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「Xポンプシステム」搭載ハイブリッド式 射出成形機の開発

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「Xポンプシステム」搭載ハイブリッド式 射出成形機の開発
「最近のプラスチック射出成形技術」
「Xポンプシステム」搭載ハイブリッド式
射出成形機の開発
日精樹脂工業 ㈱ 山 浦 浩
油圧式プラスチック射出成形機の大幅な省エネルギー化を実現した、「X ポンプシステム」の内容と、それを搭
載したハイブリッド式射出成形機の主な特徴について紹介する。
1.はじめに
決されないままであった。このため環境影響への対応、
ランニングコスト低減等の面から、より省エネルギー
プラスチック射出成形機において、現在の主流であ
であり高性能の駆動システム及び機器の開発が強く求
るサーボモータを駆動源とする電気式射出成形機は、
められていた。
高応答、省エネルギー、低騒音等の理由により生産台
省エネルギー効果を期待して、油圧ポンプを誘導電
数を伸ばし現在の主流となっている。一方、電子制御
動機からサーボモータに変更して必要な時に必要な回
式可変斜板ポンプを駆動源とした油圧式射出成形機
転数だけ駆動する、というシステムも考案されたが、
は、正確な型締力の金型への伝達、機構の長期安定性、
以下のような課題が残った(図 2)。
容易なメンテナンス性等の特徴を持ち、現在もなお根
① サーボモータの回転数のみを制御して油圧ポンプの
強い支持を得ている。
吐出流量と吐出圧力を制御するため、射出成形機の
油圧式射出成形機における駆動源としては、センサ
性能(最大能力)に対応した大型のサーボモータが
内臓の電子制御式可変斜板ポンプシステムが、20 年
必要になる。大型のサーボモータを選定した場合、
以上使用されていた(図 1)。このシステムの開発当初
モータの回転数が小さくなる不安定領域の対策とし
は、射出成形機の各工程ごとにポンプ内の斜板角を変
て、油圧ポンプから吐出する作動油がオイルタンク
更し、作動油の吐出量を変化させることにより射出成
にリリーフされるため、エネルギーの無駄が大きく
形機の省エネルギー、性能向上に大きく貢献した。し
なり、省エネルギー性やランニングコストの面にお
かし、斜板の動作ばらつきや、ポンプがアンロード時
いて不利になる。
も一定回転を継続する誘導電動機、及び射出保圧制御
② 射出成形機の最大能力に対応した大型のサーボモー
時の内部リリーフ、等のエネルギーロスについては解
タを必要とするため、サーボモータ自身が高価とな
り、イニシャルコストの増加を招く。特に、サーボ
図 1 電子制御式可変斜板ポンプシステム
図 2 サーボモータを駆動源とする
固定吐出ポンプシステム
モータの大型化により付属のサーボ回路(サーボア
ンプ)が大容量化(大電流化)し、サーボ回路の耐
電力性等の確保により、全体のコストが累進的に増
大してしまう。
③ 射出成形機の全動作に対して、一台のサーボモータ
により制御するため、射出成形機の各動作工程に対
してサーボモータの動作能力が適合しない領域を発
生しやすい。したがって、制御が不安定になりやす
く、成形性や成形品質を確保する面から不利になる。
当社 は、これらの課題を解決するために、革新的な
油圧制御システムとして「X ポンプシステム」を開発
し、ハイブリッド式射出成形機 PNX・FNX シリーズ
に搭載した(写真 1)。本システム搭載機は、従来の油
圧式射出成形機と比較して、成形特性、成形品質を向
図 3 Xポンプシステム概略図
上すると同時に消費電力量の大幅な削減を実現してい
る。この開発は、「平成 18 年度優秀省エネルギー機器
表彰」において環境保全省エネ機器として高く評価さ
れ、「資源エネルギー庁長官賞」を受賞した。
写真 1 Xポンプシステム搭載機 PNX40-5A
2.X ポンプシステム
今回開発したXポンプシステム(図 3)は複数の固
図 4 Xポンプシステムブロック図
定吐出量を有して、それを任意に切り換えが可能な油
樹脂の冷却・固化を行う保圧工程がある。充填工程で
圧ポンプに、駆動モータとしてサーボモータを組合せ
は、主により早い充填速度が要求されるため、ポンプ
たハイブリッドシステムで、当社の射出成形機用コン
は大きな吐出量を要求される。後の保圧工程では、固
トローラ「TACT」
により高度に制御される(図 4)。サー
化するまでの一定圧力での保持を要求される。充填工
ボモータにより油圧ポンプ回転数を変更することで作
程の速度を保証するために、吐出量に比例した大容量
動油流量と圧力を制御し、型締・射出両機構を正確に
