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報告書(PDF形式:1411KB)
経済産業省 平成27年度地球温暖化問題等対策調査
IoT活用による資源循環政策・関連産業の
高度化・効率化基礎調査事業
ー 調査報告書ー
平成28年3月
アクセンチュア株式会社
1.海外における新たな潮流
サマリー
•
欧米を中心に、資源効率の向上と、それを実現する新たな経済モデルとして消費された資源を再生・
再利用し続ける循環型の経済モデル「サーキュラーエコノミー」への転換に向けた動きが活発化してい
る。
•
その背景には資源制約と消費者意識の変化がある。天然資源の枯渇は確実であり、資源からディ
カップリングした経済に移行をせざるを得ない状況である。
•
これらの環境制約を受け、EU政府はいち早く資源からディカップリングした経済モデルの構築に取り組
んでいる。また、これをグローバル経済戦略の一環として取り組んでいる側面もある。
•
他方、市場では、消費者が所有よりも利用による成果を重視するようになっていることから、「製品の
サービス化」や「シェアリング」という新たな販売モデルが台頭。それに伴い、製品や部品の「再利用」や
「メンテナンス」、「リサイクル」といったROA向上に寄与する市場が拡大。また。それを前提とした製品
設計や製造業とリサイクル業者の新たな連携スキームが誕生。さらには、資源の安定調達の必要性
を背景に、天然資源を使わない製造手法や、廃棄物やリサイクル材の需給マッチングのような動脈と
静脈のニーズをつなぎ合わせる新サービスが誕生している。
•
「サーキュラーエコノミー」による2030年までの経済効果は、グローバル全体で4.5兆ドルと予測される。
2
1.海外における新たな潮流
CEの概念図
サーキュラーエコノミーとは、従来の資源を消費して廃棄するという一方向の経済に対して、消費された資
源を回収し再生・再利用し続けることで、資源制約からデカップリングされた経済成長を実現する新たな
経済モデルである。
凡例:
CEでの資源
の流れ
組立
バージン素材
コンポーネント
製造
従来の資源
の流れ
ディストリ
ビューション
再製造2.0
製品
設計
別ループ
素材加工
再販売 / 再利用
/ リファービッシュ
リサイクル材、
副産物 循環資源 クローズドループ・
サプライヤー
リサイクル
マテリアルリサイクル
& サーマルリサイクル
メンテナンス2.0
利用
シェア / PaaS
(モノのサービス化)
新たな目的
での再利用
収集
廃棄物
3
別ループ
1.海外における新たな潮流
顧客意識の変化
モノを所有せず、他人との共有を受容すると同時に、益々嗜好を追及するようになっている。
モノを所有するのは重荷に 2年以内にシェアリングサービ
感じる
スに参加していると思う
Yes
48%
事業者は、自分の嗜好に 事業者から、自分の嗜好を
テーラーした商品・サービスを 分析に基づくレコメンドをもら
提供して当然である
うことはCool
Yes
72%
Yes
45%
Yes
75%
①所有からシェアリングへ
②マスからパーソナライズへ
追認・追従からわがまま化へ
Yes
86%
Yes
64%
Yes
44%
事業者は、自分の期待
事業者が、左記をすべて SNSで製品・サービスへの
値を外した場合、すぐに
ミスしたら、即座に他の事 自分の経験・評価を発信
解決策を提供するのが当 業者にスイッチする
したことがある
然である
出典:アクセンチュア他による「消費者調査」 2015 約2500人を対象に33カ国で実施
4
1.海外における新たな潮流
資源供給における変化
2050年までに多くの種類の金属が現有の埋蔵量ではまかないきれなくなる。中には埋蔵量の数倍の使
用量が予想される金属もある。
7.2
10.3
7
2005年から2050年の累積需要
埋
蔵
量
ベ
ー
ス
6
5
4
3
2
1
0
Fe
Mn
Zn
Al
Cr
Pb
Cu
Ni
Sn
Mo
W
Sb
RE
Co
Li
Ag
Pt
In
Au
Ga
Pb
-1
-2
-3
