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C–2

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C–2
まえがき
C-2団
団長
石川
八千代
私達C-2団は、『PISA型学力の育成』をテーマに、2000 年のPISAショック後、
国を挙げて教育改革に取り組んでいるドイツの教育について調査研究の機会を頂き、10 月
19 日から 10 月 30 日までの 12 日間、バーテン・ヴュルテンベルク州のシュツットガルト
とバイエルン州のミュンヘンの南ドイツに位置する2市における各校種の学校や教育施設
を訪問し、研修を深めることができました。
10 月中旬のドイツは、黄葉のシーズン。日本の紅葉と違い、黄色に染まる黄葉がメイン。
街路樹や並木道の樹木が一面黄色に染まり、陽に輝く様は、まさしく『ゴールデン・オク
トーバー』。そして、宮殿や教会等の歴史的建造物や美術的に価値のある品々が点在する
素敵な街並みは、中世にタイムスリップしたような感を抱くに十分でありました。
そんな中で始まった訪問。いずれの訪問先でも快く私達を出迎えてくれ、授業公開はも
ちろん、学校の概要や市の教育事情について丁寧なプレゼンをしてくださいました。いく
つかの訪問先で、「日本の国際的な学習到達度調査(PISA)の成績は良いのに、どう
して我々の国(ドイツ)の視察に来られたのですか」と、逆に尋ねられたことがあります。
私達は、これからの時代を生きる日本の子どもたちに求められている資質・能力である『何
事にも主体的に取り組もうとする意欲』や『多様性を尊重する態度』『他者と協働するた
めのリーダーシップやチームワーク』『コミュニケーションの能力』等を育むために、『何
を教えるか』から『どのような力を身につけるか』といった、まさに今ドイツが進めてい
る『コンピテンシー志向』の教育について聴きたいのだと伝えると、予定時間をオーバー
してまでいろいろと説明してくれ、私達の質問に誠実に向き合ってくださいました。
12 日間という短い期間ではありましたが、自分達の目や耳で、直接観たり聴いたりして
学んできたことを、研修の成果としてこの報告書にまとめました。シニアアドバイザーの
大杉先生からも「皆さんのまとめているこの報告書は、まだどこにも出ていないドイツの
最新の教育情報になります」という言葉をいただきました。より広く多くの方に目を通し
ていただき、ドイツの教育事情を通し日本の教育の有り様について見つめ直す機会の一助
となれば幸いです。
最後になりましたが、このような有意義な研修の機会を与えていただきました独立行政
法人教員研修センターはじめ各県・市町村教育委員会、そして所属長並びに細部にわたり
ご支援を頂いた皆様、そして事前の研修の段階からドイツでの研修中はもちろん報告書の
作成に至るまで的確なアドバイスをいただいたシニアアドバイザーの国立教育政策研究所
の大杉昭英先生、難民等の問題でなかなか訪問先が決まらなかった状況下で、交渉を含め
スムーズな研修をコーディネートしてくださった添乗員の角田久利さん、そしてドイツに
いることを忘れてしまうくらいすばらしい同時通訳とドイツの教育はもちろん歴史・文化
にまで精通しており、私達にわかりやすくそして興味深い説明をしてくださった中山富子
さんに、団員一同深く感謝いたしております。
-1-
目
次
まえがき
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・1
目次
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・3
派遣日程
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・4
派遣団名簿
Ⅰ
※個人情報保護の観点から、名簿の記載を差し控えます。
調査研究
1
派遣テーマ関する訪問国の概要
・・・・・・・・・・・・・・・・5
2
日本国内における派遣テーマに関する課題
(1)日本の教育の方向性について
・・・・・・・・・・・・・・・・6
(2)調査・研究課題テーマ(PISA型学力の育成)の設定
3
調査・研究課題の設定理由及び調査結果
(1)ドイツの教育制度と教育課程について
(2)PISA型読解力の育成ついて
(3)数学的リテラシーの育成
・・・・・・・・・・・・8
・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 15
・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 21
(4)コンペテンツを育成する指導法について
Ⅱ
・・・・7
・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 25
研修成果の活用レポート
1
小学校国語科6年生における実践(2時間扱い)
2
小学校算数科4年生における実践
3
高等学校数学科2年生における実践
4
小学校算数科4年生における実践
Ⅲ
資料編
Ⅳ
研修概要
・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 32
・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 34
・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 37
・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 41
1
要約版
2
全体のまとめ
3
実施要項、派遣実績
あとがき
・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 30
・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 69
・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 70
・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 75
・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 80
-3-
C-2団「PISA型学力の育成」日程表
派遣先国:ドイツ
日
月日(曜日)
次
1
発着地・滞在地
10月19日 成田発
(月)
交通機関
時 刻
LH711
9:55
フランクフルト空港着
フランクフルト空港発
摘 要
移動(航空機:約11時間45分)
14:40
LH132
16:50
専用車
18:30-19:00
シュツットガルト空港着
移動(航空機:約40分)
17:30
移動:シュツットガルト空港からホテルへ(約15km:20分)
(シュツットガルト泊)
2
10月20日 シュツットガルト
(火)
(バーデン
専用車
09:00-12:00
オリエンテーション
13:00-16:00
Landesinstitut fuer Schulentwicklung訪問
ヴュルテンベルク州)
(Institute for school development)
(シュツットガルト泊)
3
10月21日 シュツットガルト
専用車
07:45-14:00
Konigin-Olga-Stift訪問
専用車
15:00-17:00
Ludwig-Uhland-schule訪問
専用車
09:00-13:00
Mozartschule Neuhausen訪問
専用車
15:00-16:30
VBE(Verband bildung und Erzuegybg)からのレクチャー
(水)
(シュツットガルト泊)
4
10月22日 シュツットガルト
(木)
(宿泊ホテル内)
(シュツットガルト泊)
5
10月23日 シュツットガルト
専用車
08:15-12:30
Eberhard-Ludwigs Gymnasium訪問
14:00-17:00
研修成果のまとめ、研修資料等の収集・整理(宿泊先ホテル内)
09:00-12:00
移動:シュツットガルトからミュンヘン(約240㎞:約3時間)
13:00-17:00
教育文化施設訪問
(金)
(シュツットガルト泊)
6
10月24日 シュツットガルト
(土)
専用車
ミュンヘン
(ミュンヘン泊)
7
10月25日 ミュンヘン
(日)
終日
自主研修
(ミュンヘン泊)
8
10月26日 ミュンヘン
(月)
専用車
08:45-11:30
Grundschule am Hedernfeld訪問
専用車
14:00-16:00
Mittelschule an der Ichostrasse訪問
(バイエルン州)
(ミュンヘン泊)
9
10月27日 ミュンヘン
専用車
08:45-10:30
Mittelschule Walliser Strasse訪問
専用車
14:00-17:00
Teachers Association(PISAテストについてのレクチャー)
(火)
(宿泊ホテル内)
(ミュンヘン泊)
10 10月28日 ミュンヘン
専用車
10:00-12:00
ISB(Sub Department of Munich School authority for
(水)
quality in education)訪問
専用車
14:00-16:30
Teachers Association(現場教師との意見交換)
(ミュンヘン泊)
11 10月29日 ミュンヘン
08:00-11:00
研修成果のまとめ、研修資料等の収集・整理(宿泊先ホテル内)
専用車
12:00-12:40
移動:ホテルからミュンヘン空港へ(約40km:40分)
LH714
15:25
(木)
ミュンヘン空港発
移動:(航空機:約11時間30分)
(機中泊)
12 10月30日
(金)
羽田着
10:55
帰国
-4-
Ⅰ
1
調査研究
派遣テーマに関する訪問国の概要(ドイツの教育事情)
ド イ ツ は 16 州 (そ の う ち 3 州 は 都 市 州 )か ら な る 連 邦 制 国 家 で あ る 。 そ
のため、各州に日本の文部科学省に相当する教育行政機関が置かれている。
教育政策についても、それぞれの州の事情によって異なり、各州の憲法、
学校法、文部省令等によって定められている。
各州間の教育施策の調整や全国的な教育施策の協議を行うために各州文
部 大 臣 会 議 (Kultusministerkonferenz、KMK)が 常 設 さ れ 、ド イ ツ 全 体 と し て
の 「教 育 ス タ ン ダ ー ド (Bildungsstandards)」を 設 定 し て い る 。こ れ に 基 づ き 、
各 州 に お い て は 教 育 研 究 機 関 等 を 設 置 し 、州 独 自 の 教 育 課 程 を 設 定 し て い る 。
ドイツの教育制度は古くから、初等教育として4年間の基礎学校(Grundschule:
グ ル ン ト シ ュ ー レ )を 修 了 し た 後 、8 ~ 9 年 間 の ギ ム ナ ジ ウ ム (Gymnasium)、
5 年 間 の 基 幹 学 校 (Hauptschule: ハ ウ プ ト シ ュ ー レ )、6 年 間 の 実 科 学 校
(Realschule:レ ア ル シ ュ ー レ )の 三 つ に 分 か れ る 三 分 岐 型 の 教 育 体 系 を と
ってきた。大学に進学
するためには、アビト
(図 1 )ド イ ツ の 学 校 制 度
ゥ ア (大 学 進 学 資 格 試
験 )を 取 得 す る 必 要 が
ある。レアルシューレ
を修了した生徒の多く
は、社会に出るための
職業訓練学校等に進学
するようになっていた。
(図 1 )
このような教育制度
のもとで児童生徒の教
育が行われていたが、
2000 年 に 経 済 協 力 開 発
機 構 (O E C D )が 実 施
したPISA調査では、
参 加 32 か 国 中 、読 解 力 21 位 、数 学 的 リ テ ラ シ ー と 科 学 的 リ テ ラ シ ー が と も
に 20 位 と い う 結 果 で あ っ た 。 こ の 結 果 に 大 き な シ ョ ッ ク を 受 け た ド イ ツ で
は 、児 童 生 徒 の 学 力 を 向 上 さ せ る た め の 教 育 改 革 が 議 論 さ れ 始 め 、2002 年
に K E K が 全 国 共 通 の 学 習 到 達 目 標 と し て 教 育 ス タ ン ダ ー ド を 設 定 し た 。具
体 的 な 学 力 向 上 の 方 法 は 、各 州 に 任 さ れ て お り 、バ ー デ ン・ヴ ュ ル テ ン ベ ル
ク州のゲマインシャフトシューレやバイエルン州のミッテレシューレのよ
う な 新 し い 学 校 が 設 置 さ れ る な ど 、三 分 岐 型 の 教 育 体 系 も 見 直 さ れ 、独 自 の
改革が進められている。
-5-
その改革の有効性を裏付けるように、教育改革後に行われた調査では、
徐 々 に そ の 成 果 が 表 れ て き て い る 。 (表 1 )
ド イ ツ は 2015 年 末 ま で に 80 万 人 の 難 民 を 受 け 入 れ る と の 見 通 し で 、各
州に難民が振り分けられるということであった。
教育機関や各
(表 1 )P I S A 調 査 に お け る ド イ ツ の 順 位 の 推 移
学校では、難民
実施年ほか
読解力
の子供達を受け
入れるため、そ
の対策に追われ
ている状況であ
った。もともと、
ドイツは移民や
難民を多く受け
数学的リ
科学的リ
テラシー
テラシー
2000 年
32 か 国
21 位
20 位
20 位
2003 年
41 か 国・地 域
21 位
19 位
18 位
2006 年
57 か 国・地 域
18 位
20 位
13 位
2009 年
65 か 国・地 域
20 位
16 位
13 位
2012 年
65 か 国・地 域
20 位
16 位
12 位
入 れ て き た 多 民 族 国 家 で あ り 、移 民 の 背 景 を も つ 児 童 生 徒 と そ う で な い 児 童
生徒とでは学力格差が生じており、社会問題の一つとなっている。
今 回 、訪 問 し た バ ー デ ン・ヴ ュ ル テ ン ベ ル ク 州 と バ イ エ ル ン 州 の 教 育 機
関 や 学 校 現 場 を 視 察 す る こ と を 通 し て 、こ れ ま で に ど の よ う な 改 革 を 行 っ て
き た の か 、ま た 現 在 、学 力 格 差 の 解 消 や 学 力 向 上 な ど に 向 け て ど の よ う な 取
組を行っているのかを調査したいと考えた。
2
日本国内における派遣テーマに関する課題
(1)日本の教育の方向性について1)
日 本 で は 今 、新 し い 時 代 に 向 け て 教 育 改 革 が 進 め ら れ て い る 。中 教 審
の教育課程企画特別部会資料において、次のように述べられている。
「厳 し い 時 代 を 迎 え て い る 我 が 国 に お い て 、 将 来 は 職 業 の 在 り 方 も 様
変 わ り し て く る 可 能 性 が 高 い 。そ う し た 変 化 の 中 で 、将 来 に 向 か っ て 夢
を 描 き 、子 供 達 一 人 一 人 が 、自 信 に あ ふ れ た 、実 り 多 い 幸 福 な 人 生 を 送
れ る よ う に す る こ と が 大 切 で あ る 。そ し て 、子 供 達 が 十 分 な 知 識 と 技 能
を 身 に つ け 、思 考 力・判 断 力・表 現 力 を 磨 き 、主 体 性 を も っ て 多 様 な 人 々
と 協 働 す る こ と を 通 し て 、喜 び と 糧 を 得 て い く こ と が で き る よ う に す る
こ と が 必 要 で あ る 。」
新しい時代に必要となる資質・能力の育成に関連して、これまでも、
O E C D が 提 唱 す る キ ー・コ ン ピ テ ン シ ー の 育 成 に 関 す る 取 組 や 論 理 的
思 考 力 や 表 現 力 、探 究 心 等 を 備 え た 人 間 育 成 を 目 指 す 国 際 バ カ ロ レ ア の
カ リ キ ュ ラ ム な ど の 取 組 が 実 施 さ れ て き た 。共 通 す る こ と は 、自 ら 課 題
を 発 見 し 、そ の 解 決 に 向 け て 主 体 的・協 働 的 に 探 究 し 、学 び の 成 果 等 を
表 現 し 、更 に 実 践 に 生 か し て い け る よ う に す る こ と が 重 要 で あ る と い う
視点である。
こ れ は 、P I S A 型 学 力 に も 通 じ る 。国 立 教 育 政 策 研 究 所 で は 、P I
S A 型 読 解 力 を (ⅰ )テ キ ス ト の 中 の 情 報 の 取 り 出 し 、(ⅱ )テ キ ス ト の 意
-6-
味 理 解 (解 釈 )、(ⅲ )情 報 を 知 識 や 経 験 に 関 連 付 け る (熟 考・評 価 )と 整 理
し た 。近 年 「読 解 力 」や 「数 学 的 リ テ ラ シ ー 」、「科 学 的 リ テ ラ シ ー 」な ど の
平 均 点 は 、上 が っ て き て い る 。し か し 、協 働 的 問 題 解 決 能 力 育 成 の 必 要
性が、次の新たな課題として言われている。
そ こ で 、知 識 で は な く 能 力 、つ ま り コ ン テ ン ツ 中 心 か ら コ ン ピ テ ン シ
ー中心へと考え方を変えた新しいカリキュラム構成が考えられるよう
に な っ た 。平 成 27 年 5 月 に 中 教 審 よ り 、新 し い 時 代 に 必 要 と な る 資 質・
能 力 の 育 成 に 向 け た 教 育 課 程 と し て 、「何 が で き る よ う に な る か (資 質 ・
能 力 の 育 成 )」
「 何 を 学 ぶ か (目 標・内 容 の 見 直 し )」
「 ど の よ う に 学 ぶ か (ア
ク テ ィ ブ ・ ラ ー ニ ン グ )」 の 構 造 化 の イ メ ー ジ が 提 示 さ れ た 。 こ こ で 必
要 と さ れ る 能 力 は 、そ れ を 働 か せ る 学 習 活 動 の 中 で 育 成 さ れ る と 考 え る 。
つ ま り 、今 日 の 社 会 で 必 要 と さ れ る 能 力 を 育 て る た め の 能 動 的・協 働 的
な 学 習 活 動 (ア ク テ ィ ブ ・ ラ ー ニ ン グ )を 行 う 必 要 性 が 強 調 さ れ て い る 。
そ れ ら の こ と を 進 め て い く た め に 、大 学 教 育 及 び 高 等 学 校 以 下 の 教 育
を 一 体 的 に 改 革 す る 必 要 が あ る と さ れ て い る 。そ の 際 、小・中・高 等 学
校 の 学 習 指 導 要 領 に つ い て 、知 識・技 能 、思 考 力・判 断 力・表 現 力 、主
体 性・多 様 性・協 働 性 か ら な る 真 の 「学 力 」を 身 に つ け る た め の 改 訂 を 行
うことが検討されている。
(2)調査・研究課題テーマ(PISA型学力の育成)の設定2)
ド イ ツ の 全 人 口 の 約 10% は 外 国 人 で あ り 、 移 民 や 難 民 を 多 く 抱 え る
多 民 族 国 家 で あ る 。 2015 年 9 月 に 始 ま っ た 大 量 の 難 民 の 受 け 入 れ で 、
ド イ ツ 国 内 は 非 常 事 態 に 陥 っ て い る 。今 回 の 難 民 問 題 で バ イ エ ル ン 州 は
新 た に 教 育 予 算 と し て 4800 万 ユ ー ロ (日 本 円 に し て 約 65 億 円 )計 上 し た
と聞いた。
ド イ ツ 語 が 十 分 に は 話 せ な い 児 童 生 徒 が 大 量 に 入 っ て く る 中 で 、語 学
教 育 に 力 を 入 れ て い こ う と す る ド イ ツ の 姿 勢 は 、読 解 力 の 育 成 を 目 指 す
日本に重要な示唆を与えてくれると思われる。
ま た 、キ ー・コ ン ピ テ ン シ ー を 重 要 視 し た 教 育 制 度 へ 改 革 し て い こ う
と す る 動 き は 、 日 本 の ア ク テ ィ ブ ・ ラ ー ニ ン グ (能 動 的 ・ 協 働 的 学 習 )
重 視 の 動 き と 対 応 す る 。私 た ち は キ ー・コ ン ピ テ ン シ ー や そ れ に 基 づ い
た 教 育 課 程 の 内 容 に 注 目 し 、日 本 で ど の よ う な 教 育 制 度 の 改 革 や 授 業 改
善ができるかを考えるために、今回次の4つのテーマを設定した。
・テーマ1
ドイツの教育制度と教育課程について
・テーマ2
PISA型読解力の育成について
・テーマ3
数学的リテラシーの育成について
・テーマ4
コンぺテンツを育成する指導法について
【 註 】 1 )、 2 )大 杉 昭 英 ( 国 立 教 育 政 策 研 究 所
初等中等教育研究部長)
シ ニ ア ド バ イ ザ ー 「 平 成 27 年 度 教 育 課 題 研 修 指 導 者 海 外 派 遣 プ ロ グ
ラ ム 事 前 研 修 会 分 科 会 講 義 」 2015 年 8 月 8 日 教 員 研 修 セ ン タ ー
-7-
3
調査・研究課題の設定理由及び調査結果
(1)ドイツの教育制度と教育課程について
①
ドイツの教育に影響を与えてきた社会的背景と各州文部大臣会議
ア
こ れ ま で の 約 20 年 間 の 社 会 的 背 景
( ア ) マ ー ス ト リ ヒ ト 条 約 (1992 年 )
欧 州 連 合 の 創 設 を 定 め た 条 約 。E U R O (ユ ー ロ )の 導 入 、外
