...

③ 先端技術搭載ガソリンエンジンに対する最適アンチノック性指標の研究

by user

on
Category: Documents
20

views

Report

Comments

Transcript

③ 先端技術搭載ガソリンエンジンに対する最適アンチノック性指標の研究
[P 4 .1 .3 ]
先端技術搭載ガソリンエンジンに対する最適アンチノ
ック性指標の研究開発
アンチノック評価グループ
新曽南第502研究室
○鈴木昭雄、櫻井嘉人、鈴木善克
1.研究開発の目的
2010 年 に お け る 日 本 の ガ ソ リ ン 車 の 国 内 燃 費 基 準 は 1995 年 比 で 平 均 22.8%
の 燃 費 改 善 を 求 め て お り 、 さ ら に 2015 年 度 の 国 内 燃 費 基 準 で は 乗 用 車 で 2010
年 度 基 準 に 対 し て 平 均 29.2%の 改 善 が 求 め ら れ て い る 。 今 後 も 低 レ ベ ル の 排 出
ガ ス 規 制 を 遵 守 し な が ら 更 な る 燃 費 向 上 が 求 め ら れ る と 考 え ら れ る 。そ の た め 、
自動車の燃費向上技術の研究が重要となっており、自動車業界においては燃費
向上のため、エンジンの熱効率の向上、駆動系の損失低減、ハイブリッドシス
テム、走行抵抗の低減、補機駆動力の低減等の研究が進められている。エンジ
ンの熱効率向上策としては高過給、直噴、リーンバーン、高圧縮比、予混合圧
縮着火エンジン等が盛んに検討されている。これらの技術の中には従来のガソ
リンのアンチノック性指標(ガソリンの耐ノック性を表す指標)であるリサー
チ 法 オ ク タ ン 価 ( RON) や モ ー タ ー 法 オ ク タ ン 価 ( MON) で は ア ン チ ノ ッ ク 性 を
十分に表現しきれない技術もあるとの指摘があり、新たなアンチノック性指標
の提案もなされている。また、エンジンの熱効率に燃料のアンチノック性が大
き く 影 響 す る こ と は 従 来 か ら 知 ら れ て お り 、 1990 年 以 前 の 車 両 で は RON と MON
の 両 方 が 高 い 方 が 良 か っ た が 、 最 近 の 車 両 で は RON は 高 い 方 が 良 い が MON は 影
響 が な い 、 ま た は 逆 に MON は 低 い 方 が 良 い と の 指 摘 も あ る 。 1 )
よって、先端技術を搭載したガソリンエンジンを用い、広範囲なエンジン条
件、種々の燃料を用いて燃料性状とノッキングとの関係を把握することは重要
である。さらに、最適なアンチノック性指標を提案し、そのアンチノック性指
標と燃費の関係を基礎的に解析することにより、将来のガソリンにおけるアン
チノック性の方向を明らかにすることが必要と考える。
そこで、本研究開発では先端技術搭載エンジンに最適なアンチノック性指標
を検討するために、試験エンジンを含めてガソリン性状とノック限界の関係を
把握し、新たなアンチノック性指標を提案することを目的とする。
1 ) V. Mittal and J. B. Heywood, SAE Technical Paper 2009-01-2622(2009)
2.研究開発の内容
2.1
先端技術搭載車両の評価
先端技術を搭載した車両の情報を入手するため高過給ダウンサイジング(小
排 気 量 )の 代 表 車 両 と し て フ ォ ル ク ス ワ ー ゲ ン Golf の 評 価 を し た 。車 両 の 諸 元
を 表 2.1-1 に 示 す 。 フ ォ ル ク ス ワ ー ゲ ン に よ る と 車 両 の 特 徴 は 2 種 類 の 過 給 器
-408-
を 持 っ て お り 、 2L ク ラ ス の 加 速 性 と 1.4L ク ラ ス の 燃 費 を 兼 ね 備 え て い る と さ
れている。
試験は定速条件(平坦路および登坂条件)および加速条件にて行った。シャ
ーシダイナモメーター上で走行中の車両から制御情報、走行情報を入手した。
計 測 項 目 は 、車 速 、エ ン ジ ン 回 転 数 、駆 動 力 、吸 気 管 圧 力( 過 給 圧 )、点 火 時 期 、
