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③ 先端技術搭載ガソリンエンジンに対する最適アンチノック性指標の研究
[P 4 .1 .3 ] 先端技術搭載ガソリンエンジンに対する最適アンチノ ック性指標の研究開発 アンチノック評価グループ 新曽南第502研究室 ○鈴木昭雄、鈴木善克、村瀬真人、櫻井嘉人 1.研究開発の目的 2010 年 に お け る 日 本 の ガ ソ リ ン 車 の 国 内 燃 費 基 準 は 1995 年 比 で 平 均 22.8% の 燃 費 改 善 を 求 め て お り 、さ ら に 2015 年 度 の 国 内 燃 費 基 準 で は 乗 用 車 で 2010 年 度 基 準 に 対 し て 平 均 29.2%の 改 善 が 求 め ら れ て い る 。 今 後 も 低 レ ベ ル の 排 出 ガ ス 規 制 を 遵 守 し な が ら 更 な る 燃 費 向 上 が 求 め ら れ る と 考 え ら れ る 。そ の た め 、 自動車の燃費向上技術の研究が重要となっており、自動車業界においては燃費 向上のため、エンジンの熱効率の向上、駆動系の損失低減、ハイブリッドシス テム、走行抵抗の低減、補機駆動力の低減等の研究が進められている。エンジ ンの熱効率向上策としては高過給、直噴、リーンバーン、高圧縮比、予混合圧 縮着火エンジン等が盛んに検討されている。これらの技術の中には従来のガソ リンのアンチノック性指標(ガソリンの耐ノック性を表す指標)であるリサー チ 法 オ ク タ ン 価( RON)や モ ー タ ー 法 オ ク タ ン 価( MON)で は ア ン チ ノ ッ ク 性 を十分に表現しきれない技術もあるとの指摘があり、新たなアンチノック性指 標の提案もなされている。また、エンジンの熱効率に燃料のアンチノック性が 大 き く 影 響 す る こ と は 従 来 か ら 知 ら れ て お り 、1990 年 以 前 の 車 両 で は RON と MON の 両 方 が 高 い 方 が 良 か っ た が 、 最 近 の 車 両 で は RON は 高 い 方 が 良 い が MON は 影 響 が な い 、 ま た は 逆 に MON は 低 い 方 が 良 い と の 指 摘 も あ る 。 1 ) よって、先端技術を搭載したガソリンエンジンを用い、広範囲なエンジン条 件、種々の燃料を用いて燃料性状とノッキングとの関係を把握することは重要 である。さらに、最適なアンチノック性指標を提案し、そのアンチノック性指 標と燃費の関係を基礎的に解析することにより、将来のガソリンにおけるアン チノック性の方向を明らかにすることが必要と考える。 そこで、本研究開発では先端技術搭載エンジンに最適なアンチノック性指標 を検討するために、試験エンジンを含めてガソリン性状とノック限界の関係を 把握し、新たなアンチノック性指標を提案することを目的とする。 1 ) V. Mittal and J. B. Heywood, SAE Technical Paper 2009-01-2622(2009) 2.研究開発の内容 2.1 先端技術搭載車両の評価 先端技術を搭載した車両の情報を入手するため高過給ダウンサイジング(小 排気量)の代表車両としてフォルクスワーゲンゴルフの評価をした。車両の諸 -379- 元 を 表 2.1-1 に 示 す 。 フ ォ ル ク ス ワ ー ゲ ン に よ る と 車 両 の 特 徴 は 2 種 類 の 過 給 器 を 持 っ て お り 、 2L ク ラ ス の 加 速 性 と 1.4L ク ラ ス の 燃 費 を 兼 ね 備 え て い る と されている。 試験は定速条件(平 表 2.1-1 車両諸元 坦路および登坂条件) 車両名 Golf Touran Golf および加速条件にて行 エンジン型式 BMY CAV った。シャーシダイナ 排気量 1.38L 1.38L 圧縮比 10.0 10.0 車両重量 1600kg 1340kg 最高出力 103kW/5600rpm 77kW/5600rpm モメーター上で走行中 の車両から制御情報、 走行情報を入手した。 