のポンプとそれを駆動する大容量のモータを必要とす
駆動する。さらに、ポンプ一回転あたりの吐出容量を
るが、保圧工程中の仕事量は、僅かな物しか要求され
成形工程に応じて切換えることでサーボモータ出力を
ない。しかし、充填工程用に大容量のポンプ及びモー
有効に利用し、モータ容量の低減を可能にしている。
タを選定してしまうと、保圧工程中の微容量の吐出制
射出成形機の射出工程を例に説明する。射出工程に
御が困難であるために、その大部分をリリーフ回路に
は、樹脂を金型に充填する充填工程と、充填した後に
逃がすことを余儀なくされ、大きなエネルギーロスの
最近のプラスチック射出成形技術
要因となる。これを解決するために本システムは、充
填工程中は油圧ポンプの固定吐出容量を Qs に切り換
えて、大容量ポンプとして駆動モータの回転数を可変
制御して速度制御を行い、保圧工程に入ると固定吐出
容量を Qo に切り換えて小容量ポンプとして保圧制御
を行う(図 5)。これを駆動するサーボモータから見た
場合は、油圧ポンプを小容量タイプから大容量タイプ
の二つの油圧ポンプとして使い分けることとなる。一
つのポンプ、一つのモータであるにも関わらず、切換
えバルブを制御することにより、複数のポンプとモー
タが存在するかのような動作を実現することが可能と
写真 2 コネクタ12 個取り (PA66)
(5.7sec/shot、12.0g/shot)
なった。
図 6 消費電力量比較
図 5 射出工程容量切換選択
3.Xポンプ搭載射出成形機の特徴
3.1 省エネルギー
固定吐出ポンプの最小限に必要とされる駆動トルク
は、ポンプ 1 回転あたりの吐出量により決定され、そ
の容量が大きくなるに従い、必要最小トルクも比例し
て大きくなる。X ポンプシステムでは、油圧ポンプを
必要な吐出量に応じた容量切り換えを行うと同時に
モータ回転数を制御することにより、サーボモータを
図7
作動油温度上昇比較
効率良く駆動させるため、消費電力量を小さく抑える
また、従来の油圧式射出成形機においては、無駄な
ことが可能となる。各成形品により条件は異なるが、
エネルギーが熱として放出されるために、作動油温度
従来の油圧式射出成形機より、30 ∼ 60%の消費電力
の上昇を招いていた。作動油温度の上昇は機械動作の
量の削減を実現している。
ばらつきの要因となるために、冷却水による作動油の
消費電力量の比較をするために、型締力 405 kN 仕
冷却が必須とされていた。しかし本機においてはXポ
様の当社の従来油圧式射出成形機(PN 40)とXポンプ
ンプシステムによりエネルギー効率が大きく改善さ
搭載機(PNX 40)を使用し、同一成形品を、同一の成
れ、作動油温度の上昇が少なくなるために、作動油冷
形条件において実成形を行った(写真 2)。測定結果は
却水量の大幅な削減も可能となった(図 7)。
従来の油圧機から約 40%の消費電力を削減することと
3.2 射出性能
なった。また、電気式射出成形機との比較においても、
射出成形機の動作状況に応じて、油圧ポンプの吐出
型締力 490 kN の当社機(NEX 50)を使用して、同条件
容量を切換えることにより、ポンプの特性変更が可能
で消費電力量を測定した結果は、同等のものとなって
となるため、幅広い射出速度・圧力に対し、優れた制
いる(図 6)。
御特性を実現し、成形性能を向上している。
従来の油圧式射出成形機において高速射出を要求さ
とにより、低速・低圧から高速・高圧までそれぞれ優
れた場合は、複数の油圧ポンプ、駆動モータ、アキュ
れた直線性を実現している(図 9)。特に、射出速度
ムレータ等による特殊な油圧回路を施設することが
15 mm/s 以下の領域において、従来機では特殊油圧回
必須とされ、機械外形、及び設備コストに大きな負
路を敷設しても制御が困難であったが、本システムを
担が強いられた。本システムを搭載した PNX 40−5A
用いることにより、この領域の安定性が飛躍的に向上
の場合、従来の油圧機では 180 mm/s であった最高射
した。電気式成形機では不得手とする、高い射出保圧
出速度を、前記のような特殊回路を用いることなく、
の長時間持続が本システム搭載機では容易に可能であ
300 mm/s を実現している(図 8)。また高速射出を用
ることと、この領域が安定して制御可能であることを
いる場合は、より短い時間で目標とする速度に到達す
併用することにより、光学部品等の厚肉成形品への適
るために、高速の応答特性が要求される。この応答特
用も容易となる。
性についても、前述の PNX 40 の場合、従来機では射
3.3 型締性能
出速度 180 mm/s に到達するまで 130 ms を必要として
電気式射出成形機の大多数は、モータ出力、ボール
