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ヨガセイフティーガイド 2014版
Presented by P3 Inc. http://www.takt8.com 安全なヨガ(アーサナ)実施の為の ! SAFETY GUIDELINE for YOGA ! 2014年版 本テキストの使用に当たっては、適切な指導者(医療資格を有する者、ヨガの指導経験が 10年以上の者など)の説明を時前に受けることを奨励します。 読むだけでは十分に理解出来ないやや専門的な内容が含めれています。 ! このテキストは個人の参考利用を目的に作りました。ご利用に当たってはご自身の責任で ご使用下さい。スタジオなどで活用したい、より詳しく話を聞きたい場合などは、お気軽 にお問い合わせ下さい。 ! bmrtakt8@gmail.com (スパム対策のため@は全角になっております) Copyright 2014 P3 Inc. ⃝はじめに⃝ 現在の日本において、主にヨーガの代名詞として認知されている「ハタヨーガ」は、ヨーガの中でもアー サナを中心とした修行法であり、鍛錬的な要素が強い。その為、体に効果的である反面怪我をし易いという 側面を有しています。現代では、ヨーガは以下の二通りの捉え方が存在していると言えます。 ! ①「健康法」としての捉え方 ②「鍛錬法」としての捉え方 ! そして、健康法としてヨーガを取り入れたい反面、鍛錬法としてのヨーガによって体を逆に痛めている現 状があります。この現状を理解し、健康法と鍛錬法を両立する為に、自分の身体の状態を把握し、アーサナ を取る上で自身が注意すべき点を明確にして、不必要な体の怪我を予防することを目的に、ヨーガのセイフ ティーガイドラインを設定しました。 体の柔軟性や強さは、強靭な体の基本であり、それによって充実した心の状態も得られることは確かにあ ります。しかし、自分の骨格的な特長もあり、強靭な体を求める前に、改善出来るという次元ではなく、受 け入れるべき事柄もあります。自分の状態を受け入れずに行う鍛錬は強制的であり、自分を痛めつける苦行 になってしまいます。鍛錬法には苦行の部分も必要かもしれませんが、健康法としては苦行は必要なく、健 やかに心地好く行われることが望ましいのではないでしょうか。 先ず、自分の状態を把握し、受容し、その上で無理のないヨガの実践が、安定した心地の良いハタヨーガ を可能にしてくれると思います。 ヨーガの実践者のみならず、ヨーガの指導者にも活用頂き、安全で末永く付き合っていけるヨーガの一助 になれば幸いです。 ! ヨーガインストラクター、理学療法士 中村尚人 株式会社P3/TAKT EIGHT http://www.takt8.com ! ! ! ⃝安全なアーサナのための準備⃝ ! 【参加するにあたって】(参加者) ・自身の体の状態を正確にインストラクターに伝える ・医療機関にかかっているまたはかかっていた場合もその旨を伝える ・アーサナは競争ではなく心地好くなるためのものであることを理解する ! 【指導するにあたって】(インストラクター) ・クラス前に参加者の健康状態について質問し把握する ・床の状態、音響、部屋の温度・湿度など安全な環境を整える ・アーサナの目的を伝える Copyright 2014 P3 Inc. ⃝ヨーガの関節スクリーニングテスト⃝ ! ! ヨーガのアーサナを行う上で危険性を伴うものは大きく分けて以下の2つになります。 ! ! 1 関節(筋や靭帯)が固い 2 関節(筋や靭帯)が緩い 関節の柔軟性には、筋肉、靭帯の二つが主に関与しています。特に影響が大きいものは筋肉です。 筋肉は硬さと言うよりも「緊張」で表現します。筋肉は緊張が高いと硬く、緊張が低いと柔なくなりま す。この緊張は、自律神経や心の状態によっても変わるものです。心が緊張した入り交感神経が興奮したり していると、筋の緊張も高く、逆に心が安定していたり副交感神経が優位だったりすると筋の緊張は緩みま す。 ハタヨーガでも筋の緊張を下げ、リラックスを求めますが、これは、最終的には心の緊張を下げ、安定し た状態に持っていくための方法と言えます。ですので、筋による関節の硬さは筋のボリュームと筋の緊張に よるものといえます。筋による制限を取るには、心などの緊張を下げることと、筋の伸張によって伸ばして いけばいいということになります。 もう一つの靭帯に関しては、遺伝的なものです。生まれながらにして持っている個性といえます。これは 筋のように伸ばせば伸びるというよりも、個性としてまず受け入れる必要があります。その上で、無理なく 徐々に伸ばしていけばほんとうに少しずつですが、伸びることは出来ます。 ! これらとは違い、骨格によって(多くは骨の変形)骨同士が衝突して可動域が制限されることがあります。 これは、改善することは手術しか出来ないものなのでそれこそ受け入れる以外にありません。ヨーガをした から改善するものではありません。顔と同じですね。 ! 可動域が狭いと、アーサナに関しては関節に負担がかかるので、深い無理なアーサナの行い方をすると靭 帯や関節円板などに負担がかかり、酷い場合は損傷を起こします。ですので、靭帯が硬い方は深くせず、気 持ちのいい所で行うことが重要です。筋の伸張感は問題ありませんので、呼吸が止まらない程度に伸ばして いきましょう。 反対に可動性は広い場合、多くの方はアーサナには適していると思いがちですが、実は緩いことも問題で、 脱臼や捻挫が起こり易いというリスクになります。また年齢を負ってくると関節が緩い分ずれ易い(偏位し 易い)という特長もあります。この場合は、靭帯は緩いので、筋肉による制御しかありません。アーサナは 筋力を使う様な方法で行うことが重要です。 ! 関節の可動性を簡単に本人(アーサナの実施者)に行ってもったり、指導者が本人を観察することで確認 する方法が、これから紹介する「ヨーガの関節スクリーニングテスト」になります。関節の状態が理解した 上で無理のない範囲で、適切な負荷で、快適にアーサナを取って頂きたいです。 Copyright 2014 P3 Inc. ⃝中間位⃝ ! 関節に負担のかからない、本来の正しい位置を「中間位 Nuetral Position」といいます。この位置がいわ ゆる正しい姿勢となります。ヨガのアーサナでは、意図的に様々な姿勢をとりますが、まずご自身の正しい 姿勢を知っていることは、どんな運動をする上でも重要になります。 正しい姿勢と自分がどのくらい崩れているのか、確認してみましょう。 Copyright 2014 P3 Inc. 【可動域が少ない(関節が固い)編】 股関節外旋可動域のチェック(内旋筋の硬さ) 足の脛を平行にしてあぐらをかいた状態 □膝が下の足に着く →十分な可動域を有する □膝が浮いてしまう →十分な可動域がない →パドマアーサナなどの股関節を強く外旋するアーサナは困難 股関節内旋可動域のチェック(外旋筋の硬さ) 割り坐をする □坐骨が床に着いたまま組める →十分な可動域を有する □坐骨が浮いてしまう →十分な可動域がない →ヴィラアーサナなどの股関節を強く内旋するアーサナは困難 手関節背屈可動域のチェック(手関節屈筋の硬さ) 掌を合わせて指先を床に向け、手の付け根を付けたまま手首を反っていく □付け根が離れずに90度以上曲る →十分な可動域を有する □付け根が離れずに90度以上曲らない →十分な可動域がない →アームバランスで手関節を強く背屈するアーサナは困難 股関節屈曲可動域のチェック(形態異常) 膝を曲げて太腿をお腹に付ける □股関節の付け根に痛みが出ない →十分な可動域を有する □股関節の付け根に痛みが出る →十分な可動域がない →バラアーサナなどの股関節を強く屈曲するアーサナは困難 ※FAI(Femoroacetabular Impingement):大腿骨や臼蓋の形態異常による挟み込み Copyright 2014 P3 Inc. 肩甲骨外転可動域のチェック(菱形筋の硬さ) 真横に腕を上げた状態から肘を90度に曲げて顔の前で肘と前腕を付ける(肩甲骨を外転する) □肘と前腕が付く →十分な可動域を有する □肘と前腕が付かない →十分な可動域がない →アームバランスなどの肩甲骨を強く外転するアーサナは困難 肩甲骨内転可動域のチェック(大胸筋の硬さ) 真横に腕を上げた状態から肘を90度に曲げて真後ろに引く(肩甲骨を内転する) □肩甲骨の内側が付く →十分な可動域を有する □肩甲骨の内側が付かない →十分な可動域がない →肩立ちなどの肩甲骨を強く内転するアーサナは困難 肩関節外旋可動域のチェック(内旋筋の硬さ) 肘を90度に曲げて肘を体から離さずに外に開く(肩関節を外旋する) □45度以上開く →十分な可動域を有する □45度以上開かない →十分な可動域がない →ガルーダアーサナなどの肩関節を強く外旋するアーサナは困難 肩関節内旋可動域のチェック(外旋筋の硬さ) 肩を真横に上げて肘を曲げて手が下に下げる(肩関節を内旋する) □90度から手が下に下がる →十分な可動域を有する □90度から手が下に下がらない →十分な可動域がない →リバースナマステなどの肩関節を強く内旋するアーサナは困難 Copyright 2014 P3 Inc. 