計測項目は、車速、エ ン ジ ン 回 転 数 、駆 動 力 、 吸 気 管 圧 力 ( 過 給 圧 )、 点火時期、空燃比、ア クセル開度である。評 価燃料に市販レギュラ ー ガ ソ リ ン( RG)と 市 販プレミアムガソリン 最大トルク 220Nm/1500-4000rpm 175Nm/1550-4000rpm 過給方式 インタークーラー付 スーパーチャージャ +タ ー ボ インタークーラー付 スーパーチャージャ +タ ー ボ 主要燃費向 上対策 DSG/筒 内 直 接 噴 射 / 可変バルブタイミン グ DSG/筒 内 直 接 噴 射 乗車定員 7名 5名 ( PG) を 用 い た 。 2.2 供試エンジンによる評価 2 種類のエンジンを用いノッキング指数(K 値)の評価を行った。検討に用 い た 2 種 類 の 単 気 筒 エ ン ジ ン の 諸 元 を 表 2.2-1 に 示 す 。 表 2.2-1 エンジン諸元 アンチノック評価用エンジン オクタン価評価用エンジン ベースエンジン ガソリン乗用車用直接噴射式 エンジン CFR エ ン ジ ン 排 気 量 (cc) 453(ε=8)~ 499(ε=15) 612 内 径 ×行 程 (mm×mm) 86.0×78.0(ε=8) ~ 86.0×86.0(ε=15) 82.6×114.3 動弁機構 DOHC( Intake 2, Exhaust 2) DOHC( Intake 1, Exhaust 1) 圧 縮 比 (可 変 ) 8~ 15 4~ 18 エンジン回転数 (rpm) 500~ 5000 500~ 2000 過給器 スーパーチャージャ スーパーチャージャ 燃料供給方式 シ リ ン ダ 内 直 接 噴 射 (DI) 吸 気 ポ ー ト ( SPI) 吸 気 ポ ー ト ( SPI) 気 化 器 (CAB) -380- 図 2.2-1 の ア ン チ ノ ッ ク EGR Valve 評価用エンジンは、市販の ガソリンエンジンを単気筒 Air Flow Meter EGR cooler エンジンに改造した研究用 SPI Injector Throttle Valve ガソリンエンジンである。 また、可変圧縮機構(偏芯 Surge Tube Inter cooler Exhaust Valve DI Injector ク ラ ン ク 式 )、過 給 器 、EGR ( 排 気 再 循 環 )バ ル ブ 、EGR クーラーを搭載している。 エンジン制御装置により圧 Electrical Motor Variable Compression Ratio System Dynamometer 図 2.2-1 アンチノック評価エンジンシステムの 概略図 縮 比 、過 給 圧 、EGR 率 、燃 料噴射開始時期、燃料噴射 Air Flow Meter EGR Valve 時間、点火タイミング、燃 Surge Tube EGR Cooler 料供給方式を任意に制御で Mixture heater Fuel Injector きる。本エンジンでエンジ Inter Cooler ン条件を変えてアンチノッ ク性の評価をおこなう。 図 2.2-2 の オ ク タ ン 価 評 価用エンジンはオクタン価 Throttle Valve Exhaust Valve Variable Compression Ratio System Worm Shaft である。燃料噴射方式はポ Super Charger Electrical Motor Dynamometer 測 定 用 の CFR エ ン ジ ン を ベースに改造したエンジン Super Charger 図 2.2-2 オクタン価評価エンジンシステムの概 略図(ポート式) ート噴射式とキャブレター 式 で あ る 。ポ ー ト 噴 射 式 は 、 表 2.3-1 アンチノック評価エンジンの実験条件 燃料の噴射時期、期間を任 供試燃料 市 販 RG、PRF90、PRF95 意に設定可能で、スロット 圧 縮 比 ( ε) ル調整、スーパーチャージ ャによる過給をおこなうこ とができる。本エンジンで は新たなアンチノック性評 価法の開発をおこなう。 