30%の大正金時粉の水羊かんは小豆あんの水羊かんと比べて色調
が異なり、3系統の色調を示した。手亡皮あり粉は明度(L)の高い明るい薄い小豆色系
統となり、マスコロイダー粉とハンマーミル粉は薄墨色を呈した。また、焙煎粉は褐色系
を示し、測色結果では色差(△E)も大きく、感覚の差異を反映していた(図38、表2
2)
。
c.物性と離漿率
レオメーター(REONERⅡ,YAMADEN)により次のような条件で測定した。測定条
件:ロードセル2Kg、プランジャーは 8mm ディスク型、圧縮率 70%、測定スピード 1mm
/sec で、テクスチャー解析を行った。水羊かんの硬さ・付着性は、さらしあんを利用し
たものに比べいずれもやわらかく、皮ありの付着性は他に比べて付着性が高い(図39)
。
またゲルから水分の離漿状況を比較すると、手亡皮あり粉、ハンマーミル粉、マスコロイ
ダー粉は焙煎粉に比べて離漿が少なく、ゲルの安定性が高い傾向を示した。
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d.官能評価
手亡皮あり粉はやわらかく、もったりしたテクスチャーで、豆の風味があった。ハンマ
ーミル粉は塩からく味がよくないという評価があり、マスコロイダー粉も幾分塩味が感じ
られ、
2 種の焙煎粉はきな粉臭が強く、
水羊かんには向かないと評価された。
寒天濃度 0.4%
では食味、テクスチャーともに 0.5%に比べやや軟らかいが食味は良好であった。
e.総合評価
手亡皮あり粉を使用したものが、色合いが淡色系で、口どけもよく、風味もナチュラル
で穏やかなインゲン豆系の風味があり、一番好評であった。
(2)ソフトクッキーの場合
a.基本配合と調製方法
基本配合は薄力粉 50g、ベーキングパウダー 1g(粉重量の2%)
、砂糖 25g(粉重量の 50%)
、
無塩バター25g(粉重量の 50%)
、全卵 12.5g(粉重量の 25%)
、バニラエッセンス数滴と
した。バターを室温にして、泡だて器で砂糖と共にすり混ぜた後、撹拌しながら卵を混入
し、均一になったら粉を振り入れて混和した。これを直径 12mm の口金をつけた絞り袋に
入れ、オーブンペーパー上に 5cm の長さに搾り出し、天板にのせた。170℃で予熱をした
オーブンに入れて、13 分焼成した。オーブンから出し、ケーキクーラー上で冷ましたもの
を測定と官能検査試料に用いた。豆粉 5 種は小麦粉の 50%置換し(薄力粉 25g に豆粉 25g
を混和)
、後は基本と同条件で調製した。また、ハンマーミル粉とマスコロイダー粉は生地
が硬く扱いにくいことから、牛乳 5g(粉重量の 10%)を更に生地に添加して他と類似の
軟らかさの生地にしたものも調製した。
b.ソフトクッキーの形状と焼成後の焼き色
基準配合に比べ、生地の色はいずれも色は濃く、筒上の形態であったが、焼成後はコン
トロールの薄力粉と手亡皮あり粉で平らに広がる傾向が最も強かった。また、マスコロイ
ダー粉とハンマーミル粉では手亡皮あり粉と焙煎粉に比べて焼き色が濃く、裏面も幾分焦
げ色がつき易かった(図40)
。断面の色についての測色結果(L,a,B 値)
、目視で観
察した結果を反映し、焦げ色の強いハンマーミル粉、マスコロイダー粉では L 値が低く、
a値が高なり、b値が低かった(表23)
。
c.ソフトクッキーの物性
クッキーは超音波カッターで組織構造を破壊しないように両端を切り落とし,長さ
15mm に切り出した。これをレオナー(水羊かんと同じ機器)により、ロードセル 20kg、
プランジャーはくさび形、測定スピードは 1mm/sec、圧縮率 80%で、テクスチャー解析
を行った。図41に示すように、薄力粉の 50%を豆粉に置換したソフトクッキーは薄力粉
に比べ、幾分硬かった。牛乳を追加したハンマー粉、マスコロイダー粉は基本に類似した
硬さを呈した。また、焙煎粉とマスコロイダー粉、ハンマーミル粉はもろさが増す傾向を
示した。
d.官能評価
ハンマーミル粉は刺激臭が感じられ、塩味がかなり感じられる。マスコロイダー粉も塩
味が幾分あり、手亡皮あり粉、焙煎粉は塩からさはないが、焙煎粉についてはきな粉ビス
ケットという印象が先行した。このクッキーのように薄力粉と同量(粉の 50%)の豆粉を
使う場合、手亡皮あり粉を利用したものが、ほのかではあるがインゲン豆らしい匂いがあ
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って好ましく、テクスチャーも好評なソフトクッキーであった。
(ウ)考察
豆粉の食味上の特徴としては、手亡皮あり粉が一番自然な風味がある。生地を調製する
とき、幾分やわらかくなる傾向があり、皮が混在していることに起因する。ハンマーミル
とマスコロイダーの酵素処理した粉は味に特徴があり、使用量が多いと塩味や苦味のよう
な違和感のある呈味を示した。刺激臭があると指摘されることがあった。焙煎粉はいずれ
も臭いに特徴があり、きな粉臭とひと括りに評価されるので、食材としては大正金時らし
さを消失していると感じられた。また、水羊かんやクッキーでの嗜好性では、手亡皮あり
粉が香り、味、色、テクスチャーの面で高水分系の水羊かん、低水分系のソフトクッキー
で好評であった。
③有望用途の絞込みと具体的提案
上記までの研究結果を踏まえ、2製法により製造された金時豆粉について、ヘルシーで
作り易く、おいしい料理の提案を検討した。苦味などを取り除いた金時・マスコロイダー
酵素処理粉(以下「酵素処理粉」という。
)と金時・ハンマーミル非酵素処理粉(以下「ハ
ンマ―ミル粉」という。
)の2種について実施し、また17年度産の金時豆から作られた酵
素処理粉とハンマーミル豆粉(食総研製と外部委託製)についても比較検討した。なお、1
7年度産の金時豆粉を( 新 )という冠を記して示した。
ア.実験方法
(ア)豆粉の新旧の比較
(1)豆粉の膨潤度
豆粉1gを精秤し、水 50mlを加えた。水だけの場合は、スタ―ラ―を用いて 5 分間撹
拌し、湯煎の場合は、30 秒撹拌後、80℃湯煎で振とうしながら加熱した。2,000×gで 15
分間遠心分離し、上澄液を除き、残った沈殿部分に重量を測り、豆粉1gあたりの給水量
を膨潤度とした。
(2) 豆粉の懸濁液の沈降体積
水に懸濁した場合の沈降体積は、まず豆粉 2g と水 45g を合わせ、泡立て器で攪拌(約 160
回)した後、50ml のメスフラスコに移し、メスアップした。試験開始直後・30 分後・60
分後の時間経過に、沈殿層の高さを測定した。水に懸濁した試料を加熱した場合の沈降体
積は、まず鍋に豆粉 8g と水 212g を合わせ、泡だて器で攪拌し、電磁調理器で始めからの
加熱時間が 5 分になるまで加熱した。加熱終了後、室温にまで冷まして 250ml のシリンダ
ーに攪拌しながら移し、30 分後から経時的に沈殿層の高さを測定した。
(3)あんの物性
豆粉5g と上白糖8g に熱湯 27g を混ぜながら加え、
ヒーターで沸騰するまで加熱して、
40g に仕上げ、ラップで包んで放冷した。室温まで冷却させ、クリープメーター(山電
製)でクリープ測定を行い、瞬間弾性率とニュートン粘性率を求めた。
(4) 水羊かんの官能評価および冷蔵保存による離水率
粉寒天0.4g を水 160gの中に振り入れ膨潤させ、ヒーターで寒天を煮溶かした。
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豆粉8.4gと上白糖30g をよく混ぜ合わせものを加えて、混ぜながら 100gまで煮詰
めた。これを50ml ビーカー2 つに分注し、各重量(A)を記録した。その後パラフィル
ムで封じて冷蔵庫にいれ、24、48 時間後の離水量(B)を測り、離水率=A/B×100(%)
を求めた。官能評価は 1 時間冷蔵後に評価した。
(イ)官能評価
豆粉の使用量を多くし、日常の食事に組み込みやすいように、主食、おかず(主菜、副
菜)
、甘味(菓子)に分けて料理を試作し、熟練パネルによる官能評価を行い、解析した.
