...

2013年1月号 Nissan North America社

by user

on
Category: Documents
20

views

Report

Comments

Transcript

2013年1月号 Nissan North America社
シリーズ
米国拠点のキーパーソンに聞く
グローバル時代を生きる多様性マネジメント
新興国台頭による市場拡大、国境を越えたパートナーシップ、働き方の多様化、マイノリティの登用など、
多くの企業はダイバーシティ(多様性)に富んだ企業環境におかれている。本シリーズでは、各社米国拠点
のキーパーソンへのインタビューを通じ、多様性に対するマネジメントの考え方や取り組みについて、現地
での貴重な体験談等を交えて紹介する。
【第 1 回】
Nissan North America社
クロスファンクショナルチームこそ日産の強み
本シリーズの第1回目となる今回は、Nissan Americas という多様性の高い複数の市場を統括し、2011年に
はAutomotive News誌より、
“2011 Automotive News All-Stars”にも選ばれている、ビル・クルーガー氏に
お話を伺った。
日産はリバイバルプランが非常に有名です。そ
の中では特に、クロスファンクショナルチームに
フォーカスしたと聞いています。クロスファンク
ショナルチームは日産にとってどれほど重要な位
置づけなのですか?
クルーガー:生命線と言えるほど必要不可欠なも
のです。アメリカだけでなく、グローバル市場に
おける日産の競合優位性は、部門間の障壁を打ち
破り、クロスファンクショナルに協業していくこ
ビル・クルーガー氏
William J. Krueger
Vice Chairman, Nissan Americas
とで、透明性が向上されるところにあります。
米国本社は2006年にここフランクリンに移動し
たのですが、西海岸からセールス&マーケティン
グ部門すべてを米国本社に集約したことで、さら
クルーガー氏は、ウィスコンシン州マーケ
ット大学にて電子工学とコンピュータサイエ
ンスを学んだ後、イリノイ州ノースウェスタ
ン大学の大学院にてMBA、及び技術管理修士
号を取得。
ハーレー・ダビッドソン、GMのジェーンズ
ビル工場(ウィスコンシン州)での経営職を
歴任後、米国トヨタのジョージタウン工場(ケ
ンタッキー州)でジェネラルマネージャーを
経て、2005年に米国日産に入社。現在、アメ
リカ、カナダ、メキシコ、ブラジル、そして
ラテンアメリカとカリブ諸国を統括する会社
の副会長を務める。
その他、アトランタ連邦準備銀行ナッシュ
ビル支部の理事長や、米国赤十字ナッシュビ
ル支部、セカンド・ハーベスト・フードバンク・
オブ・ミドルテネシーの役員理事も兼任して
いる。
にクロスファンクショナルチームで協業する機会
が増えました。そのおかげで、部門間における透
明性が向上し、情報共有、事業のスピードが確実
に上がりました。
人種や文化はもちろん、部署やタイトル、バッ
クグラウンドなど、多様性に富んだ人々で構成さ
れるクロスファンクショナルチームで協業してい
ると、さまざまな意見の対立も多々起こりうると
思います。そのような場面に直面した際に、チー
ムをコンセンサスに導くための成功の秘訣はなん
でしょうか。
クルーガー:クロスファンクショナルチームによ
る協業は、
「障壁」ではなく、「機会」である、と
捉えています。ですから私自身は、対立という概
念はあまり持たないようにしています。多様な意
8
JAMAGAZINE 2013. January
.6]/1]ȷɪĘȺ,glbb6
/0-/0-/7/280/
シリーズ:グローバル時代を生きる多様性マネジメント
見をぶつけ合うことは機会なのです。そのため私
すし、また、年間のパフォーマンス評価の際にも
がチームメンバーに常々伝えていることは、より
重要視している点です。パフォーマンス評価では
透明であることを心がけながらクロスファンクシ
10の評価基準に基づいて、この日産があるべき姿、
ョナルチームで協業することで、より強固な解決
「Nissan Way」をいかに体現できているかを判断
策やコンセンサスを導き出すことができる、とい
し、フィードバックしています。その評価基準の
うことです。それがチーム全体の共通のゴール、
中には、「クロスカルチャー」、「クロスファンク
つまり市場での競争に勝つこと、の達成に繋がる
ショナル」の要素が含まれています。ですからあ
のです。
る社員を評価する際、第一に、その人物が「クロ
私が日産に入った当初は、まだ各部門は地域的
スカルチャー」、そして
「クロスファンクショナル」
にもバラバラでしたので、対立は日常的に見られ
を体現しているか、という点を重要視します。あ
ていました。しかし部門を越えて人々を集め、対
るいは、自分自身の機能や国・文化に対して内向
立の要因を分解し、対立に使われていたエネルギ
きにフォーカスしすぎていないかどうか、
または、
ーを外に向けて、つまり市場に向けて使っていく
会社内のある一部分にだけ目を向けがちな傾向に
ことで、より高い結果を達成することができるの
ないかどうか、チェックもします。日産社員全員
です。
に対して、もっと包括的な視野を持ってもらいた
多様性に富んだクロスファンクショナルチーム
いのです。
が対立を超えて機能し、さらにもう一歩先のハイ
日産は事業展開地域がグローバルであることは
パフォーマンスチームへと育っていくためには何
もちろんのこと、ルノーとの提携やクロスファン
が必要なのでしょうか。
クショナルチームなど、さまざまな文化的背景を
クルーガー:チームメンバー全員が問題解決のマ
超えてプロジェクトを進めていく環境にありま
インドを持つことです。そしてプロジェクトを評
す。そのような多様性を生かして生産性を上げて
価する際に、「Nissan Way」が問題解決手法の中
いけるチームを率いる「グローバルリーダー」と
に根づいているかを監督し、私が自ら、すべての
はどのような人物である、と定義されますか?
