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Sustainability Report 2006

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Sustainability Report 2006
社会側面
■ 地域社会・グローバル社会
安全への取り組み
「交通事故死傷者ゼロ」を目指して
クルマが、移動の利便を提供する交通手段として発展する
ためには、環境への負荷、交通事故、渋滞といったネガティ
きることがあります。
トヨタは最新のハイテクを積極的に用い
てこれらの運動性能向上に努めています。
こうした考えから開発された※VDIMは、
エンジン、
ブレーキ、
ブ・インパクトの最小化が必要です。
トヨタは、
クルマの性能
ステアリングなどを一つに統合制御するシステム。
たとえば雨
向上や環境負荷の削減同様、健康で豊かなモビリティ社会
天のカーブ路でもクルマが横滑りをしないように、駆動力・制
の実現に向け、社会的課題への対応を最重要項目に位置
動力・タイヤ切れ角などを統合的に制御して安定した走行を
付け、積極的に取り組んでいます。
実 現しています。2005年8月発 売のGS430、9月発 売の
安全に関しては、
「交通事故死傷者ゼロ」
を目指し、
「人・
IS350に搭載しました。
クルマ・交通環境」
が一体となった活動を推進しており、安全
※VDIM:Vehicle Dynamics Integrated Management:アクティブステアリング統合制御
な
「クルマ」づくりに加え、
ドライバーや歩行者など
「人」への
■ VDIM(アクティブステアリング統合制御)の制御イメージ
啓発や
「交通環境」整備への提言など、
総合的にアプローチ
しています。
装着車
凍結路面
乾燥路面
■ 交通安全総合対策
ブレ−キング 車両が安定する方向に前輪切れ角を
最適に制御するため安定姿勢を確保
交通安全啓発活動
人
非装着車
凍結路面
乾燥路面
凍結路面より乾燥路面のブレーキ発生力が
大きいため車両姿勢が不安定
VDIM(アクティブステアリング統合制御)
の制御イメージ
プリクラッシュセーフティの取り組み
世界初ドライバーモニター付きプリクラッシュセーフティシステム(PCSS)
クルマ
交通環境
安全性の追求
交通環境整備への参画
衝突時の被害を軽減するため、
プリクラッシュセーフティシス
テム
(ミリ波レーダー方式)の採用を拡大しました。2005年8
月発 売 のGS430、GS350、9月発 売 のIS350、IS250、
2006年1月発売のエスティマに搭載しました。
また、
ドライバーの状況に応じて作動するシステムとして、
ド
〈クルマ〉安全性向上の取り組み
ライバーモニター付きプリクラッシュセーフティシステムを世界
トヨタは、安全のための技術開発、対策を3つに分けていま
で初めて開発。
ミリ波レーダーとカメラによる進路上の障害
す。①事故を起こりにくくする
「アクティブセーフティ
(予防安
物検知に加え、
ステアリングコラム搭載のカメラと画像処理
全)
」、②事前に衝突を予知し、衝突被害を軽減する
「プリク
コンピュータを用いてドライバーの顔の向きを検知。
ドライ
ラッシュセーフティ」、
③事故発生時の人への傷害を低減する
バーが正面を向いていない状態で衝突の危険性が高い場
「パッシブセーフティ
(衝突安全)
」の3側面から安全を追求。
合、通常より早いタイミングで警報を発します。
これにより、優
世界の最新技術動向を踏まえるとともに、事故実態を解析
することで実安全性能を追求しています。
れた衝突被害軽減効果が見込まれます。
2006年3月発売のGS450hに搭載しました。
アクティブセーフティ
(予防安全)の取り組み
VDIM新開発
ドライバーの安全を守るために大切なのは、
「事故を未然に
防止すること」
で、
これがアクティブセーフティの課題です。ア
クティブセーフティの基本の一つとして、
クルマの本来機能
である
「走る」
「曲がる」
「止まる」
がドライバーの意図通りにで
62
Sustainability Report 2006
ドライバーモニタ付きPCSSのカメラ
カメラの撮影範囲
ドライバーモニターの作動イ
メージ
の急激な角度変化を防止し、頸部傷害を低減します。2005
全方位コンパティビリティ
年発売の新型ヴィッツ以降の全新型またはフルモデルチェ
重量や車高の異なるクルマ同士の衝突時に、被害性・加害
ンジの乗用車に、追突時速度を時速50kmに上げ、基準をク
性の両方を軽減するコンパティビリティ
(共生)の概念のも
リアした新しいWILコンセプトシートを搭載しました。
と、
2tクラスの車両との衝突安全性を追求しています。
※WIL:Whiplash Injury Lessening:頸部傷害低減
理念と体制
パッシブセーフティ
(衝突安全)の取り組み
衝突実験では、50%ラップオフセット前面・後面衝突、側
緊急通報サービス「ヘルプネット」
2月発売のヴィッツ以降の全新型またはフルモデルチェンジ
交通事故や急病発生時、
自動またはボタン操作でヘルプネッ
の乗用車に対応しています。
トセンターを通じ、
クルマの位置や車両情報など救急救助に
必要な情報が110番・119番に通報されます。緊急事態発生
■ 全方位コンパティビリティ
から通報時間までの時間短縮により、死者数の低減、傷害
前面衝突
自車両
2tクラスの車両
環境
面衝突を2005年からは時速55kmで実施しています。2005年
程度の低減、渋滞の緩和を図ります。
社会
2005年8月発売のGS430、GS350、
9月発売のIS350、
2tクラスの車両
IS250、2006年3月発売のGS450hには、
エアバッグ連動の
後面衝突
「ヘルプネット」自動通報タイプを標準装備、次世代※テレマ
側面衝突
2tクラスの車両
ティクスサービス
「G-LINK」
を設定しました。
※テレマティクスサービス:自動車を中心とした情報提供サービス
SRSツインチャンバーエアバッグ
ヘルプネットURL : http://www.helpnet.co.jp/
経済
乗員保護性能向上のため、新しい形状のエアバッグを開発
(助手席に装着)
。エアバッグをふたつの袋形状とし中央にく
ぼみを設け、多面で受け止めることで乗員への荷重を分散、
■ ヘルプネットのサービスの流れ
人 体への負担を軽 減します。2005年9月発 売のIS350、
1 緊急事態発生
通報
2
エアバッグ連動タイプ
IS250に搭載しました。
ワンタッチタイプ
ヘルプネットボタン
スペシャルストーリー
エアバッグ作動に連動し、自動的に通報
ワンタッチ通報
「ヘルプネットボタン」を押すことにより、
ワンタッチ通報も可能
5
3
4
現場へ出動
SRSツインチャンバーエアバッグ
通報・接続
WILコンセプトシート
ヘルプネットセンター
�������
シート構造は、主として後面
歩行者傷害軽減ボディ
衝突時の乗員保護に効果を
