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第 3 章 調査票の設計に関する考察
第3章 調査票の設計に関する考察 1.調査票の工夫・A 票(10~14 歳) (1)ショーカードの利用 ショーカードを使った面接調査法を採用した。ショーカードには、各設問ごとの選択 肢が記載されている。 対象者は、調査員が読み上げた質問及び項目に対する回答を、ショーカードから選び、 その回答を読み上げるか、指し示してもらうこととした。 ショーカードは、質問ごとに該当する 1 枚を提示し、対象者が回答を選択し終わった ら、その都度回収するようにした。 ショーカードには全ての漢字にルビを振った。 ショーカードを使って回答を選ぶ調査方法に慣れてもらうため、調査を始める前に練 習問題を 2 問実施してから、調査に入るよう設計した。 ショーカードは操作しやすいよう A5 サイズの厚紙で作成した。 図 14 ショーカード 27 (2)言い換え表現の採用 10~14 歳(小学校高学年から中学生まで)と理解力にも幅のある年代が対象となって いるため、聞かれている質問が理解できずに回答できないことを極力少なくするよう、 理解が困難と思われる言葉や表現に関しては、言い換えの言葉や表現を用意した。 調査員はまず言い換えの言葉を使わずに質問を行う。対象者が質問を理解していない と思われた場合、或いは意味がわからないなどと発言した場合は、言い換えの言葉を 使って問や項目を読み直すようにした。言い換えの言葉を使った場合には、個票にそ の旨を記し、総合所感に書きまとめてもらうようにした。 (3)選択肢の設計 問 22 を除き、子どもが選択しやすいよう選択肢の数を少なく設計した。 選択肢には必ず「99 わからない」 「00 答えたくない」を設けたが、今回の試験調査 では、「00 答えたくない」を選択した対象者は 0 名であった。 2.調査票の課題・A 票(10~14 歳) (1)子どもが理解しづらかった表現や文言 A票(10 歳~14 歳)において、言い換え表現や文言を用意したもののうち、実際に調査 員が言い換えを必要とした表現や文言は以下の通りである。 表 14 子どもが理解しづらかった表現や文言 問4 住居 問8 穏やかであった 問 11 騒音 問7 穏やかさ 問8 孤独であった 問 11 大気汚染 問7 憂うつ 問9 治安 問 11 破壊行為 問7 肉体的苦痛 問9 自然災害 問 11 廃棄物 28 言い換えの表現を必要とした年齢は 10 歳~12 歳までであった。 表 15 対象者別理解しづらかった表現・文言 年齢 内容 10 歳 憂うつ、肉体的苦痛、孤独であった、治安、騒音、大気汚染 10 歳 定期的に 10 歳 治安 11 歳 自分自身、穏やかさ、憂うつ、肉体的苦痛、治安、自然災害、騒音、大気汚染、犯罪・暴力・破 壊行為、 11 歳 人間を超えた力、友だちと同じようなことができなくて、 11 歳 身近な人を思い浮かべる、今から 5 年後の自分を想像 11 歳 役にたつ、人間を超えた力 11 歳 住居 11 歳 憂うつ、ストレス、騒音、大気汚染 12 歳 憂うつ、肉体的苦痛、治安、自然災害、騒音、大気汚染、街頭のゴミや廃棄物 12 歳 近所(周り) 12 歳 住居 (2)子どもが回答に悩んでいた質問、表現や文言 言い換えが用意されていた表現や文言以外にも、子どもが回答に悩んだ質問、表現や文 言については、以下の対応策が検討できる。 表 16 子どもが回答に悩んでいた質問、表現や文言 問 内容 対応策 問 5_1 「友だちと同じようなことができなくて我慢した 具体例を挙げて回答を引き出す こと」のイメージがわかなかった 問6 「自分自身」がわからなかった 言い換え表現を用意する 問6 「役にたっている」の意味がわからなかった 言い換え表現を用意する 問9 「食べ物の安全」について、世の中に安全で 具体例を挙げて回答を引き出す はない食べ物があるということを知らない子ど もにとっては質問の意味が分かりづらかった 問 10 「人間を超えた力」のイメージがわかなかった 具体例を挙げて回答を引き出す 問 12 選択肢を選ぶのに迷いがあった 選択肢 1 と 2 の間に「安全だと思う」がある 項目 2 方が回答しやすいようであった 29 問 13 身近な人を思い浮かべて回答するが、家族と 「身近な人」の対象を絞る 近所の人では対応がだいぶ違うと思われるの でひとくくりにして考えることができないようで あった 問 14 「習いごと」に塾を含めるかどうか迷っていた 意味や範囲の定義を定め、子どもから質問 されたときに調査員が説明できるようにす る。 問 15 問 16 「家族と過ごす時間」の定義に悩んでいた。例 意味や範囲の定義を定め、子どもから質問 えば、家族と一緒に居間にいても一人で何か されたときに調査員が説明できるようにす をやっている時間は含めるのかなど る。 日や季節によって時間の過ごし方が大きく異 意味や範囲の定義を定め、子どもから質問 なるので回答に悩んでいた されたときに調査員が説明できるようにす 勉強時間に塾の時間を含めるのか、遊びの る。 時間に休み時間を含めるのか、1 人の時間に 勉強時間を含めるのか等悩んでいた 問 18 選択肢「どちらかといえばそう思わない」と「ど 「そう思う」、「そう思わない」の2択にする。 