2.3 実験方法 表 2.3-1 に ア ン チ ノ ッ ク 燃料噴射方式 過 給 圧 ( kPa) エ ン ジ ン 回 転 数 (rpm) EGR 率 ( %) 9.0 吸 気 ポ ー ト ( SPI)、 筒 内 噴 射 ( DI) 10~ 30 1000~ 2000 5~ 20 スロットル開度 全開 空 気 過 剰 率 ( λ) 0.85、 1.0、 1.15 評価エンジンの実験条件を 水温(℃) 80 示す。エンジン技術、運転 吸気温度(℃) 25 条件がノッキング指数(K 吸気湿度(%) 50 点火時期 -381- ノック限界点火時期 値 ) に 与 え る 影 響 を 把 握 す る た め に 、 エ ン ジ ン 回 転 数 、 吸 気 管 圧 力 、 EGR 率 、 空 気 過 剰 率 、 燃 料 噴 射 方 式 を 変 え 評 価 し た 。 供 試 燃 料 に 、 市 販 RG と オ ク タ ン 価 測 定 用 標 準 燃 料( PRF)の PRF90、PRF95 を 用 い て 各 運 転 条 件 に お け る ノ ッ キ ン グ が 発 生 す る 限 界 点 火 時 期 を 求 め 、RG の オ ク タ ン 価 イ ン デ ッ ク ス( OI)お よび K 値を算出した。 オクタン価評価エンジンではエンジン回転数をリサーチ法とモーター法の運 転 条 件 で あ る 600rpm と 900rpm に て 実 験 を し た 。過 給 器 に よ り 吸 気 管 圧 力 を 最 大 80kPa ま で 高 め た 。 燃 料 供 給 方 式 は 空 気 過 剰 率 を 精 度 よ く 制 御 す る た め に 吸 気 ポ ー ト ( SPI) 方 式 と し た 。 吸 気 温 度 は 25~ 30℃ 、 潤 滑 油 温 度 は 57℃ 、 冷 却 水 温 度 は 80℃ に 制 御 し た 。 3 .研 究 開 発 の 結 果 3.1 先端技術搭載車両の評価 図 3.1-1 に デ ィ テ ン ト 加 速 ( シ フ ト ダ ウ ン し な い 最 も 大 き い ア ク セ ル 開 度 で 踏 み 込 み ) 時 に お け る 運 転 制 御 を 示 す 。 実 験 は 車 速 40km/h か ら 100km/h 以 上 の加速を繰り返して行った。 図 3.1-1 加速中の運転制御情報 図 3.1-1 よ り 、吸 気 管 圧 力 は 加 速 開 始 前 の -50k Pa の 負 圧 状 態 か ら 加 速 開 始 後 、 過 給 器 が 作 動 し 吸 気 管 圧 力 が 100kPa ま で 高 ま っ て い る 。 ま た 、 吸 気 管 圧 力 の 上 昇 に 比 例 し て 駆 動 力 も 増 加 し て い る 。し か し 、2 秒 後 以 降 は 点 火 時 期 が 0BTDC -382- 以降へ遅角化した。これは、負荷が高くなるにつれてノッキングが起こりやす くなるので点火時期を遅角化(図中の下側が遅角化:点火時期を遅くらせてノ ッキングを起こりにくくしているが出力は低下し熱効率が悪化する)させるこ とによりノッキングを回避したものと思われる。本実験条件ではピストンが最 も高い位置にある上死点よりもさらに遅い点火時期となっている。一般の車両 では、燃焼の安定性や出力低下回避の観点から点火時期を上死点まで遅角化さ せることはないため、本供試車両が通常の制御を越えて大幅に遅角化している ことがわかった。 表 3.1-1 は 定 速 条 件 に お け る 運 転 制 御 を 調 べ た 結 果 で あ る 。 シ ャ ー シ ダ イ ナ モメーターにて登坂条件の負荷を与えて車両を走行させた。その結果、高負荷 条件ではエンジン出力を高めるために吸気管圧力を増加させていることがわか っ た 。 ま た 、 RG と PG を 比 較 す る と 3 つ の 条 件 と も RG の 吸 気 管 圧 力 の 方 が 高 く 点 火 時 期 が 遅 角 化 し て い る こ と が わ か っ た 。 