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テーラーメイドを目指す糖尿病の治療 - 糖尿病ネットワーク Diabetes Net.
35 No. 2013年1月1日号/監修・企画協力:糖尿病治療研究会 企画・編集・発行:糖尿病ネットワーク www.dm-net.co.jp テーラーメイドを目指す糖尿病の治療 糖尿病治療テーラーメイド化に 必要なもの 「テーラーメイド治療」という言葉が社会 に広がり始めたのは、ヒトゲノムの解読が 現実味を帯びてきた、今から十数年前のこ とだと思います。当時はマスコミなどで 「こ れからは個々の遺伝情報に基づいた最適 な治療が可能になる」と喧伝されていまし た。時が経ち、今では例えば癌や肝炎の 治療の際、薬剤感受性の判定に遺伝情報 を活用するなど、 テーラーメイド治療は徐々 に実現ししつあります。 糖尿病の治療ではどうでしょうか。 現在も増え続けている2型糖尿病や、そ れによる合併症の発症にかかわる遺伝子 は多数あって、単一遺伝子の異常を同定す れば解決する問題ではありません。そのた め糖尿病治療に遺伝情報を生かせるよう になるまでには、今しばらく時間がかかり そうです。 ただ、糖尿病治療のテーラーメイド化に 求められるのは遺伝情報だけではありま せん。血糖レベルや肥満の有無は言うに 及ばず、高血糖の主因がインスリン分泌不 全かインスリン抵抗性か、年齢、罹病期間、 家族歴、家族構成、理解力など、勘案すべ き要素は多岐にわたります。 ADA/EASDの ステートメント改訂 糖尿病に特異的な細小血管合併症の抑 止のために、できるだけ厳格な血糖管理 が有用であることは揺るぎない事実です ・・・主な内容・・・ ●ネットワークアンケート ㉟ 糖尿病性腎症の予防対策 ●今号のトピックス EASD2012特集 糖尿病とインフルエンザ 生活習慣病を防ぐ少食のすすめ ●サイト紹介 ㉞ 「保健指導リソースガイド」 インスリンポンプQ&A、 論文コーナー イベント・学会情報 数字で見る糖尿病 ㉞ 糖尿病治療薬の特徴と 服薬指導のポイント ⑨ が、その実現が容易ではないこともまた事 実です。そこで医療スタッフは、前記のよ うなさまざまな背景因子を考慮し、管理目 標の理想との妥協点を見出だし、食事・運 動療法の指導、薬剤選択に当たっている のが現状と言えるでしょう。 ところで2012年4月、ADA(米国糖尿病 学会)とEASD (欧州糖尿病学会)の血糖 管理に関するステートメントが改訂されま した。今回の改訂では、従来HbA1c 7.0% (NGSP値)としていた血糖管理目標を、重 症低血糖回避の必要性、あるいは進行し た合併症があるといった条件次第で7.5〜 8.0%、またはそれ以上を推奨するとされま した。また治療法決定にあたって、個々の 患者さんのHbA1cや年齢、体重、人種、遺 伝的素因などを考慮すべきと強調している ことも大きな変更点で、論文のサブタイト ル“A Patient-Centerd Approach”は、患 者さん中心の医療への移行を促すものと 言えます。 大規模臨床研究の成果と限界 治療目標が一部緩和された背後には、 ACCORDに代表される近年の大規模臨床 研究の結果が影響していると考えられま す。確かにこれら臨床研究では、細小血 管障害抑止に有効な厳格な血糖管理が、 大血管障害にも有効だろうとの事前予測 が否定され、かえって死亡が増える可能性 さえ示されました。 ただし臨床研究には、参加者が登録基 準に合致している人に限られ、追跡期間が 疾患自然歴に比して遥かに短いという限界 があります。ふだん私たちが接する患者さ んは、実に多様な背景をもった集団です。 むしろ臨床研究の登録基準に合わない方 のほうが多いかもしれません。 また欧米における糖尿病患者の死因の 第一は心血管病ですが、日本人の心血管 病は未だ欧 米ほど多くありません。さら に、インスリン分泌量も欧米人と日本人と では大きく異なります。それらも糖尿病の 治療法選定を左右します。改訂されたス テートメントでは、治療法決定にあたり考 慮すべき因子としていみじくも 「人種」も取 り上げています。このステートメントを日本 人糖尿病患者さんに援用するにあたって は、より注意深い考察が必要と言えます。 東京慈恵会医科大学 糖尿病代謝内分泌内科教授 慈恵医大晴海トリトンクリニック所長 阪本 要一 エビデンス不足のEBMを補う チーム医療による糖尿病NBM 改訂されたステートメントが、患者さん中 心の医療を強調し、治療法の決定にも患者 さんのかかわりを求めていることは、換言 すれば、あらゆる糖尿病患者さんに適用可 能な強固なEBMがまだ確立されていない 現状の表れなのかもしれません。そのよう な状況で、患者さんの意思を尊重し治療を 進 め る 座 標 軸 は な に か と 考 えるとき、 narrative based medicine(NBM)とチー ム医療というキーワードが一つの答えにな るのではないかと思います。 NBMは 「物語と対話に基づく医療」など と訳され、患者さんの声を傾聴し、患者さ ん本人と医療者が人生という物語の中で疾 患をとらえ、共通認識をもって治療を進め ていく医療です。サイエンスと異なり、具体的 な手法を画一化できないため臨床への応用 にハードルもありますが、EBMを補完する ものとして徐々に浸透してきています。 とは言っても、一人の医師が患者さんそ れぞれの生活状況や家族関係、人生観な ど、QOLに関わる因子をすべて把握するこ とは不可能ですし、医師がもっている医学 的専門知識や経験のすべてを患者さんと共 有することも難しいことです。ぜひ伝えて 理解してもらいたいけれども上手に伝わら ない情報を、互いにいくつも抱えています。 そのような溝を埋めるためには、医師以外 の医療スタッフと患者さんおよび、患者さん のご家族がさまざまな場面で会話をし、問 題を共有して現実的な解決策を探ることが 求められます。患者さん中心のチーム医療 によるNBM、それが現時点における糖尿 病のテーラーメイド治療なのではないかと 考えています。 医療スタッフのための 糖尿病情報BOX&Net.─ No.35. 1. 2013 糖尿病ネットワークを通して 医療スタッフに聞きました Q. 貴院では、腎症を発症していない糖尿病患者さんへ 腎臓の検査を定期的に行っていますか? わからない 2% 最新の統計によると、糖尿病性腎症が原因の透析患者 さんは約11万人おり(透析患者の44%)、前年度は1万7千 人の糖尿病患者さんが新たに増えたそうです。昨春から 透析予防指導に対する診療報酬が新設されて、積極的な 腎症予防・指導が期待される医療スタッフと、患者さんの 意識について現状を伺いました。 