地域及びチームのプレゼンテーションをレビュー
クルーガー:まず、異文化について聴く耳を持ち、
しています。そしてその機会を活用して、チーム
学ぶことができるようなオープンな姿勢を持って
メンバーたちがさらに深く掘り下げて問題解決が
いる人物だと思います。米州(北米及び中南米地
できるようコーチングし、教育し、そして挑戦を
域)内だけでも、北部と南部、といったような多
投げかけています。国内のみならず、グローバル
様性が見られます。また、市場での地位にも多様
全体で水平的にベストプラクティスを共有するた
性が見られます。例えばメキシコでは、わが社は
めにも、このクロスファンクショナルチームは役
市場リーダーシップの地位を確立しています。40
立っています。
ヵ月間にわたり、自動車販売台数ナンバーワンを
「Nissan Way」とはどのようなものですか?
クルーガー:「Nissan Way」には、日産のあるべ
き姿を示す5つの心構えと5つの行動があります。
それは精神性に繋がるもので、日産という企業と
してのビジョン・ミッションを達成するための道
しるべ、すなわち、社員一人ひとりがポテンシャ
ルを開花させることができるよう、日々の業務で
実践すべき行動指針なのです。この精神性は、新
入社員が入社すると必ず研修で伝えていることで
テネシー州フランクリンにあるNissan Americas
JAMAGAZINE 2013. January
.6]/1]ȷɪĘȺ,glbb7
9
/0-/0-/7/280/
達成してきました。日本車ブランドだけではあり
クルーガー:その通りです。
ません、全自動車ブランドの販売においてのナン
顧客ニーズの多様性にも直面していると思います
バーワンです。ブラジル市場ではわれわれは参入
が、グローバルで一貫した日産ブランドを伝えてい
してまだ日が浅く、比較的新しい、新興自動車ブ
きながらも、同時に異なる顧客ニーズに応えていく
ランドという立ち位置です。アメリカでは、長年
にはどのようなアプローチを取っていますか。
事業展開してきており、生産量も多く、安定的で
クルーガー:日産の全社的なブランドメッセージ
すが、成長計画もまだまだ打ち出していく余地は
は、「イノベーション」です。この全体的なブラ
あります。ですから、「グローバルリーダー」と
ンドメッセージの下に、それぞれの国ごとの環境
言った際、メキシコだけを考えたり、ブラジルだ
に合わせてブランド戦略を適応させます。
け、カナダだけを考えるのではなく、異なる性質
アメリカ市場では、いかにして顧客の日産ブラ
の市場を包括的に視野に入れたうえで、ベストプ
ンド体験を向上させるか、というイノベーション
ラクティスを他の地域とも水平に共有していくこ
にフォーカスし、これをNissan Power88にも反
とが大切です。
映させています。日産ブランド体験とは、ハード
グローバルに見た際、われわれは大きく分けて
ウェアとソフトウェアの両方に着目したもので
3つの市場地域を持っています。日本・中国とい
す。ハードウェアとはつまり自動車、ソフトウェ
う主要市場を含むアジア地域、アフリカ・中東・
アとは、セールスやサービスを通した体験のこと
インド・ヨーロッパ地域、そして米州です。です
です。
から、米州という一地域内でも南北のコラボレー
しかしアメリカ国内だけを取ってみても、西海
ションを拡大すると同時に、他のグローバル地域
岸と北東部はまったくマーケットが違いますし、
ともコネクトしながら、どんな市場機会があり、
南部、北部、でも大きく異なります。異なる車種、
どのようにそれを獲得できるのか、知識共有する
リースなのかローンなのか、あるいはキャッシュ
のです。日産ではすべての機能において、なんら
ベースなのか、というようなファイナンスの仕方
かのグローバル性を持ち合わせています。われわ
も地域によって異なります。例えば、北東部はリ
れの中長期計画でも、グローバル性がいくつかの
ースが中心です。テキサスを中心とした南部∼湾
柱の中枢に反映されています。
岸部はトラック市場です。西海岸、特にカリフォ
Nissan Power 88(日産の新中期経営計画)で
ルニアはまたまったく違った性質が見られます。
すね。
このように、一国内でも多くのマーケットが存
クルーガー:そうです。例えば、ものづくりやセ