事故の際、歩行者へのダメージを軽減するため、歩行者傷
発揮します。1997年のプリウ
害軽減ボディを採用しています。歩行者の頭部への衝撃を
ス発 売 以 降、シートバックと
軽減するため、
ボンネット、
ヒンジ周辺、
フェンダー、
ワイパー周
ヘッドレストが胴体と頭を同
辺に、衝撃吸収構造を採用。脚部への衝撃軽減のため、衝
時に受け止め、両者の相対
撃吸収バンパーを採用しています。
的な動きを抑える WILコン
※
セプトシートを採用。胴体と頭
レベルアップしたWILコンセプトシート
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Sustainability Report 2006
63
社会側面
■ 地域社会・グローバル社会
〈人〉交通安全啓発活動への取り組み
トヨタセーフティスクール
1960年代よりドライバー向け安全運転講習会や幼児向けの
豊田市周辺の幼稚園・保育所の幼児をトヨタ会館に招いて
交通安全啓発活動などを継続的に実施。
ドライバー・非ドラ
交通安全教室を毎年開催。
イバーを問わず、交通を構成するすべての人に向けた活動
2005年度はトヨタ会館では
に取り組んでいます。
119園の園児約5,100人が
参加、静岡県のモビリタでも
トヨタ交通安全キャンペーン
園児約30人が参加。1975年
全国交通安全運動に呼応し、毎年春・秋、販売店各社と共
からの累計参加者は2,308
同で実施。2005年度重点テーマは、①幼児の飛び出し事故
園、
約20万人です。
トヨタ会館で実施
( 06/1)
防止とチャイルドシートの正しい着用
(春)
、②後席シートベル
トの着用
(秋)
を推進しました。1969年から続いている活動と
トヨタ・チャイルドセーフティコミュニケーション
して、
2005年度は、幼稚園・保育所の新入園児を対象とした
2000年よりNPO「※ 子供の安全ネットワーク・ジャパン」等と
交通安全絵本を約267万部、
連携して全国の妊産婦・保
紙 芝 居を約4万4,000部 贈
護者を対象にチャイルドシー
呈。シートベルト・チャイルド
トの必要性や正しい使い方
シート着 用 啓 発 活 動 用に、
を体験する講習会を実施。
啓 発リーフレットを約150万
累計約1,600人
(2006年3月
部配布しました。
末)
が受講しました。
2005年度配布「幼児交通安全絵本・紙芝居」
※子供の安全ネットワーク・ジャパン:
全国の産婦人科医・小児科医を中心に子ど
講習風景
もの事故防護啓発活動を進める団体
モビリタでの「トヨタ ドライバーコミュニケーション」
コラム
トヨタ独自の安全運転プログラム
「トヨタ ドライバーコミュ
ンディング低ミュー路を完備。
トヨタ上級テストドライバーを
ニケーション」は、
1987年に若年ドライバーの事故を低減
講師に、
「死角の確認」
「高速フルブレーキング」
「低ミュー
するために始まり、全国で随時実施。2005年4月には
「トヨ
路ブレーキング」
「低ミュー路走行」等、
クルマの限界挙動
タ交通安全センター モビリタ」
が完成し、毎月開催してい
を安全に体験することができます。2005年度は5,000人が
ます。
受講しました。
モビリタは、静岡県の富士スピードウェイ内に開設した
「セーフティ、
スムーズ、
スピーディという運転上の優先順
総面積約13万㎡の国内最大級施設で、広大なフラット
位や、
緊急時のとっさの操作な
コース、
35度バンクを含む周回路、直線 低ミュー路、
ワイ
ど、教習所では教わらないこと
※
が学べて、とても有意義でし
た。また参加したいです」
(講
習会参加者の常岡未知瑠さ
ん)
。
※低ミュー路:摩擦係数の少ない滑りやすい路面
修了証を手にした常岡未知瑠さん
モビリタURL : http://www.toyota.co.jp/mobilitas/
高速フルブレーキング講習
64
Sustainability Report 2006
I
TS
(Intelligent Transport Systems)
交通事故低減、安全な交通環境の実現のためには、政府・
ITSとは、最先端の情報通信技術の活用により、安全で快
業界が一体となった取り組みが必要であり、㈳日本自動車
適、円滑な交通を目指し、人と道路とクルマを一体として構
工業会
(以下、
自工会)
の活動を通じ、関係省庁への政策提
築する新しいシステムです。
トヨタは、
クルマ自体の魅力と、
ク
言を行っています。
ルマを利用することのうれしさを高める「クルマの高機能化」、
人・モノの移動の円滑化・効率化や安全な交通環境を総合
2010年度)
策定に向けて、
自工会を通じ提言。今後の高齢社
的に実現していく「交通システムの高度化」に、幅広く取り組
会に向けた諸対策の強化を中心に、主に以下の内容です。
んでいます。
①交通環境:交通安全施設の整備のさらなる充実、地域住
民の意見反映等
環境
2005年度は国の「第8次交通安全基本計画」
(2006∼
理念と体制
〈交通環境〉交通環境整備等の政策提言
またITSの開発には、検知技術や情報通信技術、情報処
理技術など、従来のクルマづくりの枠を超えた幅広い技術の
②人:高齢者教育、高校での教育の充実
融合が求められます。
トヨタは、行政や民間、学術機関などと
③クルマ:安全装備の普及支援、事故分析のさらなる強化
連携した研究開発、実証実験プロ
(「セーフティアクション21」)
もあわせて普及していきます。
ジェクトに参加。特に※ITS世界会議
社会
また、これまでに自工 会で作 成した高 校 教 師 用 教 材
には第1回から参加し、
セッション(論
文)、展示会を通じ、最先端のITSの
WBCSD
「サステイナブル・モビリティ・プロジェクト」
コラム
WBCSD
(持続可能な発展のための世界経済人会
され、経済・環境・社会に関する提言を行っています。
「サステイナブル・モビリティ
・プロジェクト
(SMP)
」は自
動車、
エネルギー産業の有志12社によって2001年にス
タート。WBCSDの副会長である豊田章一郎が共同議
長を務め、2004年7月に
「Mobility2030:持続可能な社
ITS世界会議
(米国)
( 05/11)
います。
※ITS世界会議:ITSの産官学の関係者(政府・学会・団体)が世界レベルでのITS実用化を議論する
イベント。欧州、
アジア/太平洋、米州の順で毎年開催。
交通流改善
コラム
トヨタの本社地区では通勤時間帯の交通渋滞問題に
長く取り組んでいます。
トヨタでは2003年2月からマイカー通勤者に対し通勤
スペシャルストーリー
会を目指すモビリティの挑戦」
を発行しました。
を行い、ITSの普及促進をリードして
経済
議)
は世界30ヶ国以上、180の国際企業のトップで構成
研究成果や最新技術の展示・発表
手段の転換を目的に
「通勤シャトルバスの運行」
「自転
車駐輪場の整備」等の※TDMを実施しており、
シャトル
バスは現在6路線で1日に約200便が運行し、往復で約
4,000人が利用。駐輪場についても継続的に整備を進