胸椎の伸展可動域のチェック(胸椎の硬さ) 頚の後で手を組み、頚と腰を反らないように気を付けながら、肩甲骨から胸を反って天井を見る □腰が反らずに天井を見る事が出来る →十分な可動域を有する □天井を見ることが出来ない →十分な可動域がない →バックベンドで胸椎を強く伸展するアーサナは困難 股関節屈曲可動域のチェック(ハムストリングの固さ) 膝を伸ばしたまま長座位を取る □骨盤が起きて腰が反っている →十分な可動域を有する □骨盤が倒れて腰が丸くなる →十分な可動域がない →前屈のアーサナで太腿の裏を強く伸ばすアーサナは困難 Copyright 2014 P3 Inc. 【可動域が大きい(関節が緩い)編】 肘関節の過伸展のチェック 片腕を顔の前に伸ばして上げる □床と水平の状態 →一般的な可動域を有する □床と水平の状態から前腕が下がっている →伸展可動域が過剰 →アームバランスで腕で支えるアーサナは注意を要する 外反肘のチェック 両腕を顔の前に伸ばして上げて、両前腕をくっつける □両腕の手は付くが肘は付かない →一般的な可動域を有する □両腕の手と肘がくっ付く →外反可動域が過剰 →アームバランスで腕で支えるアーサナは注意を要する 反張膝のチェック 立った状態で休めの姿勢を取り、膝関節を横から観察する □膝関節が真っ直ぐ →一般的な可動域を有する □膝関節が後に反っている →伸展可動域が過剰 →バランス系や足で体重を支えるアーサナは注意を要する 股関節の安定性チェック(股関節の不安定性) 立った状態で腰を横に移動させる □ 股関節に違和感がない →一般的な可動域を有する □ 股関節にずれる様な違和感が出る→股関節の可動域が過剰 →バランス系や足で体重を支えるアーサナは注意を要する Copyright 2014 P3 Inc. 膝蓋大腿関節の安定性チェック(膝蓋骨の不安定性) 脚を伸ばした状態で座り膝蓋骨を内側や外側から押してもらう □違和感がない →一般的な可動域を有する □抜ける様な不安感がある →膝蓋骨の可動域が過剰 →膝に負担がかかるアーサナは注意を要する 肩関節の安定性チェック1(肩甲上腕関節の不安定性) 真横に腕を上げた状態から肘を90度に曲げて肘を真後ろに引いて上腕骨を前に出す(肩関節を水平外転する) □違和感がない →一般的な可動域を有する □抜ける様な不安感がある →肩関節の可動域が過剰 →肩に負担がかかるアーサナは注意を要する 肩関節の安定性チェック2(肩甲上腕関節の不安定性) 反対の手で力を抜いた検査側の肘を持って下に引く □違和感がない →一般的な可動域を有する □抜ける様な不安感がある →肩関節の可動域が過剰 →肩に負担がかかるアーサナは注意を要する Copyright 2014 P3 Inc. 代表的な起こり易い怪我 アーサナ 坐法系 起こり易い怪我 半月板の損傷 原因 予防法 股関節の柔軟性がないと膝関 先に股関節を柔軟にする 節に捻れが生じる 動く範囲を減らす ・パドマアーサナは外旋 ・ヴィラアーサナは内旋 逆転系(ショルダースタンド 頚椎の捻挫 含む) ハムストリングや脊柱の柔軟 動く範囲を減らす (床に足を 性の低下による首への過負荷 付かない) 肩甲骨の内転制限 股関節、脊柱の柔軟性を出す 肩甲骨の内転を促す スタンディング系 転倒 バランス能力の低下 何かにつかまる 歩幅や歩隔を広めにとる バックベンド系 腰のつまり 胸椎や股関節伸展の可動域制 腰椎を安定させ胸部、股関節 腰椎の辷り症 限による腰椎への過負荷 の柔軟性を出す 動く範囲を減らす 捻り系 肋骨の骨折(ひび) 胸椎の柔軟性低下と過負荷 肋椎関節の脱臼 ヘッドスタンド系 頚椎の捻挫 動く範囲を減らす 手などを使って引っ張らない 首周囲の筋力低下 首周囲筋を鍛える 体重が重すぎる(過負荷) 頭頂部で支える 頭の着く位置が違う 頭を正中にする 頭が正中になく傾いている 前屈系① 前屈系② 腰椎の捻挫、ヘルニア 股関節インピンジメント ハムストリングの柔軟性低 動く範囲を減らす 下、股関節屈曲制限による腰 ハムストリングの柔軟性を高 椎への過負荷 める FAI(骨格の特長) 動く範囲を減らす 当たらない方向を探す 前屈系③ ハムストリングの肉離れ(筋 伸張し過ぎる 動く範囲を減らす 関節をロックするように使っ 関節をロックしない(やや曲 てしまう げる意識をする) 骨格的な要因 足を離さずに行う 手関節屈筋群の短縮 手関節屈筋群のストレッチ の断裂) アームバランス系① アームバランス系② 肘の過伸展 手首のインピンジメント 動く範囲を減らす 開脚系 内転筋の肉離れ(筋の断裂) 伸張し過ぎる 動く範囲を減らす ランジ系 大殿筋の肉離れ(筋の断裂) 過負荷(長時間の保持) 長時間きつい姿勢を保持しな 半月板損傷 膝が内に入って曲るknee-in) い 動く範囲を減らす 膝を内に入れない Copyright 2014 P3 Inc.