在しますから、具体的な手法については、一国を
ールス&マーケティング、セールスパワー、ブラ
更に地域ごとの小集団に分けてアプローチします。
ンドパワーなどの柱がありますが、それぞれの目
日産のロゴにもあるキャッチコピーは、
「SHIFT_」
的を達成するためには、自身の地域内だけを見て
です。どのような意味が込められていますか。
いてはいけません。地域を越えて、グローバルに
クルーガー:現時点での意味合いは、
「われわれ
課題やベストプラクティスを共有することが必須
がどこに向かってシフトしようとしているか」、
です。そして機能ごとにも、グローバルかつ密接
です。そしてそれを表現するならば、
「SHIFT_
にコミュニケーションをし、コラボレーションし
Innovation for all」となるでしょう。この意味合
ていかなければいけないのです。
いはすべての新車に反映されていますが、まさに
つまり全社的なNissan Power88達成において
イノベーションを代表する最新の代表車といえ
も、国籍、人種、地域、文化、機能などを超えた
ば、
「日産リーフ」です。非常に革新的な商品で
多様性をプラスの力に変える、クロスファンクシ
あり、今までに類を見ない、ゼロ・エミッション
ョナル性が功を奏するのですね。
車のリーダー格です。他にもアメリカ市場では、
10 JAMAGAZINE 2013. January
.6]/1]ȷɪĘȺ,glbb/.
/0-/0-/7/280/
シリーズ:グローバル時代を生きる多様性マネジメント
アルティマ、パスファインダー、セントラと次々
はありません。このクモの巣型「ネットワーク」
とイノベーションを重ねた新モデルを市場投入し
を踏まえたうえでどのように最適化するか、です
ています。イノベーションをどのように表現する
が、ひとつのシチュエーションに対して最適化を
か、を常に考えているのです。それにはひとつの
図るのかと言えば、答えは「ノー」です。「サプ
商品が革新的であるだけではなく、商品ラインナ
ライネットワーク」は、適応性の高い状態でなけ
ップ全体が革新的であることが大切です。他の競
ればいけませんから、あるひとつの結合部分を最
合自動車ブランドからは得られない、日産ならで
適化するのではなく、ネットワーク全体をある程
はの価値ある商品を顧客の視点に立って革新して
度最適化させる必要があります。われわれ日産で
いくのです。
は3.11の前からそれに取り組んでいましたので、
日産のミニバンNV200がニューヨーク市のタ
3.11の直後、回復がとても早かったのです。そし
クシーに採用されました。
て、われわれのクロスファンクショナルによるコ
クルーガー:はい。ニューヨークのタクシー・ア
ラボレーションを行うDNAも、早期回復に大き
ンド・リムジン・コミッションはどの自動車メー
く貢献したといえると思います。
カーとパートナーを組むのか、非常に綿密な審査
2012年10月、テネシー州スマーナ工場での増
をしていましたから、日産は革新的で適合性の高
産体制の実施に合わせて、800人以上を追加雇用
い自動車メーカーであるということを認められた
すると発表しました。Nissan Americasの成長戦
証だと思います。ニューヨークのタクシーに採用
略について教えてください。
されたことは、大変素晴らしい機会です。ニュー
クルーガー:現在、ブラジルとメキシコに新工場
ヨーク市民はもちろんのこと、世界各地からの観
を建設中で、さらに、テネシー州デカードには、
光客がニューヨーク中を移動するために日産車を
ダイムラーと日産の共同プロジェクトによる新エ
使うことになるわけですから。ニューヨークのタ
ンジン工場を建設中です。不況の間は生産規模も
クシーは、世界中でも最もアイコン的な車ですか
縮小していましたが、これからは戦略的に拡大し
ら、このうえなく光栄です。
ていきます。特に、生産の現地化を進めています。
ところで2011年3月、日本は東日本大震災を経
インフィニティJXはすでに現地生産しています
験しました。その後、日本国内外のあらゆる製造
が、日産リーフの生産を2012年秋から、そしてロ
業界が少なからず震災の影響を受けました。その
ーグも2013年春からこのスマーナ工場で生産すべ
ような緊急時でも、影響を最小限にし、いち早く
く準備を進めています。一国で生産し、世界数ヵ