出典:国立行政法人物質・材料研究機構
既存採掘量
5
TMR
現
有
埋
蔵
量
1.海外における新たな潮流
サーキュラーエコノミーの議論の高まり
顧客意識の変化と資源制約を背景に、海外では資源効率やサーキュラーエコノミーの議論が高まってい
る。
資源
市場
顧客
資源の使い方の変化
ビジネスモデルの変化
顧客との関わり方の変化
1•
製品売り切りビジネスから、サービスビジネスに転換する
ことで、企業はこれまで以上に再利用、長寿命化、信頼
性の向上に注力
2•
利用頻度の低いモノをシェアし、節約や副収入を獲得
するピアツーピア市場はデジタル技術の活用により、ますま
す拡大
3•
修理・回収サービスを提供することで、顧客接点を長期
的に握ると同時に、製品寿命を延長し顧客価値を高め
ることが可能
4•
生産から消費の全過程で発生する廃棄製品や副産物
などのあらゆる廃棄物を回収し、資源やエネルギーとして
活用
5•
自然環境への負担が少ない生物由来の素材やリサイク
ル可能な原材料を使用することで、企業は材料の価格
変動リスクを減らし、長期的に安定した生産を維持
未活用資源を有効活用
資源の利用量の削減
廃棄されていた資源の
収益源への転換
資源効率の高い
ビジネスモデルに転換
サーキュラーエコノミー
6
• 提供価値の変化
- 価格水準
- 所有からシェア
- モノからサービス
- 機能価値から共感価値
• 顧客接点の複数化、長期
化
• 生産・サプライチェーンの高
度化
顧客起点の新たな
ビジネスモデルの出現
1.海外における新たな潮流
CEを実現するテクノロジー
CEの議論が近年活発化している背景には、IoTを始めとするテクノロジーの進化がある。CEを実現する
テクノロジーとして、下記10のテクノロジーが挙げられる。
• リサイクル技術の進化に
より、事業の成長源とし
てサーキュラーエコノミー
に転換
• 廃棄物として扱わ
れていた生産物を
新たな資源として利
用可能に
モジュラー・
デザイン
高度
リサイクル・
テクノロジー
ライフ&
マテリアル・
サイエンス・
テクノロジー
• 効率的・効果的な素
材選別により、使用済
み製品をコスト効率よく
回収
• 正確な修理による寿命延長、生
物分解可能な、何度でもリサイク
ルできる循環型資源の利用機会
を創出
トレース&
リターン・
システム
モバイル
製造
M2M
コミュニケー
ション
物流
原材料
調達
販売・
営業
利用
(消費者)
還元物流
廃棄
7
• ワイヤレス・ネットワー
クの普及により、
M2Mが主流となる、
「クリティカル・マス」を
迎えようとしている
クラウド・ • 「脱物質化」のプロ
コンピューティ セスはあらゆる産業
の脅威
ング
• シェアリング・プラット
フォームの設置コスト
ソーシャル 軽減や迅速なフィー
ドバックが可能
ビッグデータ・
アナリティクス
3Dプリンター
• モバイル・テクノロジーの進化によ
り、データやアプリケーションに誰
でも低コストでアクセスすることが
可能に
• 複雑なデータモニタリング・分析
を行うことで、消費者の製品使
用行動を深く理解し、新たな機
会を創出
IoT
製造・リサイクル技術
• モジュール単位の製品設計により、
故障時でも欠陥部品だけを交換・
修理、製品ライフサイクルを延ばす
ことに貢献
1.海外における新たな潮流
CEを実現するテクノロジー: IoTによる産業高度化ステージ
IoTによる産業の高度化は4つの段階によって実現される。まずはオペレーションの効率化にはじまり、将
来的にはエンドユーザーの行動までがつながった抜本的な産業構造の変革をもたらす。
産業高度化
「コト」の経済
自動的なセンシングを前提とした
抜本的な産業構造変革
「モノ」の経済
現在の前の段階的な効率化
4.完全自動化市場
3.アウトカムエコノミー
•
2.サービスでの製品価値向 •
上
• 従量課金
•
1.オペレーションの効率化 • ソフトウェアベースの
サービス
• 設備効率向上
• データ活用
• 運用コスト削減
• 生産性向上
成果報酬型課金
エコシステム連携
プラットフォーム市場
•
•
•
