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スラウェシ島
ジャワのモダンなヴェール
スマトラ島
ニューギニア島
カリマンタン島
イ ン ド ネ シ ア
塩谷もも
ジャワ島
しおや もも / 島根県立大学、AA 研共同研究員
ローチなどのアクセサリーをつけたり、ファッ
ル着用が以前より自由になったこと、ファッ
ションとしての流行など多様な要因がある。
ビクトリア湖
表するものの一つである。しかし、ムスリ
ション雑誌に載っている巻き方を研究したり
ム女性すべてがヴェールを着用しているわ
と、おしゃれとして楽しむ面もある。
けではなく、それは、ムスリムが人口の9
ヴェールというと頭部に注目が集まりがち
ス
ワ
ヒ
リ・
コ
ー
スト
ヴェールは、イスラームのイメージを代
スラカルタ
日常生活の場でヴェール姿が増えるのと連
動して、結婚式などのフォーマルな場でも、
割ほどを占めるインドネシアも例外ではない。
だが、ヴェールはアウラット(ムスリムが見
ヴェールを着用する女性が増えている。ジャ
中には、日常的には着用せず、宗教行事など
せてはいけない体の部位)を隠すための衣装
ワの結婚式は数百人を招待するのが一般的
特定の機会にだけヴェールを着用する女性も
の一部である。一般的に、女性のアウラット
で、大規模に行われる。最近では、ムスリム
いる。
は、顔と手首より先以外の部分と考えられて
風のヴェールをつけた花嫁衣裳が人気を集め
インドネシアでは、ヴェールはジルバッブ
いる。そのため、ヴェールは、長袖、長い丈
ている。日常的にヴェールを着用してない花
やクルドゥンと呼ばれ、色、形、素材ともに
のスカートやズボンを組み合わせたムスリム
嫁が、結婚式の際にはヴェールを着用するこ
多様である。ヴェールには、大きく分けて一
服とセットで着用される。
ともあるという。また、親族や招待客の女性
枚布を折りたたんでつけるタイプと顔の部分
近年、ジャワでは日常的にヴェールを着用
も、ヴェールをつけて結婚式に参加すること
以外が縫ってあり、そのまま被れるタイプが
する女性が増えており、筆者が調査を続けて
が増えた。
ある。敬虔なムスリムほど大きなヴェールを
きた中部ジャワ州スラカルタ市郊外の調査地
1990年代にジャワで観察した結婚式では、
身につける傾向がある。目の部分を除いて顔
でもこれは同様である。調査地近くにもヴェー
花嫁、親族と招待客の女性は民族衣装を着て、
を隠すヴェールはチャダルと呼ばれ、色は黒、
ルやムスリム服の店がオープンし、通りの
サングルと呼ばれる結い髪をしていた。2002
茶色等の暗い色に限定される。チャダルの着
新聞・雑誌売りがムスリム女性向けのファッ
年に観察した敬虔なムスリムの一家の結婚式
用者は、インドネシアでは少数派である。
ション雑誌も並べている。また、ヴェールの
では、髪が見えないようにサングルを黒い布
日常的にヴェールを着用している女性は、
ネット通販も人気がある。ヴェール着用者増
で巻いた花嫁姿をはじめて目にしたが、調査
服の色や外出先にあわせてヴェールの色や
加の背景には、イスラーム復興の影響、1982
地周辺では珍しいこととされていた。今では、
形を選ぶため、何十枚ものヴェールを持って
年に禁止された公立学校でのヴェール着用
花嫁がヴェールをつけることは珍しいことで
いることが珍しくない。ヴェールにピンやブ
が、
1991年に認められたこと、職場でのヴェー
はなくなっている。インドネシアで出版され
たムスリム向けのブライダル誌をめくってみ
チャダル姿の女性(中央手前)。
ると、モデルン(Modern:モダン、近代的)
という語が目立つ。多民族国家のインドネシ
アを象徴するように各地域の民族衣装をモデ
ルンにアレンジし、ヴェールを加えた花嫁衣
裳の写真が並び、さらに肌が露出しないウェ
ディングドレスにムスリム風ヴェールを加え
たものも紹介されている。花婿衣装について
も、やはり民族衣装をモデルンにアレンジし
たもの、そしてスーツが紹介されている。
調査地では、敬虔なムスリムとされる男性
が、ムスリムだからという理由で結婚式にジャ
ワの民族衣装を着ないで、スーツを着たこと
ジャワの結婚式(1997 年)。女性の
髪型はサングル。
があった。また、昨年結婚した敬虔なムスリ
ムの友人は、
「ムスリム式」に結婚式をするこ
とにこだわりを持っていた。メールで送られ
てきた結婚式の写真の中で、彼女は民族衣装
でなく白いドレスにヴェールを組み合わせた
花嫁衣裳で、花婿はスーツ姿だった。いずれ
もジャワ人よりもムスリムであることを意識し
ての選択だと思われるが、西洋風の衣装を身
につけることによってムスリムであることを主
張しているという点が、一見すると矛盾して
いるようで興味深い。イスラームと近代、重
ジャワの結婚式(2009 年)。女性はヴェール、男性はスーツを着用。
6
Field+ 2010 07 no.4
要な先行研究のテーマが浮き出てくるようだ。
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