空 燃 比 、 ア ク セ ル 開 度 で あ る 。 評 価 燃 料 に 市 販 レ ギ ュ ラ ー ガ ソ リ ン ( RG) と 市
販 プ レ ミ ア ム ガ ソ リ ン ( PG) を 用 い た 。
表 2.1-1
車両諸元
車両名
Golf Touran
Golf
エンジン型式
BMY
CAV
排気量
1.38L
1.38L
圧縮比
10.0
10.0
車両重量
1600kg
1340kg
最高出力
103kW /5600rpm
77kW /5600rpm
最大トルク
220Nm/1500-4000rpm
175Nm/1550-4000rpm
過給方式
インタークーラー付
ス ー パ ー チ ャ ー ジ ャ +タ ー ボ
インタークーラー付
ス ー パ ー チ ャ ー ジ ャ +タ ー ボ
主要燃費
向上対策
DSG/筒 内 直 接 噴 射 /
可変バルブタイミング
DSG/筒 内 直 接 噴 射
乗車定員
7名
5名
2.2
供試エンジンによる評価
表 2.2-1
研究用単気筒エンジンを用い
アンチノック評価用エンジン
ノッキング指数(K 値)の評価
を行った。検討に用いたアンチ
エンジン諸元
ベースエンジン
ガソリン乗用車用直接噴射式
エンジン
排 気 量 (cc)
453(ε=8)~ 499(ε=15)
用 エ ン ジ ン は 、市 販 の ガ ソ リ ン エ
内 径 ×行 程
(mm×mm)
86.0×78.0(ε=8)
~ 86.0×86.0(ε=15)
ンジンを単気筒エンジンに改造
動弁機構
DOHC( Intake 2, Exhaust 2)
圧 縮 比 (可 変 )
8~ 15
器 、 EGR( 排 気 再 循 環 ) バ ル ブ 、
エンジン回転数
(rpm)
500~ 5000
EGR ク ー ラ ー を 搭 載 し て い る 。エ
過給器
スーパーチャージャ
燃料供給方式
シ リ ン ダ 内 直 接 噴 射 (DI)
吸 気 ポ ー ト ( SPI)
ノック評価用エンジンの諸元を
表 2.2-1 に 示 す 。
図 2.2-1 の ア ン チ ノ ッ ク 評 価
した研究用ガソリンエンジンで
あ る 。ま た 、可 変 圧 縮 機 構 、過 給
ン ジ ン 制 御 装 置 に よ り 圧 縮 比 、過
給 圧 、EGR 率 、燃 料 噴 射 開 始 時 期 、
-409-
燃料噴射時間、点火タイミング、燃料供給方式を任意に制御できる。本エンジ
ンでエンジン条件を変えてアンチノック性の評価をおこなう。
2.3
実験方法
EGR バルブ
表 2.3-1 に ア ン チ ノ ッ ク 評
価エンジンの実験条件を示す。
吸入空気
流量計
EGRクーラー
エンジン技術、運転条件がノ
ポート噴射
スロットル
バルブ
ッ キ ン グ 指 数( K 値 )に 与 え る
インター
クーラー
影響を把握するために、エン
ジ ン 回 転 数 、吸 気 管 圧 力 、EGR
外部
モーター
可変圧縮
比機構
動力計
図 2.2-1
アンチノック評価エンジンシステムの
概略図
表 2.3-1
ベースエンジン
アンチノック評価エンジンの実験条件
市販直噴式ガソリンエンジン
圧 縮 比 ( ε)
燃料噴射方式
吸気条件
8~ 15
吸 気 ポ ー ト ( SPI)、 筒 内 噴 射 ( DI)
自 然 吸 気 、 過 給 ( 最 大 80kPa)
エ ン ジ ン 回 転 数 (rpm)
1000~ 2000
EGR 率 ( %)
0~ 20
空 気 過 剰 率 ( λ)
0.85、 1.0、 1.15
水温(℃)
80
吸気温度(℃)
25
吸気湿度(%)
50
点火時期
2.4
ノ ッ ク 限 界 点 火 時 期 、 MBT
供試燃料
検 討 に は 市 販 レ ギ ュ ラ ー ガ ソ リ ン ( RG) と 市 販 プ レ ミ ア ム ガ ソ リ ン ( PG)
を 用 い た 。ま た 、燃 料 組 成 の 影 響 を 検 討 す る た め に 、模 擬 レ ギ ュ ラ ー ガ ソ リ
ン を 試 作 し た 。模 擬 ガ ソ リ ン 中 に 含 ま れ る パ ラ フ ィ ン 、オ レ フ ィ ン 、芳 香 族
( ア ロ マ ) の 量 は 、 市 販 RG の 市 場 調 査 の 組 成 分 析 結 果 を 参 考 に 調 製 し た 。