自動需給予測
完全自動化
資源最適化
時間
出典:世界経済フォーラムとアクセンチュアが共同で作成
8
1.海外における新たな潮流
海外におけるIoTを活用したCEビジネス
海外では、消費者意識の変化に伴う利用・成果ベースのビジネスモデルや、企業が資産を持ち続けるこ
とによる部品等の再利用やメンテナンス、リサイクル等の需要が増している。さらに、資源の安定確保の
ニーズの高まりを背景に、廃棄物やリサイクル材の需給マッチングなど、従来の動脈と静脈の間をつなぐよ
うな新サービスが誕生している。
資源環境の変化
消費者意識の変化
組立
コンポーネント
製造
3
バージン素材
2 3 製品設計
再製造
某自動車
OEM、家電、
アパレル等
ングプラットフォーム
• 空き車両を活用し
たオンデマンド回収
再生型サプライ
循環資源供給
某植物工場
設備メーカー
• 減資源製法
別ループ
再販売 / 再利用
/ リファービッシュ
某化学品
メーカー
• 再生可能素材
某リサイクル
業者
• リサイクルから再生
資源・エネルギー供
給を包括サービス
2
4
利用
5
回収とリサイクル
クローズドループ・リサイクル
某リサイクル
業者
• 製品へのRFID内
臓による自動選別
マテリアル&サー
マルリサイクル
某リサイクル
業者
• 自動車OEMとク
ローズドループ構築
収集
某ソフトウェア
某産業機器
会社
メーカー
• 人工知能で機械 • 回収ルートを最適
学習を行う自律型
化するルートプラニ
選別ロボット
ングアプリ
廃棄物
某オンライン
サービス会社
• ロイヤルティマーケ
ティングに活用でき
る収集モデル
9
シェア・
プラットフォーム
某プラットフォー
ム事業者
• カーシェア・プラット
フォーム
• 空家シェア・プラット
フォーム
• ご近所との貸し借りプ
ラットフォーム
メンテナンス
某自動車
某航空機
某自動車
OEM
メーカー
OEM
• 部品再生・再販売 • 中古品買取販売プ • 航空機エンジンへの
ラットフォーム
センサー内蔵による
素材加工
予防メンテナンス
• 廃棄物需給マッチ
• エコデザイン
1
ディストリ
ビューション
製品寿命の延長
サービスとしての
製品
某電球メーカー
3
新たな目的
での再利用
• 照度ベース課金
• 照明にセンサ取付け自
動制御等、電気代削減
の成功報酬
別ループ
某タイヤメーカー
• 走行距離ベース課金
• タイヤにセンサ取付け燃
料費削減を指南、成果
報酬
1.海外における新たな潮流
CEのグローバル経済効果
2030年までにCEにより産み出される経済効果は約540兆円にのぼると見込まれる。そのうち、 「シェア」
等の遊休資産の活用は、約72兆円を占める。
ムダになっている資源の代替
使われていない、遊休資産の活用
再生可能エネルギー、バイオ燃
料、バイオ素材の導入
$1,700billion
(約200兆円)
製造
調達
Growth potential 2030
物流
$4.5trillion
販売
$600billion
(約72兆円)
(約540兆円)
2030年
$1,300billion
使用
(約156兆円)
アップサイクル、リサイクル、
部品回収、エネルギー回収
シェア、共同所有、共同利
用、プーリングの活用
回収
廃棄
(約108兆円)
メンテナンス、修理、回収、再加工を
活用した中古品市場
捨てられている素材価値の回収
* グローバル全体の経済効果(1ドル=120円換算)
出典:Accenture Analysis; Peter Lacy & Jakob Rutqvist, “Waste to Wealth”
$900billion
まだ使える製品の活用
10
1.海外における新たな潮流
欧米におけるCE議論動向
EU Circular Economy Package概要
EU European Commission ではCEを推進するための目標設定として Circular Economy
Package の中でアクション・プランと鍵となる数値目標を設定。各国での推進政策の土台として機能。
鍵となる数値目標
アクションプラン
