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全文 - 東芝ソリューション株式会社

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全文 - 東芝ソリューション株式会社
特集:最新のテクノロジーで進化するシステム開発基盤 CommonStyle®
栄 光宏 苗村 健二郎 島田 毅
お客様の要望などを取り入れて研究活動を続けること
が大切です。そこで当社では,実際の開発担当者の
要望や意見を収集するために定期的なヒアリングを行
なうとともに,学会・業界団体での技術活動や米国に
設置している調査拠点での情報収集などを通じ,最新
開発担当への
ヒアリング
現在から将来のPJの課題,
CommonStyle ® への要望
など
先行的な研究開発
技術動向調査,
課題解決方式,
適用検証など
ニーズ
シーズ
技術トレンド,マーケットニーズの把握に努めています。
こうして得られた情報に基づき2∼3年のスパンでシス
共通基盤ロードマップ改訂
テム開発基盤 CommonStyle® の研究開発ロードマッ
プを描き,常に見直しを掛けながら研究開発を進めて
います。本稿では,具体的な研究事例を使って,こう
共通基盤開発・リリース
した取り組みをご紹介します。
図 1 共通基盤ロードマップ維持のためのプロセス
最新・最適なテクノロジーを提供するためには
CommonStyleで最新・最適なテクノロジーを提供する
ためには,現在提供しているシステム開発基盤に関して,実
際の開発に携わっている開発者の要望や意見を聞き,開発
計画に反映する,いわゆる「ニーズベース」の活動と将来
共通基盤として必要となる可能性がある技術に関して先行し
た研究開発を実施する,いわゆる「シーズベース」の活動
の両方が必要です。CommonStyleでは前者に関しては定
期的に実際の開発担当者へ共通基盤ロードマップインタ
ビューと称してヒアリング活動を実施し,開発現場の意見や
要望を収集しています。後者に関しては研究開発部門にお
いて将来の共通基盤として必要とされる技術についての研究
開発を行っています。これらの活動を通して立てられる開発・
リリース計画は製品と同様に共通基盤ロードマップとしてまと
め,社内に公開しています( 図 1)。これにより開発担当者は
CommonStyleで今何を利用できるのかに加え将来的にど
のような技術が利用できるのかを把握することができます。
共通基盤ロードマップインタビューによる
課題抽出
共通基盤ロードマップインタビューではCommonStyleで
提供する現状の共通基盤ロードマップに基づき以下の項目
に関してヒアリングを年2回実施しています。
開発プロジェクトで抱えている技術的課題
開発プロジェクトを通してCommonStyleとして取り組ん
で欲しいと思っていること
現状の共通基盤ロードマップで計画している開発項目に対
する要望
14
「東芝ソリューション テクニカルニュース」2008年冬季号 Vol.16
ヒアリング対象者は開発分野が異なる約 30 名の開発リー
ダを中心としています。このヒアリングを通して,ニーズの観
点から新たな技術に関する研究開発項目の追加や現在提供
している技術に関する機能改良や開発の優先度などを決定
し,共通基盤ロードマップに反映しています。
将来の共通基盤リリースに向けた
研究開発活動
将来に渡りCommonStyleで最新のテクノロジーを提供
していくためには,常に最新の技術動向をウォッチし共通基
盤に組込めそうな技術があれば,その技術の研究開発を開
始する必要があります。CommonStyleにおける典型的な
研究開発のプロセスは図2のようになります。まず技術調査
でその技術の本質を見極めます。次に,その技術をどのよう
に利用するのかユースケースを検討し,そのユースケースに
技術を適用したとき発生する課題を解決するための対策案
を検討します。そして,その対策案を実現するモックアップ
を試作し,ユースケースに適用し評価します。評価結果に応
じてシステム開発基盤へその技術を組込むか検討します。
各 プ ロ セ ス の 詳 細 を, 現 在 研 究 開 発 中 の SaaS
(Software as a Service)型アプリケーション構築技術を
例に説明します。
(1)
技術調査
技術調査を進めるうえでまず大切なことは,技術の定義
を明確にし,調査する範囲を決めることです。SaaS 型アプ