交・安 全 保 障 政 策 の 共 通 化 、警 察 協 力・難 民 対 策 な ど に お け る
各 国 協 調 を 目 的 と し た 司 法・内 務 協 力 の 三 本 柱 か ら な る 。E U
内 の 移 動 と 移 住 の 自 由 が 保 障 さ れ 、経 済 大 国 で あ る ド イ ツ に は
多くの外国人が流入した。
(イ)幼稚園への就学の義務化
外 国 人 の 流 入 で 言 語 運 用 能 力 の 向 上 が 重 要 と な り 、幼 稚 園 で
ドイツ語を学ぶ必要性が高まった。
( ウ ) ボ ロ ー ニ ャ 宣 言 (1999 年 )
高 等 教 育 に お け る 欧 州 圏 を 構 築 し 、世 界 に 通 用 す る 高 等 教 育
のための制度を確立させようとする声明。
( エ ) P I S A シ ョ ッ ク (2000 年 )
国 際 学 力 調 査 に お け る 成 績 不 振 が 、ド イ ツ の 教 育 を 連 邦 レ ベ
ル で 見 直 し 、新 た に コ ン ピ テ ン シ ー を 育 成 す る 教 育 の 在 り 方 を
取り入れるきっかけとなった。
( オ ) 障 が い 者 権 利 条 約 (2006 年 )
障 が い 者 を 普 通 学 校 で 教 育 す る 、 統 合 (inclusion)を 促 進 す
る取り決め。
(カ)急増するドイツへの難民
2011 年 に 起 き た 中 東 の 民 主 化 要 求 運 動 (ア ラ ブ の 春 )に 影 響
を 受 け 、シ リ ア で は 反 政 府 デ モ が 激 化 し 、そ れ に 対 す る 政 府 の
弾圧で内戦状態となり、さらに過激派組織ISの台頭もあり、
状 況 が 悪 化 。E U へ の 難 民 申 請 者 が 急 増 す る こ と に な っ た 。E
Uの経済大国ドイツはシリア以外の国からの難民急増もあり、
ド イ ツ 内 務 省 は 2015 年 の ド イ ツ で の 難 民 申 請 者 が 80 万 人 に 達
す る と 予 測 し て い る 。本 視 察 団 の 訪 問 先 の 学 校 も 、急 増 す る 難
民への対応で多忙を極めている学校が多かった。
イ
各 州 文 部 大 臣 会 議 (K M K )
連 邦 国 家 で あ る ド イ ツ 連 邦 共 和 国 で は 、教 育 に 関 す る 事 項 は 基 本
的 に 州 の 専 管 事 項 と さ れ て お り 、 連 邦 レ ベ ル で 我 が 国 の 「教 育 基 本
法 」に 相 当 す る も の は 存 在 し な い 。 州 に よ る 学 校 制 度 や 学 校 政 策 の
違 い を 調 整 す る 機 関 と し て 、各 州 文 部 大 臣 会 議 (K M K )が 常 設 さ れ
て い る 。各 州 文 部 大 臣 会 議 は 学 校 教 育 の 質 の 向 上 の た め の 措 置 に 取
り組んでいる。会議で取り組んでいることの一部分を以下に示す。
( ア )「 教 育 ス タ ン ダ ー ド (Bildungsstandards)」の 設 定
-8-
各 州 文 部 大 臣 会 議 で 設 定 す る 「教 育 ス タ ン ダ ー ド 」は 、各 科
目 の 初 等 教 育 、中 等 教 育 の 目 標 と 内 容 が 記 載 さ れ て お り 、各 州
の学習指導要領の内容と教科書検定に影響を与えている。
本 視 察 団 が 視 察 前 半 で 訪 れ た 、バ ー デ ン・ヴ ュ ル テ ン べ ル ク
州 で は 日 本 の 学 習 指 導 要 領 に 相 当 す る も の と し て 、 「レ ア プ ラ
ン 」と 呼 ば れ る 教 育 内 容 (何 を 教 え る の か )と 、
「ビルドュンクス
プ ラ ン 」 と 呼 ば れ る 到 達 目 標 (児 童 生 徒 は 何 が で き る よ う に な
っ た か )が 設 定 さ れ て い た 。 新 た に 創 設 さ れ た 初 等 中 等 教 育 機
関 、「ゲ マ イ ン シ ャ フ ト シ ュ ー レ 」で は 、日 本 の 成 績 表 に あ た る
も の は な く 、ビ ル ド ュ ン ク ス プ ラ ン を ベ ー ス と し て 、学 習 項 目
が 「ど の 程 度 で き る よ う に な っ た か 」を 表 で 示 し た 、 「コ ン ぺ テ
ン ツ ラ ス タ 」を 成 績 表 と し て 使 用 し て い る 。
研 修 後 半 で 訪 れ た バ イ エ ル ン 州 で は 、教 育 内 容 と 到 達 目 標
を 一 体 化 し た 、「レ ア プ ラ ン プ ラ ス 」を 作 成 中 で あ っ た 。こ れ は
州が管轄する全ての学校形態毎に科目単位で作成されており、
児童生徒に習得して欲しいコンぺテンツがまとめられている。
教授法・指導法に関する情報も記載されている。
(イ)全国統一学力テストと州統一学力テストの実施
全 国 統 一 学 力 テ ス ト と し て 、 第 4 学 年 、 第 6 学 年 、 第 10 学
年 の 児 童 生 徒 を 対 象 に 、 1500 校 を 抽 出 調 査 し て い る 。 州 統 一
学 力 テ ス ト は 、全 て の 学 校 で ド イ ツ 語 、算 数 科 (数 学 科 )等 で 実
施 し て い る 。州 の テ ス ト は 、学 習 に お け る 児 童 生 徒 の つ ま ず き
を 確 認 し た り 、そ れ を 基 に 教 員 の 指 導 法 の 工 夫 や 改 善 を 図 っ た
りすることを目的としている。
( ウ )「 七 つ の 行 動 分 野 」 の 決 議
い わ ゆ る 「P I S A シ ョ ッ ク 」の 後 、 各 州 文 部 大 臣 会 議 は
2001 年 12 月 に 優 先 的 に 取 り 組 む 教 育 改 革 の 課 題 を 示 し た 「七
つ の 行 動 分 野 」を 決 議 し た 。
・就学前の子供への言語能力育成
・幼稚園から基礎学校への連結の改善
・初等教育の充実(読解力、数的リテラシーの育成)
・移 民 と し て の 背 景 を も つ 子 供 と 、障 が い を も つ 子 供 へ の
配慮
・学校の質的改善に向けた「教育スタンダード」の設定
・教員研修の充実
・全日制の学校教育の拡大の努力
②
バーデン・ヴュルテンベルク州とバイエルン州の教育について
ア
バーデン・ヴュルテンベルク州の教育制度・施策について
(ア)学校制度
6 ~ 10 才 の グ ル ン ト シ ュ ー レ (基 礎 学 校 )修 了 後 、ハ ウ プ ト
-9-
シ ュ ー レ 、レ ア ル シ ュ ー レ 、ギ ム ナ ジ ウ ム に 分 か れ る 。(図 2 )
学校は成績を基に保護者へ上級学校の選択についてアドバイ
ス を す る が 、最 終 的 に は 保 護 者 が 決 め る 。進 学 後 、以 前 は 学 校
間の移動ができなかったが、現在ではその後の成績によって、
ハ ウ プ ト シ ュ ー レ と レ ア ル シ ュ ー レ 、レ ア ル シ ュ ー レ と ギ ム ナ
ジウムといった学校間の移動ができるようになった。
バーデン・ヴュルテンベルク州の学校系統図(初等~中等教育)
図◇-1 バーデンヴュルテンベルク州の学校系統図(初等~中等教育)
図2
ギムナジウム
グルント
シューレ
(基礎学校)
1
レアルシューレ(実科学校)
ハウプトシューレ(基幹学校)
4
9
10
12
学年
現在のドイツは、ハウプトシューレへの進学率が下がってき
て い る 。そ こ で 、バ ー デ ン・ヴ ュ ル テ ン ベ ル ク 州 で は 4 年 前 に 、
1 ~ 10 年 生 ま で を 一 貫 し て 教 育 す る 新 し い タ イ プ の 学 校 (ゲ マ
イ ン シ ャ フ ト シ ュ ー レ )を 設 立 し た 。現 在 モ デ ル 校 と し て 州 内 に
4 校 あ る 。 (図 3 )
図◇-2 ゲマインシャフトシューレ(初等~中等教育)
図3
→ ギムナジウムに編入
ゲマインシャフトシューレ
1
→ 10年で卒業
→ 9年で卒業
9
10
4
13
(イ)教育施策・教育課程の特徴
2005 年 に 州 の 教 育 の 研 究 機 関 と し て 「シ ュ ツ ッ ト ガ ル ト 教 育
研 究 所 」を 設 立 し た 。 こ こ で は 教 育 の 質 を 高 め る た め に 、 教 育
課程の編成、教材開発、学校評価といった業務を行っている。
教 育 課 程 に は “ レ ア プ ラ ン ” (何 を 教 え る か )と 、“ ビ ル ド ュ ン
ク ス プ ラ ン ”(児 童 生 徒 は 何 が で き る よ う に な っ た か )が あ り 、
特 に ビ ル ド ュ ン ク ス プ ラ ン は 、各 学 校 の 代 表 の 意 見 も 取 り 入 れ
て作成している。
4 年 前 に 設 立 さ れ た ゲ マ イ ン シ ャ フ ト シ ュ ー レ で は 、今 ま で
の 学 校 の よ う に 成 績 表 は な く 、 評 定 も 出 さ な い 。 (必 要 が あ れ
ば 出 す が 、 要 望 す る 保 護 者 は い な い と い う )学 習 の 到 達 度 は 作
業 表 を 6 ヶ 月 に 1 回 保 護 者 へ 出 し て 知 ら せ る 。そ の 内 容 に つ い
て は 、教 科 担 当 を 始 め 生 徒 と 関 わ る 全 教 師 が 話 し 合 っ て 作 成 し 、
身についたコンぺテンツを文章で記述する。
(別 添 資 料 A - 1 ~ 3 )
履修教科の特徴としては、英語が1年生から必修である。
(ウ)バーデン・ヴュルテンベルク州の視察校について
シュツットガルト市と近郊の市においては、基礎学校1校、
統合学校1校、ギムナジウム2校の4校を視察した。
- 10 -
Königin-Olga-Stift ( ケ ー ニ ジ ン オ ル ガ ス テ ィ フ ト ) 【 ギ ム ナ ジ ウ ム 】
シ ュ ツ ッ ト ガ ル ト 市 内 に あ り 、 5 年 生 か ら 12 年 生 ま で 在 籍
している。バイリンガルの養成を学校の重点目標としており、
英 語 は も ち ろ ん の こ と 、6 年 生 よ り 第 二 外 国 語 と し て フ ラ ン ス
語 を 、8 年 生 か ら は 選 択 と し て ロ シ ア 語 、ス ペ イ ン 語 を 履 修 す
る こ と が で き る 。ま た 、自 然 科 学 に も 力 を い れ て お り 、8 年 生
か ら 選 択 す る こ と が で き る 。さ ら に 、数 学 や 物 理 な ど で 優 秀 な
成 績 を 修 め る 生 徒 は M I N T (数 学・情 報・技 術 )と い う プ ロ グ
ラムで大学の講義にも参加している。学校は全日制であるが、
親 の 選 択 に よ り 半 日 で 帰 宅 す る 生 徒 も い る 。ま た 、5 年 生 と 8
年生で州の一斉テストにも参加している。
Ludwig-Uhland-Schule ( ル ー ト ヴ ィ ッ ヒ ウ ー ラ ン ト シ ュ ー レ )
【ゲマインシャフトシューレ】
ヴ ェ ン ト リ ン ゲ ン 市 内 に あ り 、 6 才 か ら 16 才 を 対 象 に し て
い る 。 現 在 600 名 が 在 籍 し て い る 。 学 校 は 1979 年 に ハ ウ プ ト
シューレとして設立されたが、州の学校体制の変革により
2013 年 に ゲ マ イ ン シ ャ フ ト シ ュ ー レ に 変 わ っ た 。 入 学 か ら 卒
業 ま で 同 じ 教 師 が 学 習 ア ド バ イ ザ ー と し て つ き 、 週 1 回 15 分
程 度 の 学 習 計 画 や 進 度 の 確 認 を 行 っ て い る 。そ の 際 に は コ ン ぺ
テンツラスタというビルドュンクスプランを簡素化した一覧
表 (別 添 資 料 A - 1 ~ 3 )を 使 っ て 自 分 の 状 況 を 客 観 的 に 確 認
している。
教 師 だ け で は な く 、児 童 生 徒 や 保 護 者 も コ ン ぺ テ ン ツ ラ ス タ
を 見 れ ば 教 科 ご と の 自 分 の 学 習 状 況 が 客 観 的 に 確 認 で き る 。ま
た 、教 室 の 中 に 個 別 の 学 習 ス ペ ー ス も あ り 、個 別 の 課 題 は そ こ
で 取 り 組 む 。全 体 指 導 の と き は 教 室 の 中 央 に 円 形 に 集 ま る 。ゲ
マインシャフトシューレは必ず全日制である。
Mozartschule Neuhausen ( モ ー ツ ァ ル ト シ ュ ー レ )【 基 礎 学 校 】
ノ イ ハ ウ ゼ ン 市 内 に あ り 、1 ~ 4 年 生 を 対 象 に し て い る 。現
在 440 名 の 児 童 が 在 籍 し て い る 。各 学 年 4 ~ 5 ク ラ ス あ り 、全
18 学 級 の 大 規 模 校 で あ る 。 教 員 は 26 名 で あ る 。 「言 葉 こ そ 世
界 に 出 て い く 鍵 」を コ ン セ プ ト に 、 読 解 力 や 言 語 能 力 を 高 め る
こ と に 重 点 を 置 い て い る 。学 校 の 前 に あ る 図 書 館 を 利 用 し て 本
を 借 り て く る だ け で は な く 、図 書 館 の 中 で 授 業 を し た り イ ベ ン
ト に 参 加 し た り し て い る 。3 年 生 が 1 年 生 に 本 の 読 み 聞 か せ を
し 、表 現 力 を 高 め て い る 。ド イ ツ 語 の 習 得 が 不 十 分 な 児 童 に は 、
少 人 数 ク ラ ス で 学 習 し た り 、就 学 前 に 幼 稚 園 に 出 向 き ド イ ツ 語
獲 得 を 目 指 す プ ロ グ ラ ム を 行 っ た り し て い る 。ま た 、低 学 年 よ
- 11 -
り自然科学のコンぺテンツを高めることも重視している。
Eberhard-Ludwigs ( エ ー ベ ル ハ ル ト ル ー ト ヴ ィ ッ ヒ )【 ギ ム ナ ジ ウ ム 】
1686 年 に 創 立 さ れ 、 シ ュ ツ ッ ト ガ ル ト 市 内 で 最 も 古 い ギ ム
ナ ジ ウ ム で あ る 。以 前 は 古 典 語 ギ ム ナ ジ ウ ム で あ っ た が 、1970
年 か ら 音 楽 コ ー ス も 設 立 さ れ 、公 立 で は 唯 一 の 音 楽 系 ギ ム ナ ジ
ウ ム と な っ て い る 。3 年 前 か ら 音 楽 大 学 と 連 携 し 、才 能 あ る 生
徒 の 英 才 教 育 も 行 っ て い る 。 生 徒 数 は 450 名 で 教 員 は 55 名 、
音 楽 大 学 か ら 派 遣 さ れ る 外 部 講 師 等 も 数 名 い る 。古 典 語 と 音 楽
が 2 つ の 柱 に な っ て お り 、第 一 外 国 語 と し て ラ テ ン 語 を 、第 二
外 国 語 と し て 英 語 を 入 学 時 か ら 学 習 し て い る 。8 年 生 よ り 選 択
学 習 と し て 、 フ ラ ン ス 語 、 古 典 ギ リ シ ャ 語 (フ ラ ン ス 語 と 古 典
ギ リ シ ャ 語 は 第 三 外 国 語 と し て )、 音 楽 の 中 か ら 1 つ を 選 ぶ 。
イ
バイエルン州の教育制度・施策について
(ア)学校制度
6 ~ 10 才 の グ ル ン ト シ ュ ー レ (基 礎 学 校 )修 了 後 、 ミ ッ テ レ
シ ュ ー レ (中 等 学 校 )、レ ア ル シ ュ ー レ (実 科 学 校 )、ギ ム ナ ジ ウ
ム に 分 か れ る 。(図 4 )ど の 上 級 学 校 に 進 学 す る か は 4 年 生 の 評
定 に よ り 決 定 さ れ る 。成 績 が 上 位 で あ れ ば ど の 学 校 で も 選 択 は
可能である。成績中位はレアルシューレかミッテレシューレ、
成 績 下 位 は ミ ッ テ レ シ ュ ー レ に 進 学 す る 。し か し 、進 学 後 2 年
間 は 指 導 観 察 期 間 と な っ て お り 、ミ ッ テ レ シ ュ ー レ で 良 い 成 績
を 修 め る こ と が で き る と 、レ ア ル シ ュ ー レ に 変 わ る こ と が で き
る と い っ た 具 合 に 学 校 間 の 移 動 も 可 能 で あ る 。た だ し そ の 場 合 、
以 前 の 学 校 で 過 ご し た 学 年 を 、変 わ っ た 先 の 学 校 で 、も う 一 度
や り 直 さ な け れ ば な ら な い た め に 、修 了 ま で に 1 年 間 長 く か か
る 。し か し 、特 に 優 秀 な 成 績 の 場 合 は 、例 外 的 に 留 年 し な い 場
合 も あ る 。た だ し 、こ の 学 校 間 の 移 動 に つ い て は 、実 情 と し て
ギムナジウムからレアルシューレに移動するケースが最も多
いという。
図◇ バイエルン州の学校系統図(初等~中等教育)
図
4
ギムナジウム
グルント
シューレ
(基礎学校)
1
レアルシューレ(実科学校)
ミッテレシューレ(中等学校)
4
9
10
12
学年
保護者は全日制と半日制を選択できるようになっている。午
後 の 活 動 内 容 (全 日 制 )は 、 補 習 や ス ポ ー ツ を す る こ と な ど が 多
い。
(イ)教育施策・教育課程の特徴
ド イ ツ 16 州 の 中 で も 一 番 大 き い 州 で あ る バ イ エ ル ン 州 は 、7
- 12 -
つの地域に分かれており7つそれぞれの地域に教育委員会があ
る。いくつかの課題は教育委員会ごとで行うが、州全体の教育
に 関 し て は I S B (バ イ エ ル ン 教 育 水 準 局 )が 行 っ て い る 。 こ の
I S B は 州 の 文 化 教 育 省 (K M )に 助 言 を 与 え 、 レ ア プ ラ ン の 編
集や教材開発を行い、学校や児童生徒、教員に新しい教育を提
示 す る 役 目 を 担 っ て い る 。I S B に よ り 2011 年 以 前 の レ ア プ ラ
ン を 更 新 す る 形 で 「レ ア プ ラ ン プ ラ ス 」が 作 成 さ れ て い る 。 そ し
て、それは現在、基礎学校で実施されている。今後、中等学校
や実科学校等でも新しいものが導入されることになる。
「レ ア プ ラ ン プ ラ ス 」は 、 ① 校 種 ② 教 科 の 学 習 内 容 ③ 各 学 年
で習得すべきコンぺテンツ ④指導法の4つの章で構成されて
い る 。以 前 と の 大 き な 違 い は ③ 習 得 す べ き コ ン ぺ テ ン ツ で あ り 、
教員だけでなく、児童生徒や一般の人が見ても、各学年、各教
科でどのような力をつけるのかがわかるようになっている。ま
た、これらの内容はオンラインで見ることもできるようになっ
ている。
ま た 、す べ て の ミ ッ テ レ シ ュ ー レ (中 等 学 校 )が 連 携 し 、近 隣
の学校間で、生徒が移動して授業を受けられるシステムをつく
ったり、移民の生徒のためにドイツ語を集中して学ぶことがで
きるクラスを設けたりしている。現在は難民の受け入れが急増
し、教員が足りない状況である。英語教育は3年生より行って
いる。
(ウ)バイエルン州の視察校について
Grundschule am Hedernfeld ( ヘ デ ル ン フ ェ ル ド
グルントシューレ)
【基礎学校】
ミュンヘン市郊外にあり、教育に熱心な家庭や生活に厳しい
家 庭 な ど 混 在 す る 教 育 間 格 差 が 大 き い 地 域 で あ る 。 全 校 240 名
の う ち 35% が 何 か し ら の 障 が い の あ る 児 童 で あ る 。 た だ し 、 バ
リアフリーではないため、身体的な障がいの児童は在籍してい
な い 。 教 員 は 30 人 で 、 そ の う ち 常 勤 は 12 名 で あ る 。 ミ ュ ン ヘ
ン大学と連携し、教育実習生が手伝いとして入っている。
この学校はインクルーシブ教育を推進しており、障がいのあ
る児童も同じ学級に入って学習をしている。また、教育実習生
だけでなく、どのクラスにも元教員等のボランティアスタッフ
が入り、本の読み聞かせや学習困難児への支援を行っている。
多様な児童に対応するために、一斉授業の学習形態ではなく、
オープンドアシステムという学習形態がとられている。一週間
の プ ラ ン (別 添 資 料 B - 1 ~ 2 )を 各 自 が 決 め て 、 毎 日 1 時 間 ず
つ個別に課題を進め、自主的に学習に取り組んでいる。
難民等のドイツ語が話せない児童のために、週3回集中的に
- 13 -
ドイツ語を学習する時間を設けている。学習が遅れている児童
に対しては、週1回の補習も行っている。
Mittelschule an der Ichostrasse
( イ ッ ヒ ョ シ ュ ト ラ ッ セ ミ ッ テ レ シ ュ ー レ )【 中 等 学 校 】
ミ ュ ン ヘ ン 市 内 に あ り 、 5 ~ 9 年 生 302 名 が 在 籍 し 、 32 名 の
教員がいる。5、7、8年に通過性のクラスがあり、難民など
のドイツ語が話せない児童生徒はまずこのクラスに入る。そし
て、ドイツ語を学習してから通常クラスに入っていく。通過性
の ク ラ ス に は 現 在 60 名 が 在 籍 し て い る 。8 年 生 か ら 週 に 4 時 間
の職業訓練が始まり、木・金属加工の技術やコンピュータを利
用した経済、調理など、卒業後の職業に即した学習を行う。