官能評価用紙の一例を図42に示す。
イ.実験結果
(ア)豆粉の新旧の比較
(1)金時豆の新豆粉(17年度産)と豆粉(16年度以前産)の膨潤度の比較(表24)
豆粉の履歴が明確でないので、生産年度の要因のみとは言えないが、金時豆粉の膨潤度
はいずれの製法でも加熱により増大し、ハンマ―ミル粉の方が著しい。また、酵素処理粉
は鮮度の新しい方が、膨潤度が高い傾向である。ハンマーミル粉は鮮度の差による影響は
少ないが、新しい豆粉の方が低めを示す傾向がみられた。
(2)豆粉の沈降体積
豆粉の沈降体積を表25に示した。
(3)豆粉のあんの物性
豆粉のあんの物性を表26に示した。新しい豆粉の方が古い豆粉より物性値が高い傾向
を示した。また、ハンマーミル粉の方が、物性がしっかりしたゾルを形成していた。
(4)豆粉の水羊かんの冷蔵保存による離水率(%)
豆粉の水羊かんの冷蔵保存による離水率(%)を表27に示した。水羊かんの離水率に
及ぼす新旧の差異は製粉処理法により逆の傾向であり、明確ではなかった。
(5)水羊かんの官能評価結果
水羊かんの官能評価結果を図43に示した。ハンマーミル粉はざらつき、軟らかいゲル
であり、寒天分子の網目構造を阻害していると考えられ、軟らかいゲルでは新旧の差を感
じ難かった。また、酵素処理は非常に滑らかでゲルも硬く、その場合新旧で差異が感じら
れた。特に色は暗く、アクっぽさも強い評価となった。
(イ)試作
(1)主食向け
a.豆粉食パン
材料は強力粉 200g、<150g>、
(新)豆粉 50g<100g>、上白糖 17g、スキムミ
ルク6g、ショートニング(植物性)11g、水 190g、ドライイースト3gを使用した。
これらの材料を、自動パン焼き器でスタートから焼成終了まで 4 時間、焼成した。発酵を
伴う食パンでは、
添加油脂のバターは風味が豆粉とあわないので、
ショートニングとした。
また、ここに使用した豆粉はすべて,17 年度産である。
試作の結果、粉の 20%豆粉を添加した場合、ハンマーミル粉は市販食パンのように、均
一に膨らみ、食パンらしいテクスチャーで、金時豆らしい風味があったことから、小麦粉
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のグルテン形成を阻害しないと考えられる。ハンマーミル粉は膨化度が高かったので、
40%まで添加すると、膨化度は著しく低下した。酵素処理粉は 20%添加でも、ハンマーミ
ル粉の 7 割程度までしか膨化しなかった。官能評価では、豆粉 20%添加の場合、総合評価
は普通で、ハンマーミル粉が評価値は高いものの有意差は認められなかった。酵素処理粉
はライ麦パン,ドイツパンのようだというコメントが記されているので、形態をローフ状
にして焼けば、重たい食感ではあるが、味わい深くなると考えられる。
b.豆粉パスタ
材料は強力粉 200g、豆粉(強力粉の 20、40%相当を置き換える)
、卵黄 2 個、水9g
(粉の 45%)
、サラダ油、4g(粉の2%)
、塩 2g(粉の1%)を使用した。まずボール
に強力粉と豆粉を入れてよく混ぜ、これに卵黄・水・塩・油を加え混ぜたものを菜ばしで
混ぜながら加え、まとまった段階でなめらかになるまで手で十分にこねた後、ラップをか
けて 30 分寝かせた。これを 2mm厚さに麺棒でのし、打ち粉をして3つ程度にたたんで、
包丁で 3~5mm巾に切った。大き目の鍋にたっぷりの湯を沸かし、湯の 0.3%の塩を加え
た湯で 10~15 分ゆでた。製麺性としては、酵素処理粉は 20、40%まで置き換えられ、ハ
ンマーミル粉は 20%までが扱い易く感じられた。また、茹で上げた豆パスタを直ちに試食
し、官能評価した結果、酵素処理粉の方が麺の味のバランスがとれていると感じた者が4
名、ハンマーミル粉の方がよいという評価が2名であった。アレンジとして、豆の風味を
弱めるが中国風の肉味噌や棒棒鶏(バンバンジ)のような唐辛子ゴマ風味を加えたり、さ
っと茸類をバター(サラダ油)で炒め、塩、コショウして、生クリームであえて豆の風味と
クリームの風味を融合させたり、オリーブ油でにんにく、唐辛子を炒め、豆パスタにからめ
て塩、コショウで味をつけるなど、
にんにく風味のパスタの歯応えを味わうといった調理法
が考えられる。
c.赤飯風
材料は、もち米(無洗米)320g(2 カップ)+水 320g、豆粉 25~30g+水を用いた。
本試作では、手軽に家庭で作れるように電子レンジを使用し、もち米の無洗米を耐熱ガラ
スの大きめのボールに入れ、豆粉に水 320gを少しずつ加え混ぜながらペースト状から液
状にして、
米に少量ずつ加えて丁寧に混ぜた後、
フタをして少なくとも 2 時間以上おいた。
ボールより一回り大きいラップを 2 枚用意し、一枚を水面に敷き、もう1枚を器の上部に
しっかりかけて、電子レンジ(600W,8 分前後)で加熱した。飯杓子で軽く混ぜ、上部の
みラップをして電子レンジ(600W,4 分前後)してラップしたまま 10 分蒸らして軽く混
ぜた。
官能評価では、パネル数が少なく統計処理ができなかったが、赤飯風は金時豆風味より
も、もち米の風味が強かった。赤飯とは味わいが異なり、色合いは小豆の赤さに比べ、くす
んでいた。食べ方のアドバイスとしては、出来たてを麺棒で軽く飯粒をつぶし、一口大の
大きさの球状に丸め、餡、砂糖を好みの分量加えたきな粉、すりゴマ、ココア、抹茶でお
萩風に仕上げる方法が挙げられる。
d.豆粉粥
材料は、米 80g(0.5 カップ)
、水2.5カップ、豆粉 25~30g+水1カップ 塩(仕
上がり重量の 0.3~0.5%)小さじ 1/3~1/2弱(仕上がり量 600g、3~4 人分)
を用いた。米を手早く洗いざるにとり、よく水気をきった後、炊飯器の内鍋にいれ、水を
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加えて少なくとも 30 分おいた。小ボールに豆粉を入れ、1カップの水を少しずつ混ぜな
がら加えた(玉にならないように丁寧に行う)
。30分後、水溶き豆粉を少しずつ飯杓子で
混ぜながら米に加え、スイッチを入れ、粥モードで炊く。スイッチが保温になったら塩を
いれ、軽く混ぜた。
官能評価は、パネルが少なく統計処理はできなかったが、おだやかな塩味があり、豆の
風味になれてくると、両者とも食べ易かった。食べ方のアドバイスとしては、豆粉の水溶
きを加える時に、15mm角切りのサツマイモ(30 分位水さらししたもの)を加える、ある
いはスイッチが切れる 10 分位前に、1/2パック(小)のマイタケ等をほぐす、全卵を
粥に入れ好みの加熱程度の落とし卵にする、さらりと食感の粥がよければ米に加える水を
4(五分粥)~9カップ(3分粥)に増やす(量を多く食べないと腹持ちが弱い)
、といっ
た方法が挙げられる。
(2)おかず向き
豆粉のグラタン用ソースを、ライスグラタンおよびポテトグラタンに仕立てた。
材料は、バター10g、豆粉 10g、牛乳 270g、塩1gを用い、180gに仕上げた(出来上が
り2人分)
。厚手鍋(ソースパン)を温め、バターを加え、泡立つ程度(焦がさないこと)
になったら豆粉を入れ、弱火で1,2分炒めた。温めた牛乳(60℃)を加え泡たて器でさ
っと混ぜ、木杓子に変え、全面が煮立つような状態で 180gになるまで煮詰めて、ソース
を完成させた。
a.ライスグラタンの場合(2 人分)
材料は、飯 200g、バタ―10g、塩小さじ1/6、コショウ適宜、シーフードミックス
60g、玉葱 30g、マッシュルーム 25g、粉チーズ3g、塩小さじ1/6弱を用いた。まず玉
葱をみじん切りにしてバターで透明になるまで炒め、さらにシーフードを加えてさっと炒
め、塩、コショウした。ご飯を電子レンジで温め、バターを加え、余熱で溶かし、塩、コショ
ウした。豆粉ソースを大さじ2杯加え、他の材料を加え混ぜた。グラタン皿に飯等を盛り、
ソースをかけ、粉チーズをふり、200℃のオーブンで7分前後焼いた。
b.ポテトグラタンの場合(2人分)
材料は、じゃがいも(皮をむいて)200g、玉葱 25g、バター10g、塩少々、コショウ
適宜、とろけるチーズ 15gを用いた。まずじゃがいも(新しいもなら皮付き可)を5mm
厚さに切って 10 分位茹で、玉葱は薄くせん切りにした。厚手鍋を熱し、バターを溶かし、
玉葱が透明になるまで炒めて芋を加え、芋が熱くなるまで炒めて塩・コショウした。出来
たての豆ソースにこれを加え、軽くまぜ、皿に移し、チーズを振った後、200℃のオーブン
で 15 分前後焼いた。
官能評価では、ソースの仕上がり状態は外観に大きな差異がみられ、酵素処理粉はさら
りとした状態で、ハンマーミル粉はドロッとして、ホワイトソースらしかった。しかし、食
味は両者の差がわかり難かった。ライスグラタンとポテトグラタンの官能評価を図44、
図45に示した。
ソースがピンクっぽい色合いだが、
加熱されると肌色になる傾向があり、
豆の風味があった。また、ライスや芋のグラタンにすると、豆の風味が馴染んで、両者の
豆の差がなかった。酵素処理粉のソースは材料の中にしみ込み、ハンマーミル粉は材料の
周りに絡まり加熱され、風味はバター・チーズと渾然一体となっていた。色鮮やかな仕上
がりが食欲をそそるので、さっと茹でた赤パプリカやブロッコリー、グラッセしたニンジ
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ンを加えてもよいと思われる。
(3)甘味(菓子)
a.豆粉のスポンジケーキ(バターを卵の 20%加えるタイプ)
材料は、鶏卵 150g、上白糖 75g、薄力粉 75g、バター30g(18cm ケーキ型 1 個分)
を用い、このうち薄力粉を 25,50,75,100%まで豆粉に置き換えて使用した。下準備と
して、まず粉と豆粉をよく混ぜておき、バターを室温に戻した。また、18cm 型の底と周
囲に紙を敷いておき、オーブンは予熱した。まずボールに鶏卵を測りいれてハンドミキサ
ーで1,2 分泡立て、さらに砂糖を加えて線が描けるまで泡立てた(フォーム比重=0.24)
。
あわせた粉を万能こしきで振り入れてゴムベラでざっくりまぜ、粉けのある状態で溶かし
バターを加え、丁寧にまぜた後、型に流しいれた。オーブン 160℃で 25 分焼成し、型紙
つきで、焼き時間の2倍放冷させた。
豆粉の添加量を変えた時の膨化を検討した結果、ハンマー処理粉は薄力粉の 25、50%
相当分の豆粉を加えても、薄力粉のみに相当する程度に膨化したが、酵素処理粉の豆粉は
25%が限度で、50%を豆粉にすると著しく膨化度が低下し、ケーキのテクスチャーとはい
えなかった(図46)
。官能評価では、パネル数が少なく統計処理はできなかったが、バタ
ーの風味が豆粉にむかないというコメントが2、3人から寄せられたが、豆の風味は残っ
ていた。両製法の豆粉の膨らみとテクスチャーからみて、豆の使用量は、薄力粉のスポン
ジと同じ食感にするためには粉の 25%を豆粉にして、残りを薄力粉にすると作り易いと考
