Comments
Description
Transcript
企業内賃金分散・仕事満足度・企業業績
酋文 企業内賃金分散・仕事満足度・企業業績 参鍋篤司* 京都大学 鷲藤隆志* 京都大学 本稿では企業内賃金格差が、労働組合員の仕事満足度と各企業の業績に与える影 響について分析した。これらの分析には、国際経済労働研究所が実施した日本の大 企業の労働組合員に対するアンケートから得られた個票データと、有価証券報告書 から得られた財務データを用いた。企業内賃金格差(以下 I F W D )は 、 Winter-Ebmerand Zweimull er 1( 9 9 9 )や Lallemand,Plasma nandR y c x( 2 0 0 4 )に基づき、各企業の Mincer 型賃金関数から得られた残差の標準偏差と定義される。この I 刊巾と I 刊巾の 2乗項 などを説明変数とし、組合員のアンケートデータから得られた各組合員の仕事満足 度を被説明変数として、順序ロジット推計を行ったところ、 I F W D の最適値は O .1 9 から 0 . 2 1程度であった。また、 I F W Dと I 開 or の 2乗項などを説明変数とし、各企業 の財務データから得られた企業業績は人当たり営業利益)を被説明変数として、 O L S、 札S 、2 S L Sの 3通りで推計を行ったところ、その最適値はやはり O .1 9程度であり、 人的資本などの要因をコントロールした上での平均賃金に対し、標準偏差にして 1 9百 程度の格差をつけることが最適であることが示された。これは、仕事満足度と企業 業績を最大にする成果主義の程度はほとんど同水準であることを示している。また、 過度に格差をつけることは労働者の仕事満足度を低下させるのみならず、企業の業 績に対しても悪影響を与えるということを示唆している。 1 序論 近年、わが国において成果主義的賃金体系を導入する企業の数が増加している。しか し一方では、その運用の見直しが迫られるケースも少なくない。 1 9 9 3年に大手電機メー 本干高を作成するにあたり、社団法人国際経済労働析究所から特別に許可を得て、「労働組合員総 合意識調査」 の個票データを使用した。 厚 くお礼申し上げたい。また、橘木俊詔氏(京都大学)、菊谷達弥氏(京都大学)、 本誌匿名レフェリーから、 貴重な助言をいただいた。記して感謝したい。なお本稿に示された内容や意見は、 すべて筆者の個人的見解であり、所属する承樹哉の見解を示すものではない。また、あり得ベき誤りは全て筆者 の責に帰するものである。 * G 車絡先) 38 (参鍋) (鷲藤) E m a i l :s a n n a b e @ k i e r . k y o t ou .a ι J P E m a i l :ts a i t o 馳 1目 k y ot ou .a c .jp 日本経済研究比 5 8,2 0 0 8. 1 カーが成果主義に基づく賃金・人事制度を管理職に対して導入し、その後全従業員に対 して適用するようになったが、社内からの批判の声を受け、 2001年に同制度の見直しを 行うなどの混乱があったことは、記憶に新しいところである。 賛否両論がある中で、企業はなぜ成果主義を導入しようとするのであろうか。それを 知るにはまず、成果主義の定義に触れる必要があろう。奥西 ( 2 0 0 1 )は、成果主義の定義 として(1) 賃金決定要因としては成果をもたらす努力などの要因ではなく、仕事の成 果そのものが重視されること、 ( 2 ) より短期的な成果を重視すること、 ( 3 ) 実際の賃 金により大きな格差をつけること、の 3点を挙げている。この中で従業員の生活に最も 大きな影響をもたらすのは、 ( 3)であろう。これは、生活の安定性を脅かす恐れがあ るためである。同時に、企業側にとっても、格差の拡大によって賃金コストを節約でき る可能性が高まる。企業は厳しい価格競争を生き残るため、コストの削減が至上命題で ある中、人件費 もまた削減対象の伊上外ではなくなりつつある。加えて、企業内の年齢構 成が高齢化してきたことによって、年功序列型の賃金・人事制度を維持するにはコスト がかかりすぎるとしゅ事情もある。しかしながら、年功序列型を維持しながら 賃金コス トを減少するには、全従業員の賃金を一律に減少させることになるであろう。この場合、 優秀な従業員はより高待遇を目指して転職してしまう可能性が高まる。これを防ぐには、 優秀な従業員には高待遇を与える一方で、その他の従業員に対しては4 事置を低めること で、トータルの賃金コストを削減「る手法が望ましい。従業員の努力を促すという目的 に加え、このような背景があるので、企業は成果主義を導入しようとするのだと考えら れる。 成果主義導入の影響に関する実託研究は、主に成果主義導入によって労働者の勤労意 欲や仕事満足度としりた主観的な指標がどのような影響を受けるか、というものが中心 である大竹・唐渡 ( 2 0 0 3 )では、「裁量範囲の増大」や「仕事分担の明確化」などとしりた 働き方の変化が伴う場合、成果主義の導入が勤労意欲に対して正の影響を与えるとし、う 結果が示されている。これらの研究の多くは、成果主義の導入の有無については、アン ケートによって従業員に聞くことで情報を得ている。つまり、従業員が自分に対して成 果主義が導入されていると認識していれば、実際に導入されているとみなすのである。 ところが、大竹・唐渡 ( 2 0 0 3 )でも示されているように、企業慣. 1 )の認識と従業員側の認識 にはずれがあることも多い。また、本来賃金制度は成果主義か年功序列主義かのどちら L 最近の成果主義をめくる実3 日示析のより包括的サーベイについては、守島 ( 2 0 0 4 ) を参照のこと。 論 文 企 業 内賃金 分 散 仕 事 満 足度 企業業績 39 か一方である、というよりも、この両者が混合されたものであり、 賃金のうちどの程度 が年功序列的に決まり、どの程度が成果主義的に決まっているかとし寸、いわば7 呈度の 問題であるといえよう。 ここで、程度を定義・計測するためには、何を持って成果主義とするのかについての 基準を示さねばならなし丸本稿では、奥西 ( 2 0 01)による成果主義の定義の一つである、 実際の賃金の企業内格差(以下では、 I F W D ( I n t r a F i r mW a g eD i s p e r s i o n )と呼ぶ)に注 F W Dの定義及び算出法は次節以降 目し、このことをもって成果主義導入の程度とする。 I で詳述される。このような数値化によって、成果主義的賃金体系の導入の程度が、個々 人の幸福度を中心とする主観的な指標に及ぼす影響について統計的に考察することが 可能になると 企業内の賃金格差は、一閣における所得分配と同じような概念といえよう。所得分配 が幸福度に及ぼす影響について、国レベノレのデータを用いて実証分析したものに、 A l e s i n a,D iT e l l aa n dM a c C u l l o c h ( 2 0 0 4 )がある。