SMPのうち、
トヨタを含む7社は、交通安全の国際組
織であるGRSP
(Global Road Safety Partnership)
め、昨年から今年にかけて約500台分を新たに確保し、
現在約2,500台の駐輪が可能となりました。
と共 働で、交 通 安 全 支 援プロジェクトGRSI
(Global
2004年度、2005年度には豊田市TDM研究会による
Road Safety Initiative)を立ち上げ、2005年度は中
「豊田市TDM社会実験」にトヨタも参加し、交通環境
国、ASEAN、
ブラジルでの運営体
を整備し、交通行動の変更を促した結果、
「車両台数
制の整備を進めました。
減少」
「走行速度向上」が進
「愛・地 球 博」の 開 催を機 に、
み、東名豊田IC∼トヨタ本社
WBCSDの年次総会が2005年6月
(4.2㎞)の朝の通勤時間帯
開催され、
WBCSDの戦略および
「ア
で約14%
(2004年度)のCO2
ジアと持続可能な将来」
「エコシス
削減効果を得ました。
テム&ビジネス」
などを討議しました。
※TDM=Transportation Demand
Management:交通需要マネジメント
通勤シャトルバスによる通勤風景
Sustainability Report 2006
65
社会側面
■ 地域社会・グローバル社会
社会貢献活動
「社会から信頼される良き企業市民」
となることを目指し、
また
豊かな社会づくりとその持続的な発展を目標に社会貢献活
動に取り組んでいます。
人材育成
トヨタは、次世代を担う人材育成をグローバルに支援します。
中国では、2005年吉林大学と天津大学に日本語講座、
2006年1月には社会貢献活動の専門推進部署として社
トヨタの関連事業体でのインターンシップ等を内容とする
「特別
会貢献推進部を発足。
クラス」
を設置するとともに、清華大学・北京大学等13大学に
① 全社の社会貢献機能を集約し、国内外の社会貢献活
て奨学金制度を開始し、
中国での人材育成を支援しています。
動の統括
日本では青少年へ
“モノづくりの大切さ”
を伝え、
“科学への
② 自主プログラムの企画・実践、
ボランティア活動の促進
興味”
を喚起する
「科学のびっくり箱!なぜなにレクチャー」
を
③ トヨタ博物館等の施設運営
1996年から毎年開催。社員ボランティアが出張講師となり、
を約80人の部員が社内外の団体と連携して推進。
ホバークラフト、
からくり自動車などの工作プログラムを実施。
また、社長を委員長とし、関係役員で構成される
「社会貢
2005年度は11都道府県で23回開催しました。
献活動委員会」
を最高意思決定機関として、環境・交通安
また、2006年4月、JR東海、中部電力等と共同で海陽中
全・人材育成を重点分野に、
さまざまな分野で社会ニーズに
等教育学校を設立。建学の精神に、
「将来の日本を牽引す
応じて、
トヨタの持つ技術やノウハウを活用しながら積極的
る、明るく希望に満ちた人材の育成」
を謳っています。
に社会貢献活動を進めています。
■ 社会貢献活動基本方針
トヨタ自動車株式会社と関連子会社
(当該表中 トヨタ)
は、豊かな社会の実現と、
その持続的な発展のため、積
極的に社会貢献活動を推進します。
目的
トヨタは、
社会の幅広い層と力を合わせ、
持てる資源を有
取り組み姿勢 効に活用しながら、
次の世代を担う人材の育成と社会的
課題の解決に向けた社会貢献活動に取り組みます。
社員の
トヨタは、社員が一市民として主体的に行う社会貢献活
インボルブメント 動を支援します。
トヨタは、社会貢献活動の成果を開示し、広く社会と共
情報開示
有し、社会の発展に寄与することを目指します。
トヨタは、社会貢献活動基本方針をグローバルに共有
グローバル展開 し、各国・各地域の実状に合わせた社会貢献活動を展
開します。
在日ブラジル人の整備技術者育成
コラム
在日ブラジル人約28万人中、約6万人が修学適齢期
の子女で、言葉が大きな障壁。
トヨタは1999年、
ブラジ
ル帰国後の就職を支援するために、
トヨタ名古屋整備
専門学校内に、
ポルトガル語での「在日ブラジル人自動
車整備工養成コース」
を開設。以来122人が卒業し、19
人が修学中です
(2006年3月末)
。
第4期生カルロス・テルオ・ナカツギさんはブラジルトヨ
タ技能コンクールで優勝し、
2005年4月の世界大会で再
来日。先輩の活躍を見て、
後輩の志気も向上。
「ナカツギ
社会貢献活動の実績
さんを目標に、
日本で技術を磨き、
研修後は母国ブラジル
2005年度、
グローバルトヨタの社会貢献活動実績は下記の
で働く予定です」
(研修生のアドリアナ・カエツさん)
。
通りです。
(※1)
■ 2005年度分野別実績
環境
交通安全
その他
人材育成
※2
168 億円
張社長
(現会長)
とナカツギさん
(右)
( 05/4) 研修中のカエツさん
(手前)
芸術文化
福祉
地域社会
※1 ・トヨタ単体と主要子会社の連結ベース。
・海外事業体の実績は、2005年度平均為替レートで円換算。
※2 関連施設の運営および目的が複数の分野にわたる活動はその他に分類。
66
Sustainability Report 2006
交通安全
トヨタでは
「交通事故死傷者ゼロ」に向けて、人・クルマ・交通
環境が一体となった総合的な取り組みを進めています。
交通安全への取り組みについてはP62∼65。
理念と体制
環境
トヨタ環境活動助成プログラム
トヨタは、地球と社会の持続可能な発展に向けて、環境分
野における社会貢献活動に取り組んでいます。
「環境改善に資する環境技術・環境人づくり」
をテーマに、
2005年度は、
25件、総額約1億7,000万円のプロジェクトを
助成。従来からの「一般助成枠」に加え、
「小規模助成枠
緑と住民が共生する持続可能な仕組みづくり
(国内活動のみ)
」
を新設し、
より多くの団体・グループに開か
れたプログラムとしました。国内外の有識者で構成する選考
置し、過放牧や過伐採により著しく砂漠化が進行した地域
委員会が、
申請のあった556プロジェクトの実用性・発展性な
です。
トヨタは、中国科学院や豊寧県林業局、
NPO地球緑
どを審議し、一般助成12件、小規模助成13件を決定。また
化センターと共同で、
2001年より砂漠化防止プロジェクトを
前年度までの助成先を現地訪問し、
プロジェクトのフォロー
多岐にわたり支援してきました。砂漠化の元凶である過放牧
アップをしています。
このプログラムは、
トヨタが
林活動を実施し、地域住民の経済的自立を目指した環境緑
1999年に
「※グローバル500賞」
化モデルの形成を推進しています。
受賞を記念して開始。2000
2005年度までに、
2,174haの植林を実施し、
2006年度中
社会
や過伐採の対策をとるとともに、果樹や薬草を取り入れた植
年度の開始以来6年間の支
には全2,500haの植林を完了する予定です。植林地では緑
援累計は、世界33ヶ国、
89件、
