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プロジェクト・ホスティングという 悲しき事業

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プロジェクト・ホスティングという 悲しき事業
//from the editor /
プロジェクト・ホスティングという
悲しき事業
多くの企業が無償のオープンソース・ホスティング事業から撤退し、生き残り企
業は熾烈な価格競争にいる中で、同モデルは持続可能か?
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月下旬、オラクルは、
プロジェクト・ホスティング・サ
イトであるProject KenaiとJava.netを2017年4月末
に閉鎖することを発表しました。閉鎖の理由は、
とりわけ
BitbucketやGitHubなどのサイトと競合するつもりはない
ということです。
この閉鎖は、以前から見られる現象に続く
動きとなっています。その現象とは、主要事業がコードの
ホスティングと密接に関係していない企業が、オープンソ
ース・プロジェクトのホスティングから撤退しているという
ものです。
プロジェクト・ホスティングが本格的に広まったの
は、1990年代後半にオープンソースのトレンドが根付いて
からでした。
1999年には、オープンソース・プロジェクト・ホストの
2つの主要モデルが台頭しました。誰にでも開かれた
サイトと、
より選択的なホストです。後者のグループに
写真:BOB ADLER/GETTY IMAGES
ORACLE.COM/JAVAMAGAZINE ///////////////////////////////// MAY/JUNE 2016
は、Codehaus、Tigris.orgや、
プロジェクトがホストされる
前に承認を必要とするその他のサイトが含まれていまし
た。特に、
ライセンスの種類、
プロジェクトの重大さ、そして
開発者コミュニティを活性化する可能性があるかどうか、
といったことが要件として重視されました。
これらのサイトは、エリート層として見られていました。
成功する可能性が高い、吟味されたプロジェクトをホス
トしていたのです。
このモデルは驚くほどうまく機能しま
した。CodehausはGroovy、Maven、Sonar、そして初期の
IoC(inversion of control)
フレームワークのほとんどをホ
ストしていました。数百件のプロジェクトをホストするサイ
トとしては悪くありません。Apache Software Foundation
とEclipse Foundationは、現在同様のモデルを追求してい
ます(ただし、構造上に重要な違いがあります)。
このモデ
ルを完全に機能させるためには、
スポンサー組織がうまく
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//from the editor /
資金を集め、運用を行うためのコスト
やボランティア要員を賄う必要があり
ます。
このような資金の支援がなけれ
ば、
こうしたほとんどのキュレーション
ベースのサイトは退化するか、完全に
消滅していたでしょう。
これらのサイトと対抗するモデルが、
あらゆるプロジェクトを受け入れるホス
トです。
過去10年間のほとんどの期間、
こ
の分野を率いてきたのは間違い
なくSourceForgeです。キュレーテ
ィング・ホストが伽藍方式だとする
と、SourceForgeはバザール方式でし
た。活発で、騒々しく、多くの低価値のプ
ロジェクトでいっぱいでした。そうした
プロジェクトには、サイトの設置後間も
なく放置されたものや、
クラスルーム・
プロジェクトなどがあります。その中に、
まれに優れたプロジェクトが散在して
いたという状態です。
このモデルの成功は、競合サイトに
影響を与えました。特にGoogle Code
はすぐに、
開発者志向のプロジェクトを求めてい
る人々のための場所となりました。
ま
た、
このモデルにより、
プロジェクトがい
くつかの小さな条件を満たす場合は参
加可能というハイブリッド型のアプロ
ーチが生まれました。Java.netはそのよ
うなサイトの一例です。
この場合の要
件は、
プロジェクトがJavaで記述されて
いることです。同様に、RubyForgeなど
の言語固有のサイトも、
このアプロー
チにならっています。
しかし、ホスト間の競争によって、二
重の負荷がもたらされました。ホストは
サービスを無償で提供するためのコス
トを負担せざるを得ないだけでなく、
自サイトのサービスを定期的にアップ
グレードする必要もありました。新機能
への投資を何度か繰り返したほとんど
のサイトは、敗北を認めることにしたの
です。Google Code、Java.net、Project
Kenai、JavaForgeやその他のサイトは
閉鎖したか、現在閉鎖する過程にいま
す。
この圧力の原因の1つに、
プロジェ
クトをホスティングするための着実な
商業的資本を有し、サービスへの継続
的な出資を望む新しい企業(おもに
Bitbucket(Atlassianの一部)、GitHub、
およびGitLab)の台頭があります。
そうした企業のサービスは、洗練さ
れ、SCMに加えてWebサイトやWiki、
コード・レビュー・ツールや不具合ト
ラッカーといった、細部までの配慮が
行き渡っています。
(これらのサービ
スは大規模であるものの、Codehaus
のような初期のサイトほど完璧では
ないことを指摘しておきたいと思いま
す。Codehausは、電子メールやメーリ
ング・リスト、ユーザー・フォーラムを提
供したり、継続的に統合を行ったり、商
業用開発ツール向けに無償のライセン
スを用意したりしていました。)
新しい市場リーダーとなる各サイト
が、素晴らしい製品や賢明なコミュニテ
ィ開発によってその地位を確立したも
のの、膨大な数のプロジェクトを無償で
ホストするモデルが長期的に持続可能
かどうかは判断しがたいものです。例え
ORACLE.COM/JAVAMAGAZINE ///////////////////////////////// MAY/JUNE 2016
ば、GitHubは、GitLabとの接戦により価
格を改訂しましたが、両サイトともに、
無償で無制限の機能を積極的に提供
するようになりました。明らかに、
この
モデルを無限に続けられるわけはあり
ません。
この状況は、5∼6年前に出版業界が
直面していた状況をどこか彷彿とさせ
ます。各サイトが、
より掘り下げた、精巧
なコンテンツを無償で提供することに
より、競っていた時代です。次第にこの
モデルは自己修正せざるを得なくなり、
現在は、有料のサブスクリプション・モ
デルが新しい規範として台頭してきて
います。
多くの企業がプロジェクト・ホスティ
ングから撤退していること、そして生き
残りサイト同士の熾烈な競争のことを
考えると、
このモデルはいずれ、現在開
発者が無料で利用しているサービスの
一部を有料化するように進化していか
なければならないのではないかと思い
ます。現在のサービスの高い品質を考
えると、私たちがそのコストの一部を負
担することは公平なことのように思わ
れます。
Editor in Chief、Andrew
Binstock
[email protected]
@platypusguy
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