Mittelschule Walliser Strasse
( ヴ ァ リ ー ザ ー シ ュ ト ラ ッ セ ミ ッ テ レ シ ュ ー レ )【 中 等 学 校 】
ミ ュ ン ヘ ン 市 郊 外 に 位 置 し 、 生 徒 240 名 、 教 員 28 名 で あ る 。
5~9年生まで、通常学級として各学年2クラスあり、難民等
でドイツ語が十分に話せない生徒のためのクラスが2クラス、
論理的思考が不十分な生徒のための支援学級が1クラス、特別
支 援 の 1 ク ラ ス の 合 計 14 ク ラ ス が あ る 。
木・金属加工の技術を学ぶ学科やコンピュータを利用した情
報を学ぶ学科、コックになるための調理技術の習得する学科な
どの3つの学科がある。個性化や個別化を図るために、教材選
択 や 教 具 の 工 夫 を 行 い 、個 別 学 習 で は 、学 習 段 階 を 6 つ に 分 け 、
自分に合った学習を生徒が選択できるようにしている。
ウ
バーデン・ヴュルテンベルク州とバイエルン州を視察して
(ア)2つの州に共通すること
この2州はともに旧態然とした三分岐型の学校制度を維持
しており、学校制度の改革としてはあまり進んでいない。し
か し 、国 内 の 統 一 テ ス ト や P I S A 調 査 の 結 果 で は 16 州 の 中
でも上位に位置している。特にバイエルン州は外国人や移民
の占める割合が他の州に比べて高いにもかかわらず、常に上
位の成績を保っている。
このような成績の結果については、次の3つのことが理由
として考えられる。
1つ目は、コンぺテンツベースのカリキュラムが効果を上
げているということである
2つ目は、指導の個別化を重視していることである。能力
の差や障がいのある児童生徒への対応だけではなく、移民や
難民でドイツ語が話せない児童生徒への対応も行われている。
- 14 -
特に基礎学校では、多様な背景をもつ児童に、それぞれに合
った最適な教育を受けさせようと様々な工夫が行われていた。
習熟度に応じて何種類もの課題を準備したり、1単位時間の
授業の中でも個別やグループ、一斉の授業形態などを巧みに
使い分けたりと、教師の指導力の高さを感じた。
3つ目は、学習形態である。一斉学習だけではなくコーポ
ラ テ ィ ブ ・ ソ ー シ ャ ル ラ ー ニ ン グ (協 働 的 問 題 解 決 型 学 習 )も
多く取り入れていた。これは、一人一人が違う知識を出し合
い協働的に学習していくということで、現在日本で言われて
いるアクティブ・ラーニングの理念と同様と考える。現在の
ドイツは多民族の状況にあり、多様な考えや価値観をもって
いる者同士が共に学習しなければならない現状がある。児童
生徒同士が協働的に関わることが集団全体の向上にもつなが
る。また、将来の社会に出たときに必要なチームワークなど
の社会性を身につけることもできると考えられる。
(イ)2つの州の違うところ
日本の学習指導要領にあたる教育プランの違いである。バ
ーデン・ヴュルテンベルク州では、レアプランとビルドュン
クスプランの2つを作成しており、現場の教員は身につける
べきコンぺテンツが書かれたビルドュンクスプランを意識し
て日々の指導を行っている。しかし、一方のバイエルン州で
はレアプランプラスに一本化し、学習者が身につけるコンぺ
テンツを状況ごとに方法コンぺテンツ、教科コンぺテンツ、
個人的コンぺテンツ、社会的コンぺテンツと細かく表してい
る。レアプランプラスはオンライン公開され、教師だけでな
く生徒や保護者、教育に関心がある一般の人の誰もが閲覧可
能になっている。
バーデン・ヴュルテンベルク州では近年、政権政党がかわ
り、さらに教育改革が進んでいる。ゲマインシャフトシュー
レの導入もそのひとつである。まだ導入されて数年だが、今
後、どのように影響してくるか注目したい。
(2)PISA型読解力の育成について
①
課題設定の理由
ド イ ツ 国 内 で は 、1950 年 代 か ら 1970 年 代 ま で 続 い た 外 国 人 労 働 者
の 受 け 入 れ や 、政 治 的 迫 害 者 を 庇 護 す る ド イ ツ 連 邦 基 本 法 に よ る 難 民
の 流 入 な ど に よ り 、全 人 口 の 約 10% が 移 民 等 の 背 景 を も つ 国 民 で 占 め
ている。また同時に、家庭環境の変化も要因として、子供達の習得
し て い る 言 語 、学 力 等 の 差 が 大 き く 広 が っ て い る の が 現 状 で あ る 。そ
の た め 子 供 達 の お か れ て い る 生 活 環 境 や 文 化 、宗 教 に 関 係 な く 、ド イ
- 15 -
ツ 社 会 で 生 活 で き る 子 供 の 育 成 を 根 底 に 教 育 が 行 わ れ て い る 。言 語 領
域 に お い て は 、 基 礎 学 校 か ら 児 童 生 徒 一 人 一 人 に 言 語 (ド イ ツ 語 ・ 英
語 ・ 第 三 外 国 語 )を 習 得 さ せ 、 そ の 運 用 能 力 を 身 に つ け さ せ る 取 組 が
行われている。
一 方 、日 本 国 内 で も P I S A 調 査 や 全 国 学 力・学 習 状 況 調 査 等 に お
い て 、 言 語 活 用 力 (多 様 な 集 団 の 中 で 言 語 を 運 用 し な が ら 自 分 の 考 え
を 作 り 出 し 、 判 断 し 、 表 現 す る 能 力 )の 低 下 が 指 摘 さ れ て い る 。 そ こ
で 、同 じ よ う に 言 語 に 課 題 を 抱 え て い る ド イ ツ で は 、ど の よ う に 児 童
生 徒 の 言 語 運 用 能 力 を 育 成 し て い る の か 、と い う こ と を 今 回 の 派 遣 テ
ーマとして調査を行ってきた。
②
読解力のとらえ方
従 来 、日 本 の 国 語 科 教 育 の 読 解 力 と は 、テ キ ス ト の 内 容 を 理 解 す る
能 力 と し て と ら え ら れ て き た 。そ の 結 果 、P I S A 型 読 解 力 の 育 成 に
つ い て は 、な か な か 成 果 に つ な が っ て い な か っ た 。そ こ で 、日 本 国 内
では、PISA型読解力を、① テキストの中の情報の取り出し、②
テ キ ス ト の 意 味 理 解 (解 釈 )、 ③ 情 報 を 知 識 や 経 験 に 関 連 付 け る (熟
考・評 価 )の 3 つ に 整 理 し た 。そ し て 、P I S A 型 読 解 力 を 育 成 す る
た め に は 、情 報 を 取 り 出 し て 意 味 を 理 解 し 、自 分 の も っ て い る 知 識 や
経 験 と 関 連 付 け て 判 断 し 、課 題 を 解 決 す る た め の 思 考 力・判 断 力・表
現 力 を 育 成 す る 必 要 が あ る と し 、 学 習 指 導 要 領 の 中 に あ る 「生 き る 力
の 育 成 」と 同 じ 方 向 性 で あ る こ と を 位 置 づ け た 。
今 回 の ド イ ツ で の 調 査 で は 、基 礎 学 校 2 校 、ゲ マ イ ン シ ャ フ ト シ ュ
ー レ 1 校 、ミ ッ テ レ シ ュ ー レ (中 等 学 校 )2 校 、ギ ム ナ ジ ウ ム 2 校 を 訪
問 し た 。 こ の 7 校 を 訪 問 し て 分 か っ た こ と は 、 校 種 に 関 係 な く 、 「読
解 力 」に つ い て の と ら え 方 が 共 通 し て い る こ と 。 そ し て 、 「読 解 力 」を
育 成 す る た め に 一 貫 し た 指 導 が な さ れ て い る こ と で あ っ た 。ド イ ツ の
各 学 校 で は 、 読 解 力 を 「知 識 (イ ン プ ッ ト )を 活 用 し て 自 分 で 学 習 を 進
め 、 考 え 、 判 断 し 、 そ れ を 言 葉 で 表 現 (ア ウ ト プ ッ ト )で き る 力 」と し
て と ら え て い る 。そ の 中 で 特 に 重 視 さ れ て い る こ と が 、言 葉 を 介 し て
児 童 生 徒 が 自 発 的 に 学 習 に 取 り 組 む こ と で あ る 。今 回 視 察 し た 基 礎 学
校 で の 数 学 科 の 学 習 や 、ミ ッ テ レ シ ュ ー レ で の 自 然 科 学 の 学 習 、ギ ム
ナ ジ ウ ム で の 社 会 科 の 学 習 な ど で 、自 分 の 考 え を 言 葉 で 表 現 し 、児 童
生徒が主体的に学習を進める姿を見ることができた。
③
言語運用能力の育成を図るための取組
ア
「個」での学習の積み重ね
(ア)学習の個別化の必要性
ド イ ツ は 、移 民 や 難 民 を 多 く 受 け 入 れ て き た と い う 社 会 的 背
景 が あ り 、視 察 し た バ ー デ ン・ヴ ュ ル テ ン ベ ル ク 州 と バ イ エ ル
ン 州 と も に 、児 童 生 徒 一 人 一 人 に 応 じ た 個 別 指 導 の 必 要 性 が 課
題 と な っ て い る 。バ ー デ ン・ヴ ュ ル テ ン ベ ル ク 州 で は 、児 童 生
- 16 -
徒 一 人 一 人 が 身 に つ け る べ き 能 力 を 示 し た 「ビ ル ド ュ ン ク ス プ
ラ ン 」を 設 定 し て い る 。 そ し て 、 そ れ ら の 能 力 が ど の 程 度 身 に
付いたかを児童生徒自身で確かめながら学習を進めることが
で き る 「コ ン ぺ テ ン ツ ラ ス タ 」を 作 成 し て い る 。一 方 、バ イ エ ル
ン 州 で は 、ど ん な 力 を 身 に つ け れ ば よ い の か を 児 童 生 徒 や 保 護
者 も 分 か る よ う に 示 し た 「レ ア プ ラ ン プ ラ ス 」を 作 成 し 実 施 し
て い る 。こ れ ら は 、多 様 な 背 景 を も つ 児 童 生 徒 一 人 一 人 に 対 応
した学ぶ楽しさを味わい基礎的な能力を身につけさせようと
するものである。
視 察 先 の 教 室 で は 、教 師 に よ る 一 斉 授 業 と と も に 、児 童 が 個
別 学 習 を す る 様 子 も 見 ら れ た 。授 業 の 内 容 も 、児 童 が 自 ら 考 え 、
課 題 を 解 決 し て い く こ と が で き る よ う な 工 夫 が さ れ て い て 、自
分 の 考 え を 積 極 的 に 発 信 し よ う と す る 姿 が 見 ら れ た 。 (日 本 の
小 学 校 に あ た る 基 礎 学 校 に 入 学 し て か ら 、4 週 間 あ ま り し か 経
っ て い な い 1 年 生 の 教 室 で も 同 様 の 様 子 が 見 ら れ た )こ れ ら の
こ と は 、個 別 に 学 習 す る 場 と 時 間 の 設 定 を 継 続 的 に 積 み 重 ね た
こ と で 、課 題 に つ い て 主 体 的 に 考 え よ う と す る 姿 勢 や 能 力 が 身
に付いてきた結果ではないかと考える。
(イ)具体的な個別化の授業
シ ュ ツ ッ ト ガ ル ト の 基 礎 学 校 に お い て は 、TAGESPLAN と い う
個 別 の 課 題 に 取 り 組 む 学 習 が 展 開 さ れ て い た 。1 年 生 の ド イ ツ
語 の 授 業 で は 、提 示 さ れ た い く つ か の 課 題 の 中 か ら 、児 童 は 自
分が取り組む課題を決め、個別に学習を進めていく。そして、
1 つ の 課 題 が 終 了 す る と 、次 の 課 題 に 移 っ て い く 。ホ ワ イ ト ボ
ー ド に あ る ネ ー ム プ レ ー ト を 移 動 さ せ る こ と で 、自 ら の 目 標 を
は っ き り と と ら え さ せ る こ と が で き て い た 。教 師 は こ れ ら を 活
用して児童の学習状況を把握するとともに、質問に答えたり、
取組についてのアドバイスを送ったりしていた。
ま た 、 ミ ュ ン ヘ ン の 基 礎 学 校 で は 、 WOCHENPLAN と い う 週 単
位 の 学 習 課 題 が あ り 、毎 日 1 時 間 、個 別 に そ れ ら の 課 題 に 取 り
組 む 時 間 が 設 定 さ れ て い た 。読 み・書 き や 数 学 科 、生 活 科 な ど
の 中 核 と な る 教 科 の 課 題 が あ り 、ど の 課 題 か ら 学 習 す る か は そ
れぞれの児童が決めていた。
こ の よ う な 多 様 な 児 童 生 徒 に 対 応 す る た め に 、設 立 さ れ た の
が ゲ マ イ ン シ ャ フ ト シ ュ ー レ で あ る 。ゲ マ イ ン シ ャ フ ト シ ュ ー
レ で は 、 子 ど も た ち は そ れ ぞ れ の オ フ ィ ス (個 別 の 学 習 ス ペ ー
ス )を も ち 、 そ こ で 各 自 の 課 題 に 取 り 組 ん で い く 。
それぞれの課題はコンぺテンツラスタを基に設定されてお
り 、教 師 と 相 談 し な が ら 自 ら が 取 り 組 む 課 題 を 決 め る 。教 師 は
そ れ ぞ れ の 課 題 に 応 じ て 、必 要 な 知 識 を 与 え 、児 童 生 徒 は そ れ
- 17 -
を 基 に 、自 立 的 に 学 習 を 進 め て い く 。ま た 、自 己 評 価 を す る た
め の ノ ー ト が 準 備 さ れ て お り 、自 ら ど の 程 度 の 能 力 を 身 に つ け
ることができたのかを確認することもできる。
イ
アウトプットを重視した学習形態
ドイツでは、過去のPISAショッ
ク を 背 景 に 、基 礎 学 校 1 年 生 (日 本 の
学習プリント
小 学 校 1 年 生 )か ら ギ ム ナ ジ ウ ム 12 年
生 (日 本 の 高 校 3 年 生 )ま で を 通 し て 、
実社会での生活を意識した学習が進め
られている。その過程では、自主的な
学 び を 促 進 し 、 教 師 に よ る 知 識 等 (イ
ンプット) の時間はできる限り少なく
し 、 児 童 生 徒 自 身 の 表 現 活 動 (ア ウ ト プ
ッ ト )の 時 間 を 重 視 し た 教 育 実 践 が 行 わ
れている。つまり教師は一貫して児童生
徒 の 学 習 の コ ー チ (フ ァ シ リ テ ー タ ー )と し て の 役 割 に 徹 し 、 児 童
生徒自身が自ら学び、考え、判断し、それを様々なスキルを用い
て発信して学習する姿を見ることができた。
(ア)基礎学校(バーデン・ヴュルテンベルク州)
バ ー デ ン・ヴ ュ ル テ ン ベ ル ク 州 に あ る 基 礎 学 校 1 年 生 の 算 数
科 「た し 算 」の 学 習 で は 、 ま ず 絵 カ
ードや実物を用いて、数字と数の
具体物の様子
概念の確認を行った。様々な絵カ
ードやおはじき、数え棒、葉など
の実物が用意され、その中から
「3 」な ど の 数 を 見 つ け る 活 動 が 行
われた。その後ワークブックを用
いて、児童一人一人が数の概念の
理解を確かめていた。授業の終末
には、フラッシュカードを用いて数を答えさせた。その際に、
絶 え ず 教 師 は 児 童 が 導 き 出 し た 答 え に 対 し て 、 「な ぜ そ う な る
の 」「も っ と 説 明 し て 」と 問 い 返 し 、 答 え を 導 き 出 し た 過 程 の 考
え方について説明させる時間を多くとっていた。
(イ)ミッテレシューレ(バイエルン州)
バイエルン州にあるミッテレシューレ5年生の自然科学の
学習では、太陽を題材に学習が進められた。まず導入では、
前時の復習を兼ね、太陽のことや、太陽に関わる様々な自然
現象等について、生徒自身が学んだことや知っていることを
た く さ ん 発 言 さ せ て い た 。 その後、ステーション(STATION)と
呼ばれるテーマ別の学習課題が示され、各自自力解決の学習
- 18 -
に入った。このステーションの中には、テキストをじっくり
読み込んで課題解決をする生徒や、読み込んだ内容を基に図
に表していく生徒、読み込んだ内容を基に文章でまとめてい
く生徒など、様々な形で学習に
取 り 組 む 様 子 が 見 ら れ た 。ま た 、
STATIONの説明
抽象的な概念の理解が苦手な
生徒に対しては、アシスタン
トの教師が付き、具体物を使
って理解が図れる場を設定し
ていた。学習のまとめでは、
各自が取り組んだワークシー
ト (別 添 資 料 C 1 ~ 6 )の 答 え
合わせをするのではなく、それぞれのステーションごとに、
どんなことが分かったのか、どんなことを知ったのかという
点について報告する場が設定された。生徒達は積極的に手を
あげ、自分の言葉で表現することができていた。教師は、生
徒達の発言を受けて称賛したり、理解が不十分なところを指
摘したりしていた。このように、生徒達のアウトプット能力
の育成を重視した授業が展開されていた。
( ウ ) ギ ム ナ ジ ウ ム (バ ー デ ン ・ ヴ ェ ル テ ン ベ ル ク 州 )
バーデン・ヴェルテンベルク州にあるギムナジウム8年生
の 地 理 と 12 年 生 の 歴 史 の 授 業 を 参 観 し た 。 地 理 の 学 習 で は 、
前時に作成した熱帯雨林に関するポスターを用いて、友達に
プレゼンを行った。それを基に生徒達は、分かったことや驚
いたことをプリントにまと
め 、も う 一 度 ポ ス タ ー を 確 認
討論のルール
し 、ペ ア で 意 見 交 流 を し て 熱
帯雨林についての理解を深
め て い た 。さ ら に 、友 達 と の
意見交流を通して新たに出
て き た 疑 問 等 に つ い て は 、そ
の解決につながるポスター
を調べる等をして学びを深
め て い っ た 。学 習 の ま と め で
は、本時の学習から分かったことについて、ペアで互いに自
分の言葉で質問したり、それに答えたりして理解を深めてい
た 。 12 年 生 の 歴 史 の 学 習 で は 、 教 師 の 用 意 し た 資 料 を 基 に 、
ヒトラーによる融和政策について、その時代背景や内容につ
い て 確 認 を 行 っ た 。 教 師 側 か ら 生 徒 に 知 識 を 伝 達 (イ ン プ ッ
ト )す る 時 間 は 短 時 間 で 行 わ れ 、そ の 後 は 、生 徒 自 身 が 資 料 を
- 19 -
基に当時のヒトラー がとった政策についてノートにまとめ、
小集団で意見交流が行われた。この1回目の意見交流から出
て き た 考 え を 、さ ら に 学 級 全 体 で 交 流 し 、学 習 の 後 半 で は 、「ヒ
ト ラ ー の と っ た 政 策 に 対 し て ど う 思 う か 」を テ ー マ に 討 論 が
行われた。
この2つの授業実践の共通点は、自分のテーマで学習を進
めたり、自分の考えを明確にもったりし、それを基にペアや
小集団、学級全体等で自分の考えを発表し、互いに評価し、
さらに考えて発表するという、アウトプットが繰り返し行わ
れていたことである。社会科の学習においても、生徒達のア
ウトプット能力の育成を重視した授業が展開されていた。
④
考察
視 察 し た 学 校 で は 、児 童 生 徒 が 主 体 的 に 考 え 、そ れ を 発 信 す る 学 習
活 動 が 、日 々 の 授 業 に 位 置 付 け ら れ て い た 。ま た 、様 々 な 教 科 の 学 習
に お い て 、「日 常 生 活 に つ な げ て 考 え る 」と い う こ と も 、学 習 過 程 の 中
に 設 定 さ れ て い る こ と が わ か る 。個 別 で 取 り 組 ん だ 課 題 を ク ラ ス 全 体
の 中 で 発 表 す る と き 、 正 誤 は 重 視 さ れ て は い な い 。 学 習 を 通 し て 「ど
ん な こ と が 分 か っ た の か 」、「ど ん な こ と を 考 え た の か 」、「な ぜ そ う 考
え た の か 」と い っ た こ と を 、 自 分 の 言 葉 で 分 か り や す く 説 明 す る こ と
の方が求められ、重視されていた。
こ れ ら は 、 「情 報 の 取 り 出 し 」に と ど ま ら ず 、 テ キ ス ト を 「解 釈 」し 、
そ れ ら に つ い て 「熟 考 ・ 評 価 」す る と い う P I S A 調 査 に お け る 「読 解
力 」と 重 な る 。
し か し 、そ れ ら は P I S A 型 の 読 解 力 を 意 識 し た も の と い う よ り は 、
従 来 か ら 読 解 力 を 、考 え の 表 現 (ア ウ ト プ ッ ト )ま で 含 ん だ も の と し て
と ら え て き た 結 果 と い え る だ ろ う 。こ れ は 多 様 な 児 童 生 徒 に 対 応 し た
学 習 を 保 証 す る と と も に 、多 様 な 人 々 が 集 ま る ド イ ツ に お い て 、社 会
に適応して生活する力をつけるためにも大変重要なことである。
日 本 で も 、「生 き る 力 」の 育 成 が 求 め ら れ て き た 。そ れ は 、社 会 の 中
で 自 己 の 責 任 を 果 た す た め の 基 礎 的・基 本 的 な 知 識・技 能 を 習 得 す る
とともに、それらを活用して課題を見いだし、解決するための思考
力・判 断 力・表 現 力 を 養 う こ と で あ る 。P I S A 型 読 解 力 は 、こ れ ら
の能力に通じる力であるといえよう。