の回復と、砂の固定化等の環境改善効果を確認。植林地
約10億8,000万円です。
周辺に植えた牧草を利用し、乳牛飼育を始めた農家の方か
※グローバル500賞:国連環境計画
(UNEP)
が「持続可能な発展」に資する環境保護・改善に功績
らは
「現在、毎日牛乳が生産できるようになり嬉しい。今後
たい」
との声をいただいてい
ます。また、
これから収穫され
る果樹や薬草にも期待が寄
せられています。
今後は、本モデルの永続
展開を目指します。
ポプラと牧草の植栽地
のあった個人または団体を表彰する制度
(1987∼2003年)
。
■ 2005年度助成対象プロジェクト
(一般助成枠)の一部
ブロジェクト名称
アポロバンパ保護地区での流域管理に向けた地域
密着型の能力開発
白カルパチアの田園地方における持続可能なエネル
ギー利用
学校教育における環境面の重視と環境技術に基づ
いた地域社会の開発
オリッサのチリカ環礁における参加型学習を通じた持
続可能な環境活動
アジアESD推進事業∼実践交流ウェブサイトの構築
と実践ハンドブックの制作∼
自然保護区周辺住民との環境保全協力
タノン海峡における沿岸資源管理のための地域密着
型漁師学校の設立
環境配慮型設計の集落における農業と住宅
トヨタ白川郷自然學校
活動地域
ボリビア
チェコ
インド
インド
日本、
アジア
マダガスカル
フィリピン
スロバキア
コラム
2005年4月、世界遺産の合掌集落がある岐阜県白川村
「木や葉を使って色々な作品を作るのが面白く、
自然を身
の社有地を活用し、約100人の宿泊研修施設を有する
近に感じました」
との声。一年を24等分した暦にちなんだ
「トヨタ白川郷自然學校」
を開校。白川郷の文化と白山麓
「二十四節気プログラム」等
の豊かな自然のもと、子どもから大人まで
“自然との共生”
を実施中。春は雪解けの小
を実感できます。自然体験、環境技術体験、伝統文化体
川に遊ぶ「春の沢歩き」。夏
験等の自然体験型環境教育を通じ、
自然環境の回復・保
は
「ギフチョウウォッチング」
全に取り組んでいます。
等、季節を感じ自然に学ぶプ
開校以来1年間で、約1万4,000人のお客様が来訪。
2005年8月、
プログラムに参加した岐阜県の中学生からは
スペシャルストーリー
的な現地定着と他地域への
2004年度助成
(インドネシア)
経済
も、過放牧の原因となるヤギではなく、乳牛を少しずつ増やし
環境
中国河北省豊寧満族自治県は、北京市街の北180kmに位
ログラムを今後も展開・拡充
します。
環境教育プログラムを体験中の中学生
Sustainability Report 2006
67
社会側面
■ 地域社会・グローバル社会
芸術文化
来場いただいています。2005年度は19都道府県で37回開催
自動車文化・モノづくり文化継承
し約3万4,000人のご来場がありました。
自動車の歴史を紹介するトヨタ博物館
(1989年開館)
とトヨ
また、2004年1月に
設したプログラム
「トヨタ・子どもと
タグループ13社共同で設立された産業技術記念館
(1994年
アーティストとの出会い」は、2005年11月∼2006年2月の間
開館)
では、
「自動車文化やモノづくりの学習の場」
として、
に、NPO「芸術家と子どもたち」
との連携で、子どもたちを対
常設展示の充実をはじめ、企画展やモノづくりイベントなど、
象にしたワークショップを沖縄で開催。
3人のアーティストと子
さまざまな活動を展開しています。
「愛・地球博」開催の2005
どもたちが 作活動を行いました。
年には、両館への来館者は、合計で57万人に達しました。
ボランティア活動
トヨタ従業員の積極的なボランティア活動を支援するため、
1993年設立の「トヨタボランティアセンター」は、参加者への
情報提供など継続的な支援を実施しています。
なお、2005年
度の活動参加者は、
のべ2万4,000人です。
また、同センター
トヨタ博物館
が中心となり自然災害発生時の被災地自立復興を支援する
産業技術記念館
「トヨタグループ災害V
(ボランティア)
ネット」
を2003年に発足
情報発信施設についてはP76。
しました。2005年度の体験イベントには約300人が参加しま
芸術
した。
2005年度は、産業技術記念館にて
「トヨタコレクション展∼
モノづくりの源流∼」
を開催。からくり人形「弓曳童子」や「エ
レキテル」
などの江戸から明治期にかけての科学技術資料
を展示し、多くの人々のモノづくりへの興味を深めました。
アマチュア音楽活動支援
愛・地球博のボランティア活動
トヨタボランティアセンターの呼びかけで、
トヨタ社員とその家
族、OB853人が、
「愛・地球博」で実施。参加者はインフォ
メーション活動、巡回活動、美化活動、迷子センターでの活
の一環として、1981年から始
動などを行いました。70%以
まった
「トヨタコミュニティコン
上の参加者がボランティア初
サート」は、今年で25周年を
体 験。
「外 国の方に日本 文
迎え、
これまで全国44都道府
化を伝えることができ、
ボラン
県128市町村で1,100回を超
ティアの大切さや楽しさを実
え、のべ90万人の皆さまにご
病院でのコンサート開催
( 05/4)
感できた」
などさまざまな感想
が寄せられました。
体育館を稽古場として開放
中越地震被災地の児童等を愛・地球博に招待
東京本社の体育館を、
稽古場探しに苦慮するダンサーに
8月28日∼30日、
トヨタグループ災害VネットがNPO団体など
開放──2002年より、
若手コンテンポラリーダンサーたち
で構成する
「あいち中越支援
に稽古の場を無償提供し
ネットワーク」と協力して、被
ています。
これは「トヨタコレ
災地の児童と父母、教師約
オグラフィーアワード」
(次
90人を
「愛・地 球 博」に 招
代の振付家を発掘・育成す
待。被災者の方々のリフレッ
る顕彰事業:2001年∼)
と
シュと、将来の夢・希望を思
ともにトヨタが進める芸術
い描く機会となりました。
文化支援の一環です。
68
コラム
ベビーカー貸し出しのボランティア
( 05/8)
Sustainability Report 2006
体育館で稽古中のプロダンサー
中越地震の被災者招待
( 05/8)
理念と体制
海外事業体の取り組み事例
環境
全国地域レベルで環境社会貢献活動展開
タイ・TMT(Toyota Motor Thailand)
地域レベルの活動の一環としては、TMTから車で約
ル、地域レベルの環境・社会貢献活動を推進していま
20分のところにあるバンプー海岸で自然教育センター
す。全国レベルでは、
「ストップ温暖化キャンペーン」
を
の設立に寄与しました。
このプロジェクトは、
エビの養殖
展開しています。タイは京都議定書による温暖化ガス
場開発などで減少が進んでいるマングローブ林を守る
削減目標は課されてはいませんが、同議定書を批准し、
ために、
シリキット王妃の生誕72周年を記念してタイ国
自主的に削減に取り組んでいます。環境先進企業と
陸軍と協力して実施した
評価されるTMTは、