ヨーロッパ人をサンフ。ノレに採ったと き、ジニ係数の上昇が幸福度を低下させるのに対し、アメリカ人には有意な影響を及ぼ さない。したがって、ヨーロッパ人はアメリカ人よりもより不平等度が低い社会を好ま しいと考えていることになる。この選好のあり方が、所得再分配政策の違いを生む一つ の源となっている、とし、う議論がなされている。日本人は、アメリカ人よりはヨーロツ パ人に比較的より近いといわれてきた。すなわち、より不平等度が低い社会を望ましい と考えているということである。したがって、会社の賃金格差も低いほうが望ましいと 考えている可能性がある。本稿では、 I F W Dの高まりが個々の幸福度に与える影響につい て検討する。 従業員の幸福度を高く保つことは、成果主義的賃金体系の導入自体を失敗させない (あるいは受け入れてもらう)ためには重要であろう。それは例えばある国で再分配政 策が支持されるか否か、あるし、はより具体的にどのような層の人が支持をするのか、と いった問いにこのような幸福度指標を用いた分析が有効であることからもわかる九この ことによって、会社においても成果主義は支持されるのかどうか、あるいは支持されや 中島 ・松繁・梅崎 ( 2 0 0 4 ) は、人事部が成果主義的な賃金体系を導入した後で質金格差が縮小したことを見 出している。このような事実があるので、何をもって成果主義導入の程度と為すのかを明示的に定義する必要 があるだろう。 3 幸福度についてのサーベイは F r e ya n dS t u t z er(2004) を参照のこと。 2 4 このような問題意識を持った実 i 1E分析としては T o m i o k a(2004)がある。 40 日本経済研究比 5 8,2008. 1 A l e s i n a,D iT e l l aa n dM a c C u l l o c h(2004),O h t a k ea n d すいのはどのような層の人なのか、といった問いに答えることも可能になるであろう。 しかし一方で、守島 ( 2 0 0 4 ) が指摘するように、従業員の幸福度がモチベーションやモ ラーノレの向上、すなわち生産性を高めることに実際に貢献しているのかどうかといった ことは、また別の問題として検言ずすべきである ところで、従業員の幸福度は必ずしも企業の目的となるわけではない。経済学的にい えば、企業の目的はあくまで利潤最大化である。したがって、企業にとっては I F W 巾が 及ぼす企業利益への影響についての検討も必要であろう本市高では、企業収益、つまり 従業員 l人当たりの営業利益を生産性の指標として用いる。この指標を用いる理由は 2 つある。 lつには個人単位の生産性を計測することに困難があるためであり、第 2に 、 日本での成果主義は個人をベースに実施されるために、職場での協働が減少し、全体と しての生産性に対して悪い影響があるとしゅ議論がなされるためであり、この効果を測 るためである 企 業 収 益 と I同 町 の 関 連 に つ い て の 実 証 分 析 と し て は 、 Winter-Ebmer a n d 1( 9 9 9 )、La l l e m a n d,Plasmana n dR y c x ( 2 0 0 4 )を挙げることができる。これ Z w e i m u l l e r F W Dが企業収益に及ぼす影 らの分析では本稿で用いられるものと同様な尺度を用いて、 I 響についての分析を行っている。La l l e m a n d,P l a s m a na n dR y c x ( 2 0 0 4 )は、操作変数を 用いた分析を行い、 I F W Dの高まりが企業収益を有意に高めるとし寸結果を得ている。 W i n t目 E b m e ra n dZ w e i m u l l e r ( 1 9 9 9 )は 、 I F W Dの 2乗項を説明変数に導入し、個人の生 産性を最大化する I刊 冊 の ポ イ ン ト を 求 め て い る 。 本 稿 で は Winter-Ebmer a n d 1( 9 9 9 )と L a l l日n a n d,Plasmana n dR y c x ( 2 0 0 4 )を統合したアプローチを採用 Z w e i m u l l e r し、企業収益を最大化させる I F W D江値を算出する。 上述の通り、企業の成果主義導入の背景には、企業内の年齢高齢化に伴い年功序列的 な賃金体系の維持・継続の困難化があると考えられる。また、同じことであるが人件費 の抑制が第一義的な目標として導入されることが多い。さらに、企業は人事制度の制度 仕事満足度が実体経済活動に及ぼす影響を見たものとして、 F r e e m a n(1978)、A k er l o f ,R o s ea n dY e l l叩 (1988) は、仕事満足度が低下すると和織確平が有意に高まることを見出している。また、個々人の幸福度と生産性の 関連については、 I a f f a l d a n oa n dM u c h i n s k y(19邸)がおもに産業心理学的見地から、包括的なサーベイを行っ ている。そこでのメタ・アナリシスから得られた結論は、両者の聞の相E 因果関係について明確な結論が出る わけではない、というものであった。 6 後に見るように、仕事満足度および従業員 l人当たり 営業利益を最大化させる I F W のの水準はほとんど等しい ために、ヰデ稿では企業の目的関数(例えば、株主主権か従業員主権か、としりた問題)について、あるいはそ の最大化の過程における誘引両立性制約の払唱については、以下では言及しない。 ?このような議論に 関連した析究としては、守島 ( 1 9 9 9 ) 、社会経済生産性本部 ( 1 9 9 9 ) 、小林 ( 2 0 01)があ る 。 5 論 文 企 業 内賃金 分 散 仕 事満足度 企業業績 4 唱 的変革期8にあることを考慮すれば、 I F W Dが個々人の幸福度あるいは企業の生産性を最 大化する水準に「常に」選ばれるという想定はおそらく成り立ち得ないはずである。し たがって、企業収益を最大化させる水準はどの程度なのか、としゅ規範的な分析にも意 義があるといえよう。 本有高における基本的な結果は、 「個々の仕事満足度を最大化させる I F W Dの水準と、 l 人当たり営業利益で見た生産性を最大化させる I同町の水準はほぼ同じであり、標本平 9 判ほどの偏差を持った分 均とほぼ等しい。」つまり、固定的な賃金の部分に比べて、 1 布をインセンティブとして設計することが従業員、企業側双方にとって最適である、と し、うことになる。 本稿の残りの部分は、以下の通りである。次の第 2節では、本稿で用いるデータにつ いて述べる。第 3節では、推計式について述べる。第 4節では、推計結果について述べ る。第 5節では、材高の結論を述べる。 