えられた。
b.豆粉のスポンジケーキ(ダイエットタイプ:油脂を入れないケーキ)
材料は、鶏卵 150g、上白糖 75g、薄力粉 75(18cm ケーキ型 1 個分、豆粉を使う場合、
薄力粉を 50、100%置き換えて使用)を用いた。作り方は、aの豆粉のスポンジケーキと
同様に作成した(手早く粉類を混ぜ、混ぜすぎないこと)
。
出来上がりの外観写真を図47に、官能評価を図48に示した。小麦粉をすべて豆粉に
置き換えたものはどの評価項目も評価が低かった。小麦粉の 50%を豆粉に置き換えたケー
キの総合評価は薄力粉と有意な差異はみとめられなかった。重回帰分析の結果、総合評価
を決定する要因はテクスチャー、味とにおいの好みで、これらの寄与率は 92.45%であっ
た。
c.豆粉のシフォンケーキ
材料は、卵黄 52.5g(3 個分弱)
、上白糖 65g、水 35g(小麦粉の場合)または水 45
g(豆粉使用の場合)
、サラダ油 27g、薄力粉 75g(この 50、100%を豆粉に置き換えて
使用)
、卵白 163.g(5 個分)を使用し、出来上がりは径 16.5cm のシフォンケーキ型
1 個分となった。オーブンは 180℃で予熱し、型はそのまま使用(油の塗布は不要)した。
作り方は、まず大き目のボールに卵白を入れ、半量の砂糖を加え、ハンドミキサーでしっ
かり角が立つまで泡立てたメレンゲにした(高速で 3~4 分)。次に卵黄と砂糖半量をボール
に入れ、ハンドミキサー(中速)で 2 分撹拌した。さらにサラダ油を加え、1 分混ぜた後に
水を加え、さらに 1 分撹拌した。粉を振り入れてゴムヘラでざっくりまぜ、泡たて器でメ
レンゲの1/3を混ぜた後、もう1/3 をあわせ、さらに残りを入れてゴムヘラで混ぜた。
型に流し入れて、30 分焼成し、型のまま膨らみをおさえないように注意して、逆にして放
冷した。
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出来上がりの外観写真を図49に、官能評価を図50に示した。シフォンとはベルベッ
トのようになめらかかな薄地の絹織物を指し、シフォンケーキは、やわらかでなめらかな
口ざわりが求められるケーキである。ハンマーは粉を用いた場合、50、100%置き換えても
性状のよいケーキで、薄力粉のものと遜色がないが、酵素処理粉の 100%は膨化度が半分
となり、50%はきめの細かさやテクスチャーがハンマーに比べやや劣っていた。重回帰分
析の結果、総合評価を決定する因子はテクスチャーと味、においの好みで、その寄与率は
91.5%であった。
d.豆粉のかるかん
材料は、山芋 40g、上白糖 50g、水 40g、上新粉 40gあるいは上新粉 25g、豆粉 20
g、ベーキングパウダー1g(出来上がりは角バット 15×12×2.8cm型 1 個分)を用い
た。型にクッキングシートを敷き、山芋は市販山芋粉に5倍重量の水を加え混ぜ、10分
寝かした(山芋粉8gに40gの水)
。また、粉類とベーキングパウダーはあらかじめよく
混ぜておいた。山芋に砂糖を2、3回に分けて加えながら、ハンドミキサー(低速)で1分
半撹拌し、水を少しずつ入れながら1分半撹拌後、高速でさらに 30 秒程度泡立てた。粉
を少しずつ加え、泡たて器で混ぜた後型に流し、沸騰した蒸し器にいれ、10 分蒸した。
出来上がりの外観写真を図51に、官能評価を図52に示した。両者の粉とも、上新粉
のみのかるかんに比べ、色と豆の香り以外に、においの好み、きめの細かさ、テクスチャ
ー、味、総合評価に有意差は認められなかった。総合評価を決定する因子であるテクスチ
ャーと味、においの好みについて、これらの寄与率は 90.52%であった。また、山芋、金
時豆、上新粉の独特のにおいが、おいしさを創造したと考えられる。
e. 豆粉の蒸し羊かん
材料は、豆粉 40g、上白糖 50g、食塩 0.25g、熱湯 70g、上新粉 50g、砂糖水(上白
糖 30g+水 50g)を用いた。粉の種類を上新粉、薄力粉、強力粉、デンプンで試作し、上
新粉が適すると判断した。まず、豆粉、砂糖、塩を混ぜてから熱湯を加えて、ゴムヘラで
よく練った後、上新粉を入れ混ぜた。砂糖水を少しずつ加え混ぜ、クッキングシートを敷
いた角バット(15×12×2.8cm)に流し入れ、蒸し器で 40 分蒸し、冷めた後に適宜切り分け
た。
官能評価では、パネル数が少なく統計処理ができなかったが、両者とも蒸し羊かんらし
い食味であった。金時豆の甘納豆を数粒丸のまま加えて蒸しあげると、食感に変化が出る
と考えられる。
f.豆粉クッキー(油脂の種類の検討)
材料は、薄力粉 100gあるいは薄力粉 50g+豆粉(ハンマー)50g、ベーキングパウダー3
g、重曹 0.6g、上白糖 60g、ショートニングあるいはバター50g、卵 20g(12 個分)を
用いた。まずボールに油脂を入れ、泡たて器でクリーム状によくすり混ぜた後に砂糖を加
え混ぜ、さらに卵を混ぜた。粉類をふるって入れ、木杓子で軽く混ぜた。打ち粉をふった
乾いたまな板に、ひとまとまりにおいて直径 3cm の棒状に伸ばし、12 個に切り分けた。
これを円形に整え、手のひらで軽く押して、直径 5cm 位にのばした。薄く油を引いた天板
に間をおいて並べ、中央を指で軽く押し、くぼみをつけた。つやよく焼く為に、表面に卵
の水溶きを薄くはけで塗り、180℃に温めたオーブンで13~14分焼いた。
出来上がりの外観写真を図53に、官能評価を図54に示した。以前のクッキー試作の
- 60 -
際、バターを使用したクッキーは豆の風味とあわないという評価があったことから、植物
性のショートニングを使ったところ、バターよりやや総合評価が高い傾向を示した。
g. ハンドメイドの豆粉アイスクリーム
材料は、豆粉(酵素処理)25g、砂糖 40g、熱湯 35g、植物性クリーム(脂肪 47%)
90g、牛乳 53g、卵黄 15g、黒砂糖(粉末タイプ)35gを使用した。まず、豆粉・砂糖・
熱湯を先に合わせて、豆あんを作った。卵黄・砂糖・牛乳を加えてゴムベラでかき混ぜな
がら電磁調理器で加熱し、内部温度が 80℃になったら火を止め、常温まで冷ました。これ
に八分たてのホイップクリームを加え混ぜ、冷凍庫で冷やす。固まったらかき混ぜ、再び
冷凍庫で冷やす操作を 2~3 回繰り返した。官能評価を図55に示した。
h.冬のドリンク・ホット金時ミルク
材料は、牛乳 200ml、豆粉(酵素処理)大さじ(1/2~1)を用いた。マグカップに
豆粉と砂糖(小さじ 1~3)を入れスプーンでよく混ぜる。牛乳を少しずつ丁寧に加え混
ぜる。ラップして電子レンジで 1 分 30 秒前後(600W)温める。
官能評価は特に行わなかったが、ホットミルクが好きで、健康志向の方に勧めたい。
ウ.考察
(ア)豆粉の新旧の差異
豆粉の新旧の差異といっても、この比較結果は、同一産地の同一品種の豆を収穫して豆
粉を作り、経時的変化を確認する手法ではない。収穫時期の違う豆から調製されたので、
厳密にみれば、変動要因を多く含む上での比較であるが、ハンマーミル粉より酵素処理粉
の方が豆粉の膨潤度やあんの物性値から、影響を受け易いように感じられた。また、新旧
両者の豆粉で調製した水羊かんの官能評価をしたが、総合評価には有意差は認められなか
ったが、若干新豆の方が、両製法でアクっぽさが弱いという評価傾向であった。
(イ)金時豆粉の試作結果
学生に試作・試食にも参加させた結果、初めは「豆臭い」といっていたものが、
「豆の味
がわかる」に変わり、
「豆の味が生きている」
「意外と好き」といった評価に変わって来た
ため、食べなれるということが重要だと思われる。このことから、豆や豆粉を食べること
が、健康的にも、日本の風土や食文化からも、本当によいという研究成果を集め、子供達
の場合は好きなものに、少し加え味にならしていく検討が必要と考えられた。
また、主食、おかず(主菜、副菜)、甘味(菓子)に分けて、小麦粉、上新粉、あん、豆等を
利用する調理に豆粉を導入し、試作した。それらを中心にして、調理系教職員及び同卒業
研究生からなる熟練パネルにより評価し、概略を図56に示した。
(ウ)金時豆粉の調理での扱い方
前述の主食、おかず(主菜、副菜)、甘味を家庭的分量で試作した際、調理上の工夫が必
要と思われ、
(2)の概略と共に、図57、58に表した。
- 61 -
水羊かん(寒天濃度0.5% ,砂糖30%)
市販さらし
あん
焙煎 (200rpm)
皮つき
焙煎 マスコロイダー
(400rpm)
酵素処理
ハンマー
酵素処理
図38 各豆粉を用いた水羊かん
表22 各粉を用いた水羊かんの色調
市販ようかん
さらしあん
皮あり
焙煎200
焙煎400
マスコロイダー
ハンマーミル
L値
a値
b値
17.6
17.5
35.1
30.4
29.7
27.9
25.3
2.9
5
3.6
5.2
5.2
3
3.9
4.2
3.1
3.1
8.8
8.5
2.1
3.2
△E(N.B.S.)1) △E(N.B.S )2)
-
2.3
17.5
13.8
13
10.5
7.8
2.3
-
17.7
14.1
13.3
10.6
7.9
1) 市販水羊かんとの色差 , 2) 市販さらしあんを用いた水羊かんとの色差
v
応力(×103 N/m2)
4.0
水羊かんの硬さ
3.5
3.0
2.5
2.0
1.5
1.0
0.5
0.0
豆粉なし
さらし
あん
皮あり
焙煎
200
焙煎
400
付着性(×103 J/m2)
水羊かんの付着性
5.0
4.0
3.0
2.0
1.0
0.0
豆粉なし
さらし
あん
マスコ
ロイダー
水羊かんの離漿率 (4℃12h保存後、室温30分放置)
7.0
6.0
ハンマ
ーミル
皮あり 焙煎
200
焙煎
400
ハンマ
ーミル
マスコ
ロイダー
試 料
豆粉なし
さらしあん
皮あり
焙煎200
焙煎400
マスコロイダー
ハンマーミル
図39 水羊かんの物性と離漿率
- 62 -
離漿率(%)
3.48
2.06
0.98
3.39
4.62
0.50
0.60
ソフトクッキー
A:基本(薄力粉100%)
生地状態
B:皮あり(薄力粉の50%配合)
C:焙煎200rpm(〃)
D:焙煎400rpm(〃)
E:マスコロイダー(〃)
F:ハンマーミル(〃)
G:マスコロイダー(〃)+牛乳10%追加
H:ハンマーミル(〃)+牛乳10%追加
焼成後の外観
焼成後の横断面
図40 ソフトクッキーの焼成後の焼き色
表23 ソフトクッキーの焼き色
ソフトクッキーの焼き色
<表面の色>
ソフトクッキー表面の色
マスコロイダー
+牛乳
ハンマーミル
+牛乳
0.0
20.0
暗い
(黒)
b値 (黄色)
マスコ
ロイダー ハンマ
ーミル
40.0
焙煎400
焙煎200
基本
皮あり 60.0
80.0
明るい
(白)
L値
30.0
基本
20.0
焙煎400
焙煎200
a値
b値
基本
67.2
8.1
29.6
皮有
49.9
13.7
21.0
焙煎200
48.6
12.5
21.0
焙煎400
48.2