こ れ は 、 RG は ノ ッ キ ン グ が 起 こ り や す い た め 遅 角 化 制 御 を お こ な っ て い る が 、 出 力 が 低 い た め PG と 同 じ 駆動力とするのにさらに過給圧を高めているためと思われる。特に最も吸気管 圧 力 が 高 い 条 件 ③ に お い て 、 RG は 空 燃 比 が リ ッ チ 条 件 で 運 転 を し て い る 。 リ ッチ制御を加えることにより燃焼室内の温度を低下させ、ノッキングを起こり にくくしていると思われるが、ストイキオ条件と比べて燃費が大幅に悪化して いると推定される。 表 3.1-1 定速条件における運転制御 条件 ① ② ③ エ ン ジ ン 回 転 数 (rpm) 1500 2500 2500 駆 動 力 (kgm) 1250 1450 2000 燃料種 RG PG RG PG RG PG 吸 気 管 圧 力 (kPa) 22 18 33 30 98 75 点 火 時 期 (BTDC) 0 6 1 7 -6 1 空燃比 14.4 14.4 14.4 14.4 12.8 14.3 先進車両は過給ダウンサイジングによって高い出力と良い燃費を両立させて い る が 、遅 角 化 お よ び リ ッ チ 化 に よ り ノ ッ キ ン グ を 押 さ え 込 ん で い る 。よ っ て 、 先進車両の評価にあたっては高い吸気管圧力、遅角化した点火時期におけるオ クタン価の影響に注目する必要があることがわかった。 -383- 3.2 運転条件と K 値の関係 RON が 同 じ で も MON が 異 な る と 車 両 の 感 じ る ア ン チ ノ ッ ク 性 が 異 な る こ と から試験燃料のアンチノック性指標を本研究ではオクタン価インデックスと K 値で表現している。ここでオクタン価インデックスとは、ある条件における試 験燃料のアンチノック性をノック限界圧縮比またはノック限界点火時期とし、 そ れ と 同 じ 条 件 で 同 じ 値 と な る PRF 換 算 で の オ ク タ ン 価 と 定 義 す る 。 ま た 、 K 値 は 式 ( 1 ) に て 求 め ら れ る 定 数 で 、 あ る 試 験 燃 料 の RON と MON か ら そ の 実 験 条 件 に お け る ノ ッ キ ン グ 発 生 に 対 す る MON の 寄 与 を 表 す 数 値 で ある。 OI= RON- K×S 式(1) = RON- K×(RON- MON) = (1- K)×RON+ K×MON OI: オ ク タ ン 価 イ ン デ ッ ク ス K: MON の 寄 与 を 表 す 指 標 S: セ ン シ テ ィ ビ テ ィ (RON- MON) 式( 1 )か ら K= 1 の 時 は OI= MON と な り ノ ッ キ ン グ 発 生 に 対 す る 燃 料 の 影 響 が MON と 同 一 で あ る こ と を 表 し 、 K= 0 の 時 は OI= RON と な り ノ ッ キ ン グ 発 生 に 対 す る 影 響 が RON と 同 一 で あ る こ と を 表 し て い る 。 ま た 、 RON が 同 じ 場 合 、K が 正 の 時 は MON が 大 き い ほ ど ア ン チ ノ ッ ク 性 が 良 い こ と を 意 味 し 、逆 に K が 負 の 時 は MON が 小 さ い ほ ど ア ン チ ノ ッ ク 性 は 良 い こ と を 意 味 す る 。 以下にオクタン価インデックスと K 表 3.2-1 値 の 算 出 例 を 示 す 。 表 3.2-1 は エ ン ジ MON RG 90.1 81.8 19 PRF90 90.0 90.0 18 PRF95 95.0 95.0 24 RG の RON、MON、ノ ッ ク 限 界 点 火 時 表 3.2-1 よ り RG の ア ン チ ノ ッ ク 性 は KLSA= 19 で あ る こ と か ら 、 こ れ と 同 等 の PRF 換 算 の オ ク タ ン は 下 記 に て 算 出 で き る 。 OI= ( SKLSA- LPRFKLSA) ×( URPF- LPRF) LPRFKLSA- UPRFKLSA = ( 19- 18) ×( 95- 90) KLSA RON ン 回 転 数 1000rpm、 過 給 条 件 に お け る 期 ( KLSA) で あ る 。 