とくに行って いない その他 7% [回答数:医療スタッフ87名(医師17、看護師27、管理栄養士30、臨床検査技 師4、薬剤師3など。うち日本糖尿病療養指導士38) 、患者さんやその家族272名 (病態/1型糖尿病93、2型糖尿病170、糖尿病境界型1、その他8、治療内容 /食事療法205、運動療法177、経口薬140、注射薬17、インスリン療法154/ 重複回答有) ] 6% 必要な人のみ 行っている 全員に 行っている 46% 39% 「全員に行っている」としたのは39%、 「必 を 含めても半 数 弱 要な人のみ」では46%と分かれ、比較的発 でした。ただし、合 症の可能性が高い患者さんに絞って行われ 併 症 予防のための ている傾向が見受けられました。そこで、 指 導は従 来から 腎症患者さんの割合を伺ったところ、回答 行っている施設が多 した医療スタッフの4割が、通院中の糖尿 く、算定していない 病患者さん全体の2〜4割に腎症があると =指導していないとは言えません。このよ 自由記述では‘透析予防に特化すること し、2割が患者さん全体の4〜6割いると実 うな中、この評価によって、指導内容や体 で、これまで腎臓に関心がなかった患者の 感されており、腎症患者さんは高確率で存 制の変化があったと答えた方に、どのよう 中にも関心を持つ人が増えた’ ‘進行が遅く、 在する現状がうかがえます。 な変化があったかをたずねてみました。す 効果も分かりにくいため、指導側の熱意が 続いて、新設された「透析予防指導管理 ると、 「指 導 方 法・内 容 を 改 良した」が なければ予防効果よりも点数取りだけに終 料( 350点)」の運用状況について伺いまし 50%、 「指導にとられる時間が増えた」が わってしまいそう’ ‘患者さんにとって千円 た。算定を開始しているのは、回答者が勤 41%、 「患者さんのモチ ベーション が上 アップは大きいと思う。従来と変わらぬ内 務する医療機関の3割強で、準備中の施設 がった」が39%と、 上位でした。 容だと指導料をとりにくい’ など様々な意見 Q.「糖尿病性腎症」のある方は、 通院中の患者さん全体のう ちどれ位と思われますか? 80%以上 その他 2% 2% Q. 貴院では 「透析予防指導管理 料」 の算定を始めていますか? (n=87) その他 5% わからない わからない 60〜80%未満 n = 87 8% 20〜40% 未満 算定に向けて 準備中 39% 40〜60% 未満 14% とくに 予定なし 20% 21% 20%未満 21% (n=87) 糖尿病ネットワーク http://www.dm-net.co.jp/ Q.「透析予防指導管理」の評価 により、 どのような変化があ りましたか?(n=44 無回答43) 指導方法・内容を改良した・・・・・・・・・・・・・・・・50% 6% 8% がありました。 はい 33% 検討中 21% 指導にとられる時間が増えた・・・・・・・・・・・・・41% 患者さんのモチベーションが上がった・・・・39% 指導回数を増やした ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・36% スタッフのモチベーションが上がった・・・・32% 指導対象者を増やした・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・30% 仕事が大幅に増えた ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・27% 講習会参加や勉強する時間が増えた・・・・・25% 関連他科とのコミュニケーションが増えた・・・23% 糖尿病ネットワークを通して 糖尿病患者さんに聞きました Q. 腎臓の状態をみる検査のご自身の値を、 きちんと把握していますか? その他 3% Q. 糖尿病性腎症をご存知ですか? 知らない 2% 聞いたことはあるが、 詳しくは知らない 主治医に 注意された時のみ 19% 22% 常にチェック している 知っている 79% 49% あまり関心を もったことはない n=272 26% 目的とする指導を受けた 自由記述では、 ‘ 絶対なりたくないので、 ことがあるかを伺ってみ 合併症には気をつけている’ ‘人工透析導入 たところ、定期的に継続 原因の1位であるということは、患者も医療 して受けている方は2割 者も対策が足りないのではないか’ ‘医師が 約半数が「常にチェックしている」としま 程度で、 「受けた覚えは 不要と判断しているのかもしれないが、知ら したが、4人に1人は 「あまり関心をもったこ ない」方が44%と最も多く、腎症に特化し ないうちに進行していたらと思うと怖い’ ‘腎 とはない」とのことでした。腎臓の状態を た指導をきちんと受けておられる方はかな 症になった方の経験談など、合併症に関す みる検査で知っている項目として 「尿蛋白」 り少数であることがわかりました。 る情報がもっと欲しい’ ‘腎症になってから は8割、 「尿中微量アルブミン」は6割、 「血 なお、糖尿病患者さんは高血圧を合併 指導するのではなく、予防的な指導も必要 清クレアチニン」は5割という認知度で、実 されている人が多いと言われますが、降圧 ではないか’ 等、多くの声が寄せられました。 際に定期的に受けている関連項目では、 「尿 薬を服用している方は約4割でした。血圧 蛋白」76%、 「血圧」75%、 「視力」56%、 「血 管理への意識として、日頃の食生活での塩 清クレアチニン」48%、 「尿中微量アルブミ 分摂取について聞いてみると、適正量の範 ン」43%との状況。回答者の中で、腎症と 囲内を遵守している方は2割で、残りの8割 診断されたことがある方は1割程度でした。 は「守れていない」、 「気にしていない」と 糖尿病網膜症、神経障害は劇的に 次に、糖尿病性腎症の予防・進行抑制を し、意識の低さが目立ちました。 改善を見る機会が増えました。こうま n = 272 Q.「糖尿病性腎症」 予防・進行抑 Q. 日常の食生活の中で、 制のための指導を受けたこと 塩分摂取量に気をつけてま はありますか?(n=272 複数回答可) すか?(n=272) 指導を受けた覚えはない 44% 糖尿病教室や教育入院で 話題が出た 29% 定期的に継続して 受けている その他 19% 過去に 個別指導を受けた 12% 0 10 20 30 鈴木吉彦(日本医科大学客員教授、 HDCアトラスクリニック院長) で進歩すると三大合併症で残される のは腎症です。血糖コントロールだけ では予防できず、多種多様な処方術 と、個別化した栄養指導が必要とさ れます。