12.6
20.6
マスコロイダー
34.3
13.4
14.5
ハンマーミル
38.0
13.6
15.7
マスコ牛乳
14.4
17.3
6.8
ハンマー牛乳
16.6
19.5
8.1
<断面の色>
ハンマー
+牛乳
マスコ
10.0
マスコ
+牛乳
0.0
10.0
L値
皮付き
ハンマー
0.0
20.0
a値 (赤色)
- 63 -
L値
a値
b値
基本
76.9
0.1
皮有
59.3
6.9
24.8
14.8
焙煎200
49.7
10.2
18.6
焙煎400
49.0
10.3
18.3
マスコロイダー
52.4
8.7
18.0
ハンマーミル
46.7
10.3
15.9
マスコ牛乳
27.2
29.1
16.8
ハンマー牛乳
21.9
24.2
13.1
応力(×105 N/m2)
6.0
ソフトクッキーの硬さ
5.0
4.0
3.0
2.0
1.0
0.0
基本
皮あり
焙煎 200
焙煎 400
マスコロ
イダー
ハンマ
ーミル
応力(×105 N/m2)
マスコ
ロイダー
+牛乳
ハンマーミル
+牛乳
4.0
ソフトクッキーのもろさ
3.5
3.0
2.5
2.0
1.5
1.0
0.5
0.0
基本
皮あり
焙煎 200
焙煎 400
マスコ
ハンマー
図41 ソフトクッキーの物性
- 64 -
マスコロイダー ハンマーミル
+牛乳
+牛乳
2006.2.17
水羊かん(
1. 色
氏名 (
)
)を食べて、以下の評価項目の該当する箇所に○をつけて下さい。
普通
やや
好ましい
好ま
しい
非常に
好ましい
普通
やや強い
強い
非常に
強い
普通
やや
好ましい
好ま
しい
非常に
好ましい
普通
やや良い
良い
非常に
良い
やや好ま
しくない
普通
やや
好ましい
好ま
しい
非常に
好ましい
好まし
くない
やや好ま
しくない
普通
やや
好ましい
好ま
しい
非常に
好ましい
好まし
くない
やや好ま
しくない
普通
やや
好ましい
好ま
しい
非常に
好ましい
非常に好
ましくない
好まし
くない
非常に
弱い
弱い
非常に好
ましくない
好まし
くない
非常に
悪い
悪い
非常に好
ましくない
好まし
くない
非常に好
ましくない
非常に好
ましくない
やや好ま
しくない
2. 甘味
やや弱い
3. あくっぽさ
やや好ま
しくない
4. ざらつき
やや悪い
5. テクスチャー
6. 味の好み
7. 総合評価
何かお気づきの点がありましたらお書き下さい。
(
)
図42 水羊かん官能評価用紙
表24 金時豆の新豆粉(17年度産)と豆粉(16年度以前産)の膨潤度の比較
試料名
水温膨潤度(A)
80℃30 分膨潤度(B) 膨潤率(B/A)
旧酵素処理
3.41<100>( 3.81<100>
1.12
新酵素処理
3.73<109>
5.43<143>
1.46
旧ハンマ―
2.67<100>
5.04<100>
1.89
新ハンマ―(食総研) 2.40< 90>
4.95< 98>
2.06
新ハンマ―(外部) 2.38< 89>
4.42< 88>
1.86
*なお、<>内数値は各処理の旧の膨潤度を100とした比率を示す。
- 65 -
表25 豆粉の沈降体積
<水に懸濁した場合>
旧ハンマー 新ハンマー 新ハンマー 旧酵素処
(外 部 依
理
ミル
(食 総 研 )
直後
30分 後
44.5
44.0
60分 後
44.0
(5.0)
4 3.5
43.5
(9.5)
43.5
(9.5)
43.0
43.0
(8.0)
43.0
(8.0)
(単 位 m l)
新酵素処
理
43.5
43.5
(22.0)
43.0
(19.5)
4 3.5
4 3.0
(12.5)
4 2.5
(13.0)
※ 時 間 経 過 と と も に 、 層 が 2 重 に な っ た た め 、 ( )内 の 数 値 は 下 層 の 値
<水に懸濁した試料を加熱した場合>
旧ハンマー 新ハンマー 新ハンマー
(外 部 依
ミル
(食 総 研 )
沸騰時間
1分 40秒
1分 40秒
1分 40秒
全加熱時間
5分 00秒
5分 00秒
5分 00秒
30分 後
185
180
185
60分 後
185
175
185
90分 後
185
175
180
120分 後
180
175
174
150分 後
180
176
170
180分 後
184
174
168
※ 青 数 字 は 、デ ジ カメか らの 目 測
試料名
酵素処理
新酵素処理
ハンマー
新ハンマー
旧酵素処
理
1分 45秒
5分 00秒
( 単 位 m l)
新酵素処
理
1分 30秒
5分 00秒
170
140
130
120
118
115
190
190
190
180
表26 豆粉のあんの物性
瞬間弾性率(N/m2) ニ ュ ー ト ン 粘 性 率
(Pa.S)
3
0.160×10
測定不可
3
0.172×10
2.492×105
1.265×103
6.088×105
0.906×103
1.484×105
P
P
P
P
P
P
P
P
P
P
P
P
P
P
P
P
観察メモ
非常にゆるい
ややゆるい
かたい
ややかたい
表27 豆粉の水羊かんの冷蔵保存による離水率(%)
試料名
24 時間後
48 時間後
観察メモ
酵素処理
型から出しにくい
0.23
0.37
新酵素処理
型から出しやすい
0.85
1.56
ゲルが滑りより出し易
ハンマー
1.60
3.70
い
新ハンマー
1.32
2.62
- 66 -
〃
新旧に差を感じ67%が
ロをあくっぽいと評価
7.0
b
6.0
by
b
5.0
bxy
4.0
abx
a
bx
3.0
新旧に差を感じにくい。
50%が同じと評価
2.0
1.0
イ:新ハンマー
ロ:旧ハンマー
ハ:新酵素処理
ニ:旧酵素処理
by
色
色の好み
a
甘味 あくっぽさ
味
かたさ
a
粘り
ざらつき
図43 水羊かんの官能評価
総合評価
a,b:
異なる文字間に有意差あり(p<0.01)
XY:
異なる文字間に有意差あり(p<0.05)
(n=6)
7.0
6.0
ラ イ スグラ タン :
ハン マー
*
5.0
ラ イ スグラ タン :
酵素
4.0
3.0
2.0
1.0
ソース色
におい(豆の香り)
においの好み
ソースのとろみ
テクスチャー
味の好み
総合評価
*:有意差あり
(p<0.05)
図44 ライスグラタンの官能評価
(n=6)
7.0
**
6.0
**
5.0
ポテトグラ タン:
ハンマー
4.0
ポテトグラ タン:
酵素
3.0
2.0
1.0
ソース色
におい(豆の香り)
においの好み
ソースのとろみ
テクスチャー
味の好み
図45 ライスグラタンの官能評価
- 67 -
総合評価
**:有意差あり
(p<0.01)
油脂混入グループ
豆粉
100%
豆粉
75%
豆粉
50%
豆粉
25%
豆粉0%
豆粉0%
(薄力粉100%)
基本スポンジ
酵素処理の
豆粉
豆粉
25%
豆粉
75%
豆粉
50%
豆粉50%
バターなし
(粉混ぜ30回)
豆粉0%
豆粉
25%
豆粉75%
バターなし
(粉混ぜ30回)
豆粉
50%
豆粉
100%
豆粉
100%
油脂なしグループ
図46 豆粉のスポンジケーキ(バターを卵の 20%加えるタイプ)
薄力粉50%+
酵素処理豆粉
50% スポンジ
酵素処理豆粉
100%スポンジ
薄力粉100%
スポンジ
ハンマー豆粉
100%スポンジ
薄力粉50%+
ハンマ-豆粉50%
スポンジ
図47 豆粉のスポンジケーキ(ダイエットタイプ:油脂を入れないケーキ)
金時豆パウダーのスポンジケーキ
( n=12 )
薄力粉100%
7.0
6.0
a
a
5.0
4.0
3.0
ay
ay
b
b
2.0
a
a
a
ab
ab
ab
ab
b
b
b
ハンマー豆粉100%
酵素豆粉50%
ay
酵素豆粉100%
b
重回帰分析結果 : 総合評価を決定する因子は
テクスチャーと味の好みとにおいの好み
b
意欲
総合評価
味
異なる文字間に有意差あり(p<0.01)
x,y:異なる文字間に有意差あり(p<0.05)
テク スチ ャー
きめ
にお い好 み
豆香り強弱
a,b:
b
a
b
色 の好 み
1.0
ハンマー豆粉50%
ax
ax
y=総合評価; X1=味の好み; X2=テクスチャー;
X3=においの好みとした時、次式で説明できる。
y=0.6484 X 1 +0.3071 X2 +0.1315 X3 -0.4373 で
示される。(寄与率は92.45%)
内は同じ文字を示し、有意差なし
図48 豆粉のスポンジケーキ(ダイエットタイプ:油脂を入れないケーキ)官能評価
- 68 -
豆粉(ハンマー)
50%
豆粉(酵素
処理)50%
豆粉0%
(薄力粉100%)
基本シフォン
豆粉(ハンマー)
100%
豆粉(酵素
処理)100%
図49 豆粉のシフォンケーキ
金時豆パウダーのシフォンケーキ
( n=12 )
7.0
6.0
a
a
a
a
a
5.0
a
a
4.0
ab
3.0
b
b
b
b
2.0
b
c
b
重回帰分析結果 :
総合評価を決定する因子はテクスチャーと味の好みとにおいの好み
意欲
総合評価
味
テ ク ス チ ャー
きめ
に お い好 み
豆香り強弱
色 の好 み
1.0
b
c
b
y=総合評価; X1=味のこのみ; X2 =テクスチャー; X3 =においの好み
とした時、 次式で説明できる。
y=0.4522 X1 +0.4235X2 +0.1610x3 -0.140 で示される。
(寄与率は91.95%)
薄力粉100%
ハンマー豆粉100%
ハンマー豆粉50%
酵素豆粉50%
酵素豆粉100%
a,b:
異なる文字間に有意差あり(p<0.01)
内は同じ文字を示し、有意差なし
図50 豆粉のシフォンケーキ官能検査結果
- 69 -
C
A:普通かるかん(上新粉 100%)
B
B:ハンマー豆粉 50%のかるかん
C:酵素処理豆粉 50%のかるかん
A
図51 豆粉のかるかん
上新粉に豆粉を置き換えたかるかん
官
能
検
査
評
点
( n=10 )
6.0
5.0
4.0
y
x
x
b
b
3.0
2.0
a
1.0
嗜好意欲
総合 評価
味
テク スチ ャー
きめ
にお い好 み
豆 香 り強 弱
色 の好 み
0.0
A : 米粉100%
B : ハンマー豆粉50%
C : 酵素処理豆粉50%
a,b:
異なる文字間に有意差あり(p<0.01)
x,y:異なる文字間に有意差あり(p<0.05)
重回帰分析結果 :
総合評価を決定する因子はテクスチャーと味の好みとにおいの好み
y=総合評価; X1=味の好み; X2=テクスチャー;X3=においの好みとした時、
次式で説明できる。y=0.7109 X 1 +0.1863 X2 +0.1142 X3 -0.0592 で示さ
れる。(寄与率は90.52%)
図52 豆粉のかるかんの官能評価
A:基本(バター)
B: ハンマー処理豆
粉(食総研)
50%(バター)
C: ハンマー処理豆
粉(食総研)
50%(ショートニング)