• 2015年12月の「Circular Economy Package」の
更新版では、領域別とマテリアル別でCEの実現に向け
たアクション・プランを策定
• 2030年までに一般廃棄物のリサイクル率65%を達成
• 2030年までに容器包装ごみのリサイクル率75%を達成
• 2030年までに廃棄物の埋立処分率を最大10%にまで
削減
Circular Economy Action Plan
領域別
•
•
•
•
•
•
CEによってもたらされる
想定効果
• EU全体で6千億ユーロのコスト削減
• EU全体で58万人の新規雇用を創出
• EU全体でのCO2排出量を年間4億5千万トン削減
11
製造
消費
回収
再販売
イノベーションと投資
モニタリング
•
•
•
•
•
マテリアル別
プラスチック
食品
希少資源
建材
バイオマス
2.我が国静脈産業の現状と可能性
サマリー
•
我が国の静脈産業は、 国内製造業の衰退や海外流出等により廃棄物の流通量が減少しているこ
とに加え、排出場所も分散する等、高コスト構造になっている。さらに廃棄物の排出状況やリサイクル
材の需要が不透明かつ不安定であり、結果としてサイクル材の競争力や静脈企業の収益性に影響
を及ぼしている。
•
これら構造的な課題の解決に、IoTを始めとするテクノロジーの活用や、共同物流や施設の共有化
等、海外の動静脈産業や国内動脈産業で取り入れられている効率化の手法が有効だと考えられる。
•
特に技術活用が有効な領域としては、アナリティクス技術等によるルート最適化による物流効率の改
善、製品へのセンサー内蔵による消費者からの排出時期・中身の特定、製品情報を記載したICチッ
プ等内蔵による製品構成の把握、高度リサイクル技術による素材構成や自動選別が挙げられる。
•
またバージン材の市況と連動した動脈側での廃棄物の排出情報と、静脈におけるリサイクル材の生
産・供給情報、ならびにGHG排出量をシステム上で一元管理することができれば、配車や処理施設
の稼働の最適化、リサイクル材の安定供給、トレーサビリティによる品質の担保、経済と環境の両観
点に基づく総合的なリサイクルの実施判断、新たなビジネス創出も期待できる。
12
2.我が国静脈産業の現状と可能性
静脈産業が抱える課題
ヒアリングの結果、十分な量の廃棄物の確保ができず、設備の低稼働を招いている等、構造的な課題を
抱えていることが明らかになった。
3
2
販売価格に係わる課題
• コスト増によりバージン材よりも弱
い価格競争力
処理費用に係わる課題
• 処理量が少ないため費用効率が悪い
• いつどこからどんな廃棄物が排出されるか分からず非
高率な稼働が発生、リサイクル材の品質にも影響
コスト
収集運搬コスト
リサイクル
材の価格
=
利益
+
処理
費用
[固定費:人件費、光熱費、許認可費、管理費等] +
[変動費:仕入・材料費、燃料費、保管料、消耗品費等]
÷
調達
量
4
利益に係わる課題
[1施設設備当たりの平均稼働率] ×
[1施設設備当たりの処理能力] × [施設設備数]
1
• バージン材の市況の影響でかかっ
たコストを回収できないことも
• 低収益性から技術や人材投資が
出来ず品質や生産性に影響
* 環境省「一般廃棄物の排出及び処理状況等(平成25年度」
資源化等を行う施設1085か所の内、処理能力等が不明な4か所を除く
破砕選別コスト リサイクル処理コスト
調達量に係わる課題
• 十分な量の廃棄物が確保できない
• 施設設備の稼働率が低い
• 無駄な施設設備を抱えている
資源化等を行う施設1081か所の
平均稼働率 39% *
13
2.我が国静脈産業の現状と可能性
海外静脈産業におけるIT/IoT活用状況等(1/4)
海外の静脈産業では、IoTを活用した中古品自動買取機やAIを搭載した自律型選別ロボットが導入
されている。また、ITを主眼に置かない効率化・高度化手法として、リサイクル処理施設の共有化や、動
脈の領域にまで浸食した新たなビジネスモデルがみられる。
海外静脈における効率化・高度化例
調達
1
化自
律
VC
単
位
自
動
化
自
動
連垂 化