特にメトフォルミンや多くのイ ンクレチン製剤処方には腎機能に注 意を払う必要があり、e-GFR に着目す 決められた 摂取量を 守っている 23% 過去に グループ指導を受けた 9% 4% ● コメンテーター ● とくに気に していない る機会が増えました。望ましい傾向 気をつけては いるが、摂取量を 守れていない 47% といって飛びつくだけでは、仕事が大 幅に増えただけ、と感じてしまうスタッ フも増えるでしょう。プロの指導技術 30% をいかにシェアするか、その方法論が 40 ですが、ただ、診療報酬があるから 必要とされます。 50 医療スタッフのための 糖尿病情報BOX&Net.─ No.35. 1. 2013 Trend Research EASD2012 特集 昨年10月1〜5日、ドイツ・ベルリンで第48回欧州糖尿病学会 (EASD 2012)が開催され、世界各国から約2万人の医療関 係者が集結し、多くの研究発表が行われました。 今回は、話題になった発表をピックアップしてご紹介します。 2型糖尿病の新ガイドライン 昨年4月、2型糖尿病の高血糖管理に関するガイドラインが3年ぶりに改訂され、ADA/ れています。 EASD合同ステートメントが発表されました。これについて、シンポジウム 「Management ポイントとしてとして挙げたのは以下の7 of type 2 diabetes: the ADA/EASD position statement」 ( 2型糖尿病の管理:ADA/ 項目。特に重視しているのは患者の生活ス EASD合同ステートメント)として、解説が行われました。 タイルの尊重で、 「最終決定は患者に委ね 欧州糖尿病学会 (EASD)と米国糖尿病 高く、多種の薬剤による副作用リスクも高 られており、医師による薬物療法において 学会(ADA)が共同で策定した改訂ガイド いため、目標もゆるく7.5〜8%と設定。患 も、患者の生活とうまく調和していなけれ ラインの柱は、 “「ひとつのサイズを全ての患 者さんの病態や低血糖リスクによっては厳 ばならない」としています。 者さんに合わせる (one-size-fits-all)治療ア 格でない治療でもよい、あるいは厳格でな 詳しくは>>http://www.dm-net.co.jp/ プローチ」ではなく、 「患者を中心に考えた い治療が適切とする考え方も取り入れら calendar/2012/018952.php アプローチ (patient-centered approach)」” でした。これについて、オックスフォード糖 尿病センターのDavid R. Matthews氏は、 患者が生活していく上で優先したいと思う ことを尊重しながら、もっとも効果的な治 療を忍耐強く提供していくことが、糖尿病 のような慢性疾患では重要であると強調し ています。 新ガイドラインでは、平均余命が長く、 ● 7つのポイント ● ・血糖目標や治療法は個別化されねばならない。 ・いかなる2型糖尿病治療プログラムにおいても、食事・運動・教育は基本であり続ける。 ・禁忌でない限り、メトホルミンが第一選択薬である。 ・メトホルミンの次の薬剤を決めるデータは限定的であり、副作用を最小限にすることを目 標に、1〜2種類の経口剤や注射剤を追加することが合理的である。 ・最終的に多くの患者で、血糖管理にインスリン治療が必要となる。 ・すべての治療方針の決定には、患者の嗜好や必要性、価値観が反映されるべきである。 ・包括的な心血管疾患リスクの減少も治療の主たる焦点となる。 心疾患の病歴がなく、低血糖を経験したこ とがない人では6〜6.5%と、より厳しい目標 が設定されました。一方、65〜70歳より高 齢の場合は、低血糖による合併症リスクが Management of Hyperglycemia in Type 2 Diabetes: A Patient-Centered Approach Position Statement of the American Diabetes Association (ADA) and the European Association for the Study of Diabetes (EASD) http://care.diabetesjournals.org/content/35/6/1364.long 2型糖尿病患者の半数以上が 「低血糖の経験あり」 2型糖尿病患者の半数以上が低血糖の経験があり、低血糖について医師に相談したのは 3分の1に過ぎないという調査結果が発表されました。調査は、オーストラリア、中国、ドイ ツ、インド、メキシコ、サウジアラビア、アラブ首長国連邦、英国の8ヵ国の、病院の糖尿病 専門医とプライマリケア医や一般医の治療を受けている2型糖尿病患者899人を対象に、イ ンターネットを使って行われたもの。 法への意欲が高い患者が多いことが示さ れたのは明るい展望。しかし、血糖コント ロールに生活スタイルが深く関わっており、 血糖降下薬の中には低血糖の危険性を高 めるものがあり、低血糖を予防するために 注意が必要であることを、十分に認知して いる患者が少なかったのは問題だ」とし、 「よりよい血糖コントロールを実現すること が重要だが、低血糖の危険性が増えるの 調査結果によると、低血糖の管理につ とに気が付かなかった」と回答。生活要因 は避けたい。低血糖のリスクと、個々の生 いて実際に主治医に相談したことがある患 はさまざまですが、患者の76%は職業や労 活スタイルに最適化された血糖コントロー 者は37%に過ぎず、28%は低血糖そのもの 働時間について、83%は食事を抜いたとき ルについて、患者と医師の双方が話し合わ について医師に相談したことがなく、6%は の対処について主治医に相談していないと なければならないことは多いようだ」とコメ 認知すらしていませんでした。また、2型糖 し、低血糖対策が行き届いていない現状も ントしています。 尿病患者の53%は低血糖が疑われる経験 原因の1つにあるようです。 詳しくは>>http://www.dm-net.co.jp/ があり、患者の76%は不規則な生活スタイ 英国のバーミンガム大学病院のWasim calendar/2012/019001.php ルについて 「血糖コントロールに影響するこ Hanif博士は、 「調査で食事療法と運動療 糖尿病ネットワーク http://www.dm-net.co.jp/ 世界中で研究が進むSGLT2阻害薬 〜ブドウ糖を尿から排泄して血糖抑制 は、低血糖の発症リスクを高めることなく、 糖尿病治療薬の新たなターゲットとして、SGLT2阻害薬の研究開発が世界各国で活発に 意が必要だ」とまとめています。 進められています。低血糖を起こさず血糖値を下げる新しいタイプの治療薬として期待され ており、EASD2012でもその研究発表が数多く行われました。