2 データについて .2 1 基本的なデータセット 本干高で用いるデータは、 1990年から現在に至るまで社団法人国際経済労働研究所が行 っている「労働組合員総合意識調査」に参加した日本全国の大手上場企業 6 6社のもので ある。実際に使用したのは 1990年から 2004年までのものであり、当該期間内に複数回 調査が行われている企業もあるが、分析では最新の調査のもののみを用いている。その 結果、約 6万人の組合員(ただし、正規従業員に限定)のデータが得られた。調査票は 各労働組合を通して配布・回収された。また、本社のみならず各支社・工場の組合員の データも収集されている。なお、全組合員を調査対象にした組合もあるが、無作為標本 拍出によって一部の組合員のみが調査対象になった組合もある。質問項目は、性別、年 齢、勤続年数、学歴などとしりた人的資本に関する基本的な項目のほか、労働組合に対 する評価や会社に対する刊面、さらに仕事の内容明荷足度など多岐にわたってし、る。記 述統計量については、表 l の通りとなっている 守 島 山9 9 9 ) は、長期的に形成した潜在的な職務遂行能力に基づく評価処遇から、顕在的な成果キアウト プットに基づく評価・処遇への移行が行われていると述べている。 9 賃金に関するデータは、全て l的万円刻みのカテゴリー・データである。 8 42 日本経済研究比 5 8,2008. 1 表 1 記述統計量 I F W D 外国法人持株比率 取締役内部昇進者割合 社長内部昇進者差ダミー 執行役員制度 導入ダミー 社外取締役員比率 I F W D企 ( 業別) I F W D企 ( 業別+学 歴 ・勤続年数別) 職場の人間関係満足度 会社の福利厚 生満足度 労働組合の発言力 自律感 有能感 年齢 女性ダミー 大卒ダミー 転職ダミー 結婚ダミー 子 供あり ダミー 営業 ・販売・サーピス 専門 ・技術・研究 事務(管理部 門を含む) 。 1 9 4 1 0 2 0.803 0.833 0.167 0.079 0.025 0.105 0 . 1 8 1 .o 376 .o 376 0.088 0.155 0 . 0 0 1 0.000 0.000 0.000 0.000 5 9 6 6 3 O .1 9 6 5 3 047 0.193 5 9 6 6 3 3 .3 7 9 5 9 6 6 3 2.967 5 9 6 6 3 2 .3 74 5 9 6 6 3 2.977 5 9 6 6 3 3 .549 5 9 6 6 3 36.029 5 9 6 6 3 O .1 8 4 5 9 6 6 3 O .3 9 1 5 9 6 6 3 0.187 5 9 6 6 3 0 . 6 2 1 5 9 6 6 3 0 .49 7 5 9 6 6 3 O .1 4 9 5 9 6 6 3 O .3 1 1 5 9 6 6 3 O .1 9 9 0.018 0 . 0 3 1 0.979 .1 0 08 .1 0 96 O .7 5 3 0.672 9.659 0.152 0 . 0 0 1 6 6 6 6 6 6 6 6 6 6 6 6 .o 200万 円以上 3 0 0万 円未 満 3 0 0万 円以上 40 0万 円未 満 40 0万 円以上 5 0 0万 円未 満 5 0 0万 円以上 ωo 万 円未 満 600万 円以上 7 0 0万 円未 満 7 0 0万 円以上 800万 円未 満 800万 円以上 1 0 0 0万 円未 満 3 9 8 2 8 6 5 5 1 0 0 7 8 1 1 5 7 9 8838 7 49 6 7 0 6 6 6.67 1 4 .5 1 16.89 1 9 . 4 1 1 4 . 8 1 1 2 .5 6 1 .1 8 4 2 0時間以上 3 0時間未満 3 0時間以上 40時間未満 4 0時間以上 5 0時間未満 5 0時間以上 60時間未満 6 0時間以上 7 0時間未満 7 0時間以上 80時間未満 1 3 2 9 2 8858 6084 3 9 0 6 2429 1 5 1 0 1 0 8 1 22.28 1 4 . 8 5 10.20 6 .5 5 4.07 2 .5 3 .1 8 1 l l l l l .o 270 0 .49 1 .1 0 00 .1 0 00 .1 0 00 .o 500 。 。 。 。 。 。 。 。 1 7 0.270 O .5 04 5 5 5 5 5 6 3 論 文 企 業 内賃金 分 散 仕 事 満 足度 企業業績 l l l l l l l l 43 また、サンプルに含まれる郎社の特徴をとらえるため、産業、調査年、企業規模、 平均賃金、平均年齢、男女比の分布を表 2に掲載する。 、 なお、 Winter-EbmerandZweimuller(1999)、La llemand,PlasmanandRycx(2004)は aL zearandRosen(1981)のトーナメント理論を実証分析の第 lの対象としており、そこ F W Dには昇進後の賃金格差が含まれている。しかし、本稿で郎、られ で対象とされる I るデータに含まれる労働者は基本的に管理職にはない組合員であるから、成果主義的賃 金体系のもたらす影響について直接的に考察することができる。 各企業の財務デー夕、取締役員や執行役員などのコーポレートガパナンスデータにつ いては、各社の有価証券報告書から入手している。 表 2 サンプル企業の特徴 業種分類 水産・農林業 建設業 食料品 繊維製品 観測数 日 5 日 化学 日 2 5 8 . 2 0 0 8. 1 n v ハりハ V 日本経済研究比 0.03 0.14 0.44 0.39 6 5 34 21 日 9 5 7 6 6 構成比 2 9 2 9 2 6 6 6 1よ 1よ 日 8 2 首計 観 | iJr 民 主 A せ ρhv ハ リ 日 0.08 0.05 0.03 0.05 0.03 0.05 0.05 0.12 0.03 0.05 0.14 0.08 o .11 初歳未満 初歳以上旬歳未満 3 5歳以以上上 4 0歳 未 満 4 5歳 未 満 4 0歳 ηム 日 2 o .17 0 0万 円 未 満 4 0 0万 円 以 上 5 5 0 0万 円 以 上 6 0 0万 円 未 満 ωo万 円 以 上 700万 円 未 満 7 0 0万 円 以 上 8 0 0万 円 未 満 0 . 1 1 0.36 o .15 0.09 0.08 0 . 2 1 n v ハV ハV ハV 構成比 合計 平均年齢 構成比 7 24 1 0 6 5 1 4 6 6 5 17 25 32 1 UJi !観 j|j r版 2000人 未 満 2000人 以 上 4000人 未 満 4000人 以 上 6000人 未 満 6000人 以 上 8000人 未 満 8000人。