アンチノック性の比較 + 90 24- 18 = 90.8 SKLSA: 評 価 燃 料 の ノ ッ ク 限 界 点 火 時 期 -384- + LPRF (BTDC) LPRFKLSA : 低 標 準 燃 料 の ノ ッ ク 限 界 点 火 時 期 UPRFKLSA : 高 標 準 燃 料 の ノ ッ ク 限 界 点 火 時 期 LPRF: 低 標 準 燃 料 の オ ク タ ン 価 UPRF: 高 標 準 燃 料 の オ ク タ ン 価 式 ( 1 ) よ り 、 オ ク タ ン 価 イ ン デ ッ ク ス お よ び 試 験 燃 料 の RON と MON か ら K 値が算出できる。 K= SRON- OI SRON- SMON = 90.1- 90.8 90.1- 81.8 = - 0.08 SRON: 評 価 燃 料 の RON SMON: 評 価 燃 料 の MON RG P RF9 0 PRF9 5 の 算 出 方 法 を 、 図 3.2-1 を 例 に し て 説 明 す る 。 上 図 に て RG と 2 つ の PRF の ア ン チ ノ ッ ク 性 の 違 い に より点火時期が変化し、それを中 図にてオクタン価インデックスと して評価する。また、下図にてサ ン プ ル の RON と MON の 値 か ら K 値を計算する。 図 3.2-1 は 過 給 を し た 際 の 吸 気 管圧が K 値に及ぼす影響を調べた オ ク タン価 インデック ス オクタン価インデックスと K 値 KLSA( de gBTDC ) 25 20 15 10 5 95 94 93 92 91 90 0 .0 に し た が い 、RG の 示 す オ ク タ ン 価 -0 .1 インデックスが高くなり K 値は大 -0 .2 幅 に 低 下 し た 。 吸 気 管 圧 力 30kPa で は RON が 90.1 の RG の オ ク タ ン 価 イ ン デ ッ ク ス は 約 94 で あ り 、 K値 ものである。吸気管圧が高くなる -0 .3 -0 .4 -0 .5 0 RON の 値 か ら 大 き く 乖 離 し た 。こ のことから吸気管圧力が高い条件 図 3.2-1 は RON 条 件 や MON 条 件 と は 大 き 10 20 30 40 吸 気 管 圧 ( kPa) 吸気管圧力が K 値に与える 影響(ポート噴射式) く異なることがわかった。 -385- 図 3.2-2 は 燃 料 噴 射 方 式 を 直 接 噴 射 式 に 変 え て 吸 気 管 圧 の 影 響 を 評 価 し た も のである。図から、直接噴射式でも吸気管圧が高くなるにしたがい K 値が大幅 に低下していることがわかった。 図 3.2-3 は EGR 率 が K 値 に 及 ぼ す 影 響 を 検 討 し た 結 果 で あ る 。図 か ら 、EGR 0 .0 0 .0 - 0 .1 - 0 .1 - 0 .2 K値 K値 率と K 値に相関性は見られなかった。 - 0 .3 - 0 .2 - 0 .3 - 0 .4 - 0 .4 - 0 .5 0 10 図 3.2-2 20 30 吸 気 管 圧 (kPa) 0 40 図 3.2-3 吸気管圧力が K 値に与える 10 20 30 EGR率 ( % ) EGR 率 が K 値 に 与 え る 影 響 (ポート噴射式) 影響(直接噴射式) 図 3.2-4 は エ ン ジ ン 回 転 数 が K 値 に 及 ぼ す 影 響 を 検 討 し た 結 果 で あ る 。 図 か ら、エンジン回転数が低くなるにしたがい K 値が低下することがわかった。 図 3.2-5 は 空 気 過 剰 率 が K 値 に 及 ぼ す 影 響 を 検 討 し た 結 果 で あ る 。 図 か ら 、 0.05 0.05 0 0 K値 K値 燃料がリッチ条件にて K 値は低下した。 -0.05 -0.05 -0.1 -0.1 -0.15 -0.15 500 図 3.2-4 1000 1500 2000 エ ンジ ン回 転 数 (rpm ) 0.8 2500 エンジン回転数が K 値に与 図 3.2-5 える影響(ポート噴射式) 0.9 1.0 1.1 空 気 過 剰 率 (λ ) 1.2 空気過剰率が K 値に与える 影響(ポート噴射式) 各種運転条件と K 値の関係において、吸気管圧つまり過給の影響が大きく、 吸 気 管 圧 力 が 高 く な る に し た が い K 値 が 低 下 し オ ク タ ン 価 イ ン デ ッ ク ス は RON から乖離する傾向にある。また、3.1項の過給ダウンサイジング車では本実 験条件よりも高い過給をおこなっているため、実際の車両のオクタン価インデ ッ ク ス は 本 実 験 結 果 よ り さ ら に RON か ら 乖 離 し て い る と 推 測 さ れ る 。 -386- 3.3 アンチノック性評価方法 3.2項にて市販ガソリン車 600rpm 用エンジンを改造したアンチノ 件と K 値の関係から過給エンジ ン の K 値 は RON か ら 大 き く 乖 離 す る こ と が わ か っ た 。そ こ で 、 過給条件においてオクタン価を 96 オクタン価インデックス ック評価用エンジンにて運転条 94 92 90 88 0.4 直接計測できる評価法開発のた 図 3.3-1 に 過 給 条 件 に お け る 0.2 K値 めの予備検討を行った。 0 -0.2 RG の オ ク タ ン 価 イ ン デ ッ ク ス -0.4 と K 値 を 示 す 。横 軸 は エ ン ジ ン -0.6 900 の出力である図示平均有効圧 1000 図 3.3-1 が大きいほど、つまり吸気管圧 図 3.2-2 は 圧 縮 比 を 変 化 さ せ た際のオクタン価インデックス と K 値の変化を調べたものであ オクタン価インデックス 2項の結果と同様である。 本検討で、新たなオクタン価 測定法の予備検討として、K 値 が - 0.5 の 評 価 法 条 件 を 見 出 せ K値 る。圧縮比が高くなるにつれて K 値が低下することがわかった。 1300 過給条件におけるオクタン 96 94 92 90 0 -0.1 -0.2 -0.3 -0.4 -0.5 -0.6 6 た。評価条件として最も重要な 6.2 6.4 6.6 6.8 圧縮比 条件は吸気管圧力であり、具体 的 に は 50kPa 以 上 が 必 要 で あ 1200 価インデックスと K 値 力が高くなるにしたがい、オク K 値 が 低 下 し た 。こ の 傾 向 は 3 . 1100 IMEP(kPa) ( IMEP)で あ る 。エ ン ジ ン 出 力 タン価インデックスが大きなり、 900rpm 図 3.3-2 圧縮比がオクタン価インデ ックスと K 値に及ぼす影響 る。また、その他の条件として エ ン ジ ン 回 転 数 900rpm、 EGR 率 0% が 適 当 で あ る 。 -387- 4.まとめ 平 成 22 度 に 先 端 技 術 搭 載 車 両 の ノ ッ キ ン グ が 起 こ り や す い 運 転 条 件 の 検 討 、 運 転 条 件 と K 値 の 関 係 、新 ア ン チ ノ ッ ク 性 指 標 の 評 価 方 法 の 研 究 開 発 を 行 っ た 。 研究成果は以下の通りである。 ( 1 ) 高 過 給 ダ ウ ン サ イ ン ン グ エ ン ジ ン を 搭 載 し た Golf を 例 と し て 運 転 条 件 を 検 討 し た 。 高 負 荷 条 件 で は 100kPa の 過 給 を お こ な っ て い る が 、 ノ ッ キング回避のため大幅な点火時期の遅角化、空燃比のリッチ制御をして いることがわかった。 (2)市販ガソリン車用エンジンを改造したアンチノック評価用エンジンでは K値に与える影響が最も大きい運転条件は吸気管圧力である。また、吸 気 管 圧 力 30kPa に お け る K 値 は - 0.5 程 度 で あ っ た 。 ( 3 ) K= - 0.5 条 件 を 例 と し て 検 討 し た ア ン チ ノ ッ ク 性 評 価 方 法 の 開 発 の 目 途が立った。 -388-