いた立上り応答時間を、適宜に油圧ポンプの容量切り
ネジ寿命、コスト等からの制約により、型締機構とし
換えを使用することにより、20 ms に短縮することが、
てトグル機構を採用している。トグル機構は環境温度
特殊回路等を用いることなく可能となっている。射出
による型締力の変動やダイプレートの面圧分布等への
立上がり応答時間が短縮されたことにより、従来機で
対応が必要である。本システム搭載機は油圧ポンプを
は困難であった薄肉成形品の歩留まりが向上したとい
駆動源とするため、直圧式型締機構の採用が容易であ
う事例や、従来の成形条件より低速・低圧で充填が実
り、本質的に上記の問題が解消される(表 1)。
現されたという成形事例も報告されている。
さらに、型締昇圧確認用の圧力センサの変更とXポン
射出速度、射出圧力の各設定値に応じて適宜に油圧
プシステムによって、低圧から高圧までの設定に対する
ポンプの容量切り換えとモータの回転数制御を行うこ
直線性の高い安定した型締力を金型に伝達することが
可能となった。また、ダイプレートの平行度を長期的に
維持するために、型締シリンダの固定方法を中央の一点
支持とする機構形状の変更を行っている(写真 3)
。
表 1 型締機構比較
図 8 射出速度波形の重ね書き
図9
射出速度直線性
直圧方式
トグル方式
任意型締力の設定
◎
△
機構精度の長期安定
◎
×
型締力の繰返し安定
◎
○
低圧型締精度の分解能
◎
○
金型の寿命・精度維持
○
△
型替え段取り
○
×
金型寸法の自由度
〇
△
ドライサイクル
○
◎
給油頻度/費用
○
×
メンテナンス周期/費用
○
×
写真 3
直圧式型締機構 (PNX40)
最近のプラスチック射出成形技術
3.4 保守・管理
従来の油圧式射出成形機において、無駄なエネル
ギーは熱となり作動油を介して放出されるので、作動
油を冷却するために冷却水が使用されていることは前
述した。それに加えて、従来機では油温の上昇対策の
ために作動油のタンク容量を大きくして、大量の作動
油を機械内に蓄えていた。本システム搭載機は、作動
油温度の上昇が少ないため、従来機よりこの作動油量
を大幅に削減することが可能となった。PNX 40 では
作動油量が従来機より 55 % 削減されている(図 10)。
図 11
PNX ・ FNX シリーズ ラインナップ
図 10 作動油量比較
電気式射出成形機はボールネジ等の金属接触部品が
多数使用されているため、潤滑用として大量のグリス
を消費し、磨耗による部品交換が定期的に必要である。
本システム搭載機においては廃棄グリスが発生せず、
金属接触部品が少ないため、メンテナンス頻度、コス
図 12
PNX ・ FNX シリーズの総合評価
ト負担が低減される。
リーズへの投入を予定している(図 11)。
また、Xポンプシステムはエネルギー効率を改善し
当社は世界初の電気式射出成形機を開発すると共
ているため、駆動源に用いるサーボモータについても
に、油圧式射出成形機においても圧力マッチシステム
小容量化することが可能となり、設備コストの負担軽
(固定ポンプ + 差圧作動型リリーフ弁)、流量マッチシ
減、及び廃棄時における環境影響への懸念事項の低減
ステム(可変ポンプ + 圧力補償弁)、パワーマッチシ
にも貢献すると考えられる(表 2)。
ステム(可変ポンプ + 圧力補償弁 + 流量制御弁)、電
子制御式可変斜板ポンプシステム等の省エネルギーシ
表 2 駆動源使用モータ比較
誘導電動機
サーボモータ
合計台数
Xポンプシステム搭載機
PNX40
−
7.5kw
1台
従来油圧式射出成形機
PN40
15kw
−
1台
−
15kw
4.5kw
4.5kw
2.0kw
電気式射出成形機
NEX50
ステム搭載機の開発に先行して取組んできた。これら
の省エネルギー技術をステップとし、電気式、油圧式、
双方の利点を活用した合理的な射出成形機として本シ
リーズを提案するものである(図 12)。
これからも「プラスチックをとおして、人間社会を
4台
4.おわりに
現在、Xポンプシステム搭載機については、型締力
405 kN から 3,540 kN の 9 機種をシリーズ化して商品化
を行ない、型締力 4,460 kN 機については、近日中にシ
豊かにする。」という理念を目指して、これらの技術
を積み重ねることにより、地球環境の保全に貢献でき
れば幸いである。
日精樹脂工業株式会社 生産技術部
http://www.nisseijushi.co.jp/
〒389−0693 長野県埴科郡坂城町南条 2110
TEL 0268−81−1180 FAX 0268−81−1087
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