図53 豆粉クッキー(油脂の種類の検討)
- 70 -
7.0
油脂の差がクッキーの
食味に及ぼす影響
(焼き時間13分)
(n=16)
6.0
by
5.0
xy
b
4.0
b
y
b
ax
A 基本バター
ab
B:ショートニング+ハンマー食総研50%
x
a
a
C:バター+ハンマー食総研50%
3.0
2.0
1.0
a
色
におい(豆
の香り)
におい
の好み
さくさく感
テクスチャー
味の好み
a,b:
異なる文字間に有意差あり(p<0.01)
XY:
異なる文字間に有意差あり(p<0.05)
総合評価
図54 豆粉クッキー(油脂の種類の検討)官能評価
豆あん
7.0
(n=7)
6.0
甘味は黒砂糖の方が
酵素処理 は滑らか
*
豆粉と合う
*
5.0
A
B
C
C
4.0
G
3.0
D
F
H
D
E
F
B
E
A
G
H
ハンマーはざらつ
きが気になる
2.0
1.0
甘味が上白糖だと
評価が低い
色
におい(豆
の香り)
におい
の好み
ざらつき
テクスチャー
味の好み
*:有意差あり
(p<0.05)
総合評価
図55 ハンドメイドの豆粉アイスクリーム官能評価
- 71 -
図56
調理系教職員・同卒業研究生からなる熟練パネルによる評価の概略
- 72 -
図57
家庭的分量で作る際の調理上の工夫‐①
- 73 -
図58
家庭的分量で作る際の調理上の工夫‐②
- 74 -
参考資料
協力機関による介護食、乳児食での試作、評価
介護食、乳児食での試作、評価については、
「豆類食材研究開発グループ
検討委員会」委員及びこどもの城、ビーンスターク・スノー、キユーピー
の協力により、平成15年から3カ年間に、いんげん豆2種類、白系の雪
手亡、赤系の大正金時について処理方法を異にする8種類の豆粉末化物に
より、試作品11種類、延べ試作品数35に及ぶ試作、評価を行った。
(参
考2及び参考3)
なお、使用した豆の種類とその加工方法は、次のとおり。
A:雪手亡、ハンマーミル処理
B:雪手亡、ハンマーミル処理(酵素処理)
C:大正金時、ハンマーミル処理(酵素処理)
D:大正金時、マスコロイダー処理(酵素処理)
E:焙煎大正金時、ハンマーミル処理
F:大正金時、ハンマーミル処理(食品総合研究所)
G:大正金時、ハンマーミル処理(外部委託)
H:大正金時、マスコロイダー処理(酵素処理)
① 豆粉入り蒸しパン
ア.雪手亡を使用したAについては、素材の扱い、混ざり具合は良好で
簡単。ほのかに豆の甘味があるが冷えると、ぱさつき硬くなるので、
ぱさつく感じがなくなれば子供の間食に使える。
また、Bについては、ほのかに豆の香りはあるが、粘りが強く、す
ぐに弾力がなくなりパン状態にならない。しっとりとしているので粉
に混ぜるよりは、スープなどにすると良い。
イ.大正金時については、素材の扱い、混ざり具合では、Dはべたつき
感があり、Hは粘りがあり、かき混ぜに力がいる。えぐみはC,D,
Gに少々あるが気にならない。Eはコーヒーのように香ばしく、豆の
甘味があり、最もパンらしく、冷えてもおいしく、健康的なおいしさ
で実用感がある。全般的に冷えてもしっとりしており、パン作りには、
豆粉を混ぜて活用できそう。ブルーベリーを混ぜたが、他のフルーツ
や甘煮豆をトッピングすると幼児も喜びそう。
② 豆スイートポテト
ア.雪手亡を使用したAについては、素材の扱い、混ざり具合は良好で
簡単だが、豆特有の渋みがあるので、それがなくなれば子供の間食に
使える。
また、Bについては、粘りがありすぎでまとまりにくく、食感はベ
タベタしてスイートポテトにはなっていない。粘りがでるので粉に混
ぜるのは適当ではない。
- 75 -
イ.大正金時については、素材の扱い、混ざり具合は良好で簡単。C,
Dは渋み、Gにはえぐ味がある。F,Gは弾力が少々あり、Hはやわ
らかい。全体的にしっとりしておいしい。特に、Eについては、シナ
モンスイートポテトのような香ばしさと甘味もあり、しっとりしてお
いしい。
③ スープ類
ア.豆コンソメスープでは雪手亡を使用したBは、液体はダマにはなら
ず溶けやすく、スープ系によい。大正金時を使用したC,D,Eは、
ダマになりやすい。両者とも豆の苦味、渋みはないが、風味はしっか
り豆の香りがする。食感は普通のコンソメスープとかわらない。
イ.雪手亡を使用した白いんげんと大豆のホワイトポタージュでは、A
については、お湯を加えて混ぜれば溶解し、きれいな白色で適度な粘
性もあり、ポタージュに適した素材である。Bについては、ダマにな
りなかなか溶解しない。後味に苦味があり、薄茶でシャバシャバした
物性はポタージュ向きではない。
ウ.金時豆と豆乳のポタージュと金時豆のミネストローネでは、C,D,
Eともダマになり溶解に時間がかかり、造粒するなど物理的加工を施
した方が使い勝手がよりよい。3素材ともポタージュ、スープとして
の滑らかさは良好。C,Dは、乳幼児向けとしては豆の味が強く、紫
色が強く食欲が湧く色ではない。Eは焙煎で豆特有のえぐみや苦味は
軽減されたが、焙煎の香りを乳児が好むかどうかは検討の余地がある。
C,D,E粉体の特性をそのまま生かした食品を作るのがよい。小
麦粉の一部と置換してケーキやクッキー、クレープなどにしたらよい。
特に焙煎品の香りと砂糖の甘さの相乗効果でよりおいしくなると思わ
れる。
エ.C,D,Eのペーストについては、他の材料との混ぜ合わせ具合は
良好。C,Dの風味はやや苦味があるが、舌触りはよい。お豆スープ
に適している。
④ クッキー
小麦粉に比較すると、生地のまとまりがやや悪く、生地の柔軟性に欠
け、延ばしにくい。外観はF,Hは無地、Gは粒々感がある。また、豆
風味はFは弱く、Gは強く、Hは風味はないが苦味、えぐみがあり、G,
Hは好ましくなかった。F,G,Hともにサクサク感のある菓子原料と
しては扱いやすかった。特に,乳幼児向けとしてはFの評価が高かった。
⑤ その他
Aの雪手亡を使用した
ア.豆粉ドーナッツは、素材の扱い、混ざり具合良好で簡単。風味は、
豆の甘味と渋みがある。食感はぱさついた感じ。ぱさつき感の改善が
必要。
イ.豆粉入りキッシュは、混ざり具合良好で簡単。普通のキッシュより
- 76 -
しっとりしている。豆独特の風味は感じられた。オムレツ等に応用できる。
豆の風味苦手ならカレーパウダーなどで工夫すると良い。
ウ.豆粉入りコロッケは、普通のコロッケに比べ、ぱさつき、しっとりと重
い感じ。味は豆の風味がある。ぱさつき感や冷めた後のしっとり感が
防げたらよい。 (表1)
表1
1.豆粉末試作、評価
材 料
(総合)
粉 末 処
酵素
豆 粉 入
豆スイー
理
処理
り 蒸 し
トポテト
パ
ン
城 試作
雪 手
ハ ン マ
亡:A
ーミル
無
スープ類
その他
コ:城、ポ・ミ :
試作
ビ、ペ:キ試作
調:○、 調 : ○ 、
ポ:調○、味○
味:△
クッキー
城
ビ
試作
城
試作
(ドーナ
味:△
ッツ、コロ
ッ ケ )調 :
○、味:△
キ
ッ
シ
ュ:調、味
○
雪 手
ハ ン マ
亡:B
ーミル
有
調:×、 調 : × 、
コ:調、味○
味:×
ポ: 調×、 味 :
味:×
×
大 正
ハ ン マ
金
ーミル
有
調 、味 : 調 、 味 :
コ:調△、味○
○
ポ:調△、味△
○
時:C
ペ:調○、味◎
大 正
マ ス コ
金
ロ イ ダ
時:D
ー
大 正
焙煎・ハ
金
ン マ ー
時:E
ミル
大 正
ハ ン マ
金
ーミル
有
無
調:△、 調 、 味 :
ペ:調○、味◎
味:○、 ○
ミ:調△、味△
調:○、 調 、 味 :
コ、ポ、ミ:調
味:◎
△、味○、香:?
○
ペ:調○、味◎
無
Cと同
Cと同
調:▲、
味:○
時:F
一 部 菓
子:調○、
味○
- 77 -
大 正
ハ ン マ
金
ーミル
無
Cと同
Cと同
調:▲、
味:△
時:G
一 部 菓
( 外
子:調○、
部 委
味○
託)
金 正
マ ス コ
金
ロ イ ダ
時:H
ー
有
調:△、 調 : ○ 、
調:▲、
味:○
味:×
味:●
一 部 菓
子:調○、
味○
注:試作者表示は次の通り。城:こどもの城、ビ:ビーンスターク・スノー、キ:キユー
ピー
試作品表示は次のとおり。コ:豆コンソメスープ、ポ:白インゲンと大豆のホワイト
ポタージュ、金時豆と豆乳のポタージュポ、ミ:金時豆の
ミネストローネ、ペ:ペースト
2.豆粉末試作、評価
材料
雪:
(味、香り)
粉
酵
豆粉入り蒸
豆スイート
処
処
しパン
ポテト
ハ
無
ほのかな豆
豆特有の渋
「ポ」きれいな白
甘味と渋みあ
の甘味、冷
み。渋みの
色で好適。
り。ぱさつき、
えるとぱさ
軽減要
A
スープ類
クッキー
その他
しっとり感あ
つく
り。
「 ド」
「 コロ」
には、要改善。
キッシュには
好適、応用性大
雪:
ハ
有
B
ほのかな豆
べたべた感
「コ」は良いが、
の甘味。
不適
「ポ」では苦みあ
パン状態に
り。薄茶不適
ならず
金:
C
ハ
有
気にならな
しっとり感
い程度のえ
あり、美味。 しっかり、豆の香
ぐみ、冷え
渋み
「 ポ 」「 ミ 」 風 味
り、味、紫色強。
てもしっと
不適
り感保持
「ペ」若干苦み、
舌触り良。お豆ス
ープに適
- 78 -
金:
マ
有
D
気にならな
渋み
「 ポ 」「 ミ 」 風 味
い程度のえ
しっか
ぐみ、べた
り、豆の香り、味、
つき感
紫色強。不適
「ぺ」若干苦み、
舌触り良。お豆ス
ープに適
金:
焙
E
ハ
金:
ハ
無
無
F
金:
ハ
無
G
コーヒー臭
香ばしさと
えぐみ軽減の反
い、豆の甘
甘味あり、
面焙煎臭。乳児向
味、健康的
美味
きどうか要検討
な美味しさ
「ペ」若干苦み、
あり、好適
舌触り良
気にならな
弾力少々
外観:無
い程度のえ
地、豆風味
ぐみ
は少
気にならな
えぐみ、弾
外観:粒々
い程度のえ
力少々
感、豆風味
ぐみ
金:
マ
有
H
気にならな
雪:
粉処
ハ
柔らかい
外観:無
い程度のえ
地、苦み、
ぐみ
えぐみ
3.豆粉末試作、評価
材料
強
(物性)
酵
豆粉入り
豆スイー
処
蒸しパン
トポテト
無
扱い、混ざ
扱い、混ざ
A
スープ類
クッキー
その他
「 ポ 」: お 湯 で
「 ド 」 扱
り具合良、 り具合良、 溶解、適度な粘
い、混ざり
性
具合良、
「 キ 」 扱
い、混ざり
具合良、
雪:
B
ハ
有
粘り強、弾
粘り強、ま
「 コ 」: 溶 解 容
力欠
とまりに
易 、 好 適 、
パンに不
くい。不適
「 ポ 」: 溶 解 難
適
易、シャバシャ
バした物性。不
適
- 79 -
金:
ハ
有
C
扱い、混ざ
「 コ 」: 溶 解 難
り具合良
易
で簡単
「 ポ 」: 溶 解 難
易、溶解後滑ら
か
「ペ」混ぜ具合
良
金:
ハ
有
D
べたつき
扱い、混ざ
「 コ 」、「 ミ 」:
感有り
り具合良
溶解難易、溶解
で簡単
後滑らか
「ペ」混ぜ具合
良
金:
焙、
E
ハ
無
扱い、混ざ
「 コ 」、「 ミ 」:
り具合良
溶解難易、溶解
で簡単
後滑らか
「ペ」混ぜ具合
良
金:
ハ
無
F
扱い、混ざ