携直
以
外
3
自
水 化動
平
連
携 外
以
Tier2
収集運搬
破砕選別
加工処理
販売
アナリティクス等によ AI搭載ロボットに
る配車・ルート計画
よる自動選別
IoTを活用した
空き車両を活用した
中古品自動買取機 オンデマンド収集 事例1
車両遠隔管理
工場遠隔管理
工場遠隔管理
シングルストリーム
による一括収集
処理施設
共有化
処理施設
共有化
2
IT
ERP(統合基幹業務システム)を活用した業務管理
IT
リサイクル処理と再生資源販売の
一括請負サービス
14
再利用
2.我が国静脈産業の現状と可能性
海外静脈産業におけるIT/IoT活用状況等(2/4)
さらに海外ではIoTを活用した廃棄物・資源需給マッチングプラットフォームや、リサイクルを念頭に製品の
製造段階からRFIDタグを埋め込み、使用後のリサイクル効率を高める動静脈連携が行われている。
海外静脈における効率化・高度化例
調達
4
動
静
脈
連
携
化自
律
自
動
化
Tier2
収集運搬
破砕選別
加工処理
廃棄物・資源需給
マッチングプラット
フォーム
事例1
製品にRFIDタグを
埋込んだ自動選別 事例2
製品パスポート
15
販売
再利用
2.我が国静脈産業の現状と可能性
海外静脈産業におけるIT/IoT活用状況等(3/4)
事例①廃棄物・資源需給マッチング/空き車両を活用したオンデマンド収集
廃棄物の排出元と、廃棄物を活用したい処理事業者や運搬事業者とのマッチングを行う仕組みを構築。
誰が何を出しているかを可視化することで、リサイクルや有効活用を促進。
組織名
Rubicon Global Holdings, LLC
本社国
米国
設立年
売上
9.5百万ドル
事業
概要
情報通信業
排出事業者
オークション
選出
回収
データ登録・参照
従業
員数
活用する
IoT技術 • クラウド
2008年
• 廃棄物の排出事業者、運搬事業者、処理事
業者をつなげる仕組みを構築
118名
• 空き車両を持つ運搬事業者をオークション形式
で募ることで、排出事業者のコストを削減
事業
内容
運搬事業者
運搬
マッチング
データ登録・参照
リサイクル
処理事業者
事業
効果
プラットフォーム提供
我が国
への
適用
可能性
Rubicon
出典:Rubicon Global; The New York Times; Factiva
16
• 廃棄物と有効活用したい処理事業を効率的に
マッチングすることで、埋め立てを削減
• クラウドに蓄積された取引実績や登録情報を
データベース化することで事業者のマッチングを容
易にし、廃棄物の流れを可視化
データ登録・参照
クラウド上の
データ・プラットフォーム
• オンデマンドでの予約システムにより、申し込みか
ら1時間以内での回収と、高い利便性を実現
• 廃棄物処理コストを平均20-25%削減
• 規制等:廃掃法では、運搬にかかる委託契約
に事前の書面締結が必須となっているため、オン
デマンドでのシステム対応が困難
• 国内類似事業者:認識せず
• 国内での事業拡大の可能性:収集運搬コスト
削減に対するニーズは高く、広がる可能性は高い
2.我が国静脈産業の現状と可能性
海外静脈産業におけるIT/IoT活用状況等(4/4)
事例②製品にRFIDタグを埋込んだ自動選別
家電メーカーと提携し製造段階からリサイクルを視野に入れ、製品の構成素材情報を登録したRFIDタ
グを内蔵。家電の製造工場と処理工場を隣接させ、円滑なリサイクル素材の提供を実現。
組織名
Sinctronics
本社国
ブラジル
活用する
IoT技術 • M2M
設立年
従業
員数
売上
N/A
事業
概要
情報通信業
1
消費者からHP
Planet Partners
を通じて使用済み
カートリッジを回収
2012年
N/A
家電メーカーとの連携
により効率的な
リサイクルを実現
5
飲料用ペットボト
ル等、他製品で
使用されていたプ
ラスチック原料と
混合
事業
内容
• 年間100トン以上の電子製品の収集と処理実績
を保有(2012年現在)
3
カートリッジを分解、
プラスチックと他素
