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カメの25例

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カメの25例
カメの25例
中津動物病院
浅井絵理 中西比呂子 衛藤夕夏 中津賞
カメ類
・他の爬虫類と比べ、比較的広く一般的に飼育されている。
・価格やサイズなどの点で容易に入手可能(特に水棲種)
↓
・十分な飼育知識を持たずに飼育を始めるオーナーが多い。
・多くのカメが不適切な飼育環境で飼育されている。
↓
種々の疾患に羅患する原因となる。
飼育管理
・温度
・食餌
・衛生管理
床材
水質管理
・紫外線
・湿度
症例
・2004年4月から2006年8月までに来院したもの
・主に飼育の失宜に起因して発症したもの
・治療の過程で医療的な介入とともに飼育管理の改善が
求められた。
1. 皮膚、甲羅、口腔内の感染症(6例)
・体表に常在する細菌や真菌の日和見感染
・不衛生な飼育環境や、低すぎる飼育温度
によって引き起こされる免疫の低下が関与
・併発疾患に注意
症状
・皮膚:発赤、白斑、潰瘍、異常な脱皮
・甲羅:白斑、潰瘍、チーズ状の膿の排泄
・口腔内:粘膜の潰瘍、チーズ状の膿の排泄
治療
・膿や壊死組織の除去
・抗生物質、抗真菌薬の投与
・虚脱や食欲廃絶を示す症例
↓敗血症を併発
・補液、強制給餌等の支持療法
2.中耳炎(4例)
・片側または両側の鼓膜部が硬く隆起する。
・主に口腔内の常在細菌、真菌の増殖による。
・エウスタキオ管(耳管)の口腔内の開口部より
上行し、中耳内にて増殖することで発症する。
・飼育管理の失宜による免疫の低下が原因
治療
・鼓膜部を切皮
・チーズ様に凝固した膿を除去
・中耳内を洗浄、抗生物質の軟膏を塗布
・抗生物質等の経口投与または薬浴
・飼育管理の改善
3.呼吸器感染症(2例)
・症状:開口呼吸、鼻汁排泄、異常
な呼吸音など
・常在する細菌や真菌による日和
見感染が多い。
治療
・抗生物質および抗真菌剤の投与
・飼育管理の改善
温度
湿度(陸棲種)
床材の変更(陸棲種)
・カメは解剖学的に咳やくしゃみの
出来ない動物であるので、気管内
の異物や痰は除去されにくく、慢
性化しやすいので注意が必要であ
る。
4.ビタミンA欠乏症(1例)
・不適切な食餌や長期の食欲不振に
起因して発症する。
・他の栄養素も欠乏しているのに注意
症状
・眼瞼の腫脹、呼吸器症状(開口呼吸)、
腎機能障害(浮腫)
治療
・ビタミンAの薬浴(水1Lあたり375 IU
入れて1時間)
・強制給餌
・飼育管理の改善(食餌、温度等)
5.熱射病(1例)
・真夏に発生する。
・ベランダで飼育している水棲種
・日光浴中の水・陸棲種
症状
・虚脱
・後肢の麻痺
直射日光によって甲羅が過度に加温され、甲羅の直下に
存在する脊柱内を走る脊髄の熱による損傷が原因で起こると
考えられている。
治療
・冷却
・コハク酸メチルプレドニゾロン(10mg/kg)の投与
・補液や抗生物質による全身的な支持療法
6.腎不全および浮腫(1例)
・不適切な水の給与(水を与えていな
かった)に起因
症状
・虚脱
・頚部や四肢の付け根に浮腫
治療
・輸液
・フロセミド(3mg/kg)の投与
・抗生物質の投与
・強制給餌などの支持療法
治療4日目の様子
7.尿路結石(1例)
・数日前に総排泄口から白い結石様の
ものが見えていたという主訴で来院
・X線所見
膀胱内に結石
(骨盤腔内を通過可能なサイズ)
消化管内に大量の床材を誤飲
・猫用毛玉除去剤(ラキサトーン)を投与
・結石が再び総排泄口へ移動したら再び
来院するよう指示
・9日後に再び結石が降りてきたので来院
・結石をロンジュール等で破砕した後に摘出した。
・処置は無麻酔で行うことが可能であった。
・消化管内に見られた床材はカルシウムを含んだ爬虫類
用に市販されている砂利であり、この床材の使用を中止
するよう指示した。
8.卵塞(4例)
・腹腔内に卵を長期にわたって保持することが可能。
X線で卵の保持を確認してもすぐに卵塞とはならない。
・食欲の低下、多飲多尿は生理的に見られる変化。
・虚脱や衰弱が見られる場合は卵塞を疑う。
産卵を促す処置
・土や砂の入った産卵床の設置
・適切な温度管理(30℃前後)
・グルコン酸カルシウム(100 mg/kg)
・オキシトシン(1~2 IU/kg im)
卵管破裂を起こしていた一例
・食欲廃絶と虚脱状態にあった。
・輸液療法を十分に行った後、開腹して卵巣および卵管を卵ご
と摘出した。
・術後も輸液、抗生物質の投与、強制給餌は徹底して行った。
9.外傷・咬傷(4例)
・犬による咬傷
・ベランダからの落下事故
・交通事故
など
甲羅の破損した症例
・流水または生理食塩水で甲羅を洗浄
・裂け目に抗生物質の軟膏を塗布
・エポキシ樹脂,グラスファイバーで修復
治療
・抗生物質
・補液、強制給餌などの支持療法
・口腔内や総排泄口から出血
(頭部や内臓にダメージをうけている)
・体腔の臓器が露出している症例
↓
予後が悪い。
10.低カルシウム血症(1例)
・長期にわたるCa含量の少ない食餌(レタス等)の摂取によって発症
・甲羅を持ち上げて歩行することが出来ず、食欲も低下していた。
・血液検査
Ca濃度 7.4 mg/dl (正常値11.6±3.0 mg/dl)
PCV 10% (正常値22±5 %)
正常なホシガメの歩様
本症例の歩様
治療
・グルコン酸Ca(100 mg/kg)の投与
・Caを多く含む食餌への変更(小松菜やモロヘイヤなど)
4週間後にはCa、PCVともに正常値にまで上昇しており、歩
様も徐々に回復した。
まとめ
使用した薬剤
・抗生物質
クロラムフェニコール(40mg/kg SID )
エンロフロキサシン(2.5 ~5mg/kg SID)
・抗真菌剤
ケトコナゾール(15~30mg/kg SID po)
・補液
等張リンゲル 体重の1~2%を投与量
腹甲と腹壁の間に投与(体腔外投与)
・薬浴
クロラムフェニコール(水1Lあたり 40 mg で1時間)
マラカイトグリーン(水1Lあたり 0.15 mg で1時間)
強制給餌
・草食性
・小松菜などをすった汁
・ウサギ用ペレット
(MSパフォーマンス;イースター社)
・雑食性
・a/d(Hills)
・水棲種用フード
考察
・カメ類で見られる疾患のほとんどが温度、衛生管理、食餌等
の失宜によってもたらされると考えられる。
・薬物による治療とともにオーナーへの飼育管理の改善の指
導が不可欠である。
・どのような飼育管理を行なっているかをよく聴取する必要が
ある。
・あらかじめカメ用の予診表などを用意しておくと便利である。
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