ギリシャからは、アリストテ レス大学のApostolos Tsapas氏らが、SGLT2阻害薬の有効性および安全性に関するメタ 解析の結果を発表しました。 HbA1cを低下させる効果があり、減量効果 もあることが認められた。主な副作用とし ては尿路感染症と生殖管感染症があり注 糸球体でろ過された原尿には、血漿と同 じ濃度のブドウ糖が含まれており、通常は ほとんどのブドウ糖がSGLT2の働きにより 血液中に再吸収されます。そこで、SGLT2 の働きを抑え、再吸収されるはずだったブ 研究は、米国糖尿病学会(ADA)、国際 低血糖のリスクについては、対プラセボ群 ドウ糖をそのまま尿として排泄させれば、 糖尿病連合(IDF)などの学術集会で発表 のリスク比は1.19倍と有意に高値でしたが、 血糖値は上昇しないというのがSGLT2阻 された試験のうち、成人の2型糖尿病患者 対他薬剤のリスク比は0.36倍で有意に低い 害薬のコンセプト。SGLT2阻害薬は、イン を対象とした39試験の解析を行いました。 ものでした。 スリン作用を介さない新しい作用メカニズ 12週間以上にわたり、プラセボまたは他の 副作用では、尿路感染症のリスクとして、 ムをもち、血糖低下作用に加え、低血糖リ 経口血糖降下薬と比較したランダム化比較 対プラセボ群のリスク比が1.28倍、対他薬 スクが低いことや、体重減少作用も期待さ 試験(RCT)を取り出し、ベースラインから 剤ではリスク比1.30倍。生殖管感染症のリ れています。日本 および海 外でもまだ発 のHbA1cの変化を比較しました。すると、 スクは、対プラセボ群のリスク比が4.00倍、 売されたものはなく、現在、国内外で臨床 プラセボを対照群とした29件では、SGLT2 対他薬剤ではリスク比5.25倍と、いずれも 試験が実施され、安全性、有効性につい 阻害薬によりHbA1cは平均0.73%低下し、 有意に上昇していたとのこと。SGLTを阻 てより多くの症例が集められている状況 体重は平均で2kg低下。他の経口血糖降 害することで、多尿やそれに伴う感染症を です。 下薬と比較した10件では、HbA1cは平均 もたらす可能性もあり、今後の検討課題と 詳しくは>>http://www.dm-net.co.jp/ 0.12%低下し、体重は2.56kgの低下でした。 されました。Tsapas氏は、 「SGLT2阻害薬 calendar/2012/019003.php 糖尿病の自己管理を義務付ける法案を提出 ハンガリーで、血糖自己測定や HbA1c 値の検査など、患者さん自身で体の状態を適切 にモニターすることを義務づける法案が提出されたとの発表がありました。 ハンガリー 案は、経済的な事情で食事療法を行う余 裕がなかったり、運動を続けられない患者 ハンガリーの糖尿病有病数は50万人、有 状が深刻な患者は、こうした対応から外さ への配慮に欠ける。そうした患者は、血糖 病率は7.6%に上り、糖尿病の医療費は全体 れるとのこと。 コントロールをより悪化させてしまうおそれ の8.6%を占めています。公立病院の診察 これに対し国際糖尿病連合 (IDF)ヨー がある。適切な糖尿病の治療により合併症 料は社会保険料を支払っていれば無料で、 ロッパ支部は、 「糖尿病を、患者の自己管 を効率的に予防することこそが生産的であ 増え続ける糖尿病が医療財政を圧迫してお 理と医療費の社会的な負担という面のみで り、社会の医療コストを抑えるために優先さ り、深刻な問題となっています。 とらえようとする今回の法案は危険がとも れることを、政府はよく理解すべき」と述べ 法案は、軽症の糖尿病患者を重症化させ なう」と反 対 意 見を表 明。IDFのChris J ました。 ないための方策として検討されているもの Delicata氏は、 「患者 が自己管 理を行い、 詳しくは>>http://www.dm-net.co.jp/ で、患者さんは3ヵ月ごとに血糖値とHbA1c 血糖自己測定で血糖値を持続的に知るこ calendar/2012/018950.php 値の測定を行い、1年に2回、治療方法を見 とが重要なのは確かだ。しかし、今回の法 直し。血糖コントロールが良好でないと、よ の給付も制限されるので、患者が支払わな 糖尿病リソースガイドで EASD 2012 ニュースリリースを 特集! ければならない医療費は上昇すると懸念さ 第48回欧州糖尿病学会(EASD 2012) り効果的なインスリン療法への移行が義務 づけられるというもの。加えて、医療保険 れています。法案について、 「糖尿病合併 での発表の中から、関連企業や医療機関 症を予防すれば、医療費の大きな削減につ などから発信されたニュースリリースをまと ながります。今回の法案は糖尿病合併症 めた特集コーナーを開設しています。業界 の予防を推進しながら医療費を削減でき、 2つの面でメリットがある」と当局は説明。 なお、18歳未満の小児や若者、糖尿病の病 の最新動向のチェックに、ご活用ください。 http://dm-rg.net/release/easd2012. html 医療スタッフのための 糖尿病情報BOX&Net.─ No.35. 1. 2013 Trend Research 糖尿病とインフルエンザ 5つの対策で流行に備える 風邪やインフルエンザに気をつけなければならない季節となりました。糖尿病の人は季 節性インフルエンザと新型インフルエンザ (H1N1)の両方に対して注意するよう、米国疾病 管理予防センター(CDC)が 「5つの対策」を掲げて呼びかけました。 昨年10月、米国CDCでは、糖尿病患者へ 続いていると、インフルエンザなどの感染 向けてインフルエンザに対する注意喚起を 症に対する免疫機能低下につながるリスク 行いました。米国糖尿病学会 (ADA)のデ となります。体調を崩すことで、食事をとれ ビー・ジョンソン氏は、 「インフルエンザと診 なくなったり、寝込んで動けず血糖コント 断されたら、血糖自己測定の頻度を増やす ロールが乱れるので、いわゆるシックデイ 必要があります。疲れやすくなっている時 対策が必要です。風邪やインフルエンザの は、低血糖と高血糖の症状が起こりやすい」 ために食事をできない時間が6時間を越え と述べ、 「発症後は薬剤量の調節が必要な たり、嘔吐してしまう場合、39度以上の高 場合があります。ですが、自己判断でイン 熱、60mg/dL未満の低血糖や300mg/dL スリン注射を中断するのは非常に危険。対 以上の高血糖、または、息が苦しい、下痢 処の仕方が分からなければ主治医に連絡 をしている、心臓の鼓動が異常に早いなど するように」と強調しました。 