ちらかといえばそう思う」の表現が理解しづら いようであった 問 25 問 27 一緒に遊ぶ友だちの数が「学校」で遊ぶ友だ 意味や範囲の定義を定め、子どもから質問 ちの数なのか、「家」で遊ぶ友だちの数なのか されたときに調査員が説明できるようにす で悩んでいた る。 「定期的に」の意味を理解するのに時間がか 具体例を挙げて回答を引き出す かった (3)選択肢の追加(検討項目) 習いごとをやっていない、または、おこづかいをもらっていない子どもが選べる選択 肢が不足していた。問 17 で設定した「5.やっていない」という選択肢をもうける必 要がある。(問 4 項目 7(おこづかい)、問 4 項目 8(習いごと)、問 14 項目 6(習い ごと)) おこづかいの有無と額を質問した問 27 では、「定期的に」の単位で迷った子どもがい た。単位(1 日、週、月、年)が選択できるようになっているとよい。 30 (4)その他 その他、実査の中で、気がついた点や子どもから質問のあった点は以下の通りである。 問 4 項目 5:近所の人との関係など、近所の人についての問は、 「わからない」になる 確率が他の質問に比べて高い。これは、転勤後だったり、近所とのつきあいがないた め。 問 9:(不安を感じることについて)家の中で不安を感じるか、外で不安を感じるかを 質問した子どもがいた。 夜の一人歩きについて質問した問 12_1 では、 「たまにある」と答えた子どもがいた。 選択肢に、「ときどきある」を追加すると答えやすいかもしれない。 問 13 では、「してくれる」と「してくれない」の間と答えた子どもがいた。また、項 目1については、「落ち込まないからわからない」と回答した子どもがいた。選択肢に 「どちらともいえない」及び「そうなったことがない」を追加すべきかは更なる検討 が必要である。 一日のうちに使う時間について質問した問 16 では、そのような時間はないと答えた子 どもがいた。ない(0 分)は 1.30 分未満に含めるのか、別に 0.0 分という選択肢を もうけてもよい。 見た目の満足度を質問した問 21 では、「満足している」と「満足していない」の間く らいと答えた子どもが 1 名いた。選択肢に、 「どちらでもない」を追加するかどうかは 更なる検討が必要と思われる。 31 3.調査票の課題・B 票(15 歳以上) (1)選択肢の重複選択 項目の段を間違えて選択肢を選んでしまい、1 つの項目に 2 つの選択肢が選択され、その 次の項目の選択肢が空欄となっているものがあった。偶数行は、背景に色を入れるなど、 行をわかりやすいようにする工夫が考えられる。 重複選択の件数:8 件 重複選択された問:問 1、問 2、問 3、問 6 項目 3、問 8 項目 4、問 8 項目 5、問 17 項目 4、 問 40 項目 5 (2)不明な設問 B 票(15 歳以上)は対象者を 15 歳以上としているが、高校生などの若い世代の対象者に は答えが分からない設問があった。 問 15「あなたの家族全員の総収入について考えたとき、必要不可欠な生活費をやり くりすることは毎月どの程度、容易または困難ですか。いずれかの数字を1つだけ ○で囲んでください」 問 16「住宅ローンまたは家賃、光熱費(電気・ガス・水道料金)、住居のための保険、 固定資産税といった住居にかかる総費用をお考えください。こうした住居にかかる 総費用はあなたの家計にとってどの程度のご負担になっていますか。いずれかの数 字を一つだけ○で囲んでください。」 問 21「あなたの家庭で以下の項目について、経済的理由で行うことができないと感 じることはありますか。それぞれいずれかの数字を 1 つだけ○で囲んでください。」 問 47: 「あなた本人は、現在次のような社会保障給付を受けていますか。該当するも の全てに○を付けてください。」 32 (3)拒否と明記された設問 問 46 は、4 名の対象者が調査票に「拒否」と手書きで明示した。 「拒否」と記入された個 人調査票については、空欄扱いとせず、「拒否」票として集計した。 問 46「あなた自身の年間収入(税・社会保険料込み)は、およそどれくらいですか。 次の中からいずれかの数字に 1 つだけ○をつけてください。」 4.調査票の課題・C 票(世帯附属) 世帯に 1 票となる C 票(世帯附属)では、以下の課題が見受けられた。 問 6:あなたのお住まいの住居の床面積は次のどれにあたりますか。いずれかの数字を 1つだけ○で囲んでください。(○は 1 つ) <課題>枠外に「分からない」「不明」と書いた回答者が、6 名いた(8.5%) <提案>選択肢に、「9.分からない」を追加する。 問 7:あなたの現在のお住まいで、以下のような問題があると思われますか。当てはま る数字を全て○で囲んでください。(○はいくつでも) <課題>この問のみ空欄が多く、枠外に「なし」と記入した回答者も 3 名いた(4%)。 <提案>選択肢に「9.問題はない」を追加する。 問 9:あなたの世帯全体の年間収入(税・社会保険料込み)は、およそどのくらいです か。次の中からいずれかの数字に1つだけ○をつけてください。(○は1つ) <課題>枠外に「拒否」と書いた回答者が、4 名(5.6%)いた。 <提案>調査票の選択肢に「拒否」を追加する必要はないが、集計用に選択肢をもう けておく。 33