し か し 、授 業 に お け る 思 考 活 動 は 個 の 内 に と ど ま り が ち で 、そ れ を
表 現 し 、互 い に 評 価 し 、さ ら に 思 考 す る 学 習 は な か な か 行 わ れ て こ な
か っ た の で は な い だ ろ う か 。各 教 科 に お い て 基 礎 的・基 本 的 な 知 識 ・
技能の習得とともに、それらがどのように活用できるのか考えたり、
話し合ったりする活動を授業の中に確実に位置付けていくことが必
要であると考える。
- 20 -
(3)数学的リテラシーの育成
①
テーマ設定の理由
ド イ ツ は 多 く の 移 民 や 移 民 を 背 景 に 持 つ 児 童 生 徒 の 増 加 が あ り 、教
育 を 進 め て い く 上 で 困 難 な 状 況 に も 関 わ ら ず 、数 学 的 リ テ ラ シ ー の 面
で 前 進 を 見 せ て い る 。こ の 成 績 を 支 え て い る 算 数 科・数 学 科 の 授 業 を
視 察 し 、要 因 を 見 出 す 。そ し て 数 学 的 リ テ ラ シ ー の 育 成 を 意 識 し た 授
業を日本の小学校、高等学校において実施し、その効果を検証する。
これからの日本での算数科・数学科教育の参考としていきたい。
②
数学的リテラシーのとらえ方
事実リテラシー
方法リテラシー
社会的リテラシー
各領域における基礎知識
課題解決に向けて、様々な技術(図、式、グラ
フ、作図など)や様々な学習技術を活用する力
自分自身の強みと弱み、他の生徒の強みと弱み
と付き合い、種々異なる視点に立ち、さらにそ
れらを数学的な質問に変える能力
個人的リテラシー
③
資質能力
現実に何かを成し遂げようとする態
度や能力
数学的リテラシーを育成するための取組
ア
シュツットガルト
基礎学校の算数教育
(ア)内容と目的
基 礎 学 校 1 年 生 「10 ま で の 数 」児 童 21 名 、教 員 1 名 、45 分 授
業 。育 成 し た い 数 学 的 リ テ ラ シ ー は 、算 数 を 学 ぶ 喜 び を 実 感 す
る能力、算数を学ぶ能力。
(イ)授業の様子
本 時 の 学 習 内 容 「10 ま で の 数 」を 知 る (一 斉 学 習 )。
教員と児童が手をつないで輪になり歌やジェスチャー。
同 じ 数 の 仲 間 探 し ゲ ー ム (一 斉 学 習 )。
教室後ろの円形テーブルを囲んで、具体物・半具体物・ア
レイ図・数カードから数を合わせる活動。学習の基盤となる
生活経験が少ない児童への配慮として、りんご、絵カード、
碁 石 、ア レ イ 図 、数 カ ー ド な ど 豊 富 な 教 材 が 用 意 さ れ て い た 。
また、言葉のわからない児童への配慮として、仲間分けを集
める紙皿が色別になっていた。
4名ごとのグループ席で書き込み式のテキストに個別に取
り 組 む 。 教 員 の 出 す フ ラ ッ シ ュ カ ー ド (ア レ イ 図 )を 見 て 、 数
字 を 答 え る 。カ ー ド を 前 面 と 背 面 の 2 段 階 に 分 け て 提 示 (一 斉
学 習 )。児 童 の 解 答 後 に 「な ぜ そ う 思 う の ? 」と さ ら な る 問 い か
け。
- 21 -
【豊富な教材】
【 お助けコーナー 】 【 数 の 量 感 を 豊 か に す る 環 境 】
(ウ)数学的リテラシー育成のための工夫
場の工夫:4名グループごとの机の配置で友達との交流が
積極的になされていた。教室の出入り口に数の読み方表を掲
示して、数に親しむ環境の工夫が見られた。
学 習 規 律 の 徹 底:挙 手 の ル ー ル を 徹 底 し 、私 語 が 一 切 な い 。
入学してわずか1ヶ月あまりとは思えない。
学 校 全 体 と し て の 取 組:
「 基 礎 学 校 の 4 年 間 は 、学 習 を 一 番
楽しむ年代であり、好奇心が旺盛である。算数を学ぶ動機づ
け を し た い 。」と の 考 え か ら 、算 数 科 教 育 を 大 事 に し て い る 例
として、
1.児童の実態をよく知り弱さを見出しその手立てをもつ
こと
2.長期間の学習過程をオリエンテーションすること
3.教員と児童の人間関係を築くこと
等 を 挙 げ ら れ た 。こ れ ら は 、ド イ ツ が 進 め る 教 育 改 革 の キ ー ・
ワ ー ド と な っ て い る 「多 様 性 を 受 け 入 れ る こ と 」に 対 応 し て お
り、授業でも具体化されていた。
イ
ミュンヘン
基礎学校の算数科教育
(ア)内容と目的
基 礎 学 校 1 年 生 「10 ま で の 数 」児 童 17 名 、 教 員 2 名 、 45 分
授業。育成したい数学的リテラシーは、日常の中で使う数学
的な基礎能力。
(イ)授業の様子
本 時 の 学 習 内 容 「数 字 の 書 き 方 (1 か ら 6 )」を 知 る (個 別 学
習 )。
教員が一人一人の児童のノートにお手本の数字を記入。
児 童 が ノ ー ト や ド リ ル に 取 り 組 む (個 別 学 習 )。
教 員 の 指 示 で ペ ア が 組 ま れ 、 学 び 合 い が 始 ま る (ペ ア 学 習 )。
(ウ)数学的リテラシー育成のための工夫
場の工夫:ロの字型配置で、教員がどの児童の学習状況も
把握していた。数の量感を体感できる教具が豊富に配置され
ていた。
- 22 -
学習進度表の活用:1日1時間ある個別学習の時間に、児
童は学習進度表をチェックしながら自らの課題に取り組んで
いた。教員も児童も、いつでも学習の進度を確認でき、取り
組むべき課題を先まで見通せることで、余計な私語は聞かれ
ない。
学校全体としての取組:バイエルン州が特に力を入れてい
る 領 域 と し て 、「計 算 」「幾 何 」「確 率 」を 挙 げ ら れ た 。特 に 、「確
率 」は 3 年 前 か ら 小 学 校 中 学 年 よ り 学 習 内 容 に 加 え ら れ 、日 常
生活において必要とされると推論し、見積もる能力を育成す
るために重視しているとのことであった。豊富な算数教具に
は、自作のものも多数あった。例えば、ペットボトルのキャ
ップに計算カードの役割をもたせ、個の理解状況に合わせ、
問 題 数 を 調 整 し た り 、何 度 も 反 復 さ せ た り し て い た 。「10000」
と 表 示 さ れ た 豆 が 詰 め ら れ た 瓶 、 1 か ら 100 ま で 記 入 さ れ た
クリップ、百玉そろばん、九九計算表などがあった。
ウ
シュツットガルト
ギムナジウムの数学科教育
(ア)内容と目的
ギ ム ナ ジ ウ ム 9 年 生 (中 学 3 年 生 )「指 数 法 則 」: 生 徒 28 名 、
教 員 1 名 、 45 分 ×2 =90 分
指 数 法 則 P1 ) x m  x n  x mn , P2 ) x n  y n  ( xy ) n , P3 ) ( x m ) n  x mn ,
を 自 ら 導 き 出 し 、 m, n は 自 然 数 か ら 整 数 へ の 拡 張 、 x, y も 正 の
実数から全ての実数まで拡張する授業
育成したい数学的リテラシーとして、以下の3点が挙げら
れた。
1.計算力
2.日常の問題を解決する力
3.厳密に働く態度、何かを厳密に成し遂げるという態度
(イ)授業の様子
ま ず 、 プ リ ン ト (別 添 資 料 D - 1 )を 何 も 説 明 な し に 生 徒 は
自ら取り組む。その後、隣や周囲と自由に相談をしたり、関
数 電 卓 を 用 い た り 、 前 時 ま で の ノ ー ト (負 の 指 数 を 扱 っ た 模
様 )を 参 考 に す る な ど 思 い 思 い の 取 り 組 み 方 が 見 ら れ る 。早 く
終わった生徒は、他の生徒に教えており、別のことをやった
り 私 語 を し た り す る こ と は な い 。 P1 )を 生 徒 自 ら 導 き 出 し 、
口 頭 で 説 明 を 含 め て 答 え る 。間 違 え る 生 徒 も 多 か っ た が 、次 々
に 答 え て は 、そ れ に つ い て 長 く 説 明 を す る 。P2 、P3 )も 同 様
に導き出し、教師は指数法則のみ板書した。
続 い て 、 前 時 の 復 習 と し て a n 
- 23 -
1
の確認を行い、
an
a 4 a 2 
1 2 a2
1
aa
 2  a 2 を 導 く 。そ の 際 に 、各 等 号 に
a  4 
4
a
aaaa a
a
対 し て 「な ぜ ? 」と 聞 き 直 し 、丁 寧 に 説 明 を さ せ た 。そ の 結 果 、
P1 )に お い て m, n は 自 然 数 の 場 合 か ら 整 数 へ の 拡 張 で き る こ
と を 確 認 さ せ 、 教 師 が 「 m, n が 負 の 整 数 で も 成 り 立 つ 」と ゆ っ
くり言い、生徒がノートに書き込む。自由に考える時間、話
し合う時間など活動的な場面がある一方で、静かにノートに
書き写す光景もあり授業にメリハリが感じられた。同様に P
2 ,P3 )で も m, n は 自 然 数 の 場 合 か ら 整 数 へ の 拡 張 、 x, y も 正
の実数から全ての実数まで拡張できることを理解させた。ま
た、自主的に問題解決をするために必要な内容だけが書き込
まれているノート作成がなされた。定理や定義をノートに残
すだけでなく、拡張された結果を書き込ませること、基本的
な問題数問がノートに書かれていることで、復習などの自主
活動にも生かされる。続いて、問題集を用いて会話をしてい
る か の よ う に 問 題 を 解 い て い く 。ノ ー ト な ど に は 書 き 取 ら ず 、
途中の過程や理由を口頭で説明を加えながら解いていく。間
違えた場合や、説明が出来ない場合は次々に別の生徒を指名
する。多くの生徒は答えたくて挙手をしているが、挙手をし
ていない生徒にも指名し、生徒は間違えることを恐れること
な く 発 言 を し て い た 。こ の よ う な 問 題 解 決 法 を 20 問 程 度 行 い 、
その後は難しい問題を4問ノートに解くように指示をした。
最 後 に 一 斉 に ノ ー ト を 開 き 、Vorsicht( 注 意 )と し て x 4 
1
は
x4
どんなときにも成り立つのか?という質問をし、生徒からは
意見が次々出され、最終的には x  0 を導き出した。例題を数
問 取 り 上 げ 、宿 題 (所 要 時 間 20~ 30 分 程 度 で 45 分 以 上 要 す る
場 合 は 、そ こ で 解 く の を 止 め て よ い と 指 示 を し て い る )を 提 示
し 、 確 認 テ ス ト (問 題 数 6 問 )を 行 っ て 出 来 た 生 徒 か ら 教 室 出
口でチェックを受けて、教室を出て行き授業が終わった。
(ウ)数学的リテラシー育成のための工夫
本 時 の 学 習 は 、日 本 の 高 校 2 年 生 で 学 習 す る 内 容 で あ る が 、
日本の授業に比べて丁寧に時間をかけている印象を受けた。
黒板の形体と板書
- 24 -
ペ ア で 相 談 し 、板 書 す る 様 子
日 本 と 最 も 異 な る 点 は コ ー ポ ラ テ ィ ブ・ソ ー シ ャ ル ラ ー ニ
ン グ (自 分 で 深 く 考 え 選 ん だ 相 手 と 相 談 し 、 グ ル ー プ で 分 か
ち 合 う )が 自 然 と 行 わ れ て い る こ と で あ る 。 具 体 的 に は 、 黒
板 が 観 音 開 き (写 真 )に な っ て お り 、 指 名 さ れ た 生 徒 4 人 (2
人 1 組 )が 板 書 を 行 っ た (板 書 は 机 に 座 っ て 解 い て い る 生 徒
に は 見 え な い )。 指 名 さ れ た 生 徒 の 組 は 、 時 間 を か け て 相 談
し 、教 え 合 い を し な が ら 解 答 を 作 り 上 げ た 。他 者 と 協 力 し て
問 題 解 決 す る 活 動 が 、 目 標 と し て い る 「日 常 の 問 題 を 解 決 す
る 力 」の 育 成 を 促 進 し て い る 。 さ ら に 、 観 音 開 き を 閉 じ て 答
え 合 わ せ を す る 際 に も 「な ぜ ? 」を 追 求 し 、他 者 に 分 か り や す
く 論 理 的 に 説 明 す る と い う 過 程 が 、 目 標 と す る 「厳 密 に 働 く
態 度 、 何 か を 厳 密 に 成 し 遂 げ る と い う 態 度 」を 育 ん で い る 。
エ
その他の学校の算数科・数学科教育
各校における算数科・数学科を通して育てたいリテラシー
都市
校名
校種
リテラシー
シュツット
ガルト
Ludwi g-U hla nd-Sch ule
ゲマインシャフトシュ
ーレ
コンぺテンツラスタによる個々の適
性と能力にあったリテラシー
Mittels chule an der
Icho strasse
ミッテレシューレ
・計算力 ・空間イメージ
・問題文を読んで読み取る力
Mittels chule Walliser
Strasse
ミッテレシューレ
・計算力 ・日常の問題の解決能力
・具体的・具象的内容の修得
ミュンヘン
※ コ ン ぺ テ ン ツ ラ ス タ に つ い て は (1 )② ア 参 照
④
考察
ド イ ツ で は 、4 つ の リ テ ラ シ ー (事 実・方 法・社 会 的・個 人 的 )を 全
教科、全教育課程を通じて育成しようとしていることが分かった。
ま た 、算 数 科・数 学 科 の 授 業 に お い て も 、知 識 と 方 法 論 に 特 化 す る
こ と な く 、コ ー ポ ラ テ ィ ブ・ソ ー シ ャ ル ラ ー ニ ン グ を 積 極 的 に 取 り 入
れ 、社 会 的・個 人 的 リ テ ラ シ ー の 育 成 を 図 り 、そ れ が 事 実 リ テ ラ シ ー
や方法リテラシーの伸長にもつながっていることが分かった。
日 本 で 進 め よ う と し て い る ア ク テ ィ ブ ・ ラ ー ニ ン グ (能 動 的 ・ 協 働
的 学 習 )に お い て も 、 実 施 す る 目 的 が 教 科 に 特 化 さ れ る こ と な く 、 社
会 的・個 人 的 リ テ ラ シ ー の 育 成 を 目 標 に し な け れ ば な ら な い の で は な
い だ ろ う か 。教 科 特 有 の リ テ ラ シ ー に 偏 る こ と な く 、4 つ の 柱 が バ ラ
ンスよく調和される授業が望ましい。学びの多様化、個性化を図り、
知識構築型の授業へと変化していく必要があろう。
(4)コンぺテンツを育成する指導法について
ド イ ツ は 今 、こ れ ま で と は 大 き く 異 な る 教 育 改 革 を 行 っ て い る 。教 育
課 程 に お い て は 、こ れ ま で に 例 の な い 転 換 を 図 っ て い る 。そ れ に は 、2
つ の 理 由 が あ る 。 1 つ は 、 2000 年 の 「P I S A シ ョ ッ ク 」と い わ れ る 学
力 低 下 へ の 懸 念 で あ る 。2 つ 目 は 、ド イ ツ 社 会 が も つ 民 族 、宗 教 、文 化 、
- 25 -
経済、そして学力をも含めたあらゆる多様性への対応力の育成である。
子 供 達 一 人 一 人 に 基 礎 的 な 知 識・技 能 を 確 実 に 習 得 す る た め の 個 別 的 学
習 の シ ス テ ム を さ ら に 確 立 し 、個 に 適 し た 教 育 を 推 進 し て い く と 同 時 に 、
小さい頃から多様な人と関わり合いながら様々な問題を解決していく
集団的学習を通して学びを深める体験が重要視されている。
そ こ で 、 ド イ ツ の 教 育 改 革 を 、 「ど の よ う な コ ン ぺ テ ン ツ (能 力 )を 、
ど の よ う な 指 導 法 で 身 に 付 け さ せ る の か 」と い う 視 点 で 調 べ て み る と 、
これから日本が目指そうとする教育との共通点が見えてくる。
①
キー・コンピテンシー
ア
ドイツのとらえ方について
ド イ ツ で は こ れ ま で 、与 え ら れ た 課 題 を 解 決 す る 能 力 を 育 て る こ
と に 重 点 を 置 い て き た 。し か し 、こ れ か ら は 「な ぜ そ う な の か 」を 考
え、課題を発見する能力を高めることに重点を置いている。
(ア)自立的に活動する力の育成
ま ず 、 「自 分 は 何 が で き て い て 、 何 が で き て い な い か 」を 明
確にするために
現状を正しく把握したり、自己の課題を発
見したりして、自分の目標を設定する。
次に、自己の目標達成に向けた個人的な学習計画を立て、
実行する。
(イ)相互活用する力の育成
個人的な学習によって身につけた知識や技能を、自分の考
え を 説 明 す る (プ レ ゼ ン テ ー シ ョ ン 等 )場 面 で 使 う こ と が で き
るようにする。
(ウ)多様な人と関わる力の育成
異 質 (様 々 な 違 い が あ る )な 集 団 で の 交 流 活 動 (協 働 )を 学 習
の場面に取り入れる。そのことによって、他者とよりよく関
わる能力を身に付けたり、また、争いを仲裁したり解決した
りする方法を身に付けたりできるようにする。
イ
育成のための指導について
重 要 視 さ れ て い る コ ン ぺ テ ン ツ を 育 て る た め に 、求 め ら れ る 授 業
の 在 り 方 と し て 、現 実 の 生 活 に で き る 限 り 即 し た シ チ ュ エ ー シ ョ ン
(学 習 課 題 )を つ く る こ と が 有 効 で あ る 。
例 え ば 、知 ら な い 人 に 英 語 で 道 を 聞 か れ た と き に ど の よ う に 対 応
す る の が 適 切 か を 考 え る 。英 語 の 授 業 で あ れ ば 、現 実 に 英 語 で 会 話
を す る 場 面 を 設 定 し 、そ こ で ど の よ う に 話 せ ば よ い か 自 分 で 判 断 し
て 表 現 で き る よ う に す る 。で は 、こ の シ チ ュ エ ー シ ョ ン (学 習 課 題 )
で 児 童 生 徒 に 必 要 な コ ン ぺ テ ン ツ (能 力・資 質 )は 、以 下 に 示 す 4 つ
である。
○ 教 科 (英 語 科 )に お け る 知 識 (教 科 コ ン ピ テ ン シ ー )
○ 人 と 関 わ る 力 (パ ー ソ ナ ル ・ コ ン ピ テ ン シ ー )
- 26 -
○ ボ ラ ン テ ィ ア 精 神 の あ る 社 会 性 (ソ ー シ ャ ル・コ ン ピ テ ン シ ー )
○ 自 分 が と る べ き 正 し い 言 動 を 判 断 で き る 力 (メ ソ ッ ド ・ コ ン ピ
テンシー)
よ り 現 実 的 な 状 況 を つ く り 出 し 、さ ら に ペ ア や グ ル ー プ で 解 決 で
き る よ う な 場 面 を 授 業 の 中 で 位 置 づ け 、繰 り 返 し 学 習 し て い く こ と
で、これら4つのコンぺテンツを育成することができる。
ウ
考察
1 つ の 状 況 で 必 要 な コ ン ピ テ ン シ ー を 育 て る 授 業 を 仕 組 む と 、そ
の 能 力 に 付 随 す る あ ら ゆ る 力 が 必 要 に な っ て く る 。教 科 コ ン ピ テ ン
シ ー で は 聞 く 力 、書 く 力 、話 す 力 等 、メ ソ ッ ド・コ ン ピ テ ン シ ー で
は 話 す 態 度 、聞 く 態 度 等 、子 ど も が 身 に 付 け る べ き 力 を そ こ で 総 合
的 に 使 用 し 活 動 で き る こ と を 目 指 し た 指 導 法 が 求 め ら れ て い る 。教
科 の 枠 を 超 え た 総 合 的 な 授 業 を 取 り 入 れ て 、よ り 体 験 的 な 活 動 を さ
せることが必要である。
②
コーポラティブ・ソーシャルラーニングの実態
ア
コーポラティブ・ソーシャルラーニングについて
日 本 で も 「グ ル ー プ 活 動 」は 、以 前 か ら 取 り 入 れ ら れ て き た 。し か
し こ れ は 、教 員 か ら 指 示 さ れ た 活 動 を 小 グ ル ー プ で 行 い 、教 員 が 与
え た い 知 識 を 獲 得 さ せ 、他 の 場 面 で 活 用 さ せ る と い う 目 的 で 行 わ れ
ていたものである。
こ れ に 対 し 、 「コ ー ポ ラ テ ィ ブ ・ ソ ー シ ャ ル ラ ー ニ ン グ 」と は 、
目 的 を も っ て 何 か を 学 ぶ た め に 、 異 質 な (様 々 な 違 い が あ る )子 供
たちが一緒に活動し、何らかの結論を出す学習活動である。
まずは、各自で問題解決に向けた活動をする。この段階では、
各個人がもっている資料はそれぞれ異なっていてもよい。また、
全員が同じ活動をしなくてもよい。グループ内で課題を分担して
異なる役割を引き受ける場合もある。
次の段階では、他の成員に対し各自の活動を通して、習得した
知識や技能を、他のメンバーに説明等をする。そして、それぞれ
が得た結果についてディスカッションをし、グループ内の合意を
形成していく。
教員の役割は、グループ活動の状況等を観察し、適宜助言を与
えるのみである。
児 童 生 徒 自 身 で 、仲 間 と の コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン を 積 極 的 に と り な
が ら 、ソ ー シ ャ ル・コ ン ぺ テ ン ツ を 身 に つ け て い け る よ う に す る の
