洋一中だより

洋一中だより
平成２８年１１月号
横浜市磯子区洋光台２－５－１
電話８３３－１２７０ ＦＡＸ８３５－０４９１
（平成２８年１０月３１日発行）
横浜市立洋光台第一中学校
校 長 根岸 久明
副校長
中野
裕美
カナダの女流作家モンゴメ
リー作『赤毛のアン』を、読ん
だことがある人はいますか。
一昨年の朝のテレビ小説『花子
とアン』のヒロイン村岡花子さ
ん が 翻 訳 し た こ と で も 有 名 で す 。 ま た 、 か つ て ア ニ メ や 映 画 に も な っ た の で 、「 聞 い
たことがあるよ」という人もいるかと思います。
何 十 年 も 前 、 ま だ 私 が 小 学 校 高 学 年 だ っ た 頃 、『 赤 毛 の ア ン 』 の 本 に 出 会 い 、 そ の
生 き 生 き と し た 主 人 公 の ア ン に 魅 了 さ れ 、 全 10巻 を 次 々 と 読 破 し て い き ま し た 。 ち
ょうど、自分と同じくらいの女の子が主人公だったため、様々なエピソードやアン
の言動に心を反映させやすかったためかもしれません。余談ですが、大の苦手の英
語克服のため、何度も読み込んだ『赤毛のアン』シリーズなら、訳がなくても英文
が理解できるだろうと、英語でも読みました。
全 10巻 の 中 の エ ピ ソ ー ド は 数 限 り な く あ り 、 中 学 生 で あ る み な さ ん に 紹 介 し た い
ものだけでも紙面に収まりきれないほどあります。その中から一つ、紹介したいと
思 い ま す 。 そ れ は 、 全 1 0 巻 の 最 後 の 巻 の 中 盤 に 出 て く る エ ピ ソ ー ド で す 。『 赤 毛 の
ア ン 』 の 最 初 で は 13歳 で や せ っ ぽ ち の 孤 児 だ っ た ア ン は 、 7人 の 子 ど も を 産 み 、
１０巻では、第一次世界大戦を乗り越え、深い悲しみも経験します。そしてアンの
末娘リラは、大戦中の様々な苦労を通して、わがままで見栄っ張りの少女から深み
のある女性へと成長しています。大戦半ば毎日苦労の連続のある日、リラの大好き
なオリバー先生から、「この二年間を面白いことがぎっしりとつまった二年間と取り替えた
い？」と問われ、
「辛い二年だったわ。それだのに、妙にありがたいという気持ちがするのよ。辛くはあったけど、
なにかとても貴重なものをあたしに与えてくれたような気持ちなの。そうできるとしても、あた
しは二年前に逆戻りしてもとのあたしに返りたくないわ。（中略）あの頃でもあたしには心が
あったと思うわ、先生。でもそれを知らなかったの。今はその事を知っているのよ。でも、これ以
上辛い思いはしたくないわ。精神を向上させるとわかっていてもね。」と、リラは答えます。
当 時 中 学 生 だ っ た 私 は こ の 部 分 を 読 ん で 、深 く 考 え さ せ ら れ ま し た 。
「世の大人は、
『若い内の苦労は買ってでもしろ』と言うけど、中学生の自分には、苦労の道と楽
な道があった時、楽な道を捨てて苦労の道を選ぶ勇気はない。でも、苦労の道しか
選びようがない時、この道の先には『自己の成長』という、明るい未来が待ってい
る の だ と 、 腹 を 決 め て 困 難 か ら 逃 げ ず に 立 ち 向 か う こ と が 大 事 な の か も し れ な い 。」
と、気づきました。困難を乗り越えることで得た力は、誰にも奪うことができない
自分自身の“力”になるのです。
中学生のみなさん、あなた自身が『この一節にふれ合えてよかった』と思える本
と出会えることが、あなたの人生の深みを増すことになるでしょう。人は一通りの
人生しか歩むことはできないけど、本を通して何種類もの人生を謳歌することがで
きます。秋の夜長、多くの本と知り合ってみてください。
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