人以以上上1 0 0 0 0 人未満 1 0 0 0 1 日 2 l 6 6 1 1 5 合計 44 日 従業員数 1 1 9 9 0 1 9 9 1 1 9 9 2 1 9 9 3 1994 1 9 9 5 1 9 9 6 1 9 9 7 1 9 9 8 1 9 9 9 2000 2001 2002 2003 日 0.02 0.05 0.08 0.05 0.08 0.06 0.02 0.03 0.09 0.20 0.06 0.03 0.03 0.05 0.05 0.05 0.03 0.02 0よ8よ3 8 ηム 5 4 l 2 6 1 3 4 2 2 医薬品 ゴム製品 ガラス・土石製品 機械 電気機器 輸送用機器 精密機器 その他製品 電気 ・ガス業 卸売業 小売業 その他金融業 サービス業 合計 三査年 構成比 l .2 2 企業内賃金分散の計測について 本手高で用いる企業内賃金格差の指標は、基本的に W i n t e r E b m e ra n dZ w e i m u l l e r 1( 9 9 9 )、 aL l l e m a n d,P l a s m a na n dR y c x ( 2 0 0 4 )で用いられたものと同様である。具体的には、ま ず各企業ごとに M i n c e r型の賃金関数(1)式を O L S推計し、そこで得られた回帰式の残 差の標準偏差を I P W Dと定義する 10 ) l ( IMFdgez=HRZβ +Bi ただし、 l は従業員をあらわす。 fIage は賞与や諸手当、時間外賃金等をすべて含む、 1年間の賃金であるへまた、 E に含まれる変数は、人的資本変数を含んだ個人属性を 示す諸変数、つまり女性ダミー、年齢、年齢の 2乗、勤続年数、勤続年数の 2乗、学歴 ダミー、職種ダミー、対数残業時間 1 2である。 刊 D がどのような水準にあるのかといったことに加え、成果主義 一般的に、最適な I 的賃金体系における I P W Dの最適な水準を求めることは重要な問題であろう。すなわち このような問題意識に立つ場合、各社の I F W Dの違いは、各社が採用する賃金制度の差 異から生じたものではなく、評価する幅のばらつきを表しているものでなければならな し 、 。 従って、サンプルが取られた時点において成果主義的賃金体系を採用していたことが 確認できた企業に隈った分析をあわせて掲載することにする。具体的には、日本経済新 聞、日経産業新聞、読売新聞の新聞各社、そして企業自身が I R活動などの為に発行し た報告書において、 「個人の成果に応じて年収のかなりの部分が決定される、年俸制を 中心とした賃金方式へと移行した」と報道・発表された企業および、同様な制度が採ら れていることが国際経済労働研究所を通じた取材により確認できた企業、 1 5ネ土に隈った w こ¢企業内 賃金格差は、年齢や性別、学歴や職種など出来うる限りのコントローノレをした上で検出されたも のであるが、推定式¢特定化が 質金制度をうまく表象していない可能性は残る。しかし、こうした質金格差が 生じる主な要因として、成果主義的な賃金制度の存在があると推測することは妥当だと考えられる。 u 用いたデータセットでは個別企業の所定内労働時間や年間労働日数が入手できないので、通常の M i 即 位 型賃 金関数で被説明変数として用いる、 賞与等を含む時間当たり 賃金は使用できない。したがって、本稿では 1 年 聞の貰与等を含む賃金を被説明変数とし、コントロール変数として残業時間を加えることにする。 "残業時間は、表 lにあるようにカテコリー・データであり、最も残業時聞が短いカテゴリーは月 1 0時間未満 である。裁量労働制が導入されている企業においては、通常残業時間は計測されないため、もしサンプルに裁 量労働iIi~を導入した企業があれば、労働時聞が正しく計測されなくなり、推定上品鳴を引き起こす。裁量労働 制は専門 技術開発職に導入される可能性が高 く、その場合は専門技術開発職で残業時聞が月 1 0時間未満と 0時間未満と回答した苦草地をみると、営業職が 回答した寄治が多くなると考えられる。職種別に残業時聞が月 1 1 4剛、専門 技 術 開 発 職 が 2 2 . 2 % . 事務職が 4 8刻、技能現業職が 44.0 偽であり、実際は他の職種と比べて低 い。したがって、裁量労働制の導入はないものと考えられる。 論 文 企 業 内賃金分散仕事満足度 企業業績 4S 分析も併せて掲載する 13 3 推計式 .3 1 仕事満足度の推計 第 2節から得られた I F W Dを用いて、仕事満足度を被説明変数とする推計を行う。具 体的には、 J S i j=β。 +β ¥IFWD 'JFWDJ+XijY+ξO + U i j j +β )2( を順序ロジットモデルを用いて推計する。図 lは横軸に I F 冊、縦軸に仕事満足度の会社 F W Dと仕事満足度のあし、だには非線形の関 平町直をとったものである。これをみると、 I F W Dの 2次項も説明変数として加えることにする o 係があることがわかる。したがって、 I xに含まれる変数については、以下の通りである。 ( i )個人の諸属性,年齢、性別、勤続年数、教育水準、家族状況 これらは過去の実証分析において考慮されてきた要素であり、ここでもコントロール 変数として用いる 14 (ii )仕事・職場の状況、特性,自律性の程度、転職経験、産業ダミー、年度ダミー 2 0 0 3 ) 、玄田・神林・ これらじて変数が及ぼす影響勺土、日本の文脈では、大竹・唐渡 ( 2 0 01)ですでにその重要性は指摘されている。 篠崎 ( Y に含まれる変数は、産業ダミー と年度ダミーである。これらはマクロ経済的な要因をコントロールするために導入して し 、 る 。 . 3 この 1 5社は主に 2的0年以降にアンケート調査が行われた企業である。それ以前の段階では、個人の業績 成果を反映させていたことが「成果主義質金制度」 とし、った形では報道がなされていなし、(あるいはそもそも 賃金制度¢変更自体が、企業により発表されていなし、、あるいはつスコミにより報道されていなし寸ケースが 考えられ、積極的に成果主義賃金を導入していたことが各種の報t萱により現庄では窺 うことが出来ても、アン 5社以外の企業において ケート調査実施時期において確かに導入されていたかどうか確認できず、したがって 1 成果主義的質金体系を採用していたかどうかは定かではない。また、サンプル企業数の匹 引系により計箪が不可 能であるために、 II1F 百:J 企業業績への影響について考察した部分では報告しない。 H これらが作事満足度あるいは生活満足度に及ぼす影響については民間町 ( 1 9 8 4 )が包括的なサーベイを行っ ている。 "ただし、本稿で使用するデータにおいては、被説明変数である満足度と(i) (引に挙げた説明変数は同 時点のものである。その場合、満足度を規定する個人¢ 観察できない要素が、説明変数と相関する可能性があ り、内生性の閑障が生じるかもしれないことに注意が必要である。 46 日本経済研 究 比 5 8,2 0 0 8. 1 図 1 企業内賃金格差と平均満足度 3 .50 3 .25 平均満足度 • • ・. • . •・- •‘. • • • • • ・ ・- ・ ・ ・ .