である。
イ
観察できたコーポラティブ・ソーシャルラーニング(その1)
バーデン・ヴュルテンベルク州のギムナジウムの1つ、
Konigin-Olga-Stift に て 、 英 語 に よ る 地 理 学 の 授 業 を 参 観 し た 。
熱 帯 雨 林 に は 4 つ の 階 層 が あ り 、そ れ ぞ れ の 特 徴 を 調 べ て ポ ス タ ー
- 27 -
セ ッ シ ョ ン の 形 態 で 発 表 す る と い う も の で あ っ た 。1 ク ラ ス 25 人
の 7 年 生 。45 分 ×2 の 途 中 小 休 憩 を 挟 む 90 分 。教 員 は 1 人 で あ っ
た 。生 徒 が 書 い た り 発 表 し た り す る 活 動 は 、す べ て 英 語 を 使 っ て 行
われていた。
ま ず 、同 じ 階 層 に つ い て 調 べ 、ポ ス タ ー を 作 製 し た 3 ~ 4 人 の グ
ル ー プ で 、そ れ ぞ れ が 説 明 を す る 内 容 を 話 し 合 わ せ た 後 、教 室 内
でポスターセッションを行った。
次に、発表で知り得た内容を、1枚の画用紙を本型に加工した
学習成果をまとめる用紙に個人で記入させた。そして、違う階層
を調べた者同士で新たに2~3人のグループを作り、自分の知り
得た新しい知識について交流し、4つの階層についての特徴をま
とめて記入していた。
この学習では、2つの大きな成果があった。
ま ず 1 つ は 、地 理 学 的 に 知 り 得 た 異 な る 知 識 を 交 流 し 、教 え 合 い
によってより高められた知識を獲得できたということである。
2 つ 目 は 、英 語 の 能 力 が 異 な る 者 が 集 ま っ て 交 流 す る こ と で 、正
しいスペルや発音等を自然に獲得していけるということである。
ウ
観察できたコーポラティブ・ソーシャルラーニング(その2)
バーデン・ヴュルデンベルク州のグルントシューレの1つ、
Mozart-Schule で は 、3 年 生 の 自 然 科 学 の 授 業 を 参 観 し た 。実 験 専
用 の 教 室 が あ り 、児 童 12 人 が 、2 ~ 4 人 の グ ル ー プ に 分 れ て い た 。
時 間 は 45 分 、 授 業 者 は 1 人 の 実 習 専 科 の 教 員 で あ っ た 。 学 習 課 題
は 、 ど の よ う な 食 品 (キ ュ ウ リ ・ ヨ ー グ ル ト ・ パ ン ケ ー キ ・ ジ ャ ガ
イ モ )に デ ン プ ン が 含 ま れ て い る か と い う こ と を 、 ヨ ウ 素 溶 液 を 使
って調べる内容であった。
ま ず は 一 斉 授 業 の 形 態 で 、デ ン プ ン に ヨ ウ 素 溶 液 を か け る と 、オ
レンジ色であったヨウ素溶液が紫色に変化することを学習した。
次 に 、各 グ ル ー プ に 実 験 道 具 が 、そ し て 児 童 一 人 一 人 に は ワ ー ク
シ ー ト が 配 ら れ た 。児 童 は そ れ ぞ れ の 食 品 に つ い て 、色 が 変 化 す る
か 、し な い か 予 想 し 、各 自 の 考 え を 出 し 合 っ た 。予 想 が 異 な る も の
に つ い て は 、意 見 を 言 い 合 い 、合 意 を 形 成 し た 上 で ワ ー ク シ ー ト に
自然科学の授業より
- 28 -
地理学の授業より
記 入 し て い た 。ま た 、「な ぜ そ う な る と 思 う の か 」と い う こ と に つ い
て も 、文 章 で 書 き 入 れ て い た 。そ れ ぞ れ の グ ル ー プ で は 、個 々 の 習
熟 度 は 様 々 で 、互 い の 意 見 を 十 分 に 言 い 合 い な が ら も 、リ ー ダ ー 的
な役割を担う児童が上手くまとめていた。
そ し て 実 験 を 行 い 、予 想 と 比 較 し な が ら 結 果 を ワ ー ク シ ー ト に 記
入 し た 。 全 体 の 場 で 結 果 を 発 表 し 、 「な ぜ そ の よ う な 結 果 に な っ た
の か 」と い う こ と に つ い て 話 し 合 い 授 業 が 終 わ っ た 。
こ の 学 校 で は 、教 員 と 児 童 が 、「何 に つ い て 実 験 す る の か 」と い う
こ と を 話 し 合 い 、1 週 間 に 1 回 は 実 験 が で き る よ う に し て い る 。予
想 → 実 験 →考 察 の 授 業 の 流 れ の 中 に 、し っ か り と 協 働 的 な 学 習 が 位
置付けられていた。
③
アクティブ・ラーニングについて
日 本 は 1998 年 以 来 、 従 来 の 知 識 偏 重 型 の 教 育 か ら の 脱 却 を 図 ろ う
と自ら課題解決をしていくことができる人材を育てようと新しい学
力 観 に 立 っ た 教 育 を 行 っ て き た 。知 識 を 身 に 付 け 、そ れ ら を 活 用 し て
他 者 に 伝 え る 表 現 力 を 育 成 し よ う と し て き た 。し か し 、ド イ ツ と 同 じ
く 2003 年 の P I S A 型 学 力 調 査 に お い て 、 日 本 が 目 指 し て き た 活 用
力や応用力について期待した結果は得られなかった。日本における
「P I S A シ ョ ッ ク 」で あ る 。そ し て 今 、新 し い 学 力 観 に 立 っ た 教 育 プ
ランを検討している。
現 在 、日 本 の 教 育 課 題 と し て 、児 童 生 徒 は 与 え ら れ た 課 題 に 対 し て
は 、一 途 に 解 決 法 を 考 え る こ と は で き る が 、自 ら 課 題 を 見 つ け て 解 決
し 、理 解 を 深 め 、そ れ ら を 表 現 す る 能 力 が 十 分 で は な い こ と が 挙 げ ら
れる。
そ こ で 、 こ れ か ら の 日 本 が 目 指 す 方 向 性 と し て 、 異 質 な (様 々 な 違
い が あ る )集 団 で の 交 流 活 動 を 通 し て 、 グ ル ー プ 内 で 個 人 の 足 り な い
こ と を 補 っ た り 話 し 合 っ た り し て 課 題 を 解 決 し 、表 現 し て い こ う と す
る ア ク テ ィ ブ・ラ ー ニ ン グ (協 働 的 な 学 習 )の 学 習 形 態 を 取 り 入 れ 、求
め ら れ る 能 力 育 成 の 指 導 法 と し て 推 進 し よ う と し て い る 。移 民 問 題 を
抱 え て い る ド イ ツ は 、今 後 ま す ま す 多 様 化 す る 個 人 個 人 に ど の よ う な
能力をつけていくべきなのかを個別化教育で推進していくことと同
時 に 、多 様 性 の あ る 社 会 で 生 き る 力 を 協 働 的 な 学 習 を 通 し て 育 て て い
くことは明確に見えている。
ド イ ツ の 教 育 改 革 は 、社 会 的 背 景 の 違 い こ そ あ る が 、こ れ か ら の 日
本が目指す方向性として十分に参考になるものであった。
- 29 -
Ⅱ
研修成果の活用レポート
1
小学校国語科6年生における実践(2時間扱い)
(1)実践のねらい
①
読 解 力 を 育 成 す る た め に 、ド イ ツ の 「コ ン ぺ テ ン ツ ラ ス タ 」の よ う な
言 語 に つ い て の 学 習 表 を 作 り 、自 分 で チ ェ ッ ク し な が ら 学 ば せ 、個 の
言語の力を高めさせる。
②
資 料 を 基 に 、グ ル ー プ の 仲 間 と 協 働 し て 考 え を ま と め さ せ 、学 級 の
仲 間 に 分 か り や す く 伝 え る こ と で 、協 働 す る 力 や ア ウ ト プ ッ ト す る 力
を高めさせる。
(2)実践
①
本時のねらい
ア
読 解 力 を 育 成 す る た め に 、一 人 一 人 が 言 語 に つ い て ど の 位 自 分 が
理 解 で き て い る か 、学 習 表 を 基 に し て 自 分 で チ ェ ッ ク し な が ら 学 ぶ
ことができる。
イ
資 料 を 基 に 、グ ル ー プ の 仲 間 と 協 働 し て 考 え を ま と め 、学 級 の 仲
間に分かりやすく伝えることができる。
②
展開(第1時)
ア
「コ ン ぺ テ ン ツ ラ ス タ 」の 表 と 取 り 組 み 方 に つ い て 知 る 。
イ
自 分 の ペ ー ス で ス テ ッ プ ご と の プ リ ン ト に 取 り 組 み 、自 分 の 力 を
知ったり、分からなかったことを理解したりする。
ウ
振り返りをする。
ドイツのコンぺテンツラスタ(力をつけるチェックリスト)を活用した学習
③
- 30 -
③
展開(第2時)
ア
3種類の課題を知る。
イ
グ ル ー プ (4 ~ 5 人 )ご と に 、一 つ の 課 題 に つ い て 協 働 し て 話 し 合
い、考えをまとめる。
ウ
クラスの仲間に自分たちのグループの考えを分かりやすく伝え
る。
エ
④
振り返りをする。
授業の様子(第1時)
ア
自 分 の ペ ー ス で 、今 ま で に 学 習 し た 言 語 に つ い て 意 欲 的 に 問 題 を
解くことができていた。
イ
児 童 の 振 り 返 り の 中 に 、 「自 分 の 得 意 な こ と と 不 得 意 な こ と が 分
か っ た か ら 、不 得 意 な こ と は 復 習 し た い 」や 、「 日 頃 か ら 接 続 語 や 修
飾 語 な ど を 意 識 し て 使 っ て い き た い 」な ど と い う 今 後 の 思 い が 書 い
てあった。
授業の様子(第2時)
グループの仲間に自分の考
えを伝え、より説得力のある
説明を考えていた。
( 協 働 )い
すに立っている人といすとの
バランスから、いすの高さや
横幅などを求めていた。マス
も利用して、図に数値や矢印
等もかき加え、仲間にも分か
るように順序立てて説明をし
て い た 。( ア ウ ト プ ッ ト )
- 31 -
初めは、星を見ることと、
相談されることの関係が分か
らなかった。でも、協働して
話し合ううちに、考えをつな
げ、意見をまとめていった。
そして、子供のころに星を見
た経験と、大人になってから
友達に相談される生活につい
て、ゆとりのある豊かな心が
あるかどうかという視点で考
え、グラフの結果を分かりや
すく説明していた。
(振り返りより)
・自分とは違う解釈の仕方があり、
人の考えを聞くと見方が広がるか
らいいと思った。
・みんなが意見を出し合って、班の
みんなで協働して考え、うまく伝
えて分かってもらえてよかった。
・○班は、日常とつなげて考えてい
てよかった。発想力は大切だと思
った。
(3)授業の考察
学 習 を 個 に 返 し 、個 の 力 を 高 め て い く こ と は と て も 大 切 だ と 分 か っ た 。
自分の力を知ることができる「コンぺテンツラスタ」は有効だった。
児童は、協働して考え、発信することの楽しさも感じていた。
今後もいろいろな場面で活用していきたい。
2
小学校算数科 4 年生における実践
(1)実践のねらい
ド イ ツ に お け る 教 育 は 、社 会 背 景 も あ り 、様 々 な 人 種 が 多 様 な 考 え を
共 有 し 合 う こ と が 求 め ら れ て い る 。本 校 の 児 童 の 実 態 と し て 、日 々 の 生
活 に 追 わ れ て い る 家 庭 が 多 い た め 、落 ち 着 い て 物 事 を 考 え る こ と が 苦 手
な 児 童 が 多 い 。ま た 、児 童 同 士 の 関 係 も 利 己 的 で 他 者 理 解 が 乏 し く 、ト
ラ ブ ル も 絶 え な い 。児 童 同 士 が よ り よ く つ な が り 、学 び を 深 め て い く こ
と が 、本 校 の 児 童 の 課 題 で あ る 。そ こ で 、社 会 的 リ テ ラ シ ー や 個 性 的 リ
テラシーを明確にし、単元構成の中に位置付けた授業実践を行いたい。
(2)実践
①
本時のねらい
ア
協 働 的 で 体 験 的 な 算 数 的 活 動 を 通 し て 、何 十 を 何 十 で わ る 計 算 原
理や計算の仕方についての考えを深めることができる。
イ
数 学 的 リ テ ラ シ ー の 一 つ で あ る 方 法 的 リ テ ラ シ ー を 活 用 し 、計 算
の仕方を説明することができる。
- 32 -
②
本時の展開
学習内容
〇主な発問
●予想される子どもの姿
数学的リテラシー
導
1.課題を
60 ま い の 折 り 紙 を 1 人 に 20 ま い ず つ 分
入
知る
けます。何人にわけられるでしょうか。
展
2.計算の
○ 10 枚 の 束 6 束 の 図 や 絵 や 言 葉 を 使 っ
<方法リテラシー
開
仕方を考え
て、計算の仕方を考えよう。
>
る。
●
絵であらわす
☆考える手立てに
色 紙 の 絵 ( 10 枚 束 を 2 束 セ ッ ト に
なる材料を活用し
て、計算の仕方を
し て 丸 で く く る )・ ・ ・ ①
証明しようとする
10
10
10
2たば
10
10
2たば
10
力
2たば
・折り紙
・ 折 り 紙 (10 枚 1
●
束)
式にあらわす
㋐ 6 ÷2 を す る ( 0 を 消 す )
・ タ イ ル (10 タ イ
㋑ 60- 20= 40
ル)
・数直線プリント
40- 20= 20
20- 20= 0
●
かけ割図であらわす
●
数直線であらわす
○ 自 分 の 考 え が 書 け た ら 、ペ ア で 発 表 し
3.考えを
ましょ
交流する。
う。
<社会的リテラシ
ー>
☆相手の考えをし
っかりと聞く力
☆相手の考えと比
4.考えを
〇練習問題をする。
較 す る こ と で 」、考
えを深めたり、相
深める。
手の考えを認めた
りする力
<事実リテラシー
- 33 -
>あまりのない
「 何 百 ÷何 十 の 計
算」ができる。
・ボトルキャップ
5.学習の
○この時間で学習してわかったことや
ふりかえり
気づいたことまとめよう。
(3)授業の考察
本 時 の め あ て は 「計 算 方 法 を 説 明 す る こ と 」と し 、算 数 的 活 動 を 通 し て 、
児 童 が 様 々 な 考 え 方 を 見 つ け 出 せ る 授 業 を 試 み た 。そ し て 、ド イ ツ の 学
校 施 設 を 視 察 す る 中 で 明 ら か に な っ て き た 授 業 改 革 の キ ー・ワ ー ド で あ
る 「イ ン プ ッ ト (教 師 が 児 童 に 何 を 教 え る の か )を 少 な く 、 ア ウ ト プ ッ ト
(児 童 が 主 体 的 に 活 動 で き る よ う に す る )を 増 や す 」こ と を 意 識 し て 授 業
づくりを進めた。
今 回 の 授 業 で 重 点 に し た こ と は 、計 算 方 法 を い ろ ん な 道 具 や 図 を 用 い
て 説 明 で き る 「方 法 リ テ ラ シ ー 」を 高 め る こ と で あ る 。課 題 を 解 決 す る た
め に は 、10 の 束 や 10 の ま と ま り を 使 わ な け れ ば な ら な い 。そ の 判 断 を
促 す た め に 「10 の 束 で ま と め て い る 折 り 紙 」や 「バ ラ に な っ て い る 折 り
紙 」を 用 意 し た り 、「10 の タ イ ル 」や 「バ ラ バ ラ タ イ ル 」を 用 意 し た り し た 。
実 際 の 活 動 で は 、「10 の 束 」を す ぐ に 活 用 し た 児 童 も い れ ば 、「バ ラ の 折
り 紙 」を 使 っ て 説 明 し 、そ の 後 、友 達 の ア ド バ イ ス で 「10 の 束 の 折 り 紙 」
に 変 更 す る な ど 、多 様 な 学 び の 姿 が
見 ら れ た 。ボ ト ル キ ャ ッ プ を 使 っ た
練 習 問 題 で は 、問 題 が 書 い て あ る キ
ャ ッ プ を 大 事 に 握 り な が ら 、楽 し く
計算に取り組む姿も見られた。
以 上 の こ と か ら 、ア ウ ト プ ッ ト が
多 い 授 業 を つ く り 出 す た め に は 、方
法リテラシーを高めていくことが
大事だと分かった。そして今後は、
児 童 の 実 態 に 応 じ た 学 習 環 境 を 整 え 、児 童 が よ り 主 体 的 に 学 べ る よ う な
実践にしていきたいと考える。
3
高等学校数学科2年生における実践
(1)実践のねらい
ギ ム ナ ジ ウ ム で の 数 学 科 の 授 業 を 参 考 に 、日 頃 の 教 科 指 導 に お い て 不
足 し て い る 点 を 補 強 す る 。「な ぜ そ う 考 え た の か 」等 を 説 明 す る こ と を 通
して、論理的に表現することを重視した授業を行う。
- 34 -
(2)実践
①
本時のねらい
指 数 が 0 や 負 の 整 数 に お け る 累 乗 を 定 義 し 、そ の 場 合 の 指 数 法 則 が
成 り 立 つ こ と を 理 解 さ せ る 。こ れ に よ っ て 、指 数 法 則 に お い て 、指 数
が整数に拡張されたことを認識させる。また正解を出すことよりも、
そ の 答 に 至 っ た 経 緯 を ペ ア の 生 徒 等 に 説 明 す る こ と を 重 視 し 、自 分 の
考え方を論理的に表現する力を育成する。
②
展開
学習活動
指導上の留意点
教材
導
・ 指 数 が 自 然 数 で あ る ・中 学 の 内 容 な の で 正
プリント①
入
場合の指数法則が成り
解すると予想される
(ドイツ
立つことを再確認す
が 、計 算 過 程 を 丁 寧 に
教科書)
る。
説明できるかを重視
学習形態
一斉
・問題の答を発表する。 す る 。
・ そ の 答 に な る 過 程 を ・自 然 数 で 成 り 立 つ 指
説明する。
数法則を黒板でまと
める。
展
・負の指数について、
・黒板に表を書く。
教科書
一斉
開
その概念を理解する。
・表を右から計算さ
・ 練 習 1 、 練 習 2 、 プ ・プ リ ン ト ② を 配 付 す
教科書
個人
リントを解く
プリント②
グループ
2
-2
3
-2
2
-1
3
-1
2
0
3
0
2
1
3
1
2
2
3
2
2
3
せ 、横 の つ な が り に 注
3
3
目させる。
・ そ れ ぞ れ の 計 算 を 発 ・a 0 = 1 を 規 則 性 か ら
表する。
発見させる。
・2 - 1 = 1/2 や 3 - 1 = 1/3
・指数が0や負の指数
であることも規則性
である場合の累乗の意
から発見させる。
味を理解する。
・指 数 が 0 や 負 の 指 数
である場合の累乗の
定義を黒板にまとめ
る。
る。
・ 計 算 過 程 の 説 明 を グ ・計 算 過 程 を 説 明 さ せ
(ドイツの
ループで話し合い、他
ることを伝えて問題
授業で用いた
人が理解できる説明か
に取り組ませる。
プリント)
どうか確認する
・机 間 指 導 し 、話 し 合
いが不十分であるグ
ループにヒントを与
える。
- 35 -
・ 指 数 が 整 数 の 場 合 で ・練 習 1 、2 、プ リ ン
教科書
ある場合の指数法則が
ト ② に お い て 、計 算 途
プリント②
成り立つことを確認す
中の説明を生徒に発
る。
表させる。
一斉
・ 黒 板 の ま と め の 指 数 ・指 数 が 0 で も 負 の 整
法則が、自然数から整
数の場合であっても
数に拡張されたことを
指数法則が成り立つ
理解する。
ことにも気づかせる。
ま
・小テストを解く。
・基 本 的 な 指 数 の 計 算
と
(基 本 問 題 5 題 )
を 通 し て 、本 時 の 学 習
め
・答合わせをする。
内容の理解度を確認
・本時のポイント2点
させる。
を確認する
・指 数 が 0 や 負 の 整 数
プリント③
個人
である場合の累乗の
定義と指数法則をポ
イント2点として再
確認させる。
③
授業の実際
最 初 生 徒 は 、「な ぜ 、そ の 答 に な る の か 説 明 し て く だ さ い 。」と い う
教 師 の 問 い 返 し に 戸 惑 っ て い た 。そ こ で 、丁 寧 に 説 明 の 仕 方 な ど の 支
援 を 行 っ た 。す る と 、回 数 を 重 ね る う ち に 、具 体 的 に か つ 丁 寧 な 説 明
が で き る よ う に な っ て き た 。授 業 後 半 で は 、よ り 分 か り や す く 説 明 す
る こ と を 目 標 に す る 生 徒 の 姿 や 、他 の 生 徒 の 説 明 を 聞 き 、頷 い た り 首
を 傾 げ た り す る 生 徒 の 姿 が 見 ら れ る よ う に な り 、計 算 過 程 を 丁 寧 に わ
かりやすく説明することが大切であるという雰囲気になっていった。
授 業 の ま と め と し て 実 施 し た 小 テ ス ト で は 、予 想 以 上 に 正 答 率 が 高 く 、
整数の場合の指数に対する苦手意識は払拭できたようである。
(3)授業の考察
今 ま で の 高 等 学 校 の 数 学 科 の 授 業 で は 、基 本 問 題 に 対 し て は 正 解 を 答
えられるかどうかに重点をおいた指導が行われてきた。
し か し 、基 本 的 事 項 に 対 し て 計 算 過 程 を 説 明 す る こ と を 重 視 し た 授 業