環境NGOのTEI
(タイ・エンバイロメ
ものです。
同センターは2004年に
展開。2005年8月にはキックオフセレモニーを開催。同
開設され、WWFタイが運
10月には全国の学校25校から先生と生徒を集め、
キャ
営。TMTは鳥を中心とす
ンプを開催し、温暖化に対する教育と解決への糸口を
る展 示コーナーや木 道、
探る研修を実施。参加者
水路の設置に協力してい
からは、
「キャンプでは温
ます。センター長を務める
暖化防止の方法を学べ
ティティウット コーチャーサーンセン氏は、
「トヨタの支
ただけでなく、
とても楽しく
援がなければプロジェクトは進まなかったでしょう。資金
さまざまな活動に取り組め
れています。
このキャンプを受けて、全国5地区25都市で温暖化
防止活動のコンテストを実施。参加した2,000人全員
ティティウット コーチャーサーンセン自然教育
センター長(左)
とスィタノン チェサダーピパット
WWFタイ事務局長
援助だけでなく、水循環のための水路設計に知恵を出
してもらい、従業員には植樹で汗を流してもらっていま
スペシャルストーリー
ました」
との感想が寄せら
温暖化防止キャンペーンのキャンプに参
加した子どもたち
経済
ンタル・インスティテュート)
と協働して同キャンペーンを
社会
TMTはタイで最も尊敬される会社を目指し、全国レベ
環境
環境NGOと協働した全国規模の温暖化防止キャンペーンの展開やマングローブの植林活動等、全国
規模および地域レベルの社会貢献活動を実施。従業員も参加し、活動の広がりを見せています。
す。地域の小さな活動ですが、WWFタイの活動のモデ
ルとすべく、TMTと協働してこのプロジェクトを育ててい
きたい」
と意気込みを話します。
を集め、
ウボン ラッタナ王女臨席のもと表彰式を行い
また、
マングローブの水の浄化効果が認められたこと
ました。こうした温暖化防止の情報は、TMTのウェブサ
から、地域コミュニティへの貢献の一環として、
TMT従
イトで提供しています。
業員が自らマングローブ林再生のための苗の植え付け
を実施。2004年10月と2006年2月に、従業員とその家族
計600人が参加し、
2万本の苗を植えました。植樹体験
は従業員にとってもマング
ローブ林の大切さを知る
良い機会になりました。
温暖化防止コンテストの表彰式。中央はウボン ラッタナ王女
マングローブの植樹を行うTMT従業員
Sustainability Report 2006
69
社会側面
■ 地域社会・グローバル社会
海外事業体の取り組み事例
環境
全国560小学校の校庭を緑化
カナダ・TCI(Toyota Canada Inc)
TCIとその販売店は2000年から環境NGOエバーグリー
木陰でくつろぎ、岩の間で飛び回って遊び、花みずき
ンと連携し、
「トヨタ・エバーグリーン・ラーニンググラウン
の枝に止まったてんとう虫を観察するなど自然とふれあ
ド・プログラム」
を立ち上げました。アスファルトや裸土で
える場となっています。これまでに全 国715校・52万
覆われフェンスで囲われているカナダの学校の校庭を、
1,900人がプログラムに参加。
「校庭が緑になって転ん
自然の中で遊び、学べる緑豊かに変えることが目的で
でも痛くない」
と喜ぶ子どももいます。
す。申し込みをした学校に植樹の道具と資金を提供
し、専門家を派遣。子どもたちが自ら植物を選んで配置
を考え、野菜や花、
ベリー類などを植えて緑の校庭を作
り上げます。エバーグリーンは在来樹種の植樹を推奨
し、
そのデータベースを公開しています。
販売店も、樹を輸送する車両提供等を通して、地域
の学校で活動に参加しています。2005年は、92の販売
店がプログラム参加校126校中57校の活動に参加。
プログラム実施後の校庭では、子どもたちがカエデの
子どもたちが自ら緑化を行う
環境
水の重要性展示をスポンサー
USA・TMMK(Toyota Motor Manufacturing, Kentucky)
TMMKは2003年に、ケンタッキー州魚類野生動物局
TMMKはトヨタ最大の生産拠点で、大量の水を使う
が運営するサレイト野生動物教育センターに、小川を
ことから、水源保全には従来から力を入れてきました。
人工的に再現した教育用展示「リビングストリーム」
を
2009年までに水使用量を16%削減するという目標を掲
企画・建設しました。同州在来の魚類や植物を集めた
げ、
削減活動も行っています。
そこで、
リビングストリーム
人工の小川では、川の一部をガラス張りにした野外水
のスポンサーとなることを決定。TMMKの従業員やそ
族館で水中から魚を観察したり、流れ落ちる滝の裏側
の家族もボランティアで同センターの自然観賞路の整
を歩いたりでき、小川に沿って歩きながら、河川や水辺
備や清掃を行い、活動を支援しています。
「将来的に
に棲息する生き物の共生を学べるように工夫していま
は同センターが自立して運 営できることが理 想」と
す。水質の指標や水質
TMMK広報部のキム・メ
改善のために市民や地
ンキー課長は言います。
域社会ができることも紹
この展示が広告塔の役
介。同センターで最も人気
割を果たし、他社からも新
の展示物の一つです。
たなプロジェクトへの参加
人工の小川を再現した
「リビングストリーム」
70
Sustainability Report 2006
申し出が相次いでいます。
TMMKの従業員のボランティア活動
理念と体制
海外事業体の取り組み事例
環境
青年を対象にした環境表彰制度を設立
中国・TMCI(Toyota Motor China Investment)
TMCIはTMCの協力のもと、
2005年に
「中国青年トヨタ
鄱陽湖湿地の保護活動等30のプロジェクトが受賞。
優秀な活動計画に対して助成金を提供したほか、
日
同で設立。環境保全活動を支援し、受賞団体の活動
本の環境NPOとの交流やトヨタの環境活動見学のた
を広く紹介することで、
活動の活性化に寄与することが
め日本にも招へいします。受賞者からは
「中国の若者
目的です。2005年には、
メタンガス貯蔵タンクの改良技
は環境保護に熱心でアイデアも夢も持っているが、費
術を普及させる活動、江西省青年ボランティアによる
用面から実施できないケースが多い。助成金により夢
環境
環境保護賞」
を中華全国青年連合会
(全青連)
と共
が叶えられて感謝している」等の声が寄せられました。
社会
受賞団体同士の自主的なネットワークも生まれ、中国
の環境保全活動の活性
化につながりました。同賞
は2007年まで毎年実施し
ます。
受賞者がトヨタ販売店の環境対応を見学
経済
「中国青年トヨタ環境保護賞」の授賞式
交通安全
欧州赤十字と「ロードセーフティツアー2005」を協働実施
TMEが欧州赤十字と連携して2003年にスタートした
「ロー
の大切さを参加者にアピールしました。
キャンペーンドライ
ドセーフティキャンペーン」は、子どもの交通事故死傷者
バーの一人は、
「訪れたすべての国で歓迎を受け、
子どもた
削減を目指し、