・ 唱 ・ . . ・ . . 、 . ー * . ・ • . . . . : . . . ... • . Y . ••• • •• • • 可「 ~ 3 .00 2 .75 e 4 -1 • 2 .50 O .1 5 O .1 7 O .1 9 O .2 1 O .2 3 0.25 0.27 O .2 9 企業内 賃 金 格 差 .3 2 企業業績の推計 企業業績16については、以下の式を O L S (と人数をウェイトとした札 S ) によって推計 する。 F i r m p r o f i tj =α。 +α /FWD αJFWD:+Z1s+ν jl j + 図 2は横軸に I F W Dをとり、縦軸には l人当たり営業利益(企業収益 ( 3 ) Jをとっている。 F W Dの 2乗項を説明変数とし 両者の関係は、上に凸な非線形の関係を示しているので、 I て加える。なお、 Zに含まれる変数は、外国人持株比率、内部昇進役員比率、社長内部 "アンケートの行われた当該 年度における企業業績をパフォーっンス指標 として用いるため、 賃金分散の指標 は実質的に1;期のラグを とること となり、同時性の問題を減少させると考えられる。つまり当該年度に行われ た質問は、基本的に前年度 l 年間¢ 賃金水準についての質問であるからである。 論文 企業内賃金分散仕事満足度 企業業績 47 図2 企業内賃金格差と平均満足度 25 • • •• . • • • .-. ・* s ・ . $ ・ c 、 , . . v . ・ ・ . ・ . 。 • • • • 人 2 0 当 た 1 5 り 戸込 凸 業 1 0 利 (百万円) 益 .# 5 唱 .』 ...t4....吾 . ~ .• • ,- d O .1 5 O .1 7 O .1 9 O .2 1 .O 23 .O 25 O .2 7 O .2 9 企業内賃金格差 昇進ダミー、執行役員制度導入ダミー、社外取締役比率、従業員数、産業ダミー、年度 ダミーである。 F W Dに対して影響を与えているとし寸、逆の因果関係があるこ ここで、企業業績が I とを考慮する必要がある。業績が悪い企業であれば、より人イ牛費を圧縮する必要がある。 このとき、 賃金のうち成果主義的な部分を多くして、年功的な部分を減少させることに よって、賃金の固定的部分を減少させる。 このことが、人件費圧縮に寄与するならば、 業績の悪い企業ほど、 I刊叩を増大させるであろう 17 これらのような逆の因果関係によ る内生性を除去するために、操作変数法を用いた推計も行う。 F W Dの l次の項と 2次の項が説明変数に含まれ ところで、本稿では内生変数である I ている。 ここでは W 工i d g e( 2 0 0 2 )に従い、まず I F W Dに企業業績を回帰したとき、企 o o l d 業業績 ;rr 係数が非有意であれば、 I F W Dの 2乗項だけを内生変数として 2 S L Sで推計する n また、反対に業績の良し企業であれば、貰与などによって賃金格差が開く可能性がある。日本においては、 従来貰与は月給の数か月分というのが基本であったが、近年は全社あるいは部門別の業績に連動させた業績連 動型の貰与制度に移行する企業が増加している。前者のケースであれば、もともと基本拾で賃金格差があった 場合にさらに格差が増幅されるし、後者のケースでも特定の部門で業績が良くなっているのなら、格差は広が 48 日本経済研究 l b5 8,2 0 0 8. 1 ことにする。つまり、 。 F i r m p r o f i tj = α +α /FWD α2IFWD IZ :+s j + ν +jl ( 3 ) IFW 久 D ' j= s o+β s1 万 F l川r 附m pn ( 4 ) 2 の ßl が非有意であれば、 IFWD を内生変数とし、 z~ (実際に使用したのは、外国人持 株比率の 2 乗、役員内部昇進比率の 2 乗である)を操作変数にしてお SL により推計す る 。 4 結果 4 . 1 仕事満足度の推計 全てのサンプルに対して仕事満足度を推計した結果は、表 3 (1)に示されたとおりで F W Dの l次項の係数は有意にプラス、 2次項の係数はマイナスとなった。つまり、 ある。 I F W Dの 2次関数でまわり、仕事の満足度を最も高くするような I F W Dの値 仕事の満足度は I が前生することを示している。まず、サンブワレ全体に対して推計を行ったところ、最適 F W Dは.o 1 9 3 6となった。 I F W Dの標本平均は O .1 9 6 0であり、最適な I F W Dをやや上回 なI ってし、る。 その他の説明変数の結果について述べる。まず、対数賃金については係数は有意に正 の値となっている。 賃金が高いほど、仕事満足度が高まるということである。対数残業 時間については、係数は有意に負¢直となっている。残業時間が長ければ長いほど、仕 事満足度は低下することになる。職場の人間関係の満足度、福利厚生の満足度、労働組 合の発言力、といった労働条件に関する主観的な意識に関する変数も、その係数はいず 惑・有能J 惑も、係数は有意に正の値となって れも有意に正の値となっている。また自律J ;rr 係数は有意に正の値、女 いる。本人の属性や人的資本に関する変数については、年齢 性ダミーも有意に正の値となっている。大卒ダミーの係数は非有意であった。転職ダミ ーについては、有意に負の値となっている。結婚ダミーは有意に正¢直をとるが、子供 まわりダミーは非有意であった。職種については、営業職をベースカテゴリーとしている。 るであろう。 論 文 企 業 内賃金 分 散 仕 事 満 足度 企業業績 49 専門・技術・研究職は有意に正の値をとっている。また、技能・現業職も有意に正の値 をとっている。従業員数については、有意に負の値をとっており、企業規模が大きくな ると、仕事満足度が低下する傾向があることが示唆される。 なお、サンフツレを成果主義的賃金体系が採用されていると確認できた企業に限定して、 同様の計算を行った結果は ( 1刊巾及び I F W D 2乗以外の結果は割愛する)、表 3 ( 2 )の ようになった 18 これにより得られる最適値は O .1 9 3 8となり、上の推計において得られ たものとほぼ変わらない結果が得られた。 さらに、頑健性を確かめるため、各企業における ( 1)式の残差を、同学歴同勤続年 数内のサンプルごとに標準偏差を集計して I F W Dを作成した場合に 19、 ( 2 ) 式の推計を 3 ) の通りであるへこれにより得られる最適値は O .2096となり、上 行った結果は表 3 ( の推計において得られたものよりはやや数値が大きいものとなった。 問多重共線性の F J'鳴が発生し 計算ができなくなるため、産業・年度ダミーを除いている。 . 