リケーション構築技術の研究では,SaaSをネットワーク経
由でサービスとして提供しプログラムを変更することなくカス
タマイズ可能なアプリケーションと定義しました。
技術調査
・調査範囲の
決定
・要素技術の
特性調査
ユースケース
検討
課題解決
・利用方法の
検討
・課題の抽出
・対策案の検討
実現可能性
検証
適用評価
・対策案の実装
・モックアップ
の試作
・ユースケース
に適用
・効果の測定
中断
最新・最適なテクノロジーを提供するには,ソリュー
ション開発に必要な技術のニーズ,将来の技術動向,
研究開発開始
6
将来に渡って最新・最適なテクノロジーを提供し続けるために
∼ロードマップ維持と研究開発体制∼
システム開 発 基 盤の開 発
特集記事
図 2 研究開発のプロセス 調査範囲が決まったら,その技術を構成する要素に分解
した技術マップを作成し,要素技術ごとにその特性を見極め
ていきます。
(2)
ユースケース検討
各要素技術の特性が明確になれば,その特性を活かした
利用方法を検討します。ここで注意しなければならないこと
は,既存の利用方法に捉われず柔軟な発想でユースケース
を考えることです。例えば,SaaSはインターネットでの利用
が注目されていますが,グループ企業間や複数の同業社間
で共同利用するシステムにも適用できます。グループ企業間
でも業務内容が少しずつ異なることが多いので,SaaS 型ア
プリケーションを適用することにより,グループ会社ごとの運
用に合わせたアプリケーションを1 台のサーバで運用するこ
とができます。
(3)
技術課題の解決
新しい技術を導入した場合,そのメリットを享受できる反
面,新たな課題が発生することがあります。例えば,カスタ
マイズ性の高いアプリケーションは,特定の要件向けのアプ
リケーションと比較して,開発コストが高くなる可能性があり
ます。想定したユースケースに技術を導入した際に発生する
課題を抽出し,それらをどのように解決するか研究し,課題
を解決する対策案を導き出します。
(4)
実現可能性の検証
対策案が見つかれば,その対策案の実現可能性を検証
します。検証手段の一つにモックアップによる検証がありま
す。SaaS 型アプリケーション構築技術の研究では,カスタ
マイズ性の高いアプリケーションを構築するためのフレーム
ワークを試作しています。フレームワークにカスタマイズ機能
をあらかじめ用意しておくことで,開発コストの増加を抑える
ことが期待できます。
(5)
適用評価
実現可能性の検証が終われば,想定したユースケースに
適用した場合の効果を評価します。評価結果に応じて,シ
ステム開発基盤への組込みの検討へと進むもの,研究開発
を中止するもの,もう一度技術課題の解決案やユースケース
の検討をやり直すものなどに分かれます。SaaS型アプリケー
ション構築技術の研究では社内で開発しているソリューショ
ンへフレームワークのモックアップを適用し,評価する準備
をしています。
研究開発活動に対するCommonStyleの貢献
本稿ではヒアリングと研究開発により,システム開発基盤
のロードマップを描き,これを維持していく活動に関して紹
介しました。将来の技術に関する研究を研究開発部門だけ
で進めていくのは途中で方向を誤る可能性もあり,開発した
が活用されないことも多々ありました。CommonStyleでは,
共通基盤ロードマップによる研究開発内容の確認とヒアリン
グにより様々な開発現場から研究開発テーマに関する声が
聞ける仕組みがあるため,研究開発途中で進む方向に間違
いがないかを確認する機会が多くなります。その結果,研究
開発においても成果が出る確度の高い研究開発を進めるこ
とができるようになりました。
Profile
栄 光宏 Sakae Mitsuhiro
IT技術研究所
研究開発部 IT品質ラボラトリー 室長
システム構築・品質技術に関する研究開発に従事。
情報処理学会会員
苗村 健二郎 Naemura Kenjiro
IT技術研究所
研究開発部 ITアーキテクチャラボラトリー 室長
システム基盤技術に関する研究開発に従事。
情報処理学会会員
島田 毅 Shimada Tsuyoshi
IT技術研究所
研究開発部情報セキュリティラボラトリー 主任研究員
セキュア構築技術に関する研究開発に従事。
IEEE Computer Society 会員
「東芝ソリューション テクニカルニュース」2008年冬季号 Vol.16
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