表 2.4-1 に 供 試 ガ ソ リ ン の 性 状 を 示 す 。
-410-
スーパー
チャージャ
筒内噴射
排気バルブ
率、空気過剰率、燃料噴射方
式を変え評価した。
サージ
チューブ
表 2.4-1
RG
燃料名
供試レギュラーガソリンの燃料性状表
RG_HOLP
RG_LOHP
RG_HALP
RG_LAHP
高 オレフィン
低 オレフィン
高アロマ
低アロマ
低 パラフィン
高 パラフィン
低 パラフィン
高 パラフィン
RG_ETBE
ETBE7%
内容
市場品
密 度 , g/cm 3
0.7402
0.7254
0.7233
0.7540
0.7274
0.7259
10%
53.0
49.0
59.0
58.5
59.0
51.5
50%
94.5
82.5
98.5
98.0
103.0
82.0
90%
167.5
168.0
155.5
161.5
169.0
165.5
63.0
63.9
52.0
51.2
53.9
62.7
7
8
3
5
8
7
C
86.3
86.2
85.6
87.3
85.7
85.1
H
13.7
13.7
14.3
12.6
14.2
13.8
RON
90.1
90.6
90.5
90.6
90.6
90.6
MON
81.3
81.0
84.5
81.1
83.0
81.4
蒸留性状, ℃
RVP, kPa
硫 黄 分 , ppm
元 素 分 析 ,mass%
オクタン価
3 .研 究 開 発 の 結 果
3.1
先端技術搭載車両の評価
図 3.1-1 に デ ィ テ ン ト 加 速 ( シ フ ト ダ ウ ン し な い 最 も 大 き い ア ク セ ル 開 度 で
図 3.1-1
加速中の運転制御情報
-411-
踏 み 込 み )時 に お け る 運 転 制 御 を 示 す 。実 験 は 車 速 40km/h か ら 100km/h 以 上 の
加速を繰り返して行った。
図 3.1-1 よ り 、 吸 気 管 圧 力 は 加 速 開 始 前 の -50k Pa の 負 圧 状 態 か ら 加 速 開 始
後 、過 給 器 が 作 動 し 吸 気 管 圧 力 が 100kPa ま で 高 ま っ て い る 。ま た 、吸 気 管 圧 力
の 上 昇 に 比 例 し て 駆 動 力 も 増 加 し て い る 。し か し 、2 秒 後 以 降 は 点 火 時 期 が 0°
BTDC( 上 死 点 前 ) 以 降 へ 遅 角 化 し た 。 こ れ は 、 負 荷 が 高 く な る に つ れ て ノ ッ キ
ングが起こりやすくなるので点火時期を遅角化(図中の下側が遅角化:点火時
期を遅くらせてノッキングを起こりにくくしているが出力は低下し熱効率が悪
化する)させることによりノッキングを回避したものと思われる。本実験条件
ではピストンが最も高い位置にある上死点よりもさらに遅い点火時期となって
いる。一般の車両では、燃焼の安定性や出力低下回避の観点から点火時期を上
死点まで遅角化させることはないため、本供試車両が通常の制御を越えて大幅
に遅角化していることがわかった。
表 3.1-1 は 定 速 条 件 に お け る 運 転 制 御 を 調 べ た 結 果 で あ る 。 シ ャ ー シ ダ イ ナ
モメーターにて登坂条件の負荷を与えて車両を走行させた。その結果、高負荷
条件ではエンジン出力を高めるために吸気管圧力を増加させていることがわか
っ た 。ま た 、RG と PG を 比 較 す る と 3 つ の 条 件 と も RG の 吸 気 管 圧 力 の 方 が 高 く
点 火 時 期 が 遅 角 化 し て い る こ と が わ か っ た 。こ れ は 、RG は ノ ッ キ ン グ が 起 こ り
や す い た め 遅 角 化 制 御 を お こ な っ て い る が 、出 力 が 低 い た め PG と 同 じ 駆 動 力 と
するのにさらに過給圧を高めているためと思われる。特に最も吸気管圧力が高
い 条 件 ③ に お い て 、RG は 空 燃 比 が リ ッ チ 条 件 で 運 転 を し て い る 。リ ッ チ 制 御 を
加えることにより燃焼室内の温度を低下させ、ノッキングを起こりにくくして