9 具体的には、各企業の労働者を学歴が「大卒以上」と「大卒未満」のものに分け、さらにそれぞれ勤続年数 rlO年超 20 年以下」、 02r 年超 30 年以下」、 03r 年超」のグループに分割した。そして、 が rlO年以下」、 こ¢各社の 8グノレープについてそれぞれ(1)式広残差の 標当 割 、需差を計箪 した。したがって、サンプルサイズが 小さくな り、計算された標準偏差の標準誤差が大きくなってし、る可能性はある。 m 各個人 O){t 事満足度が同期入社内での賃金のばらつきによって決まっている可能性を考慮したものである。 so 日本経済研 究 比 58 ,208 .1 ω I F W D ル一学年一 プ一+続リ一 ン一別勤刻一九 サ 葉 -i… 企業別 全一企歴一【 導み 一 一 義の一別一 主業一業一 果企一企一 成入一 ノ B- レ一 フ一 ン一 サ一 全一 I F W Dの計算方法| ω ω 表 3 仕事満足度推計結果 九百りり 1 1 7 0 . 5 1 5 147.062 ( 2 . 8 5 )料* ( 4 . 9 2 )ホ* .1( 9 6 )* IFWD2 乗 1 4 4 0 .4 2 1 379.368 1 8 .748 9 )ホ * ( 2 .5 8 )材* ( 4 . 9 0 )ホ* .1( 9 対 数賃金 1 0 . 1 5 3 0.249 0.163 ( 2 . 8 8 )ホ* ( 4 . 4 5 )ホ* ( 4 . 4 4 )*** 対数残業時間 1 0 . 0 3 3 o .052 0.018 7)ホ* ( 2 . 0ホ )7* ( 3 .1 .1( 6 6 )* 職場の人間関係 0.577 o .595 ( 5 9 . 1 0 )ネネ* (24.03)*** (55.78)*** 福利厚生 0.094 0.116 1( 2 .3 5 )ネネ* ( 4 . 2 6 )ホ* .11( 7 9 )*** 1 0 3 組合発言力 1 0 . 0 9 8 0.099 1( 2 .1 5 )ネネ* ( 5 . 0 6 )ホ* 1( 2 .1 5 )*** 自律感 1 0 . 0 9 0 0.037 0.088 ( 7 . 2 6 )ホ* .1( 1 6 ) ( 6 .7 0 )*** 有能感 0.870 0.881 (59.84)*** (23.92)*** (56.55)*** 年齢 0.016 0.018 1( 2 .7 8 )ネネ* ( 5 .5 3 )ホ* 1( 3 . 2 0 )*** 女性ダミー 1 0 . 1 9 6 o .003 0.204 ( 8 .1 2 )ホ* ( 0 . 0 5 ) ( 7 . 8 0 )*** 大卒ダミー 0.045 0.078 ( 3 . 01)木材 .1( 3 5 ) ( 0 .8 5 ) 転職ダミー 1 0 . 0 3 5 O .032 0.020 ( 0 . 6 )1 ( 0 . 9 4 ) .1( 7 3 )* 結婚ダミー 0.055 0.068 ( 0 . 9 2 ) ( 2 . 6 5 )料* ( 3 . 2 5 )ホ* 子供ありダミー 1 0 . 0 5 1 0.037 0.052 * ( 2 . 1 0 )ホ ( 0 . 6 0 ) ( 2 . 0 2 )* * 専門・技術・研究 0.294 O .308 1( 0 . 0 9 )ネネ* ( 5 .1 8 )ホ* 1( 0 . 9 0 )*** 事務(管理部門を含む) 0.088 0.092 ( 2 . 9 6 )ネネ* ( 0 . 6 )7 .1( 3 8 ) 技能・現業 O .050 O .1 8 0 ( 5 . 8 3 )材* (3.80)*** ( 0 . 7 9 ) 1-0ω 従業員数 0.000 0.000 4 . 8 4 )ホ* .1( 0 ( 2 . 2 9 ) * * ( 8 ) 産業ダミー yes no yes noγes 比L 59663 10383 53047 0.09 0.09 0.09 擬似決定係数 8 0 2 2 7 .3 2 13984.01 -71378.62 準記善丞主1i メJ ,/-' 内の数値は市 h it eの z 1 直 。 件* 1 拡水準で有意、料 開水準で有意、* : 1 0拡水準で有意。 。 。 舗長二 孟孟孟 。 1 9 3 6 O .1 9 3 8 0.2096 論 文 企 業内賃金分散 仕事満足度 企業業績 5唱 4 .2 企業業績の推計 企業業績の推計式の結果は、表 4に示されたとおりである。 まず、 O L Sの結果を見ると、 I F W Dの l次項の係数はプラスだが非有意、 2次項の係数 はマイナスとなった。つまり、企業業績は I F W Dの 2次関数でまわり、企業業績を最も高 くするような I F W D江値が存在することを示している。 最適な I F W Dは 0 . 1 9 0 0でまわり、 仕事満足度を最適にする I 阿 Dよりやや低い水準である。 F W 巾は O .1 8 5 6であり、その水準は低下する。 また、札Sの結果を見ると、最適な I 2 S L Sについては、まず ( 4 ) 式をおL S推定したときの企業業績)Jr 係数は非有意である 表 4 企業業績推計結果 IFWD I F W D 2乗 (1) 人当たり営業利益 l OLS │ 5 6 3 . 9 3 1 0.68) 1 1 . 4 8 4 .1 2 0 0.79) * 外国人持株比率 0.45) 内部昇進役員比率 社長内部昇進 執行役員制度 社外取締役比率 従業員数 ( 0 . 9 )1 1 0 . 8 7 0 ( 0 . 6 6 ) 1 0 . 0 9 7 ( 0 . 0 8 ) 1 1 1 . 3 8 2 ( 0 . 8 8 ) 1 0 . 0 0 0 ( 2 .6 3 )林 yes yes e s 66 0.74 (2) l 人当たり営業利益 力日重最小2乗法 668.011 0.83) 1 .7 9 9 .770 0.96) 1 .1 802 0.94) 3 .1 3 8 ( 0 .5 2 ) .1 1 0 8 ( 0 .7 9 ) 0.009 )1 ( 0 . 0 1 .1 934 0.00) 0.000 ( 3 .8 7 )*林 y e s y e s e s 66 0.85 * * * (3) l 人当たり営業利益 2SLS 2 8 4 3 .3 4 3 ( 2 . 2 9 ) 7366.892 ( 2 .3 0 ) 0 . 2 6 1 ( 0 .0 3 ) 1 5 . 8 5 1 ( 2 .2 5 ) 0.033 ( 0 . 2 2 ) 2 .2 9 1 ( 0 .9 8 ) 38.002 ( 2 . 17)* 0.000 ( 2 .4 )1 yes yes e s 66 ** ** ** ** 定数項 産業ダミー 年度ダミー 観測数 決定係数 過剰識別制約の検定 Sargan statistic 0.915 Chi-sq(l) P-value O .3 3 9 カッコ内の数値はwhiteのt! l 。 料十 l 出水準で有意、料 開水準で有意、* : 1 0 出水準で有意。 孟亙正 S2 日本経済研 究 比 5 8,2 0 08. 