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地域みんなで子育て!

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地域みんなで子育て!
共創・共育・共感
尾鷲市教育長だより
2013.11.15.(金)
第50号
地域みんなで子育て!
「地域みんなで子育て」ということで、だれもがすぐにできることはなんでしょ
うか。大人は「お父さん」「お母さん」の顔から「おじさん」「おばさん」の顔にな
ることです。あるいは、地域のすべての子どもの「お父さん」「お母さん」になる
ことといってもよいでしょう。それは、自分の子どもをよくするには、よその子ど
ももいっしょによくしなくてはならないからです。
そうするには、親同士、地域の人同士が協力して、よその子も自分の子も、わけ
へだてなく育てようとしなくてはなりません。「あれはよその子だから」と見過ご
してはいけません。悪いことを見たら、自分の子どもと同じように「ダメよ」とい
ってやるということです。子どものことですから「うるさいな。カンケイないやろ」
と悪態をつくかもしれません。
しかし、ひるまずに「カンケイあるんさ。あんたは尾鷲の子どもやり。わたしは
尾鷲のお母さんやがな!」「あかんことしたらあかんというのが大人のつとめやさ
かな」と叱ります。
その反対に、いいことをしたらほめてやることも忘れてはなりません。そうする
ことが、今度は自分の子どもが、よそで悪いことをしたときに、よその親が注意し
てくれる、いいことをすればほめてもらえるということになるのです。世の中は持
ちつ持たれつ、まわりまわっているものなのです。
わたしの子ども時代には、地域には「こわいおじさん・おばさん」がいて、悪い
ことをすると、どの家の子どもだろうと遠慮なく叱ってくれました。また、子ども
好きの「やさしいおじさん・おばさん」もいて、なにかと世話をやいてくれました。
地域には、子どもの生活環境や気持ちをよく知ったうえで、へだてなく地域の子
として励ましてくれたおじさん・おばさんがいたのです。
現在は、だんだんと地縁が薄れ、共同で子どもを育てていこうとする姿勢が弱ま
っているともいわれています。ですから、これまで「地縁」で結ばれていた地域の
共同を、「子縁」で結ばれる地域の共同として再生していきたいと思います。
「地域みんなで子育て!」を、まず身近なところからはじめようではありません
か。最初の取り組みとしてできることは隣近所の人と仲良くなることです。人が仲
良くする目的には、趣味を楽しんだり、町内の活動をいっしょにしたりするためと
いうことがありますが、教育問題に引き付けていえば、「子どもをよくするための
仲良し」といってもいいでしょう。
なぜ、隣近所の人と仲良くするかというと、子どもは隣近所の子どもといっしょ
に遊ぶからです。ですから、自分の子どもをよい子にしたかったら、わが子といっ
しょに遊ぶ子どももよい子になってもらわなくてはならないからです。これは、お
互い様のことですから、隣近所のみんなで、みんなの子どもをみんないい子にしよ
うということになります。
隣近所と仲よくするには、まず挨拶し、相手の子どもをほめることからはじめま
す。「子は夫婦のかすがい」といいますが、世間でもまた、子どもが、人と人とを
結ぶかすがいなのです。
よその子どものほめ上手になるには、第一に、子どもの気持ちを知ることです。
「子どもは、何でもいいからほめればいい」と言われますが、これは少し強引な意
見です。なぜなら、子どもはみんな「触れられたくないこと」「ほめられたくない
こと」を持っているからです。
勉強に自信がなく劣等感を抱いている子どもは「きっと勉強もできるんだろうね」
などとほめられると、ほめた人を避けるようになります。子どもにも、心理的なタ
ブー・ゾーンがあって、そこに無理に押し入ろうとすると、強く拒否してきます。
ですから、「この子は何をどうほめるといいか」がつかめるまでは、あたりさわ
りのないことをほめます。幸いなことに、時代には、つねに時代を反映するあたり
さわりのないほめ言葉がありました。
江戸時代は幼児の死亡率が高かったので、子ほめといえば「長命の相(長生きす
る人相)がある」「丸々と太っている」(健康だ)とほめました。また、女子は「色
が白い」とほめました。「色白は七難隠す」ことで美人の条件だったからです。
現代では「かわいい」「かっこいい」でしょうか。この言葉は応用が広く、何に
でもあてはまります。容姿・性格はむろん、ふるまい・着衣・持ち物など、すべて
この言葉でくくられますから、この言葉でほめている限り、子どもを傷つけること
はありません。最初は、こうしたあたりさわりのない言葉によって、よその子ども
をほめ、やがて、長所がわかるようになるにつれ、そのことについてほめるように
します。
次に、よその子どもをほめることは、その親をほめているんだと知ることです。
どの親も、わが子がほめられるとうれしそうな顔をしますが、それは、間接的に、
自分がほめられているからです。
「丸々としてじょうぶそうな赤ちゃんですね」とほめたら、母親は大いに喜び、
「ありがとうございます」とうれしそうに礼を言ってもらったことがあります。そ
れは、「丸々としてじょうぶそう」とそのときの思いを伝えさせてもらったことが、
親御さんの子どもを大切に育てようとしている姿勢の評価につながったからです。
世間はみんなこのように、お互いに子ほめの社交辞令をかわしながら、人と人と
の間合いをつめ、交わりを深め、仲良くなり、その結果、「共育の輪」を結んでい
くのです。だから、もっともっと、お互いによその子どもをほめたいものです。
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