いると思われるが、ストイキオ条件と比べて燃費が大幅に悪化していると推定
される。
表 3.1-1
定速条件における運転制御
条件
①
②
③
エ ン ジ ン 回 転 数 (rpm)
1500
2500
2500
駆 動 力 (kgm)
1250
1450
2000
燃料種
RG
PG
RG
PG
RG
PG
吸 気 管 圧 力 (k Pa)
22
18
33
30
98
75
点 火 時 期 (BTDC)
0
6
1
7
-6
1
空燃比
14.4
14.4
14.4
14.4
12.8
14.3
先進車両は過給ダウンサイジングによって高い出力と良い燃費を両立させて
い る が 、遅 角 化 お よ び リ ッ チ 化 に よ り ノ ッ キ ン グ を 押 さ え 込 ん で い る 。よ っ て 、
先進車両の評価にあたっては高い吸気管圧力、遅角化した点火時期におけるオ
-412-
クタン価の影響に注目する必要があることがわかった。
3.2
運転条件と K 値の関係
RON が 同 じ で も MON が 異 な る と 車 両 の 感 じ る ア ン チ ノ ッ ク 性 が 異 な る こ と か
ら試験燃料のアンチノック性指標を本研究ではオクタン価インデックスと K 値
で表現している。ここでオクタン価インデックスとは、ある条件における試験
燃料のアンチノック性をノック限界圧縮比またはノック限界点火時期とし、そ
れ と 同 じ 条 件 で 同 じ 値 と な る PRF 換 算 で の オ ク タ ン 価 と 定 義 す る 。
ま た 、K 値 は 式( 1 )に て 求 め ら れ る 定 数 で 、あ る 試 験 燃 料 の RON と MON か ら
そ の 実 験 条 件 に お け る ノ ッ キ ン グ 発 生 に 対 す る MON の 寄 与 を 表 す 数 値 で あ る 。
OI= RON- K×S
式(1)
= RON- K×(RON- MON)
= (1- K)×RON+ K×MON
OI: オ ク タ ン 価 イ ン デ ッ ク ス
K: MON の 寄 与 を 表 す 指 標
S: セ ン シ テ ィ ビ テ ィ (RON- MON)
式( 1 )か ら K= 1 の 時 は OI= MON と な り ノ ッ キ ン グ 発 生 に 対 す る 燃 料 の 影 響
が MON と 同 一 で あ る こ と を 表 し 、 K= 0 の 時 は OI= RON と な り ノ ッ キ ン グ 発 生 に
対 す る 影 響 が RON と 同 一 で あ る こ と を 表 し て い る 。ま た 、RON が 同 じ 場 合 、K が
正 の 時 は MON が 大 き い ほ ど ア ン チ ノ ッ ク 性 が 良 い こ と を 意 味 し 、 逆 に K が 負 の
時 は MON が 小 さ い ほ ど ア ン チ ノ ッ ク 性 は 良 い こ と を 意 味 す る 。
以下にオクタン価インデックスと K
値 の 算 出 例 を 示 す 。 表 3.2-1 は エ ン ジ
表 3.2-1
MON
RG
90.1
81.8
19
PRF90
90.0
90.0
18
PRF95
95.0
95.0
24
RG の RON、 MON、 ノ ッ ク 限 界 点 火 時 期
表 3.2-1 よ り RG の ア ン チ ノ ッ ク 性 は
KLSA= 19 で あ る こ と か ら 、こ れ と 同 等
の PRF 換 算 の オ ク タ ン は 下 記 に て 算 出 で き る 。
OI= ( SKLSA- LPRFKLSA) ×( URPF- LPRF)
LPRFKLSA- UPRFKLSA
= ( 19- 18) ×( 95- 90)
KLSA
RON
ン 回 転 数 1000rpm、 過 給 条 件 に お け る
( KLSA) で あ る 。
アンチノック性の比較
+ 90
24- 18
= 90.8
-413-
+ LPRF
(BTDC)
SKLSA: 評 価 燃 料 の ノ ッ ク 限 界 点 火 時 期
LPRFKLSA : 低 標 準 燃 料 の ノ ッ ク 限 界 点 火 時 期
UPRFKLSA : 高 標 準 燃 料 の ノ ッ ク 限 界 点 火 時 期