生地のまと
り具合良
まりやや悪
で簡単。
い。柔軟性に
少々の弾
欠け、延ばし
力感
にくい。但
し、サクサク
感のある菓
子には、扱い
好適
金:
ハ
無
生地のまと
G
まりやや悪
い。柔軟性に
欠け、延ばし
にくい。
金:
H
マ
有
粘りあり、 扱い、混ざ
生地のまと
混合に
り具合良
まりやや悪
力要
で簡単、
い。柔軟性に
少々の弾
欠け、延ばし
力感
にくい。
- 80 -
参考2
豆粉を用いた試作品レシピ
試作者:こどもの城
材
料
試作品名
使 用
他の材料
豆 粉
豆 粉 入 り 蒸 A60g ホットケーキミックス 100g、卵
しパン
1/2 個、牛乳 100cc
乾燥ブルーベリー少々
B60g 同上
C60g 同上
D60g 同上
E60g 同上
F60g 同上
G60g 同上
H60g 同上
豆 ス イ ー ト A30g
ポテト
B30g
C20g
D20g
E20g
F20g
G20g
H20g
作
り
方
材 料 を 混 ぜ 合 わ せ アルミカップに 生 地
を流す。ブルーベリーを飾り、加
熱した蒸し器で5分くらい蒸す。
同上
同上
同上
同上
同上
同上
同上
サツマイモ 100g、牛乳 30g サツマイモは 皮 を む き 適 当 な 大 き さ に
砂糖 10g、卵黄少々
切り茹で、熱いうちにマッシュする。
豆粉と牛乳、砂糖を混ぜ食べやす
い大きさにまとめ卵黄をぬり、オー
ブンで5分くらい焼く。
同上
同上
サツマイモ 100g、牛乳 40g 同上
砂糖 10g、卵黄少々
同上
同上
同上
同上
同上
同上
同上
同上
同上
同上
豆粉ドーナ A
ッツ
100g
ホットケーキミックス 200g、卵 材料を混ぜ生地を作る。15分く
1 個 、 溶 か し ハ ゙ タ ー らい生地をねかせ、丸くまとめな
10g、牛 乳 適 宜 、揚 げ がら170℃の油で揚げる。
油適宜
豆粉入りキ A
ッシュ
100g
冷 凍 パイシート1枚、タマ ①パイシートを耐熱皿に敷きフォークで突
ネギ 1/2 個、マッシュルームス き空気穴をあける。②タマネギ・ハムを
ライス缶 70g、薄切りハム 千切りにする。③フライパンに油を熱
- 81 -
4 枚 、パセリみ じ ん 切
り ・塩 ・コショウ少 々 、a
(生クリーム 1/2 カップ、溶
き 卵 2 個 、豆 粉 、粉 チ
ーズ、大 さ じ 2 、塩 ・コ
ショウ少々)
してタマネギ、ハム、マッシュルームを炒め、
塩、コショウ、パセリを加える。④①の
皿に③の具を入れよく混ぜaを混
ぜる。200℃のオーブンに入れて 10 分、
170℃に温度を下げて 20 分焼く。
豆 粉 入 り コ A40g
ロッケ
ジャガイモ2個、タマネギ
みじん切り 1/2 個、
鶏ひき肉 100g、塩・コ
ショウ少 々 、小 麦 粉 、溶
き 卵 、パン粉 、揚 げ 油
適宜
①ジャガイモは皮をむいて茹で、マッシュ
す る 。 ② フライパンに 油 を 熱 し て タマネ
ギ、ひき肉を炒め、塩、コショウする。
③①と②、豆粉を混ぜ合わせ食べ
やすい大きさにまとめる。④小麦
粉、溶き卵、パン粉の順に衣をつけ
て 180℃の油で揚げる。
豆 コ ン ソ メ B5g
スープ
C5g
D5g
E5g
コンソメスープ 150cc、クルト コ ン ソ メ ス ー フ ゚ に 豆 粉 を 入 れ 沸 騰 さ せ
ン少々
る。食べる直前にクルトンを入れる。
同上
同上
同上
同上
同上
同上
試作者:ビ-ンスターク・スノー
材
料
試作品名
使 用
他の材料
豆 粉
白 い ん げ ん A20g 大豆飲料 50g、ホワイトソ
と大豆のホ
ース粉末 21g、お湯 209
ワイトポタ
g
ージュ
B20g 同上
金時豆と豆 C
乳 の ポ タ ー 21.8g
ジュ
E
21.8g
お湯 199.2g、大豆飲
料 70g、食塩・昆布エキ
ス・チキンエキス各 1g、タマネ
ギエキス・白ゴマペースト・
グラニュー糖各 2g
お湯 183.7g、大豆飲
料 82.5g、食塩・昆布
エキス・チキンエキス各 1g、タマ
- 82 -
作
り
方
豆粉とホワイトソースを混ぜる。大豆飲料
とお湯を加え混ぜる。混ぜながら
煮立たせる。300g になるよう水で
調整する。
同上
豆粉を温湯でよく攪拌する。その
他の原料を合わせて良く混合す
る。弱火で加熱して煮立たせる。
必要に応じてレトルトパウチ、フリーズドライ
に加工。
同上
ネ キ ゙ エ キ ス ・ 白 ゴ マ ヘ ゚ ー ス
ト・パンがゆ各 2g、グ
ラニュー糖 3g
金時豆のミ D
ネ ス ト ロ ー 21.8g
ネ
E
21.8g
クッキー
F60g
G60g
H60g
お湯 123.2g、トマトジュ 同上
ース 140g、食塩 1g、オリー
ブオイル・野 菜スープ各
3g、タマネギエキス・グラニュ
ー糖 各 2g、マッシュポテト
4g
お湯 119.2g、トマトジュ 同上
ース 140g、食塩 1g、オリー
ブオイル・グラニュー糖 各
3g、野菜スープ 6g、タマネ
ギエキス 2g、マッシュポテト
4g
有塩バター 100g、砂糖 原料を合わせてよく混合。冷蔵庫
80g、卵 黄 20g、薄 力 でねかし、延ばしたあと型抜き。
粉 140g
180℃のオーブンで約 10 分焼く。焼成
後、粗熱をとるため放冷。
同上
同上
同上
同上
試作者:キユーピー
材
試作品名
ペースト
使 用
豆 粉
C15g
D15g
料
作
他の材料
①タマネギ 15g、②クリー
ム加 工 品 10g・ファットス
プレッド 4.5g・植物油
脂 3.1g、③乳タンパク
1.8g・ 砂 糖 1.5g ・ 澱
粉 1g・酵母エキスパウダ
ー、 乾 燥 卵 白 少 量 ,
④卵黄油、⑤食塩、
香辛料、調味料、造
粘剤少量、清水
①タマネギ 12g、②クリー
- 83 -
り
方
①はペースト状に粉砕する。②、
④の油性原料を混合する。豆粉、
③、⑤の原料を混合する。すべて
の原料を均一に攪拌し、80℃達温
まで加熱する。レトルト袋に 75g 充填
し、120℃、30 分殺菌する。
同上
E20g
ム加 工 品 10g・ファットス
プレッド 4.5g・植物油
脂 3.1g、③乳タンパク
1.8g・ 砂 糖 1.5g ・ 澱
粉 1g・酵母エキスパウダ
ー、 乾 燥 卵 白 少 量 ,
④卵黄油、⑤食塩、
香辛料、調味料、造
粘剤少量、清水
①タマネギ 12g、②クリー 同上
ム加 工 品 10g・ファットス
プレッド 4.5g・植物油
脂 3.1g、③乳タンパク
2.5g・ 砂 糖 1.5g ・ 澱
粉 1g・酵母エキスパウダ
ー、 乾 燥 卵 白 少 量 ,
④卵黄油、⑤食塩、
香辛料、調味料、造
粘剤少量、清水
- 84 -
参考3
豆粉を素材とした加工食品の試作・評価
使 用
試作品名
試作品の評価等
豆 粉
豆粉入り蒸
A
素材の扱い、混ざり具合良好で簡単。風味はほのかに豆
しパン
の甘味がある。食感は冷えるとパサツキ硬くなる。しっ
とりさが欲しい。
B
素材の扱い、混ざり具合良好で簡単。混ぜている間に粘
りが強い。風味はほのかに豆の甘味がある。蒸しあがり
はすぐに弾力がなくしぼみパン状態にならない。食感は冷
えるとベタベタ感。モチのように粘りがある。味は悪くな
い。しっとりとしているのでスープなどがよい。
C
素材の扱い、混ざり具合良好。風味は豆らしい味、豆特
有のえぐ味は少々あるが気にならない。やや赤みがかり
滑らか、冷えてもしっとりしている。しっとり感は1~
2歳児には食べやすい。
D
素材の扱い、混ざり具合はべたつき感がある。風味は甘
味と少し豆特有のえぐ味がある。やや白く滑らか、冷え
てもしっとりしている。しっとり感は1~2歳児には食
べやすい。
E
素材の扱い、混ざり具合良好で簡単。風味はコーヒーの
ように香ばしく豆の甘味がある。最もパンらしく冷えて
もおいしい。健康的なおいしさ。実用感あり。
F
素材の扱い、混ざり具合良好で簡単。風味は甘味があり
えぐ味はない。冷えてもしっとりしている。
G
素材の扱い、混ざり具合良好で簡単。少々豆のえぐ味が
あるが気にならない。冷えると少々硬くなるがこれも気
になるほどではない。少しパサツキがある。
H
素材の扱い、混ざり具合は大変。かき混ぜるには粘りが
あり力がいる。風味は香ばしくえぐ味は感じられない。
できあがりはやや赤みがかり舌触りは滑らかでしっとり
している。冷えてもしっとりしている。
- 85 -
豆スイート
ポテト
豆コンソメ
スープ
A
素材の扱い、混ざり具合良好で簡単。風味は、豆の甘味
と渋みがある。食感は冷えても変わらない。豆特有の渋
みがなくなればよい。
B
素材の扱い、混ざり具合良好で簡単。粘りがありすぎて
まとまりにくい。豆の甘味があり味はよい。食感はベタベ
タしてスイートポテトにはなっていない。
C
Dとほぼ変わらない。違いは色が違うだけで味やしっと
りさの違いはない。
D
素材の扱い、混ざり具合良好で簡単。風味は豆の渋みを
少し感じる程度。餅のように粘り気が多い。味は悪くな
い。
E
素材の扱い、混ざり具合良好で簡単。風味はシナモンスイートポ
テトのような香ばしさと甘味がありおいしい。苦味はない。
しっとりしている。
F
素材の扱い、混ざり具合良好で簡単。風味は甘くてしっ
とりしている。弾力が少々あり。
G
素材の扱い、混ざり具合良好で簡単。風味はえぐ味があ
る。弾力が少々あり。できあがりはしっとりしている。
H
素材の扱い、混ざり具合良好で簡単。硬さはやわらかい。
味は香ばしくおいしい。
B
液体はダマにならず溶けやすい。風味はしっかり豆の香
りがする。食感は普通のコンソメスープと変わらない。豆の苦
み、渋みはないが豆の香りは生きている。スープ系によい。
C
D
E
白いんげん
と大豆のホ
液体はダマになりやすい。風味はしっかり豆の香りがす
る。食感は普通のコンソメスープと変わらない。豆の苦み、渋
みはない。どれも違いはあまりないが、色に若干の違い
がある。
A
お湯を加えて混ぜれば溶解する。きれいな白色。やや青
臭さがある。食感にザラツキがあり、適度な粘度がある。
- 86 -
ワイトポタ
ージュ
金時豆と豆
乳のポター
ジュ
金時豆のミ
ネストロー
ネ
ペースト
ポタージュには適した素材。青臭さはマスキング可能な範囲。
B
お湯を加えるとダマになり混ぜてもなかなか溶解しな
い。薄茶色。青臭さはないが後味に苦みがあった。ザラ
ツキなく滑らか。薄茶で、シャバシャバした物性はポタ
ージュ向きではない。
C
お湯に溶解せずダマを形成し溶解に時間を要する。紫色
が強く食欲が湧く色ではない。舌触りは滑らかで良好。
豆の味が強い。粘性は強い。造粒するなどの物理的加工
を施した方が使い勝手がよい。ケーキやクッキー、クレ
ープなどにはよい。
E
お湯に溶解せずダマを形成し溶解に時間を要する。色は
茶色系でもう少し色が薄い方が好まれる。舌触りは滑ら
かで良好。焙煎で豆特有のえぐみや苦味はかなり軽減。
粘性は強い。焙煎の香りを乳児が好むかどうかは検討の
余地あり。ケーキやクッキー、クレープなどにはよい。