1 。 1900 。 1 8 5 6 O .1930 ことが確認された ( β 1の P値は 0 . 3 8 5であった) 2 にしたがって ( 3)式を lFWD'を内 生変数とし、 z ;を操作変数にして 2SLSにより推計する。操作変数は、外国人持株比率 と取締役員内部昇進比率のそれぞれ 2乗項を用いることにする。その他の説明変数とし て、社長内部昇進ダミー、執行役員制度導入ダミー、ネ土外取締役比率ダミー、従業員数 を用いた。 第 2段階2 2については、最適な I F W Dは O .1 9 3 0であり、仕事満足度を最高にする I 刊の とほぼ同程度であることが示された。内生性を除去しても、やはり最適な I F W Dが存在 し、しかもその値は O L Sや 札Sと比較してやや大きくなることから、業績が悪化したと きに I F W Dが上昇するとし、う影響を取り除いた結果が現れているといえよう。 I F W Dの標本平均は O .1 9 6 0であり、上記 3通りの推計式から得られた最適な I F W Dをや や上回っているものの、それほどの違いはないということが出来よう。 Wint目 Zweimuller 1( Ebme工 and 9 9 9 )では、オーストリアの労働者のデータから、企業業績幻を最も高める ブ ノLーカラー労働者の I 同 Dは 0 . 2 9、ホワイトカラー労働者の I F W Dは 0 . 2 3程度と算出 している。単純に比較すれば、わが圏の企業は少なくともオーストリアの企業よりは、 賃金格差を小さくしたほうが企業業績はよくなるということになる 24 その他の説明変数について述べる。外国人持株比率、内部昇進役員比率、社外取締役 比率が有意に正の値をとっているが、 3つの式すべてで有意となるものはなしこれら に関しては頑健な結果とはいえない。従業員数は、全ての式で有意に正の値となった。 これは、規模が大きいほど l 人当たりの営業利益が大きいことを意味する。 5 結論 本稿では企業内賃金格差が、労働組合員の仕事満足度と各企業の業績に与える影響に ついて、国際経済労働研究所が実施した日本の大企業の労働組合員に対するアンケート むなお、操作変数は l 人当たり経常利益、 l 人当たり 売上高。これらは内生変数の l 人当たり 営業利益と相関 を持つが、被説明変数の I同 D との禍関は弱いと考えられるため、操作変数として適切であると判断した。 l段 階目の F値は 3.57(P値は 0 . 0 4 3 4 )であり w e a ki n s t r u m e北の可能性は否定され、また過剰識別制約は S a r g a n s t a t i s t i c( o v e r i d e n t i f i叩 t i o nt e s to fa 1 1i n s t r u m e n t s )が 0.458 ( p値 0羽 田8 ) であるので、満たされる。 " 1段階目の F値は1. 0 2( p値は 0 . 3 7 5 5 ) であり、 weaki n s t r u m e n tである可能性は否定できない。この点に n s t r u m e n ;t ;r 苧む払覗Eについて詳しくは、An gr is ta n drK u e g e r ( 1 9 9 1 )、もしく は注意が必要であろう。 weaki e r ( 1 9 9 5 )を参照されたい。 は Bound,JaegerandaB k 2 3W interE b m e ra n dZweimulle (r 1 9 9 9 )では、財務データが利用できなかったため、企業業績の代理変数とし 粟準化された賃金水準を用いている。 て1 "ただし、これらの研究では役員報酎等を含んでいる。 論 文 企 業 内賃金分散仕事満足度 企業業績 S3 から得られたデータと有価証券報告書から得られた財務テータを用いて分析した。 I F W D ) の測定は、 W i n t目 E b m e ra n dZ w e i m u l l e r( 1 9 9 9 )や L a l l e m a n d, 企業内賃金格差 ( P l a s m a na n dR y c x ( 2 0 0 4 )に基づいて行った。すなわち、各企業において M i n c e r型賃金 関数を推計し、その残差の標準偏差を I P W Dと定義した。 P W Dと I F W Dの 2乗項などを説明変数とし、組合員のアンケートデータから得ら この I ) 贋序ロジット推計を行ったところ、 れた各組合員の仕事満足度を被説明変数として、 1 I F W Dの l次項は有意に正反値となり、 2次項は有意に負の値となったため、仕事満足度 同 Dの最j菌直が存在することが確かめられた。その筋商直はお を最も高くするような、 I .1 9から O .2 1程度であった。 おむね O F W Dと I F W Dの 2乗項などを説明変数とし、各企業の財務データから得られた 次に、 I 企業業績は人当たり営業利益)を被説明変数として、 O L S、W l ぷ 、 2 S L Sの 3通りで推計 同 Dの l次項は有意に正江値となり、 2次項は有意に負の値 を行った。その結果、ほぼ I F W 巾の最適値が存在することが確かめ となったため、企業業績を最も高くするような、 I .1 9程度となることがわ られた。その最適値は、仕事満足度の推計とほぼ同じ水準の O かった。 これらのことから、仕事満足度や企業封書を最高にする最適な企業内賃金格差はおお .1 9程度であることがわかった。つまり年齢や性別、職種などを条件付けたとき よそ O の 賃金の標準偏差が 19~ 程度の分布を持った賃金制度の設定が、企業にとっても、その 中で働く労働者にとっても、最適になることがわかった。このことは、成果主義の程度 には最適な水準がまわり、過度に格差をつけることは労働者の仕事満足度を低下させるの みならず、企業の業績に対しても悪影響を与えるということを意味する。 参考文献 大竹文雄・唐渡広志 ( 2 0 0 3 ) r成果主義的賃金制度と労働意欲J ~経済研究~ V o .l 5 4,N o .3 ,p p 1 9 3 2 0 5 奥西好夫 ( 2 C日 )1 r r成果主義」 賃金の導入の条件J 玄回有史・神林龍・篠崎武久 ( 2 0 0 )1 学~ 伶 '谷 I I J ' V o l .3 4,N o .3 ,p p .6 1 7 r成果主義と能力開発結果としての労働意欲J ~組織科 V o .l 3 4,N o .3 ,p p .1 8 3 1 ( 2 C日 )1 r人的資源管理システムにおける成果主義的報酬施策の役割 ブメント」モデノレの実証的検討J ~組緒斜学~ 社会経済生産性本部・労使関係常任委員会編 ( 1 9 9 9 ) S4 ~組緒斜学~ 日本経済研究比 5 8 , 2 00 8. 1 「ハイ・インボノレ V ol . 3 4 ,N o . 