材(金属、紙
等)に選別
事業
効果
4
我が国
への
適用
可能性
プラスチックをプラ
の種類・色等で
分別、破砕、溶
解、粒状化
出典:SINCTRONICS; RFID Journal, “Brazilian Recycling Plant Uses RFID to
Facilitate Reverse Logistics”, May 14, 2015
• 廃棄回収後、RFIDタグの情報を読み取ることで
選別工程を自動化
• さらに動脈の工場に処理施設を隣接させることで、
リサイクル素材の円滑な提供を実現
2
Sinctronicsリサ
イクルセンターで
カートリッジを取り
外し
6
の新カートリッジ製
品として生まれ変
わり
• HP社等、数社の家電メーカーと提携し、製造時
に製品情報を記録したRFIDを内蔵
17
受賞等
• Eco Amcham Award 2015受賞
- 米国商工会議所が主催する優れたサステナビリ
ティの取組みを表彰する賞。エレクトロニック・
チェーンにおけるCEビジネスモデルを確立した点が
評価された。
• 規制等:廃棄物収集運搬・処理に係わる業許可
取得の必要あり
• 国内類似事業者: 認識せず
• 国内での事業拡大の可能性:製品の機密性を
担保したクローズドループのスキームにニーズはあり、
導入コストを動脈側でも負担することができれば実
現の可能性あり
3.我が国産業全体の効率化・高度化の可能性
サマリー
• IoT等テクノロジー活用によりサプライチェーン全体の情報が連携することは、静脈産業のみならず動
脈産業を含む産業全体に裨益する。
•
産業全体の情報がつながることで、資源・リサイクル材の価格・需給・製品情報の把握が可能になり、
資源・エネルギーや時間等、あらゆる無駄がない圧倒的な「合理化」が実現する。
•
さらに、これまで顧客との距離が遠かった素材産業が、静脈プロセスを経由して末端の製品利用者と
つながることで「提案力」を獲得する等、産業全体が提案力を持つ。それにより、イノベーション創出力
が増し、新たな需要やこれまでにないビジネスを創出することで、経済全体が活性化する。
•
「合理化」によるインプット減と「新ビジネス創出」によるアウトプット増による経済成長に加え、資源制
約から脱却した強く安定した産業構造への転換が実現する。
•
IoT投資による「サーキュラーエコノミー」が実現した場合、約20兆円以上のGDP増の可能性がある
(アクセンチュア試算)。
18
3.産業全体の効率化・高度化の可能性
概要
静脈産業の効率化・高度化は、静脈のみならず産業全体にも裨益する。動静脈全体の情報連携やリ
サイクル材の活用促進により、資源制約から脱却した強い経済への転換を実現する。
現在
新産業構造
鉄スクラップの流入・流出量*1
• リサイクル材の品質・価格・需
給が不安定で活用が進まない
• 貴重な資源が国外流出
• バージン材の国際市況に翻弄
され経済活動が不安定化
「負」の資源循環サイクル(イメージ)
「正」の資源循環サイクル(イメージ)
④QCDが不安定なため
リサイクル材の活用進まず
④動静脈全体の情報連携による
これまでにない新たな事業機会を創出
分断 素材生産 設計・調達
③バージン材
の価格に
翻弄、
貴重な資源が
国外流出
• リサイクル材の活用が進み、動静脈全体であらゆるム
ダのない合理化を実現
• 資源依存から脱却し安定経済を実現
• 情報連携してないがために限られていた事業機会を
創出、競争力が一層向上
組立
分断
素材生産 設計・調達
再
廃 ①廃棄物の品質、
生 資源循環フローの各所が分断、 棄 価格、排出時期
競争力低下につながる
(QCD)が
資
・
源
回
非効率を誘発
不透明、少量
化
収
多品種排出
分断
選別
分断
解体
再
生
資
源
化
動静脈が情報連携し、
資源依存から脱却することで
安定経済を実現、
競争力強化
選別
分断
廃
棄
・
回
収
解体
②廃棄物・リサイクル材の需給に合わせた
稼働最適化、コスト削減
②廃棄物の中身が把握でき
ず非効率や事故等を誘発
(資料) *1 一般社団法人日本鉄源協会「鉄源年報」より経済産業省作成