D
お湯に溶解せずダマを形成し溶解に時間を要する。紫色
が強く食欲が湧く色ではない。舌触りは滑らかで良好。
豆の味が強いがCより弱い。粘性は強いがCより弱い。
造粒するなどの物理的加工を施した方が使い勝手がよ
い。ケーキやクッキー、クレープなどにはよい。
E
お湯に溶解せずダマを形成し溶解に時間を要する。色は
茶色系でもう少し色が薄い方が好まれる。舌触りは滑ら
かで良好。焙煎で豆特有のえぐみや苦味はかなり軽減。
粘性は強い。焙煎の香りを乳児が好むかどうかは検討の
余地あり。ケーキやクッキー、クレープなどにはよい。
C
他の材料との混ぜ合わせ具合は良好。風味はやや苦い。
食感は舌触りは良好。お豆スープに適している。
D
他の材料との混ぜ合わせ具合は良好。風味はやや苦い。
食感は舌触りは良好。お豆スープに適している。
E
他の材料との混ぜ合わせ具合は良好。風味、舌触りは良
好。お豆スープに適している。
- 87 -
クッキー
F
小麦粉と比較すると生地のまとまりがやや悪い。生地の
柔軟性に欠け、延ばしにくい。外観は無地、豆風味は弱
く、食感はサクサク感があり、ややねっとりしているが評価
は高かった。サクサク感のある菓子原料としては扱いやすい
素材。
G
小麦粉と比較すると生地のまとまりがやや悪い。生地の
柔軟性に欠け、延ばしにくい。外観は粒々感あり、豆風
味は強く好ましくなかった。食感はサクサク感があり、後味
ねっとりしている。サクサク感のある菓子原料としては扱い
やすい素材。
H
小麦粉と比較すると生地のまとまりがやや悪い。生地の
柔軟性に欠け、延ばしにくい。外観は無地、豆風味はな
いが苦味、えぐ味があり好ましくなかった。サクサク感があ
り、ややねっとりしている。サクサク感のある菓子原料とし
ては扱いやすい素材。
豆粉ドーナ
ッツ
A
素材の扱い、混ざり具合良好で簡単。風味は、豆の甘味
と渋みがある。食感はぱさついた感じ。ぱさつき感の改
善が必要。
豆粉入りキ
ッシュ
A
混ざり具合良好で簡単。普通のキッシュよりしっとりし
ている。豆独特の風味は感じられた。オムレツ等に応用でき
る。豆の風味苦手ならカレーパウダーなどで工夫すると良い。
豆粉入りコ
ロッケ
A
普通のコロッケに比べ、ぱさつき、しっとりと重い感じ。味
は豆の風味がある。ぱさつき感や冷めた後のしっとり感
が防げたらよい。
- 88 -
4)豆新素材の商品性、利用目的の明確化
①商品性の整理
ア.食品の栄養価値と向上、改善
(製品の食物繊維質の増大、タンパク質栄養価の改善、低アレルゲン化への貢献)
インゲン豆の最も大きな栄養価の特徴は食物繊維含量が高いということである。本事
業では、金時及び手亡のハンマーミル処理粉と酵素処理粉での食物繊維含量の比較を行
うとともに、粉体食素材として有名なきな粉及び米粉との比較を行った。その結果、金
時及び手亡における食物繊維含量(不溶性及び水溶性とも)は、粉体処理方法の如何に
関わらず高い値を示した(ハンマーミル処理及び酵素処理の間に差異はみられない)。そ
の他の栄養成分については、低脂肪でタンパク質及び炭水化物含量が高く、ミネラルも
バランス良く含んでいることから、きな粉や米粉と比較しても遜色のない、良質の食材
であることが伺えた。
また、金時及び手亡に含まれるタンパク質に注目したところ、ハンマーミル粉ではフ
ァゼオリン、レクチン、10~16kDa 低分子タンパク質由来とみられるバンドが検出され
たが、酵素処理粉ではファゼオリンは顕著に減少した。また、様々な加工食品(クッキ
ー、カップケーキ等)におけるタンパク質の挙動を観察した結果からも同様のパターン
が示された。特に、加工工程での加熱時間が長くなることにより、低分子側に多くのバ
ンドが検出された(カップケーキよりクッキー)。以上のことから、酵素処理を行った粉
末の方が、栄養吸収性あるいは安全性(ファゼオリンタンパク質の消失)、低アレルゲン
性(アレルギーフリー)が大いに期待できると考えられる。また、ハンマーミル粉末に
おいても、加工工程における加熱時間が長ければ(クッキー)、難消化性 20kDa タンパ
ク質は検出されなくなる可能性が示唆された。
イ.加工適性の向上
金時及び手亡、どちらにおいても豆の品種の違いによる加工適性はみられなかった。
それよりも、加工方法の違いによる加工適性の違いが大きく現れた。2種の豆について、
ハンマーミルを用いた粉末化とタンパク質分解酵素を用いた酵素処理粉末について評価
を実施した。その結果、素材の特性については 2 章(図30、32、33)に示された
ように、酵素処理をすることにより加熱による粘度はほとんど消失する。すなわち、保
水性、膨化あるいはデンプン糊化を期待するような加工食品に利用する場合はハンマー
ミル処理の粉末が適していると考えられる。また、水菓子等のような滑らかさあるいは
物性を生かさない加工食品に利用する場合は酵素処理粉末が適していると考えられる。
具体的に加工食品へのそれぞれの利用用途の選択目安を図59に示した。
ウ.他の食材との高い共存性
これまで、豆というのはそのままの形態での利用がほとんどであった。そのため、豆
の応用といっても、その利用範囲は限られていたというのが現実である。しかし、一部
小豆のように餡という形態があり、菓子分野では様々な用途に利用されてきた実績があ
る。これらのことから、豆を粉末化することにより、様々な食材への利用が可能となる
形態を提供することにより、さらにその使用用途は格段に広がると考えられる。本報告
書では、様々な処理をほどこすことにより、様々な物理的特性を持った豆粉末を得るこ
- 89 -
とができた。これにより、幅広い加工食品への応用が期待できる結果が得られる。特に、
ハンマーミル処理及び酵素処理粉末の2種類を揃えることにより、パンからアイスクリ
ームまで、主食からお菓子、介護食・乳児食から料理食材まで、その利用用途の範囲は
格段に広がったと考える(図59)。
②利用目的の明確化と品質条件
ア.栄養強化食品(介護食、乳児食)
この目的に合致する豆新素材には高度の安全性、低アレルゲン(アレルギーフリー)
が期待される。そういった面からは酵素処理粉末がその目的に合致する。そこで、金時
豆の酵素処理粉末を用いて、乳児食及び介護食の試作を試みた。豆粉粥、豆粉クッキー、
豆粉ミルクなどを、豆粉の添加量の調製により、様々なパターンの試作がなされた。そ
の結果、乳児にとっては未経験の味わいを経験させることになり、高齢者にとっては懐
かしい味を経験させることが可能となった。すなわち、これまでの素材の単調さだけに
とどまらず新しい変化を与えることが可能となるとともに、特に乳児にとっては豆の味
を知る良い経験になるであろう。
イ.簡単・ヘルシー食材(保育園、学校給食)
乾物の豆を予備浸水して、軟らかくするまで加熱するため、少なくとも数時間を要す
る調理・加熱作業が必要である。それが、豆新素材を利用すれば、軟らかく煮るまでの
時間はカットされ、調理時間の短縮化が図られるため、短時間ではできないといったデ
ザートも、給食に導入できる。家で食べなれていない豆粉を咀嚼でき難い幼児・学童に
も、好きなデザートを通して、豆の味に慣れさせることができる。ハンマーミル処理の
豆粉なら、ミネラル・ビタミン類・食物繊維の補充にもなり、高栄養化に通じる。豆粉
をソースに利用するグラタン、豆粉スープ、水羊羹、豆粉かるかん(和製スチームケー
キ)、豆粉クッキー等が利用可能であろう。
ウ.補助食材(料理食材、製菓・製パン)
豆粉は食べなれていなくても、食べる経験を重ねることで、食べ易くなるようである。
また、豆が好きな大人にとっては、豆粉による豆の風味が嗜好性を喚起する一因にもな
る。また、ハンマーミル処理に比べ、酵素処理は吸水膨潤度が高いので、小麦粉と豆粉
を併用した生地では、加水量を多めに使わないと生地がまとまり難い調理・加工特性が
認められた。主食用には、製パン用として、酵素処理は膨化しにくいが、ドイツパンの
ような風味があり、ハンマーミル処理は添加量にもよるが、膨化率は強力粉のみと遜色
がないが、幾分乾いた感触の食パンとなる。赤飯風、粥、パスタ等も副材料として豆粉
を利用可能である。主菜・副菜への利用では前述のイで述べたようなグラタン、豆粉ス
ープ、豆粉カレー系(カレールーの替わりに豆粉とカレー粉の使用による)は期待でき
る。また、製菓用には、和洋中国の菓子に大いに利用可能である。氷菓として、アイス
クリーム(黒砂糖入り、ハンマー処理豆粉が好まれる傾向)
、焼き菓子としては、シフォ
ンケーキ(ハンマー処理豆粉は、100%豆粉で、酵素処理は薄力粉の 50%置換する範囲
で良好なケーキが得られ)、スポンジケーキでは、ハンマー処理豆粉を薄力粉の 50%使
- 90 -
うと膨化度、テクスチャーなどの食味は薄力粉のみのケーキと遜色がなく、バターより
も植物性ショートニングの方が好まれた。クッキーもいろいろな配合で可能であり、バ
ターよりショートニングを入れた方が豆の風味を損なわない。蒸し菓子としては上新粉
と山芋を利用した豆粉かるかん、蒸し羊羹も味わい深い。
- 91 -
図59
調理系教職員・同卒業研究生からなる熟練パネルによる評価の概略
- 92 -
執筆者一覧
執筆者
五十部誠一郎
所
執筆項目
食品工学研究領域製造工学ユニット長
1)の①のア及びウ
(独)農業・食品産業技術総合研究機構食品総合 1)の①のイ
研究所
門間美千子
等
(独)農業・食品産業技術総合研究機構食品総合 全体調整・取りまとめ
研究所
等々力節子
属
食品安全研究領域上席研究員
(独)農業・食品産業技術総合研究機構食品総合 1)の③及び2)の③
研究所
食品素材科学研究領域蛋白質素材ユニ
ット長
大庭
潔
(財)十勝圏振興機構食品加工技術センター
1)の②、④及び4)
研究開発課長
佐々木香子
(財)十勝圏振興機構食品加工技術センター
研究開発課
2)の①及び②
研究員
安原安代
女子栄養大学教授
太田百合子
こどもの城小児保健部
小林直道
ビーンスターク・スノー株式会社
調理科学研究室
管理栄養士
3)
参考資料
参考資料
開発部課長
飛田昌男
キユーピー株式会社研究所商品開発センター
調味料グループリーダー
- 93 -
参考資料
豆類食材開発研究会及び豆類食材研究開発グループ検討委員会 委員名簿(現)
○豆類食材開発研究会委員名簿
荒牧麻子
日本フードコーディネーター協会理事
五十部誠一郎
(独)農業・食品産業技術総合研究機構食品総合研究所
食品工学研究領域製造工学ユニット長
興十郎
(株)柿安本店関東支社 HMR 営業部総料理長
菊池 幸
全国調理食品工業協同組合理事長
小杉直輝
(有)小杉食品技術研究所代表取締役
小林登史夫
宮城大学食産業学部長
本田浩次(座長)(社)日本酪農乳業協会会長
村田禮三
スペイン料理すぺいん市場オーナーシェフ
山加一郎
ホクレン販売本部農産販売室農産課長
山田康弘
カネハツ食品株式会社生産本部技術部長
○豆類食材研究開発グループ検討委員会委員名簿
五十部誠一郎
(独)農業・食品産業技術総合研究機構食品総合研究所