汎ヨーロッパキャンペーンとして展開されて
ちにキャンペーンの趣旨を理解してもらうことができました」
きました。
3年目の2005年には、
「ONE LIFE KEEP IT」と
と語り、
参加者の13歳の少年は
「友達が事故で路上に倒
いうメッセージを掲げた特別仕様のカローラバーソ4台を
れていても、
きっと助けてあげられそう」
と話していました。
スペシャルストーリー
欧州・TME(Toyota Motor Europe)
欧州赤十字に提供し、
「ロードセーフティツアー2005」が繰
り広げられました。
6月13日にギリシャ、
マルタ、
ポーランド、
ポルトガルを同時にスタートした4台のキャンペーンカー
は、
コーディネーションチームの24時間サポート体制に支
えられ、
4つのルートから24ヶ国5万5,000㎞を走り切り、
無
事に最終目的地のブラッセルで合流しました。
その間、
10
ヶ国以上のトヨタの関係会社も参画し、
多くの子どもたち
や地域住民と交流するイベントを繰り広げ、初期救命技
能のデモンストレーションを行い、事故直後の初期対応
「ONE LIFE KEEP IT」
を掲げた特別仕様のカローラバーソ
Sustainability Report 2006
71
社会側面
■ 地域社会・グローバル社会
海外事業体の取り組み事例
交通安全
全小学1年生に交通安全キャンペーン実施
ベトナム・TMV(Toyota Motor Vietnam)
人口8,000万人のベトナムでは、車の保有台数は70
2006年5月までに配布完了したほか、全国の小学校を
万台、オートバイは1,700万台を超え、道路インフラ未
訪問し、ポケモンの寸劇を通して交通安全の大切さを
整備のため年間死傷者が3万人に達し問題となってい
伝えています。153校で16万6,000人以上の小学生が
ます。従来、断片的に交通安全キャンペーンを行う企
参加。先生向けの交通安全研修も64の市と県の小学
業はありましたが、全国規模の活動はありませんでし
校で実施しています。先生からは、
「1年生だけでなく、
た。TMVはトヨタベトナム財団発足を機に、ベトナム全
もっと上の学年にも適用したい良いプログラムだった」
小学1年生160万人を対象とした交通安全キャンペー
等の感想が寄せられました。プログラムは2008年まで
ンを2005年10月に開始。ベトナムでも人気のポケモン
実施します。
を使い、信号を守る、左右
の安全を確認するといっ
た交通安全の基本を伝
える冊子160万部、DVD
1万4,000枚、
先生向教材
1万4,000冊を作成して
子どもたちに配布した交通安全の冊子
質問に元気に答える子どもたち
子ども交通安全キャンペーン
交通安全
NGOと協働し、高校生向け運転研修プログラム実施
ニュージーランド・TNZ(Toyota New Zealand)
ニュージーランドでは若者による交通事故が問題と
も行っています。同プログラムは開始以来、
4万人以上
なっているため、TNZはNGOのプロドライブ・ドライ
が受講しました。参加した高校生のサム・ハウエルくん
バー・エデュケーション・
トラストと協働して1994年から
からは
「役立った上にとても楽しかったので、
チャンスが
「プロドライブ」
と名付けた、高校生向け運転技術研修
あったらぜひ受講するよう、友達全員に伝えるつもりで
プログラムを実施しています。初心者ドライバーの意識
す」
とのメールが届いています。
を高め運転技術を向上し、
路上での危険察知力を育て
ることがねらいです。研修を行うドライバーは各地の自
動車クラブに所属するボランティアで、全国の高校の
95%を訪問し、50分の講義と約2時間の実技から成る
研修を実施します。実技では、
緊急時やパニック時のス
ピード調整や方向転換のしかたなどを実践します。
TNZはプログラム資金や研修に必要な車両12台、
点検・整備費用を提供。TNZが関係者のコーディネー
トを行うほか、研修で使用するビデオやスライドの作成
72
Sustainability Report 2006
プロドライバーの講習を受ける高校生
理念と体制
海外事業体の取り組み事例
人材育成
貧困地域で定期医療サービスを提供
フィリピン・TMP(Toyota Motor Philippines)
どは、一生医師に診てもらえる可能性がなかった人々
ル・アウトリーチ」
と名付けた健康管理指導を含む定期
です。風邪の症状で受診する子どもたちが多く、大半
医療サービスを行っています。行政や地元の病院、製
は著しい栄養失調に陥っており、虫くだしを必要とする
薬会社の協力を得て、TMPの工場がある2つの都市
子どももいます。簡単な手術を行うこともあり、重病の
で年1回ずつ実施。医療サービスを受けられない貧困
場合は専門の病院に紹介します。
地 域の子どもなどが毎 回 約1,500∼2,000人 参 加。
「医療を受けようとすると、貧しい人々は一日の収入を
1992年の開始以来、
2006年までに7万8,600人が受診
すべて費やさねばなりません。
その結果、健康管理にも
しました。
注意を払えず悪循環に陥っています。このプログラム
2005年7月に実施された35回目の「メディカル・アウト
社会
TMPは、
トヨタモーターフィリピン財団を通じて
「メディカ
環境
自治体や製薬会社等の協力を得て、1992年から貧困地域で年1回の定期医療サービスを実施。健康
への関心を高める役割を果たし、健康管理の第一歩となっています。
は、健康に関心を持つ第一歩となっています」。プログ
ラムを実地しているフィリピンサンタロサ市のナザレノ
製薬会社社員など計100
副市長は言います。
経済
リーチ」には、TMPの従業員や医師、看護師、歯科医、
人のボランティアが参加
しました。トヨタモーター
フィリピン財 団は同プロ
ジェクトの運営資金を提
供。医薬品は協賛する製
目の検査も実施
スペシャルストーリー
薬会社2社が無料で提供しています。TMPが寄贈した
2台のバンも、
レントゲン検査や血液検査用の車両とし
て活躍しています。
受診者は必要度を勘案して事前に市が選び、参加
左からナザレノ副市長とゴーTMP財団理事長
証を交付。市の提供する交通手段を使い、地域の小
学校などに開設する会場を訪れます。受診者のほとん
フィリピンでは、貧困層のヘルスケアの欠如が深
刻な社会問題となっています。
トヨタモーターフィリピ
ン財団は「資金援助することよりも、人々が自力で自
分たちの生活を改善していくための力になりたい。そ
のためには、
まずは人々が健康でなければならない」
(デービッド ゴー財団会長)
との考えから、
「メディカル・
アウトリーチ」の活動を推進。貧困地区の医療サービ
ス向上やヘルスケア意識の向上に貢献しています。
子どもたちへの医療サービス
Sustainability Report 2006
73
社会側面
■ 地域社会・グローバル社会
海外事業体の取り組み事例
人材育成
モノづくり講座、
ロボットコンテストによる人づくり支援
ベトナム・TMV(Toyota Motor Vietnam)