の強い自覚症状がある場合、迷わず受診す 糖尿病の人は風邪やインフルエンザが、 るよう日頃の指導が望まれます。 健康な人より重症化する恐れがあります。 詳しくは>>http://www.dm-net.co.jp/ とくに、血糖コントロールが良くない状態が calendar/2012/019119.php インフルエンザは予防が第一 CDCが掲げる5項目 ▼外出後の手洗い 手洗いは手指など体に付着したインフルエ ンザウイルスを物理的に除去するために有 効な方法。 ▼適度な湿度の保持 乾燥しやすい室内では加湿器などを使っ て、適切な湿度 (50〜60%) を保つことも 効果的。 ▼十分な休養とバランスのとれた栄養摂取 体の抵抗力を高めるために、十分な休養と バランスのとれた栄養摂取を心がけること。 ▼人混みや繁華街への外出を控える やむを得ず外出して人混みに入る可能性が ある場合には、不織布製マスク着用で防 御を。 ▼体重を毎日はかる 減量のための対策をしていないのに体重 が急速に減っている場合は高血糖が疑わ れる。 Diabetes and the Flu: 6 Things You Should Know (米国疾病管理予防センター) http://www.cdc.gov/diabetes/news/flu.htm もうすぐ、全国生活習慣病予防月間! "生活習慣病を防ぐ少食のすすめ" 今年のテーマは 毎年2月の 「全国生活習慣病予防月間」は、今回で第3回目を迎えます。2013年のテーマ は、健康標語である"一無・二少・三多"から"少食"にフォーカスし 「生活習慣病を防ぐ"少食" のすすめ」として啓発を行います。今回も、スローガンの公募、医療・保健指導スタッフ向 け講演会の開催をはじめ、予防月間専用ホームページでの情報提供など、広く生活習慣病 予防啓発が行われます。 恒例のスローガン募集では、約2,700通・ 間HPをご 覧ください。 >>http://www. 8,500作品の応募を頂戴し、12月初旬現在、 seikatsusyukanbyo.com/monthly/ 受賞者の選考に入っています。暴飲暴食を 控え、少食 (腹八分目)による生活習慣病予 医療・保健指導スタッフのための生活習慣病予防講演会 防を訴えるスローガンを柱にポスターやリー —「生活習慣病を防ぐ"少食"のすすめ」— フレットを制作。2月からホームページで無 日 時:2013年2月18日 (月) 18:30~20:30 料公開いたします。 場 所:千代田区立内幸町ホール また、予防月間でのメインイベントである テーマ:生活習慣病を防ぐ"少食"のすすめ 講演会は、右記のようなプログラムを予定 対象者:医療関係者・保健指導関係者 しています。 “少食”のみにとどまらず、話 題の糖質制限や健康長寿と食に関する最 新の知見などを取りあげ、参加者とのディ スカッションも予定しています。多くの方 のご 参加をお待ちしております。申込方 参加費:無料 プログラム: ▼「全国生活習慣病予防月間でメタボ予防を啓発」 宮崎 滋 先生 (新山手病院生活習慣病センター長) ▼基調講演「話題の糖質制限食の是非をめぐって」 中村丁次先生(神奈川県立保健福祉大学学長) 法など詳しくは、全国生活習慣病予防月 糖尿病ネットワーク http://www.dm-net.co.jp/ ▼「少食とアンチエイジング」 和田高士先生 (東京慈恵会医科大学 総合健診・予防医学セ ンター教授) ▼質疑応答 ▼閉会挨拶 池田義雄 先生 (日本生活習慣病予防協会理事長) 主 催:一般社団法人日本生活習慣病予防協会 認定NPO法人セルフメディケーション推進 協議会 後 援:糖尿病治療研究会、日本産業保健師会、 日本栄養士会(予定) ほか サイト紹介 ㉞ 保健指導に関わる専門職の方へ 「保健指導リソースガイド」が オープン! 日本医療・健康情報研究所は、保健指導の関係者を対象とした情報サイト 「保健指導リ ソースガイド」を開設しました。 「特定健診・特定保健指導リソースガイ なる情報を集めていきます。 ド」 ( 2008年開設)としてご活用いただいて “調べる”コーナーも充実し、行政資料 いた当サイトは、このたび、対象領域を拡大 チェックに役立つ従来の「関連資料更新情 し、保健指導に携わるすべての専門職への 報」に加え、調査・統計、関連疾患コーナー 情報提供を強化するべく、 「保健指導リソー を新設。また、 “使える”コーナーとして、指 スガイド」として生まれ変わりました。 導用教材、支援サービス・ソフト、転職・求 ■保健指導リソースガイド http://tokuteikenshin-hokensidou.jp/ 新たに加わったのは、 「産業保健」、 「地 人コーナーなどが仲間入り。 いく場を目指します。第1弾として、 「産業 域保健」、 「学校保健」、 「健診・検診」の領 さらに、関連領域の専門家が寄稿する連 保健師と保健指導」をテーマに、日本産業 域。また、保健指導の重要なテーマである 載コーナー「オピニオン」がスタート。ここで 保健師会会長の大神あゆみ氏によるオピニ 「働く人のメンタルヘルス」、 「禁煙指導・ア は、オピニオンリーダーによる各領域の現 オンを公開しました。メールマガジンは毎 ルコール」、 「働く人のがん対策」、 「運動と 状や課題、提言などを通して、保健指導に 月2回発行。まずは、サイトへお立ち寄りく 栄養」を取り上げ、実用的でスキルアップと 対する理解の向上、重要性をアピールして ださい。 「インスリンポンプ情報ファイル」に2つの新たなコンテンツ エキスパートが答えるQ&A、 論文コーナーをご活用ください インスリンポンプ療法 (CSII) に関する情報を集積している糖尿病ネットワーク 「インスリンポンプ 情報ファイル」 (http://www.dm-net.co.jp/pumpfile/) に、2つの新コーナーが追加されました。 焼き肉やお寿司を食べた時、 検討されている患者さん、そして患者さん ポンプの調節はどうしたらいい? を指導する医療スタッフに、ご一読いただ インスリンポンプ使用にまつわるさまざま ければと考えております。 な疑問にお答えする 「上手なポンプの使い 方Q&A」では、よくある質問の中から50項 インスリンポンプ療法に関連する 目を選び、インスリンポンプ療法に詳しい メジャーで有用な論文を紹介 川村智行先生(大阪市立大学大学院発達 もう1 つは、インスリンポンプ療法に関す れており、インスリンポンプを用いた患者の 小児医学教室)にご回答いただきました。 る国内外の重要文献を解説付きで紹介する 方が頻回注射法を用いた患者よりわずかに 焼肉やお寿司を食べたときのボーラス設 「インスリンポンプに関する主な研究論文」 血糖コントロールが良かったことが報告さ 定は?、お酒を飲んだ時のカーボカウントの コーナー(解説:国立病院機構京都医療セ れています。