立ち上がるためにもサプライチェーンの多様化が
国に流通させる、というモデルはリスクが高くな
課題として見えたのではないかと思います。グロ
ーバル市場でサプライチェーンの最適化を図るた
めにはどのようにお考えですか。
クルーガー:3.11の後、われわれもたくさんのこ
とを学びました。より強く感じるようになったの
は、
「サプライチェーン」
という考え方はもう古い、
ということです。「チェーン」の場合、弱いリン
クがひとつあると、チェーン全体を不成功に導い
てしまいます。日産での考えは、「サプライチェ
ーン」ではなく、
「サプライネットワーク」です。
クモの巣のように繋がっており、ひとつの結合部
分が弱くなったとしても、全体が崩れ落ちること
JAMAGAZINE 2013. January 11
.6]/1]ȷɪĘȺ,glbb//
/0-/0-/7/280/
ります。これからは、販売活動を行う市場の中で
乗り、各コミュニティの中で日産ブランドを代表
生産するという現地化戦略で、生産拠点の多様化
して、その価値を伝えているのです。日産ブラン
を進めていく予定です。
ドの約束を果たすだけでなく、慈善やコミュニケ
2016年までの北米でのゴールは、販売数の85%
ーションすべてを通し、社会への貢献者となって
を北米現地で生産する、というものです。そのた
いるのです。日産はただ単に収益を上げるだけで
めに既存の工場をフル稼働させるだけでなく、新
なく、われわれの商品である車、雇用、コミュニ
工場建設にも取りかかっているわけです。メキシ
ティとの相互作用を通して、人々の生活を豊かに
コではすでに3シフト制をとってきたのですが、
することをめざしています。30年前に日産がテネ
これまでアメリカで3シフト制をとってきたのは
シーに来てから、このコミュニティが確実に豊か
アルティマを生産するキャントン工場のみでし
に向上し、成長していると実感しています。その
た。2012年の年末までに、スマーナ工場の2ライ
結果、より多くの企業がこの地に興味を持ち、参
ン両方を3シフト制に切り替えて、現地生産に臨
入するようになってきたのです。日産がこのよう
みます。
な地域経済成長の大きな支えになっていること
ますます現地化が進むと、地域との関係性もよ
は、非常に喜ばしいことです。
り一層重要になってきます。地域社会に対して、
30年前に自動車メーカーがテネシーのような南
日産はどのような役割を担っていくべきであると
部に拠点を構えるのはまれなことで、日産が初め
お考えですか?
てでした。日産はこの面でも革新的で勇敢なので
クルーガー:時間とスキル(知識・経験)の両方
す。その後トヨタが参入し、現代自動車やメルセ
へ貢献すること、でしょうか。もちろん地域コミ
デスベンツが参入し、最近ではフォルクスワーゲ
ュニティへの資金面での支援も行いますが、その
ンもこのテネシーに新工場を設立しました。
地域コミュニティとは、われわれが従業員を雇っ
クルーガーさんご自身は、
“2011 Automotive
ている地域のみでなく、われわれが車を販売して
News All-Stars”のひとりに選ばれています。ご自
いる地域すべてを含みます。そして各地域で何が
身のどのような貢献が表彰に至ったのでしょうか。
必要とされているかを決めるのは現地スタッフで
クルーガー:私個人の貢献は微々たるものです。
す。彼らが直接、地域コミュニティに関与しなが
チーム全体の貢献によるものだと思います。米国
ら、どのエリアに何がどれくらい必要なのか、判
日産現地のチームメンバー達は、不況の間も、
断していきます。例えばここテネシーでは、より
3.11の間も、日産の業務回復、そして継続的な成
良い教育への貢献や低所得家庭への支援などを行
長にコミットし、大きく貢献してきました。そし
っています。グローバルには、非営利団体のハビ
て現在でも成長を続けています。ですからこの表
タット・フォア・ヒューマニティとのパートナー
彰は、現地チーム全員に対する「モノづくり」の
シップがあります。私自身も直接この団体に関わ
姿勢への表彰であり、私はたまたまそのチームを
っていますし、他にも米国赤十字の役員理事にも
率いる立場にいただけです。ほかにもさまざまな
なっています。3.11のときにも、私が関わる米国
賞を受賞しているのですが、それもすべてチーム