を 実 践 し た と こ ろ 、指 数 関 数 の 学 習 で は 、苦 手 意 識 を も た ず に 楽 し ん で
取 り 組 む 生 徒 の 姿 が 多 く 見 ら れ る よ う に な っ て き た 。授 業 中 に 生 徒 が お
互 い の 意 見 を 評 価 す る 様 子 や 、友 達 の 説 明 に も っ と 分 か り や す い 説 明 を
追 加 す る 生 徒 の 姿 が 見 ら れ る な ど 、学 習 に 対 す る 積 極 的 な 雰 囲 気 が ク ラ
ス全体に広がっていった。
今 回 の 授 業 で は 、今 ま で の 授 業 よ り も 理 解 度 が 増 す だ ろ う と 予 想 は し
て い た が 、小 テ ス ト と 定 期 考 査 の 結 果 を 見 る 限 り で は 、指 数 の 基 本 事 項
の理解度は予想を超えた高い結果となった。
- 36 -
4
小学校算数科4年生における実践
(1)実践のねらい
本 時 の ね ら い を 、身 に 付 け さ せ た い 能 力 (コ ン ピ テ ン シ ー )の 、方 法 コ
ン ピ テ ン シ ー 、教 科 コ ン ピ テ ン シ ー 、個 人 的 コ ン ピ テ ン シ ー 、社 会 的 コ
ン ピ テ ン シ ー の 4 点 で と ら え 、1 時 間 の 展 開 の 中 に 小 集 団 で の 意 見 交 流
を 位 置 付 け 、仲 間 と 関 わ る 力 を 育 成 す る こ と を 通 し て 、学 習 内 容 の よ り
深い理解ができるようにしたいと考え、実践した。
(2)実践
①
本時のねらい
ア
長 方 形 の 求 積 公 式 を 活 用 し 、複 合 図 形 の 求 積 方 法 を 図 や 式 、言 葉
を 用 い て 説 明 す る こ と が で き る 。 (方 法 , 教 科 コ ン ピ テ ン シ ー )
イ
仲 間 と 自 分 の 考 え を 交 流 し 、相 談 し 合 っ て 適 切 な 結 論 を 導 き 出 す
こ と が で き る 。 (個 人 的 , 社 会 的 コ ン ピ テ ン シ ー )
②
展開
学習内容
主な学習活動
指導援助,見届けの
視点
導 1 .問 題 を 問 題 : 右 の よ う な 形 の
・既 習 の 求 積 公 式( 長
6㎝
5㎝
入
とらえ
面積を求めまし
る。
方 形・正 方 形 )の 確 認
4㎝
12㎝
ょう。
7㎝
10㎝
展 2 .面 積 の 課 題 : L 字 の よ う な 形 の 面 積 を 工 夫 < 個 人 追 求 で >
開
求め方
して求めよう。
・既 習 の 求 積 公 式 と つ
を考え
○個人追求
なげて考えているか。
る。
・形を2つの長方形にわけて考え
・計算式だけでなく、
る。
どのように考えたか
5 ×6 + 7 ×1
1 2 ×6 + 7 ×
図 に か き こ み 、説 明 し
0=100
4=100
ているか。
<交流で>
・自 分 の 考 え を 図 を 使
っ た り 、算 数 の 言 葉 を
・へこんでいる部分に長方形を加
使ったりして説明し
え、全体を長方形ととらえ、全体
ているか。
から斜線部分を引いて考える。
・自 分 の 考 え と 仲 間 の
1 2 ×1 0 - 5 ×4 = 1 0
0
考えとが同じかどう
か を 聞 き 取 り 、判 断 し
ているか。
・グ ル ー プ の 考 え に は
どんな解き方がある
- 37 -
3 .考 え を ○ 小 集 団 追 求
か分類しているか。
交流す
・ 少 人 数 の グ ル ー プ で 交 流 し 、 自 分 ・求 積 す る た め に ど ん
る。
たちの考えをまとめる。
な工夫が必要かまと
ま
めているか。
と 4 .ま と め ま と め : 分 け た り 、 つ け 加 え た り し < 練 習 問 題 で >
め
る。
て 、 長 方 形 や 正 方 形 に し て 、 計 算 す ・正 方 形 や 長 方 形 の 求
ればよい。
積公式が使えるよう
に 、分 け た り つ け 加 え
5 .あ じ わ ○ 練 習 問 題 に 取 り 組 む 。
う。
たりして形を変えて、
・いろいろな方法で 問題を解く。
問題が解けているか。
2 ×2 + 2 ×3 + ( 5 - 2 ) ×8 =
34
5 ×8 - 2 ×( 8 - 2 - 3 ) = 3 4
③
授業の実際
小集団での追求の様子
児 童 は 、 ま ず 既 習 内 容 (正
方 形 と 長 方 形 の 求 積 公 式 )と
つ な げ て 、 自 分 な り (個 人 )
の考えをもつことができた。
次 に 、 小 集 団 (3 ~ 4 人 )
で 意 見 交 流 を 行 っ た 。そ の 中
で 、そ れ ぞ れ の 考 え を ノ ー ト
を 見 せ な が ら 交 流 し た 。出 て
きた解き方を一枚の用紙にま
と め た 。用 紙 に は 、三 通 り の 解 き 方 が ま と め ら れ た も の も あ っ た 。し
か し 、解 き 方 の 工 夫 に つ い て か か れ た 内 容 は 少 な か っ た 。終 末 の 練 習
問題は、ほぼ全員が解くことができた。
(3)授業の考察
小集団での意見交流を仕組
んだことは、児童の活動をよ
り活発化させることができた。
自分から考えを発表する姿や、
考えをまとめていこうとする
姿 (個 人 的 コ ン ピ テ ン シ ー )を
引き出すことができた。
しかし、一人一人の児童の
- 38 -
小集団でまとめた用紙
様 子 を 見 る と 、 話 す (説 明 す る )こ と を 苦 手 と し て い る 様 子 も 伺 え た 。
誰にでも、自分の考えていたことを伝えられるようにする必要があ
る と 感 じ た 。 ま た 、 単 に 解 き 方 だ け を 話 し て い る 様 子 が 見 ら れ 、 「形 を
分 け る こ と で 長 方 形 に な る の で ・ ・ ・ 。 」と い っ た 既 習 内 容 と つ な げ て
説 明 で き る 姿 (方 法 コ ン ピ テ ン シ ー )な ど 、 小 集 団 で の 意 見 の ま と め 方
についても指導の必要を感じた。さらに、展開後半で行った習熟のた
め の 問 題 で は 、 「2 通 り の 考 え の ど ち ら で 解 く と よ り よ い の か (社 会 的
コ ン ピ テ ン シ ー )」を 、子 供 た ち に 判 断 さ せ る よ う な 問 題 を 準 備 す る と 、
さらによいと感じた。
こ の よ う な 実 践 を 通 し て 、 身 に 付 け た い 能 力 を 4 点 (コ ン ピ テ ン シ
ー )で と ら え 、 小 集 団 で の 意 見 交 流 を 位 置 づ け た こ と は 、 児 童 の 学 習
意欲を引き出し、より深い定着につながったと考える。
- 39 -
Ⅲ 資 料 編
【資料1】 別添資料A~D ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・41
〈コンペテンツラスタ、週間計画、理科・数学科ワークシート〉
【資料2】 普通教育学校のカリキュラム改正について ・・・・・・・50
〈バーデン・ヴュルテンベルク州・学校の発展のための州立研究所〉
【資料3】 ルートヴィヒ・ウーラント学校 共同体学校について・・・54
〈バーデン・ヴュルテンベルク州 ニュルティンゲン 州学校局〉
【資料4】 教科のコンぺテンツについて ・・・・・・・・・・・・・60
〈ミュンヘン・学校の質と教育振興のための州立研究所(ISB)〉
【資料5】 あるコンぺテンツ中心の授業の特徴 ・・・・・・・・・・64
〈ミュンヘン・学校の質と教育振興のための州立研究所(ISB)〉
別添資料
学校発展のための州立研究所
2.2.2 コンぺテンツの枠組み
A―1
数学
数学:学校の種別を包括したコンぺテンツの枠組み――5・6年生
オリエンテーション段階
学習進度 1
記数法の構造
を説明し、自然
数を扱うこと
ができる。
学習進度 2
負の数を扱う
ことができる。
学習進度 3
少数を扱うこ
とができる。
学習進度 4
分数を扱うこ
とができる。
学習進度 5
パーセントの
書き方がわか
る。
暗算で、自然数
の簡単な計算
が確実にでき
る。
自然数の項に、
計算法則を使
うことができ
る。
筆算で、自然数
の足し算と引
き算ができる。
筆算で、自然数
の掛け算と割
り算ができる。
少数の四則計
算ができる。
分数の四則計
算ができる。
数式を立てて、
その値が計算
できる。
変数で項を作
ることができ
る。
項の値を計算
し、数式を扱う
ことができる。
4)計測
度量を確実に扱い、説明
し、値(特に角度と面積)
を推測し、測定し、計算
することができる。
度量体系を理
解し、長さ、大
きさ、時間を推
測できる。
値を測定し、測
定結果を処理
できる。
角度を測り、推
測し、示し、描
くことができ
る。
幾何学の対象
物の名称を専
門用語で挙げ、
区別できる。
幾何学の対象
物の特徴を述
べ、これらがど
んな関係にあ
るかを説明で
きる。
縮尺に従った
図を作成でき
る。
簡単な平面図
形の周囲の長
さと面積を計
算することが
でき、面積単位
がわかる。
立体の見取り
図を作ること
ができる。
直方体の体積
と表面積を計
算することが
でき、体積の単
位がわかる。
5)体積と図形
基本的な幾何学対象物を
扱うことができ、これを
説明し、図を描き、問題
を解くために使うことが
できる。
6)関数的関係
簡単な関数の関係を識別
でき、説明し、これらの
計算ができる。
いくつかの簡
単な図案や数
字の列におい
て、その法則性
を認識し、続き
の数を挙げる
ことができる。
度量の示し方
を他の度量単
位に置き換え
ることができ、
度量の計算が
できる。
平面図系や、互
いに平行した
り直交したり
する直線が書
ける。
7)データと無作為事象
データを収集し、わかり
やすく説明し、評価でき
る。
データを把握
したり、表や文
章から取り出
したり、グラフ
から読み取っ
たりできる。
比例の関係を
理解し、「多く
なればなるほ
ど多くなる」と
いう比例算を
日常的な問題
に応用できる。
割合をわかり
やすくグラフ
に描くことが
できる。
日常的な問題
において、「多
くなればなる
ほど少なくな
る」という比例
算を応用でき
る。
自分で統計の
アンケートを
行い、値を評価
して発表でき
る。
1)数
数学や身の回りの課題
に、有理数を適切な形で
使用することができる。
2)計算
確実に、手際よく有理数
の計算ができる。
3)項、変数、方程式
(変数も使って)項を扱
うことができ、簡単な方
程式が解ける。
縮尺に従った
図から値を取
り出すことが
できる。
データを整理
し、表やグラフ
に描くことが
できる。
展開図を識別
したり、描いた
り、立体模型を
作ることがで
きる。
値どうしの簡
単な関連性に
気づき、説明で
きる。
値どうしの関
連性を図に描
いて示せる。
複数の値の平
均値を計算し、
データを分析
できる。
比率と割合を
計算し、絶対度
数と経験的確
率を示すこと
ができる。
学習進度 6
有理数を扱う
ことができ、さ
まざまな表し
方に書き換え
られる。
負の数の計算
ができ、有理数
の四則計算が
できる。
簡単な方程式
が解ける。
対称的な図形
を識別し、対称
を描写し、対称
の図形を描く
ことができる。
コンぺテンツの枠組みのコピーは添付資料にあります。
数学(算数)における、小さい修正を加えたコンぺテンツ構造モデルは、以下の分野の文部大臣会議の
基準とバーデン・ヴュルテンベルク州の基準に基づくものである
・数
・空間と図形
・計算(計算方法)
・関数的関係
・項、変数、方程式
・データと無作為事象
・測定
英語という教科とは異なり、このコンぺテンツの枠組みにおいて、
学習進度 1 から学習進度 6 は、必ずしも階級制の構成になっている
わけではない。これらは数学(算数)の教授法において説明できる
が、学習進度 3 を達成しても、自動的に学習進度 1 と学習進度 2
を達成したことにはならない。このように、――条件付きだが、教
材を調整することで――学習段階の順序を変えることができる。
つまり学習進度が進んでも、運用能力や認知の能力(個人に求め
られる要求、2.2.4 の章を参照)について多くを表すことにならな
い。このことは学習の道筋リストで補足される(添付資料参照)。
- 41 -
学習進度は、階級制の構成になっていない。学
習進度は、内容に関するコンぺテンツの領域
と、教授法の根拠に基づく順序での基本方針を
表すものである。
別添資料
数学:
2016 年
中等教育段階Ⅰ
A―2
共通カリキュラムのコンぺテンツの枠組み
(2015 年 5 月 11 日の聞き取り調査による版)
学習進度 7
累乗を扱うこ
とができ、10
の累乗で数を
示すことがで
きる。
筆算と暗算で、
有理数の足し
算と引き算が
できる。
学習進度 8
学習進度 9
学習進度 10
平方根を扱う
立方根を扱う
実数における
ことができる。 ことができる。 数の範囲の拡
張を説明でき、
実数を扱うこ
とができる。
筆算と暗算で、 パーセンテー
パーセントの
有理数の掛け
ジで表した数
変化(増加や減
算と割り算が
値や百分率や、 少)の際に、パ
できる。
比の値の計算
ーセンテージ
ができる。
で表した数値
やパーセンテ
ージや、比の値
の計算ができ
る。
括弧を含むも
変数のある項
(括弧と変数
試し算と逆算
のでも――数
を扱うことが
があっても)項 によって簡単
式を変形させ、 でき、式を使っ を変形させて
な方程式を解
単純化し、その て求められて
単純化するこ
き、式の変形に
値を計算でき
いる値を求め
とができる。
よって欠けて
る。
ることができ
いる値の計算
る。
ができる。
三角形や台形
円周と円の面
三角形や四角
角柱や円柱の
や平行四辺形
積を算定でき
形や円、そして 表面積や体積
の周囲の長さ
る。
これらを組み
を計算できる。
と面積を算定
合わせた図形
できる。
の、周囲の長さ
と面積を算定
できる。
特別な三角形
展開図から立
簡単な幾何学
三角形の作図
や四角形の専
体を分類する
図形の角度や
によって、線分
門用語を挙げ、 ことができ、展 線分の長さを
の長さと角度
それらの特徴
開図や模型や
求めることが
を図で表すこ
をもとに説明
見取り図を作
できる。
とができる。
し、区別し、こ 成できる。
れらの関係を
説明できる。
さまざまな表
(日常的な事
線形の関係を
1 次関数を説明
し方をした比
柄においても) 様々な形で表
し、調べて、応
例と反比例の
表、方程式、グ せる。
用問題に用い
関係を識別で
ラフ、テキスト
ることができ
き、計算に使う における関連
る。
ことができる。 を読み取り、描
写できる。
複合的なデー
あるデータ量
得られたデー
専門用語を用
タ収集の計画
に適したパラ
タをさまざま
いて確率実験
を自分で立て
メータを定め、 な方法で表し、 を描写し、ある
て実行し、さま これをもとに
さまざまな図
出来事の確率
ざまな図表か
そのデータ量
表や命題を判
を計算によっ
らデータを読
を評価し、照合 定できる。
て求めること
み取れる。
できる。
ができる。
- 42 -
学習進度 11
無理数を識別し、
例を挙げることが
できる。
利息と複利の計算
ができる。
――第 2 部
1)数
累乗と平方根
を扱うことが
できる。
2)計算
パーセントの
計算と利息計
算を使い、求め
られる値が計
算できる。
1 次方程式を解き、
これが解けるのか
どうかと、多様な
解答法について調
べることができ
る。
3)項、変数、
方程式
項を変形させ、
式と変数を扱
い、簡単な方程
式を解くこと
ができる。
角すいの表面積や 4)計測
体積を算定でき
ある平面図の
る。
周囲の長さと
面積、角柱や円
柱や角錐の表
面積と体積を
計算できる。
軌跡(例えば垂直 5)体積と形
二等分線や角の二 図形の線分の
等分線)を用いて、 長さや角度を
幾何学問題を図で 算出し、軌跡を
表して解くことが 用いて幾何学
できる。
の問題を解く
ことができる。
放物線の方程式
を用
いて 2 次関数を説
明し、グラフを描
き、拡大、対称、
平行移動を扱うこ
とができる。
確率実験を行い、
ある出来事の確率
を実験によって求
めることができ
る。
6)関数的関係
比例と反比例、
線形の関係を
識別し、描写
し、これらの計
算ができる。
7)データと無
作為事象
パラメータを
用いてデータ
を評価し、1 段
階の確率実験
で確率を計算
できる。
別添資料
数学:
2016 年
学習進度 12
累乗根の近似
値を求めるこ
とができる。
貯蓄契約やク
レジット契約
の計算を、表計
算ソフトを使
って行うこと
ができる。
2つの変数を
含む 1 次方程
式を解き、これ
が解けるのか
どうかと多様
な解答法につ
いて調べるこ
とができる。
角柱、角すい、
円柱や、これら
を合わせた立
体の表面積を
求めることが
できる。
ピタゴラスの
定理を用いて、
線分の長さを
計算したり、線
分が直交する
かどうかを確
かめたりでき
る。
放物線の方程
式の頂点を導
き出す 2 次式
の形を作り、グ
ラフで表し、拡
大、対称、平行
移動のための
パラメータを
扱える。
1 段階の確率実
験で事象の確
率を計算でき
る。
中等教育段階Ⅰ
共通カリキュラムのコンぺテンツの枠組み
(2015 年 5 月 11 日の聞き取り調査による版)
A―3
――第 3 部
学習進度 13
一部分を開平
法によって簡
略化すること
で、平方根を表
すことができ
る。
貯蓄契約やク
レジット契約
の計算を、複利
計算の公式を
用いて行うこ
とができる。
2 次方程式を解
き、これが解け
るのかどうか
と多様な解答
法について調
べることがで
きる。
学習進度 14
基準表記による数
を扱うことができ
る。
学習進度 15
学習進度 16
有理指数のあ 対数を扱うこ
る 累 乗 を 扱 う とができる。
ことができる。
の 式
を、指数関数的増加
に応用できる。
平方根の計算
ができる。
累乗や平方根
の計算ができ
る。
2)計算
指数関数的増
加の計算がで
きる。
簡単な比例式と分
数の式を、応用問題
に使うことができ
る。
累乗の式の応 対数を用いて
用問題を解く 指数方程式を
ことができる。 解 く こ と が で
きる。
円すいの表面
積が計算でき
る。
球の表面積と体積
が計算できる。
合体させた立
体の表面積と
体積が計算で
きる。
角度を度数と
ラジアンで示
すことができ
る。
幾何学の問題
を解くために、
タレースの定
理を用いるこ
とができる。
図形の合同と相似
を調べることがで
き、等しい、または
相似する図形を描
くことができる。
角度と線分の
長さを、半直線
の定理を用い
て算出できる。
サイン、コサイ
ン、タンジェン
トを用いて、線
分の長さと角
度を算出でき
る。
3)項、変数、
方程式
2 次方程式や 1
次方程式、分数
方程式や累乗
を含む方程式
を解くことが
できる。
4)計測
円錐や球の面
積や体積を計
算し、ラジアン
を扱うことが
できる。
5)体積と形
重要な幾何学
的定数を用い
ることができ、
線分の長さや
角度を求める
ことができる。
2 次関数を、頂
点を導き出す 2
次式の形と標
準形とで示し、
応用問題を解
くために使う
ことができる。
(サインを使って)
周期的な事象を具
体的に説明し、解釈
できる。
累乗の関数と
平方根の関数
のグラフを描
き、これを幾何
学的に解明し、
解釈できる。
増加の過程を
描写するため
に指数関数を
使うことがで
き、そのグラフ
を描き、幾何学
的に解明し、解
釈できる。
1 段階と数段階
の確率実験の
違いを区別し、
樹形図を使っ
て説明できる。
樹形図を使った数
段階の確率実験で、
事象の確率を算定
できる。
確率の分布に
ついて説明し、
期待値を算定
できる。
条件付き確率
の概念を説明
し、これに該当
する確率を算
定できる。
- 43 -
1)数
数学や身の回
りの課題で、適
切な形で実数
を使用できる。
6)関数的関係
該当する事象
などにおいて、
課題を説明し、
解くために、1
次関数、2 次関
数、三角関数を
使うことがで
きる。
6)データと無
作為事象
2 段階の確率実
験について説
明し、確率や期
待値の計算が
できる。
別添資料
B-1
名前:
学年・組:4i
2015 年 10 月 12 日~10 月 16 日の週間計画
計画
教科
課題
算数
ドミノ:桁数
ドミノを並べて、答え合わせをしましょう。
プリント:桁数
正しく記入し、ワークブックに貼り付けて、答え合わせをしま
しょう。
カードボックス:数を大きさの順に並べる
正しい記号を記入して、答え合わせをしましょう。
サイコロ:桁数
1)15 ページ1番のルールを読みましょう。
2)2 番のどの子供が勝つかを考えて、次の回答欄に頭文
字を記入しましょう。
a)___ b)___c)___d)___e)___f)___g)___
3)今度は、あなたがた自身でゲームができます!
サイコロを 1 個使って、ワークブックに桁数の表を書
き、ゲームを 2 回しましょう。
プリント:10000 までの数を順に並べる
プリントの問題を解き、答え合わせをしましょう。
ドミノ:合成語の形容詞
ドミノを並べて、合成語の形容詞をワークブックに記入しま
しょう。
ドミノ:ヨーロッパ
ドミノを並べて、答え合わせをしましょう。
算数:比較
15 ページ 6 番の答えをワークブックに書きなさい。
算数
算数
算数
算数
DSu
ドイツと
一般社会
課題
算数:プリント「桁数の表における数の表し方」
おはじきを使ってさまざまな方法を試しましょう。
読書:あなたの本の続きを読みましょう。
ルール:たくさん学べるように、私は静かに集中して作業します。
グループ作業のときは、他の人の話をよく聞きます!