3, p p .5 3 6 6 ~職場と企業の労使関係の再構築個と集 団の新たなコラポレーション』社会経済生産性本部 2 0 0 4 ) 中嶋哲夫・松繁寿和・梅崎修 ( r賃金と査定に見られる成果主義導入の効果企業内マイク o .4 8 ,p p .1 8 3 3 ロデータによる分析 J ~日本経済研究~ N 守島基 博 ( I S持) r成果主義の浸透が職場に与える影響J ~日本労働研究雑誌~ No.474,p p .2 1 4 守島基 博 ( 2 0 0 4 ) r成果主義は企業を活性化するかJ ~日本労働研究雑誌~ N o .5 2 5, p p .3 4 4 7 A k e r l o f ,G .A .,A .K .R o s e,a 山 口d ]. L .Y e l l e n( 1 9 8 8 )“ J o bS w i t c h i n ga n dJ o bS a t i s f a c t i o ni n t h eU .S . aL b o rM a r k e t, " B r o o k i n g sPap θ'FS α nE c o n o m i cActivity2 ,p p .4 9 5 5 8 2 A l e s i n a ,A .,R .D iT e 1 1 a ,a n dR .M a c C u 1 1 0 c h( 2 0 0 4 )“ I n e q u a l it ya n dH a p p i n e s s:A r eE u r o p e a n s a n dAm e r i c a n sD i f f e r e n t ? "if 叫 J r n a lofP u b l i cEc o n o m i c s8 8( 9 / 1 0 ), p p .2 0 0 9 2 0 4 2 A n g r i s t,.] D .,a n dA ..B K r u e g e r1( 9 9 “ )1 D o e sC o m p u l s o r yS c h ∞1AttendanceAffectSchooling a n dE a r n i n g s ? "Q u a r t e r l yif 叫 J r n a lofEc α n o m i c s1 0 6, p p .9 7 9 1 0 1 4 Bound , , .] D .A .] a e g e r, a n dR .M .B a k e r( 1 9 9 5 )“ P r o b l e m swithI n s t r u m e n t a lV a r i a b l e s E s t i m a t i o nWhent h eC o r r e l a t i o nb e t w e e nt h eI n s t r u m e n t sa n dE n d o g e n o u sE x p l a n a t o r y V a r i a b l e sI sW e a k ? ".J つu r n a loft h eAm e r i c a nS t a t i s t i c a lAssoつi a t i o n9 0,p p .4 4 3 4 5日 D i e n e r, E . 1( 9 8 4 )" S u b j e c t i v eWe 1 1 B e i n g , " P s y c h o l o g i c a lB u l l e t i n9 5( 3 ), p p .5 4 2 5 7 5 F r e e m a n ,R . 1( 9 7 8 )“ J o bS a t i s f a c t i o na sa nE c o n o m i cV a r i a b l e, " Am e r i c a nE c o n o m i cReview 6 8 ( 2 ), p p .1 3 5 1 4 1 F r e y ,B .S ., a n dA .S t u t z e r( 2 0 0 4 ) 明h a tC a nE c o n o m i s t sL e a r nf r o mH a p p i n e s sR e s e a r c h ? " Joun ワ a 1ofEc 明 暗i cLi t e r a t u r e4 0( 2 ), p p .4 0 2 4 3 5 I a f f a d a n o,M .T ., a n dP .M .M u c h i n s k y( 1 9 8 5 )“ ] o bS a t i s f a c t i o na n d] o bP e r f o r m a n c e AM e t a A n a l y s i s, " P s y c h o 1 o g i c a 1昂lJ l e t i n9 7 ( 2 ),p p .2 5 1 2 7 3 L a l l e m a n d ,T .,R .P l a s m a n ,a n dF .R y c x( 2 朗4 )“ I n t r a F i r mW a g eD i s p e r s i o na n dF i r m P e r f o r m a n c e :E v i d e n c ef r叩 L i n k e dE m p l o y e r E m p l o y e eD a t a , " K Y K L O S 57( 4 ),即 5 3 3 5 5 8 L a z e a r, E .P .,a n dS .R o s e n( 1 9 8 1 )“ R a n k o r d e rT o u r n a m e n t sa sO p t i m u mL a b o rC o n t r a c t s, " 。 J Jrna1ofPolitica1Econc町 89, p p .8 4 1 8 6 4 叫 h t a k e,F .,and]. T o m i o k a( 2 0 0 4 ) 明h oS u p p o r t sR e d i s t r i b u t i o n ? "J a p a n e s eE c o n o m i cReview 5 5 ( 4 ), p p .3 3 3 3 5 4 Wi n t e r E b m e r,R ., and]. Z w e i m u l l e r1( 9 9 9 )“ I n t r a f i r mW a g eD i s p e r s i o na n dF i r m P e r f o r m a n c e, " Wo o 1 d r i d g e,.] KYKL ρ~ 5 2 ( 4 ),p p .5 5 5 5 7 2 ( 2 0 0 2 )E c o n o m e t r i cAna1ysisofCr 四 ,' s S e c t i o nandP a n e 1D a t a ,M ITP r e s s 論 文 企 業内賃金分散 仕事満足度 企業業績 ss