③リサイクル材
の安定供給に
より活用促進、
天然資源依
存を緩和
組立
19
①廃棄物の
QCDの透明
性向上
3.産業全体の効率化・高度化の可能性
現在のIoTの活用状況(生産・消費が中心)
テクノロジーの進化と資源制約により、「生産」(設計・調達、組立)と「消費」(利用)の在り方に
変化が起きつつあり、静脈産業においてもこれらのテクノロジーを活用することで、さらなる資源効率性
の向上、新たなビジネスチャンスの拡大につながる。ただし、現在のIoT活用領域は、海外でも主とし
て設計・調達、組立、利用のみであり、静脈プロセスでは活用されていない。
テクノロジーの進化
 人工知能、ビッグデータ、M2M、
3D等デジタル・製造技術の進化
生産における変化
設計・調達
カスタマイズや修理
しやすいモジュラー
デザインの導入
資源制約
 2000年を境に、GDP成長に伴
い資源価格が減少する時代から
高騰する時代に突入。
 健全な経済成長のためには資源
制約からの脱却が不可欠となった。
20
組立
消費における変化
利用
需要予測・
需要ベース生産
への転換
製品のサービス化
(PaaS)
マスカスタマイ
ゼーションの実現
シェアリングエコノ
ミーの台頭
3.産業全体の効率化・高度化の可能性
IoTの活用により「合理化」が進む
IoT活用が「静脈」に拡大していくことで、機械化・自動化等による効率化と、静脈を含むサプライチェーン
全体を通した情報連鎖が実現。資源・リサイクル材の価格・需給・製品情報の把握も可能になり、資
源・エネルギーや時間等、あらゆる無駄がない圧倒的な合理化が実現。
製品需要・生産・利用情報等
素材
設計・調達
サービス
組立
利用
廃棄
需要予測・
需要ベース生産
現在のIoT活用
範囲から拡大
現状
マスカスタマイゼーション
現在のIoT活用
範囲から拡大
•廃棄物・リサイクル処理工程の機械化・自動化
による処理効率向上
•処理効率向上に伴う省エネルギー化
リサイクル
静脈
21
資
源
回
収
・
調
達
廃棄物排出情報等
再生資源の供給情報等
素材生産
製造
3.産業全体の効率化・高度化の可能性
IoTの活用により「新ビジネス創出」が期待される
サプライチェーン全体がつながることにより、新たな需要やこれまでにないビジネスを創出。これまで顧客との
距離が遠かった素材産業にとっても、静脈プロセスを経由して顧客につながることが可能になり、「提案
力」を獲得する契機。産業全体が提案力を持つことで、経済全体が活性化し、イノベーション創出力が
増す。
製品需要・生産・利用情報等
素材
顧客動向・ニーズ
等の掌握促進
⇒提案力強化
リサイクル材の
需要拡大
設計・調達
カスタマイズや
修理しやすい
モジュラーデザイン
サービス
組立
現状
再生可能素材や
エコデザインの
浸透・拡大
リサイクル
静脈
22
利用
製品のサービス化
(PaaS)
廃棄
新ビジネス誕生
シェアリングエコノミー
<新ビジネス例>
• 製品の利用状況や、新
製品、中古品下取価格
等の市場情報から、修
リビルド・リファー
ビッシュ、修理、
アップグレード、リサ
イクル等の需要拡
大
理・アップグレード・買
替等をレコメンデーショ
ン
• オンデマンド回収 等
資
源
回
収
・
調
達
廃棄物排出情報等
再生資源の供給情報等
素材生産
製造
3.産業全体の効率化・高度化の可能性
動静脈連携による競争力強化を実現
「合理化」によるインプット減と「新ビジネス創出」によるアウトプット増による経済成長と、資源制約から脱
却した強く安定した産業構造への転換が実現。
産業構造変化後の
資源効率
資源制約から脱却した
成長モデルへの転換
大
モノの稼働率向上
• 温暖化等の環境制約、省エネ等による資源
制約リスクへの対応、経済活動の安定化
• 代替資源需要や、シェア等の新たな消費の
在り方に対応した製品・サービス需要の拡大
モノの長寿命化
GDP
+
• 再生可能資源
• リサイクル材
資源代替
現在の
資源効率
小
大
IoTによる
生産の最適化
+
• 中古品買取・販売
• リビルド・リファービッシュ、