- 44 -
完
了
チェック
別添資料
B-2
名前
区分:
教科
1
2
3
課題
完
了
チェック
個人作業:学習カード スケルトンパズル:マス目に入る
動詞を 7 つ見つけて、KR ノートに正しく書きましょう。
印をつけて答え合わせをしましょう。
次に動詞を2つ選び、各動詞を使ってきちんとして完成さ
れた文(形容詞)を書きましょう。
個人作業:藤色の学習カード:各イラストに合う動詞を基
本形で書き、各動詞の変化形を書きましょう。
例 lernen – Ich lerne.
ドイツ語
個人作業:専門用語を知っていますか。
名前を表す言葉:
行動を表す言葉:
様子を表す言葉:
それぞれ例をひとつずつ書きなさい。
基本形:
グループ作業:スーパー8 単語カードを使い、3 人組で作
業しましょう。
1 人 5 回ずつ行うことができます。
ペア作業:パズル:交代で1枚ずつカードを引いて、適切
な抽象名詞を見つけましょう。
個人作業:ZL 20 ページ 1、3、4 番 印をつけて答え合わ
せをしましょう。
個人作業:「九九」3 つの列の答えを正しい順に並べ替え
ましょう。
算数
ドイツと
一般社会
☆
課題
個人作業:B.7 ページ 5 番 a,b(検算に注意!)
6番 a,b 印をつけて答え合わせをしましょう。
個人作業:残りを分配する(フタ)4 つの問題を順番に計算
しましょう。いつも印をつけて答え合わせをしましょう。
先生のところで文章題のカードボックスをもらいましょう。
私たちのモットー:私は静かに勉強します!
週間計画の学習の成果:
私たちのモットー:
私の時間計画:
○
○
○
○
- 45 -
○
○
ファイル
に挟んで
提出
段階:理科
太陽
別添資料
5 年生
作業予定表:
C-1
名前:
段階
1)昼と夜の発生(試みと文章)
2)季節
3)太陽の間接的利用
4)太陽の直接的利用
5)太陽の層
6)太陽
追加の段階:夜行性動物
追加の段階:太陽はどこで輝いているか?
追加の段階:夜の物語
段階 1:昼と夜の発生
完了
コメント
別添資料
C-2
1)試み:試みを説明しなさい。地球上の昼と夜がどのようにして発生するのかを考えましょう。
あなたたちの案を書きましょう。
1)文章をじっくり読みましょう。
2)次に、リストの文が正しいか間違っているかに印をして、答えの言葉を見つけましょう。
地球は自転しています。
1 日のうちに、地球はちょうど一回転します。
私たちのいる場所が太陽に向いている側にあるとき、私たちのいる場所は昼です。
そして私たちのいる場所の側が影に入っているときが、夜です。
つまり太陽は昇ったり沈んだりしているのではなく、
その位置にとどまっています。
地球が自転しているだけです。
地球は自転しない。
地球は自転している。
地球はそのために1年をついやす。
地球は 1 日に 1 回、回転する。
私たちのいる場所が、太陽光の当たる側にあるとき、私たちの
いる場所は昼です。
私たちのいる場所が、影になっている側にあるとき、私たちの
いる場所は夜です。
答えの言葉:
- 46 -
正しい
F
T
P
R
N
誤り
S
L
E
A
R
E
S
別添資料
段階 2:季節の発生
C-3
文章の空欄をうめなさい。
___は___の周りを回っています。地球はそのために
ちょうど___を要します。
地球はまっすぐではなく、___傾いているため、___または
南___は、より太陽に近いです。___は、地球の真ん中にあ
る帯です。そこではいつも___です。
3 月と 9 月には、北半球と南半球は同じくらい光が当たります。
これらの日々のことを___と呼びます。これらの日々には、昼
と夜が___(___)
。
これを絵で表しましょう:
段階 3:太陽エネルギーの間接的な利用
別添資料
C-4
a) 絵に書かれているものをメモしましょう。
―――――――――――――――――――――
b) どの機械が太陽によって間接的に作動していますか。
説明もすること!
―――――――――――――――――――――――――――――――――――
―――――――――――――――――――――――――――――――――――
―――――――――――――――――――――――――――――――――――
c)
水力発電所は、太陽とどんな関係がありますか。
―――――――――――――――――――――――――――――――――――
―――――――――――――――――――――――――――――――――――
d) 文章の最後に、プラスチックは石油から作られると書かれています。
プラスチック製品をいくつか挙げましょう。
―――――――――――――――――――――――――――――――――――
―――――――――――――――――――――――――――――――――――
―――――――――――――――――――――――――――――――――――
- 47 -
別添資料
段階 4:太陽エネルギーの直接的な利用
C-5
1)太陽エネルギーを直接利用するために、2 通りのどんな方法があるのか、そして
それがどのように機能するのかを、小声で隣の人に説明しましょう。
2)どうやって太陽が水を温めるのか、色ペンで下の絵に描きなさい。(水の循環)
3)どんな方法で太陽エネルギーを直接利用できますか。説明しましょう。
―――――――――――――――――――――――――――――――
―――――――――――――――――――――――――――――――
―――――――――――――――――――――――――――――――
別添資料
段階 5:太陽の層
C-6
1)太陽の各層について文章を繰り返し読みましょう。次にプリントを裏返しにして、
何も見ずに各層の名称を言いましょう。
5 つの層の名称を内側から順に書きましょう:
―――――――――――――
―――――――――――――
―――――――――――――
―――――――――――――
―――――――――――――
2)太陽の略図を書き、各層の名称を書き込みましょう。
- 48 -
別添資料
名前:
日付:
D-1
学年:
累乗の計算
問1:例にならって書きなさい。
例:
問3:例にならって書きなさい。
次に、途中の式を省いて書きなさい。
この答えが1番目の指数法則である!
ノートに指数法則という見出しを書いて、その下に、
次のようにあなたの出した答えを書きなさい:1)
0より大きい全ての実数 x と
全ての自然数 m と n:「あなたの出した答え」
こんどはもっと短く書きなさい。
3番目の指数法則を、次のように書きなさい:3)
0 より大きい全ての x R と全ての自然数 m と n:
問2:計算して、比較しなさい。
比較:
比較:
以下の方程式を完成させることで、
あなたが分かったことを述べなさい。
これが2番目の指数法則である!
ノートに、次のように2番目の指数法則を書きなさい:
2)0より大きい全ての実数 x と y、
全ての自然数 n:「あなたの出した答え」
追加問題:
指数法則は、負の指数にも通用するだろうか?
簡略化して
書きなさい:
- 49 -
学校の発展のための
州立研究所
バーデン・ヴュルテンベルク州
文部省
2016 年
普通教育学校のカリキュラム改正
教員の交流――日本からの視察――2015 年 10 月 20 日
所在地
バーデン・ヴュルテンベルク州:
・人口:
1100万人
・イノベーション:
研究開発への出費は国内総生産
(GDP)の 4.8%
・教育:
職業学校
380 校
養成できる職業
340 種
カールスルーエ
シュトゥットガルト
テュービンゲン
フライブルク
動機と課題
教育と機会の公平さを高めるための
質の向上
・要求の明確化
・カリキュラムの調整
・多様性についての前向きな取り組み
基礎学校の
中等教育段階 1 の
ギムナジウムの
カリキュラム
共通カリキュラム
カリキュラム
- 50 -
動機と課題
水平の調整
中等教育段階Ⅰの
ギムナジウムの
共通カリキュラム
カリキュラム
基礎学校のカリキュラム
教育目標の基盤
カリキュラムへの具体的な反映
社会の動向:
・グローバル化
・人口統計学上の変化
・多様性の拡大
ドイツ基本法、州憲法、学校法
国の教育と人材育成の課題の決定
主な視点
全般の主な視点
テーマごとの主な視点
個性、参加、地域振興
現代の生活世界での対応
成長を持続させるた
職業指導
めの教育
多様性への寛容と受
相互作用
メディア教育
容のための教養
消費者教育
予防と健康増進
- 51 -
垂直の調整
職業教育
教科計画の構造
了時
包括的で、その教科全般の目標に該当
内容に関するコンぺテンツのための基準
各段階
コンぺテンツの説明
の基準
内容と専門知識のある部分的コンぺテンツ
コンぺテンツの枠組み
1
現代外国語科目のための
ヨーロッパ言語共通参照枠(CEFR)の
根源にある枠組み
CEFR のコンぺテンツの枠組み――基本構造
どれくらいできる?
何を?
私は習った単語と、私自身や
私の家族や、身の回りの具体
私は、直接の場合もメディアからの
的な事柄についてのごく簡単
ものでも、それがたとえ早口であっ
な文を、ゆっくりと明確に話
ても、話された言葉を理解するのは
されたなら理解できる
まったく困難ではない。
ただし特殊なイントネーションに
慣れるには少し時間が必要である。
- 52 -
参照指示による連結
プロセスに関するコンぺテンツ
教育終
学習段階--5年生と6年生の算数
コンぺテンツの枠組み
・1 ページ
・WRS、実科学校、ギムナジウムのための教育基準6の完全な
再現
・教育基準にあるようなコンぺテンツ領域
・6 つの学習段階
・各分野について一文で表現し、「~できる」の表現で表す
学習プロジェクト
・自由課題
・複合的
・チームで
・複数のコンぺテンツ領域
・比較的長期の
学習テーマ
・複数の部分的コンぺテンツについてのオープンな課題
・単独で、または協力して
・中くらいの作業期間
学習段階
・部分的コンぺテンツに関わるまとまった課題
・自分で確認するための解答の用紙
・収束する思考方法
生徒の視点:さまざまな学習環境における、コンぺテンツの枠組みを用いた学習
- 53 -
ルートヴィヒ・ウーラント学校
共同体学校
ルートヴィヒ・ウーラント学校
共同体学校
正面入口
テック通り
バーデン・ヴュルテンベルク州
ニュルティンゲン
共同体学校
州学校局
ルートヴィヒ・ウーラント学校
・職員
65 名
・生徒数 600 名
・2013 年度より共同体学校
開校時は生徒数 3 学年 58 名
GHS 教員、実科学校教員、養護教諭、学校の
ソーシャルワーカー2名とチーム、ボランティ
ア、教育アシスタント
学校外のパートナーとの協力
- 54 -
共同体学校――構成と卒業可能な課程
実科学校
基幹学校 9年生から
アビトゥア
基幹学校
10 年生から
基礎学校
中等教育段階Ⅰ
2クラスまたは2クラス以上
(例外的に1クラス)
中等教育段階Ⅱ
1学年につき生
徒数 60 名の場合
全日制学校
すべての教育課程基準
学校の特徴
自然
1998 年~ 果樹園
学校の森
ソーシャル・トレー
ニング
野外教育の日
救急活動
生徒が運営する会社
休憩時間中の売店
ケータリング
けんかなどの仲裁
コンぺテンツの午後
キャリア計画
職業実習
学校バンド
マルチメディア:DSB/hp
クライミングウォール
文学と演劇
- 55 -
協同学習
- 56 -
私の学習日記
共同体学校
ヴェンディンゲン
ルートヴィヒ・ウーラント学校
2013 年度
5 年生
木曜日
その他
英語
算数
ドイツ語
その他
英語
算数
ドイツ語
教科
自立し
た学習
バック
やる気を
もって勉
強する
達成したこと
親からのフィードバック/署名
秩序だっ
た学習
来週、私にとって特に大切なこと
教科担任からのフィード
丁寧に扱う
科目を超えたコンぺテンツ
目標に向
けた学習
/やる気をもって勉強する
私が計画している
__日から__日までの学校での私の1週間
学習コーチからのフィードバック
金曜日
3・4 時間目:学習オフィス
学習日記を用いた学習
生徒は自分の学習日記に、実際に取り組んだ課題のみを記入します。この
ことで、自分の学習プロセスの計画を立てやすくなります。例えば、3 日
連続で数学の課題の欄にのみ記入した場合、その翌日は別の教科に取り組
もうと思うようになります。
3・4 時間目:学習オフィス
学習日記を用いた学習
毎日、学習オフィスの最後の 10 分間はいつも、
生徒たちと一緒に、その日はどんな課題に取り組
むことができたかをまとめます。この全体のまと
めは、その週の間ずっと、教室内の壁の黒板に掲
示して、見えるようにしておきます。
- 57 -
- 58 -
学年
生年月日
姓、名
見本
生徒:
2014 年度前期の学習の進展についての情報
学習の進展報告
共同体学校
ヴェントリンゲン・ルートヴィヒ=ウーラント学校
成績は主に G(M)のレベルで、それ以外は G(G)のレベルを達成した。
―
M は思考法と作業方法の分野において基本的な技能をもっており、これらを用いて説明
ができる。
成績は主に G(M)のレベルで、それ以外は G(E)のレベルを達成した。
M は英語だけでの授業にますますついてこられるようになった。目標言語で簡単な文や
表現を使ってほかの人とコンタクトをとり、自己紹介し、また簡単で身近な会話の場面
に対応することができる。簡単な会話で自分の日常生活について話すことができる。簡
単な表現を使って発表を行った。詩や暗記した短い文章を発表することができる。簡単
な物語や会話文、場面を聞いたり読んだりして理解することができる。
「主語・述語・
目的語」モデルに従い、現在と過去時制で、知っている簡単な言い回しを使うことがで
きる。
成績は G(G)1 と G(E)のレベルの半々である。
M はアルゴリズムを使い、計算の利点を活用できる。単位を理解している。簡単な立体
の体積の計算ができる。
体育
歴史
成績は G(M)を達成した。
成績は G(G)のレベルを達成した。
M は体育の授業に毎回出席した。参加の意欲を示し、努力を続けた。2人組や小グルー
プでの活動に喜んで参加した。チームでの試合ではどちらかというと控えめだったが、
持久力とフェアな態度を見せた。
成績は G(M)のレベルを達成した。
M は人類の歴史を、一般に使われている時代に区分することができる。古代の人々の生
活を部分的に描写することができ、その特徴を挙げることができる。
成績は G(M)のレベルを達成した。
地理、経済、 M は欧州の国、都市、山地、水域を知っており、サポートがあれば略地図を描くことが
社会
できる。欧州の気候帯をよく知っており、気候のグラフを読むことができ、気温や降水
の曲線を描くことができる。加えて、M は貿易と交通の分野についてよく知っている。
フランス語
自然科学
英語
数学
学習態度と周りの人への態度
添付資料を参照
教科
評価
ドイツ語
M は情報を伝える文章の一部を言い換えることができ、テキストの特徴に、ある程度の
(国語)
注意を払うことができる。また、基本的なメソッドや応用範囲について熟考することが
できる。大文字書き、小文字書き、分かち書き、続け書きについての、変化をつけた問
題に対処することができる。その際、M は問題を解くさまざまな方法について考える。
簡単な文構造でなくても、正しい位置にコンマをつけることができる。特殊なケースを、
持ち合わせた知識に組み込み、解決のために引き合いに出すことができる。
- 59 -
1
全般的な評価
ヴェントリンゲン
自立した学習
比較的長い時間、自力で作業することができた
E= 拡大したレベル
スムーズにひたむきに学んだ
目標意識のある学習
大人を敬い、礼儀正しかった
ほかの生徒にポジティブな影響をもたらした
同級生と仲良くした
クラスのルールや校則を守った
礼儀正しいふるまい
必要なプリントや教材を持ってきた
きちんと注意深く課題を仕上げた
きちんとした学習態度
ルールを守り、授業の邪魔をしなかった
グループ活動では協力的で頼りになった
よく集中することができた
大きな関心をもって学んだ
きちんと課題をやりとげた
集中して授業に参加した
学習意欲
全般的な進展
を含む共同体学校
学校: ルートヴィヒ・ウーラント学校
M= 中程度のレベル
成績は G(M)の背ベルを達成した。
M は手工業の課題を技術的に抜群に器用に仕上げた。その際、創造性を発
揮し、適切に非常に安全に道具を使った。
-
M は美術の授業に積極的に参加し、造形的な能力が見て取れた。芸術分野
の課題に几帳面に取り組んだ。芸術家の生涯の詳細を述べることができ、
誰の作品かを見分けることができた。芸術家の造形的な要素を見極め、そ
れを挙げて、その芸術家の手法を使って自分の作品を作ることができた。
ほかの生徒とよく協力できた。
成績は G(M)を達成した。
成績は G(M)を達成した
M は教会暦のキリスト教の祝祭を知っている。天地創造の物語が旧約聖書
に書かれていることを知っている。被造物を維持するために、貢献する手
段を知っている。
M はほとんどの打楽器を外見と音から判断でき、名称を述べることができ
る。グループでの合唱に参加する。
G= 基本的レベル
日常のコンぺテ
ンツ
倫理
美術
宗教
音楽
学年とクラス:
名前:
日付:
初等教育
年度:
2015 年 2 月 6 日
2014 年度
- 60 -
コンぺテンツ中心
バイエルン州におけるコンぺテンツの定義
コンぺテンツをもつ人とは、
新しい課題や問題を
解く準備ができており、
実際に解くことができる人のことである。
その際、この人は自分の知識や能力を
うまく引き出し、
精神的な価値についての考え方を背景に
熟考し、
また、責任をもって行使する。
英語科におけるコンぺテンツの概念
・言い回し
・文法規則
・地誌学的な情報
知識
技能
能力
・聞くこと/読むことと理解
・口頭で/筆記でコミュニケーションをとる
・ストラテジー/メソッドを用いる
・聴覚や調音の能力
・考え方:異文化に対してオープンであること
・伝えることの喜び、自発的であること
・学習能力、記憶力
- 61 -
・指示された日常の状況について言葉で対処する
・適切な表現と文法を選ぶ
・目的にかなったストラテジーとメソッドを使用する
知識
技能
能力
熟達度/
運用
社会規範
コンぺテンツ
知識
熟達度
ルール
技能
能力
価値
・よいマナー
・雑談
・握手
社会規範
-社会的な規則
・礼儀正しさ
知識
技能
能力
・もてなす、もてなされ
ルール
熟達度/
る
運用
価値観
目標言語の文化と当人自身
の文化との間の
価値観や信条について、
最も重要な違いを認識している
(CEFR, B1)
- 62 -
- 63 -
www.isb.bayern.de
州立研究所
知識
技能
能力
価値観/価値観と意見
熟達度/
運用
社会規範/
よいマナー
知識だけでは十分で
はなく、
できるかどうかが重
要であり、
これは行為に表れる。
ルール/社会的な規則
コンぺテンツ
事前に決められたものではない言語に関する状況について、学んだことについてよく考え、
クリエイティブに活用することで対処する
カリキュラム+
ミュンヘン・学校の質と教育振興のための
- 64 -
授業計画
変更した
コンぺテンツ中心の授業
知識
びつけられる
メソッドの多様性
練習する、復習する、深める
生徒のモチベーションを高めること
タイムマネジメント
明確さと、構造化されていること
学級運営
個別化
すでに持っている知識と結びつける
またそのためにどんな学習状況が必要か。
テンツ
求められるコンぺ
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の州立研究所
他のことに結
学習者はどのコンぺテンツを習得し、強化すべきか。
カリキュラ
ムの内容
生徒の活発化
コンぺテンツの獲得
学習状況
カリキュラム+
ミュンヘン・学校の質と教育振興のため
知識
技能
- 65 -
人
メソッドのコ
教科のコンぺ
ンぺテンツ
テンツ
考え方
ターゲットグループに合わせる
技能
コミュニケーション能力
人
自 主性
テンツ
責任感
教科のコンぺ
自信
発音とイントネーション
知識
ボキャブラリ
ンぺテンツ
口頭での言語産出
メソッドのコ
言語意識
類推形を使う
辞書や辞典で調べる
発表の技術
視覚化
協力的であること
オープンさ
況で対処する)
自信(ぶっつけ本番の状
口頭での言語算出
発音
聴解
文法構造
ボキャブラリ
未知の単語の意味を推測する
コンぺテンツの側面
単独で話す
状況
人としてのコ
ソーシャル・
ンぺテンツ
コンぺテンツ
考え方
振る舞い
コンぺテンツの側面
単独で話す
状況
人としてのコ
ソーシャル・
ンぺテンツ
コンぺテンツ
振る舞い
メソッドのコ
ンぺテンツ
知識
技能
教科のコ
ンぺテン
ツ
人
人として
のコンぺ
テンツ
考え方
状況
ソーシャ
ル・コンぺ
テンツ
- 66 -
振る舞い
知識
メソッドのコ
ンぺテンツ
メソッドのコ
ンぺテンツ
技能
技能
教科のコン
ぺテンツ
人
教科のコ
ンぺテン
ツ
人
考え方
人として
のコンぺ
テンツ
考え方
発音
口頭での言語産出
協力的であること
オープンさ
自信(ぶっつけ本番の状況で対処する)
コミュニケーション能力
ターゲットグループに合わせる
責任感
自主性
自信
ボキャブラリ
発音とイントネーション
口頭での言語産出
言語意識
状況
対話する
対称グループに合わせる
単独で話す
類推形を使う
べる
ソーシャル・
コンぺテンツ
自信
批判能力
知識
(本についての)発表の構成
情報を要約する
テキストを扱う
対話形式で話す
辞典や辞書で調
振る舞い
視覚化の技術
発表の技術
司会の技術
考え方
発表の技術
人
視覚化
人としての
コンぺテンツ
ターゲットグループに合わせる
技能
聴解
文法構造
ボキャブラリ
未知の単語の意味を推測する
状況
コミュニケーション能力
知識
教科のコン
ぺテンツ
自信
責任感
自主性
メソッドのコ
ンぺテンツ
言語意識
口頭での言語産出
ボキャブラリ
発音とイントネーション
視覚化
発表の技術
辞典や辞書で調べる
類推形を使う
状況の意味
単独で話す
人としての
コンぺテン
ツ
ソーシャル・
コンぺテンツ
振る舞い
状況の意味
単独で話す(本についての
発表・あるテーマの発表)
状況
ソーシャル・
コンぺテンツ
振る舞い
ンツ
ソーシャル・コンぺテ