また、1978年に世界ではじめ コツは?、お風呂や水泳などで、どのくらい ンター糖尿病センター 村田敬先生)です。 てインスリンポンプの臨床応用を報告した の時間、ポンプを外していても大丈夫?、激 数多くの論文の中から、信頼性の高いメ John C. Pickup氏らによる総説では、イン しいスポーツはできますか?、出産時はつけ ジャーな論文を選ぶのは難しいもの。ここ スリンポンプ療法の父とも言うべき第一人 てて大丈夫?等々の質問について、食生活・ では、著名な研究や信頼できる研究を選 者の見解を知ることができます (村田先生 アルコール・運動・入浴・シックデイ・旅行・ び、研究概要や解説 (研究の読みどころ)を の解説より)。まずはここから、インスリン 海外渡航・妊娠・性交渉・小児・高齢者・ 加えました。 「Pubmed」と 「原文」両方での ポンプ療法に関する理解を深めてみてはい 装着部位・CSII注入セット交換・ベーサル 確認が可能です。 かがでしょうか。 設定、といったジャンルに分けてご紹介し 例えば、DCCT研究では、頻回注射法で ています。 治療目標を達成できなかった場合のオプ 現在使用中の患者さんをはじめ、導入を ションとしてインスリンポンプが位置づけら ■インスリンポンプの上手な使い方Q&A http://www.dm-net.co.jp/pumpfile/qa/ ■インスリンポンプに関する主な研究論文 http://www.dm-net.co.jp/pumpfile/article/ 医療スタッフのための 糖尿病情報BOX&Net.─ No.35. 1. 2013 面、NGSP値とJDS値を併記する」として いた現行方針を改め、2013年4月1日以降 は日常臨床・健診においてNGSP値の単 2012年9月〜2012年11月 ●糖尿病ネットワーク 資料室より 独表記を推進すると発表した。 DPP-4阻害薬が糖尿病による心不全を改 2012年 9月 細胞の増殖を促す可能性があるという研 善(11月5日) HbA1c検査、JDS値で患者に説明が69% 究を発表した。健康なハツカネズミに対し 糖尿病により心不全が発症するメカニ 医師会調査(9月4日) て薬剤処理し観察したところ、脳の神経細 ズムに「心臓毛細血管不全」が関与して 日本医師会が公表した調査によると、健 胞の新生が促され、脳の記憶を司る海馬 おり、糖尿病治療薬として用いられてい 診・保健指導を実施している988の医療機 の中で神経細胞が産み出されることを発見 る「DPP-4阻害薬」が、心臓毛細血管不全 関の日常臨床におけるHbA1c検査の表記 したという。 を改善する作用を介して、拡張不全を改 は、日本糖尿病学会から示された 「NGSP 2012年 10月 善する可能性があると、名古屋大学の研 値とJDS値の併記」がもっとも多く85.5% 経口インスリンで1型糖尿病を予防 究 チ ー ム が 発 表 し、 米 国 科 学 雑 誌 だった。一方、診療現場での患者への説明 EASD2012(10月4日) は、これまでのJDS値で説明を行っている スウェーデンなどで行われている1型糖 世界糖尿病デー 糖尿病をテーマにみん 例がもっとも多く45.2%に上り、NGSP値で 尿病の予防法の開発をめざす 「トライアル なでダンス(11月14日) 行っている例は31.2%だった。 ネット研究」によると、長期にわたり経口イ 世界糖尿病デーに合わせて、世界中で糖 筋力トレーニングは糖尿病予防に効果的 ンスリンを服用することで、1型糖尿病を発 尿病の人やその家族、周囲にいるサポー 症する危険性の高い人が、糖尿病の発症を ター、医療者などが多数、フラッシュモブに 米ハーバード大学の研究チームが大規 予防したり、発症の時期を遅らせることが 参加した。特定の場所と時間に 「糖尿病の 模研究のデータをもとに、筋力トレーニング できる可能性があるとの発表があった。 ために行動しよう」をテーマに集まった人達 の効果を解析した。運動量別にみると、週 糖尿病患者の冠疾患スクリーニングに が、ダンスを踊ったり、歌を歌ったり、ジャ 150分以上の筋力トレーニングを行う群で FMDが有用(10月6日) ンプするなどしてアピールするのをビデオに は2型糖尿病発症リスクは34%、60〜149 糖尿病患者の冠動脈疾患スクリーニング 撮影し、世界に向けて公開された。 分間行う群では25%それぞれ低下。 に、FMD検査が有用である可能性あると 薬の飲み忘れ 生活習慣病の患者の5割は お腹が出るのは太りすぎより問題(9月7日) の研究が、新古賀病院心臓血管センター・ 体重は正常でもお腹の出ている人は、全 後藤義崇氏らにより発表された。糖尿病 患者の46.3%は、生活習慣病 ( 2型糖尿 体に太りすぎた肥満の人よりも死亡リスク 患者は冠動脈疾患を好発することに加え、 病、高血圧症、脂質異常症)の処方薬を飲 が高いとの研究が、米国のボストンにある 神経障害の影響等により無症候のまま重 み忘れることがあり、18.3%は自己判断で メイヨークリニックの研究者によって発表さ 篤化しやすいことから、そのスクリーニング 服用を中止したりしたことがあるとの調査 れた。お腹が出る中心性肥満の人は、BMI が重要とされる。 結果が発表された。いつ飲み忘れるかを聞 とヒップに対するウエストサイズの比率が正 iPS細胞からインスリン分泌組織 糖尿病 いたところ 「朝」と 「夜」がそれぞれ41.0%、 常だった人に比べ、心疾患の死亡リスクは の再生医療に期待(10月18日) 45.3%と4割強だった。 2.75倍に上昇し、あらゆる死因では2.08倍 山中伸弥・京都大学教授のノーベル賞 第9回IDF西太平洋地区会議 国際糖尿病 に上昇していた。 受賞で注目されている幹細胞の再生医療 支援基金がIFLと共同出展(11月27日) 半数以上はコレステロール管理不十分 への応用は、糖尿病の治療でも大きく期待 日本の国際糖尿病支援基金 (会長:森田 されている。幹細胞の 「他の細胞に変化す 繰織氏)は、 「第9回IDF (国際糖尿病連合) 糖 尿病患者さんの91.6%が1年に1回以 る」という特性を利用すれば、インスリンを 西太平洋地区会議」において、豪インスリン・ 上、血清脂質の検査を受けているにもかか 作るβ細胞や膵臓を人工的に作り出し、1 フォー・ライフ (代表:Ron Raab氏)とともに、 わらず、60%近くがコレステロールの管理が 型糖尿病の根本的な治療となる可能性が 途上国の糖尿病の患者さんの実情を知っ 不十分との調査結果を、英国糖尿病学会 あるとして広く研究が行われている。 てもらい理解を得ることを目的に共同出展 が発表した。 2012年 11月 を行った。 