「ベトナムの発展に貢献したい」
との思いから、大学へ「モノづくり講座」
を設置したり、
ロボットコンテスト
にスポンサーとして参加。モノづくりの技術やモノづくりに携わる人材育成を支援しています。
TMVは2005年の設立10周年を記念し、
ベトナムのより
よい未来を築く一助となるため教育や社会、産業に貢
献したいと考え、2006年1月にトヨタベトナム財団を設
立。特に人材開発のための教育・研修の質向上に貢
献することがねらいです。この一環として、2005年9月
にハノイ工科大学に
「モノづくり講座」
を設置しました。
1年間でモノづくりの基礎やコスト、品質、設計、生
産管理、生産準備、販売サービスのすべてを網羅する
講座で、講義とTMVの工場見学を通して学びます。第
1回目は張副会長
(現会長)
が講義を行いました。
TPS現地現物研修風景
神をベトナムに移転できるよう努力します」
と話します。
TMVはモノづくりの原点ともいえる、大学生の自作
ロボットによる競技会「ロボットコンテスト」にも、2002年
の第1回から大会スポンサーとして継続参加。若者の
造性をモノづくりに結びつけることがねらいです。開
始当初17チームだった参加チームも、現在では300を
超え、各チームとも非常に熱心に取り組んでいます。競
技会の人気も高く、国を挙げた取り組みとなっていま
す。2002年優勝したホーチミン市工科大学チームは日
ハノイ工科大学で講義する張副会長
(現会長)
初年度は、TMVが講師や資金を全面的に提供。ハ
し、見事優勝。ベトナムチームは続く2003年は3位、
ノイ工科大学の教授や企業のリーダーが受講しまし
2004年は優勝と好成績をおさめています。参加者の一
た。
2年目からは1年目に受講した同大学の教授陣が
人は
「大学の名誉をかけて参加しています」
と意気込
講師を務める予定で、将来的には同大学による独立
みを話します。TMVは今
運営を目指し、教授陣に工場を公開。教材作りは継続
後も大会スポンサーを通
して支援します。
トヨタ生産方式
(TPS)
を学びに来た
じロボットコンテストをベト
ハノイ工 科 大 学 経 済 学 部のレ・ヒユ・ホク博士は、
ナムに根付かせ、
モノづく
「TPSは企業文化そのものだと感じました。
トヨタは従業
員の教育・訓練に熱心で、
従業員も多くのことを身に着
けています。張さんの講義は非常に実践的でわかりや
すく、TPSについての疑問が氷解しました。TPSの精
74
本で開催されるアジア・パシフィック選手権に初出場
Sustainability Report 2006
りの礎として発展させたい
と考えています。
2005年ロボットコンテスト
理念と体制
海外事業体の取り組み事例
人材育成
女性・貧困層の自立支援
サウジアラビア・アブドゥル・ラティフ・ジャミールグループ(ALJ)
のトヨタ代理店を統括する、サウジアラビアの企業集
年にはサウジで
「アブドゥル・ラティフ・ジャミールのプロ
団。貧困の撲滅を目指して、貧困層の小規模事業立
ダクティブファミリーズプログラム」
を立ち上げ、国内に
ち上げによる生活向上をねらいとした無担保の小額貸
6支部を開設。3,000人の女性に融資しています。マイ
し付け
「マイクロファイナンス」の手法を取り入れ、
自立
クロファイナンスの間接支援として、事業を普及させる
を促進しています。バングラデシュで270万世帯が貧困
ため研修の開催やツールの提供、世界銀行の機関で
から脱するのを導いたグラミン銀行の手法を採用したも
ある貧困層支援協議グ
のです。
ループと共 同でインター
ALJは2003年にマイク
社会
心に計5万2,000余人に融資を提供しています。2004
環境
ALJは、サウジアラビア、
シリア、アルジェリア、
モロッコ
ネットによる情 報 提 供も
ロファイナンスの実施団
実施しています。
体を設 立。エジプト、モ
ロッコ、チュニジアで他の
マイクロファイナンス事業
マイクロファイナンス事業を紹介するホー
ムページ
「アラビック・マイクロファイナン
ス・ゲートウェイ」
経済
と提携しながら、女性を中
借手に小切手を手渡すサオウド・ビン・アブ
ドゥル・モーセン王子
(左)
とモハマド・ジャ
ミール氏
(中央)
人材育成
北米製造業に対するトヨタ生産方式(TPS)支援センター
トヨタは、 業時、米国自動車メーカーに工場見学等を
スペシャルストーリー
北米・TSSC(Toyota Supplier Support Center)
①は現地現物で、工場の人たちと一緒に実践し、現場
通じ、技術やノウハウをオープンに教えてもらいました。
でのモデルづくりと人づくりを実施。②はレゴシミュレー
1980年代、
北米におけるTPSへの関心の高まりを受け、
ションと自分たちで実践した事例を使いTPSをわかりや
「TPSのノウハウを開示することで、
よき企業市民として
すく説明。活動に入る前には、
「TPSを各社で実践した
貢献する」
目的で、
1992年ケンタッキー州レキシントン市
結果、無駄がなくなり、生産性が向上し、従業員が余剰
(現アーランガー市)
にTSSCを設立。
トヨタのサプライ
となるような状況になってもレイオフはしない」
ことを各
ヤーに限定せず、
北米すべての製造業者に対しTPSの
社にお約束いただいています。設立以来、約130社で個
ノウハウを開示し、共に改善活動を実施。
また、地域貢
別工程改善活動を行い、
2,200人の方がワークショップ
献活動として、点字本作成会社での改善活動、銀行
へ参加
(2006年3月末)
。
手形交換所の作業性向上等の支援も行ってきました。
受講者は、
「人を中心に
さらなる定着のため2002年に分社化し、交通費等実費
システムを考えることを学
一部有料化。TPSによる人材育成を通し、
より多くの
び、仕事のやり方を変え
会社でのTPS実践を目指しています。具体的活動内
る自信がついた」との感
容は①個別工程改善活動と②ワークショップ活動です。
想を述べています。
改善活動支援中のTSSCスタッフ
(右)
Sustainability Report 2006
75
社会側面
■ 地域社会・グローバル社会
コミュニケーション
社会との交流
トヨタ・ステークホルダー・ダイアログ
トヨタ 業直後の1938年11月に自動車量産工場「挙母工
場」
(現本社工場)
が稼動して間もなく、工場の一般公開を
実施。
トヨタ自動車
企業や団体の垣根を越えて討議する
「トヨタ・ステークホル
ダー・ダイアログ」
を2001年から毎年度開催。
業者豊田喜一郎は
「自動車は一般的
2006年1月の第5回は、
「企業の社会的責任
(CSR)
:環境
なものであり、工業知識の普及にもなりますので、皆さまに見
に焦点を当てて」
をテーマに、
NGO/NPO、学識経験者、行
ていただけるように参観道路も作りまして一般に公開するつ
政、企業から約30人のステークホルダーに、
トヨタの従業員・
もりでおります」
と述べています。
役員を含め計約40人が1泊2日の合宿を実施。環境分野の