LPRF: 低 標 準 燃 料 の オ ク タ ン 価
UPRF: 高 標 準 燃 料 の オ ク タ ン 価
式( 1 )よ り 、オ ク タ ン 価 イ ン デ ッ ク ス お
よ び 試 験 燃 料 の RON と MON か ら K 値 が 算 出 で
KLSA( de gBTDC )
きる。
K=
RG
P RF90
P RF9 5
25
SRON- OI
SRON- SMON
= 90.1- 90.8
90.1- 81.8
SRON: 評 価 燃 料 の RON
SMON: 評 価 燃 料 の MON
オクタン価インデックスと K 値の算出方
法 を 、 図 3.2-1 を 例 に し て 説 明 す る 。 上 図
オ ク タン価 インデ ックス
= - 0.08
に て RG と 2 つ の PRF の ア ン チ ノ ッ ク 性 の 違
10
5
95
94
93
92
91
90
-0 .1
K値
てオクタン価インデックスとして評価する。
から K 値を計算する。
15
0 .0
いにより点火時期が変化し、それを中図に
ま た 、 下 図 に て サ ン プ ル の RON と MON の 値
20
-0 .2
-0 .3
-0 .4
-0 .5
0
図 3.2-1
10
20
30
40
吸 気 管 圧 ( kPa)
吸気管圧力が K 値に与える
影響(ポート噴射式)
図 3.2-2 は 燃 料 噴 射 方 式 を 直 接 噴 射 式 に 変 え て 吸 気 管 圧 の 影 響 を 評 価 し た も
の で あ る 。 図 3.2-2 か ら 、 直 接 噴 射 式 で も 吸 気 管 圧 が 高 く な る に し た が い K 値
が大幅に低下した。
図 3.2-3 は EGR 率 が K 値 に 及 ぼ す 影 響 を 検 討 し た 結 果 で あ る 。図 3.2-3 か ら 、
EGR 率 と K 値 に 相 関 性 は 見 ら れ な か っ た 。
-414-
0 .0
- 0 .1
- 0 .1
- 0 .2
K値
K値
0 .0
- 0 .3
- 0 .2
- 0 .3
- 0 .4
- 0 .4
- 0 .5
0
10
図 3.2-2
20
30
吸 気 管 圧 (kPa)
0
40
図 3.2-3
吸気管圧力が K 値に与える
10
20
30
EGR率 ( % )
EGR 率 が K 値 に 与 え る 影 響
(ポート噴射式)
影響(直接噴射式)
図 3.2-4 は エ ン ジ ン 回 転 数 が K 値 に 及 ぼ す 影 響 を 検 討 し た 結 果 で あ る 。 図
3.2-4 か ら 、 エ ン ジ ン 回 転 数 が 低 く な る に し た が い K 値 が 低 下 し た 。
図 3.2-5 は 空 気 過 剰 率 が K 値 に 及 ぼ す 影 響 を 検 討 し た 結 果 で あ る 。 図 か ら 、
0.05
0
0
K値
0.05
-0.05
-0.05
-0.1
-0.1
-0.15
-0.15
500
図 3.2-4
1000
1500
2000
エ ンジ ン回 転 数 (rpm )
0.8
2500
エンジン回転数が K 値に与
図 3.2-5
える影響(ポート噴射式)
0.9
1.0
1.1
空 気 過 剰 率 (λ )
空気過剰率が K 値に与える
0.2
過給圧が K 値に及ぼす影響を図
-0.2
高くなるにしたがい K 値は低下した。
した。K 値は運転条件によって変化
ε=13(PG)
ε=11(PG)
ε=11(RG)
ε=9 (RG)
0.0
3.2-6 に 示 す 。PG と RG と も 過 給 圧 が
また、圧縮比が高いほど K 値は低下
1.2
影響(ポート噴射式)
K値
K値
燃料がリッチ条件にて K 値は低下した。
-0.4
するが、中でも過給圧の影響を最も
-0.6
受 け て い る 。 と り わ け 80kPa の よ う
-0.8
な高過給条件になると K 値は-1 ま
で低下しており、これは現行のアン
チ ノ ッ ク 性 指 標 RON ( K=0 ) と MON
( K=1) と 大 き く 乖 離 し て い る 。
-1.0
0
20
40
60
吸気
管 圧 [kPa]
( kPa)
Boost