糖尿病治療薬がアルツハイマー病を改善 HbA1c表記 2013年4月以降はNGSP値の 日本初の新たなDPP-4阻害薬「スイニー (9月6日) (9月14日) 「Circulation」に掲載された。 「経験あり」(11月26日) みに(11月1日) 錠」発売(11月30日) 英国のアルスター大学の研究チームは、 日本糖尿病学会は、HbA1cのJDS値か 三和化学研究所と興和は、DPP-4阻害 糖尿病治療薬であるGLP-1受容体作動薬 らNGSP値への移行が順調に進行してい 薬 「スイニー錠100mg (一般名:アナグリプチ が、損傷を受けた脳細胞を保護し、神経 ることを受け、「日常臨床においては当 ン)」を発売した。同剤は三和化学研究所 (9月24日) が創薬し、2社で共同開発。1日2回の服薬 ●各記事の詳細およびその他のニュースについては、 糖尿病ネットワーク(dm-net)の糖尿病の最新情報/資料室のコーナーをご覧ください。 糖尿病ネットワーク http://www.dm-net.co.jp/ により、GLP-1の作用を高めることで24時 間にわたる血糖低下作用を有する。 2013 年1 月〜 5 月 第16回日本病態栄養学会 〒106-0041 東京都港区麻布台2-3-22 一 [ 1群 管理栄養士・栄養士 4単位、2群 4単位] 乗寺ビル [日 時]1月12日(土)〜13日(日) Tel.03-3583-6677 [場 所]国立京都国際会館 http://foot2013.umin.jp/ http://www2.convention.co.jp/jcs2013/ 第3回日本腎臓リハビリテーション学会 [日 時]3月23日(土)〜24日(日) [連絡先]日本病態栄養学会事務局 〒160-0004 東京都新宿区四谷3-13-11 日本糖尿病療養指導士認定更新に取得できる単位 数をイベント・学会名の横に表示しています。 [第1群]は自己の医療職研修単位。 [第2群]は糖尿病療養指導研修単位。 表示のないものは、現在申請中あるいは未定です。 詳細は各会のHPをご覧ください。 [場 所]とちぎ健康の森 第46回日本痛風・核酸代謝学会総会 [連絡先] (株) メディカル東友コンベンション 栄ビル5階 [日 時]2月14日(木)〜15日(金) 事業部 Tel.03-5363-236 [場 所]京王プラザホテル(東京) 〒243-0013 神奈川県厚木市泉町3-5 http://www.eiyou.gr.jp/gakujutsu/ [連絡先] (株) ウィアライブ コンベンション 厚木フォーラムビル8階 事業部 Tel.046-220-1705 〒104-0032 東京都中央区八丁堀3-1-12 http://www.mtoyou.jp/jsrr2013/index. [日 時]1月12日(土)〜13日(日) Tel.03-3552-4170 html [場 所]都市センターホテル(東京) http://www.tsufu46.com/ 第47回日本成人病(生活習慣病)学会 第110回日本内科学会講演会 [連絡先] (株) メディカル東友コンベンション 事業部 第47回糖尿病学の進歩 [日 時]4月12日(金)〜14日(日) 〒243-0013 神奈川県厚木市泉町3-5厚木 [第2群 4単位] [場 所]東京国際フォーラム フォーラムビル8F [日 時]2月15日(金)〜16日(土) [連絡先]日本内科学会事務局 Tel.046-220-1705 [場 所]四日市文化会館ほか(三重) 〒113-8433 東京都文京区本郷3-28-8日 http://www.mtoyou.jp/jsad47/ [連絡先] (株) セントラルコンベンション 内会館 サービス Tel.03-3813-5991 第50回日本糖尿病学会関東甲信越地方会 〒460-0008 愛知県名古屋市中区栄3-19- http://www.naika.or.jp/meeting/nenji/ [ 2群 4単位] 28 nenji_top.html [日 時]1月26日(土) Tel.052-269-3181 [場 所]パシフィコ横浜 http://www.47shinpo.com/ 第86回日本内分泌学会学術集会 [連絡先] (株) コンベンション・ラボ [日 時]4月25日(木)〜27日(土) 〒252-0143 神奈川県相模原市緑区橋本 第32回食事療法学会 [場 所]仙台国際センター 6-4-12-4F [第1群 管理栄養士・栄養士2単位] [連絡先] (株) コングレ Tel.042-707-7275 [日 時]3月2日(土)〜3日(日) 〒102-8481 千代田区麹町5-1弘済会館ビ http://www.jds50kanto.org/ [場 所]軽井沢プリンスホテルウェスト ル6階 「バンケットホール」 Tel.03-5216-5318 [連絡先]公益社団法人日本栄養士会医療 http://www.congre.co.jp/endo86/top.html 第13回動脈硬化教育フォーラム [日 時]2月3日(日) 職域事業部 第32回食事療法学会事務局 [場 所]京都国際会議場 Tel.03-3295-5151 第56回日本糖尿病学会年次学術集会 [連絡先]日本動脈硬化学会事務局 http://syokuji32.com/ [第2群 4単位] 〒150-0033 東京都文京区本郷3-28-8 日内会館B1 [日 時]5月16日(木)〜18日(土) 第77回日本循環器学会 [場 所]ホテル日航熊本ほか Tel.03-5802-7711 [日 時]3月15日(金)〜17日(日) [連絡先]日本コンベンションサービス(株) http://www.j-athero.org/ [場 所]パシフィコ横浜 九州支社 meeting/130203_forum.html [連絡先]日本コンベンションサービス (株) 〒810-0002 福岡市中央区西中洲12-33 〒100-0013 東京都千代田区霞が関1-4-2 福岡大同生命ビル7階 第11回日本フットケア学会 大同生命霞が関ビル18階 Tel.092-712-6201 第5回日本下肢救済・足病学会 Tel.03-3508-1726 http://www2.convention.co.jp/jds56/ [日 時]2月9日(土)〜10日(日) [場 所]パシフィコ横浜 [連絡先] (株) コンベックス ●各イベントの詳細や、このページに掲載されていないイベントについては、 糖尿病ネットワーク(dm-net)のイベント・学会情報のコーナーをご覧ください。 医療スタッフのための 糖尿病情報BOX&Net.─ No.35. 1. 