のコンぺテンツ
自分自身の/人として
教科のコンぺテンツ
メソッドのコンぺテンツ
状況
振る舞い
技能
知識
人
考え方
読解の例
コミュニカティブな行
動能力の強化に寄与
世界各地の子供たちの時
間
意味を成していて
信頼できる
課題
読む前:
このテキストは誰について書かれていますか。
ラースはどこに住んでいますか。
読んでいるとき:
連続した課題:
読む→話す→書く
対話シナリオも可
能
テキストを読みなさい。
彼はどんな一日を過ごしますか。
統合型フォーカス・
オン・フォーム:
代名詞
読んだ後で:
話す
彼の一日(朝/午後/夜/家族/食事/
学校/ペット/趣味/自由時間/活動/
好きなこと/嫌いなこと/…)について
話してください。
単独で
対話形式で
あなたの一日について話してください/…
書く
- 67 -
単純現在(反復的)
作業の要求
作業の支援
- 68 -
あるコンぺテンツ中心の授業の特徴
要求状況
達成可能な
コンぺテンツが求められ、
間違いを受け入れること(間違ったやり方も許容する)
「知的な練習」のための課題を出すこと
行為者としての学習者
さまざまな状況における取り組み
転移と繰り返し
ひとつのコンぺテンツは、以下のことを通じて長期的に獲得される
カリキュラム+
www.lehrplanplus.bayern.de
州立研究所
学校の質と教育振興のための
ミュンヘン
Ⅳ
研 修 概 要
1
要約版「PISA型学力の育成(C-2 団)ドイツ・」・・・・・・・・・・
69
2
全体のまとめ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
70
3
平成 27 年度教育課題研修指導者海外派遣プログラム実施要項、派遣実績 ・・・
75
1
要約版
平 成 27 年 度 教 育 課 題 研 修 指 導 者 海 外 派 遣 プ ロ グ ラ ム
派遣テーマ:PISA型学力の育成(C-2団)
派 遣 国:ドイツ連邦共和国
派 遣 期 間 : 平 成 27 年 10 月 19 日 (月 )~ 10 月 30 日 (金 )
12 日 間
調査・研究課題
1
ドイツの教育制度と教育課程について
2
読解力の育成について
3
数学的リテラシーの育成
4
コンぺテンツを育成する指導法について
調査結果
1
ドイツの教育制度と教育課程について
○
2
学校制度
○
教育施策・教育課程の特徴
○
視察校について
言 語 運 用 能 力 が あ ら ゆ る 学 習 の 基 盤 で あ る と 考 え 、ド イ ツ 語 を 始 め と し た
多 言 語 で の 教 育 に 力 を 入 れ て い る 。特 に 就 学 後 4 年 ほ ど は 、移 民 の 児 童 も 含
め、ドイツ語の運用能力育成に重点を置いた教育が行われている。
3
児 童 生 徒 一 人 一 人 に 合 わ せ た 個 人 的・社 会 的 リ テ ラ シ ー の 育 成 が 、教 科( 算
数科・数学科)の学習を通して行われている。
4
個 に 適 し た 教 育 を 推 進 す る 個 別 的 学 習 の シ ス テ ム と 、多 様 な 人 と の 関 わ り
合いを通して行う集団的学習の指導法が重要視されている。
派遣団としての考察
1
バ ー デ ン・ヴ ェ ル デ ン ベ ル ク 州 と バ イ エ ル ン 州 の 共 通 点 と し て 、コ ン ピ テ
ンシーベースのカリキュラム・個別化を重視した指導が効果を上げている。
一 斉 学 習 だ け で は な く コ ー ポ ラ テ ィ ブ・ソ ー シ ャ ル・ラ ー ニ ン グ( 協 働 的 問
題解決)も多く取り入れている。
2
ど の 言 語 材 料 で も 、個 の 考 え を 基 に 、集 団 で の 意 見 交 換 や 批 評 等 を す る こ
と を 通 し て 、考 え が 深 ま り 読 解 力 が 高 ま っ て く る 。そ こ で 、自 分 の 意 見 の 根
拠 を 説 明 し た り 、日 常 生 活 と 関 連 し て 考 え た り す る よ う な 場 面 を 、義 務 教 育
の初期段階から設定し、母語を中心に発信力を高めることが肝要である。
3
ア ク テ ィ ブ・ラ ー ニ ン グ の 導 入 に つ い て 、日 本 で は 学 力 を 向 上 さ せ る た め
の 1 つ の 手 だ て と 考 え る が 、ド イ ツ で は 、学 び の 多 様 化 や 個 性 化 等 、国 内 情
勢の変化に対応するための社会的要請が起因となっている。
4
ド イ ツ が 推 進 し て い る 教 育 改 革 は 、社 会 的 背 景 の 違 い こ そ あ る が 、こ れ か
ら の 日 本 が 目 指 す 方 向 性 と 共 通 す る と こ ろ が 多 く 、大 変 参 考 に な る も の で あ
った。
研修結果の活用
○
コンピテンシーベースのカリキュラムや個別化を重視した指導の研修
○
ア ク テ ィ ブ・ラ ー ニ ン グ の 理 念 を 理 解 し 、個 と 全 体 で の 学 習 を 有 機 的 に 組
み合わせた、主体的・協働的な学習の推進
○
校内研修会や管理職研修会など、各種の研修会での報告
- 69 -
2 全体のまとめ
C-2団
シニアアドバイザー 大杉 昭英
(国立教育政策研究所)
1 先進国及び我が国の教育改革の動向
(1)先進国を中心とした教育改革の動向
今日、世界的に教育改革の動きが活発になっており、カリキュラムの考え方に新たな潮流
が生まれている。カリキュラム編成の考え方を敢えて二分類すると、コンテンツベースト(内
容中心)のそれと、コンピテンシーベースト(能力中心)のそれがある。従来はコンテンツベー
ストが主流であり、
この考え方のカリキュラム編成によると、
身に付けさせるべき内容(知識、
概念)を先に設定し、その内容に基づいて考え判断する力や表現する力を検討することにな
る。言わば内容主導で能力を従属させるカリキュラムである。
これに対し、コンピテンシーベーストの考え方によるカリキュラム編成では、育成すべき
能力を先に設定し、そのために必要な内容を選択・配置することになる。言わば能力主導で
内容を従属させるカリキュラムである。
今日、欧米やオーストラリア、ニュージーランドなど多くの先進国を見るとコンピテンシ
ーベーストのカリキュラム編成が主流となりつつある。
(2)我が国の教育改革
こうした動向を踏まえ、昨年(平成 26 年)11 月 20 日に学習指導要領の全面改訂について中
央教育審議会に諮問が行われた。そこでは、「ある事柄に関する知識の伝達だけに偏らず、学
ぶことと社会とのつながりをより意識した教育を行い、子供たちがそうした教育のプロセス
を通じて、基礎的な知識・技能を習得するとともに、実社会や実生活の中でそれらを活用しな
がら、自ら課題を発見し、その解決に向けて主体的・協働的に探究し、学びの成果等を表現し、
更に実践に生かしていけるようにする」視点に立った検討が求められた。
そして、中央教育審議会教育課程企画特別部会で基本的な検討が行われ、本年(平成 27 年)
8月 26 日に『論点整理』が示された。ここでは、コンピテンシーベースのカリキュラムの基
底となる「これからの時代に求められる人間の在り方」について次のように述べられている。
・社会的・職業的に自立した人間として、郷土や我が国が育んできた伝統や文化に立脚し
た広い視野と深い知識を持ち、理想を実現しようとする高い志や意欲を持って、個性や
能力を生かしながら、社会の激しい変化の中でも何が重要かを主体的に判断できる人間
であること。
・他者に対して自分の考え等を根拠とともに明確に説明しながら、対話や議論を通じて多
様な相手の考えを理解したり自分の考え方を広げたりし、多様な人々と協働していくこ
とができる人間であること。
・社会の中で自ら問いを立て、解決方法を探索して計画を実行し、問題を解決に導き新た
な価値を創造していくとともに新たな問題の発見・解決につなげていくことのできる人
間であること。
以上の育成すべき人間像をまとめると、自立した人間、多様な人と協働できる人間、新た
な価値を創造し問題発見・解決できる人間であることが分かる。これらは、平成二十五年六
- 70 -
月十四日に閣議決定された第2期教育振興基本計画(期間:平成二十五から二十九年度)で、
成熟社会に適合した新たな社会モデルを構築するために示されたキーワードである「自立」
「協働」「創造」と軌を一にするものと考えられる。
(3)注目すべき資質・能力
前記の人間像を実現していくために必要な資質・能力について、『論点整理』では「知識に
関するもの」「スキルに関するもの」「情意(人間性や興味・関心など)に関するもの」の三
つに分類し、児童生徒に育成すべき資質・能力を、次のような「三つの柱」で整理することを
提案している。
ⅰ) 何を知っているか、何ができるか(個別の知識・技能)」
ⅱ)知っていること・できることをどう使うか(思考力・判断力・表現力等)
ⅲ)どのように社会・世界と関わり、よりよい人生を送るか(学びに向かう力、
人間性等)
上記「三つの柱」は具体的には次のように考えられる。ⅰ)については、「『各教科等に関
する個別の知識や技能』を知っている、できることを指しており、これまで基礎・基本と呼ば
れてきたもの」とされている。この点については、我が国の教育でこれまで十分に取り組ま
れてきたものである。
ⅱ)については、「問題を発見し、その問題を定義し解決の方向性を決定し、解決方法を探
して計画を立て、結果を予測しながら実行し、プロセスを振り返って次の問題発見・解決に
つなげていくこと(問題発見・解決)」と「情報を他者と共有しながら、対話や議論を通じ
て互いの考え方の共通点や相違点を理解し、相手の考えに共感したり多様な考えを統合した
りして、協力しながら問題を解決していくこと」が重視されていると考えられる。これらは、
「これからの時代に求められる人間の在り方」で示された「多様な人々と協働していくこと
ができる人間」と「問題を解決に導き新たな価値を創造していくとともに新たな問題の発見
・解決につなげていくことのできる人間」に必要な思考力・判断力・表現力に基づいたもの
であろう。
そして、ⅲ)については、「資質・能力をどのような方向性で働かせていくかを決定付ける
重要な要素」として位置付けられており、情意面・態度面を示している。具体的には、「感
情や行動を統制する能力」「多様性を尊重する態度」「リーダーシップやチームワーク」な
どが挙げられている。
これら「三つの柱」は、各教科・科目等で育むべき具体的な資質・能力を検討する際の基本
的な視点となっているようだ。
以上のような、これからの我が国におけるカリキュラム編成の基本コンセプトを踏まえ、
ドイツの教育改革の動きを捉えてみよう。
- 71 -
2 ドイツの社会状況と訪問理由
(1)ドイツの社会状況
まず訪問先であるドイツの社会状況について見ておきたい。
ドイツは 2000 年の PISA 調査
で OECD 平均よりも成績が低かったため、日本と同様に「PISA ショック」と呼ばれる衝撃が
走った国である。
次に、ドイツの人口規模を見ると、例えば「World Health Statistics 2013(世界保健統
計 2013)」に示された先進国の中では、第1位がアメリカ(約3億 3100 万人)、第2位が
日本(同 10 位で約1億 2600 万人)、次いでドイツが第3位(同 16 位で約 8200 万人)に位
置している。その後に第4位のフランス(同 21 位で約 6300 万人)、第5位のイギリス(同
22 位で約 6200 万人)が続いている。このように先進国の中でドイツは我が国と人口規模が
一番近い国であることが分かる。
また今日、多くの移民や難民、特にシリアから多くの人々を受け入れ、ドイツ語が十分話
せない子供達の言語教育に大きな労力を投入している状況が見られる。例えば、幼児期のド
イツ語指導を重視し就学前の子供にドイツ語を身に付けさせている。また、移民や難民の子
供にドイツ語を教えるクラスを設けるなどし、彼らはそこで学んで、それぞれ元のクラスに
帰って行くようにしたり、
ドイツ人以外の子供だけのスペシャルクラスを設けたりしている
ようである。
(2)ドイツ訪問理由
こうした状況の中で、ドイツは 2000 年の「PISA ショック」以降、教育改革を進めてきた。
具体的には、「教育課程の基準の中身を教育スタンダード化し、それに基づく学習状況の把
握・分析を行い、授業の質保証・改善」1)を行ってきたのである。なお、ここで言う教育スタ
ンダードとは「特定の学年までに児童生徒が獲得すべきコンピテンシーを規定するところに
特色がある」2)と言われているものである。そして、このスタンダードに基づいて行った教
育の結果を、州内及びドイツ全体で行う統一テストを実施して、その達成度を測るようにな
っているのである。
このようにドイツは日本よりも早くコンピテンシーベーストのカリキュラム編成を行うと
ともに、その成果を評価し改善するというプロセスを経て、PISA 調査の読解力、数学的リテ
ラシー、科学的リテラシーの成績を右肩上がりで伸ばしてきた。こうした教育改革の内容に
関して授業レベルでその実態を探るため今回ドイツを訪問したのである。
3 バーデン・ヴュルテンベルク州とバイエルン州の教育改革の内容
(1) コンペテンツの検討
教育改革の内容に関して、訪問したバーデン・ヴュルテンベルク州及びバイエルン州の研
究所や学校では、まず社会との関わりを重視した教育の重要性が示された。その際「判断コ
ンペテンツ」「ハンドリング・コンペテンツ」「方法コンペテンツ」「社会的コンペテンツ」
「テキスト・メディアコンペテンツ」「コミュニカティブ・コンペテンツ」「インターカル
チャー・コンペテンツ」「メソド・コンペテンツ」等、児童生徒に身に付けて欲しコンペテ
ンツが紹介され、それを身に付けさせるために必要な内容を考えていると説明された。
- 72 -
(2) バーデン・ヴュルテンベルク州の取組
コンペテンツ中心の教育について、まずバーデン・ヴュルテンベルク州では、児童生徒が
前記のコンペテンツを身に付け使いこなせるようにするために必要なものとして「レアプラ
ン」、「ビルドュンクスプラン」、「スタンダード」、「コンペテンツラスタ」というキー
ワードをシュツットガルトにある学校開発研究所や視察先の学校で聞いた。「レアプラン」
は生徒にインプットする内容が書かれたものであり、「ビルドュンクスプラン」は児童生徒
のアウトプット、つまり、何ができるようになるかが書かれたものである。そして、「スタ
ンダード」は「G:基礎的」「M:普通」「E:高い水準」の到達を示したものであり、「コ
ンペテンツラスタ」は児童生徒が自分の学習進度・到達を見ていくための表であり、縦軸が
学習項目、横軸が数段階の到達水準を定めたものとなっている。
このように、何ができるようになるのか、それはどのような内容を通してできるようにな
るのか、どのくらいの水準に到達しているのか、また、それを何によって見取るのかという
教育改革の考え方を実現するためのものが作成され、実施されているのである。
さらに、コンペテンツをどのような学び方を通して育てるのかについては、コーポラティ
ブ・ソーシャルラーニングによってだと言う。それは、学習「課題」に直面すると、まず自
分自身でしっかり思索、その後パートナーを選び、相談して課題追究を行う。そして、集団
全体で内容・結論をシェアする。こうした学びの背景には、移民あるいは難民を背景に持つ
児童生徒等が数多く社会に存在するドイツでは、多様性を前提にして協働し社会を形成する
必要があるからであろう。
(3) バイエルン州の取組
次に、バイエルン州では、Fach・コンペテンツ(教科)、Sozial・コンペテンツ(社会)、
Methoden・コンペテンツ(方法)、Personal・コンペテンツの四つの能力を基本にレアプラ
ン・プラスとよばれる学習指導要領を作成して実施しているとバイエルン州のミュンヘン・
学校の質と教育振興のための州立研究所(ISB)で説明を受けた。
そして、これまでの授業のプロセスは以下のようになっていたと言われた。
カリキュラムの内容→授業プラン→テストを作って実施
それがコンピテンシーベースのカリキュラム編成の下では以下のようになると言われた。
コンペテンツを含むレアプラン→授業プラン→コンペテンツを身に付ける
さらに、学習指導においては「求められるコンペテンツ」を明確にした上で、それを学ぶ
ために日常生活で見られる「状況」を設定し、何が必要になるか、知っていること分からな
いことを伝え、自分の意見を述べるようにするというのである。
また学習評価に関連して、バーデン・ヴュルテンベルク州と同様にコンペテンツラスタを
もとに児童生徒がコンペテンツを習得できているか自分の学習進度・到達を見取るようにな
っている。
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4 ドイツの教育改革が示唆するもの
前述したように、我が国の教育改革で目指すのは、自立した人間、多様な人と協働できる人間、
新たな価値を創造し問題発見・解決できる人間を育成することである。
これを踏まえると、今回のドイツ訪問で得た知見の中で注目すべき点は二つある。その第一は、
前記の「協働」に対応していると考えることができる「コーポラティブ・ソーシャルラーニング」
であろう。自分の思索、パートナーの選択と相談、課題追究、集団全体で内容・結論のシェアと
いう学びにより、多様な人々との協働的問題解決能力の育成が図られるのではないだろうか。
第二は、縦軸に学習項目を、横軸に数段階の到達水準を定めた「コンペテンツラスタ」である。
どれくらいコンピテンシーを獲得したのかを児童生徒自身が把握することができるものであり、
学習評価の大きな武器になろう。我が国がコンピテンシーベーストのカリキュラム編成を行って
いく際に、学習評価方法が課題となるのは必然である。ドイツの「コンペテンツラスタ」はこの
課題解決に大きなヒントを与えてくれるのではないだろうか。
5 おわりに
これまで述べてきたようにドイツ(バーデン・ヴュルテンベルク州とバイエルン州)の教育改革
の営みは、言語運用能力を育てつつ、学習内容を中心としたこれまでのカリキュラム編成から、
コンピテンシーの育成を中心とするカリキュラム編成に転換し学力向上を目指してきたのであ
る。こうした取組は日本の目指す方向と軌を一にしており、今後の我が国の教育改革に有用な知
見を与えてくれるように思われる。
【註】
1) 原田信之「コンピテンシーを規定した統合教科『事実教授』のカリキュラム」『岐阜大学
教育学部研究報告 人文科学 第 60 巻第1号』2011 年 p223
2) 同上 p223
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あ と が き
C-2団 副団長
鶴 田 欽 也
10 月 19 日(月)午前7時 30 分成田空港集合、9時 55 分出発。約 15 時間後、
晴天 20℃の成田から曇天8℃のシュツットガルトに着いた。夕暮れごろに着い
た宿舎は、エレベーターが故障し(私の部屋は5階)、部屋のドアの開錠にはコ
ツが要り(私は要領が悪くて最初2回は自力では開けられなかった)、近くには
もちろんコンビニはなく、レストランも 19 時には閉まっていた(飲み水もなく、
夕食抜き)...さまざまな試練(異文化体験ともいう)とともに、12 日間にわたる
ドイツ研修(C-2団、PISA型学力の育成)は始まった。
「私のことばの限界は、私の世界の限界である」(Ludwig Wittgenstein)――
これは、最初に訪問したギムナジウムでの学校説明のPPTの表紙にあった一
文である。日本語の世界からドイツ語の世界に放り込まれ、人間はことばによ
って周囲の世界を切り取り、理解しているのだと改めて感じた。
研修当初は、日本の教育事情とドイツのそれとの違いに目が行くことが多か
った。学校制度そのものをはじめ、一学級の児童生徒数(ほとんどが 20 名未満)、
教 員 の 授 業時間数、勤務体系、研修体系、教育予算、難民への対応... 日 本 と
ドイツとの違いを挙げれば限がない。しかし、違いがあるからこそ、相通じる
ものも見えてくるし、教育に携わる者として共感できることも多かった。訪問
したある学校では、この学校には落第はない、すべての生徒は一つの目標に向
かって学ぶのではなく、一人一人が自分の能力を伸ばすために学ぶのだ、とい
う説明に大いに心を動かされた。結局、現場の教師一人一人の熱意が子供を育
て、教師一人一人の工夫が子供の学力を伸ばすのではないだろうか。
研修では、学校7校と教育関係機関5か所を訪問し、質疑応答や意見交換を
行ったが、団員のみなさんは熱心、意欲的、積極的で、いずれも予定時間をか
なりオーバーするほどであった。ただ、学べば学ぶほど多くを知り、枝葉にこ
だわり森の中で迷い、各自のテーマから外れそうになる...。そこを石川八千代
団長と大杉昭英シニアアドバイザーにうまくリードしていただき、要所がおさ
えられた充実した研修となった。一方、日々の研修が終わると、弦楽四重奏の
演奏会や美術館へ出かけたり、期間中の土曜日がサマータイムの最終日に当た
り「時計を1時間戻す」(1時間儲かった)というなかなかできない経験をしたり、
研 修 期 間 中に誕生日を迎えた方が 3名もいてお祝いがあったり...とバラエ テ
ィに富んだ充実した時間を過ごすことができた。
10 月 30 日(金)午前 11 時ごろ晴天 20℃の成田へ無事到着。入国後直ちに解団
式を行った。そこでこの研修団の愛称が「チーム・コンペテンツ」と決定され、
2016 年8月滋賀での再会を固く約束し、団員は各々帰途についた。最後に、現
地通訳ガイドの中山さんと菱和ダイヤモンドの角田さんに一方ならぬお世話に
なった。さらには教員研修センターのみなさまをはじめ、この研修の成功にご
尽力いただいた多くの方々のおかげで、日々充実した実り多い研修となった。
ここに心から最大の感謝を表しつつ、成果としてこの報告書を提出したい。
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