図 3.2-6 吸 気 管 圧 力 が K 値 に 与 え る
影響(ポート噴射式)
-415-
80
図 3.2-7 に ア ン チ ノ ッ ク 評 価 用
4500
エンジンの未燃ガス温度と筒内圧
4000
スとは未燃混合気を示しており火
3500
筒内圧力, kPa
力の履歴を示す。ここで、未燃ガ
炎伝播によって燃焼する前の状態
である。ノッキングは未燃ガスが
火炎伝播の前に温度圧力上昇によ
って自己着火する現象である。図
3.2-7 か ら 過 給 圧 が 高 ま る に つ れ
80kPa
70kPa
60kPa
50kPa
40kPa
30kPa
20kPa
10kPa
0kPa
3000
2500
2000
1500
て未燃ガス温度は低下する傾向が
1000
あ る 。つ ま り 、図 3.2-6 と 図 3.2-7
400
から、吸気管圧力が高まるにつれ
て、同一圧力における未燃ガス温
図 3.2-7
500
600 700
800 900 1000
未
燃
ガス温
度
圧縮端温度, ℃,℃
未燃ガス温度と筒内圧力の履歴
度が低下していることが解った。
0.0
ジ ン に て 、図 3.2-6 の K= -1
-0.2
で あ っ た 圧 縮 比 11、過 給 圧
-0.4
80kPa の 条 件 で 模 擬 レ ギ ュ
K値
アンチノック評価用エン
-0.6
ラーガソリンの評価を行っ
-0.8
た 。 図 3.2-8 よ り 高 オ レ フ
-1.0
ィン、低パラフィン燃料の
-1.2
RG
高オレフィン 低オレフィン 高アロマ 低アロマ ETBE7%
市場品 低パラフィン 高パラフィン 低パラフィン 高パラフィン
K 値のみが他の燃料よりも
プラス側へシフトしている
RG
が、その他の燃料の K 値は
RG_HOLPRG_LOHPRG_HALP RG_LAHP RG_ETBE
図 3.2-8
ほぼ同等の値であった。
K 値の比較
図 3.2-8 の K 値 の 平 均 値 を も と に 式 ( 1 ) に て 計 算 し た オ ク タ ン 価 と 実 測 の
オ ク タ ン 価 イ ン デ ッ ク ス の 比 較 を 図 3.2-9 に 示 す 。 図 3.2-9 の 実 測 と 計 算 オ ク
タン価の比較より、実測と
は見られなかった。また、
実測と計算のオクタン価の
乖離が小さいことから、燃
料組成が市場範囲内のガソ
リンであれば高過給条件に
おけるオクタン価の推定を
おこなうことができる。
オクタン価
オクタン価インデックス
計算の差に明確な組成影響
100
95
実測
計算
90
RG 高オレフィン 低オレフィン 高アロマ 低アロマ ETBE 7%
市場品 低パラフィン高パラフィン低パラフィン高パラフィン
図 3.2-9
-416-
実測および計算オクタン価の比較
4.まとめ
平 成 19 年 度 か ら 平 成 23 度 に 先 端 技 術 搭 載 ガ ソ リ ン エ ン ジ ン に 対 す る 最 適 ア
ンチノック性指標の研究開発を行った。研究成果は以下の通りである。
( 1 ) 高 過 給 ダ ウ ン サ イ ジ ン グ エ ン ジ ン を 搭 載 し た Golf を 例 と し て 運 転 条 件
を 検 討 し た 。高 負 荷 条 件 で は 100kPa の 過 給 を お こ な っ て い る が 、ノ ッ キ
ング回避のため大幅な点火時期の遅角化、空燃比のリッチ制御をしてい
ることがわかった。
(2)アンチノック評価用エンジンにて運転条件として過給圧、エンジン回転
数 、EGR 率 、空 燃 比 、燃 料 噴 射 方 式 と K 値 の 関 係 を 評 価 し た と こ ろ 最 も K
値に影響を与える運転条件は過給圧である。また、過給圧が高まると K
値 は マ イ ナ ス に シ フ ト し 、 過 給 圧 80kPa に お い て K 値 は - 1.0 ま で 低 下
した。
(3) (1)と(2)から先端技術搭載車用のアンチノック性指標としては K
=-1 が必要であることを見出した。模擬ガソリンの検討から、燃料組
成により K 値に対して特異な挙動は見られなかった。また、K 値は未燃
ガス温度と筒内圧力の履歴と関係があると考えられる。
-417-
Fly UP