修理サービス
+
• 製品のリース、レンタ
ル、シェア
• 利用・成果報酬型
サービス
• 高稼働・高消費対
応の新技術・製品
• 再生可能資源やリサイクル
-
材のによる天然資源投入
+ 量減
• センサー
• スマート機器
-
• 正確な需給予測によるインプット減
• マスカスタマイゼーション
資源効率=GDP/天然資源等投入量
天然資源等投入量
23
小
3.産業全体の効率化・高度化の可能性
動静脈連携による経済効果
IoT投資による資源循環に取り組んだ場合、2030年時点で約20兆円以上のGDP増の可能性がある
(アクセンチュア試算)
日本産業全体への経済効果
(参考)影響が大きい産業での市場拡大
GDP
市場規模*2
産業
経済効果
約20兆円以上*1
資源制約から脱
却した時の成長
資源制約下での
成長
現在のGDP
(資源制約下)
現在のGDP
(資源制約下)
2015年
2030年
2015-2020
年
拡大分
再生可能資源・
エネルギー・化学
+4.5兆円
シェアリング・エコノミー
+1.8兆円
リサイクル素材
+1.2兆円
自動車・産業機械の
修理・メンテナンス
+0.7兆円
*1 アクセンチュア株式会社による推計値。RE改善率×GDPのRE弾性値×2030年の自然体GDP(664兆)で試算。RE改善率は7.5~11.5%と試算。
*2 環境省 「環境産業の市場規模・雇用規模等に関する報告書」; 環境省 「平成22年度 2020年における我が国環境ビジネスに関する調査研究」を下にアクセンチュア推計
24
4.提言
サマリー
•
これらの調査結果を踏まえ、我が国では早急に下記のアクションを行うことが求められる。
① 国際競争力を強化する日本版CEの在り方の明確化
CEに取り組むことは我が国の産業にどのようなインパクトをもたらすか、産業全体が競争力を持つ
リサイクルシステム(インフラ、制度等)の在り方は何か等を明確にする。
② 国際経済における日本のポジショニング
国際経済において日本がどう存在感を示し、自国経済に有利な働きかけをするかを明確にする。
例えば、国際規格における議論でのポジショニング、リサイクル先進国としての国際市場における
ポジショニングをどう図るか等。
③ ロードマップ策定
いつまでにどのような道筋で何を実行するか、CEへの転換に向けた2020年や2030年までの中
長期的なマイルストンと施策を定め国内外に明示する。
25
4. 提言
今後のアクション
前述の我が国の市場環境や国際動向を踏まえ、今後我が国が取るべきアクションは下記の通りと考える。
検討詳細
アクション
国際競争力を
強化する
日本版CEの
在り方検討
各産業と親和性の高いCEビジネスモデルの
産業別CEモデルの特定と 特定とベストプラクティスの整理
• 産業全体が競争力を持 産業別インパクトの定量化
つリサイクルシステムの在
各産業における経済効果の算出
り方は何か
• CEに取り組むことは我が
収集方法(シングルストリーム等)やリサイ
国の産業にどのようなイン
競争力を高める
クルセンターの最適立地等の検証
パクトをもたらすか
リサイクルシステムの在り方の
明確化
国際経済におけ
る日本のポジショ
ニング
ロードマップ策定
国際規格・指標、
国際連携の
あり方検討
• 国際経済において日本
がどう存在感を示し、自
国経済に有利な働きか
けをするか(国際規格に
おける議論でのポジショニ
ング、リサイクル先進国と
しての国際市場における
ポジショニング等)
リサイクルインフラの
海外輸出の方策検討
• いつまでにどのような道筋
で何を実行するか
CEへの転換に向けた
ロードマップ
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実施主体の整理
国際規格、指標開発における海外動向調
査
規格以外の国際連携動向調査(TPP等)
対象国やF/Sの検討
海外実証
2020年や2030年に向けてのマイルストンと
施策
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