食品工学研究領域製造工学ユニット長
大庭 潔
(財)十勝圏振興機構食品加工技術センター研究開発課長
加藤 淳
北海道立十勝農業試験場生産研究部主任研究員
川合信行
ビーンスターク・スノー株式会社開発部長
巷野悟郎
日本保育園保健協議会会長
等々力節子
(独)農業・食品産業技術総合研究機構食品総合研究所
食品安全研究領域上席研究員
飛田昌男
キユーピー株式会社研究所商品開発センター
調味料グループリーダー
門間美千子
(独)農業・食品産業技術総合研究機構食品総合研究所
食品素材科学研究領域蛋白質素材ユニット長
吉田企世子
女子栄養大学名誉教授
- 94 -
豆類食材開発研究会について
1
研究会の目的
今後における豆類の需要拡大を図るため、一次加工された調理素材を利用し
た豆料理・加工製品の開発・普及方向について検討を行う。
2 研究会の検討項目
(1)豆類を粉体、ペースト、水煮、蒸し煮等に一次加工し、調理素材として
利用していく上での需要者のニーズについて
(2)一次加工製品の開発に当たって解決すべき技術的な課題について
(3)一次加工した調理素材を活用して豆類の消費拡大を図る際に留意すべき
点について
(4)豆類食材研究開発グループ検討委員会に対するアドバイス
3
研究会委員名簿
荒牧麻子
五十部誠一郎
岡本 隆
興十郎
菊池 幸
小杉直輝
小林登史夫
本田浩次(座長)
村田禮三
山本開造
日本フードコーディネーター協会理事
(独)食品総合研究所製造工学研究室長
カネハツ食品株式会社生産本部技術部長
(株)柿安本店関東支社 HMR 営業部総料理長
全国調理食品工業協同組合理事長
(有)小杉食品技術研究所代表取締役
創価大学工学部教授(元食品総合研究所所長)
前地方競馬全国協会副会長
スペイン料理すぺいん市場オーナーシェフ
ホクレン販売本部農産販売室農産課長
4
研究会の開催計画
年3回程度開催
5
豆類食材研究開発グループ検討委員会の設置
新しい豆類食材の研究開発を進めるため、平成 15 年度においては、豆類食材
研究開発グループ検討委員会(豆粉等加工利用技術)を設置するとともに、プ
ロジェクト研究を実施する。
- 95 -
研究開発については、
(独)食品総合研究所及び(財)十勝圏振興機構食品加
工技術センターに委託して実施する。
6
豆類食材研究開発グループ検討委員会(豆粉等加工利用技術)構成員名簿
五十部誠一郎
大庭 潔
加藤 淳
巷野悟郎
鈴木節子
島谷雅治
門間美千子
矢野幸男
吉田企世子
7
(独)食品総合研究所製造工学研究室長
(財)十勝圏振興機構食品加工技術センター主任研究員
北海道立中央農業試験場農産品質科長
日本保育園保健協議会会長
(独)食品総合研究所電磁波情報工学研究室主任研究員
ビーンスターク・スノー株式会社開発部長
(独)食品総合研究所タンパク質素材研究室長
伊藤ハム株式会社ヘルスサイエンス事業部室長
(日本介護食協議会関係者)
女子栄養大学栄養学部栄養学科教授
検討委員会の開催計画
プロジェクト研究の推進に沿って年2~3回程度検討会を開催
- 96 -
豆類食材研究開発グループ検討委員会について
1
討委員会の設置
新しい豆類食材の研究開発を進めるための豆類食材開発研究会の検討を具体
化するため、豆類食材研究開発グループ検討委員会を設置するとともに、プロ
ジェクト研究を実施する。平成 15 年度においては、豆粉等加工利用技術に関す
る検討及び研究開発を行う。
また、研究開発については、
(独)食品総合研究所及び(財)十勝圏振興機構
食品加工技術センターに委託して実施する。
2 検討委員会の検討項目
(1)プロジェクト研究の実施内容について
(2)粉等を利用した豆食の需要開発について
3
検討委員会委員名簿
五十部誠一郎
大庭 潔
加藤 淳
巷野悟郎
鈴木節子
島谷雅治
門間美千子
矢野幸男
吉田企世子
4
(独)食品総合研究所製造工学研究室長
(財)十勝圏振興機構食品加工技術センター主任研究員
北海道立中央農業試験場農産品質科長
日本保育園保健協議会会長
(独)食品総合研究所電磁波情報工学研究室主任研究員
ビーンスターク・スノー株式会社開発部長
(独)食品総合研究所タンパク質素材研究室長
伊藤ハム株式会社ヘルスサイエンス事業部室長
(日本介護食協議会関係者)
女子栄養大学栄養学部栄養学科教授
検討委員会の開催計画
プロジェクト研究の推進状況に沿って年2~3回程度開催
- 97 -
豆類食材開発研究会等の開催状況
平成15年
議
4月24日(木)
豆類食材開発研究会
題
・豆類食材開発研究会の発足について
・第39期豆類食材開発利用推進事業の実施内容について
・食品総合研究所プロジェクト研究実施計画について
平成15年
議
6月
6日(金)
豆類食材研究開発グループ検討委員会
題
・豆類食材研究開発グループ検討委員会の発足について
・豆類食材開発研究会の発足について
・豆類食材開発プロジェクト研究実施計画について
平成15年
9月
8日(月)
豆類食材開発研究会及び豆類食材研究開発グループ検討
委員会の合同委員会(以下「合同委員会」という。)
議
題
・第1回豆類食材研究開発グループ検討委員会検討結果の概要
・豆類食材開発プロジェクト研究の平成15年度の予備試験の結果報告
・平成16年度における研究開発の方向について
平成16年
議
6月10日(木)
合同委員会
題
・豆類食材開発プロジェクト研究の平成15年度の成果について
・平成16年度の事業計画について
平成17年
7月25日(月)
合同委員会
・豆類食材開発プロジェクト研究の平成16年度の成果について
・平成17年度の事業計画について
平成18年
9月
1日(金)
合同委員会
・豆類食材開発プロジェクト研究の平成17年度の成果について
・豆類食材開発プロジェクト研究の取りまとめについて
- 98 -
豆類食材開発利用推進に関する研究内容
(独)食 品 総 合 研 究 所
15 年度
事業目的
雑豆の調理素材としての利用拡大を図るため、豆の前処理を
(財)十 勝 圏 振 興 機 構
雑豆類の調理素材としての利用拡大を図るため、粉末化物や
含めた粉末処理法の検討、粉末化物の品質・加工適性評価等を 豆ペーストを用いての加工食品の試作・評価等により利用用途
行い、新規調理素材としての粉末化素材の特性を明らかにし、 の開発を行う。
利用分野について提案することを目的とする。
事業内容
白いんげん豆の新規調理素材としての粉末化素材の特性を
①豆の粉末化物を用いての加工食品の試作・評価及び酵素に
よる物性改良
明らかにするため、次の研究を実施する。
①豆の粉末化処理後の微生物安全性確保のための殺菌処理
②豆ペースト及びそれを用いての加工食品の試作・評価及び
②各種粉末処理法の検討及び粉砕物の評価
食味の改善
③粉末化物の品質・加工適性の評価及び機能性成分の評価
④粉末化物の食品試作化及びその評価
16 年度
委託額
3,500千円
事業目的
同上
2,500千円
新たに大正金時を用いた食材開発を実施する。豆本来の形態
ではなく、粉末あるいはペースト状の食材を開発するとともに、
様々な食品への応用を検討する。また、手亡及び大正金時につ
いて調理・栄養特性や経済性を踏まえて加工食品の用途の絞り
込みを行う。
事業内容
いんげん豆の新規調理素材としての粉末化素材の特性を明
らかにするため、次の研究を実施する。
大正金時
①豆の粉末化処理後、物性の評価及びそれを用いた加工食品
①豆の粉末化処理後の微生物安全性確保のための殺菌処理
の試作・評価
②各種粉末処理法の検討及び粉砕物の評価
②ペーストの試作後のその素材についての物性の評価及び加
③粉末化物の品質・加工適性の評価及び機能性成分の評価
工食品の試作・評価
④粉末化物の食品試作化及びその評価(食総研及び女子栄養 手亡及び大正金時を使用
①得られた素材の食物繊維、主要ミネラル、ポリフェノール
大学等関連機関)
含量についての定量
②得られた素材についての用途の絞り込みの実施
17 年度
委託額
3,500千円
2,500千円
事業目的
同上
同上
事業内容
手亡・金時豆などの雑豆の新規調理素材としての粉末化素
①実用化規模でのペースト状豆素材(酵素処理)の処理方法
材の特性を明らかにし、利用分野について提案するために次
及びコスト試算
の研究を実施する。
②豆新素材の特性解明取りまとめ
①粉末化処理の最適化と経済的評価、試料調整
③ペースト状豆新素材(酵素処理)の改良
②粉末化物及び素材活用食品の加工適性の評価、機能性成分
④ペースト状豆新素材及び豆直接粉末の加工適性試験
の評価
女子栄養大学実施内容(再委託)
③粉末からの食品化とその評価のための試料調整
豆新素材の調理科学的研究(豆新素材を利用した食品化)
④雑豆の粉末素材化についての処理法や特性、利用法につい
①日常食での試作、評価(調製、嗜好性) ②調理法毎の豆
ての総括
新素材の評価、利用条件(使用条件)の確定 ③簡単、ヘル
シー食材の検討 ④有用用途の絞り込みと具体的提案
委託額
1,600千円
4,400千円
- 99 -
約 20 円
製品 g
品
一般上級
約 10 円
通販商品
約3円
750 円
約
特殊食材
イナゴ豆
780 円
~
カーそば
粉一覧
(2002
年 11 月)
白花豆 3.3 ~4.3
円/g
通販商品
全国メー
約1円
2000 円
1000
石臼
の会)
十勝豆パウダー
約 3.3 円
約 2.6 円~
新
1000 円
食品
食材
旧
そば
500g
1kg
そば粉
金時豆
調べ
コンビニ
約1円
150 円
約
一般食材
小麦他
粉 150g
唐揚げ
コンビニ
約 0.5 円
90 円
約
一般食材
馬鈴薯
180g
片栗粉
性、吸水性改良) 調べ
通販商品(保水
約 0.8 円
約 0.7 ~
約 7140 円
約 3990 円
パン、製菓)
業務用食材(製
大豆
(丸ごと)
5kg,10kg
大豆粉末
調べ
コンビニ
約 0.19 円
190 円
約
一般食材
小麦
1kg
小麦粉
京)2月
統計(東
小売物価
約 0.19 円
190 円
約
一般食材
砂糖
1kg
砂糖
U
- 100 -
実用化規模 :225円/kg、原料代を含めて447円/kg(減価償却、利益は含まない)
外部業者への粉体処理(聞き取り) 1トン処理で450円/kg、2トン処理350円/kg、(十勝圏振興センター) <マスコロイダー処理による乾燥粉末>
U
参考 報告書記載の豆粉体(末)処理コスト:(食品総合研究所での粉体処理) 粉末処理コスト(電気代のみ)1.7 円/kg, 含粗粉砕処理コスト3円/kg)
注 上記商品の価格は、あくまでも事例調査である。
その他
価格
通販商品
1000 円
3600 円
格
当たり
約
約
販売価
嗜好品
健康食品
用途
茶葉
鉈豆
粉 250g
300g
ナゴ豆)
100g
鉈 豆 粉
180g
金時豆パウダー
Carob( イ
お茶
薬膳刀豆
各種粉末製品価格(降順)
原料
商品
参考
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