2013 万6,000人、 「心疾患 (高血圧性のものを除 推 計患者数は入院が134万1,000人 (病 く)」161万2,000人、 「悪 性 新 生 物」152万 院129万100人、診療所5万900人)、外来 6,000人、 「脳血管疾患」123万5,000人。 が726万500人 (病 院165万9,200人、 診 療 270万人:糖尿病患者数 総患者数は、前回 ( 2008年)調査に比べ 所423万8,800人)。高齢 者の入院 患者は ると、アルツハイマー病の増加が目立ち、 2%減り、外来患者は10%増の332万9,900 糖 尿 病 の患 者 数 は前 回 調 査より32万 患者数は36万6,000人 ( 12.6万人増)と推計 人と過去最多で、入院から外来・在宅医 9,000人増え、過去最高の270万人に上る されました。 それ以外 は、 「高血 圧性 疾 療への移行が鮮明に表れた状況でした。 ことが、厚生労働省が3年に1度行っている 患」が110万人増、 「高脂血症」が45万3,000 「患者調査」でわかりました。主な傷病の 人増、 「糖尿病」が32万9,000人増、 「悪性 総患者数は、 「高血圧性疾患」906万7,000 新生物」が8万人増となっています。「脳血 人、 「糖 尿 病」270万人、 「高 脂 血 症」188 管疾患」は10万4,000人減でした。 数字で見る糖尿病 (34) 糖尿病治療薬の特徴と服薬指導のポイント 次に、アナグリプチンの副作用は19.9%で 第9回 DPP-4阻害薬(3) 認められ、便秘 ( 2.6%)、低血糖 ( 2.0%)、便 潜血陽性 (1.9%)です。ほとんど肝代謝され 加藤光敏(加藤内科クリニック院長) ■はじめに 減期 (β相)は、6.20または5.75時間で、尿 今回は、新たに製造販売承認を取得し 中73.2%、糞中25.0%の排泄割合と報告さ た2種のDPP-4阻害薬を取り上げます。ま れています。 た増えたのかと思うかもしれませんが、新 他の血糖降下薬と併用できるかは選択 しいテネリグリプチンとアナグリプチンの の大きなポイントとなりますが、①α-GI② 違いにフォーカスを当てて、最後にDPP-4 BG (ビグアナイド)③SU薬④チアゾリジン 阻害薬全般について総括いたします。 系薬剤と、広く併用が認められています。 ■テネリグリプチン (テネリアⓇ 錠) この点、使い易い薬剤です。またLDL-C テネリグリプチンは田辺三菱製薬 (株)で 低下作用とTG低下作用も認められていま 創製され、2012年6月に製造販売承認を取 す。さらに、DPP-4阻害薬の中でシタグリ 得した初の国産DPP-4阻害薬です。テネリ プチンと並んで薬価が一番低いことは、患 グリプチンの血漿中半減期は20mg錠単回 者負担が少なく福音です。 投与で24.2時間です。1日1回20mg投与で ■両薬の注意点 効果不十分の場合には40mgまで増量でき テネリグリプチンの代謝酵素は複数あ ます。薬物動態では肝臓、腎臓の2ルート り、主としてCYP3A4、フラビン含有モノオ で消失することが特 徴です。現在のとこ キジゲナーゼ (FMO1とFMO3)です。本剤 ろ、併用可能薬は、SU薬とチアゾリジン系 はQTc間隔延長の可能性を否定できない 薬剤の二種類のみです。 ので、念のため、クラスIA抗不整脈薬 (キ ニジン、プロカインアミド)、クラスⅢ抗不 アナグリプチンは (株)三和化学研究所で 整脈薬 (アミオダロン、ソタロール)使用例 創薬されたDPP-4阻害薬で、2012年9月に製 には注意が必要と考えます。 造販売承認を取得、11月に発売されていま 体内動態は、健康成人に単回投与する す。本剤は、P2(フェーズ2)試験までは三 と21〜22%が尿中未変化体として排泄さ 和化学研究所が行い、P3よりは興和創薬 れ、外国人のデータでは、20mg錠単回服 (株)と共同開発です。しかし販売は両社 用では尿中に14.8%,糞中に26.1%と報告さ 別々に行 います。 アナグリプチンは1錠 れており、腎障害患者では使用しやすいと 100mg、 朝 夕の1日2回 服 用 で、1回 量 を されています。副作用は10.0%に認めら 200mgに 増 量 可 能 で す。 健 康 成 人 に れ、主なものは低血糖 (3.0%)、便秘 (0.9%) 100mgまたは200mg単回経口投与時の半 とされています。 医療スタッフのための 糖尿病情報BOX&Net. No.35 2013年1月1日発行 ●本誌のバックナンバーは糖尿病ネットワーク(http://www.dm-net.co.jp/)で公開しています。 ずに糞中に25.0%が排泄されますので、肝 障害患者でも使用しやすく、Ccr<30mL/ 分の重度以上の腎障害患者では100mg錠 を1日1回にするのが目安とされています。 なお、両薬剤ともにSU薬との併用での低 血糖、腸閉塞に注意とされているのは、他 のDPP-4阻害薬と同じです。 ■DPP-4阻害薬の総括 DPP-4阻害薬は種類が多くなり、選択に 迷うことと思います。DPP-4のノックアウト マウスのデータよりDPP-4を100%阻害して も、血中のGLP-1濃度の上昇は2〜3倍が限 度です1)。また臨床的にも例えばシタグリプ ■アナグリプチン (スイニー 錠) Ⓡ この記事の数値は下記での公表によるものです: 平成23年(2011)患者調査の概況(厚生労働省) http://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/ kanja/11/index.html チンは2〜3倍のGLP-1濃度上昇と報告され ています2)。また初期の3種 類の薬 剤の データからすると、どの薬剤もきちんと服用 すれば24時間のDPP-4阻害率は一つの目 安である80%をクリヤーし、HbA1cの低下 も根本的な差はありません3)。これらから、 単剤での効き方・特徴はもちろん重要で、報 告も多数ありますが、むしろ代謝、排泄、 持続時間等の特徴と共に、併用可能薬 (BG 薬、SU薬等)の有無が有用度を決めると考 えます。また、我が国の医療経済を念頭に 置くと、国産薬であることも選択肢に加えて 良いと思います。 1)PNAS ;2000, 6;97(12):6874-9. 2)JCEM; 2006;9:4612-4619. 3)Diabetes, Obesity and Metabolism 13: 594-603, 2011. 監修・企画協力:糖尿病治療研究会 提 供:株式会社三和化学研究所 企画・編集・発行:糖尿病ネットワーク編集部 (株)創新社 〒105-0003 東京都港区西新橋2-8-11 TEL. 03-5521-2881 FAX. 03-5521-2883 E-mail : [email protected]