工場見学だけでなく、情報発信施設等を通してお客様・社
CSRについて、社会ニーズ適合性、企業の利益追求との関
会との交流を図り、企業行動にフィードバックしています。
係、
国際標準化の意義の論点で分科会と全体会議で議論。
2005年工場見学者数は、愛・地球博の影響もあり過去最高
目的や目標の相違を明確化、共通の問題認識のもと、
コミュ
の約20万人でした。また工場以外の情報発信施設には約
ニケーションや協働を今後の課題と確認。
また、
CSR推進の
831万人がご来場いただきました。
ための各役割について提案
工場見学のお問い合わせURL:http://www.toyota.co.jp/jp/
about_toyota/facility/toyota_kaikan/plant_tour/
「アムラックス」来館者累計3,000万人達成
をいただきました。
「異分野の人々が同テーマ
を議 論、学 ぶ 機 会を得た」
1990年9月、
国内メーカー初の日本最大級ショールームとして東
「取り組み中のCSR活動の
京池袋にオープンした
「オートサ
客観化ができた」等の声を受
ロン アムラックス東京」
は、
2006
けました。今後も継続します。
ステークホルダーの討議
( 06/1)
年1月、
来館者累計3,000万人を
達成。
トヨタの全乗用車約70台
i-unit、
トヨタ・パートナーロボットを通じて
伝える「愛・地球博」のメッセージ
の展示をはじめ、
F1カー、
i-unit、
環境安全の新技術などさまざま
な企業活動を紹介しています。
「愛・地球博」
に出展した一人乗りの未来コンセプトビー
3千万人目のご家族と渡辺社長
( 06/1)
クル
「i-unit」と人の活動をサポートする
「トヨタ・パート
ナーロボット」
を、終了後も全国に出展し、博覧会で伝え
■ トヨタの情報発信施設
名称
内容
来場者数
(2005年)
展示車約130台と試乗コース。
「見て、乗って、
561万人
レクサスギャラリーも新設
メガウェブ 感じるテーマパーク」。
場所
東京都
お台場
http://www.megaweb.gr.jp/
トヨタ車紹介ほか、新技術、環境、安全への取り
163万人
アムラックス 組みを紹介
東
京
http://www.amlux.jp/
東京都
池袋
「環境」
「安全」に対する取り組みを中心に企
44万人
トヨタ会館 業姿勢、活動を紹介
愛知県
豊田市
たメッセージを紹介。i-unitは2005年10月より、販売促進
イベント等58ヶ所で約127万人に披露。
トヨタ・パートナー
ロボットは2006年より、
全国12ヶ所で約3万人に紹介。
イ
ベント参加者から
「間近で見ることができてうれしい。未
来に触れた感じがします」等の感想をいただきました。
URL:http://toyotakaikan.revn.jp/
■ 常設展示している主な施設
http://www.toyota.co.jp/toyotakaikan/
ガソリン自動車100年の発達史を、
日・欧米の代
愛知県
26万人
長久手町
トヨタ博物館 表的なクルマ120台で紹介
i un
- it
繊維機械技術、自動車技術、生産技術の変
名古屋市
31万人
産業技術 遷・進歩など、
トヨタグループの歴史を紹介
栄生
記 念 館
http://www.tcmit.org/
6万人
http://www.toyota.co.jp/kuragaike/
計831万人
76
Sustainability Report 2006
愛知県
豊田市
ロボット
業期の歩みとモノづくりのスピリッツを紹介
トヨタ・パートナー
http://www.toyota.co.jp/Museum/
トヨタ鞍ヶ池
記 念 館
コラム
・メガウェブ
・アムラックス東京
・産業技術記念館
・トヨタ博物館
・トヨタ白川郷自然學校
・トヨタ自動車北海道
・トヨタ自動車九州
・中部国際空港
・メガウェブ
・アムラックス東京
・産業技術記念館
・ラグーナ蒲郡
・中部国際空港
名古屋駅前のイベントに出展
( 06/4)
理念と体制
海外事業体の取り組み事例
コミュニケーション
次代を担う学生と双方向コミュニケーション
タイ・TMT(Toyota Motor Thailand)
2006年1月、TMTはバンコク・サイアムスクエアに
「ザ・
をテーマに4大学の学生のデザイン作品を展示するな
スタイル・バイ・
トヨタ」
を開設。
タイの次代を担う若者や
どのイベントを開催。学生の
オピニオンリーダーと双方向のコミュニケーションを図
ています。来場者は毎日900∼1,000人と当初予定の
り、若年層の人材育成を通してタイ社会に貢献するこ
2倍。来場した若者の一人は
「カットモデルでハイブリッ
とを目的としています。環境についても考えたり議論し
ド車の構造がわかりやすく紹介されており、
よく理解でき
たりする場としての機能を担っています。
ました」
と話しました。
環境
造性育成の場にもなっ
建物はチュラロンコン大学の敷地に立地。
「学外で
造性を高める学びの場」
を望む同大学との協業
社会
の
で開設されました。スチャダ学長は、
「学校以外の場
で、学生が週末に学び、 造性を高める場所・機会が
必要と考えていたので感謝しています。TMTがタイの
人材育成に力を入れていることを再認識し、人材育成
が国の発展につながることを期待しています」
と開設を
プリウスカットモデル
経済
歓迎します。展示やイベントスペースなどを備え、
ヤリス
コミュニケーション
敷地内で環境NGOと環境プログラム協働実施
TMMFは欧州のトヨタ2番目の生産拠点として、ベル
実施、
エコシステムの観察を行うもので、近郊に住む9
ギーとの国境にあるバランシエンヌに1998年に設立。
∼14歳の子どもたち10グループが参加しました。実施
2001年1月に生産を開始しました。生産開始以来、
にあたり、エコシステムに関する小冊子と野鳥観察
「Green, Clean, and Lean」
を合言葉に
「ムリ、
ムラ、
ゲームをCPIEや地域の教員、教育省と連携して作成
ムダ」
を排除するトヨタ生産方式の考えに基づき環境
スペシャルストーリー
フランス・TMMF(Toyota Motor Manufacturing France)
しました。
負荷を低減しています。
2005年12月に、環境NGOのCPIE
(持続的環境取
組センター)
と協働してTMMF敷地内の自然や生物多
様性の保護を推進し、子ども向け観察コースを設立す
るため、
3年間のパートナーシップ契約を結びました。活
動内容は、敷地内での動植物調査、散策用小道の敷
設、野鳥観察用の植樹などです。2006年6月には、子ど
も向けの「グリーンビジットプログラム」
を開始しました。
TMMFの水処理施設見学と環境教育プログラムの
2006年6月の環境週間に初めて訪れた近郊の子どもたち
Sustainability Report 2006
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