赤十字では、リソースを日本の被災地救済のため
ワークの結果です。
に活用し支援しました。
日産の強みは、チームです。もし、一個人に頼
日産の理念、価値観を多様な人々の中に浸透さ
ったり、グローバル市場の中で一国に頼ったりし
せるための秘訣はなんでしょうか。
ていたとしたら、とても脆い体質となってしまい
クルーガー:常々、日産の従業員すべてに日産の
ます。しかし部品にしてもヒトにしても、グロー
価値観を伝えています。彼らはいわば日産の伝道
バルでのネットワークがあれば、企業を強固にし
者なのです。彼らは日産のシャツを着て日産車に
てくれます。そうすれば、一部分が欠けたとして
12 JAMAGAZINE 2013. January
.6]/1]ȷɪĘȺ,glbb/0
/0-/0-/7/280/
シリーズ:グローバル時代を生きる多様性マネジメント
もリスク分散することができ、より強固な組織と
なっていくのです。
そんな強固な組織を率いるクルーガーさんがめざ
すリーダーシップスタイルはどのようなものですか。
クルーガー:私の個人的なスタイルですが、良き
聴き手となり、チームが奉仕してくれるのを求め
るのではなく、自身がチームに奉仕する姿勢が重
要だと考えています。ですから私はチームメンバ
ーに対し、障害を取り除いてくれる存在であって
障害を与える存在ではなく、必要な要素を加えて
くれる存在であって要素を取り除く存在ではな
っています。車は人々の生活のあらゆる場面に必
い、というように感じてもらいたいと思っていま
要不可欠なツールです。子どもを学校に連れて行
す。同時に、彼らがモチベーションを保ちながら
く、仕事に行く、家族や親戚を訪れる、病院に行
もチャレンジングだと思える要素を与えてあげる
く…。
ことです。チームワーク全体としての士気を下げ
車によって、人々の生活を豊かにすることがで
るものでは決してありません。
きるのです。そのような業界に関わっているとい
それから、チームリーダーの多様性も、強い組
うことは、私にとって大きな誇りであり、チーム
織のために必要な要素だと思います。例えば日産
にもそれを忘れてほしくないと思っています。
の販売に関していえば、ブラジルの販売のトップ
はフランス人です。メキシコの販売のトップはス
【あとがき】
ペイン人です。カナダの販売のトップはアメリカ
「サーバント・リーダーシップ」という概念を
人です。アメリカの販売のトップはイギリス人で
ご存知だろうか。アメリカで、ロバート・グリー
す。リーダーの多様性がとても高いことがおわか
ンリーフ博士が提唱したものだ。「支援を通じた
りでしょう。また、ここテネシーのスマーナ工場
信頼関係の上に成り立つリーダーシップ」のこと
のリーダーは女性です。米州の購買リーダーも女
を指す。
部下に対し常に上から下の一方向で管理・
性です。デトロイトのエンジニアリーダーも女性
命令する支配型リーダーよりも、部下の意向を尊
です。
重し仲間として協働することで信頼関係を構築し
国籍、性別、バックグラウンドなど多様性を生
めざす方向へと導くリーダーが理想的といわれて
かすことは、日産にとって、現在そして将来の能
いる。支配型リーダーよりもサーバント・リーダ
力に非常に重要だと考えています。日産は、クロ
ーの方が個々の潜在的能力を引き出し、組織の結
スファンクショナル、クロスカルチャーな考え方
束力を強くする。
を受容しています。まだまださらにクロスファン
クルーガー氏はまさに、個々のメンバーを尊重
クショナルでクロスカルチャーを実現していく余
し、自立を促し、チームの力を信じるといった「サ
地があると思っていますが、多様性に力を注いで
ーバント・リーダーシップ」を象徴していると感
いくことこそが、より一層日産を強固にする鍵だ
じさせられたインタビューであった。一言一言、
と考えています。
じっくりと噛みしめるような語り口の同氏から
最後に、クルーガーさんにとって車とはなんで
しょうか。
は、実直さ、そして謙虚ながらも圧倒的な強さと
誇りが感じられた。
クルーガー:私は車のメーカー側ですので、自動
車ビジネスに関わっていることにとても誇りを持
(JAMAGAZINE編集室)
JAMAGAZINE 2013. January 13
.6]/1]ȷɪĘȺ,glbb/1
/0-/0-/7/280/
Fly UP